特許第5993205号(P5993205)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993205
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】対太陽光部材の形成方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20160901BHJP
   E06B 3/70 20060101ALI20160901BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20160901BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   G02B5/22
   E06B3/70 D
   B32B5/02 Z
   B32B7/02 103
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-114453(P2012-114453)
(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2013-242372(P2013-242372A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】512060851
【氏名又は名称】株式会社スマートコートPRO
(73)【特許権者】
【識別番号】512130523
【氏名又は名称】大島 康正
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 康正
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−133586(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/114792(WO,A1)
【文献】 特開2010−077408(JP,A)
【文献】 特開2011−093280(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0220388(US,A1)
【文献】 特開2008−281906(JP,A)
【文献】 特開2008−191395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
B32B 5/02
B32B 7/02
E06B 3/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の透明板の表面に、太陽光の透過量を減衰するためのもので複数の通孔が形成されたペーパー状部材を配置する第1の工程と、
前記ペーパー状部材に対し前記透明板とは反対側から赤外線及び/又は紫外線を遮蔽若しくは抑制する機能を備える薬液を供給する第2の工程と、
前記薬液を固体化させて前記ペーパー状部材と前記透明板とを接着させる第3の工程とを経ることにより、
前記透明板に赤外線及び/又は紫外線を遮蔽若しくは抑制する機能を少なくとも備えた対太陽光層が配された対太陽光部材と成すことを特徴とする対太陽光部材の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽光(日射とも称する。以下同じ。)が当たる場所に配置されることで、太陽光の透過量の減衰、特に太陽光の赤外線、紫外線を遮断・抑制することが可能な対太陽光層を有する対太陽光部材を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットやデパートメント等の建造物で食品売り場が入っている場合に、当該建造物の側壁や天井等の開口部に透明窓ガラスや透明樹脂板等が装着されているときには、透明窓ガラスや透明樹脂板等を透過してきた太陽光が売り場に陳列された食品、特に野菜、果実や魚介類等の生鮮食品に当たると、これらの生鮮食品が温められる等して生鮮食品の痛みが早くなるという不具合がある。
【0003】
このような建造物の側壁や天井等の開口部に透明窓ガラスや透明樹脂板等が装着されていることによる不具合は、太陽光による日焼けで色あせする衣類等の商品が陳列された売り場等でも同様に生ずる。
【0004】
これらの不具合を解消する手段としては、透明窓ガラスや透明樹脂板等に代えて、例えば特許文献1や特許文献2に示されるような、太陽光の赤外線や紫外線を遮蔽することが可能なUV(紫外線)カット窓ガラスや、IR(赤外線)カット窓ガラスを用いることが考えられる。
【0005】
また、既に建造物の側壁や天井の開口部に取り付けられた透明窓ガラスの表面に対して、例えば特許文献3に示されるような、熱線吸収剤を主成分とする熱線コーティング剤を塗布することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−348145号公報
【特許文献2】特開2011−116588号公報
【特許文献3】特開2008−247623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示されるようなUVカット窓ガラスや、特許文献2に示されるようなIRカット窓ガラスを用いる場合には、建造物の建設時に最初からUVカット窓ガラスやIRカット窓ガラスを装着するのであれば良いが、既存の建造物にあっては、建造物の側壁や天井に取り付けられた透明ガラスからUVカット窓ガラスやIRカット窓ガラスに交換しなければならず、窓ガラスの交換作業が煩雑で、また高コストであるという不都合が生じ、且つ透明窓ガラスを廃棄する場合には資源の無駄も生ずる。このような不都合は曇りガラスを用いる場合にも生ずる。
【0008】
これに対し、既に建造物の側壁や天井の開口部に装着された透明窓ガラスの表面に対し、例えば特許文献3に示されるような熱線吸収剤を主成分とするコーティング剤を塗布する手段を用いた場合には、上記の不都合は生じないものの、透明窓ガラスの表面にこれらのコーティング剤を均一に塗布することは熟練の者でなければ容易ではなく、透明窓ガラスに塗布されたコーティング剤から成る層が不均一であると見映えが悪くなる。また、塗布されたコーティング剤から成る層の厚みにより、コーティング剤から成る層の性能もバラツキが生じ、安定しないという問題が生ずる。
【0009】
更に、建造物の側壁や天井の開口部に装着された透明窓ガラスの補強やかかる透明窓ガラスが仮に割れても飛散するのを防止することも、近年における震災等の経験から強く望まれるようになってきている。
【0010】
そこで、本発明は、太陽光の透過量を減衰し、特に太陽光の赤外線や紫外線を遮断若しくは抑制し、更に建造物の側壁や天井の開口部に装着された透明板の補強及び透明板の破損時における飛散防止も図り、透明板に対太陽光層を形成する時に熟練の者でなくても対太陽光層の厚さを均一にすることが可能な対太陽光部材を形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る対太陽光部材の形成方法は、板状の透明板の表面に、太陽光の透過量を減衰するためのもので複数の通孔が形成されたペーパー状部材を配置する第1の工程と、前記ペーパー状部材に対し前記透明板とは反対側から赤外線及び/又は紫外線を遮蔽若しくは抑制する機能を備える薬液を供給する第2の工程と、前記薬液を固体化させて前記ペーパー状部材と前記透明板とを接着させる第3の工程とを経ることにより、前記透明板に赤外線及び/又は紫外線を遮蔽若しくは抑制する機能を少なくとも備えた対太陽光層が配された対太陽光部材と成すことを特徴としている(請求項1)。ここで、透明板の素材には、透明ガラスや、透明なアクリル樹脂材・その他の透明樹脂材等が挙げられ、透明板の透明には無色透明と有色透明とが含まれ、透明板は専ら建造物の側壁や天井の開口部に装着される窓ガラスや窓材として用いられる。また、透明板として透明ガラスを採択するにあたり、対太陽光層が紫外線を遮断し若しくは抑制するためのものである場合には、透明ガラス自体に赤外線の遮断若しくは抑制効果を持たせても良く、また、反対に、対太陽光層が赤外線を遮断若しくは抑制するためのものである場合には、透明ガラス自体に紫外線の遮断若しくは抑制効果を持たせても良い。この方法で用いられるペーパー状部材は、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維又は高強度繊維から成る織布、編布、又は不織布で構成されている。もっとも、太陽光の透過量を無くす場合には、ペーパー状部材は肉厚が相対的に薄い金属箔で構成されているものとしても良く、更に、ペーパー状部材が金属箔で構成されている場合には、当該金属体の素材としては例えばアルミニウム等が挙げられる。また、紫外線を遮蔽若しくは抑制する機能を「少なくとも」備えた対太陽光層としたのは、この対太陽光層が透明板の表面に配置されることにより透明板の飛散防止機能も備え得ることによるものである。
【0012】
これにより、作業現場で上記した第1の工程から第3の工程を経ることによって、建造物の側壁や天井の開口部に配置された既存の透明板の表面に、赤外線及び/又は紫外線を遮蔽若しくは抑制する機能を備えた対太陽光層を施工することが可能であるので、窓ガラスの交換等を不要とする。しかも、赤外線及び/又は紫外線を遮蔽する機能を備えた薬液のペーパー状部材への供給量を調整したり、ペーパー状部材の厚みを変えたりすることにより、対太陽光層の厚みを調整し、ひいては太陽光の透過量や太陽光の赤外線及び/又は紫外線の吸収率を調整することも可能である。
【0013】
そして、この発明に係る対太陽光部材の形成方法により形成された対太陽光部材は、可視光の透過量を減衰するペーパー状部材を有するので、建造物の側壁や天井の開口部に該対太陽光部材を配置することにより、防眩効果や、目隠し効果や、日陰効果を得ることができる。また、この発明に係る対太陽光部材は、ペーパー状部材に赤外線及び/又は紫外線を遮蔽若しくは抑制する機能を備える薬液が含まれているので、赤外線及び/又は紫外線を遮蔽若しくは抑制する効果も得ることができる。しかも、ペーパー状部材に薬液が含まれることにより、ペーパー状部材がグラスファイバーやグラスウール等の紫外線による劣化の著しい素材で形成されていてもその素材自体の劣化の防止を図ることができる。更に、この発明に係る対太陽光部材は、透明板の室外側又は室内側の表面をペーパー状部材が覆う構成となっているので、透明板の強度を補強することができ、仮に透明板が破壊されても、ペーパー状部材が透明板を覆っているので、透明板が飛散するのを防止することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、この発明に係る対太陽光部材の形成方法によれば、作業現場で、建造物の側壁や天井の開口部に配置された既存の透明板の表面に、赤外線及び/又は紫外線を遮蔽若しくは抑制する機能を備えた対太陽光層を施工することが可能であるので、窓ガラスの交換等を不要とする。また、赤外線及び/又は紫外線を遮蔽する機能を備えた薬液のペーパー状部材への供給量を調整することや、ペーパー状部材の厚みを変えることにより、対太陽光層の厚みを調整し、ひいては太陽光の透過量や吸収率を調整することもできるため、熟練者でなくても、赤外線及び/又は紫外線を遮蔽する機能を備えた薬液のペーパー状部材への供給量を調整することや、ペーパー状部材の厚みを変えることにより、対太陽光層の厚みを調整し得るので、均一な性能を有する塗膜状の太陽光層を安定的に形成するという従来では熟練を要した作業を、簡単に行うことが可能となる。
【0015】
そして、この発明に係る対太陽光部材の形成方法により形成された対太陽光部材は、太陽光の透過量を減衰するペーパー状部材を有するので、建造物の側壁や天井の開口部に対太陽光部材を配置することにより、防眩効果や、目隠し効果や、日陰効果を得ることができる。また、請求項1に記載の発明によれば、対太陽光部材は、ペーパー状部材に赤外線及び/又は紫外線を遮蔽若しくは抑制する機能を備える薬液が含まれているので、赤外線及び/又は紫外線を遮蔽若しくは抑制する効果も得ることができる。しかも、ペーパー状部材に薬液が含まれることにより、ペーパー状部材がグラスファイバーやグラスウール等の紫外線による劣化の著しい素材で形成されていてもその素材自体の劣化の防止を図ることもできる。更に、請求項1に記載の発明によれば、対太陽光部材は、透明板の室外側又は室内側の表面をペーパー状部材が覆う構成となっているので、透明板の強度を補強することができ、仮に透明板が破壊されても、ペーパー状部材が透明板を覆っているので、透明板が飛散することも防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)は、この発明に係る対太陽光部材の実施例1の構成例の概略を示す説明図、図1(b)は前記太陽光部材の概略の拡大断面図である。
図2図2(a)は、所定の厚みの板ガラスの室外側面に対太陽光層を施工して対太陽光部材とした場合における太陽光の透過率、反射率及び吸収率の割合を示す説明図であり、図2(b)は、太陽光の波長との関係における太陽光の分光の透過率を示す特性線図である。
図3図3は、可視光の対太陽光部材に対する透過、吸収、反射の態様を説明し、赤外線の対太陽光部材に対する吸収、反射の態様を説明すると共に、紫外線の対太陽光部材に対する透過、吸収、反射の態様を説明した概略図である。
図4図4(a)は、この発明に係る対太陽光部材の実施例2の構成例の概略を示す説明図、図4(b)は前記太陽光部材の概略の拡大断面図である。
図5図5(a)は、所定の厚みの板ガラスの室内側面に対太陽光層を施工して対太陽光部材とした場合における太陽光の透過率、反射率及び吸収率の割合を示す説明図であり、図5(b)は、太陽光の波長との関係における太陽光の分光の透過率を示す特性線図である。
図6図6は、透明板の表面に対太陽光層を形成する過程の一例を示した工程図である。
図7図7は、同上の工程図において、透明板に装着されたペーパー状部材に薬液が着いたローラを回転させながら押し付けて、ペーパー状部材に薬液を供給する過程の一例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0018】
図1及び図2において、この発明に係る対太陽光部材1の実施例1の構成例が示されている。この実施例1に係る対太陽光部材1は、図1に示されるように、完成した状態では、室内側と室外側とを仕切る透明板2及びこの透明板2に対して室外側に施工された対太陽光層3とで基本的に構成されている。
【0019】
このうち、透明板2は、本実施例では例えば厚さ3mmのフロート板ガラス等の公知の透明ガラスであり、更には建造物の側壁や天井の開口部に既に装着されたものである。そして、透明板2が上記のように厚さ3mmのフロート板ガラスである場合には、その光学性能として、太陽光透過率の平均値は約86%、太陽光反射率の平均値は約8%となっている。もっとも、透明板2について、透明ガラスの代わりにアクリル等の透明樹脂材で形成しても良い。
【0020】
尚、この透明板2が赤外線を遮蔽する機能を有するが紫外線を遮蔽又は抑制する機能を有しない場合には、下記する対太陽光層3は紫外線を遮蔽し又は抑制する機能のみを有するものとしたり、反対に透明板2が紫外線を遮蔽する機能を有するが赤外線を遮蔽又は抑制する機能を有しない場合には、下記する対太陽光層3は赤外線を遮蔽し又は抑制する機能のみを有するものとしたりしても良い。
【0021】
対太陽光層3は、この実施例1では薬液32が含浸されたペーパー状部材31で構成されている。
【0022】
ペーパー状部材31は、例えばガラス繊維で成る不織布で構成され、厚みが相対的に薄いペーパー状のものであり、ガラス繊維が不規則に重なり合うことにより多数の貫通孔が不規則に形成された状態となっている。そして、ペーパー状部材31自体の厚さL1は、例えば15μmであると共に、ペーパー状部材31自体の1m2あたりの重量は例えば25g/m2となっている。
【0023】
もっとも、ペーパー状部材31について、ガラス繊維の替わりに炭素繊維、金属繊維、又は高強度繊維で成る不織布としても良い。更には、ペーパー状部材が不織布の替わりに織布や編布で構成されるものとしても良い。このような織布や編布で構成されるようにしても、ガラス繊維や炭素繊維や金属繊維や高強度繊維が所定の間隔を空けつつ規則正しく重なり合うことにより、多数の貫通孔が規則的に並ぶかたちで形成された状態となる。
【0024】
薬液32は、時間の推移により流体状から固体状に変化するもので、少なくとも固体状になった際には透明なものとなり、且つ、赤外線又は紫外線、或いは赤外線と紫外線との双方を吸収する性質を有している。更には、薬液32が固体状になった際には、2つの部材同士、例えばペーパー状部材32と透明板2とを接着する機能も有する。尚、この実施例では、例えば「スマートコートSF」という品番の薬液が用いられる。
【0025】
このような構成の対太陽光層3を透明板2の室外側の表面(建物の屋外となる外側面)に施工して対太陽光部材1を形成した際には、例えば透明板2を厚さが3mmのフロート板ガラスとし、実験した太陽光の波長範囲について0μmから25μmの範囲とした場合には、図2(a)の矢印I、II,IIIに示されるように、太陽光透過率Iの平均値は約66%、太陽光反射率IIの平均は約10%、太陽光吸収率IIIの平均値は約24%となるという実験結果が得られている。
【0026】
すなわち、図2(b)に示されるように、厚さが3mmのフロート板ガラス単体では太陽光透過率の平均値が上記のように約86%であるのに対し、対太陽光部材1を透明板2の室外側の面に施工した場合では上記したように、太陽光透過率の平均値が約66%であるから、本発明に係る対太陽光部材1を透明板2の室外側の面に施工することにより、太陽光透過率を相対的に下げることが可能となり、日陰効果を得ることができる。
【0027】
しかも、対太陽光層3を構成するペーパー状部材31についてグラスファイバーやグラスウールという太陽光の透過性を有しつつガラス繊維が不規則に組み合わされた素材を用いた場合には、図3の上段に示されるように、可視光はその一部が対太陽光層3の表面で反射され、その一部が対太陽光層3で吸収され、その一部が対太陽光層3を透過するものの、対太陽光層3を透過する可視光は対太陽光層3内及び対太陽光層3から透明板2に出る際に乱反射するので、対太陽光部材1から透明板2を経て透過してきた太陽光を見ても眩しくなく、対太陽光部材1について防眩効果も得るこができる。
【0028】
また、ペーパー状部材31に対し薬液32を含浸させるので、ペーパー状部材31がグラスウールやグラスファイバー等の紫外線による劣化の著しい素材で構成されている場合であっても、グラスウールやグラスファイバーという素材自体の劣化を防止することができ、対太陽光部材1としても長期に用いることが可能である。このため、実施例1に示されるように透明板2の室外側に対太陽光層3を施工する場合には、対太陽光層3が直接的に紫外線を浴びるので、従来品に対し有意義かつ有利な機能や効果となる。
【0029】
そして、ペーパー状部材31に紫外線を遮蔽又は抑制する薬液32が含浸されて対太陽光層3を成している場合には、図3の中段に示されるように、紫外線の一部は対太陽光層3の表面で反射し、紫外線の一部は対太陽光層3内で吸収されるので、紫外線が対太陽光層3を透過して透明板2に至ることが防止され、紫外線の遮断効果を十分に得られる。
【0030】
更に、ペーパー状部材31に赤外線を遮蔽又は抑制する薬液32が含浸されて対太陽光層3を成している場合には、図3の下段に示されるように、赤外線の一部が対太陽光層3の表面で反射され、赤外線の一部が対太陽光層3で吸収されて、赤外線の一部のみが対太陽光層3を透過するので、赤外線の遮断又は抑制効果を十分に得られる。
【実施例2】
【0031】
図4及び図5において、この発明に係る対太陽光部材1の実施例2の構成例が示されている。以下、図4及び図5を用いて実施例2に係る対太陽光部材1について説明する。
【0032】
この実施例2に係る対太陽光部材1は、図4に示されるように、完成した状態では、実施例1と同様に室内側と室外側とを仕切る透明板2と、この透明板2に対して実施例1とは反対に室内側に施工された対太陽光層3とで基本的に構成されている。もっとも、透明板2や対太陽光層3の構成、ひいては対太陽光層が薬液32の含浸されたペーパー状部材31で構成されている点等についての説明は先の実施例1と同様であるので、その説明は省略する。
【0033】
実施例2に係る対太陽光層3を透明板2の室内側の表面(建物の屋内となる内側面)に施工して対太陽光部材1を形成した際には、例えば透明板2を厚さが3mmのフロート板ガラスとし、実験した太陽光の波長範囲について0μmから25μmの範囲とした場合には、図5(a)の矢印I、II,IIIに示されるように、太陽光透過率Iの平均値は約59%、太陽光反射率IIの平均は約15%、太陽光吸収率IIIの平均値は約26%となるという実験結果が得られている。
【0034】
すなわち、図5(b)に示されるように、厚さが3mmのフロート板ガラス単体では太陽光透過率の平均値が上記のように約86%であるのに対し、対太陽光層3を透明板2の室内側の表面に施工した場合では上記したように、太陽光透過率の平均値が約59%であるから、本発明に係る対太陽光層3を透明板2の室内側の面に施工して対太陽光部材1を形成することにより、太陽光透過率を相対的に下げることが可能となり、日陰効果を得ることができる。
【0035】
そして、対太陽光層3を透明板2の室内側の表面に施工したことにより、室外側から対太陽光部材1に入射した太陽光について、透明板2の表面で反射し、更に対太陽光層3の透明板2との境界面で反射させることができるので(2回も反射させることができるので)、図2(a)では太陽光の透過率Iの平均値が66%であるのに対し、図5(a)では太陽光の透過率Iの平均値が59%と、より下がっており、対太陽光層3を透明板2の室外側の表面に施工した場合よりも、太陽光の透過量をより減衰させ、より良い日陰効果を得ることが可能となっている。
【0036】
しかも、対太陽光層3を構成するペーパー状部材31についてグラスファイバーやグラスウールという太陽光の透過性を有しつつガラス繊維が不規則に組み合わされた素材を用いた場合には、図示しないが、透明板2を透過して対太陽光層3に向かった可視光の一部は、透明板2と対太陽光層3との境界となる面で反射し、その一部が対太陽光層3内で吸収され、その一部が対太陽光層3を透過するものの、対太陽光層3を透過する可視光は対太陽光層3内及び室内側の空間に出る際に乱反射するので、透明板2から対太陽光部材1を経て透過してきた太陽光を見ても眩しくなく、対太陽光部材1について防眩効果も得るこができる。
【0037】
また、実施例2に係る対太陽光層3でも、ペーパー状部材31に対し薬液32を含浸させるので、ペーパー状部材31がグラスウールやグラスファイバー等の紫外線による劣化の著しい素材で構成されている場合であっても、グラスウールやグラスファイバーという素材自体の劣化を防止することができ、対太陽光部材1としても長期に用いることが可能である。
【0038】
そして、ペーパー状部材31に紫外線を遮蔽又は抑制する薬液32が含浸されて対太陽光層3を成している場合には、図示しないが、透明板2を透過してきた紫外線の一部は対太陽光層3の透明板2との境界の面で反射され、透明板2を透過してきた紫外線の一部は対太陽光層3内で吸収されるため、紫外線が透明板2を透過して対太陽光層3に向かっても対太陽光層3を透過して室内側まで至ることは防止されるので、紫外線の遮断効果を十分に得られる。
【0039】
更に、ペーパー状部材31に赤外線を遮蔽又は抑制する薬液32が含浸されて対太陽光層3を成している場合には、図示しないが、透明板2を透過してきた赤外線の一部が対太陽光層3の透明板2との境界の面で反射され、透明板2を透過してきた赤外線の一部が対太陽光層3で吸収されて、透明板2を透過してきた赤外線の一部のみが対太陽光層3を透過するため、赤外線が透明板2を透過して対太陽光層3に至るとしても赤外線の遮断又は抑制効果を十分に得られる。
【0040】
次に、対太陽光部材1の形成方法の一例について図6及び図7を用いて説明する。尚、対太陽光部材1の形成方法は、透明板2の室外側に対太陽光層3を施工する場合でも、透明板2の室内側に対太陽光層3を施工する場合でも、大きな違いはないものである。
【0041】
ステップ100からスタートし、ステップ101では透明板2の室外側の表面又は透明板2の室内側の表面にペーパー状部材31を取り付ける作業を行う。この場合に、透明板2は、例えばフロート板ガラスであり、スーパーマーケットやデパートメント等の建造物の側壁や天井等の開口部に既に装着されたもの等が該当する。また、ペーパー状部材31は、薬液32が未だ含浸される前の状態のものである。更に、ペーパー状部材31は、透明板2に仮の状態で取り付けられれば良く、接着剤等により透明板2に接着されている必要はない。
【0042】
次のステップ102では、ローラ器具5のローラ51の表面に薬液32を着ける作業を行う。このローラ51を有するローラ器具5は公知のものであるので、その説明は省略する。もっとも、ステップ101にて透明板2にペーパー状部材31を取り付ける前からローラ器具5のローラ51の表面に薬液32を着けていても良い。
【0043】
ステップ102でローラ51の表面に薬液32が万遍なく且つ過不足なく着けられたらステップ103に進み、図7にも示されるように、この薬液32が着いたローラ51を、透明板2に取り付けられた状態のペーパー状部材31に対し、図7の白抜き矢印α1及び矢印α2に示されるように上下方向に回転させながら押し付けることでローラ塗布作業を行う。このローラ塗布作業により、ローラ51の表面に着けられていた薬液32は、図7の矢印βに示されるように、ペーパー状部材31内を浸入し、ペーパー状部材31と透明板2との間に至る。
【0044】
ローラ51により塗布された薬液32を乾かした後、ステップ105に進んで一連の作業が終了する。このように、薬液32を乾かすことにより薬液32は固体状になり、ペーパー状部材31と透明板2との接着が行われる。
【0045】
このような作業を行うことにより、熟練の者でなくても、均一な厚さの対太陽光層3を透明板2の室外側又は室内側の表面に形成することが可能となる。また、対太陽光層3の厚さも薬液32の供給量やペーパー状部材31の厚さを変更するのみで変えることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 対太陽光部材
2 透明板
3 対太陽光層
31 ペーパー状部材
32 薬液
5 ローラ器具
51 ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7