特許第5993188号(P5993188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993188
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】海流発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/26 20060101AFI20160901BHJP
   F03B 3/04 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   F03B13/26
   F03B3/04
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-90190(P2012-90190)
(22)【出願日】2012年4月11日
(65)【公開番号】特開2013-217332(P2013-217332A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】503116899
【氏名又は名称】新潟原動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】長屋 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】南家 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】相澤 保夫
(72)【発明者】
【氏名】白石 浩一
(72)【発明者】
【氏名】井桁 正樹
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−523302(JP,A)
【文献】 特表2010−521607(JP,A)
【文献】 特表2002−535188(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0230686(US,A1)
【文献】 英国特許出願公開第02256011(GB,A)
【文献】 国際公開第2009/004308(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/26
F03B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中浮遊式の海流発電装置であって、
海流エネルギーにより回転するタービンが端部に設けられたタービン部と、
前記タービン部と連結部により連結された中心胴体と、
前記タービンの回転によるエネルギーを発電機に伝達するタービン軸系と、
前記タービンの回転軸が旋回するように前記タービン部を旋回させる旋回機構とを備え
前記旋回機構は、メンテナンス時に前記タービン全体が海面上に出るように、前記タービン部を旋回させる、海流発電装置。
【請求項2】
前記タービン部は、前記中心胴体を挟んで対で配置され、それぞれの前記タービンが互いに逆方向に回転する請求項1に記載の海流発電装置。
【請求項3】
前記旋回機構は、前記連結部を前記中心胴体に対して回転させて前記タービン部を旋回させる請求項1又は請求項2に記載の海流発電装置。
【請求項4】
前記旋回機構は、前記中心胴体を挟んで対で配置された前記タービン部を通る旋回軸を旋回の中心として前記タービン部を旋回させる請求項1又は請求項2に記載の海流発電装置。
【請求項5】
前記中心胴体は、発電機を内蔵する請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の海流発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海流発電装置に関し、特に、タービン部を旋回可能な海流発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料や原子力による発電の代替として、海流、潮流等の海流エネルギーを利用した発電が注目されている。海流エネルギーを利用した発電は、二酸化酸素や汚染物の排出等がないので、公害や汚染等の問題の解決につながる手段の一つであるといえる。
【0003】
海流エネルギーを利用した発電としては、海流発電装置を海中に浮遊させる海中浮遊式とし、タービンの回転モーメントを減殺するために、互いに逆方向に回転する2基のタービンを連結する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。海中浮遊式の海流発電装置は、海流エネルギーによってタービンが回転し、タービンの回転によって発生した電力を送電ケーブルにより地上に送電する。海中浮遊式の海流発電装置は、係留索によって海中に浮遊しているので風や波浪の影響を避けられる利点がある。しかしながら、海流の流向は一定ではなく変化するものなので、固定されたタービンの回転軸では海流の流向によってはタービンを効率よく回転させることができない場合があり、発電を効率よく行うことができないことがある。
【0004】
海中浮遊式の海流発電装置は、タービンに付着した生物の除去も含めたメンテナンスを行わなければならない。タービンのメンテナンスは、海流発電機を海面まで引き上げて行うことが通常である。タービンのメンテナンスをフロート上で作業をすることが可能な海流発電装置について提案されている(例えば、特許文献2参照。)。タービンのメンテナンスは、タービンを海上まで引き上げて行わなければならないが、海流発電装置を海上まで引き上げてもタービンの一部は海中に没したままになってしまうため、タービン全体のメンテナンスを行うことが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−266743号公報
【特許文献2】特開2011−132943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、タービン部を旋回可能とすることで、海流の流向の変化に対応して効率よく発電をすることができ、タービンのメンテナンスを容易に行うことができる海流発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の一態様によれば、海中浮遊式の海流発電装置であって、海流エネルギーにより回転するタービンが端部に設けられたタービン部と、前記タービン部と連結部により連結された中心胴体と、前記タービンの回転によるエネルギーを発電機に伝達するタービン軸系と、前記タービンの回転軸が旋回するように前記タービン部を旋回させる旋回機構とを備え、 前記旋回機構は、メンテナンス時に前記タービン全体が海面上に出るように、前記タービン部を旋回させることである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タービン部を旋回可能とすることで、海流の流向の変化に対応して効率よく発電をすることができ、タービンのメンテナンスを容易に行うことができる海流発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る海流発電装置の発電時の上面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る海流発電装置のメンテナンス時の上面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る海流発電装置のタービン軸系及び旋回機構を示す概念図である。
図4図4(a)は、本発明の実施の形態に係る海流発電装置の発電時の側面図であり、図4(b)は、本発明の実施の形態に係る海流発電装置のメンテナンス時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係る海流発電装置は、図1に示すように、海流エネルギーにより回転するタービン10が端部に設けられたタービン部1と、タービン部1と連結部21により連結された中心胴体2と、タービン10の回転によるエネルギーを発電機20に伝達するタービン軸系3と、タービン10の回転軸Aが旋回するようにタービン部1を旋回させる旋回機構4とを備える。海流発電装置は、図2に示すように、中心胴体2を挟んで対で配置されたタービン部1を通る旋回軸Bを旋回の中心としてタービン部1を旋回させることができる。
【0012】
タービン部1は、タービン10と、タービン10に接続されたタービン軸30を内蔵するタービン筐体11とを備える。タービン部1は、中心胴体2を挟んで対で配置され、それぞれのタービン10が互いに逆方向に回転する。海流発電装置は、左右に配置されたタービン10が互いに逆回転することで回転モーメントを打ち消すことができる双発タービン式である。
【0013】
中心胴体2は、タービン10の回転エネルギーにより発電する発電機20を内蔵する。中心胴体2の上流側端部には、係留索50が先端部に備えられており、係留索50をアンカー等と繋ぐことで海流発電装置を海中に係留することができる。また、中心胴体2の下流側端部近傍には、海流発電装置の海中での姿勢を安定させるために安定装置22が設けられている。
【0014】
タービン軸系3は、図3に示すように、タービン10に接続されたタービン軸30と、発電機20に接続された発電機軸31と、タービン軸30から発電機軸31へと動力を伝達する伝達ギア32a,32bとを備える。伝達ギア32aはタービン軸30に設けられ、伝達ギア32bは発電機軸31に設けられている。伝達ギア32a,32bは、直角に交わるタービン軸30から発電機軸31へと2軸間の動力を伝達するかさ歯車等である。
【0015】
旋回機構4は、図3に示すように、タービン部1を旋回させるための第1旋回ギア40と、第1旋回ギア40を回転させる第2旋回ギア41と、第2旋回ギア41を駆動させるモータ42とを備える。旋回機構4は、中心胴体2を挟んで対で配置されたタービン部1を通る旋回軸B(本実施例では、発電機軸31)を旋回の中心としてタービン10の回転軸Aを旋回させる。
【0016】
旋回機構4は、例えば、図3に示すような連結部21が回転円筒である場合、連結部21の外周に歯車が設けられてなる第1旋回ギア40を第2旋回ギア41で旋回させることによって、連結部21を回転させてタービン部1を旋回させることが可能な機構とすることができる。つまり、図3に示す旋回機構4は、連結部21を中心胴体2に対して回転させることでタービン部1を旋回させることができる機構である。
【0017】
実施の形態に係る海流発電装置の発電時は、図4(a)に示すように、海流エネルギーを安定して得られる黒潮等の海流が流れている箇所に浮遊させて係留されている。発電時の海流発電装置において、効率よく発電するためには、効率よくタービン10を回転させることが必要となるので、タービン10の回転軸Aは、海流の流向と平行なるように係留されることが好ましい。本実施の形態に係る海流発電装置のタービン部1は、回転軸Aを旋回させることが可能であるので、海流の流向の変化に併せて、海流と回転軸Aが平行となるように旋回させる。
【0018】
実施の形態に係る海流発電装置のメンテナンス時は、図4(b)に示すように、海流発電装置を海上に浮上させる。メンテナンス時の海流発電装置において、旋回機構4は、タービン10全体が海面上に出るように、タービン10の回転軸Aが海面に対して垂直になるようにタービン部1を旋回させる。
【0019】
実施の形態に係る海流発電装置によれば、タービン部1が旋回可能であるので、タービン10の回転軸Aを変化させることができ、海流の流向が変化しても、タービン10に流入する流れを最適にすることができる。したがって、実施の形態に係る海流発電装置によれば、常にタービン10に流入する流れを最適にすることができるので、海流の流向が変化しても効率よく発電をすることができる。
【0020】
更に、実施の形態に係る海流発電装置によれば、タービン部1が旋回可能であるので、タービン10のメンテナンスを行うために、海流発電装置を海上まで引き上げた際には、タービン10の回転軸Aが海面に対して垂直になるように旋回することでタービン10の全体を海上に浮上させることができる。したがって、実施の形態に係る海流発電装置によれば、メンテナンス時にタービン10の全体を海上に浮上させることができるので、タービン10に付着した生物の除去も含めたメンテナンスを容易に行うことができる。
【0021】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。
【0022】
例えば、実施の形態においては、連結部21を旋回させることでタービン部1を旋回する機構で説明したが、連結部21から旋回するのではなく、タービン部1のみが旋回する機構であっても構わない。
【0023】
また、実施の形態においては、海流発電装置を双発タービン式として説明をしたが、2重反転タービン式であっても構わない。海流発電装置が2重反転タービン式である場合には、2重反転タービンで回転モーメントを打ち消すので、中心胴体2を挟んで対で配置する必要がなくなり、タービンは単数や奇数個であっても構わない。
【0024】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0025】
A…タービンの回転軸
B…タービン部の旋回軸
1…タービン部
2…中心胴体
3…タービン軸系
4…旋回機構
10…タービン
11…タービン筐体
20…発電機
21…連結部
22…安定装置
30…タービン軸
31…発電機軸
32a,32b…伝達ギア
40…第1旋回ギア
41…第2旋回ギア
42…モータ
50…係留索
図1
図2
図3
図4