(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筆記芯の前進を許容し後退を阻止するボールチャックが軸筒内に収容され、前記ボールチャックに把持された前記筆記芯が受ける筆記圧による軸方向の後退動作および/または筆記圧の解除による軸方向の前進動作を受けて、回転カムを一方向に回転駆動させる回転駆動機構が具備されたシャープペンシルであって、
前記回転駆動機構は、前記ボールチャックに対して、軸方向の後部に配置されて、ボールチャックの後端部側において第1の中継部材および第2の中継部材を介して前記回転駆動機構の回転カムに連結されており、
前記ボールチャックに対して軸方向に相対移動し、前記筆記芯の繰り出し部分を備えた筆記芯の先端ガイド部材には、前記筆記芯に摺接する保持チャックが備えられ、かつ前記先端ガイド部材にはスプリングにより軸方向の前方に押し出す付勢力が与えられ、
筆記の進行に伴う筆記芯の摩耗により、前記先端ガイド部材が除々に後退すると共に、筆記圧の解除に伴う前記スプリングによる先端ガイド部材に備えた保持チャックの前進動作で、筆記芯を前記ボールチャックから引き出すように構成され、
前記先端ガイド部材が前記第1の中継部材に接すると共に、第1の中継部材に前記ボールチャックが取り付けられ、前記回転カムにより互いに回転駆動を受ける前記ボールチャックと前記先端ガイド部材とによって、前記筆記芯を支持したことを特徴とするシャープペンシル。
前記筆記芯の先端ガイド部材は、前記筆記芯が繰り出される先端パイプが取り付けられたスライダであり、前記先端パイプの直後における前記スライダ内に、前記保持チャックが収容されていることを特徴とする請求項1に記載されたシャープペンシル。
前記軸筒の一部に配置されたノック部のノック操作により前記ボールチャックが軸方向に前後動するように構成され、前記ボールチャックの前進による筆記芯の把持作用および前記ボールチャックの後退による筆記芯の解除作用により、前記筆記芯を前方に繰り出すことができるように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたシャープペンシル。
前記回転駆動機構を構成する前記回転カムは、前記筆記芯が受ける筆記圧に基づいて軸方向に後退し、前記筆記圧の解除により軸方向に前進する動作がなされ、かつ前記回転カムの軸方向に直交する上下面にはそれぞれカム面が形成されると共に、前記回転カムの上下のカム面を挟むように対峙して配置された第1固定カム面および第2固定カム面が具備され、前記第1固定カム面は前記回転カムの軸方向の後退動作により当該回転カムの上側のカム面に噛み合って、前記回転カムを一方向に回転駆動させると共に、前記第2固定カム面は前記回転カムの軸方向の前進動作により当該回転カムの下側のカム面に噛み合って、前記回転カムを前記一方向に回転駆動させることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載されたシャープペンシル。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明に係るシャープペンシルの実施の形態について、図に基づいて説明する。なお以下に示す各図においては、同一部分を同一符号で示しているが、紙面の都合により一部の図面においては、その代表的な部分に符号を付け、その詳細な構成はその他の図面に付けた符号を引用して個々に説明することにする。
【0017】
シャープペンシルの前半部を示す
図1、
図3および
図4において、符号1はシャープペンシルの外郭を構成する軸筒、すなわち先軸であり、この先軸1の前端部の内周面に、口先部2が螺合されることで、口先部2が先軸1に着脱可能に取り付けられている。
【0018】
前記口先部2は前方に向かって内径が段状に細くなるように構成されており、その内部には筆記芯の先端ガイド部材として機能するスライダ3が軸方向にスライド可能に、また軸回転が可能となるように収容されている。なお、前記スライダ3も前方に向かって外径が段状に細くなるように構成されており、スライダ3の先端部3aは円柱状に形成されて、前記口先部2の前端部に筒状に形成された孔より突出した状態で収容されている。
【0019】
前記スライダ3の円柱状の先端部3aには、筆記芯Lを案内する先端パイプ4が取り付けられており、前記スライダ3と先端パイプ4とにより筆記芯の先端ガイド部材を構成している。
また、前記スライダ3の内部空間における前記先端パイプ4の直後には、中央に通孔を形成したゴム製の保持チャック5が収容されており、この保持チャック5の前記通孔が前記筆記芯Lの周面に摺接して筆記芯を一時的に摩擦により保持するように作用する。
【0020】
すなわち、この実施の形態においては筆記芯Lの繰り出し部分としての先端パイプ4およびこれを支持するスライダ3とによる筆記芯の先端ガイド部材には、前記筆記芯Lに摺接する保持チャック5が備えられており、この保持チャック5が前記筆記芯Lの周面に摺接した状態になされている。
【0021】
前記スライダ3には、リング状にしてその一部が周面側に突出する突出部6aを備えたリング部材6が、軸回転が可能なスライダ3に対して遊嵌しており、前記リング部材6の周面側に突出する突出部6aに、前記口先部2の周面の一部を覆うようにして配置された環状の触指部材7が取り付けられている。
すなわち、前記リング部材6の周面側に突出する突出部6aは、
図1に示すように前記口先部2に軸方向に形成された溝部2aに入り込んで軸方向に移動可能となるように配置されており、前記リング部材6は軸回転が可能なスライダ3に対して、すべりをもって遊嵌している。
【0022】
したがって、環状の触指部材7を軸方向の後方に向かって、指先などで押し上げる操作をすることにより、前記リング部材6は前記スライダ3を、軸方向の後方に向かってスライド動作させることができる。
【0023】
前記スライダ3の内部空間には、前記筆記芯Lを把持するボールチャック9が配置されている。このボールチャック9は、円筒状に形成されて内周面が前方に向かって広がるテーパ面を備えた締め具10と、この締め具10内に収容され、軸芯に沿って前記筆記芯Lの通孔が形成されると共に、その先端部が軸方向に沿って複数に分割されたチャック本体部11と、前記チャック本体部11の外周面と前記締め具10の内周面との間に配置された複数のボール12とを備えた構成にされている。
なお、前記締め具10の前端部の内周面には、前記チャック本体部11が所定よりも前進するのを阻止すると共に、前記ボール12が脱落するのを阻止する環状のストッパ部材13が嵌め込まれている。
【0024】
したがって、前記ボールチャック9は、前記筆記芯Lに筆記圧が加わった場合には、チャック本体部11がボール12と共に円筒状の締め具10内のテーパ面に当接するために筆記芯Lはチャック本体部11によって把持される。これにより、ボールチャック9において筆記芯Lの後退は阻止される。
一方、前記筆記芯Lを前方に引き出す力が働く場合には、チャック本体部11は前記締め具10による作用を受けないために、筆記芯Lを比較的抵抗なく前方に引き出すことができる。すなわち、ボールチャック9は、前記筆記芯Lの前進を許容し後退を阻止するように作用する。
【0025】
前記チャック本体部11は、長さ方向の中央部は外径が縮小され、後端部において大径に成形されている。
そして、チャック本体部11の長さ方向の中央部を取り囲むようにしてコイル状のスプリング14が配置されており、このスプリング14の前端は前記締め具10の内周面に形成された段部に係合し、スプリング14の後端はチャック本体部11の後端側の大径部に当接した状態になされている。
【0026】
したがって、前記スプリング14は、軸方向の拡開作用によって、前記チャック本体部11を後方に付勢するように働き、これにより前記ボールチャック9は、筆記芯Lを把持した状態になされる。よって前記スプリング14を便宜上、チャック用スプリングと称呼する。
【0027】
なお、前記ボールチャック9を構成する締め具10の外周面に対して前記スライダ3は軸方向にスライド可能に構成されており、前記締め具10は、その後端部側において円筒状に形成された第1の中継部材16の内周面に嵌合されて取り付けられている。また前記第1の中継部材16は、その長さ方向のほぼ中央部において円筒状に形成された第2の中継部材17の内周面に嵌合されて取り付けられている。
そして、第2の中継部材17の後端部内周面には、可撓性の素材、例えば合成樹脂により成形された短軸状の中継パイプ18が接続されおり、この短軸状の中継パイプ18は後述する回転駆動機構に連結されている。
【0028】
前記した第2の中継部材17は、その前端部側において内径が若干太く成形され、前記スライダ3の後端部をスライドが可能となるように覆っている。そして、内径が若干太く成形された前記中継部材17の前端部と、前記した第1の中継部材16との間の空間部には、スプリング20が収容されている。すなわち、このスプリング20は前記スライダ3を前方に押し出すように作用するものであり、前記スプリング20を便宜上、スライダ押し出し用スプリングと称呼する。
【0029】
一方、前記した第1中継部材16の後端部側の空間内には、筆記芯Lの通孔を備えた円筒体22がスライド可能に収容されている。この円筒体22の後端部には、芯ケース23が嵌合されて取り付けられており、後述するノック操作による芯ケース23の前進動作に伴って、前記円筒体22の前端部が前記チャック本体部11に当接し、当該チャック本体部11を前方に押し出すように作用する。したがって、前記円筒体22を便宜上、ノック伝達用円筒体と称呼する。
【0030】
また、前記した第2の中継部材17の前端部側において、内径が若干太く成形されることにより作られた段部17aと、前記先軸1の後端部側の内周面に形成された縮径部1aとの間の軸方向の空間部には、コイルスプリングによる重り24が軸方向に移動可能に収容されている。
このコイルスプリングによる重り24は、後述するように前記軸筒を軸方向に振った時の前記重り24の慣性力が、第2の中継部材17を前方に押し出すように働き、結果として前記したボールチャック9を瞬間的に前進動作させるように作用するものとなる。
【0031】
図2に示すシャープペンシルの後半部の構成において、前記した先軸1の後端部には、軸筒を構成する後軸25が嵌合されて取り付けられている。また後軸25の外側を覆うようにしてクリップ部26aが一体に成形された外軸26が装着されており、この外軸26は、前記後軸25の後端部に螺着された止めリング27によって取り付けられている。
【0032】
前記後軸25の内部空間には回転駆動機構29が収容されている。この回転駆動機構29はユニット化されており、この回転駆動機構29に前記した合成樹脂により成形された短軸状の中継パイプ18の後端部が接続されている。
そして、前記回転駆動機構29は、
図2に示されているとおり、先軸1の後端部との間に介在された軸スプリング30によって後方に押し付けられ、前記後軸25内の縮径により形成された段部25aに、前記軸スプリング30の付勢力によって押し当てられている。これにより回転駆動機構29は後軸25内に固定されている。
なお、前記した回転駆動機構29の構成および作用については、
図5〜7に基づいて後で詳細に説明する。
【0033】
前記後軸25の後端部内には、ノック部材としてのノック棒31が後軸25に対して軸方向に摺動可能に取り付けられており、後軸25とノック棒31との間の空間部にはノック棒の戻しスプリング32が配置されている。
そして、ノック棒31の中央よりも若干後端部寄りには、筆記芯の補給孔を備えた隔壁部31aが形成されている。なお、ノック棒31の後端部には、消しゴム33が着脱可能に装着されると共に、消しゴム33を覆うノックカバー34がノック棒31の後端部の周面に着脱可能に取り付けられている。
また、前記芯ケース23の後端部には、短軸の円筒部材35が取り付けられており、前記ノックカバー34をノック操作することにより、前記ノック棒31の隔壁部31aが円筒部材35を前方に押し出し、これに伴って芯ケース23も前進するように動作する。
【0034】
これにより、芯ケース23の前端部に取り付けられたノック伝達用円筒体22が前進し、この円筒体22の後端部側に形成された段部22aが、前記第1中継部材16の後端部に当接して、この第1中継部材16を前進動作させる。
第1中継部材16と第2中継部材17とは前記したとおり嵌合により取り付けられており、第1中継部材16の前進により第2中継部材17も前進して、第2中継部材17の先端部が前記口先部2の後端部に当接する。
【0035】
この状態に至るまではチャック本体部11は、開いておらず、筆記芯Lを銜えたまま前進動作し、筆記芯Lを先端パイプ4より繰り出させるように作用する。
さらにノック操作の継続により前記円筒体22が前進動作することで、円筒体22の先端部がチャック本体部11の後端部に当接して、チャック本体部11が開きつつ前進動作がなされる。
そして、前記したノック操作の解除によりノック棒31は、戻しスプリング32の作用により後退して
図2に示す状態に復帰する。
【0036】
この時、前記チャック本体部11は前記チャック用スプリング14の作用により後退するが、筆記芯Lはスライダ3内に収容された前記保持チャック5の摩擦によって保持されるため、チャック本体部11の後退動作にもかかわらず、筆記芯Lはチャック本体部11から引き出され、先端パイプ4から繰り出された状態を維持する。したがって、前記したノック操作を繰り返すごとに、筆記芯Lを所定量ずつ繰り出すことができる。
また、前記ノックカバー34をノックした状態に維持することで、チャック本体部11は芯Lの把持を解除するので、先端パイプ4から繰り出された状態の筆記芯Lを指先等で押し戻すことができる。
【0037】
前記したシャープペンシルにおいては、
図2に示したように後軸25内に回転駆動機構29が収容されている。
この回転駆動機構29には、回転カムが具備され、前記したボールチャック9に把持された前記筆記芯Lが受ける筆記圧による軸方向の後退動作および筆記圧の解除による軸方向の前進動作を受けて前記回転カムを一方向に回転駆動させるように作用する。
【0038】
すなわち、前記筆記芯Lが筆記圧を受けた場合には、
図1、
図3および
図4に示すチャック本体部11が若干後退し、ボール12を介して締め具10も後退する。前記締め具10には、第1中継部材16、第2中継部材17、中継パイプ18が連結されており、筆記圧を受けた場合の筆記芯Lの後退動作および前進動作(以下、これをクッション動作とも言う。)は、前記各部材を介して前記した回転駆動機構29に伝達される。
【0039】
図5は、前記回転駆動機構29の全体構成を断面図で示したものである。
図5に示す前記中継パイプ18は前記した芯ケース23を覆うようにして同軸状に配置されており、当該中継パイプ18は、筆記動作に基づく筆記芯の後退および前進動作(クッション動作)を回転駆動機構29に伝達させると共に、前記クッション動作によって生ずる前記回転駆動機構21における回転カムの回転運動を前記中継パイプ18を介して前記ボールチャック9およびスライダ3等に伝達させるように作用する。
【0040】
この回転駆動機構29には円筒状に形成された回転カム40が具備されており、前記した中継パイプ18は、回転駆動機構29の前端部において、前記回転カム40の内周面に嵌合することで結合されている。
前記回転カム40は、その前端部付近が若干径を太くした太径部になされ、その太径部の一端面(後端面)には第1のカム面40aが形成されており、太径部の他端面(前端面)には第2のカム面40bが形成されている。
【0041】
一方、前記回転カム40の後端部側を覆うようにして円筒状の第1固定カム形成部材(上カム形成部材とも言う。)41が、前記回転カム40を回動可能に保持して配置されており、前記上カム形成部材41の前端部外周には、円筒状の第2固定カム形成部材(下カム形成部材とも言う。)42が、上カム形成部材41に嵌合されて取り付けられている。
【0042】
そして、前記回転カム40における第1のカム面40aに対峙する上カム形成部材41の前端面に、固定カム面(第1の固定カム面とも言う。)41aが形成されている。また、前記回転カム40における第2のカム面40bに対峙する下カム形成部材42の前端部内面に、固定カム面(第2の固定カム面とも言う。)42aが形成されている。
【0043】
なお、前記回転カム40に形成されている第1と第2のカム面40a,40bと、前記第1の固定カム面41a、第2の固定カム面42aとの関係および相互の作用については、
図6および
図7に基づいて後で詳細に説明する。
【0044】
図5に示すように、前記した上カム形成部材41の後端部側には、シリンダー部材44が嵌め込まれており、このシリンダー部材44の後端部には芯ケース23が挿通できる挿通孔44aが形成されている。そして、前記シリンダー部材44内には円筒状に形成されて軸方向に移動可能なトルクキャンセラー45が配置され、当該トルクキャンセラー45の内周面前端と前記シリンダー部材44の内周面後端との間にはコイル状のクッションスプリング46が装着されている。
【0045】
前記クッションスプリング46は、前記トルクキャンセラー45を前方に付勢するように作用し、この付勢力を受けた前記トルクキャンセラー45に押されて前記回転カム40は前方に向かうように作用する。
前記した回転駆動機構29は、その中央部が芯ケース23を通す空間部になされて芯ケース23とは隔離されており、前記した符号40〜46で示す各部材により一体に結合されてユニット化されている。
【0046】
前記した回転駆動機構29の構成によると、前記ボールチャック9が筆記芯Lを把持した状態で、前記回転カム40は中継パイプ18、第2中継部材17および第1中継部材16を介してボールチャック9、スライダ3と共に軸芯を中心にして回転可能になされている。そして、シャープペンシルが筆記状態以外の場合においては、前記クッションスプリング46の作用により前記トルクキャンセラー45を介して回転カム40は前方に付勢されている。
【0047】
一方、シャープペンシルにより筆記を行った場合、すなわち先端パイプ4から突出している筆記芯Lに筆記圧が加わった場合には、前記ボールチャック9は前記クッションスプリング46の付勢力に抗して若干後退し、これに伴って回転カム40も軸方向に後退する。したがって、
図5に示す回転カム40に形成された第1のカム面40aは前記第1の固定カム面41aに接合して噛み合い状態になされる。
【0048】
図6(A)〜(C)および
図7(D),(E)は、前記した動作により回転カム40を回転駆動させる回転駆動機構29の基本動作を順を追って説明するものである。
図6および
図7において、符号40は前記した回転カムを模式的に示したものであり、その一端面(図の上側の面)には、周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第1のカム面40aが円環状に形成されている。また回転カム40の他端面(図の下側の面)にも、同様に周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第2のカム面40bが円環状に形成されている。
【0049】
一方、
図6および
図7に示すように、上カム形成部材41の円環状の端面にも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第1の固定カム面41aが形成されており、下カム形成部材42の円環状の端面にも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされた第2の固定カム面42aが形成されている。
【0050】
そして、回転カム40に形成された第1のカム面40a、第2のカム面40b、上カム形成部材41に形成された第1の固定カム面41a、下カム形成部材42に形成された第2の固定カム面42aの周方向に沿って鋸歯状に形成された各カム面は、そのピッチが互いにほぼ同一となるように形成されている。なお、
図6および
図7における回転カム40の中央部に描いた○印は、回転カム40の回転移動状態を示している。
【0051】
図6(A)は、シャープペンシルが筆記状態以外、すなわち筆記圧が加わらない場合における上カム形成部材41、回転カム40、下カム形成部材42の関係を示したものである。この状態においては、
図4に示したクッションスプリング46の付勢力により、回転カム40に形成された第2のカム面40bは、下カム形成部材42の第2の固定カム面42a側に当接されている。
この時、前記回転カム40側の第1カム面40aと前記第1の固定カム面41aが、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
【0052】
図6(B)は、シャープペンシルの使用により筆記芯Lに筆記圧が加わった初期の状態を示している。この場合においては、ボールチャック9および中継パイプ18等を介して、回転カム40はクッションスプリング46を収縮させて軸方向に後退する。これにより、回転カム40は上カム形成部材41側に移動する。
【0053】
図6(C)は、シャープペンシルの使用により筆記芯Lに筆記圧が加わり、回転カム40が上カム形成部材41側に当接した状態を示しており、この場合においては回転カム40に形成された第1カム面40aが、上カム形成部材41側の第1の固定カム面41aに噛み合う。これにより回転カム40は第1カム面40aの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する回転駆動を受ける。
この
図6(C)に示す状態においては、前記回転カム40側の第2カム面40bと前記第2の固定カム面42aが、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
【0054】
次に
図7(D)は、シャープペンシルによる筆記が終わり、筆記芯Lに対する筆記圧が解かれた初期の状態を示しており、この場合においては、前記したクッションスプリング46の作用により回転カム40は軸方向に前進する。これにより回転カム40は下カム形成部材42側に移動する。
【0055】
さらに
図7(E)は、前記したクッションスプリング46の作用により、回転カム40が下カム形成部材42側に当接した状態を示しており、この場合においては回転カム40に形成された第2カム面40bが、下カム形成部材42側の第2の固定カム面42aに噛み合う。これにより回転カム40は第2カム面40bの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する回転駆動を再び受ける。
【0056】
したがって、回転カム40の中央部に描いた○印で示すように、筆記圧を受けた回転カム40の軸方向への往復運動に伴って回転カム40は、第1および第2カム面40a,40bの一歯(1ピッチ)に相当する回転駆動を受ける。
これにより、前記した中継パイプ18、第2中継部材17および第1中継部材16を介してボールチャック9に把持された筆記芯Lも、前記スライダ3と共に回転駆動を受けることになる。
【0057】
なお、
図5に示した回転駆動機構29において、コイル状のクッションスプリング46の付勢力を受けて回転カム40を前方に押し出す円筒状のトルクキャンセラー45は、このトルクキャンセラー45の前端面と前記回転カム40の後端面との間ですべりを発生させて、前記回転カム40の回転運動をクッションスプリング46に伝達させるのを防止させるように作用する。
【0058】
換言すれば、前記回転カム40とクッションスプリング46との間に、トルクキャンセラー45が介在されることにより、前記回転カム40の回転運動が前記したすべり作用により前記クッションスプリング46に伝達されるのを阻止するように作用する。これにより、スプリング46の捩じれ戻り(バネトルク)が発生して、回転カム40の回転動作に障害を与えるという問題を解消させることができる。
【0059】
前記した筆記芯の回転駆動機構29を備えたシャープペンシルによると、ボールチャック9に把持された筆記芯Lは、自身が受ける回転運動と筆記による摩耗とにより、先端部が常に円錐形状になされる。それ故、書き
進むにしたがって筆記芯Lが偏摩耗するのを防止することができ、安定した線幅による筆記が可能となる。
【0060】
加えて、前記した構成のシャープペンシルにおいては、前記ボールチャック9に対して軸方向に相対移動するスライダ3および先端パイプ4からなる先端ガイド部材に、保持チャック5が備えられ、前記先端ガイド部材はスプリング20により軸方向に押し出す付勢力が与えられているので、筆記の進行に伴って筆記芯Lが摩耗すると、先端パイプ4がスライダ3と共に除々に後退する。
【0061】
そして、筆記圧が解除された瞬間にスライダ3および先端パイプ4による先端ガイド部材がスプリング20の作用によって前進するので、スライダ3に配置された保持チャック5も前進し、これにより筆記芯Lが前記ボールチャック9から引き出される。
したがって、筆記により摩耗した分に相当する筆記芯が自動的に繰り出されることになり、筆記芯Lを繰り出すために前記したノックカバー34を特別にノック操作しなくても筆記を継続することが可能であり、前記した発明の効果の欄に記載した作用効果を得ることができる。
【0062】
また、この実施の形態においては、口先部2の周面の一部を覆うように環状の触指部材7が取り付けられており、この触指部材7を軸方向の後方に向かって指先などで押し上げる操作をすることにより、前記したスライダ3を後方に向かってスライドさせることができる。そして、前記触指部材7の押し上げ動作後には、前記スプリング20の作用によりスライダ3は前進するので、保持チャック5に摩擦により保持された筆記芯Lは前記ボールチャック9から引き出される。
【0063】
したがって、この実施の形態によると、前記した触指部材7を操作することによっても、筆記芯Lを繰り出すことができる。
しかも、この実施の形態においては、前記触指部材7は口先部2付近に配置されているので、軸筒を把持したままの筆記の態勢の状態で、例えば人差し指により触指部材7を軸方向に若干押し上げる操作によって、筆記芯Lを先端パイプ4より繰り出すことが可能となり、能率を落とすことなく筆記を継続することができる。
【0064】
さらに、この構成のシャープペンシルにおいては、軸筒1,25内に重り24が収容され、軸筒を軸方向に振ることにより、前記重り24の慣性力によって、第2の中継部材17を前方に押し出すように働き、結果として前記したボールチャック9を瞬間的に前進動作させるように作用する。
したがって、ボールチャック9の瞬間的な前進動作と、スプリング20による戻り動作によって、前記保持チャック5を備えたスライダ3と、ボールチャック9との間で相対移動が生じ、これにより前記筆記芯Lを先端パイプ4から繰り出すことができる。
【0065】
したがって、前記したシャープペンシルの実施の形態によれば、筆記芯Lの繰り出し操作に前記したノックカバー34をノックする操作も含めて4種類の動作を実現させることが可能であり、利用者は時と場合に応じて、最適な筆記芯Lの繰り出し操作を選択することができる。
【0066】
なお、以上説明した実施の形態においては、回転カムを回転駆動させる回転駆動機構29において、ボールチャック9に把持された筆記芯Lが受ける筆記圧による回転カム40の軸方向の後退動作および筆記圧の解除による回転カム40の軸方向の前進動作を受けて、それぞれ前記回転カムを一方向に回転させるように構成されている。
しかしながら、これは筆記芯が受ける筆記圧による回転カムの軸方向の後退動作時のみにおいて前記回転カムを一方向に回転させるように構成されていてもよく、また筆記圧の解除による回転カムの軸方向の前進動作時のみにおいて前記回転カムを一方向に回転させるように構成されていても同様の作用効果を得ることができる。
【0067】
また、前記した実施の形態における回転駆動機構29においては、回転カム40の軸方向に直交する上下面にそれぞれ円環状に連続した多数のカム面40a,40bを形成させると共に、前記回転カム40の上下のカム面を挟むように対峙して配置された第1および第2固定カム面41a,42aにも、それぞれ円環状に連続した多数のカム面を形成させた構成にされている。
しかしながら、回転カム40の上側のカム面40a、もしくはこれに対峙して配置された第1固定カム面41aのいずれか一方に、連続した多数のカム面を形成させると共に、他方は少数のカム面を一か所において、もしくは間欠的に形成した構成においても同様の作用効果を得ることができる。
【0068】
また同様に、回転カム40の下側のカム面40b、もしくはこれに対峙して配置された第2固定カム面42aのいずれか一方に、連続した多数のカム面を形成させると共に、他方は少数のカム面を一か所において、もしくは間欠的に形成した構成においても同様の作用効果を得ることができる。
要するに、対峙する回転カム側および固定カム側のいずれか一方に連続した多数のカム面を形成させると共に、他方は連続した前記多数のカム面の一部に噛み合う少数のカム面を形成する構成を採用しても、同様の作用効果を得ることができる。