(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  軸方向の回転流路が設けられ回転軸に装着される回転部および軸方向の固定流路が設けられた固定部を同軸配置して成り、流体供給源から供給される流体を軸心廻りに回転する前記回転部の回転流路へ前記固定流路を介して送給するロータリジョイントであって、
  前記回転部に設けられ側端面に前記回転流路が開口した第1のシール面を有する回転シール部と、
  前記固定流路が前記軸方向に貫通して形成され保持部材に設けられた嵌合孔に所定の摺動隙間を保って前記軸方向の移動が許容された状態で嵌合する固定軸部を有し、一方側の側端面に前記固定流路が開口した第2のシール面を有する固定シール部と、
  前記摺動隙間に設けられこの摺動隙間を前記軸方向の移動を許容しながらシールする第1の隙間シール部と、
  前記保持部材に設けられ前記摺動隙間と第1の隙間シール部よりも上流側において連通した加圧孔と、
  前記摺動隙間において前記加圧孔よりも上流側に設けられ、この摺動隙間を前記軸方向の移動を許容しながら下流側方向への流体の流動のみを選択的にシールする第2の隙間シール部と、
  前記摺動隙間内の圧力が前記固定軸の上流側端の圧力よりも予め設定された所定の圧力差以上高くなるように前記加圧孔を介して加圧する加圧手段とを備え、
  前記流体供給源から前記嵌合孔内へ前記流体を供給して前記固定軸部を流体力によって下流側へ押圧することにより、前記第1のシール面と第2のシール面とを相互に密着させて面シール部を形成し、
  前記摺動隙間内を加圧することにより摺動隙間内の流体を前記第2の隙間シール部を上流側へ通過させて固定流路に流動させ、
  前記第2の隙間シール部は、前記摺動隙間に開口した円周溝内においてOリング部材を付勢部材によって下流側に押し付けて構成され、
  前記摺動隙間内において上流側方向へ流体が流動することにより、Oリング部材は前記付勢部材の付勢力に抗して上流側へ変位し、これにより上流側方向への流体の流動が許容されることを特徴とするロータリジョイント。
  軸方向の回転流路が設けられ回転軸に装着される回転部および軸方向の固定流路が設けられた固定部を同軸配置して成り、流体供給源から供給される流体を軸心廻りに回転する前記回転部の回転流路へ前記固定流路を介して送給するロータリジョイントであって、
  前記回転部に設けられ側端面に前記回転流路が開口した第1のシール面を有する回転シール部と、
  前記固定流路が前記軸方向に貫通して形成され保持部材に設けられた嵌合孔に所定の摺動隙間を保って前記軸方向の移動が許容された状態で嵌合する固定軸部を有し、一方側の側端面に前記固定流路が開口した第2のシール面を有する固定シール部と、
  前記摺動隙間に設けられこの摺動隙間を前記軸方向の移動を許容しながらシールする第1の隙間シール部と、
  前記保持部材に設けられ前記摺動隙間と第1の隙間シール部よりも上流側において連通した加圧孔と、
  前記摺動隙間において前記加圧孔よりも上流側に設けられ、この摺動隙間を前記軸方向の移動を許容しながら下流側方向への流体の流動のみを選択的にシールする第2の隙間シール部と、
  前記摺動隙間内の圧力が前記固定軸の上流側端の圧力よりも予め設定された所定の圧力差以上高くなるように前記加圧孔を介して加圧する加圧手段とを備え、
  前記流体供給源から前記嵌合孔内へ前記流体を供給して前記固定軸部を流体力によって下流側へ押圧することにより、前記第1のシール面と第2のシール面とを相互に密着させて面シール部を形成し、
  前記摺動隙間内を加圧することにより摺動隙間内の流体を前記第2の隙間シール部を上流側へ通過させて固定流路に流動させ、
  前記第2の隙間シール部の上流側に前記摺動隙間に開口した円周溝を設け、前記第2の隙間シール部を通過した流体を前記円周溝内に導いて円周方向に拡散させることを特徴とするロータリジョイント。
【背景技術】
【0002】
  工作機械の主軸など作動時に回転状態にある回転部に冷却用のクーラントなどの流体を送給する流体送給機構において、固定された流体送給配管を回転部の流路と接続する流体継手としてロータリジョイントが用いられる。ロータリジョイントは、回転部に結合されて回転する回転軸と流体送給配管に接続される固定軸とを同軸に配置して軸方向に対向させ、それぞれの対向端面に装着された回転シールのシール面を相互に密着させることにより流体の漏洩を防止する構成となっており、流体送給配管から回転状態にある回転部へ、所定圧力・所定流量の流体がロータリジョイントを介して連続的に供給される。このような構成のロータリジョイントでは、シール面を密着させるために固定軸側を軸方向に移動させる必要があることから、固定軸はケーシング部などに設けられた嵌合孔に摺動自在に嵌合しており、嵌合孔の内周と固定軸との間に介設されたOリングなどのシール部材によって、この摺動隙間からの流体の漏れが防止される。
【0003】
  ところでロータリジョイントによる供給対象となる流体には、工作機械に循環使用されるクーラントなど、微少な切削屑などの異物を含んだものが多く、連続して流体を供給する過程において、固定軸と嵌合孔との間の摺動隙間にこれらの異物が侵入することが避けられない。そしてこれらの異物が反復して侵入すると摺動隙間内において堆積固着し、固定軸の円滑な摺動が阻害される結果、ロータリジョイントは正常に作動せずに流体の大量の漏洩などの不具合が生じる。そこでこのような不具合を防止することを目的として、固定軸と嵌合孔との間の摺動隙間への異物侵入を防止する構造のロータリジョイントが提案されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
  特許文献1に示す先行技術例では、嵌合孔の内周面に設けられた環状溝内にグリースを常時押し込む構成とすることにより摺動隙間をグリースで充填状態とし、摺動隙間への異物の侵入を防止するようにしている。また特許文献2に示す先行技術例では、固定軸の上流側の端部に屈曲自在なダイヤフラムを装着して、固定軸の流路孔以外に流体が流れないように密封し、これにより摺動隙間への異物の侵入を防止するようにしている。
 
【発明を実施するための形態】
【0011】
  次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず
図1を参照して、ロータリジョイント1の全体構成を説明する。
図1において、ロータリジョイント1は、工作機械のスピンドル軸などの回転軸へ冷却用の流体を送給する流体供給機構に用いられるものであり、軸方向の回転流路が設けられた回転部1aおよび軸方向の固定流路が設けられた固定部1bを同軸配置して構成される。
 
【0012】
  回転部1aは回転軸であるスピンドル軸2の流路孔2aに締結されており、スピンドル軸2は、スピンドルに内蔵されたモータによって回転駆動されて軸心A廻りに回転するとともに、クランプ/アンクランプシリンダによって軸方向の進退動作を行う。また固定部1bはケーシング3に流路孔3bと連通して設けられた装着孔3aに、保持部材であるハウジング部材7を介して固定装着されており、スピンドル軸2が挿通するフレーム(図示省略)にボルトなどの締結手段によってケーシング3を着脱自在に締結することにより、固定部1bは回転部1aと同軸に配置される。流路孔3bには、流体供給源(図示省略)より液体クーラントや冷却用のエアなどの流体が送給される(矢印a)。
 
【0013】
  次に各部の詳細構造を説明する。回転部1aはスピンドル軸2に装着されたロータ4を主体としており、ロータ4は回転軸部4aの一方側の端部に回転軸部4aよりも外径が大きいフランジ部4bを設け、さらに軸心部に回転流路4eを軸方向に設けた形状となっている。回転軸部4aの外面には雄ねじ部4dが設けられており、流路孔2aの内面には雌ねじ部2bが設けられている。雄ねじ部4dを雌ねじ部2bに螺合させることにより、ロータ4はスピンドル軸2にねじ締結され、Oリング6によってねじ締結部が密封される。これにより、回転流路4eはスピンドル軸2の流路孔2aと連通する。
 
【0014】
  ロータ4の右側(固定部1bと対向する側)の側端面には、回転流路4eの開孔面を囲む配置で円形状の凹部4cが形成されており、凹部4cには第1のシールリング5が固定されている。第1のシールリング5はセラミックなどの耐摩耗性に富む硬質材料を、中央部に開口部5aを有する円環形状に成形したものであり、平滑面に仕上げられた第1のシール面5bを外面側にした状態で凹部4cに固定される。そしてこの状態では、回転流路4eは開口部5aと連通して第1のシール面5bに開口する。上記構成において、第1のシールリング5が固定されたロータ4は、回転部1aに設けられ側端面に回転流路4eが開口した第1のシール面5bを有する回転シール部となっている。
 
【0015】
  次に、ケーシング3に装着される固定部1bの構造を説明する。固定部1bは、フローティングシート8をハウジング部材7に装着した構成となっている。ケーシング3の装着面3cには流路孔3bと連通して設けられた装着孔3aが開口しており、装着孔3aには固定部1bの本体を構成する円筒形状のハウジング部材7から延出して設けられた嵌合凸部7eが嵌合する。そしてハウジング部材7は、装着面3cに設けられたねじ孔(図示省略)にボルト締結(ボルト締結線B参照)され、Oリング13によって装着孔3aへの嵌合部が密封される。
 
【0016】
  フローティングシート8は、一方側(図において回転部1aと対向する側)に円板形状のフランジ部8bが設けられ、他方側に固定流路8fが軸方向に貫通して形成された固定軸部8aを有する形状となっている。フランジ部8bの左側(回転部1aと対向する端面)に円堤状に設けられた凸部8c内には、第2のシールリング9が固定されている。第2のシールリング9は第1のシールリング5と同様の硬質材料を中央部に開口部9aを有する円環形状に成形したものであり、平滑面に仕上げられた第2のシール面9bを外面側にした状態でフランジ部8bに固定される。そしてこの状態では、固定流路8fは開口部9aと連通して第2のシール面9bに開口する。
 
【0017】
  固定軸部8aは、ハウジング部材7の中心部に軸方向に貫通して設けられた嵌合孔7aに、軸方向の移動が許容された状態で嵌合する。すなわち、嵌合孔7a、固定軸部8aの形状・寸法設定により、嵌合孔7aの内周面7bと固定軸部8aの外周面8dとの間に所定の隙間寸法の摺動隙間G(
図5参照)が確保されるようになっている。ハウジング部材7の嵌合孔7aには、内周面7bから突出して廻り止めガイド用のガイドピン20が植設されており、ガイドピン20は固定軸部8aの上流部近傍の外周面に軸方向に設けられたガイド溝8eに嵌合している。
 
【0018】
  上記構成において第2のシールリング9が固定されたフローティングシート8は、固定流路8fが軸方向に形成され保持部材であるハウジング部材7に設けられた嵌合孔7aに軸方向の移動が許容された状態で嵌合する固定軸部8aを有し、側端面に固定流路8fが開口した第2のシール面9bを有する固定シール部となっている。なお本実施の形態においては、フローティングシート8を保持部材としてのハウジング部材7を介してケーシング3に装着する例を示しているが、ケーシング3にフローティングシート8を直接装着するようにしてもよい。この場合には保持部材としてのケーシング3に設けられた嵌合孔に固定軸部8aを軸方向の移動が許容された状態で嵌合させる。
 
【0019】
  嵌合孔7aの内周面7bには下流側近傍に位置してシール溝7cが形成されており、シール溝7cには円環状のシール部材であるOリング11が嵌合している。嵌合孔7aに固定軸部8aが嵌合した状態において、Oリング11が外周面8dに押し付けられることにより摺動隙間Gはシールされる。シール溝7c内に嵌合して装着されたOリング11は、摺動隙間Gを固定軸部8aの軸方向の移動を許容しながらシールする第1の隙間シール部を形成する。
 
【0020】
  ハウジング部材7の内周面7bにおいてシール溝7cの上流側であってシール溝7dの下流側には、内周面7bを外径方向に削り込んだ円周溝14が形成されており、円周溝14は上述の摺動隙間Gと連通している。円周溝14には、ハウジング部材7に設けられた加圧孔15が開口して連通しており、さらに加圧孔15はケーシング3を貫通して加圧配管16と接続されている。加圧配管16は開閉弁17を介して加圧部18と接続されており、開閉弁17の開閉および加圧部18の作動は加圧制御部19によって制御される。
 
【0021】
  このとき、摺動隙間G内の圧力が嵌合孔7a内の圧力よりも予め設定された所定の圧力差だけ高くなるように、加圧孔15を介して加圧する。すなわち、加圧部18の加圧力を所定圧に設定した状態で作動させ、この状態で開閉弁17を開にすることにより、加圧された流体が、加圧配管16および加圧孔15を介して円周溝14に流入する。ここで摺動隙間Gは下流側においてOリング11によってシールされていることから、円周溝14に流入した圧力流体は、摺動隙間G内を上流側方向に流動し、固定軸部8aの側端部の隙間から摺動隙間G内に堆積した異物とともに、嵌合孔7a内に排出される。
 
【0022】
  上記構成において、加圧孔15は保持部材であるハウジング部材7に設けられ、摺動隙間Gと前述の第1の隙間シール部よりも上流側において連通して設けられており、加圧配管16、開閉弁17および加圧制御部19は、摺動隙間G内の圧力が嵌合孔7a内の圧力よりも予め設定された所定の圧力差以上高くなるように加圧孔15を介して加圧する加圧手段を構成する。そして本実施の形態においては、この加圧手段によって摺動隙間G内を加圧することにより、摺動隙間G内の流体を固定流路8fに流動させて、摺動隙間G内に堆積した異物を排出するようにしている。
 
【0023】
  嵌合孔7aの内周面7bにおいて加圧孔15が連通した円周溝14の上流側にはシール溝7dが形成されており、シール溝7dにはV字断面形状を有する円環状のシール部材であるリップシール12が装着されている。ここで、リップシール12の形状およびシール特性について、
図3を参照して説明する。
図3(a)は、嵌合孔7aに固定軸部8aが嵌合した状態において、シール溝7dにリップシール12が装着された状態を示している。リップシール12は、シール溝7dの溝壁面に当接する連結リング部12aから内周側リップ部12b、外周側リップ部12cの2つのリップ部がV字形状に延出した断面形状を有している。リップシール12がシール溝7dに装着された状態では、内周側リップ部12bが固定軸部8aの外周面8dに押し付けられ、外周側リップ部12cがシール溝7dの底面に押し付けられた状態となる。そしてこの状態では、固定軸部8aの軸方向の移動が許容される。
 
【0024】
  図3(b)は、このリップシール12の装着状態において、摺動隙間G内を下流側に流体が流動(矢印f)する際の、リップシール12のシール特性を示している。すなわち摺動隙間Gを介してシール溝7dに到達した流体の圧力がリップ間隙間12dに作用することにより、内周側リップ部12b,外周側リップ部12cはそれぞれ外周面8dおよびシール溝7dの底面に押し付けられる(矢印g)。そしてこの押し付け力により、摺動隙間G内における下流側方向への流体の流動はリップシール12によってシールされる。
 
【0025】
  これに対し、
図3(c)は、このリップシール12の装着状態において、摺動隙間G内を上流側に流体が流動(矢印h)する際の、リップシール12のシール特性を示している。すなわち摺動隙間Gを介してシール溝7dに到達した流体の圧力が内周側リップ部12bに上面側から作用することにより、内周側リップ部12bは外周側リップ部12cと近接する方向に撓み変形する(矢印i)。これにより、内周側リップ部12bと外周面8dとの間には隙間が生じ、下流側からの流体は摺動隙間Gを介して上流側へ流動する(矢印j)。すなわちリップシール12は、固定軸部8aの軸方向の移動を許容しながら、摺動隙間Gを下流側方向への流体の流動のみを選択的にシールする第2の隙間シール部となっている。
 
【0026】
  なお第2の隙間シール部の形態として、ここでは摺動隙間Gに開口した円周溝7d内にリップを上流側に向けて装着されたリップシール12を用いる例を示したが、第2の隙間シール部として使用可能なシール形態はリップシール12には限定されず、
図4に示す例など、一方向の流動のみを選択的にシール可能な円周状シールであれば、各種のシールを採用することができる。
 
【0027】
  例えば
図4(a)では、摺動隙間Gに開口した円周溝7d内においてOリング部材121をスプリングなどの付勢部材122によって下流側に押し付けて構成された第2の隙間シール部の例を示している。この場合には、摺動隙間G内における下流側方向への流体の流動(矢印f)はOリング部材121によってシールされる。これに対し、摺動隙間G内において上流側方向へ流体が流動(矢印h)することにより、Oリング部材121は付勢部材122の付勢力に抗して上流側へ変位し、これにより上流側方向への流体の流動が許容される(矢印j)。
 
【0028】
  また
図4(b)では、シール溝7d内に複数枚の屈曲シール123を積層して装着した例を示している。この場合には、摺動隙間G内における下流側方向への流体の流動(矢印f)は屈曲シール123によってシールされる。これに対し、摺動隙間G内において上流側方向へ流体が流動(矢印h)することにより、屈曲シール123は外周面8dとの間に隙間を生じる方向に変位し、これにより上流側方向への流体の流動が許容される(矢印j)。
 
【0029】
  さらに
図4(c)では、下流側ほど溝深さが浅いテーパ状の底面を有するシール溝7d*内に、Oリング部材124を装着した構成の第2の隙間シール部の例を示している。この場合には、摺動隙間G内における下流側方向への流体の流動(矢印f)は、シール溝7d*内において最も溝深さが浅い下流側に移動して押し付けられたOリング部材124によってシールされる。これに対し、摺動隙間G内において上流側方向へ流体が流動(矢印h)することにより、Oリング部材124はシール溝7d*内において最も溝深さが深い上流側へ移動する。これにより、Oリング部材124と外周面8dとの間に隙間が生じ、上流側方向への流体の流動が許容される(矢印j)。
 
【0030】
  ここで、加圧部18としては、当該ロータリジョイント1が供給対象とする流体の種類,用途,さらに摺動隙間G内に堆積する異物の種類に応じて、各種の形態のものを選択して用いることができる。例えば、流体供給源から供給される流体がクーラント液などの液体である場合には、加圧部18として液体を加圧して吐出するポンプを用いることができる。
 
【0031】
  このとき、加圧して加圧孔15を介して摺動隙間G内に送給する液体の種類としては、供給対象の液体と同一の液体を用いてもよく、また単に水を加圧して摺動隙間G内に送給するようにしてもよい。さらに、供給対象の流体が気体であって液体を流動させることが望ましくない場合や、摺動隙間G内に堆積する異物が除去容易な特性を有するものである場合には、加圧部18としてエアーや窒素ガスなどの気体を加圧して加圧孔15を介して摺動隙間G内に送給する構成を採用してもよい。
 
【0032】
  次に
図2を参照して、ロータリジョイント1の動作を説明する。流路孔3bを介して嵌合孔7a内に供給対象の流体が送給(矢印a)されることにより、この流体圧は固定軸部8aの他方側(第2のシールリング9の反対側)の側端面に作用する。これにより、固定軸部8aは嵌合孔7a内で回転部1a側へスライドし、第2のシールリング9は第1のシールリング5に対して、側端面の投影面積に流体圧を乗じた大きさの流体力Fで押圧される。この流体力Fは第2のシール面9bと第1のシール面5bとを相互に密着させ、これにより固定流路8fから軸廻りに回転状態の回転流路4eへ送給される流体の漏洩を防止する面シール部10が形成される。
 
【0033】
  このフローティングシート8の軸方向のスライドにおいて、ガイドピン20は固定軸部8aの外周面に軸方向に設けられたガイド溝8eに嵌合していることから、フローティングシート8の軸方向の移動がガイドされるとともに、軸廻りの廻り止めが行われる。なお、このような廻り止め機構の構成として、フランジ部8bにボルトなどを用いたガイド軸をスライド方向に設けるとともに、このガイド軸が軸方向に摺動するガイド孔を設けるようにしてもよい。
 
【0034】
  ロータリジョイント1の作動状態においては、送給される流体の圧力によるフローティングシート8の進出と、スピンドル軸2の進退動作によって、面シール部10のシール面の接離が行われる。すなわちフローティングシート8が後退して第1のシール面5bと第2のシール面9bとが相互に離隔した状態において、流体が流路孔3bに送給されることにより、嵌合孔7aにおいて流体力Fが固定軸部8aの側端面に作用して軸方向に押圧する。これにより、フローティングシート8が前進(矢印b方向)し、第1のシール面5bと第2のシール面9bとが当接して相互に密着した面シール部10が形成される。これにより、固定流路8fから回転状態の回転流路4eへの流体の送給が行われる。
 
【0035】
  そしてスピンドル軸2が固定部1bに対して相対的に前進(矢印e方向)することにより、フローティングシート8は後退(矢印c方向)し、フランジ部8bがハウジング部材7に近接した位置(
図1に示す位置)に復帰する。そしてこの状態からスピンドル軸2を相対的に後退(矢印d方向)させることにより、第1のシール面5bと第2のシール面9bとが相互に離隔した状態に戻る。
 
【0036】
  次に
図5を参照して、上記構成のロータリジョイント1における異物排出機能を説明する。
図5(a)は、流路孔3bを介して送給され嵌合孔7aに流入(矢印j)した流体が、固定軸部8aの固定流路8fを流下して回転部1a側へ向かって流れるときの状態を示している。このとき供給対象となる流体には、工作機械に循環使用されるクーラントなど、微少な切削屑などの異物20を含んでいる場合が多く、これらの異物20の一部は、摺動隙間G内に流れ込む流体とともに摺動隙間G内に進入する。このとき、これらの異物20の下流側への移動は第2の隙間シール部であるリップシール12によって大部分は止められるが、一部はリップシール12を通過して下流側の摺動隙間Gにも進入する。そしてこれらの異物20の進入が反復して摺動隙間G内において堆積固着すると、固定軸部8aの円滑な摺動が阻害される結果となる。
 
【0037】
  このような場合にあっても、本実施の形態に示すロータリジョイント1においては、第1の隙間シール部であるOリング11の上流側に設けられた加圧孔15を介しての加圧機能により、摺動隙間G内における異物20の堆積固着を防止することができる。すなわち本実施の形態では、流体供給を継続実行する過程において予め設定された所定のタイミングで、摺動隙間G内に加圧孔15から加圧流体を供給して異物20を強制的に排出させるフラッシング作業を行う。
 
【0038】
  すなわち、
図5(b)に示すように、加圧部18を作動させた状態で開閉弁17を開にし、加圧孔15内に加圧流体を送給し(矢印k)、円周溝14に流入させる(矢印l)。このとき摺動隙間Gに連通した円周溝14における圧力P1が、嵌合孔7a内の圧力P2よりも所定の圧力差ΔP以上高くなるように、加圧部18の圧力設定を行う。この圧力差ΔPは加圧流体が摺動隙間G内の流路抵抗に抗して流動する(矢印m)ことが可能な圧力値に設定される。
 
【0039】
  そして円周溝14の上流側に設けられた第2の隙間シール部であるリップシール12は、上流側方向への流体の流動を許容することから、加圧孔15内に送給された加圧流体は摺動隙間G内をリップシール12を通過して上流側方向へ流動する。これにより、摺動隙間G内に堆積した異物20は、加圧流体の流動とともに摺動隙間Gが固定軸部8aの端部に開口した開口隙間から嵌合孔7a内に排出され(矢印n)、さらに固定流路8fを介して下流側流路へ流動する。
 
【0040】
  上述の異物除去のためのフラッシング実行タイミングは、流体供給時あるいは流体供給停止時のいずれにおいても設定可能である。例えば流体供給時にも高頻度で異物除去を必要とする場合には、流路孔3bを介して供給される流体の圧力を基準として前述の圧力差ΔPが確保可能なように加圧部18の設定圧力を規定する。また流体供給停止時においてのみ異物除去を行えば足りるような場合には、単に水またはエアーを前述の圧力差ΔPが確保可能なように加圧部18を作動させる。
 
【0041】
  なお上述のフラッシングによる異物除去においては、内周面7bと外周面8dの間の摺動隙間Gの全周範囲にわたって加圧流体を流動させる必要があるが、リップシール12の状態によっては、摺動隙間Gの周方向位置によって加圧流体の流動状態にばらつきが生じる可能性がある。このような流動状態のばらつきを極力少なくするためには、リップシール12の上流側に摺動隙間Gに開口した円周溝を設け、リップシール12を通過した流体をこの円周溝内に導いて円周方向に拡散させる対策が有効である。
 
【0042】
  すなわち、
図6(a)に示すように、固定軸部8aにおいてシール溝7dの上流側に外周面8dから内径方向に円周溝8gを形成する。または、
図6(b)に示すように、嵌合凸部7eにおいてシール溝7dの上流側に内周面7bから外径方向に円周溝7fを形成する。これにより、異物除去対象範囲の摺動隙間Gにおいて、円周溝8g、円周溝7fの上流側では、摺動隙間G内の流体の周方向位置による流動状態のばらつきを極力抑制することができる。
 
【0043】
  上記説明したように、本実施の形態に示すロータリジョイント1では、保持部材であるハウジング部材7に設けられた嵌合孔7aに固定軸部8aが嵌合する摺動隙間Gにおいて、下流側に設けられこの摺動隙間Gを軸方向の移動を許容しながらシールする第1の隙間シール部としてのOリング11と、摺動隙間Gにおいて第1の隙間シール部よりも上流側に開口した加圧孔15と、摺動隙間Gにおいて加圧孔15よりも上流側に設けられ摺動隙間Gを軸方向の移動を許容しながら下流側方向への流体の流動のみを選択的にシールする第2の隙間シール部としてのリップシール12と、摺動隙間G内の圧力が固定流路8f内の圧力よりも予め設定された所定の圧力差ΔP以上高くなるように加圧孔15を介して加圧する加圧手段とを備えるようにしたものである。これにより、摺動隙間G内を加圧して摺動隙間G内の流体を固定流路8fに流動させることが可能となり、摺動隙間G内に異物20が侵入して堆積固化することに起因する不具合を簡便な構成で有効に防止することができる。