【実施例1】
【0018】
図1及び
図2において、この発明に係る対太陽光部材1の実施例1の構成例が示されている。この実施例1に係る対太陽光部材1は、
図1に示されるように、完成した状態では、室内側と室外側とを仕切る透明板2及びこの透明板2に対して室外側に施工された対太陽光層3とで基本的に構成されている。
【0019】
このうち、透明板2は、本実施例では例えば厚さ3mmのフロート板ガラス等の公知の透明ガラスであり、更には建造物の側壁や天井の開口部に既に装着されたものである。そして、透明板2が上記のように厚さ3mmのフロート板ガラスである場合には、その光学性能として、太陽光透過率の平均値は約86%、太陽光反射率の平均値は約8%となっている。もっとも、透明板2について、透明ガラスの代わりにアクリル等の透明樹脂材で形成しても良い。
【0020】
尚、この透明板2が赤外線を遮蔽する機能を有するが紫外線を遮蔽又は抑制する機能を有しない場合には、下記する対太陽光層3は紫外線を遮蔽し又は抑制する機能のみを有するものとしたり、反対に透明板2が紫外線を遮蔽する機能を有するが赤外線を遮蔽又は抑制する機能を有しない場合には、下記する対太陽光層3は赤外線を遮蔽し又は抑制する機能のみを有するものとしたりしても良い。
【0021】
対太陽光層3は、この実施例1では薬液32が含浸されたペーパー状部材31で構成されている。
【0022】
ペーパー状部材31は、例えばガラス繊維で成る不織布で構成され、厚みが相対的に薄いペーパー状のものであり、ガラス繊維が不規則に重なり合うことにより多数の貫通孔が不規則に形成された状態となっている。そして、ペーパー状部材31自体の厚さL1は、例えば15μmであると共に、ペーパー状部材31自体の1m2あたりの重量は例えば25g/m2となっている。
【0023】
もっとも、ペーパー状部材31について、ガラス繊維の替わりに炭素繊維、金属繊維、又は高強度繊維で成る不織布としても良い。更には、ペーパー状部材が不織布の替わりに織布や編布で構成されるものとしても良い。このような織布や編布で構成されるようにしても、ガラス繊維や炭素繊維や金属繊維や高強度繊維が所定の間隔を空けつつ規則正しく重なり合うことにより、多数の貫通孔が規則的に並ぶかたちで形成された状態となる。
【0024】
薬液32は、時間の推移により流体状から固体状に変化するもので、少なくとも固体状になった際には透明なものとなり、且つ、赤外線又は紫外線、或いは赤外線と紫外線との双方を吸収する性質を有している。更には、薬液32が固体状になった際には、2つの部材同士、例えばペーパー状部材32と透明板2とを接着する機能も有する。尚、この実施例では、例えば「スマートコートSF」という品番の薬液が用いられる。
【0025】
このような構成の対太陽光層3を透明板2の室外側の表面(建物の屋外となる外側面)に施工して対太陽光部材1を形成した際には、例えば透明板2を厚さが3mmのフロート板ガラスとし、実験した太陽光の波長範囲について0μmから25μmの範囲とした場合には、
図2(a)の矢印I、II,IIIに示されるように、太陽光透過率Iの平均値は約66%、太陽光反射率IIの平均は約10%、太陽光吸収率IIIの平均値は約24%となるという実験結果が得られている。
【0026】
すなわち、
図2(b)に示されるように、厚さが3mmのフロート板ガラス単体では太陽光透過率の平均値が上記のように約86%であるのに対し、対太陽光部材1を透明板2の室外側の面に施工した場合では上記したように、太陽光透過率の平均値が約66%であるから、本発明に係る対太陽光部材1を透明板2の室外側の面に施工することにより、太陽光透過率を相対的に下げることが可能となり、日陰効果を得ることができる。
【0027】
しかも、対太陽光層3を構成するペーパー状部材31についてグラスファイバーやグラスウールという太陽光の透過性を有しつつガラス繊維が不規則に組み合わされた素材を用いた場合には、
図3の上段に示されるように、可視光はその一部が対太陽光層3の表面で反射され、その一部が対太陽光層3で吸収され、その一部が対太陽光層3を透過するものの、対太陽光層3を透過する可視光は対太陽光層3内及び対太陽光層3から透明板2に出る際に乱反射するので、対太陽光部材1から透明板2を経て透過してきた太陽光を見ても眩しくなく、対太陽光部材1について防眩効果も得るこができる。
【0028】
また、ペーパー状部材31に対し薬液32を含浸させるので、ペーパー状部材31がグラスウールやグラスファイバー等の紫外線による劣化の著しい素材で構成されている場合であっても、グラスウールやグラスファイバーという素材自体の劣化を防止することができ、対太陽光部材1としても長期に用いることが可能である。このため、実施例1に示されるように透明板2の室外側に対太陽光層3を施工する場合には、対太陽光層3が直接的に紫外線を浴びるので、従来品に対し有意義かつ有利な機能や効果となる。
【0029】
そして、ペーパー状部材31に紫外線を遮蔽又は抑制する薬液32が含浸されて対太陽光層3を成している場合には、
図3の中段に示されるように、紫外線の一部は対太陽光層3の表面で反射し、紫外線の一部は対太陽光層3内で吸収されるので、紫外線が対太陽光層3を透過して透明板2に至ることが防止され、紫外線の遮断効果を十分に得られる。
【0030】
更に、ペーパー状部材31に赤外線を遮蔽又は抑制する薬液32が含浸されて対太陽光層3を成している場合には、
図3の下段に示されるように、赤外線の一部が対太陽光層3の表面で反射され、赤外線の一部が対太陽光層3で吸収されて、赤外線の一部のみが対太陽光層3を透過するので、赤外線の遮断又は抑制効果を十分に得られる。
【実施例2】
【0031】
図4及び
図5において、この発明に係る対太陽光部材1の実施例2の構成例が示されている。以下、
図4及び
図5を用いて実施例2に係る対太陽光部材1について説明する。
【0032】
この実施例2に係る対太陽光部材1は、
図4に示されるように、完成した状態では、実施例1と同様に室内側と室外側とを仕切る透明板2と、この透明板2に対して実施例1とは反対に室内側に施工された対太陽光層3とで基本的に構成されている。もっとも、透明板2や対太陽光層3の構成、ひいては対太陽光層が薬液32の含浸されたペーパー状部材31で構成されている点等についての説明は先の実施例1と同様であるので、その説明は省略する。
【0033】
実施例2に係る対太陽光層3を透明板2の室内側の表面(建物の屋内となる内側面)に施工して対太陽光部材1を形成した際には、例えば透明板2を厚さが3mmのフロート板ガラスとし、実験した太陽光の波長範囲について0μmから25μmの範囲とした場合には、
図5(a)の矢印I、II,IIIに示されるように、太陽光透過率Iの平均値は約59%、太陽光反射率IIの平均は約15%、太陽光吸収率IIIの平均値は約26%となるという実験結果が得られている。
【0034】
すなわち、
図5(b)に示されるように、厚さが3mmのフロート板ガラス単体では太陽光透過率の平均値が上記のように約86%であるのに対し、対太陽光層3を透明板2の室内側の表面に施工した場合では上記したように、太陽光透過率の平均値が約59%であるから、本発明に係る対太陽光層3を透明板2の室内側の面に施工して対太陽光部材1を形成することにより、太陽光透過率を相対的に下げることが可能となり、日陰効果を得ることができる。
【0035】
そして、対太陽光層3を透明板2の室内側の表面に施工したことにより、室外側から対太陽光部材1に入射した太陽光について、透明板2の表面で反射し、更に対太陽光層3の透明板2との境界面で反射させることができるので(2回も反射させることができるので)、
図2(a)では太陽光の透過率Iの平均値が66%であるのに対し、
図5(a)では太陽光の透過率Iの平均値が59%と、より下がっており、対太陽光層3を透明板2の室外側の表面に施工した場合よりも、太陽光の透過量をより減衰させ、より良い日陰効果を得ることが可能となっている。
【0036】
しかも、対太陽光層3を構成するペーパー状部材31についてグラスファイバーやグラスウールという太陽光の透過性を有しつつガラス繊維が不規則に組み合わされた素材を用いた場合には、図示しないが、透明板2を透過して対太陽光層3に向かった可視光の一部は、透明板2と対太陽光層3との境界となる面で反射し、その一部が対太陽光層3内で吸収され、その一部が対太陽光層3を透過するものの、対太陽光層3を透過する可視光は対太陽光層3内及び室内側の空間に出る際に乱反射するので、透明板2から対太陽光部材1を経て透過してきた太陽光を見ても眩しくなく、対太陽光部材1について防眩効果も得るこができる。
【0037】
また、実施例2に係る対太陽光層3でも、ペーパー状部材31に対し薬液32を含浸させるので、ペーパー状部材31がグラスウールやグラスファイバー等の紫外線による劣化の著しい素材で構成されている場合であっても、グラスウールやグラスファイバーという素材自体の劣化を防止することができ、対太陽光部材1としても長期に用いることが可能である。
【0038】
そして、ペーパー状部材31に紫外線を遮蔽又は抑制する薬液32が含浸されて対太陽光層3を成している場合には、図示しないが、透明板2を透過してきた紫外線の一部は対太陽光層3の透明板2との境界の面で反射され、透明板2を透過してきた紫外線の一部は対太陽光層3内で吸収されるため、紫外線が透明板2を透過して対太陽光層3に向かっても対太陽光層3を透過して室内側まで至ることは防止されるので、紫外線の遮断効果を十分に得られる。
【0039】
更に、ペーパー状部材31に赤外線を遮蔽又は抑制する薬液32が含浸されて対太陽光層3を成している場合には、図示しないが、透明板2を透過してきた赤外線の一部が対太陽光層3の透明板2との境界の面で反射され、透明板2を透過してきた赤外線の一部が対太陽光層3で吸収されて、透明板2を透過してきた赤外線の一部のみが対太陽光層3を透過するため、赤外線が透明板2を透過して対太陽光層3に至るとしても赤外線の遮断又は抑制効果を十分に得られる。
【0040】
次に、対太陽光部材1の形成方法の一例について
図6及び
図7を用いて説明する。尚、対太陽光部材1の形成方法は、透明板2の室外側に対太陽光層3を施工する場合でも、透明板2の室内側に対太陽光層3を施工する場合でも、大きな違いはないものである。
【0041】
ステップ100からスタートし、ステップ101では透明板2の室外側の表面又は透明板2の室内側の表面にペーパー状部材31を取り付ける作業を行う。この場合に、透明板2は、例えばフロート板ガラスであり、スーパーマーケットやデパートメント等の建造物の側壁や天井等の開口部に既に装着されたもの等が該当する。また、ペーパー状部材31は、薬液32が未だ含浸される前の状態のものである。更に、ペーパー状部材31は、透明板2に仮の状態で取り付けられれば良く、接着剤等により透明板2に接着されている必要はない。
【0042】
次のステップ102では、ローラ器具5のローラ51の表面に薬液32を着ける作業を行う。このローラ51を有するローラ器具5は公知のものであるので、その説明は省略する。もっとも、ステップ101にて透明板2にペーパー状部材31を取り付ける前からローラ器具5のローラ51の表面に薬液32を着けていても良い。
【0043】
ステップ102でローラ51の表面に薬液32が万遍なく且つ過不足なく着けられたらステップ103に進み、
図7にも示されるように、この薬液32が着いたローラ51を、透明板2に取り付けられた状態のペーパー状部材31に対し、
図7の白抜き矢印α1及び矢印α2に示されるように上下方向に回転させながら押し付けることでローラ塗布作業を行う。このローラ塗布作業により、ローラ51の表面に着けられていた薬液32は、
図7の矢印βに示されるように、ペーパー状部材31内を浸入し、ペーパー状部材31と透明板2との間に至る。
【0044】
ローラ51により塗布された薬液32を乾かした後、ステップ105に進んで一連の作業が終了する。このように、薬液32を乾かすことにより薬液32は固体状になり、ペーパー状部材31と透明板2との接着が行われる。
【0045】
このような作業を行うことにより、熟練の者でなくても、均一な厚さの対太陽光層3を透明板2の室外側又は室内側の表面に形成することが可能となる。また、対太陽光層3の厚さも薬液32の供給量やペーパー状部材31の厚さを変更するのみで変えることが可能である。