特許第5993283号(P5993283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993283
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】縫製装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 21/00 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   D05B21/00
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-244957(P2012-244957)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-91008(P2014-91008A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】吉平 光宏
(72)【発明者】
【氏名】根本 越男
【審査官】 山本 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−089092(JP,A)
【文献】 特開2012−179229(JP,A)
【文献】 特開平02−257989(JP,A)
【文献】 特開平02−057288(JP,A)
【文献】 特開平06−126048(JP,A)
【文献】 特開2000−271366(JP,A)
【文献】 実開平03−068874(JP,U)
【文献】 特開2006−115910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00−97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被縫製物を縫製するミシン本体と、
前記被縫製物の縫製領域を針落ち可能に露出させる縫製用開口部が形成された布保持枠を有し、当該布保持枠を介して前記被縫製物を水平面内で移動させる布送り部と、
前記布保持枠に位置決めされた前記被縫製物の端位置を、対物検知手段を用いて認識する形状認識部と、
前記形状認識部で認識された前記端位置を基準に縫製位置を決定し、当該縫製位置で縫製作業を行わせるように、前記ミシン本体と前記布送り部を制御するミシン制御部とを備える縫製装置において、
前記布保持枠は、
前記被縫製物の端面に当接する複数の当接部と、
前記布保持枠を切欠いて前記縫製用開口部に連続して形成され、被縫製物の端部の一部を露出させる複数のエッジ検出用開口部とを有し、前記形状認識部は、前記対物検知手段により前記エッジ検出用開口部で露出する前記被縫製物の端位置を検出し、当該検出した端位置に基づいて前記被縫製物の端位置を認識することを特徴とする縫製装置。
【請求項2】
前記形状認識部は、前記当接部に対応する端位置を、当該当接部の両隣の前記エッジ検出用開口部で検出された端位置に基づき補完することで認識することを特徴とする請求項1に記載の縫製装置。
【請求項3】
前記形状認識部は、前記複数の当接部の各々において前記補完を直線補間で行うか又はスプライン補間で行うかを選択設定可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の縫製装置。
【請求項4】
前記ミシン制御部は、前記縫製位置を指定する縫製パターンデータを、前記形状認識部で認識した端位置に基づき作成することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の縫製装置。
【請求項5】
前記ミシン制御部は、設計上の前記被縫製物の端位置に適合して予め作成された標準縫製パターンデータを、前記形状認識部で認識した端位置に適合するように補正することで前記縫製パターンデータを作成することを特徴とする請求項4に記載の縫製装置。
【請求項6】
前記ミシン制御部は、前記布送り部の制御に係り縫製位置を定義するための二次元座標上において前記標準縫製パターンデータにより指定される縫製位置により特定される縫製経路形状を拡大・縮小、回転移動又は平行移動する態様で座標変換することで、前記標準縫製パターンデータを前記形状認識部で認識した端位置に適合するように補正することを特徴とする請求項5に記載の縫製装置。
【請求項7】
設計上の前記被縫製物の端位置に対する前記形状認識部で認識した端位置のずれ量を算出し、当該ずれ量が所定の閾値を超えている場合に被縫製物の位置ずれを表示出力することを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一に記載の縫製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被縫製物の形状を認識した上で布送り制御し当該被縫製物を縫製する縫製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水平面内を動作可能に構成された布送り下板及び布送り外枠に縫製物本体を挟持し、縫製物本体上に被縫製物を設置し、これを予めプログラミングされた縫製経路に沿って移動させながら縫うことにより縫製物本体に被縫製物を縫い付ける縫製装置が用いられている。
このような縫製装置においては、被縫製物を位置決め保持するために、布送り外枠には被縫製物の縫製箇所に対応した溝や穴などの開口が形成された布保持枠が固定される。そして、被縫製物は、布保持枠に形成された開口の内壁面や、当該開口の内縁部に形成された位置決め用段部などの内壁面に被縫製物の外周端縁が当接することによって位置決めされることが一般的に行われる。このように位置決めされた被縫製物は、被縫製物の外周端縁から一定幅の縫い代を持たせて縫製されることが少なくなく、従って被縫製物の外周端縁を基準とした所定位置を針落ち目標位置として縫製することはよく行われる。
【0003】
しかしながら、作業者が被縫製物を布保持枠にセットする際の位置ずれや被縫製物の裁断時の個々の大きさのばらつき、皮革や織物などの可とう性材料で構成される被縫製物の寸法変化により、被縫製物の外周端縁が布保持枠に形成された開口の内壁面や、位置決め用段部などの内壁面に当接せず、本来ならば被縫製物の外周端縁から一定幅の位置を縫製されるはずが、ずれた位置を縫製してしまい、不良品となってしまうことがあった。
【0004】
かかる問題を解決するため特許文献1には、「縁位置感知装置は回転軸受上に装架された走査カメラを有し、該軸受はミシンヘッドに装着され、前記カメラが針の軸線と同軸的に回転し、縫製面内の針貫通点のまわりの仮想円に接する線を走査する」と記載されている。そして、縫製物本体に固定された被縫製物は、走査カメラに装着された照明装置により縫製物本体に対して被縫製物の外周端縁が強調され、走査カメラによりこの被縫製物の外周端縁を感知し、予めプログラミングされた縫製パターンに対して、検出された被縫製物の実際位置に従って縫製経路を修正しながら被縫製物の外周端縁から一定幅の縫い代位置を縫製する縫製装置が記載されている。
同問題を解決するため特許文献2には、縫製工程の前工程として外形認識装置によって被縫製物の外形認識を行い、縫製物本体に固定された被縫製物は、被縫製物の外周端縁測方部に設けられた照明装置により縫製物本体に対して被縫製物の外周端縁が強調され、CCDカメラによりこの被縫製物の外周端縁を感知し、外形認識装置から電子ミシンへと縫製物を移載し、検出された被縫製物の外形形状を元に被縫製物の外周端縁から一定幅の縫い代位置を縫製する縫製装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−28962号公報
【特許文献2】特開平05−225315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1,2に記載のいずれの縫製装置においても、照明装置によって縫製物本体に対して被縫製物の外周端縁を強調し、カメラによって被縫製物の外周端縁を認識することから、従来のように被縫製物の外周端縁を開口の内壁面や、位置決め用段部の内壁面に当接させ位置決めする布保持枠を使用することができない。
なぜなら、図13に例示するように、縫製物本体19上の被縫製物21の外周縁部を所定の幅で布保持枠9xによって保持し、被縫製物21の布厚に応じて開口20xの内縁部に形成された位置決め段部の内壁面23に被縫製物21の外周端縁が当接した状態や、作業者が縫製物をセットする際に位置ずれさせてしまった状態においては、被縫製物21の外周端縁の一部もしくは全部が布保持枠9xの下側に隠れてしまうため、カメラによって被縫製物21の外周端縁を認識することはできない。
さらに、図14に例示するように縫製物本体19上の被縫製物21の外周端縁は、布保持枠9yに形成された開口20yの内壁面22に当接した状態、もしくは被縫製物21の裁断時の個々の大きさのばらつきや皮革や織物などの可とう性材料の寸法変化により、被縫製物21の外周端縁が内壁面22と当接せず、若干の隙間を持った状態である場合がある。この場合、被縫製物21の外周端縁に内壁面22が近接しすぎているため、照明装置により縫製物本体に対して被縫製物21の外周端縁の陰影を強調することが困難であり、カメラによって被縫製物21の外周端縁を正確に認識することができない。
【0007】
そこで本発明は、布保持枠による被縫製物の保持性を良好にしたまま、被縫製物の端位置の正確な認識を可能とすることにより、当該端位置を基準とした縫製位置での被縫製物の縫製を精度よく安定的に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、被縫製物を縫製するミシン本体と、
前記被縫製物の縫製領域を針落ち可能に露出させる縫製用開口部が形成された布保持枠を有し、当該布保持枠を介して前記被縫製物を水平面内で移動させる布送り部と、
前記布保持枠に位置決めされた前記被縫製物の端位置を、対物検知手段を用いて認識する形状認識部と、
前記形状認識部で認識された前記端位置を基準に縫製位置を決定し、当該縫製位置で縫製作業を行わせるように、前記ミシン本体と前記布送り部を制御するミシン制御部とを備える縫製装置において、
前記布保持枠は、
前記被縫製物の端面に当接する複数の当接部と、
前記布保持枠を切欠いて前記縫製用開口部に連続して形成され、被縫製物の端部の一部を露出させる複数のエッジ検出用開口部とを有し、前記形状認識部は、前記対物検知手段により前記エッジ検出用開口部で露出する前記被縫製物の端位置を検出し、当該検出した端位置に基づいて前記被縫製物の端位置を認識することを特徴とする縫製装置である。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記形状認識部は、前記当接部に対応する端位置を、当該当接部の両隣の前記エッジ検出用開口部で検出された端位置に基づき補完することで認識することを特徴とする請求項1に記載の縫製装置である。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記形状認識部は、前記複数の当接部の各々において前記補完を直線補間で行うか又はスプライン補間で行うかを選択設定可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の縫製装置である。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記ミシン制御部は、前記縫製位置を指定する縫製パターンデータを、前記形状認識部で認識した端位置に基づき作成することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一に記載の縫製装置である。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記ミシン制御部は、設計上の前記被縫製物の端位置に適合して予め作成された標準縫製パターンデータを、前記形状認識部で認識した端位置に適合するように補正することで前記縫製パターンデータを作成することを特徴とする請求項4に記載の縫製装置である。
【0013】
請求項6記載の発明は、前記ミシン制御部は、前記布送り部の制御に係り縫製位置を定義するための二次元座標上において前記標準縫製パターンデータにより指定される縫製位置により特定される縫製経路形状を拡大・縮小、回転移動又は平行移動する態様で座標変換することで、前記標準縫製パターンデータを前記形状認識部で認識した端位置に適合するように補正することを特徴とする請求項5に記載の縫製装置である。
【0014】
請求項7記載の発明は、設計上の前記被縫製物の端位置に対する前記形状認識部で認識した端位置のずれ量を算出し、当該ずれ量が所定の閾値を超えている場合に被縫製物の位置ずれを表示出力することを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一に記載の縫製装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、前記布保持枠を切欠いて前記縫製用開口部に連続して形成され、被縫製物の端部の一部を露出させる複数のエッジ検出用開口部を有するので、この端部のエッジラインをエッジ検出用開口部を介してカメラ、レーザ変位計などの光その他の電磁波を媒介とした対物検知手段により良好に検出することができ、検出した結果に基づき被縫製物の端位置を認識するから、被縫製物の端位置の正確な認識が可能となる。
さらに、ミシン制御部は形状認識部で認識された端位置を基準にして縫製位置を決定するから、同発明によれば、被縫製物の端位置を基準とした縫製位置での被縫製物の縫製を精度よく安定的に行うことができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、布保持枠の当接部に対応する被縫製物の端位置を含めて被縫製物の外形を認識することができ、被縫製物の端位置を基準とした縫製位置での被縫製物の縫製を精度よく行うことができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、エッジ検出用開口部に露出する予定の被縫製物のエッジラインや当接部に対応する予定の被縫製物のエッジラインに合わせて適切な補間方法を予め設定することができ、適切な補間を経て、被縫製物の端位置を基準とした縫製位置での被縫製物の縫製を精度よく行うことができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、形状認識部で認識した端位置に基づき縫製位置を指定する縫製パターンデータを作成し、被縫製物の端位置を基準とした縫製位置での被縫製物の縫製を精度よく行うことができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、予め作成された標準縫製パターンデータを、形状認識部で認識した端位置に適合するように補正することで縫製パターンデータを作成するので、計算負荷を軽減して、被縫製物の端位置を基準とした縫製位置での被縫製物の縫製を迅速且つ精度よく行うことができる。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、予め作成された標準縫製パターンデータの縫製経路形状を拡大・縮小、回転移動又は平行移動する態様で座標変換するだけで縫製パターンデータを作成するので、さらに計算負荷を軽減して、被縫製物の端位置を基準とした縫製位置での被縫製物の縫製を迅速且つ精度よく行うことができる。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、作業者による被縫製物の位置直しが必要となるような被縫製物の著しい位置ずれを作業者に知らせることができ、作業者による位置直しを経ることにより被縫製物の端位置を基準とした縫製位置での被縫製物の縫製を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る縫製装置の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る縫製装置の正面図である。但し、カメラを分離して示す。
図3】本発明の一実施形態に係る縫製装置の制御ブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る縫製装置の布送り部に布保持枠を装着した状態の詳細斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る布保持枠の布保持部及びこれに保持された被縫製物(ポケット生地)の平面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る布保持枠の布保持部及びこれに保持された被縫製物(ポケット生地)の平面図であり、図5とは異なり位置決め段部を有したものを示す。
図7】本発明の一実施形態において認識された被縫製物(ポケット生地)の外周端縁位置の線図である。
図8】本発明の一実施形態に係る布保持枠の布保持部及びこれに保持された被縫製物(ポケット生地)の平面図である。被縫製物がずれて設置された場合を示す。
図9】本発明の一実施形態に係る縫製装置に係る縫製処理の流れを示すフローチャートである。
図10】本発明の他の一実施形態に係る被縫製物(ロゴマーク)の平面図である。
図11】本発明の他の一実施形態に係る布保持枠の布保持部及びこれに保持された被縫製物(ロゴマーク)の平面図である。
図12】本発明の他の一実施形態において認識された被縫製物(ロゴマーク)の外周端縁位置の線図である。
図13】従来の一例に係る布保持枠の布保持部及びこれに保持された被縫製物(ポケット生地)の平面図であり、位置決め段部を有したものを示す。
図14】従来の一例に係る布保持枠の布保持部及びこれに保持された被縫製物(ポケット生地)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0024】
〔縫製装置の概要〕
図1から図3によって示すように本実施形態の縫製装置1は、ミシン本体2と、布送り部3と、形状認識部4と、ミシン制御部5と、縫製パターンデータベース51と、表示装置52とを備えて構成される。
ミシン本体2は、縫い針の動作等を行うミシンアーム部2aと、釜の動作等を行うミシンベッド部2bと、ミシンテーブル2cとを備え、被縫製物を縫製する。
形状認識部4は、カメラ41と、照明装置42と、画像認識制御部43と、設定入力部44と、設定保存データベース45とを備える。画像認識制御部43はカメラ41及び照明装置42を制御して画像情報を取得し、取得した画像のエッジ抽出処理など画像処理を行って被縫製物の形状認識を行う。
画像認識制御部43、ミシン制御部5、設定入力部44、設定保存データベース45及び縫製パターンデータベース51は、情報処理装置、情報入力装置及び情報記憶装置により構成される情報処理システムであって、画像認識制御部43とミシン制御部5とが同一又は別々のICチップで動作するとか、設定保存データベース45と縫製パターンデータベース51とが同一又は別々のハードディスク又はICチップに構築されるとか、ミシン本体2の筐体内に又は外部装置として構成されるかなどのハードウエア構成は問わない。
表示装置52は、画像表示のほか任意に音声表示を行う。
【0025】
図4に示すように布送り部3は、布送り下板7と、布送り外枠8と、布送り土台10と、布送りアーム11と、XY駆動部(ミシンベッド部2bに搭載)とを備えて構成される。布送り外枠8には布保持枠9が着脱自在に固定される。布送り外枠8は布送りアーム11に固定され、布送りアーム11は布送り土台10に上下動可能に固定されている。また、布送り下板7は布送り土台10に固定されている。布送り土台10は、図示のないモータやタイミングベルト、タイミングプーリ等により構成されるXY駆動部により水平面(図中のX−Y平面)内で動作可能に構成されており、布送り土台10とともに布送り下板7、布送り外枠8及び布送り外枠8の下面に固定された布保持枠9が一体となって水平面内を動作する。縫製位置はこの布送り部3の制御に係る二次元座標X−Yによって定義される。各被縫製物の縫製位置は被縫製物ごとに対応した縫製パターンデータによって指定される。各縫製パターンデータは縫製パターンデータベース51に保存されている。
布保持枠9には、被縫製物の縫製領域を針落ち可能に露出させる縫製用開口部20が形成されている。また、布送り部3は布保持枠を介して被縫製物を水平面内で移動させる。
【0026】
図5に示す被縫製物21は、ジーパンなどのポケット生地であり、上辺がポケット口となり、下端中央に頂点を有した五角形の外形を形成している。
これに対応する図5に示す布保持枠9aにあっては、縫製用開口部20aが被縫製物21のポケット口となる上辺を除く4辺に沿った一定幅の外周端縁部を上方に露出させる溝状に形成されている。被縫製物21は、布送り下板7と布送り外枠8に挟持されたジーンズ生地などの縫製物本体上に載っており、縫製用開口部20aに囲まれる内側部分において布保持枠9aの裏面で浮き上がらないように押さえられる。
縫製用開口部20aの外側内壁面は、上記4辺のそれぞれ添って形成されており、被縫製物21の外周端縁に当接して布保持枠9aに対し被縫製物21のX−Y面方向位置を決める当接部22を構成する。但し、被縫製物21の5つの角部に対応してエッジ検出用開口部24a、24bが形成されている。そのうち2つのエッジ検出用開口部24b,24bは、縫製用開口部20aの上側に形成され、被縫製物21の上辺側の2つの角部に対応する。また、残りの3つのエッジ検出用開口部24a,24a,24aは、被縫製物21の下辺側の3つの角部に対応して形成されている。
【0027】
以上のエッジ検出用開口部24a,24bのように、縫製位置に近い端部を露出させるエッジ検出用開口部は縫製用開口部に連続して一体的に形成することが好ましい。一方、ポケット口中央部のように縫製位置から遠い端部についてはエッジ検出用開口部(破線部)24cのように、縫製用開口部から独立した状態で設けることもでき、必ずしも縫製用開口部とエッジ検出用開口部とは一体の開口と形成する必要はない。本実施形態では、エッジ検出用開口部(破線部)24cは設けられていないものとする。エッジ検出用開口部が縫製用開口部と一体である場合は、エッジ検出のための開口領域と縫製のための開口領域とが重複していてよい。エッジ検出用開口部同士は当接部22を介して複数設けられ、当接部22の両端にエッジ検出用開口部を設ける。
すなわち、エッジ検出用開口部24a,24bは、布保持枠9aの所定位置を切欠いて、縫製用開口部20aに連続して一体的に形成され、被縫製物の端部の一部を露出させている。特に、被縫製物の端部の一部として、角部を露出させると好ましい。
【0028】
いずれのエッジ検出用開口部24a,24bも、当接部22に被縫製物21の端面が当接した状態において当該端面に隣接する部位の被縫製物21の端部を対物検知手段により検出可能とするように、当該端部の端面前方の一定の空間を含めて露出させる。本実施形態では対物検知手段はカメラ41により構成される。
【0029】
一方、図6にも同様の被縫製物21及びこれに対応する布保持枠9bが示される。但し、図6に示す布保持枠9bは、図13を参照して説明した位置決め用段部の構造を採用するものである。
すなわち、図6に示す布保持枠9bにおいては、位置決め用段部の内壁面が被縫製物21の外周端縁に当接して布保持枠9bに対し被縫製物21のX−Y面方向位置を決める当接部23を構成する。その他の点について布保持枠9bは、図5の布保持枠9aと同様である。図6において被縫製物21は、布保持枠9bの縫製用開口部20bに囲まれる内側部分及び当接部23前方の一定幅の外周端縁部において布保持枠9bの裏面で浮き上がらないように押さえられる。
【0030】
〔縫製処理の流れ〕
以上の構成の布保持枠9aを適用して縫製装置1を用いて縫製を行う際、作業者は布保持枠9aの縫製用開口部20aに被縫製物21をセットする(図9,ステップS3)。このとき、被縫製物21は布保持枠9aに設けられた縫製用開口部20aの内壁面で構成された当接部22によって位置規制され、布保持枠9aに対して正しく位置決めされる。しかし、被縫製物21の裁断時の個々の大きさのばらつきや皮革や織物などの可とう性材料の寸法変化などで、布保持枠9aに設けられた当接部22と被縫製物21の外周端縁とが当接せず、若干の隙間があったとしても構わない。
【0031】
次に照明装置42により布保持枠9aの縫製用開口部20aに位置決めされた被縫製物21を照らし、カメラ41により被縫製物21の外周端縁を撮像する(図9,ステップS4)このとき、布保持枠9aに設けられたエッジ検出用開口部24a,24bにおいては、被縫製物21の外周端縁の前方に十分な空間が設けられているため、照明装置42によりエッジ検出用開口部24a,24b内の被縫製物21の外周端縁の陰影がはっきりとする。
次に形状認識部4の画像認識制御部43は、カメラ41により撮像された被縫製物21の画像データにエッジ抽出処理をする。このときエッジ抽出処理をする箇所は、エッジ検出用開口部24a,24b内に撮影された被縫製物21の外周端縁のみに対して行う。この場合、被縫製物21の外周端縁全周のエッジ抽出処理する場合に比べ、エッジ抽出処理に掛かる演算処理時間は大幅に短縮される。このエッジ抽出処理によって抽出された被縫製物21の外周端縁は、図7に示す太い実線25で表示された箇所である。
すなわち、形状認識部4は、布保持枠9に位置決めされた被縫製物21の端位置を、カメラ41(対物検知手段)により、エッジ検出用開口部で露出する被縫製物21の端位置を検出し、検出した端位置に基づいて被縫製物21の端位置を認識している。
【0032】
図6に示した布保持枠9bを適用して縫製装置1を用いて縫製を行う場合でも同様に布保持枠9bの縫製用開口部20bに被縫製物21をセットし(図9,ステップS3)、照明装置42で照明した状態でカメラ41で撮像する(図9,ステップS4)。
この場合、当接部23の前方に位置する所定の幅の被縫製物21の外周端縁部は布保持枠9bの下側に位置する。そのためこの部分はエッジ抽出することができないが、図5に示した布保持枠9aと同様にエッジ検出用開口部24a,24b内の範囲のみ、エッジ抽出処理を行う。
このエッジ抽出処理によって抽出された被縫製物21の外周端縁も、図7に示す太い実線25で表示された箇所となる。
以上のように形状認識部4は、カメラ41によりエッジ検出用開口部24a,24bで露出する被縫製物21の外周端縁位置を検出する(図9,ステップS5)。
【0033】
以上のエッジ抽出処理をエッジ検出用開口部内に撮影される画像領域に限定するために、作業者は予めエッジ抽出箇所の設定を行う(図9,ステップS1)。例えば、表示装置52に表示したエッジ抽出箇所の設定画面上でエッジ抽出箇所(エッジ検出用開口部24a,24b内)をウィンドウで区切って設定を行う。このエッジ抽出箇所の設定は設定入力部44から画像認識制御部43に入力され、被縫製物毎に関連付けして設定保存データベース45に保存され、その被縫製物の縫製データが呼び出される度に呼び出され使用され、また設定は更新することが可能である。
また、エッジ抽出箇所を区切るウィンドウの内側に布保持枠9(9a,9b)が入らないように設定する。布保持枠9(9a,9b)の境界部を被縫製物21の外周端縁と誤って判定しないためである。これによってエッジ検出用開口部24a,24b内にウィンドウで区切った範囲の画像データのみをエッジ抽出処理することになる。
【0034】
撮像された画像データは、画像認識制御部43によってエッジ抽出処理が行われる。一般的には、撮像された画像データを二値化処理などによってエッジ抽出処理が行われる。エッジ抽出処理によって得られた画像内の座標はカメラ41と布送り部3の相対位置から算出された変換式によって画像認識制御部43が布送り部3の制御に係る二次元座標X−Yに変換する。すなわち、撮像画像に基づく布送り部3の縫製位置制御が正しくできるように変換される。カメラ41による撮像時に布送り部3がどの座標にあっても撮像時の布送り部3の座標が画像認識制御部43に入力されて上記変換式によって正しく変換される。また、カメラ41の設置座標も画像認識制御部43に予め入力されており、カメラ41がどの位置に設置されても上記変換式によって正しく変換される。図1においてはミシンアーム部2aに固定されたカメラ41及び照明装置42を示したが、カメラ41及び照明装置42をミシン本体2から(例えばX方向に)離して設置することも可能であり、その場合、布送り部3により布保持枠9をカメラ41の撮像範囲内に配置して撮像した後、布送り部3により布保持枠9をミシン本体2の方に移動させて縫製作業を行えばよい。したがって、カメラ41及び照明装置42やこれらを含んだ形状認識部4などもミシン本体2に対して一体的に搭載せずミシン本体2と別ユニットで構成することは可能であり、図3に示すように各部を接続すれば足りる。
【0035】
さらにエッジ検出用開口部の設置箇所について説明する。ポケット生地である被縫製部21の外周端縁のように、複数の直線部で構成される場合は、少なくとも各直線部の両端部にエッジ検出用開口部を設ける。直線部が短い場合は、直線部全体をエッジ検出用開口部とすることが望ましい。直線部の途中にエッジ検出用開口部を1〜数箇所設けても良い。
図5に示した布保持枠9aを適用する場合にあっては、当接部22に対応する外周端縁位置、図6に示した布保持枠9bを適用する場合にあっては、当接部23に対応する外周端縁位置は、エッジ抽出処理では取得せず、図7に示すようにエッジ抽出により検出された外周端縁位置である太い実線25から直線補間処理によって認識する(図9,ステップS6)。このような非エッジ抽出箇所の補間処理方法は、予め作業者の操作により設定される。すなわち、作業者の操作により設定入力部44から画像認識制御部43に入力され、設定保存データベース45に保存される(図9,ステップS2)。その設定は画像認識制御部43によって複数の当接部22,22,22,22又は23,23,23,23の各々において補完を直線補間で行うか又はスプライン補間で行うかを選択設定可能にされている。ここでは、作業者はすべて直線補間を選択する。
画像認識制御部43は、こうして得られた直線補間処理部分である二点鎖線26(図7)と太い実線25(図7)とを合わせて被縫製物21の外周端縁位置として確定させて、被縫製物21の外周端縁位置の認識処理を完了する(図9,ステップS7)。
すなわち、形状認識部4は、それを構成する画像認識制御部43によって、当接部に対応する端位置を、当接部の両隣のエッジ検出用開口部で検出された端位置に基づき補完しており、その補完を直線補間で行うか又はスプライン補間で行うかを選択設定可能である。
画像認識制御部43は、以上により認識した被縫製物21の外周端縁位置のデータをミシン制御部5に送信する。
【0036】
ミシン制御部5は、形状認識部4で認識された被縫製物21の外周端縁位置を基準にして縫製用開口20a,20bに露出する縫製領域内における縫製位置を決定する。そのためにミシン制御部5は、画像認識制御部43から取得した被縫製物21の外周端縁位置のデータに基づき、縫製パターンデータを作成する(図9,ステップS8)。
すなわち、ミシン制御部5は、縫製位置を指定する縫製パターンデータを、形状認識部4で認識した端位置に基づき作成する。
縫製パターンデータは、外周端縁位置のデータと、被縫製物21のポケット口となる上辺を除く4辺に沿って外周端縁位置から一定距離の内側を縫製するとのコマンド(縫製パターンデータの形式でないもの)とに基づき作成してもよい。そのコマンドは、作業者が表示装置52に表示された座標画面上で特定するように逐一入力することでもよい。
【0037】
しかし、縫製パターンデータは、予め登録してあった標準縫製パターンデータを、形状認識部4で認識された被縫製物21の外周端縁位置に適合するように補正することで効率よく作成することができる。標準縫製パターンデータは、縫製パターンデータベース51に登録されている。標準縫製パターンデータは、設計上の被縫製物21の端位置に適合して予め作成されたものである。言い換えれば、標準縫製パターンデータは、被縫製物21の端位置に誤差が無い場合にそのまま適合する縫製パターンデータである。したがって、標準縫製パターンデータが基準としている外周端縁位置と形状認識部4で認識された被縫製物21の外周端縁位置との差が一定の許容範囲内に収束するようにミシン制御部5が標準縫製パターンデータを修正し、布保持枠9にセットされた被縫製物21に対して実行される縫製パターンデータとする。
そのためには例えば、ミシン制御部5は、布送り部3の制御に係り縫製位置を定義するための二次元座標X−Y上において標準縫製パターンデータにより指定される縫製位置により特定される縫製経路形状を拡大・縮小、回転移動又は平行移動する態様で座標変換することで、標準縫製パターンデータを形状認識部4で認識した外周端縁位置に適合するように補正する。
【0038】
次に、ミシン制御部5は、作成された縫製パターンデータに基づきミシン本体2と布送り部3の駆動系に制御信号を送信し縫製作業を行わせる。
すなわち、ミシン制御部5の制御によりミシン本体2が縫製動作しつつ、縫製パターンデータにより指定される縫製位置が順次針落ち位置を通過するように布送り部3が被縫製物21を水平面X―Y内で動作させ、被縫製物21の外周端縁から一定幅の位置を正確に縫製する(図9,ステップS9)。上述したように被縫製物21は布保持枠9(9a,9b)に保持されているため、縫製時に被縫製物の浮き上がりが防止され、綺麗な縫い目が形成される。
言い換えると、ミシン制御部5は、形状認識部4で認識された端位置を基準に縫製位置を決定し、当該縫製位置で縫製作業を行わせるように、ミシン本体2と布送り部3を制御している。
【0039】
また、図8に示すように作業者が被縫製物21をセットする際に生じる位置ずれに対しても、上記と同様にエッジ検出用開口部24a,24b内のみをエッジ抽出処理、補間処理を行うことによって、被縫製物21の外周端縁位置の認識が可能である。このとき、被縫製物21が設計上の被縫製物21の端位置から許容できない範囲までずれていることがわかるので、作業者に対して被縫製物の位置ずれを知らせることも可能となる。そのためにミシン制御部5は、設計上の被縫製物21の端位置に対する形状認識部4で認識した端位置のずれ量を算出する。そしてミシン制御部5は、当該ずれ量が所定の閾値を超えている場合に被縫製物の位置ずれを表示装置52に表示出力する。所定の閾値は図8に示すように被縫製物21が当接部22を超えるか、又は大幅に離れるような許容できない設置状態を分別できるように設定する。
【0040】
なお、本実施形態では、対物検知手段としてカメラを用い、カメラで撮像した画像データからエッジ抽出処理によって被縫製物の外周端縁位置のデータを取得したが、例えばカメラを使用したオートフォーカスや全焦点処理などの被縫製物の高さ情報から被縫製物の外周端縁位置のデータを取得する方式や、またはレーザ変位計などにより被縫製物の高さ情報から外周端縁位置のデータを取得する方式など、他の方式も適用することが可能である。対物検知手段が種々のものに変更され、媒体が種々の波長又は偏光特性の光やその他の電磁波に変更されても、エッジ検出用開口部を介することで被縫製物のエッジの検出が良好となる限りこれを適用する意義がある。
また、本実施形態では、ポケット生地(被縫製物)を、ジーンズ生地(縫製物本体)上の所定位置に載置した後、布保持枠9aを下降させて、ポケット生地とジーンズ生地を押圧している。この状態で、ポケット生地をジーンズ生地に縫い付けつけるものに適用されている。
これに対して、本願発明は、生地(縫製物本体)にマークやラベル(被縫製物)を縫い付ける場合、そのマークやラべルの外形形状より若干小さな切抜き部を布保持枠に形成し、さらに、その布保持枠に被縫製物の端部の一部を露出させる複数のエッジ検出用開口部を形成したものにも適用できる。この場合の作業手順は、生地を布保持枠で押圧した後、マークやラベル(被縫製物)を切り抜き部に装着・位置決めさせ、次に被縫製物の端位置を認識させ、ポケット生地をジーンズ生地に縫い付けつける。
【0041】
〔他の実施形態〕
次に他の実施形態として、被縫製物が図10に示すロゴマーク31である場合につき説明する。縫製装置1及びその処理内容は上述の内容とほぼ同様であるが、ロゴマーク31は曲線外形を有し、そのためにスプライン補間を選択設定する点で異なる。以下詳細に説明する。
【0042】
図10に示す被縫製物31のような場合でも、図11に示すような縫製用開口部30と、当接部32a,32cと、エッジ検出用開口部33a,33b,33cとを布保持枠9cに設けることにより、被縫製物31の外周端縁位置の認識が可能である。
上述した被縫製物(ポケット生地)21の場合と同様に照明装置42により布保持枠9cの縫製用開口部30に位置決めされた被縫製物31を照らし、カメラ41により被縫製物31の外周端縁を撮像する(図9,ステップS4)。このとき、布保持枠9cに設けられたエッジ検出用開口部33a,33b,33c内には、被縫製物31の外周端縁の前方に十分な空間が設けられているため、照明装置42によりエッジ検出用開口部33a,33b,33c内で露出する被縫製物31の外周端縁の陰影がはっきりとする。
次に形状認識部4の画像認識制御部43は、カメラ41により撮像された被縫製物31の画像データにエッジ抽出処理をする(図9,ステップS5)。このときエッジ抽出処理をする箇所は、エッジ検出用開口部33a,33b,33c内に撮影された被縫製物31の外周端縁のみに対して行う。この場合、被縫製物31の外周端縁全周のエッジ抽出処理する場合に比べ、エッジ抽出処理に掛かる演算処理時間は大幅に短縮される。このエッジ抽出処理によって抽出された被縫製物31の外周端縁は、図12に示す太い実線34で表示された箇所である。
【0043】
さらにエッジ検出用開口部の設置箇所について説明する。被縫製部31の外周端縁のように、直線部と曲線部で構成される場合、直線部に関しては上述した被縫製部21の場合と同様に、少なくとも各直線部の両端部にエッジ検出用開口部を設ける。直線部が短い場合は、直線部全体をエッジ検出用開口部33bとすることが望ましい。直線部の途中にエッジ検出用開口部を1〜数箇所設けても良い。
同一半径で表される曲線部は、少なくとも各曲線部の両端部及び中間点付近にエッジ検出用開口部33cを設ける。また図示しないが同一半径で表される曲線部が短い場合も、直線部と同様に曲線部全体をエッジ検出用開口部で露出させることが望ましい。曲線部の途中にエッジ検出用開口部33cを中間点付近以外にも1〜数箇所設けても良い。また図示しないが複数の半径もしくは徐々に半径が変化するような曲線部は、曲線部の両端部にエッジ検出用開口部を設けるだけでなく、その途中に数箇所のエッジ検出用開口部を設ける。複数の半径もしくは徐々に半径が変化するような曲線部が短い場合も、上記と同様に曲線部全体をエッジ検出用開口部で露出させることが望ましい。
【0044】
布保持枠9cに設けられた縫製用開口部30の内壁面で構成される当接部32a,32cに対応する外周端縁位置は、エッジ抽出処理では取得せず、エッジ抽出により検出された外周端縁位置である太い実線34(図12)から補間処理によって取得する(図9,ステップS6)。したがって、作業者は直線状の当接部32aに対応する外周端縁については直線補間とする設定を、曲線状の当接部32cに対応する外周端縁についてはスプライン補間する設定を、設定入力部44から画像認識制御部43に入力する(図9,ステップS2)。
画像認識制御部43は、こうして得られた直線補間処理部分である二点鎖線35(図12)と、スプライン補間処理部分である二点鎖線36(図12)と、太い実線34(図12)とを合わせて被縫製物31の外周端縁位置として確定させて、被縫製物31の外周端縁位置の認識処理を完了する(図9,ステップS7)。
その後は、上述した被縫製物(ポケット生地)21の場合と同様に、被縫製物(ロゴマーク)31につき縫製パターンデータの作成(図9,ステップS8)、縫製(図9,ステップS9)を行う。
【0045】
以上説明したように上記実施形態の縫製装置によれば、布保持枠による被縫製物の保持性が良好であるとともに、被縫製物の端位置の正確な認識が可能となるから、被縫製物の端位置を基準とした縫製位置での被縫製物の縫製を精度よく安定的に行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 縫製装置
2 ミシン本体
3 布送り部
4 形状認識部
5 ミシン制御部
7 下板
8 外枠
9 布保持枠
9a 布保持枠
9b 布保持枠
10 土台
11 アーム
20 縫製用開口部
20a 縫製用開口部
20b 縫製用開口部
21 被縫製物(ポケット生地)
22 当接部
23 当接部
24a,24b エッジ検出用開口部
30 縫製用開口部
31 被縫製物(ロゴマーク)
32a,32c 当接部
33a,33b,33cエッジ検出用開口部
41 カメラ
42 照明装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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