特許第5993273号(P5993273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993273
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】意思決定支援システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20120101AFI20160901BHJP
【FI】
   G06Q10/04
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-230912(P2012-230912)
(22)【出願日】2012年10月18日
(65)【公開番号】特開2014-81878(P2014-81878A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233491
【氏名又は名称】株式会社日立システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 英志
(72)【発明者】
【氏名】森田 豊久
【審査官】 田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−312586(JP,A)
【文献】 特開2010−146137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機システムを用いて、推定モデルの変数に入力するパラメータを変更して推定結果のシミュレーションを行うことにより意思決定を支援するシステムであって、
該推定モデルに利用されている変数の中で値が変更可能な変数を、端末より取得する設定手段と、
該端末から取得された変数から、推定を行う値の複数の組み合わせを生成する組合せ生成手段と、
該生成手段によって生成された値の複数の組み合わせを用いてシミュレーションを行い、推定結果を得る推定手段と、
該推定手段によって推定結果と用いられた値の組み合わせを該端末に出力して、何れの値の変更が何れの推定結果を変更するかを可視的に表示する手段とを有する
ことを特徴とする意思決定支援システム。
【請求項2】
推定モデルを用いて、推定モデルの変数に入力するパラメータを変更して推定結果のシミュレーションを行うシステムであって、変更可能な変数の設定を行い、変更パラメータを複数の組み合わせにより該端末から入力して、
前記推定手段は、前記複数の組み合わせとして複数のパラメータセットで推定結果を算出し、
前記表示手段は、該推定結果における、現状と異なるパラメータセットでのシミュレーション結果と現状パラメータセットでのシミュレーション結果とを推定結果の順に該端末にランキング表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の意思決定支援システム。
【請求項3】
前記設定手段は、該端末から入力される該複数のパラメータセットの変数ごとに複数のパラメータを設定して、
前記生成手段は、設定されたパラメータのすべての組み合わせを生成してシミュレーションの入力とする
ことを特徴とする請求項2に記載の意思決定支援システム。
【請求項4】
前記シミュレーション結果の該端末におけるランキング表示は、現状パラメータセットから変更がなされたパラメータに色づけまたは網掛けを行うことを特徴とする請求項2乃至3のいずれかに記載の意思決定支援システム。
【請求項5】
該意思決定支援システムは企業の倒産確率を推定して意思決定を支援するシステムであり、
前記表示手段は、現状と異なるパラメータセットでの倒産確率のシミュレーション結果と現状パラメータセットでのシミュレーション結果を、倒産確率の順に該端末にランキング表示し、それぞれのシミュレーション結果にはパラメータセットと倒産確率を該端末に表示する
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の意思決定支援システム。
【請求項6】
該意思決定支援システムは案件の受注確率を推定して意思決定を支援するシステムであり、
前記表示手段は、現状と異なるパラメータセットでの受注確率のシミュレーション結果と現状パラメータセットでのシミュレーション結果を、受注確率の順に該端末にランキング表示し、それぞれのシミュレーション結果にはパラメータセットと受注確率を該端末に表示する
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の意思決定支援システム。
【請求項7】
該意思決定支援システムは製品の不良品率を推定して意思決定を支援するシステムであり、
前記表示手段は、現状と異なるパラメータセットでの不良品率のシミュレーション結果と現状パラメータセットでのシミュレーション結果を、不良品率の順に該端末にランキング表示し、それぞれのシミュレーション結果にはパラメータセットと不良品率を該端末に表示する
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の意思決定支援システム。
【請求項8】
計算機システムでプログラムを実行することで、推定モデルの変数に入力するパラメータを変更して推定結果のシミュレーションを行うことにより意思決定を支援する意思決定支援方法であって、
該計算機システムは、該推定モデルに利用されている変数の中で値が変更可能な変数を、端末より取得する設定ステップと、
該計算機システムは、該端末から取得された変数から、推定を行う値の複数の組み合わせを生成する組合せ生成ステップと、
該計算機システムは、該生成ステップで生成された値の複数の組み合わせを用いてシミュレーションを行い、推定結果を得る推定ステップと、
該計算機システムは、該推定ステップによる該推定結果と用いられた値の組み合わせを該端末に出力して、何れの値の変更が何れの推定結果を変更するかを可視的に表示するステップとを有する
ことを特徴とする意思決定支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意思決定支援システム及び方法に係り、特に、多次元データの利用による結論の推定及び推定結果の可視化により、ユーザの意思決定を支援するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多変量解析法の一つとしてロジスティック回帰分析法が知られている。例えば、二項ロジスティック回帰は統計手法により多変数の入力から結論を推定するモデルを作成することができる。この推定モデルにより、どの変数の組み合わせであればどのような結論になるかを算出することが可能である。別の値を入力すれば推定結果がどのような値になるかを知ることができる。
【0003】
推定モデルに関して、例えば、非特許文献1には、自己資本比率などの財務指標から企業の倒産確率を予測する方法が開示されている。また、特許文献1には、引き合い案件に関する受注前サービス履歴を管理して、受注前サービス開始時点からの経過時間に基づいてその引き合い案件の受注確度を算出し、これを画面に表示する営業支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−322094号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】塚田裕昭、倒産企業の異時点データによる倒産判別モデルの推定、UFJ Institute REPORT、2005.3 Vol.10 No.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の二項ロジスティック回帰は、多変数の入力が可能な推定モデルに値を入力すれば、どのような結論になるかを推定できる。しかし、現状からどのように値を変更すれば、現状を改善することができるかを知ることはできない。そのため、現状改善のための具体的施策を決定することが難しい。
【0007】
また、非特許文献1に記載の技術は、財務指標から企業の倒産確率を予測して、倒産しそうな企業を知ることはできるが、倒産を回避するためには具体的にどのような施策を行えばいいかはわからない。また、特許文献1に記載の技術は、複数の案件がある場合、どの案件に優先して営業活動をするべきかということはわかるが、現状営業活動を行っている案件で受注確率を上げるために具体的に如何にしたらよいかということがわからない。
【0008】
本発明の目的は、複数の値の組み合わせにより何れの値をどのように変更すると現状の改善につながるか又は悪化につながるかを提示して、ユーザが現状改善の具体的施策を決定することができる意思決定支援システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による意思決定支援システムは、好ましくは、計算機システムを用いて、推定モデルの変数に入力するパラメータを変更して推定結果のシミュレーションを行うことにより意思決定を支援するシステムであって、
該推定モデルに利用されている変数の中で値が変更可能な変数を、端末より取得する設定手段と、
該端末から取得された変数から、推定を行う値の複数の組み合わせを生成する組合せ生成手段と、
該生成手段によって生成された値の複数の組み合わせを用いてシミュレーションを行い、推定結果を得る推定手段と、
該推定手段によって推定結果と用いられた値の組み合わせを該端末に出力して、何れの値の変更が何れの推定結果を変更するかを可視的に表示する手段とを有することを特徴とする意思決定支援システムとして構成される。
【0010】
また、本発明による意思決定支援方法は、好ましくは、計算機システムでプログラムを実行することで、推定モデルの変数に入力するパラメータを変更して推定結果のシミュレーションを行うことにより意思決定を支援する意思決定支援方法であって、
該計算機システムは、該推定モデルに利用されている変数の中で値が変更可能な変数を、端末より取得する設定ステップと、
該計算機システムは、該端末から取得された変数から、推定を行う値の複数の組み合わせを生成する組合せ生成ステップと、
該計算機システムは、該生成ステップで生成された値の複数の組み合わせを用いてシミュレーションを行い、推定結果を得る推定ステップと、
該計算機システムは、該推定ステップによる該推定結果と用いられた値の組み合わせを該端末に出力して、何れの値の変更が何れの推定結果を変更するかを可視的に表示するステップとを有することを特徴とする意思決定支援方法として構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザが実行可能である施策の候補が、現状を改善する施策か又は悪化させる施策かを知ることができ、ユーザが改善策を決定するための支援を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施例による意思決定支援システムの構成例を示す図。
図2】一実施例による意思決定支援の全体処理手順を示すフローチャート図。
図3】一実施例による推定サブシステムによる推定モデル作成処理手順を示すフローチャート図。
図4】一実施例による学習データDBのテーブル構成例を示す図。
図5】一実施例による推定モデルDBのテーブル構成例を示す図。
図6】一実施例による推定サブシステムによる推定処理手順を示すフローチャート図。
図7】一実施例による推定結果DBのテーブル構成例を示す図。
図8】一実施例によるシミュレーションサブシステムによる処理手順を示すフローチャート図。
図9】一実施例による推定モデル選択ダイアログの例を示す図。
図10】一実施例による変更可能項目設定ダイアログの例を示す図。
図11】一実施例による現状パラメータセット設定ダイアログの例を示す図。
図12】一実施例による現状パラメータセット検索ダイアログの例を示す図。
図13】一実施例によるパラメータ設定ダイアログの例を示す図。
図14】一実施例によるパラメータセットDBのテーブル構成例を示す図。
図15】一実施例による推定サブシステムによるシミュレーション処理手順を示すフローチャート図。
図16】一実施例によるシミュレーション結果DBのテーブル構成例を示す図。
図17】一実施例による表示サブシステムによる結果表示処理手順を示すフローチャート図。
図18】一実施例によるランキング表の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の実施形態について説明する。
図1は、計算機システムに構築される意思決定支援システムの構成例を示す。
1又は複数の計算機で構成される計算機システム10には、シミュレーションサブシステム20、推定サブシステム30、表示サブシステム40、データベース群50が構築される。シミュレーションサブシステム20、推定サブシステム30及び表示サブシステム40は、これらの機能を実現する特定のアプリケーションプログラムが計算機で実行することで実現される。
計算機システム10には、業務処理を行う計算機である業務システム60、及び計算機システム10に対して入出力を行う端末70が接続される。
【0014】
シミュレーションサブシステム20は、変更可能項目設定部201、パラメータ設定部202、パラメータセット生成部203を有し、端末70から、値を変更可能な変数(以下、変更可能項目という)と、その値(以下パラメータという)を受け取り、その受け取ったパラメータからシミュレーションに用いる複数の変数に対するパラメータの組み合わせ(以下パラメータセットという)を生成してデータベース群50に格納する。更に、推定サブシステム30にシミュレーション実行要求を送信し、その後、表示サブシステム40に結果表示要求を送信する。
【0015】
各構成部について説明すると、変更可能項目設定部201は、端末70から推定モデルの変数の変更可否情報を受け取り、推定モデルDB503に変数の変更可否情報を格納する。パラメータ設定部202は、端末70から推定モデルの変数に代入するパラメータを受け取る。パラメータセット生成部203は、受け取ったパラメータからパラメータセットを作成する。パラメータは、一変数に対して複数個設定することが可能であり、パラメータセット生成部203では、複数個設定されたパラメータで考えられるすべての組み合わせのパラメータセット(以下シミュレーションパラメータセットという)を生成する。パラメータセット生成部203は、生成したシミュレーションパラメータセットをパラメータセットDB501に格納する。
【0016】
推定サブシステム30は、推定モデルの作成と推定モデルの適用による結論の推定を行うシステムであり、学習データ取得部301、推定モデル作成部302、推定部303を有する。ここで、学習データ取得部301では、推定モデル作成に利用するパラメータセットの集合(以下、学習データという)を外部の業務システム60の業務DB601から取得して、学習データDB504に格納する。推定モデル作成部302は、学習データDB504から学習データを取得して推定モデルを作成し、作成した推定モデルの情報を推定モデルDB503に格納する。推定部303は、推定モデルDB503のモデル情報を用いて、業務DB601から取得したパラメータセット以下、現状パラメータセットでの推定結果を算出して、その結果を推定結果DB505に格納する。
【0017】
表示サブシステム40は、シミュレーション結果を表示するシステムであり、ランキング生成部401と、結果表示部402を有する。ここで、ランキング生成部401は、シミュレーション結果DB502と推定結果DB505からデータを取得して、シミュレーションパラメータセットに推定モデルを適用した時の推定結果(以下シミュレーション結果という)と現状パラメータセットに推定モデルを適用した時の推定結果を比較するランキング表を作成する。ランキング表は、推定結果の降順または昇順とし、端末70から入力したパラメータから生成されたパラメータセットと現状パラメータセットもこのランキング表に含める。結果表示部402は、作成したランキング表を端末70の表示画面に表示する。表示画面の表示に際して、現状パラメータセットから変更されたパラメータがわかるように、変更した欄に網掛けして表示するのが好ましい。
【0018】
データベース群50は、各サブシステムで利用されるテーブル類を格納するものであり、パラメータセットDB501、シミュレーション結果DB502、推定モデルDB503、学習データDB504、推定結果DB505を有する。主なDBの構成は、図4,5,7,14,16に示す。
【0019】
パラメータセットDB501はシミュレーションパラメータセットを格納するDBである。図14に示すように、パラメータセットDB501は、シミュレーションID1401、パラメータセットセットID1402、変更パラメータ1403、固定パラメータ1404の各項目から構成される。シミュレーションID1401は、シミュレーションパラメータセットを一意に識別するための番号である。パラメータセットID1402は、シミュレーションパラメータセット内のパラメータセットを一意に識別するための番号である。変更パラメータ1403は、変更可能項目に対するパラメータである。固定パラメータ1404は、変更可能項目以外に対するパラメータである。
【0020】
シミュレーション結果DB502は、シミュレーション結果を格納するDBである。図16に示すように、シミュレーション結果DB502は、シミュレーションID1601と、パラメータセットID1602と、倒産確率1603と、現状パラメータセットからの変更数1604の各項目から構成される。シミュレーションID1601及びパラメータセットID1602は、それらを一意に識別するための番号である。倒産確率1603は、推定結果を示す。現状パラメータセットからの変更数1604は、各パラメータセットにおいて、現状パラメータセットから変更したパラメータ数を示す。
【0021】
推定モデルDB503は、推定モデルの情報を格納するDBである。図5に示すように、推定モデルDB503は、推定モデルID506、変数ID507、変数名508、変更可否509の各項目から構成される。推定モデルID506は、推定モデルを一意に識別する番号である。変数ID507はモデル内の変数を一意に識別する番号である。変数名508は変数の名前である。変更可否509は、変数をユーザが変更可能か否か設定するもので、ユーザが全く設定していない初期状態はすべて「False」(変更不可の意味)となっている。
【0022】
学習データDB504は、学習データを格納するDBであり、図4に示すように、学習データとして、推定モデルに利用する候補となる変数403と、結論となる変数404の各項目から構成される。
【0023】
推定結果DB505は、現状パラメータセットでの推定結果を格納するDBである。図7は、二項ロジットモデルを用いて企業の財務指標から倒産確率を算出した例に関する推定結果DB505の例を示す。推定結果DB505は、現状パラメータセット701と、推定に使用された推定モデルを示す推定モデルフラグ702と、推定結果703の各項目から構成される。この例では、現状パラメータセット701は企業の状況を示す情報を表している。推定モデルフラグ702は、使用された推定モデルを「1」で、不使用のモデルを「0」で表す。また、推定結果703はこの例では「倒産確率」を表す。
【実施例1】
【0024】
以下、企業の倒産確率の推定を例として本発明の実施例を説明する。
図2は、計算機システム101が、推定モデルによるシミュレーションを実行する際のシステム全体の処理手順を示す。
【0025】
新しく推定モデルを作成する場合、推定サブシステム30は推定モデルの作成ステップS202を実行する。既に推定モデルDB503に登録されている推定モデルを利用する場合は、推定モデルの作成ステップは実行しない(S201、S202)。次に、シミュレーションサブシステム20は、推定モデルを用いて、現状パラメータセットでの推定を行う(S203)。その後、シミュレーションサブシステム20は、ユーザが端末70より入力したパラメータからシミュレーションパラメータセットを生成する(S204)。シミュレーションパラメータセットを生成した後、推定サブシステム30は、生成されたシミュレーションパラメータセットを用いて推定を行う(S205)。最後に、表示サブシステム40はシミュレーション結果を端末70に表示して処理を終了する(S206)。
【0026】
図3は、推定サブシステム30による推定モデルの作成手順を示す。
まず、学習データ取得部301は、業務システム60の業務DB601から学習データを取得して、学習データDB504に格納する(S301)。取得する学習データは図4に示すテーブル構成例の通りである。学習データには、推定モデルに利用する候補となる変数(403)と結論となる変数(404)をテーブルに含んでいる必要がある。
【0027】
次に、推定モデル作成部302は、推定モデルに利用する変数候補から変数を選択して推定モデルを作成する(S302)。多変数の入力から結論を推定するモデルは、重回帰モデル、二項ロジットモデル等があるが、ここではその手法は問わない。推定モデルに利用する変数の選択についても、ステップワイズ法、変数増加法などがあるが、ここではその方法は問わない。最後に、推定モデル作成部302は、作成した推定モデルの変数情報を推定モデルDB503に格納して処理を終了する(S303)。推定モデルDB503のテーブル構成例は図5に示す通りである。
【0028】
図6は、推定サブシステム30による推定処理手順を示す。
まず、推定部303は、業務DB601から現状パラメータセットを取得する。次に、推定部303は、推定モデルDB503から推定モデルの情報を取得し、現状パラメータセットでの推定結果を算出する。最後に、推定部303は、推定結果を推定結果DB505に格納する。
【0029】
図8は、シミュレーションサブシステム20によるシミュレーションパラメータセットの生成手順を示す。
まず、変更可能項目設定部201は、ユーザにシミュレーションで用いる推定モデルを選択させるダイアログを端末70に表示して、選択された推定モデルの情報を推定モデルDB503から取得する(S801)。推定モデル選択ダイアログの例を図9に示す。推定モデル選択ダイアログは、推定モデルDB503から取得した推定モデルの情報をコンボボックス901で表示して、端末70にてユーザに推定モデルを選択させる。選択後、「次へ」ボタン902を選択する。
【0030】
変更可能項目設定部201は、取得した推定モデルの情報をもとに、端末70よりユーザに変更可能項目を入力させるためのダイアログを表示する(S802)。変更可能項目設定ダイアログの例を、図10に示す。図9の推定モデル選択ダイアログで「次へ」ボタン902を選択した後に、図10の変更可能項目設定ダイアログが表示される。ダイアログには、推定モデルDB(503)から取得した推定モデルの変数名1001とそれぞれの変数の変更可否を設定するコンボボックス1002が表示される。ユーザは端末70よりこのコンボボックスでそれぞれの変数の変更可否を入力する。全ての変数に対して変更可否の入力を行ったら「次へ」ボタン1003を選択する。
【0031】
次に、パラメータ設定部202は、端末70よりユーザに現状パラメータセットを入力させるダイアログを表示する(S803)。現状パラメータセット設定ダイアログの例を図11に示す。図11の現状パラメータセット設定ダイアログは、図10の変更可能項目設定ダイアログで「次へ」ボタン1003を選択すると表示される。現状パラメータセット設定ダイアログは、パラメータを設定するテキストボックス1101があり、ユーザが端末70より入力する。「検索」ボタン1102を選択すると、現状パラメータセット検索ダイアログが表示され、現状パラメータセットを推定結果DB505から検索してパラメータを入力することもできる。
【0032】
現状パラメータセット検索ダイアログの例を図12に示す。図12のテキストボックス1201に検索条件を入力して、「検索」ボタン1202を選択すると、推定結果DB505から条件に一致したパラメータセット1203を取得して表示する。ユーザが端末70より、条件に一致したパラメータセットの中からパラメータセットを1つ選択して、「決定」ボタン1204を選択すると、図11のパラメータの欄に自動的に選択したパラメータセットのそれぞれのパラメータが入力される。全てのパラメータを入力したら、「次へ」ボタン1103を選択する。
【0033】
その後、パラメータ設定部202は、変更可能項目のパラメータ(以下、変更パラメータ)をユーザに入力させるダイアログを端末70に表示する(S803)。パラメータ設定ダイアログの例を図13に示す。パラメータ設定ダイアログには、変更パラメータを入力するテキストボックス1301が表示される。テキストボックス1301には、一つまたは複数個のパラメータを入力することが可能である。複数個入力する場合は、複数個のカテゴリ値を入力するか、数値の範囲を入力する。以下、この複数個のカテゴリ値と数値の範囲のことを合わせてパラメータの範囲と呼ぶ。パラメータの範囲の入力は、カテゴリ値であれば、「20%,30%」のようにカンマなどの区切り文字で区切り入力する。数値であれば、「1800−2000:200刻み」のように数値の範囲と刻み幅で入力する。全ての変更パラメータを入力したら「決定」ボタン1302を選択する。「決定」ボタン1302が選択されたら、ダイアログを閉じる。
【0034】
シミュレーションに必要な情報を取得した後、パラメータセット生成部203は、パラメータセットを生成する(S804)。具体的にパラメータセットとは、「資本金=100M、自己資本比率=25%、従業員数=2000」のように複数の変数に対するパラメータの組み合わせのことをいう。パラメータの範囲が設定されている変数がある場合、パラメータの範囲内すべてのパラメータについてのパラメータセットを生成する。例として、資本金に1つ、自己資本比率に2つ、従業員数に3つのパラメータがパラメータの範囲内にある場合、すべての組み合わせである6つのパラメータセットが生成される。この例では、この6つのパラメータセットがシミュレーションパラメータセットとなる。
最後に、パラメータセット生成部203は、生成されたシミュレーションパラメータセットをパラメータセットDB501に格納して処理を終了する(S805)。
【0035】
図15は、推定サブシステム30によるシミュレーションの手順を示す。
まず、推定部303は、パラメータセットDB501からシミュレーションパラメータセットを取得する(S1501)。次に、推定部303は、推定を行っていないパラメータセットがある間、パラメータセットでの推定結果の算出を行う(S1502、S1503)。シミュレーションパラメータセット内の全てのパラメータセットでの推定が終了したら、推定部303はシミュレーション結果をシミュレーション結果DB502に格納する(S1504)。
【0036】
図17は、表示サブシステムによつ表示の手順を示す。
まず、ランキング生成部401は、シミュレーション結果DB502からシミュレーション結果を取得する(S1701)。次に、ランキング生成部401は推定結果DB505から現状パラメータセットの推定結果を取得して、前ステップで取得したシミュレーション結果と合わせ、推定結果の昇順、または降順に並び替えたランキングを生成する(S1702)。ランキング表には、推定結果と合わせて変更パラメータの情報、現状パラメータからの変更数の情報も含める。その後、結果表示部402は、どのパラメータが現状パラメータから変更されているかを可視化するため、ランキング表内のシミュレーションパラメータセットにおいて現状パラメータセットと異なるパラメータの欄に網掛け等をする(S1703)。最後に、結果表示部402は、作成したランキング表を端末70に表示する(S1704)。
【0037】
端末70に表示されるランキング表の例を図18に示す。図18は、企業の倒産確率のシミュレーションを行った出力結果で倒産確率が低い順に高いランクを付けている。また、変更する前の現状パラメータセットと、そのパラメータによって推定された倒産確率が表示される。それぞれのシミュレーション結果において、現状パラメータセットから変更したものについては、変更したパラメータの欄に網掛け表示がされている。この現状パラメータセットの推定結果より上位に記載されたシミュレーション結果はいずれも現状より倒産確率が低くなると推定されたものであり、ユーザはどのパラメータをどのように変更すれば、倒産確率が低くなるかを一覧することができる。
【0038】
一方、現状パラメータセットの推定結果より下位に記載されたシミュレーション結果は現状より倒産確率が高くなると推定されたものであり、どのパラメータをどのように変更すれば、倒産確率が高くなるかを知ることができる。
【実施例2】
【0039】
実施例1の倒産確率を案件の受注確率に変えて、営業活動支援を行うこともできる。営業支援のSFA(Sales Force Automation)システムがもつ営業活動データをもとに、案件の受注確率を推定して、営業員がどのように営業活動を変更すれば受注確率を上げることができるかを提示することもできる。
【実施例3】
【0040】
実施例1の倒産確率を製品の不良品率に変えて、製造工程改善支援を行うこともできる。製品の製造工程での製造パラメータや環境条件をもとに、不良品率を推定して、製造工程をどのように変更すれば不良品率を下げることができるかを提示することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
活動記録が蓄積されている企業において、意思決定を支援する各種のシステムに利用が可能である。例えば、営業支援(SFA)システム、顧客管理(CRM: Customer Relationship Management)システム、製造システムなどが考えられる。
【符号の説明】
【0042】
10:計算機システム
20:シミュレーションサブシステム 201:変更可能項目設定部 202:パラメータ設定部
203:パラメータセット生成部
30:推定サブシステム 301:学習データ取得部 302:推定モデル作成部 303:推定部
40:表示サブシステム 401:ランキング生成部 402:結果表示部
50:データベース群 501:パラメータセットDB 502:シミュレーション結果DB
503:モデルDB 504:学習データDB 505:推定結果DB
60:業務システム 70:端末
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