(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
貯留槽に貯留された光硬化性樹脂に対してレーザー光源よりレーザー光を照射し、前記貯留槽に貯留された光硬化性樹脂に浸漬されて三次元造形物の土台となるベース部材に所定の液層厚さの硬化層を形成した後に、前記所定の液層厚さ分だけベース部材を動かし、該硬化層上に新たな硬化層を形成する動作を繰り返すことにより、硬化層を積層して三次元造形物を作製する三次元造形装置において、
一方の端部近傍にレーザー光の焦点位置を変更してレーザー光の照射面におけるスポット径を小さくするレンズが配設されるとともに他方の端部に板状部材が設けられた金属板が回動可能に設けられたレーザー光源と、
作製する三次元造形物を所定の間隔で切断した際の断面形状におけるレーザー光の走査ラインを、輪郭部分においては該走査ライン間の距離を小さく形成し、該輪郭内の領域においては該走査ライン間の距離を大きく形成して硬化層形状データを作成する作成手段と、
前記作成手段により作成された硬化層形状データにおいて走査ライン間の距離が小さい箇所については、前記板状部材を所定の方向に押圧して前記金属板を回動することで、前記レンズを前記レーザー光源より出射するレーザー光が入射する位置に配置し、硬化層形状データにおいて走査ライン間の距離が大きい箇所については、前記板状部材を前記所定の方向と逆方向に押圧して前記金属板を回動することで、前記レンズを前記レーザー光源より出射するレーザー光が入射しない位置に配置する制御手段と
を有することを特徴とする三次元造形装置。
貯留槽に貯留された光硬化性樹脂に対してレーザー光源よりレーザー光を照射し、前記貯留槽に貯留された光硬化性樹脂に浸漬されて三次元造形物の土台となるベース部材に所定の液層厚さの硬化層を形成した後に、前記所定の液層厚さ分だけベース部材を動かし、該硬化層上に新たな硬化層を形成する動作を繰り返すことにより、硬化層を積層して三次元造形物を作製する三次元造形装置において、
一方の端部近傍にレーザー光の焦点位置を変更してレーザー光の照射面におけるスポット径を大きくするレンズが配設されるとともに他方の端部に板状部材が設けられた金属板が回動可能に設けられたレーザー光源と、
作製する三次元造形物を所定の間隔で切断した際の断面形状におけるレーザー光の走査ラインを、輪郭部分においては該走査ライン間の距離を小さく形成し、該輪郭内の領域においては該走査ライン間の距離を大きく形成して硬化層形状データを作成する作成手段と、
前記作成手段により作成された硬化層形状データにおいて走査ライン間の距離が小さい箇所については、前記板状部材を所定の方向に押圧して前記金属板を回動することで、前記レンズを前記レーザー光源より出射するレーザー光が入射しない位置に配置し、硬化層形状データにおいて走査ライン間の距離が大きい箇所については、前記板状部材を前記所定の方向と逆方向に押圧して前記金属板を回動することで、前記レンズを前記レーザー光源より出射するレーザー光が入射する位置に配置する制御手段と
を有することを特徴とする三次元造形装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、可視光または紫外光などの光の照射により硬化する性質を有する光硬化性樹脂を用いた三次元造形装置が知られている。
【0003】
こうした三次元造形装置では、例えば、以下のような手法により三次元造形物を作製するようにしていた。
【0004】
即ち、貯留槽に貯留された光硬化性樹脂に対して光を照射することにより、貯留槽に貯留された光硬化性樹脂に浸漬されて三次元造形物の土台となるベース部材表面に、所定の液層厚さ分だけ光硬化性樹脂を硬化して硬化層を形成する。
【0005】
さらに、所定の液層厚さ分だけベース部材を移動させた後、光硬化性樹脂に対して光を照射し、先に硬化した硬化層上に新たな硬化層を形成する。
【0006】
こうした硬化層上に新たな硬化層を形成するという動作を順次繰り返して、硬化層を積層することにより三次元造形物を作製するようになされている。
【0007】
なお、こうした三次元造形装置としては、例えば、特許文献1に詳細な内容が開示されている。
【0008】
ここで、こうした三次元造形装置において、硬化層を形成する場合には、例えば、ベクトルイメージを描きながら光硬化性樹脂にレーザー光を照射し、光硬化性樹脂を所定の液層厚さで所定の形状に硬化するようにしていた。
【0009】
即ち、1つの硬化層を形成する場合には、硬化層の形状を表すデータに基づいて、まず、光硬化性樹脂に対して、硬化層の輪郭に沿ってレーザー光を走査して硬化層の輪郭を形成する。その後、当該輪郭内の領域でレーザー光を走査して当該領域内の光硬化性樹脂を硬化して、所定の形状の硬化層を形成するようにしていた。
【0010】
なお、こうした硬化層の形状を表すデータとは、例えば、公知の3次元CAD(Computer Aided Design)システムによって、作製する三次元造形物を所定の間隔で切断した断面を表す断面形状のデータである。
【0011】
このため、硬化層の輪郭を形成する際には、より複雑な形状に対応することができるようにするため、レーザー光の照射対象が位置する照射面におけるレーザー光の径、つまり、スポット径は小さいほどよい。
【0012】
しかしながら、レーザー光のスポット径を小さくすると、輪郭内の領域においてレーザー光を走査する回数が多くなってしまい、硬化層の形成に時間を要することとなっていた。その結果、三次元造形物の作製に時間を要することとなってしまっていた。
【0013】
このため、より複雑な形状に対応することが可能であるとともに、三次元造形物の作製に時間を要しないような三次元造形装置および三次元造形方法の提案が望まれていた。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による三次元造形装置および三次元造形方法の実施の形態の一例を詳細に説明することとする。
【0030】
図1には、本発明による三次元造形装置の概略構成斜視説明図が示されており、また、
図2には、
図1に示す三次元造形装置の概略構成断面説明図が示されており、また、
図3には、レーザー光源の概略構成説明図が示されており、また、
図4には、
図1のII−II断面図が示されている。
【0031】
この
図1に示す三次元造形装置10は、規制液面方式を採用しており、造形ユニット12の下方側、つまり、筐体11内にレーザー光源14が配置されている。
【0032】
この造形ユニット12は、ガラスなどの透明基板13上で、内部に流動性を有する光硬化性樹脂を貯留する貯留槽16を備えている。なお、この貯留槽16は底面部が透明基板13により構成されており(
図2を参照する。)、レーザー光源14からのレーザー光がこの透明基板13を透過して貯留槽16に貯留される光硬化性樹脂に照射される。また、レーザー光源14から出射されるレーザー光は、貯留槽16に貯留された光硬化性樹脂を硬化することが可能なものである。
【0033】
また、貯留槽16内には、レーザー光源14から出射されるレーザー光により硬化する光硬化性樹脂の土台となるとともに、形成した三次元造形物を保持するベース部材18が配置されている。
【0034】
このベース部材18は、ベース部材18をXYZ直交座標系のZ軸方向、つまり、上下方向に昇降させるための昇降手段20に接続されている。
【0035】
レーザー光源14は、筐体11内に設けられた移動機構30により筐体11内をXY平面で移動する。
【0036】
そして、昇降手段20および移動機構30は、制御手段36によりその動作が制御されることとなる。
【0037】
より詳細には、レーザー光源14は、レーザー出射口22aからレーザー光を出射する発光部材22を備えている。なお、発光部材22から出射するレーザー光は、レーザー光の照射対象が位置する照射面より発光部材22側に焦点位置、つまり、スポット位置が位置するように設定されている(
図5(a)を参照する。)。また、本実施の形態において、照射面は貯留槽16の底面16aと接する光硬化性樹脂面とするが、こうした照射面は適宜に設定できる。
【0038】
そして、発光部材22の上面22bにおいては、発光部材22から出射するレーザー光の焦点位置を変更するレンズ32を備えた焦点位置変更部材24が設けられている。なお、この焦点位置変更部材24は、発光部材22より出射されたレーザー光の焦点位置を照射面と一致するように変更するものである(
図5(b)を参照する。)。
【0039】
なお、
図5(a)(b)に示すそれぞれの場合の照射面におけるレーザー光のスポット径は、制御手段36の記憶手段(図示せず。)に記憶され、後述するレーザー光の走査ラインの形成の際に利用される。
【0040】
この焦点位置変更部材24は、略矩形形状の金属板であり、一方の端部(
図3(a)においては、前端部24dである。)近傍にレーザー光の焦点位置を変更するためのレンズ32が設けられている。なお、レンズ32は、アクリル樹脂やガラスなどの透明材料により形成されている。また、他方の端部(
図3(a)においては、後端部24aである。)には板状部材34が設けられている。
【0041】
そして、焦点位置変更部材24は、発光部材22の上面22bにおいて固定部材26により回動可能に固定されている。
【0042】
このため、焦点位置変更部材24は、固定部材26を中心として回動することにより、レンズ32がレーザー出射口22a上に位置する状態、あるいは、レンズ32がレーザー出射口22a上に位置しない状態のいずれかの状態とすることが可能となっている。
【0043】
なお、焦点位置変更部材24において、レンズ32がレーザー出射口22a上に位置する状態、つまり、レーザー光の焦点位置を変更する状態とは、
図3(a)に示す状態であり、以下、こうした状態を「焦点位置変更状態」と称する。
【0044】
また、焦点位置変更部材24において、レンズ32がレーザー出射口22a上に位置しない状態、つまり、レーザー光の焦点位置を変更しない状態とは、
図3(c)に示す状態であり、以下、こうした状態を「焦点位置未変更状態」と称する。
【0045】
即ち、焦点位置変更部材24は、固定部材26を回動軸として回動し、焦点位置変更状態あるいは焦点位置未変更状態とを選択することができる。
【0046】
ここで、発光部材22の上面22bには、板部28a、28bが立設されている。
【0047】
この板部28aは、焦点位置変更部材24が焦点位置変更状態から矢印A方向に回動して焦点位置未変更状態になった場合に、焦点位置変更部材24の右側面24bと当接する。
【0048】
このとき、当接した板部28aと焦点位置変更部材24の右側面24bとは、当接した状態が維持されるようになされている。
【0049】
具体的には、例えば、板部28aにおいて右側面24bと当接する部分にマグネット(図示せず。)を配設し、当該マグネットの磁力により焦点位置変更部材24の右側面24bと板部28aとが当接した状態を維持するようにする。
【0050】
なお、こうしたマグネットの磁力は、切替ピン50による板状部材34の押圧(後述する。)により右側面24bと板部28aとが当接した状態を解除可能な程度とする。
【0051】
また、板部28bは、焦点位置変更部材24が焦点位置未変更状態から矢印B方向に回動して焦点位置変更状態になった場合に、焦点位置変更部材24の左側面24cと当接する。
【0052】
このとき、当接した板部28bと焦点位置変更部材24の左側面24cとは、当接した状態が維持されるようになされている。
【0053】
具体的には、例えば、板部28bにおいて左側面24cと当接する部分にマグネット(図示せず。)を配設し、当該マグネットの磁力により焦点位置変更部材24の左側面24cと板部28bとが当接した状態を維持するようにする。
【0054】
なお、こうしたマグネットの磁力は、切替ピン50による板状部材34の押圧(後述する。)により左側面24cと板部28bとが当接した状態を解除可能な程度とする。
【0055】
板状部材34は、焦点位置変更部材24の後端部24aに設けられており、その長さL1は、焦点位置変更部材24が焦点位置未変更状態のときに、板状部材34の後端部34aが焦点位置変更部材24の右後端部24aaより後方側に位置するように寸法設定されている(
図3(c)を参照する。)。
【0056】
また、この板状部材34の高さH1は、移動機構30によりレーザー光源14を移動して、筐体11内に設けられた切替ピン50(後述する。)により押圧されることが可能なように寸法設定されている。
【0057】
また、昇降手段20は、例えば、図示しないモーターなどによって、接続されるベース部材18を昇降するものである。なお、当該モーターは、制御手段36により制御される。
【0058】
移動機構30は、筐体11内にX軸方向に延設された一対のレール40と、一対のレール40に摺動自在に配設されるとともに、一対のレール40を連結するようにY軸方向に延設された一対のレール42を備えた移動部材44とを有して構成されている。
【0059】
そして、移動機構30においては、移動部材44のレール42にレーザー光源14が摺動自在に配設されている。
【0060】
移動部材44には駆動モーター46が設けられており、移動部材44は、この駆動モーター46の駆動により一対のレール40に沿ってX軸方向に移動する。なお、駆動モーター46の駆動は制御手段36に制御される。
【0061】
また、レーザー光源14には駆動モーター48が設けられており、レーザー光源14は、この駆動モーター48の駆動により一対のレール42に沿ってY軸方向に移動する。なお、駆動モーター48の駆動は制御手段により制御される。
【0062】
従って、レーザー光源14は、制御手段36の制御により、移動機構30によって筐体11内をXY平面で移動することとなる。
【0063】
また、筐体11においては、後方側の内壁面11aの略中央部において切替ピン50が設けられている。
【0064】
切替ピン50は、移動機構30によりレーザー光源14が移動可能な領域であり、かつ、硬化層を作成している際に、レーザー光源14が位置しない領域に設けられている。
【0065】
この切替ピン50は、板状部材34と接触することが可能な高さに設けられており、移動機構30によるレーザー光源14の移動により焦点位置変更部材24を、焦点位置変更状態から焦点位置未変更状態へ、あるいは、焦点位置未変更状態から焦点位置変更状態へ変更するものである。
【0066】
こうした切替ピン50による焦点位置変更部材24の変更は、具体的には、下記のようになされる。
【0067】
焦点位置変更状態から焦点位置未変更状態へ変更する場合には、まず、レーザー光源14を切替ピン50より左方側に移動し、移動部材44を後方側に移動する(
図6(a)を参照する。)。
【0068】
その後、レーザー光源14を右方側に移動することにより、切替ピン50によって板状部材34の右側面34aを押圧する。
【0069】
その結果、焦点位置変更部材24は、矢印C方向に回動して焦点位置変更状態から焦点位置未変更状態となる。
【0070】
また、焦点位置未変更状態から焦点位置変更状態へ変更する場合には、まず、レーザー光源14を切替ピン50より右方側に移動し、移動部材44を後方側に移動する(
図6(b)を参照する。)。
【0071】
その後、レーザー光源14を左方側に移動することにより、切替ピン50によって板状部材34の左側面34bを押圧する。
【0072】
その結果、焦点位置変更部材24は、矢印D方向に回動して焦点位置未変更状態から焦点位置変更状態となる。
【0073】
以上の構成において、三次元造形装置10において、三次元造形物を作製する際の動作について説明することとする。
【0074】
はじめに、三次元造形装置10を用いて三次元造形物を作製するにあたっては、まず、制御手段36に接続された3次元CADシステム(図示せず。)によって、作製する三次元造形物を水平方向に所定の間隔、例えば、30μm毎に切断した断面を表す断面形状データを作成する。
【0075】
そして、作成した断面形状データに基づいて、断面形状において走査ラインを形成して硬化層形状データを作成する(
図8(a)(b)を参照する。)。なお、この走査ラインは、レーザー光が走査するラインであって、この走査ライン上をレーザー光のスポット径の中心が移動することとなる。
【0076】
こうして作成された硬化層形状データは、3次元CADシステムにおいて図示しない記憶手段に記憶される。
【0077】
また、走査ラインについては、硬化層の輪郭においては、焦点位置変更部材24が焦点位置変更状態のときのスポット径を考慮して走査ライン間の距離を小さくするとともに、当該輪郭内の領域においては、焦点位置変更部材24が焦点位置未変更状態のときのスポット径を考慮して走査ライン間の距離を大きくしている。
【0078】
従って、硬化層の輪郭部分にレーザー光を照射する際には、レーザー光のスポット径を小さくすることを示すとともに、当該輪郭内にレーザー光を照射する際には、レーザー光のスポット径を大きくすることを示している。
【0079】
ここで、走査ライン間の距離は、焦点位置変更状態あるいは焦点位置未変更状態のときのスポット径によって決定されるが、走査ライン間の距離としては、所定の走査ライン上を移動するスポット径が当該所定の走査ラインと隣り合う走査ライン上を移動するスポット径と接触あるいは一部重なるように設定されている。
【0080】
具体的には、硬化層の輪郭における走査ライン間の距離は、所定の走査ライン上を焦点位置変更状態のときのスポット径(つまり、小スポット径である。)のレーザー光で硬化する領域S1と、当該所定の走査ラインと隣り合う走査ライン上を小スポット径のレーザー光で硬化する領域S2とが隣接した状態(12(a)を参照する。)、あるいは、一部重なる状態(
図12(b)を参照する。)となるように設定される。
【0081】
なお、領域S1と領域S2とが一部重なる状態となるように設定した場合には、領域S1と領域S2とが重なり合う領域S3の幅L2を、作業者が任意に設定するようにしてもよいし、小スポット径の所定の割合とするように一定の長さとなるように自動的に設定されるようにしてもよい。
【0082】
また、硬化層の輪郭内の領域における走査ライン間の距離は、所定の走査ライン上を焦点位置未変更状態のときのスポット径(つまり、大スポット径である。)のレーザー光で硬化する領域S4と、当該所定の走査ラインと隣り合う走査ライン上を大スポット径のレーザー光で硬化する領域S5とが隣接した状態(
図13(a)を参照する。)、あるいは、一部重なる状態(
図13(b)を参照する。)となるように設定される。
【0083】
なお、領域S4と領域S5とが一部重なる状態となるように設定した場合には、領域S4と領域S5とが重なり合う領域S6の幅L3を、作業者が任意に設定するようにしてもよいし、大スポット径の所定の割合とするように一定の長さとなるように自動的に設定されるようにしてもよい。
【0084】
さらに、硬化層の輪郭における走査ラインと当該輪郭内の領域における走査ライン間の距離については、小スポット径でのレーザー光硬化する領域S7と大スポット径のレーザー光で硬化する領域S8とが一部重なる状態となるように設定されている(
図14を参照する。)。
【0085】
なお、この際には、領域S7と領域S8とが重なる幅L4を、作業者が任意に設定するようにしてもよいし、いずれかのスポット径の所定の割合とするように一定の長さとなるよう自動的に設定されるようにしてもよい。
【0086】
なお、こうして作成された硬化層形状データは、後述する三次元造形物作成処理が開始されると、3次元CADシステム(図示せず。)から制御手段36へ第1層目の硬化層形状データが転送されるようになされており、さらに、第2層目以降の硬化層形状データが順次一定時間毎に1層分ずつ転送されるようになされている。
【0087】
次に、貯留槽16内部に流動性を有する光硬化性樹脂を貯留する。
【0088】
なお、貯留槽16に貯留する光硬化性樹脂の量としては、作成する三次元造形物の大きさに応じて適宜に設定すればよい。
【0089】
また、三次元造形物の作製途中で光硬化性樹脂が不足した場合には、光硬化性樹脂を貯留槽16内部に追加的に流し込めばよいものである。
【0090】
その後、作業者が、三次元造形装置10を操作するための操作子(図示せず。)を操作して、三次元造形物の作製を開始すると、制御手段36において三次元造形物作製処理が開始される。
【0091】
ここで、
図7のフローチャートには、三次元造形物作製処理の詳細な処理内容が示されており、この三次元造形物作製処理においては、まず、作製する三次元造形物の第1層目の硬化層形状データを3次元CADシステム(図示せず。)から取得する(ステップS702)。
【0092】
即ち、そのステップS702の処理においては、制御手段36に3次元CADシステム(図示せず。)から第1層目の硬化層形状データが転送されるものである。なお、このとき制御手段36においては、硬化層形状データが転送された時点からのタイムカウントを開始する。
【0093】
次に、レーザー光源14における焦点位置変更部材24を焦点位置変更状態とする(ステップS704)。
【0094】
即ち、このステップS702の処理では、まず、レーザー光源14を切替ピン50の右方側に移動した後に移動部材44を後方側に移動する。即ち、
図6(b)に示す状態とする。
【0095】
その後、レーザー光源14を左方側に移動することにより、切替ピン50によって板状部材34の左側面34bを押圧して、焦点位置変更部材24を焦点位置変更状態とする。
【0096】
そして、焦点位置変更部材24を焦点位置変更状態とすると、取得した硬化層形状データに基づいて、硬化層の輪郭を形成する(ステップS706)。
【0097】
つまり、ステップS706の処理においては、硬化層形状データにおける輪郭部分の走査ラインに基づいて、焦点位置変更部材24が焦点位置変更状態となっているレーザー光源14からレーザー光が照射されて、硬化層の輪郭を形成することとなる。
【0098】
即ち、硬化層の輪郭の形成においては、焦点位置(スポット位置)が照射面と一致する状態、つまり、照射面におけるレーザー光のスポット径が小さい状態でレーザー光源14からレーザー光が照射されることとなる。
【0099】
ステップS706の処理で硬化層の輪郭の形成が完了すると、次に、レーザー光源14における焦点位置変更部材24を焦点位置変更状態から焦点位置未変更状態とする(ステップS708)。
【0100】
即ち、このステップS708の処理では、まず、レーザー光源14を切替ピン50の左方側に移動した後に移動部材44を後方側に移動する。即ち、
図6(a)に示す状態とする。
【0101】
その後、レーザー光源14を右方側に移動することにより、切替ピン50によって板状部材34の右側面34aを押圧して、焦点位置変更部材24を焦点位置未変更状態とする。
【0102】
そして、焦点位置変更部材24を焦点位置未変更状態とすると、ステップS706の処理において輪郭を形成した硬化層形状データに基づいて、硬化層の輪郭内の領域を硬化する(ステップS710)。
【0103】
つまり、ステップS710の処理においては、硬化層形状データにおける輪郭内の領域の走査ラインに基づいて、焦点位置変更部材24が焦点位置未変更状態となっているレーザー光源14からレーザー光が照射されて、硬化層の輪郭内の領域を硬化することとなる。
【0104】
即ち、硬化層の輪郭内の硬化においては、焦点位置(スポット位置)が照射面よりレーザー光源14側に位置する状態、つまり、照射面におけるレーザー光のスポット径が大きい状態でレーザー光源14からレーザー光が照射されることとなる。
【0105】
こうして、取得した硬化層形状データに基づいて硬化層の形成が終了すると、形成した硬化層は最終層であるか否かの判断を行う(ステップS712)。
【0106】
即ち、このステップS712の判断処理においては、3次元CADシステム(図示せず。)から一定時間内に次層の硬化層形状データが転送されたか否かの判断を行うものである。
【0107】
つまり、制御手段36において、一定時間内に3次元CADシステム(図示せず。)から硬化層形状データが転送された場合には、形成した硬化層は最終層ではないと判断される。このとき、制御手段36においては、3次元CADシステム(図示せず。)から硬化層形状データが転送された時点からタイムカウントが開始される。
【0108】
一方、制御手段36において、一定時間内に3次元CADシステム(図示せず。)から硬化層形状データが転送されない場合には、形成した硬化層は最終層であると判断される。
【0109】
このステップS712の判断処理において、形成した硬化層は最終層ではないと判断されると、ステップS704の処理に進み、ステップS704の処理以降の処理を行う。このとき、ステップS706の処理においては、ステップS712の判断処理において取得した硬化層形状データに基づいて硬化層の輪郭を形成し、ステップS710の処理においては、ステップS712の判断処理において取得した硬化層形状データに基づいて硬化層の輪郭内の硬化を行うこととなる。
【0110】
また、ステップS712の判断処理において、形成した硬化層は最終層であると判断されると、三次元造形物の作製が完了したものとして三次元造形物作製処理を終了する。
【0111】
以上において説明したように、本発明による三次元造形装置10では、レーザー光源14において出射するレーザー光の焦点位置を変更することが可能な焦点位置変更部材24を設けるようにしたものである。
【0112】
また、レーザー光源14が移動機構30によりXY平面を移動する筐体11内において、焦点位置変更部材24を焦点位置変更状態または焦点位置未変更状態へ切り替える際に使用する切替ピン50を設けるようにしたものである。
【0113】
そして、移動機構30によるレーザー光源14の移動により、焦点位置変更部材24の板状部材34を切替ピン50で所定の方向に押圧することにより、焦点位置変更部材24を焦点位置変更状態から焦点位置未変更状態へ、あるいは、焦点位置未変更状態から焦点位置変更状態へ切り替えるようにしたものである。
【0114】
つまり、本発明による三次元造形装置10においては、大小2種類のスポット径を利用して、より精度の高い形状に対応しなければならない硬化層の輪郭部分においては、スポット径を小さくし、広い範囲の硬化を行わなければならない硬化層の輪郭内の領域においては、スポット径を大きくするようにしたものである。
【0115】
即ち、本発明による三次元造形装置10では、硬化層のうち、より精度の高い形状に対応しなければならない硬化層の輪郭部分においては、焦点位置変更状態により焦点位置を変更してスポット径が小さくなった状態のレーザー光を照射するようにしたものである。
【0116】
また、硬化層のうち、広い範囲の硬化を行わなければならない硬化層の輪郭内の領域においては、焦点位置未変更状態により焦点位置を変更することなくスポット径が大きい状態のレーザー光を照射するようにしたものである。
【0117】
これにより、本発明による三次元造形装置10においては、レーザー光のスポット径を変更するような構成を備えていない従来の技術による三次元造形装置と比較して、簡単な構成により、三次元造形物の作製時間を増大することなく、より複雑な形状に対応することができることとなる。
【0118】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(8)に示すように変形するようにしてもよい。
【0119】
(1)上記した実施の形態においては、レーザー光源14から出射するレーザー光は、焦点位置変更部材24が焦点位置未変更状態にある場合には、その焦点位置が照射面より発光部材22側に位置するようにし、焦点位置変更部材24が焦点位置変更状態にある場合には、その焦点位置が照射面と一致するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0120】
具体的には、レーザー光源14から出射するレーザー光は、焦点位置変更部材24が焦点位置変更状態にある場合には、焦点位置変更部材24が焦点位置未変更状態にある場合と比較して、レーザー光の照射面におけるスポット径が、単に、小さくなるようにしてもよい。
【0121】
また、レーザー光源14から出射するレーザー光は、焦点位置変更部材24が焦点位置変更状態にある場合には、焦点位置変更部材24が焦点位置未変更状態にある場合と比較して、レーザー光の照射面におけるスポット径が大きくなるようにしてもよい。
【0122】
例えば、レーザー光源14から出射するレーザー光は、焦点位置変更部材24が焦点位置未変更状態にある場合には、その焦点位置が照射面より遠くに位置するようにし、焦点位置変更部材24が焦点位置変更状態にある場合には、その焦点位置が照射面と一致するようにしてもよい(
図9(a)を参照する。)。
【0123】
また、レーザー光源14から出射するレーザー光は、焦点位置変更部材24が焦点位置未変更状態にある場合には、その焦点位置が照射面と一致するようにし、焦点位置変更部材24が焦点位置変更状態にある場合には、その焦点位置が照射面より発光部材22側に位置するようにしてもよい(
図9(b)を参照する。)。
【0124】
さらに、レーザー光源14から出射するレーザー光は、焦点位置変更部材24が焦点位置未変更状態にある場合には、その焦点位置が照射面と一致するようにし、焦点位置変更部材24が焦点位置変更状態にある場合には、その焦点位置が照射面より遠くに位置するようにしてもよい(
図9(c)を参照する。)。
【0125】
(2)上記した実施の形態においては、筐体11内の後方側の内壁面11aにおいて、一対のレール40と平行する方向に延設された切替ピン50を設けるようにし、当該切替ピン50を利用して、レーザー光源14における焦点位置変更部材24を焦点位置変更状態から焦点位置未変更状態へ、または、焦点位置未変更状態から焦点位置変更状態へ変更するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0126】
具体的には、こうした焦点位置変更部材24の状態を切り替えるための部材を、筐体11内に複数設けるようにしてもよい。
【0127】
例えば、
図10(a)に示すように、筐体11内の右方側の内壁面11bの後方側において、一対のレール42と平行する方向に延設された切替ピン52と、筐体11内の左方側の内壁面11cの後方側において、一対のレール42と平行する方向に延設された切替ピン54とを設けるようにしてもよい。
【0128】
この場合には、焦点位置変更部材24を焦点位置未変更状態とする際には、切替ピン52により板状部材34の右側面34aを押圧するようにする。また、焦点位置変更部材24を焦点位置変更状態とする際には、切替ピン54により板状部材34の左側面34bを押圧するようにする。
【0129】
(3)上記した実施の形態においては、焦点位置変更部材24を回動式とし、焦点位置変更部材24を回動してレーザー光の焦点位置を変更するようにしていたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0130】
具体的には、
図10(b)に示すようにして、焦点位置変更部材24に換えて、焦点位置を変更するためのレンズ32を備えたスライド式焦点位置変更部材62を設けるようにして、当該スライド式焦点位置変更部材62をスライドさせることにより、レーザー光の焦点位置を変更するようにしてもよい。
【0131】
即ち、この場合には、発光部材22の上面22bにおいて、一対のレール60が設けられ、このレール60上にレンズ32を備えたスライド式焦点位置変更部材62が摺動自在に配設されている。
【0132】
なお、一対のレール60は、各レール間にレーザー出射光22aが位置するように設計されている。
【0133】
そして、スライド式焦点位置変更部材62は、制御手段36の制御により、発光部材22に設けられた駆動モーター64が駆動して、前後方向にスライドするものである。
【0134】
つまり、スライド式焦点位置変更部材62を焦点位置変更状態とする場合には、スライド式焦点位置変更部材62を前方側に移動して、レーザー出射光22a上にスライド式焦点位置変更部材62に設けられたレンズ32が位置するようにする。
【0135】
また、スライド式焦点位置変更部材62を焦点位置未変更状態とする場合には、スライド式焦点位置変更部材62を後方側に移動して、レーザー出射光22a上にスライド式焦点位置変更部材62が位置しないようにする。
【0136】
(4)上記した実施の形態においては、三次元造形装置の構成として、造形ユニット12の下方側から光を照射する規制液面方式としたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0137】
即ち、三次元造形装置の構成として、造形ユニット12の上方側から光を照射する自由液面方式としてもよい(
図11を参照する。)。
【0138】
さらに、
図11に示す三次元造形装置における貯留槽16の液面にガラスなどの透明基板を設けるなどして、規制液面方式とするようにしてもよい。
【0139】
(5)上記した実施の形態においては、レーザー光源14は移動機構30によってXY平面で移動することが可能であるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、レーザー光源14をXY平面で移動することが可能な機構であれば、移動機構としてはどのような構成であってもよい。
【0140】
(6)上記した実施の形態においては、特に記載しなかったが、貯留槽16に、例えば、光硬化性樹脂の量を測定することのできるセンサを設けるようにして、光硬化性樹脂の量を監視するようにしてもよい。
【0141】
この場合、三次元造形物作製処理中に光硬化性樹脂が不足した場合には、作製中の硬化層の形成が完了した段階で三次元造形物作製該処理を中止するようにし、光硬化性樹脂が補充された後に、作業者が操作子(図示せず。)を操作することにより、当該三次元造形物作製処理を再開するようにすればよい。
【0142】
(7)上記した実施の形態においては、焦点位置変更部材24は、矢印A方向(反時計回り方向)に回動して焦点位置変更状態から焦点位置未変更状態になり、矢印B方向(時計回り方向)に回動して焦点位置未変更状態から焦点位置変更状態になるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である(
図3(a)(c)を参照する。)。
【0143】
即ち、焦点位置変更部材24を、矢印B方向(時計回り方向)に回動すると焦点位置変更状態から焦点位置未変更状態となるようにするとともに、矢印A方向(反時計回り方向)に回動すると焦点位置未変更状態から焦点位置変更状態となるようにしてもよい。
【0144】
このとき、焦点位置未変更状態のときに焦点位置変更部材24と当接する板部28aは焦点位置変更部材24の左方側に位置するようにし、焦点位置変更状態のときに焦点位置変更部材24と当接する板部28bは焦点位置変更部材24の右方側に位置するようにする。
【0145】
(8)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(7)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。