特許第5993170号(P5993170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993170
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】ビール抽出コック
(51)【国際特許分類】
   B67D 1/14 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   B67D1/14 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-67173(P2012-67173)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-199284(P2013-199284A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】509219073
【氏名又は名称】株式会社リード
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】井上 智広
(72)【発明者】
【氏名】西川 清行
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−206157(JP,A)
【文献】 特開2010−285209(JP,A)
【文献】 特開2000−318799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/14
B67D 3/04
B67D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビールサーバーに接続可能な接続部11aを有すると共に、内部軸方向にビール供給路11bを形成し、前記接続部11a側端部に弁座11eを形成し、前記ビール供給路11bと連通してビール抽出口11c及び泡抽出口11dを個別に備えたコック本体11と、このコック本体11のビール供給路11bに前記軸方向に沿って前後動可能に内蔵される弁構造体12と、前記コック本体11に取り付けられ、ビールと泡の抽出を切り替えるように上記弁構造体12を前後動操作するコックレバー13とを備えたビール抽出コックであって、
前記弁構造体12は、前記コック本体11の弁座11eに着座するパッキン1bと細孔1cを備えた主弁体1と、この主弁体1を一方端に取り付ける弁棒2と、この弁棒2の他方端に一方端を取り付ける中空のスライダ3と、このスライダ3に摺動可能に内装される内部弁体4と、この内部弁体4の一方端に取り付けるリング状パッキン5と、前記内部弁体4の他方端に係着するバネ7を収容して前記スライダ3の他方端に取り付ける弁体押さえ6とからなり、
前記弁棒2は、一方端に前記主弁体1に螺着可能な挿通部2aを有し、軸方向中心に前記挿通部2aから他方端を閉塞した閉塞端部2fにかけて流路2cを設けると共に前記閉塞端部2fにおいて中心から半径方向に向かって流路2cから外周面に開通する複数の吐出孔2dを円周方向に等間隔に設け、前記閉塞端部2fの一方端側に隣接してネジ部2eを設け、
前記スライダ3は、中空円筒状で、前記弁棒2を取り付ける一方端には段差部3aを設けて、前記弁棒2の前記閉塞端部2fが前記段差部3aの内側に突出して前記ネジ部2eを挿入螺着する小径部3bを形成し、大径部分の周面に直径方向の貫通孔3dを設けると共にその内部に内部弁体4が摺動可能な内径を有する中空部3eを形成し、
上記段差部3aの内側前記内部弁体4が前記バネ7により付勢されて前記リング状パッキン5の端面5aが着座する弁座3fとして
前記コックレバー13を泡の抽出側に操作することにより、前記バネ7の付勢に抗して前記リング状パッキン5の端面5aが前記弁座3fから離れて前記段差部3aの内側に泡の流路となる僅かな間隙3cを形成する
ことを特徴とするビール抽出コック。
【請求項2】
ビールサーバーに接続可能な接続部11aを有すると共に、内部軸方向にビール供給路11bを形成し、前記接続部11a側端部に弁座11eを形成し、前記ビール供給路11bと連通してビール抽出口11c及び泡抽出口11dを個別に備えたコック本体11と、このコック本体11のビール供給路11bに前記軸方向に沿って前後動可能に内蔵される弁構造体12と、前記コック本体11に取り付けられ、ビールと泡の抽出を切り替えるように上記弁構造体12を前後動操作するコックレバー13とを備えたビール抽出コックであって、
前記弁構造体12は、
略円錐状の頭部1aの後端に前記コック本体11の弁座11eに着座するパッキン1bを装着し、その軸方向中心に細孔1cを設け、この細孔1cと連通して挿通孔1dを設けた主弁体1と、
一方端に前記主弁体1の挿通孔1dに螺着可能な挿通部2aを有し、軸方向中心に前記挿通部2aから他方端を閉塞した閉塞端部2fにかけて流路2cを設けると共に前記閉塞端部2fにおいて中心から半径方向に向かって流路2cから外周面に開通する複数の吐出孔2dを円周方向に等間隔に設け、前記閉塞端部2fの一方端側に隣接してネジ部2eを設けた弁棒2と、
中空円筒状で、前記弁棒2のネジ部2eを螺着する一方端には段差部3aを設けて、前記閉塞端部2fが前記段差部3aの内側に突出して前記ネジ部2eを挿入螺着する小径部3bを形成し、大径部分の周面に直径方向の貫通孔3dを設けると共にその内部に内部弁体4が摺動可能な内径を有する中空部3eを形成し、前記段差部3aの内側は弁座3fとしたスライダ3と、
前記スライダ3に内装され、円筒状本体4aは前記スライダ3の中空部3eの内径より僅かに小さな外径として両者間に流路4bを形成し、挿入側の一方端にはリング状パッキン5の収納部4cを設け、その周面に直径方向の貫通孔4dを設け、他方端にバネ受け突部4eを形成した内部弁体4と、
一部を前記内部弁体4の収納部4cに収納可能で先端に露出する端面5aは前記スライダ3の前記弁座3fを閉塞可能としたリング状パッキン5と、
前記内部弁体4のバネ受け突部4eに係着させるバネ7と、
前記内部弁体4をスライダ3の内部に収容してスライダ3の他方端に螺着可能で、前記バネ7の付勢力で内部弁体4のリング状パッキン5の端面5aを前記弁座3fに常に着座させている弁体押さえ6とからなり、
前記コックレバー13の下端に設けた作動杆13aが前記弁構造体12の貫通孔3d、4dに嵌入し、コックレバー13の傾倒動作と連動して前記弁構造体12全体または内部弁体4が前後動することで、前記主弁体1のパッキン1bが前記コック本体11の弁座11eから離れてビールの流路を形成するビールの抽出と、前記リング状パッキン5の端面5aが前記スライダ3の前記弁座3fから僅かな間隙3cを残して離れて泡の流路を形成する泡の抽出とを切り替える、
請求項1記載のビール抽出コック。
【請求項3】
上記弁棒2に設ける吐出孔2dの数が2〜4個である請求項1または請求項2記載のビール抽出コック。
【請求項4】
上記コックレバー13を一方に傾倒させたときには、その作動杆13aが弁構造体12の全体を進行させ、主弁体1のパッキン1bがビール供給路11bの弁座11eから離れて弁棒2の外側にビールの流路が形成され、ビール抽出口11cからビールが抽出され、前記コックレバー13を他方に傾倒したときには、その作動杆13aがスライダ3に内装された内部弁体4のみをバネ7の付勢力に抗して移動させ、内部弁体4の移動によりリング状パッキン5の端面5aが前記スライダ3の弁座3fから離れ、主弁体1の細孔1c、弁棒2の流路2cおよび吐出孔2d、スライダ3の段差部3aの内側に形成されるリング状パッキン5の端面5aとの間隙3c、内部弁体4の外周面とスライダ3の内周面の間に形成された流路4b、貫通孔3d、4dで形成された泡の流路を通じて肌理細かい泡が泡抽出口11dから生成、抽出される請求項2または請求項3記載のビール抽出コック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビール等のディスペンサーに取り付ける抽出コックの改良に関するもので、より肌理の細かい泡を発生できるようにした弁構造を有するビール抽出コックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビールディスペンサー(ビールサーバ)に取り付けて、コック本体に揺動自在に支持したレバーを操作し、例えばレバーを前方に倒したときはビールが飲料注出口から注ぎ出され、レバーを後方に倒したときにはビールの泡が泡抽出口からジョッキなどへ注ぎ出されるようにしたビール抽出コックが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1から3に開示されたものは、いずれも、ビール抽出口と泡抽出口の2種類の抽出口を個別に備え、ジョッキにビールを注いだ後で、細かい泡を後注ぎできるようにしている。これは、従来の抽出口が単一の抽出コックの場合、抽出口の内壁面にビールや泡が残留していると、次にビールを注いだ際、泡が多く発生してしまい易くビールの質が低下するからである。また、適度に泡立ったビールが飲む際の喉越しが良好であると共に、泡が蓋をすることでビールからの炭酸ガスの漏出を防止する役目を有するからである。そして、近年では、エンジェル・リングといわれる泡の跡がジョッキに残ることが良いとされ、より一層肌理の細かい泡を注げるようにすることが要求されている。
【0004】
従来の泡の抽出について説明すると、例えば特許文献1では、同公報の図6、7に示されているように(番号は同公報による。)、レバー18を後方へ傾倒させるとスライダ20がビール供給路12を左方向へ前進移動する。このとき弁棒34の位置は変わらないが、スライダ20に設けた第2弁座38は弁棒34に固定した第2弁体42から離間することになり、この第2弁体42に開設した細孔36を開放し、ビールは、第1弁体30を貫通する通孔31及び弁棒34の液体通路32を介して前記細孔36から流出しようとする。このとき細孔36は充分に小さい内径に設定してあるので、ビールはここで肌理の細かい泡となる。そして、この泡はスリーブ24に開設した通孔22を介して泡抽出ノズル16に入り、ジョッキのビールに後注ぎされる。
【0005】
また、特許文献2では、ほぼ同様の構成で(番号は同公報による。)、泡用流路6の終端部に泡抽出用の弁機構wを設け、ハンドルレバーを後傾させることによりこれを開弁させ、小径の開口60から泡が吐出し、泡抽出管45からジョッキ内に注がれる。
【0006】
さらに、特許文献3では、泡吐出用の弁構造が異なり(番号は同公報による。)、スライド弁13は泡用通路30の出口に当接することでその出口を閉じる弁面部39と、弁面部39から突出して泡用通路30内に挿入してある棒状突起41とを有し、棒状突起41と泡用通路30の内面との間には間隙42が介在している。そして、レバー11を後方に倒したときには、スライド弁13が泡用通路30の出口から離れて、発泡飲料が棒状突起41と泡用通路30の内面との間隙42を通って泡用通路30の出口から放出される。このとき発泡飲料が泡用通路30の出口から勢いよく放出して弁面部39に衝突し、これによって細かい泡を発生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−192098号公報
【特許文献2】特開2002−2886号公報
【特許文献3】特開2006−206157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年、ビールの質の改良が進んでおり、その温度、圧力や粘性などにより泡の発生の仕方が変化し、上述したような従来のビール抽出コックの弁構造では、必ずしも良質な細かい泡を発生させることが難しくなっている。
【0009】
また、特許文献1、2の弁構造では、細孔36を閉塞する第2弁体42や、小径の開口60を閉塞する弁体が、バネによって常に開口部に押し付けられて、その劣化が問題となっている。さらに、コックの操作によって、弁体が後退して細孔等を開放するのであるが、コックの操作如何によって弁体と細孔との距離が変化するので、常に一定の細かい泡を発生させるには、操作者の熟練を必要としていた。
【0010】
また、別の問題として、ビール自体を抽出する場合、例えば、特許文献2の図8に示されているように、コックの操作によっては、栓棒5の一部が吐出管43の上端部に突出する場合がある。そうすると、その突出部分によってビールに乱流が生じ渦を巻くような状態となって、不要な泡が生じてしまうこともあった。泡の状態のよってビールの味や喉越しが変化するため、このような乱流による不要な泡は、ビールの味に影響を与えるので、好ましいものではなかった。
【0011】
本発明は、係る実情に鑑みてなされたものであり、ビールディスペンサー等におけるビール抽出コックの弁構造について、誰にでも常に肌理の細かい泡を発生させることができるようにすると共に、ビールの抽出時にも、余計な泡を発生させないようにしたビール抽出コックの弁構造の改良を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、ビールサーバーに接続可能な接続部11aを有すると共に、内部軸方向にビール供給路11bを形成し、前記接続部11a側端部に弁座11eを形成し、前記ビール供給路11bと連通してビール抽出口11c及び泡抽出口11dを個別に備えたコック本体11と、このコック本体11のビール供給路11bに前記軸方向に沿って前後動可能に内蔵される弁構造体12と、前記コック本体11に取り付けられ、ビールと泡の抽出を切り替えるように上記弁構造体12を前後動操作するコックレバー13とを備えたビール抽出コックであって、前記弁構造体12は、前記コック本体11の弁座11eに着座するパッキン1bと細孔1cを備えた主弁体1と、この主弁体1を一方端に取り付ける弁棒2と、この弁棒2の他方端に一方端を取り付ける中空のスライダ3と、このスライダ3に摺動可能に内装される内部弁体4と、この内部弁体4の一方端に取り付けるリング状パッキン5と、前記内部弁体4の他方端に係着するバネ7を収容して前記スライダ3の他方端に取り付ける弁体押さえ6とからなり、前記弁棒2は、一方端に前記主弁体1に螺着可能な挿通部2aを有し、軸方向中心に前記挿通部2aから他方端を閉塞した閉塞端部2fにかけて流路2cを設けると共に前記閉塞端部2fにおいて中心から半径方向に向かって流路2cから外周面に開通する複数の吐出孔2dを円周方向に等間隔に設け、前記閉塞端部2fの一方端側に隣接してネジ部2eを設け、前記スライダ3は、中空円筒状で、前記弁棒2を取り付ける一方端には段差部3aを設けて、前記弁棒2の前記閉塞端部2fが前記段差部3aの内側に突出して前記ネジ部2eを挿入螺着する小径部3bを形成し、大径部分の周面に直径方向の貫通孔3dを設けると共にその内部に内部弁体4が摺動可能な内径を有する中空部3eを形成し、上記段差部3aの内側前記内部弁体4が前記バネ7により付勢されて前記リング状パッキン5の端面5aが着座する弁座3fとして、前記コックレバー13を泡の抽出側に操作することにより、前記バネ7の付勢に抗して前記リング状パッキン5の端面5aが前記弁座3fから離れて前記段差部3aの内側に泡の流路となる僅かな間隙3cを形成するという手段を採用した。
【0013】
また、具体的には、ビールサーバーに接続可能な接続部11aを有すると共に、内部軸方向にビール供給路11bを形成し、前記接続部11a側端部に弁座11eを形成し、前記ビール供給路11bと連通してビール抽出口11c及び泡抽出口11dを個別に備えたコック本体11と、このコック本体11のビール供給路11bに前記軸方向に沿って前後動可能に内蔵される弁構造体12と、前記コック本体11に取り付けられ、ビールと泡の抽出を切り替えるように上記弁構造体12を前後動操作するコックレバー13とを備えたビール抽出コックであって、前記弁構造体12は、略円錐状の頭部1aの後端に前記コック本体11の弁座11eに着座するパッキン1bを装着し、その軸方向中心に細孔1cを設け、この細孔1cと連通して挿通孔1dを設けた主弁体1と、一方端に前記主弁体1の挿通孔1dに螺着可能な挿通部2aを有し、軸方向中心に前記挿通部2aから他方端を閉塞した閉塞端部2fにかけて流路2cを設けると共に前記閉塞端部2fにおいて中心から半径方向に向かって流路2cから外周面に開通する複数の吐出孔2dを円周方向に等間隔に設け、前記閉塞端部2fの一方端側に隣接してネジ部2eを設けた弁棒2と、中空円筒状で、前記弁棒2のネジ部2eを螺着する一方端には段差部3aを設けて、前記閉塞端部2fが前記段差部3aの内側に突出して前記ネジ部2eを挿入螺着する小径部3bを形成し、大径部分の周面に直径方向の貫通孔3dを設けると共にその内部に内部弁体4が摺動可能な内径を有する中空部3eを形成し、前記段差部3aの内側は弁座3fとしたスライダ3と、前記スライダ3に内装され、円筒状本体4aは前記スライダ3の中空部3eの内径より僅かに小さな外径として両者間に流路4bを形成し、挿入側の一方端にはリング状パッキン5の収納部4cを設け、その周面に直径方向の貫通孔4dを設け、他方端にバネ受け突部4eを形成した内部弁体4と、一部を前記内部弁体4の収納部4cに収納可能で先端に露出する端面5aは前記スライダ3の前記弁座3fを閉塞可能としたリング状パッキン5と、前記内部弁体4のバネ受け突部4eに係着させるバネ7と、前記内部弁体4をスライダ3の内部に収容してスライダ3の他方端に螺着可能で、前記バネ7の付勢力で内部弁体4のリング状パッキン5の端面5aを前記弁座3fに常に着座させている弁体押さえ6とからなり、前記コックレバー13の下端に設けた作動杆13aが前記弁構造体12の貫通孔3d、4dに嵌入し、コックレバー13の傾倒動作と連動して前記弁構造体12全体または内部弁体4が前後動することで、前記主弁体1のパッキン1bが前記コック本体11の弁座11eから離れてビールの流路を形成するビールの抽出と、前記リング状パッキン5の端面5aが前記スライダ3の前記弁座3fから僅かな間隙3cを残して離れて泡の流路を形成する泡の抽出とを切り替えるという手段を採用した。
【0014】
これらの場合、上記弁棒2に設ける吐出孔2dの数は2〜4個であることが好ましい。
【0015】
そして、上記コックレバー13を一方に傾倒させたときには、その作動杆13aが弁構造体12の全体を進行させ、主弁体1のパッキン1bがビール供給路11bの弁座11eから離れて弁棒2の外側にビールの流路が形成され、ビール抽出口11cからビールが抽出され、前記コックレバー13を他方に傾倒したときには、その作動杆13aがスライダ3に内装された内部弁体4のみをバネ7の付勢力に抗して移動させ、内部弁体4の移動によりリング状パッキン5の端面5aが前記スライダ3の弁座3fから離れ、主弁体1の細孔1c、弁棒2の流路2cおよび吐出孔2d、スライダ3の段差部3aの内側に形成されるリング状パッキン5の端面5aとの間隙3c、内部弁体4の外周面とスライダ3の内周面の間に形成された流路4b、貫通孔3d、4dで形成された泡の流路を通じて肌理細かい泡が泡抽出口11dから生成、抽出されるという手段を採用した。
【発明の効果】
【0016】
上記構成に係る本発明のビール抽出コックは、弁構造体12を構成する弁棒2の軸方向中心に一方端から他方端を閉塞した閉塞端部2fにかけて流路2cを設けると共に前記閉塞端部2fにおいて中心から半径方向に向かって流路2cから外周面に開通する複数の吐出孔2dを円周方向に等間隔に設ける一方、弁棒2を螺着するスライダ3に設けた段差部3aの内側に僅かな間隙3cを形成して泡の流路としているので、主弁体1の細孔1cを通過したビールが該部で泡となり、さらに、前記吐出孔2dから狭い流路3cに均等に流出する際にさらに肌理の細かい泡を生成することが可能となった。
【0017】
また、この泡は、さらにスライダ3の中空部3eと内部弁体4の円筒状本体4aの間に形成される狭い流路4bを均等に通過することで、より細かくすることができる。
【0018】
これによって、簡単なコックレバー13の操作で、ビールの抽出と、肌理の細かい泡に抽出を行うことが可能となった。
【0019】
また、ビールを抽出する場合、スライダ3の一方端には段差部3aを設けて小径部3bを形成しているので、スライダ3本体の端部が、従来のようにビール抽出口11cの上端縁部に突出することが無く、該部でビールの乱流は発生しない。そのため、ビールに余分な泡が混じることがなく、喉越しの良いビールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(A)は、本発明のビール抽出コックに内蔵する弁構造体の分解図、(B)はその組立図である。
図2】ビール抽出コックの定常状態を示す断面図である。
図3】コックレバーを手前側に傾倒させた状態を示す断面図である。
図4】コックレバーを奥側に傾倒させた状態を示す断面図である。
図5図4における内部弁体の状態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るビール抽出コックについて、その好ましい実施形態を添付した図面に従って説明する。図2は、本発明に係る抽出コックの全体構成の断面を示し、図1はこの抽出コックに装着する弁構造体を構成する各部材を分解状態で示すものである。
【0022】
図1において、1は主弁体で、略円錐状の頭部1aの後端にリング状のパッキン1bを装着したものである。この主弁体1の軸方向中心には、先端に細孔1cが設けられ、これと連通して下述する弁棒2が螺着可能な挿通孔1dが設けられている。
【0023】
2は中空の弁棒であり、一方端には上記主弁体1の挿通孔1dに螺着可能な挿通部2aとパッキン押さえ2bが設けられている。また、弁棒2の軸方向中心には、前記挿通部2aから反対側の他方端を閉塞した閉塞端部2fにかけて泡の流路2cが設けられ、その閉塞端部2fには、中心から半径方向に向かって当該流路2cから外周面に開通する複数の吐出孔2dが設けられる。この吐出孔2dの数は2〜4個が好ましく、互いに円周方向に等間隔に設ける。本実施形態では、互いに120°の間隔をおいて3個の吐出孔を設けている。さらに、この弁棒2の他方端で上記閉塞端部2の一方端側に隣接して、下述するスライダ3に挿通螺合するネジ部2eが設けられている。
【0024】
3はスライダで、中空のほぼ円筒状であるが、前記弁棒2のネジ部2eを挿入螺着する一方端には段差部3aを設けて小径部3bを形成している。この小径部3bに弁棒2のネジ部2eを挿入螺着した場合、前記閉塞端部2fは小径部3bを貫通して、上記吐出孔2dは上記段差部3aの内側に開通すると共に、この段差部3aの内側には僅かな間隙を形成され、後述するようにビール泡の流路3cとなる。また、大径部分の周面には直径方向に貫通孔3dが設けられ、後述するコック本体11の泡抽出口11dに連通している。スライダ3の内部は下述する内部弁体4が自由に摺動可能な内径を有する中空部3eが形成され、上記小径部3bの段差部3aの内側はそのまま弁座3fを形成し、他方の端部には、下述する弁体押さえ6が螺合する構造となっている。
【0025】
4は上記スライダ3に内装される内部弁体であり、円筒状本体4aは、上記スライダ3の中空部3eの内径より僅かに小さな外径を有し、両者間には泡の流路4bが形成される。また、挿入側の一方端にはリング状パッキン5を収容するパッキン収納部4cが設けられている。また、その周面には直径方向に貫通孔4dが設けられ、前記スライダ3の貫通孔3bと連通可能としている。さらに、他方端にはバネ受け突部4eが形成されている。
【0026】
5はリング状パッキンで、その一部を内部弁体4のパッキン収納部4cに収納すると共に、その内側面には上記弁棒2の吐出孔2dを設けた閉塞端部2fが僅かな間隙を残して嵌入可能とし、先端に露出する端面5aは前記スライダ3の前記段差部3aの内側に形成される弁座3fを閉塞する。
【0027】
6は、上記内部弁体4をスライダ3内部に収容すべく、スライダ3の端部に螺着可能な弁体押さえであり、内面に上記内部弁体4のバネ受け突部4eに係着させるバネ7を収容し、このバネ7の付勢力によって、スライダ3内部で上記内部弁体4のリング状パッキン5の端面を弁座3fに常に着座させている。
【0028】
図1(B)は組立後の弁構造体の態様を示し、この状態で既存の抽出コック内に装着する。
【0029】
次に、上記構成の弁構造体を装着した抽出コックの動作について、図2図5に従って説明する。
【0030】
図2は抽出コックの定常状態を示し、この状態ではビールも泡も抽出されない。また、図3はコックレバー13を前側(図では左側)に傾倒させた状態を示し、ビールが抽出される状態を示している。一方、図4はコックレバー13を後側(右側)に傾倒させた状態を示し、泡を注ぎ足す状態を示している。
【0031】
各図において、この抽出コックは、ビールサーバーに接続可能な接続部11aを有するコック本体11と、このコック本体11に内蔵装着され、ビールや泡に流路を開閉する弁機構を有する上記構成の弁構造体12と、前後方向に傾倒可能でその操作によりビールと泡の抽出を切り替えることができるコックレバー13とから基本的に構成されている。コック本体11及びコックレバー13は従来既存のものが利用できる。
【0032】
そして、コック本体11は、その内部の軸方向に貫通する所定径のビール供給路11bと、このビール供給路11bから連通して、斜め下方へ2本、平行に分岐する、ビール抽出口11c及び泡抽出口11dとを備えている。ビール供給路11bの開放側端部には弁構造体12の主弁体1が着座する弁座11eが形成されている。また、コック本体11の上面には、立ち上がり部11fを分岐させ、コックレバー13が傾倒可能に取り付けられる。そして、このコックレバー13の傾倒動作と連動するように、ビール供給路11bに上述した構成の弁構造体12が内蔵されている。即ち、コックレバー13の下端に設けた作動杆13aが弁構造体12の貫通孔3d、4dに嵌入して、コックレバー13の傾動動作により、弁構造体12や内部弁体4が前後動することになる。このような抽出コックの基本的構成は、従来の抽出コックと基本的に変わるところはなく、その動作も、基本的に従来と同様であるが、本発明においては、上述した弁構造体12の弁構造にその特徴点があり、その構成を採用したことによって、より肌理の細かい良質の泡を生成することができるようになったものである。
【0033】
まず、図2の定常状態について説明する。この定常状態では、弁構造体12の主弁体1が図示しない適宜な手段で軸方向に付勢押圧され、そのパッキン1bがビール供給路11bの弁座11eに着座して該部を閉塞している。このため、ビールはビール供給路11b側に流れることはなく、ビール抽出口11cから抽出されない。また、スライダ3内において、内部弁体4に取り付けたリング状パッキン5の端面5aがバネ7の付勢力によって弁座3fに常に着座しているので、泡抽出口11dから泡が抽出されることもない。
【0034】
次に、図3に示すように、コックレバー13を手前側(左側)に傾倒させると、作動杆13aによって弁構造体12の全体が図の側に進行し、パッキン1bが弁座11eから離れ、該部にビールの流路が形成される。ビールはビール供給路11b内で弁棒2の外側を流れ、ビール抽出口11cから下方に置かれたジョッキに注がれることになる。一方、スライダ3内では、リング状パッキン5は着座したままであるから、この状態で泡が漏出することはない。
【0035】
また、この状態では、スライダ3の一方端には段差部3aを設けて小径部3bを形成しているので、スライダ3本体の端部が、ビール抽出口11cの上端縁部に突出することが無く、該部でビールの乱流は発生しない。そのため、ビールに余分な泡が混じることがなく、純粋にビールのみを注ぐことができる。
【0036】
続いて、コックレバー13を定常状態に戻し、さらに図4に示すように、奥側(右側)に傾倒させると、定常状態において、パッキン1bが弁座11eに着座するので、該部を閉塞してビールの供給を遮断すると共に、弁構造体12の全体は、それ以上移動しない。この状態でさらにコックレバー13を傾倒させると、コックレバー13の下端の作動杆13aがスライダ3に内装された内部弁体4のみを同じく内装されたバネ7の付勢力に抗してこのバネ7を圧縮するように作用し、内部弁体4のみが僅かに移動し、そのリング状パッキン5の端面5aが前記スライダ3の小径部3bの段差部3aの内側に形成される弁座3fから離れる。
【0037】
このときの該部の状態を図5によってさらに説明する。弁棒2は弁座11eに着座しているので、ビールの流路は形成されないが、主弁体1の先端に設けた細孔1cと、これと連通する弁棒2の流路2cによってビールの流路が形成され、細孔1cからより大径の流路2cにビールが流れることによって、流路2cには泡が充満している。さらに、弁棒2に設けられた流路2cの他方端側では、閉塞端部2fがスライダ3の小径部3bを貫通して、その半径方向で円周方向に等間隔に設けた吐出孔2dが段差部3aの内側に開通しており、上述のように、リング状パッキン5の端面5aはスライダ3の段差部3aの内側に形成した弁座3fから離れているので、泡は前記吐出孔2dから上記段差部3aの内側とリング状パッキン5の端面5aとの間の僅かな間隙3cを流路として均等に流れ、さらに内部弁体4の外周面とスライダ3の内周面のより僅かな間隙を流路4bとして均等に流れ、貫通孔3d、4dに流出し、この貫通孔3d、4cと連通する泡抽出口11dに流れ出す。そのため、吐出孔2dから流れ出た細かい泡は、これら狭い流路を順次通過することでより肌理の細かい良質の泡として生成されるのである。
【0038】
そして、コックレバー13を操作して、前記定常状態に戻せば、主弁体1及び内部弁体4はいずれも着座して、ビール及び泡の抽出は停止する。
【符号の説明】
【0039】
1 主弁体
1a 頭部
1b パッキン
1c 細孔
1d 挿通孔
2 弁棒
2a 挿通部
2c 流路
2d 吐出孔
2e ネジ部
3 スライダ
3a 段差部
3b 小径部
3c 流路
3d 貫通部
3e 中空部
3f 弁座
4 内部弁体
4a 円筒状本体
4b 流路
4c 収納部
4d 貫通部
4e バネ受け突部
5 リング状パッキン
5a 端面
6 弁体押さえ
7 バネ
11 コック本体
11a 接続部
11b ビール供給路
11c ビール抽出口
11d 泡抽出口
11e 弁座
11f 立ち上がり部
12 弁構造体
13 コックレバー
13a 作動杆
図1
図2
図3
図4
図5