特許第5993286号(P5993286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993286
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】溶融金属供給装置とその駆動方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 35/00 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   B22D35/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-250841(P2012-250841)
(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公開番号】特開2014-97524(P2014-97524A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183945
【氏名又は名称】助川電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081927
【弁理士】
【氏名又は名称】北條 和由
(72)【発明者】
【氏名】三浦 邦明
(72)【発明者】
【氏名】浅葉 信
【審査官】 荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−218048(JP,A)
【文献】 特開2009−012025(JP,A)
【文献】 特開2004−042092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクト(1)、(1’)内の溶融金属(12)に推力を与える誘導子(14)、(24)と、この誘導子(14)、(24)を駆動する駆動電源(31)、(32)とを備え、誘導子(14)、(24)によりダクト(1)、(1’)内の溶融金属(12)に推力を与えて同溶融金属(12)を供給する溶融金属供給装置において、誘導子(14)、(24)の駆動電源(31)、(32)のインバータのキャリア周波数を0.8kHz〜14.5kHzとしたことを特徴とする溶融金属供給装置。
【請求項2】
誘導子(14)、(24)が上下に2段に配置され、下側の誘導子(24)が溶融金属(12)を上側の誘導子(14)の高さ以上に汲み上げ、上側の誘導子(14)の駆動で給湯する2段形式の配置であって、ダクト(1)内の溶融金属(12)を所定の高さまで汲み上げておくための前者の下側の誘導子(24)の電源インバータのキャリア周波数を0.8kHz〜14.5kHzとしたことを特徴とする請求項1に記載の溶融金属供給装置。
【請求項3】
ダクト(1)、(1’)内の溶融金属(12)に推力を与える誘導子(14)、(24)と、この誘導子(14)、(24)を駆動する駆動電源(31)、(32)とを備え、誘導子(14)、(24)によりダクト(1)、(1’)内の溶融金属(12)に推力を与えて同溶融金属(12)を供給する溶融金属供給装置の駆動方法において、誘導子(14)、(24)の駆動電源(31)、(32)のインバータのキャリア周波数を0.8kHz〜14.5kHzとして誘導子(14)、(24)を駆動することを特徴とする溶融金属供給装置の駆動方法。
【請求項4】
誘導子(14)、(24)が上下に2段に配置され、下側の誘導子(24)が溶融金属(12)を上側の誘導子(14)の高さ以上に汲み上げ、上側の誘導子(14)の駆動で給湯する2段形式の配置であって、ダクト(1)内の溶融金属(12)を所定の高さまで汲み上げておくための前者の下側の誘導子(24)を電源インバータのキャリア周波数を0.8kHz〜14.5kHzとして駆動することを特徴とする請求項3に記載の溶融金属供給装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融アルミニウムや溶融亜鉛等の溶融金属を搬送するために使用される溶融金属供給装置とそれを駆動する方法に関し、特に溶融金属中に含まれる水素ガス等のガス成分を除去することが出来る溶融金属供給装置とその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアルミニウムダイキャスト装置によりアルミニウム鋳造物を製造する場合、アルミニウムのインゴットを溶融炉に入れて溶融した後、機械的な給湯装置や電磁ポンプ等の電磁動力を使用した給湯装置によりダイキャスト装置の型内キャビティに給湯し、アルミニウム鋳造物を鋳造する。
【0003】
このようなプロセスにおいて、溶融アルミニウム等の溶融金属には何らかの原因でガス成分が混入する。最も一般的なものは、空気中に含まれるN、HO、Oである。このうち最も反応性の高いOは溶融金属中においてAlと反応し、アルミナ(Al)等の酸化物としてスラグとなり、溶融金属の湯面に浮遊する。次に化学的に反応性が高い水分であるHO中の酸素成分も、溶融金属表面においてAlと反応してアルミナとなってスラグになると共に、水素成分は溶融金属中に水素原子Hの形で溶ける。この結果、溶融金属中には水素Hが主として存在することになる。
【0004】
このような溶融金属中に含まれる水素成分は、溶融金属が凝固するときに水素溶解度が大幅に低下し、溶解出来なかった水素原子が会合してガス化して鋳造物の中に、いわゆる「鬆」と呼ばれる微細な空孔(欠損)を発生させ、鋳造物の強度を低下させる原因となる。
【0005】
このため、溶融金属中の水素をガスとして放出させる幾つかの手段が提案されている。例えば、特開2006−342383号公報に記載されたように、溶融金属を攪拌することで溶融金属中からガスを放出するものである。また、特開平11−19763号公報に記載されたものは、湯面の上を不活性ガスで置換し、溶融金属中から水素を放出させるものである。さらに特開平7−332871号公報は、溶融金属中に不活性ガスを噴出すると共に溶融金属を攪拌し、酸化膜の無い不活性ガス層の界面を介して水素原子が会合してガスの形で不活性ガスに吸収され、水素原子をガスの形で放出させるものである。
【0006】
このような溶融金属中から水素を放出させる手段は、何れも溶融金属中から水素を十分に放出させることは出来なかった。例えば、前述した溶融金属を攪拌するガス放出手段は、ガスの放出効率に限度があり、溶融金属を攪拌することでさらに内部に新たな空気を取り込んでしまうこともある。また、湯面の上を不活性ガスで置換する手段は、溶融金属中からガスを放出させる部分がポーラスな酸化物間の割れ目等の狭い一定の範囲に限られ、溶湯の全体の脱ガスは不可能である。さらに溶融金属中に化学的活性度の低い窒素ガスを噴出すると共に溶融金属を攪拌する手段では、結局溶融金属中に僅かで有るが窒化物を作り更に窒素ガス等の不活性ガスが残ることになり、かえってガスの残存量を増大する結果になる。
【0007】
これに対し、特開2009−12025号公報のように、溶融金属を誘導電磁ポンプで給湯するに当たり、溶融金属に推力を与えて流れを形成すると共に電磁振動を与えると、溶融金属からガス成分が放出することを利用し、溶融金属中の水素等のガス成分を除去する技術が提案されている。これによれば、特定の位置にある溶融金属だけでなく、例えば溶融金属槽に収容された溶融金属12の全体からガス成分を放出出来るようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−12025号公報
【特許文献2】特開2006−342383号公報
【特許文献3】特開平11−19763号公報
【特許文献4】特開平7−332871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述した従来の溶融金属供給装置における課題に鑑み、誘導電磁ポンプによる推力と電磁振動によるガス放出作用についてさらに検討を進めた結果として、ダクトの内部の溶融金属に含まれる水素等のガス成分を効率的に放出する手段を見いだし、これにより不純物の少ない高品質な鋳造物等を製造することが可能な溶融金属供給装置とその駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、前記の目的を達成するため、誘導子14、24により所定の高さまでダクト1内の溶融金属12を汲み上げ、さらに給湯するのに当たり、前記誘導子14、24の駆動電源31、32のインバータのキャリア周波数を1kHz〜14.5kHzとして前記誘導子14、24を駆動する。
【0011】
すなわち、本発明による溶融金属供給装置は、ダクト1内の溶融金属12に推力を与える誘導子14、24と、これら誘導子14、24を駆動する駆動電源31、32とを備えているが、こられの誘導子14、24の駆動電源31、32による同誘導子14、24のインバータのキャリア周波数を0.8kHz〜14.5kHzとし、駆動するものである。より好ましくは電源インバータのキャリア周波数を1kHz〜10kHzとして駆動する。
【0012】
本発明者らは幾つかの実験により、電磁ポンプにおける溶融金属12内の水素等のガス成分の放出作用は、溶融金属12を汲み上げ、給湯する誘導子14、24のキャリア周波数に大きく関連していることを見いだした。具体的には、誘導子14、24の電源インバータのキャリア周波数を0.8kHz〜14.5kHzに設定すると、溶融金属12中の水素の量が減少し、その溶融金属12により鋳造された鋳造物の品質も高レベルであることが確認された。
【0013】
溶融金属12からの水素の除去は、溶融金属12を鋳型等に給湯する前に完了することが必要であり、その意味では、ダクト1、1’に溶融金属12が存在する間に水素の除去が完了していることが望ましい。このことから、誘導子14、24が上下に2段に配置され、下側の誘導子24が溶融金属12を上側の誘導子14の高さ以上に汲み上げ、上側の誘導子14の駆動で給湯する2段形式の誘導子14、24の配置の場合、少なくともダクト1内の溶融金属12を所定の高さまで汲み上げておくための前者の誘導子14を電源インバータのキャリア周波数0.8kHz〜14.5kHzとして駆動するのがよい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明した通り、本発明による溶融金属供給装置とその駆動方法では、誘導子14、24の駆動により溶融金属12を汲み上げ、給湯するに当たり、誘導子14、24を電源インバータのキャリア周波数を所要の範囲にして駆動するだけで溶融金属12に含まれる水素等のガス成分を効率的に放出することが出来る。これにより溶融金属12から成型される鋳造物等に巣等の不良が生じにくく、高品質の鋳造物を鋳造することが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】溶融金属供給装置の一実施例を示す断面図である。
図2】溶融金属供給装置における誘導子の駆動電源のキャリア周波数で給湯された溶融金属中の水素量及びその溶融金属を使用してKモールド法により鋳造物検査したときのK10値との関係の例を示すグラフである。
図3】溶融金属供給装置の他の実施例を示す断面図である。
図4】溶融金属供給装置のさらに他の実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明では、ダクト1内の溶融金属12に推力を与える誘導子14、24を駆動する電源31、32のインバータのキャリア周波数を0.8kHz〜14.5kHzとして駆動し、これによりダクト1内の溶融金属12に拡散する水素等のガス成分を放出し、除去するものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明による溶融金属供給装置の一実施例である。この溶融金属供給装置は、鋳型20の上側から溶融金属を給湯する例である。またこの溶融金属供給装置は、上側の給湯誘導子14と下側の立上誘導子24との2段の誘導子を有する。
ポンプ側ダクト1が斜めに配置され、溶融金属槽11に収納された溶融金属12の液面に前記ポンプ側ダクト1の下端が差し込まれている。ポンプ側ダクト1の溶融金属12の液面より上にある部分の周囲には、磁性体製のヨーク15にコイル16を巻回した給湯誘導子14が配置されている。ヨーク15は、ポンプ側ダクト1の溶融金属12の液面より上にある部分を囲むようにその外周側に嵌め込まれており、このヨーク15に三相コイルを構成するコイル16が巻回されている。この給湯誘導子14には、冷却器10が設けられ、駆動時に冷却される。
【0018】
さらに前記ポンプ側ダクト1には、前記給湯誘導子14より下側の部分の周囲に立上誘導子24が配置されている。この立上誘導子24は、前記の給湯誘導子14と同様に、前記ポンプ側ダクト1の誘導子14より下側の部分の外周に嵌め込まれた磁性体製のヨーク25にコイル26を巻回したものである。この立上誘導子24のコイル26は耐熱性を有する無機絶縁ケーブルにより巻回されている。無機絶縁ケーブルは、ステンレスチューブ等からなるシースの中に導電線を収納し、この導電線とシースとを、それらの間に充填したマグネシア粉末等の無機絶縁粉末で絶縁した構造を有する。いわゆるシースケーブルと呼ばれる。このような無機絶縁ケーブルは、耐熱性が高く、800℃の温度にも耐えることが出来る。このため立上用誘導子24は、冷却手段を有しない無冷却としながら、大きな電流を通電するのに適しており、その分だけ給湯誘導子14のコイル16に比べて立上誘導子24のコイル26の巻数は少なくすることが出来る。
【0019】
この立上誘導子24は、耐熱性を有するセラミック等からなる筒状の保護ケース17で囲まれている。この保護ケース17の上端開口部は、上側の給湯誘導子14の下端面に固定されている。また、この保護ケース17の下端の開口部は、前記ポンプ側ダクト1の下端と密に接合されており、この接合部に囲まれた内側は、ポンプ側ダクト1の下端の溶融金属12の導入口18となっている。
【0020】
給湯誘導子14と立上誘導子24とは、それぞれインバータを含む駆動電源31、32により駆動される。これら駆動電源31、32からはそれぞれ給湯誘導子14と立上誘導子24にインバータで変換された三相交流が通電され、これら誘導子14、24に磁界を発生させ、この移動する磁界による電磁誘導により、導電体であるポンプ側ダクト1内の溶融金属12に推力を与える。
【0021】
前記ポンプ側ダクト1の上端には、L字形のエルボ管からなる給湯側ダクト1’がフランジ継手等の継手5、5’を介して密に接続されている。保護管3の給湯側ダクト1’に近い一端部の周囲にフランジ6が延設され、このフランジ6の外周に近い部分が前記ポンプ側ダクト1と給湯側ダクト1’とを接続する前記の継手5、5’の間に挟持されている。これにより、保護管3の中のコア2、22がポンプ側ダクト1の中心に位置するよう保持されている。フランジ6には、溶融金属12の通路となる複数の円弧状の通過孔7が設けられている。給湯側ダクト1’は、図示してないバネ等により手前のポンプ側ダクト1に弾力的に押しつけられている。この状態で継手5、5’の間に挿入された耐熱性のガスケットにより継手5、5’の部分のシール性が確保されている。
【0022】
これらポンプ側ダクト1と給湯側ダクト1’は、セラミック等の耐熱性、耐蝕性のある材料で作られており、その外周に設けた保温用のマイクロヒータ等からなるヒータ9、9’により溶融金属12の融点以上の温度に加熱され、溶融金属12の凝固を防ぐ。
給湯側ダクト1’の先には鋳型20が配置され、給湯側ダクト1’の先端からこの鋳型20に溶融金属12が給湯される。後述するようにこの給湯動作は給湯誘導子14の駆動によりなされる。この鋳型20は鋳型駆動機構21により駆動され、組み立てと脱型が行われる。
【0023】
溶融金属槽11の中の溶融金属12に液面センサー等のセンサー13が設けられ、これにより溶融金属槽11の中の溶融金属12の液位が検知される。前記立上誘導子24は、このセンサー13で検知される溶融金属12の液面より下に挿入される。
他方、給湯側ダクト1’に電磁誘導により溶融金属12の存在を検知する形式の誘導式液面センサー等のセンサー19が設けられ、これにより給湯側ダクト1’の中の液位が検知される。
【0024】
この溶融金属供給装置を運転するときは、まず立上誘導子24への通電によりポンプ側ダクト1の中の溶融金属12を給湯誘導子14の電磁力が作用する高さまで汲み上げた後、給湯誘導子14に三相交流を通電し、ダクト1、1’の中の溶融金属12を適当なレベル30、例えば図1に示すようなレベル30にセンサー19の検知信号を基に給湯誘導子14に供給される三相交流を制御して維持する。このレベル30で溶融金属12の供給の待機状態とする。その後、給湯誘導子14に通電する三相交流の駆動電力をさらに増大させると、溶融金属12がエルボ状の給湯側ダクト1’の最上部を越流して溶融金属12の供給先である鋳型20に供給される。誘導式の液面センサー等のセンサー19を給湯側ダクト1’の最上部側に設置すると最上部を越流してゆく高さも検出出来て、その越流高さを維持計測すると、堰を使った流量計と同じ原理で大まかな供給流量も測定できる。この給湯流量と給湯時間と図示していない鋳型20に設置されたレベルセンサーから得られた信号を基に、鋳型20に所定量の溶融金属12の給湯が完了すると、給湯誘導子14の出力調整により溶融金属12のレベル30を図1に示す高さに戻す。
【0025】
このような溶融金属供給装置において、溶融金属12内の水素ガス等のガス成分の放出作用は、溶融金属12を汲み上げ、給湯する誘導子14、24の電源インバータのキャリア周波数に関連していることが見いだされた。図2は本件発明者らの実験により得られた結果であり、誘導子14、24の駆動電源31、32のインバータのキャリア周波数と溶融金属中の水素ガス量及びその溶融金属を使用してKモールド法により鋳造物検査したときのK10値との関係の例を示すグラフである。
【0026】
ポンプ側ダクト1内の溶融金属12を立上誘導子24の駆動により汲み上げ、10分間保持した後、溶融金属12をポンプ側ダクト1の上端から採取し、溶融金属100g中の水素ガス容積(cc)をランズレー法にて計測した。その後溶融金属12を一旦下げ、再度立上誘導子24の駆動により汲み上げ、10分間保持した後、溶融金属12をKモールド法に従い鋳造物サンプルを鋳造し、K10分値を分析、計測した。この計測操作は、駆動電源31、32のインバータのキャリア周波数を0.8kHz〜14.5kHzの範囲で段階的に変え、それぞれ行った。
【0027】
図2から分かる通り、駆動電源31、32のインバータのキャリア周波数を0.8kHz〜14.5kHzの範囲で変えたとき、ポンプ側ダクト1内の溶融金属12に分散している水素ガス量は、誘導子14、24のインバータのキャリア周波数が0.8kHz以上になると減少し始める。また、鋳造物中の不純物を示すK10値も、誘導子14、24のインバータのキャリア周波数が0.8kHz以上になると減少する。キャリア周波数が約7.5kHzでK10値は最小となり、キャリア周波数がそれを越すとK10値が漸次増大しはじめる。キャリア周波数が12kHzで0.8kHzの時とほぼ同等のK10値となる。この結果から、誘導子14、24を、その駆動電源31、32のインバータのキャリア周波数を0.8kHz〜14.5kHzとして駆動するのが良いことになった。特に誘導子14、24の駆動電源31、32のインバータのキャリア周波数が1kHz〜10kHzの範囲では、溶融金属12に溶解している水素量も十分小さくなり、K10値も良好な値が得られる。
【0028】
図3は、本発明による溶融金属供給装置の他の実施例である。この溶融金属供給装置は、ダイカスト鋳造装置のダイカストスリーブの上側から溶融金属を給湯する例である。この溶融金属供給装置もまた、前述した実施例と同様に、上側の給湯誘導子14と下側の立上誘導子24との2段の誘導子を有する。上側の給湯誘導子14の先の給湯ダクト1’を通してダイカストスリーブ27の上部に設けた給湯口から溶融金属12を給湯し、このダイカストスリーブ27に給湯された溶融金属12をプランジャ28により金型29に注入する。
【0029】
図4で示した溶融金属供給装置の実施例もまた、ダイカスト鋳造装置のダイカストスリーブに溶融金属を給湯する例である。この溶融金属供給装置もやはり、前述した実施例と同様に、上側の給湯誘導子14と下側の立上誘導子24との2段の誘導子を有する。この溶融金属供給装置では、上側の給湯誘導子14の先の給湯ダクト1’を通してダイカストスリーブ27の横に設けた給湯口から溶融金属12を給湯し、このダイカストスリーブ27に給湯された溶融金属12をプランジャ28により金型29に注入する。
【0030】
こられ図3図4の実施例において、その他の構成は、図1により前述した実施例と何れも同様である。同じ部分は同じ符合で示しており、それらの説明は重複するので省略する。駆動電源31、32のインバータのキャリア周波数を0.8kHz〜14.5kHzとして誘導子14、24を駆動するのも前述の通りである。図4における違いとしては、誘導式の液面センサー等のセンサー19を給湯側ダクト1’の最上部側に設置し最上部を越流してゆく高さを検出すると、その越流高さがダイカストスリーブ27に供給された量となる事である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明による溶融金属供給装置は、誘導子14、24の電源インバータのキャリア周波数を適宜に設定して駆動するだけで溶融金属12に分散する水素ガスを放出し、除去することが出来るので鋳造のように、水素ガス等のガス成分を含まない溶融金属12の供給を必要とする分野で利用することが出来る。
【符号の説明】
【0032】
1 ダクト
1’ ダクト
12 溶融金属
14 誘導子
24 誘導子
31 駆動電源
32 駆動電源
図1
図2
図3
図4