(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
製銑用の高炉への熱風供給を行うために、熱風炉が用いられている。
熱風炉の蓄熱室内には、蓄熱材として、外形が六角柱形状をした耐火煉瓦材製のチェッカー煉瓦(ギッター煉瓦とも称する)が多数配列され、複数層に重ねて築造されている。
チェッカー煉瓦は、耐火煉瓦材で形成された六角柱形状の本体を有する。本体の上面および下面は平行とされている。本体には、断面形状が丸形または六角形のガス流路が複数、鉛直方向に貫通形成されており、各々は本体の上下面に開口されている(特許文献1〜6参照)。
【0003】
このようなチェッカー煉瓦では、ガス流路に高温の燃焼ガスを通過させることで、本体のガス流路以外の耐火煉瓦材が詰まった部分(中実部)に熱を蓄熱することができる。一方、蓄熱した状態でガス流路に冷風を通過させて熱交換させることで、高温の熱風を生成し、高炉に供給することができる。
ここで、チェッカー煉瓦では、ガス流路と中実部のバランスが熱効率に大きな影響を与える。このため、近年では、ガス流路の形状および中実部の厚み等に関する最適化が行われている。また、近年、熱効率の向上を狙って、チェッカー煉瓦単位面積当たりのガス流路数(孔数)が増加する傾向にあり、1個当たりの流路数は7孔から19孔、更に最近では37孔のチェッカー煉瓦も使用されるようになってきている。
【0004】
また、チェッカー煉瓦を熱風炉内に築造する際には、垂直積み(煙突積み)またはラップ積みが採用される。
煙突積みは、下層のチェッカー煉瓦の真上に上層のチェッカー煉瓦を重ねてゆくものである。煙突積みは、積み方として簡素であるが、積まれたチェッカー煉瓦は煙突状に垂直方向へ連続するのみで、周囲のチェッカー煉瓦との間の接続が得られない。このため、燃焼・送風の繰り返しによる温度変動があると、煙突状に連続するチェッカー煉瓦が倒れやすいという問題がある。また、チェッカー煉瓦の側面に、炉内の高さ方向に貫通する通し目地が発生する。このような通し目地は、チェッカー煉瓦の上下面を貫通する本来のガス流路とは別にガスが吹き抜ける流路となるという問題もある。
【0005】
これに対し、ラップ積みは、複数のチェッカー煉瓦にまたがるようにチェッカー煉瓦を積み重ねてゆくものである。このため、チェッカー煉瓦の各またがり部分において、周囲のチェッカー煉瓦との間の接続が得られ、倒れや積み重ねの変形等を生じることがなく、安定した築造状態を維持することができる。また、前述した通し目地からのガスの吹き抜けの問題も抑制することができる。
【0006】
このようなラップ積みとしては、下層の3個のチェッカー煉瓦にまたがって上層のチェッカー煉瓦を積み重ねてゆく積み方が多用されている。具体的には、下層の3個のチェッカー煉瓦の六角形の頂点に、上層のチェッカー煉瓦の中心位置が配置され、上層のチェッカー煉瓦の下面の1/3ずつが下層の3個のチェッカー煉瓦に均等に分担支持される(特許文献1参照)。
【0007】
このようなラップ積みを形成する手法として、下層(第1層)のチェッカー煉瓦に対して、上層(第2層)のチェッカー煉瓦を、その何れかの側面に沿った方向へ側面1つ分ずらして重ねてゆくことを繰り返す積み方が多用されている。
この積み方では、更に上層(第3層)に積み重ねるチェッカー煉瓦は、その配列が第1層と同じとなり、結果として第1層(Aパターン)と第2層(Bパターン)との2種類の配列パターンで構成されるため、AB積みと呼ばれている。
しかし、AB積みでは、各層のチェッカー煉瓦の頂点ばかりが集まるガス流路が生じ、この部分に集まるチェッカー煉瓦の間には開きが発生するという問題がある。
【0008】
すなわち、AB積みを行う場合、例えば上層のチェッカー煉瓦の頂点位置は下層のチェッカー煉瓦の6つの頂点位置または1つの中心位置に一致する。そして、AB積みによって更に上層にチェッカー煉瓦を積み重ねていった場合、何れの階層でもチェッカー煉瓦の中心位置を通らず、チェッカー煉瓦の頂点位置ばかりを通るガス流路が生じる。
ガス流路において、何れかの階層でチェッカー煉瓦の中心を通れば、全方向に安定した状態とすることができる。しかし、前述のようにチェッカー煉瓦の頂点位置ばかりを通るガス流路においては、各階層で同ガス流路にチェッカー煉瓦の頂点が集まっているため、各チェッカー煉瓦が離れる(開く)ことになる。このような頂点のみで形成されて開きを生じ易いガス流路は、チェッカー煉瓦一個あたり6つの頂点のうち3箇所と無視できない頻度で発生することになる。
【0009】
これに対し、第1層のチェッカー煉瓦に対して、第2層のチェッカー煉瓦をその何れかの側面に沿った方向へ側面1つ分ずらして重ね、更にその上に第3層のチェッカー煉瓦を第2層でずらした方向とは別の側面に沿った方向へ側面1つ分ずらして重ね、更にその上層(第4層)にチェッカー煉瓦を前述した第2層と同じ方向にずらして重ねることを繰り返す積み方も用いられている(特許文献4参照)。
この積み方では、第1層(Aパターン)、第2層(Bパターン)および第3層(Cパターン)という3種類の配列パターンで構成されるため、ABC積みと呼ばれている。
このようなABC積みでは、煉瓦の六角形の頂点が3段に亘って一致しない(六角形の中心も3段に亘って一致しない)ように積み重ね、より均一な荷重分散を図ることができるとともに、全てのガス流路が、何れかの階層でチェッカー煉瓦の中心位置を通るため、チェッカー煉瓦の開きの発生を防止することができる。
【0010】
一方、チェッカー煉瓦には、積み重ねられた上下のチェッカー煉瓦が水平方向にずれないように、本体の上下面に円錐台状のダボを形成し、互いに凹凸嵌合させることがなされている。
これらのダボは、本体の上下面に形成する際に、チェッカー煉瓦の積み方に応じて配置を定められる。前述したラップ積み、とくにAB積みやABC積みとする場合、積み重ねられた状態で上下面のダボが確実に嵌合し、かつ干渉等を生じないように、上下面でその中心から見て120度間隔となる各方向に配置される。詳細には、各方向における上下面の中心と六角形の頂点とを結ぶ線分上であってこの線分の中点など、特定の位置に配置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、本体の上下面に前述したダボが形成されたチェッカー煉瓦では、ダボの形状あるいは配置によって、本体の耐火煉瓦材が欠けたり割れたりしやすくなるという問題が見いだされている。
特許文献2および特許文献3では、19孔のチェッカー煉瓦において、上面の凸状ダボと下面の凹状ダボとがそれぞれ120度配置されるとともに、上下面で同じ位置にある。このような場合、AB積みパターンのみの積み構成となることから、周囲のチェッカー煉瓦からの外力伝達が、上下面にダボが形成された1軸方向だけに限定され、本体の割れ等の破損が生じやすいという問題があることが判ってきた。
【0013】
特許文献4では、19孔のチェッカー煉瓦において、上面のダボと下面のダボとを、それぞれ120度配置とするとともに、上下で互いに60度ずらしている。これにより、周囲のチェッカー煉瓦からの外力伝達を本体の各方向に均等に分散させることができ、割れにくい構造とすることができる。
しかし、特許文献4では、上下面のダボがそれぞれ4つのガス流路の開口にまたがって形成され、かつ上下面の六角形の頂点近傍に設置したガス流路の外側(頂点に近い側)までダボの一部が拡がっている。このような場合、凸状のダボがガス流路で一部削られることで当該ダボに肉厚の薄い部分が生じるとともに、凹状のダボの付近ではダボの凹状によってガス流路間の中実部が削られて肉厚の薄い部分が生じる。これらの肉厚の薄い部分では、製造時および操業時に本体の耐火煉瓦材が割れやすいという問題があることが判ってきた。
【0014】
特許文献5では、37孔のチェッカー煉瓦において、ダボは上下面の頂点と中心との中点にあるガス流路と同軸で形成され、かつ周囲が6個のガス流路の開口にかかるように形成されている。
しかし、特許文献5のようなダボを用いる場合、ダボの周辺部分が6個の開口で一部削られて割れやすい部分が生じる。さらに、このようなダボを形成したチェッカー煉瓦は、前述したABC積みができず、下層の3個のチェッカー煉瓦に対する均等な荷重分散ができない。その結果、ダボ部の荷重が増加し、欠けやすくなるという問題があることが判ってきた。
【0015】
特許文献6では、37孔のチェッカー煉瓦において、そのガス流路(孔)として、断面形状では熱効率が比較的良い六角形を採用している。
しかし、このような特許文献6においても、ガス流路が円形である特許文献5と同様な欠けやすい等の問題が存在することが判ってきた。
上述したようなガス流路が37孔で断面形状が六角形のチェッカー煉瓦においては、ガス流路の六角形によって熱効率が比較的良好であるものの、ダボ周辺で脆弱性があるため、その製造、運搬あるいは施工の際に割れや欠け等の破損が生じ、実使用に適さなくなるという問題があることが判ってきた。
【0016】
本発明の目的は、熱効率が比較的良好であるガス流路が37孔で断面形状が六角形のチェッカー煉瓦において、ダボ周辺の破損を防止でき、かつABC積みが可能なチェッカー煉瓦を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のチェッカー煉瓦は、上面、下面、6つの側面および前記側面が互いに交わる6つの角部を有する六角柱状の本体を有し、前記本体には、前記本体を貫通して前記上面および前記下面にそれぞれ開口しかつ断面形状が六角形である37個のガス流路が形成され、前記ガス流路は、前記6つの側面のうち平行に相対する2つの側面間に4個、5個、6個、7個、6個、5個、4個ずつ7列に配置され、かつ前記ガス流路の断面形状の六角形の6つの頂点がそれぞれ前記側面の何れかに直交する方向に向けて配置され、前記ガス流路の断面形状の六角形の辺どうしが対向しかつ何れも同じ間隔で配置されており、前記6つの側面には、それぞれ前記上面から前記下面まで連続する3本の第1流路溝が形成され、前記第1流路溝は断面が前記ガス流路の断面形状である六角形を対向する辺の中点を結ぶ線で半分に切断した形状を有し、前記6つの角部には、それぞれ前記上面から前記下面まで連続する1本の第2流路溝が形成され、前記第2流路溝は断面が前記ガス流路の断面形状である六角形を一つの辺を挟む一対の辺の中点と六角形の中心とを結ぶ線で1/3に切断した形状を有し、前記上面には凸状または凹状の何れか一方である3つのダボが形成され、前記下面には凸状または凹状の何れか他方である3つのダボが形成され、前記上面または前記下面の何れか一方の前記ダボは、それぞれ前記上面または前記下面の何れか一方における前記本体の六角形の頂点から前記上面または前記下面の何れか一方の中心に至る線分上にある3個の前記ガス流路のうち前記
本体の六角形の頂点に近い側の2個の前記ガス流路の開口にまたがって配置され、前記上面または前記下面の何れか他方の前記ダボは、それぞれ前記上面または前記下面の何れか他方における前記本体の六角形の頂点から前記上面または前記下面の何れか他方の中心に至る線分上にある3個の前記ガス流路のうち前記中心に近い側の2個の前記ガス流路の開口にまたがって配置され、前記ダボの側面は、それぞれ前記ダボがまたがる前記2個の前記ガス流路の開口のうち
、前記
本体の六角形の頂点に近い側の開口
における、前記ガス流路の断面形状の六角形の頂点のうち、前記線分から最も離れた一対の頂点よりも
、前記上面または前記下面の中心寄りの領域で前記開口の辺縁と交差し、前記上面または前記下面の何れか一方の3つの前記ダボの中心の
、前記上面または前記下面の何れか一方における前記線分の前記
本体の六角形の頂点からの距離と、前記上面または前記下面の何れか他方の3つの前記ダボの中心の
、前記上面または前記下面の何れか他方における前記線分の前記中心からの距離とが等しく、前記上面の3つの前記ダボおよび前記下面の3つの前記ダボは、前記上面または前記下面の中心から見て互いに120度間隔で配置され、前記上面の3つの前記ダボと前記下面の3つの前記ダボとは、互いに60度回転させた向きの前記線分上に配置されていることを特徴とする。
【0018】
このような本発明では、本体を積み重ねる際に、上面のダボおよび下面のダボが互いに凹凸嵌合し、水平方向のずれを防止する。
ここで、上面および下面の各ダボの側面(例えば円錐台形状のダボの傾斜した側面)は、2個のガス流路の開口のうち頂点に近い側の開口の線分から最も離れた頂点よりも上面または下面の中心寄りの領域で頂点に近い側の開口の辺縁と交差する。つまり、各ダボの側面が交差するのは、頂点に近い側の開口の上面または下面の中心寄りの領域であり、当該開口の中心寄りの半分程度までしかダボが削られないことになる。
これにより、凸状のダボがガス流路で削られても肉厚が薄くなる部分が最小限とされ、凹状のダボの付近ではダボの凹状によってガス流路間の中実部が削られて肉厚が薄くなる部分が最小限とされ、これらの肉厚の薄い部分が最小限とされることで煉瓦の破損を防止することができる。
【0019】
また、本発明では、上面および下面の3つのダボが、上面または下面における線分の対応位置に配置され、かつ上面または下面の中心から見て互いに120度間隔で配置され、かつ、上面の3つのダボと下面の3つのダボとは、互いに60度回転させた向きの線分上に配置されるようにした。このため、ラップ積みのなかでも特にABC積みを適用することができ、チェッカー煉瓦の開きの発生防止や周囲のチェッカー煉瓦からの外力伝達の点で、AB積みに対しても優れた効果を得ることができる。
とくに、本発明では、上面のダボの頂点からの距離(中心位置)と下面のダボの下面中心からの距離(同)とを等しくし(例えば、上面のダボの中心を頂点から3/8位置つまり中心から5/8位置とし、下面のダボの中心を頂点から5/8位置つまり中心から3/8位置とする)、ABC積みにあたって下段のチェッカー煉瓦の中心位置のガス流路上に上段のチェッカー煉瓦の頂点がくるように配置された際には、上段の下面の中心に近い(例えば中心から3/8位置の)ダボと、下段の上面の頂点に近い(例えば頂点から3/8位置の)ダボとが同じ位置になり、ダボを2つのガス流路の間(計4つのガス流路に囲まれる状態)に設置しつつ、互いに填め込むことが確実にでき、適切なABC積みを行うことができる。
さらに、本発明では、断面形状が六角形であるガス流路を互いの辺が対向するように配置することで、ガス流路間に形成される中実部が略一定厚みで連続するように形成され、熱交換に有効な形状とすることができる。
【0020】
本発明において、前記ダボは円錐台状または六角形の角錐台状であることが望ましい。
円錐台状のダボを用いる場合、製造が容易であるとともに、突起がない分破損しにくくできる。
角錐台状のダボを用いる場合、凹状のダボと凸状のダボとの間で面接触を形成することができ、破損の回避に有効である。とくに六角形の角錐台状とすれば、各頂点部分が120度コーナーとなって突起としても緩やかで、破損しにくくできる。
【0021】
本発明において、前記ダボは、前記本体の上下方向にテーパを有することが望ましい。
このような上下方向(高さ方向)のテーパを加えることで、チェッカー煉瓦の積み重ね時に凹状のダボに凸状のダボを嵌め込む操作を円滑に行え、施工を容易に行えるとともに、ダボ周辺の破損の可能性を更に低減できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ABC積みを適用することができるとともに、ダボとガス流路とが重なる部分に生じる肉厚の薄い部分を最小限とすることができ、薄肉化に起因する煉瓦の破損を防止することができる。
さらに、本発明によれば、断面形状が六角形であるガス流路を互いの辺が対向するように配置することができ、ガス流路間に形成される中実部が略一定厚みで連続するように形成することができ、熱交換に有効な形状とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
なお、以下には、先ず本実施形態のチェッカー煉瓦が内部に設置される熱風炉について説明し、続いて同熱風炉内に築造されるチェッカー煉瓦の実施形態について説明する。
【0025】
〔熱風炉の概要〕
図1には、本発明のチェッカー煉瓦を利用する熱風炉1が示されている。
図1において、熱風炉1は、図示しない高炉に例えば1200〜1400℃の熱風を供給するための設備である。
熱風炉1は、基礎2上に設置された蓄熱室3、燃焼室4および煙突5を有する。
燃焼室4は、蓄熱室3の側方に並設された円筒状の燃焼設備であり、その下部には加熱用のバーナー8が設置されている。バーナー8にはガス管6および空気管7が接続され、これらから供給される燃料ガスおよび空気を混合させて燃焼させて高温の燃焼ガスを生成することができる。
【0026】
燃焼室4の中間部には図示しない高炉に至る熱風出口13が接続されているとともに、燃焼室4の上部は連絡管9により蓄熱室3の上部と連通されている。
蓄熱室3は、円筒状の蓄熱設備であり、その内部には、耐火煉瓦材製のチェッカー煉瓦20が多層にわたって積み重ねられ、これにより高さが約30〜40mにおよぶ蓄熱領域10が築造されている。
蓄熱室3の下部は排ガス出口11を介して煙突5の下部に連通されている。また、蓄熱室3の下部は開閉可能な冷風入口12を介して大気に開放可能である。
【0027】
チェッカー煉瓦20は、詳細は後述するが、燃焼室4から蓄熱室3に供給される排ガスの熱(燃焼熱)を蓄熱し、その熱で冷風を加熱して熱風を生成する熱交換機能を有する。このチェッカー煉瓦20の内部には、上下方向に多数のガス流路22が貫通形成されている(
図2〜
図6参照)。
【0028】
なお、
図1の熱風炉1は、燃焼室4と蓄熱室3が分離構成された外燃式であるが、本発明のチェッカー煉瓦が適用される熱風炉は、このような外燃式の熱風炉1に限定されず、燃焼室と蓄熱室が一体構成された内燃式熱風炉、燃焼室が蓄熱室の頂上部に設けられた頂頭式熱風炉など、任意の形式の熱風炉であってよい。
【0029】
〔熱風炉の作用〕
このような熱風炉1は、通常、1基の高炉につき例えば3〜4台が設置される。そして、各々の熱風炉1で蓄熱工程と送風工程とを交互に繰り返し、このうち送風工程にある熱風炉1を選択して切り替えることで、高炉に対して熱風を絶え間なく連続的に供給する。
蓄熱工程では、燃焼室4において、ガス管6から供給される燃料ガスと、空気管7から供給される燃焼用の空気とを混合して、バーナー8により燃焼させる。
燃焼室4での燃焼により得られた高温の排ガス(例えば1300〜1500℃)は、燃焼室4上部から連絡管9を通じて蓄熱室3に送出され、蓄熱室3の蓄熱領域10に積み重ねられた多数のチェッカー煉瓦20のガス流路22内を下方向に流通する。
このとき、排ガスとチェッカー煉瓦20との間の熱交換により、流通するガス中の燃焼熱がチェッカー煉瓦20に蓄熱される。蓄熱領域10を通過した排ガスは、蓄熱室3下部の排ガス出口11を通じて煙突5に排出される。
【0030】
送風工程では、上記燃焼室4での燃焼を停止して、蓄熱室3の蓄熱領域10の下部側に設けられた冷風入口12から蓄熱室3内に空気(冷風)を送り込む。
送り込まれた空気は、蓄熱領域10に積み重ねられたチェッカー煉瓦20のガス流路22内を上方向に流通する。このとき、上記蓄熱されたチェッカー煉瓦20と空気との間の熱交換により、流通する空気が加熱されて1200〜1400℃の熱風が生成される。この熱風は、蓄熱室3上部から連絡管9及び燃焼室4を通り、熱風出口13から送出されて高炉に送られる。
【0031】
このような熱風炉1内に設置されたチェッカー煉瓦20では、蓄熱工程と送風工程とが交互に繰り返される間に、蓄熱および熱風の供給が行われる。
蓄熱工程では、燃焼室4から蓄熱室3の上部に流入した高温の排ガスが、蓄熱室3内のチェッカー煉瓦20のガス流路22内を下方向に流通する。
送風工程では、蓄熱室3の下部から流入した低温の空気(冷風)が、チェッカー煉瓦20のガス流路22内を上方向に流通する。
従って、熱風炉1内に設置されたチェッカー煉瓦20においては、そのガス流路22に蓄熱工程と送風工程とで互いに逆方向にガスが流通され、蓄熱工程で流通する排ガスの熱を蓄熱し、その熱を用いて送風工程で流通する空気を加熱するという熱交換機能および蓄熱機能を奏する。
【0032】
〔チェッカー煉瓦〕
図2ないし
図6には、本発明に基づくチェッカー煉瓦20が示されている。
図2はチェッカー煉瓦20の上面側を斜めに見た状態、
図3はチェッカー煉瓦20の下面側を斜めに見た状態である。
図4はチェッカー煉瓦20の上面を示し、
図5はチェッカー煉瓦20の側面を示し、
図6はチェッカー煉瓦20の下面を示す。
【0033】
各部に示すように、チェッカー煉瓦20は、上面25、下面26、6つの側面27および前記側面27が互いに交わる6つの角部30を有する六角柱状の煉瓦本体21を有する。
煉瓦本体21は、その上面25から下面26へと上下方向に貫通する複数のガス流路22と、煉瓦本体21の上面25にその六角形の中心から見て120度間隔で設けられる3つの凸ダボ23と、煉瓦本体21の下面26にその六角形の中心から見て120度間隔で設けられる3つの凹ダボ24と、煉瓦本体21の6つの側面27それぞれに形成される3つの側面平部271及び上下方向に形成された3本の第1流路溝28と、6つの角部30それぞれに形成される1本の第2流路溝29とを備えている。
【0034】
煉瓦本体21は、耐火煉瓦材を型枠成型により六角柱状に形成したものであり、前述した熱風炉1の蓄熱領域10に設置される際に、多数のチェッカー煉瓦20を上下に積み重ねた場合でも破壊されない十分な圧縮強度を有する。
【0035】
ガス流路22は、煉瓦本体21を上下方向(六角柱状の軸心方向)に貫通する貫通孔とされている。また、この貫通孔は、チェッカー煉瓦20を上下に積み重ねた際に流路断面を塞がないように上下方向にテーパ状となっていることが好ましい。
ガス流路22は、煉瓦本体21の6つの側面27のうち、平行に相対する2つの側面27間に、それぞれ4個、5個、6個、7個、6個、5個、4個となるように7列に配置され、合計で37個形成されている。
【0036】
ガス流路22は、煉瓦本体21の上面25に形成された開口221と、煉瓦本体21の下面26に形成された開口222とを有する。ガス流路22は、好ましくは上向きに拡径したテーパ状の貫通孔とされ、下面26の開口222に対して上面25の開口221がやや大きく形成されている。
【0037】
ガス流路22の断面形状は六角形とされ、従って開口221,222も六角形である。ただし、これらの六角形は頂点が丸められている。
ガス流路22は、六角形の互いの辺が対向するように配置され、ガス流路22間に形成される中実部210は略一定厚みでリブ状に連続するように形成されている。
このような形状により、ガス流路22に臨む表面からの中実部210の厚さが一定となり、中実部210を構成する耐火煉瓦材を蓄熱材として無駄なく機能させることができる。
従って、このような六角形のガス流路22を用いることで、チェッカー煉瓦20としての蓄熱効率を最大にすることができる。
【0038】
第1流路溝28は、煉瓦本体21の6つの側面27の中間部分(上面25および下面26の六角形の辺にあたる部分の中間)において、それぞれ上面25から下面26まで連続して形成されている。
第1流路溝28の断面形状は、ガス流路22の断面形状である六角形を、対向する辺の中点を結ぶ線(外接円の直径となる線分)で半分つまり1/2に切断した形状とされている。従って、チェッカー煉瓦20を隣りあわせに配置した際には、他のチェッカー煉瓦20の第1流路溝28と互いに向かい合わせに配置され、これら2本の向かい合う第1流路溝28によりガス流路22に相当する空間が形成されるようになっている。
第1流路溝28は、1つの側面27あたり3個、煉瓦本体21では合計18個形成されている。
【0039】
第2流路溝29は、煉瓦本体21の6つの側面27が互いに交わる角部30(上面25および下面26の六角形の頂点にあたる部分)において、それぞれ上面25から下面26まで連続して形成されている。
第2流路溝29の断面形状は、ガス流路22の断面形状である六角形を、一つの辺を挟む一対の辺の中点と六角形の中心とを結ぶ線で1/3に切断した形状とされている。従って、3個のチェッカー煉瓦20を隣りあわせに配置した際には、他の2個のチェッカー煉瓦20の第2流路溝29と互いに向かい合わせに配置され、これら計3本の向かい合う第2流路溝29によりガス流路22に相当する空間が形成されるようになっている。
第2流路溝29は、煉瓦本体21の各角部分に1個、煉瓦本体21全体では合計6個形成されている。
【0040】
なお、煉瓦本体21において、ガス流路22の数を過度に多くしたり、ガス流路22の断面積を過度に大きしたりすると、チェッカー煉瓦20の製造時のプレス能力が不足し、高さ方向に均質な煉瓦材質が得られず、チェッカー煉瓦20の強度が不足することがある。
一般に、チェッカー煉瓦20に類するチェッカー煉瓦としては、幅が180〜320mm、高さが120〜180mmのものが使用されているが、蓄熱室3内におけるチェッカー煉瓦20の積み上げ高さは、約30〜40mにも達するため、チェッカー煉瓦20にかかる荷重と熱膨張時の応力を考慮すると、経験的に圧縮強さは40MPa以上であることが好ましい。
【0041】
例えば、上記サイズのチェッカー煉瓦20の1個あたりのガス流路22の設置数が37個を超える場合には、煉瓦本体21の十分な圧縮強度が得られない。従って、煉瓦本体21においては、その材質およびサイズに応じて、ガス流路22の設置数および各々の流路間距離を適切に決定することが好ましい。
本実施形態のチェッカー煉瓦20では、前述した通り、煉瓦本体21にガス流路22が37個形成されているほか、1/2断面の第1流路溝28が18個、1/3断面の第2流路溝29が6個設けられている。これらの断面積および流路間距離は、前述のような圧縮強さを考慮して、煉瓦本体21の材質およびサイズに応じて適切に設定されている。
【0042】
凸ダボ23は、
図4および
図2に示すように、煉瓦本体21の上面25から凸状に隆起して形成されており、全体として円錐台状(テーパ状)とされ、その上面は上面25と同様に水平であるが、側面は上面25に対して所定角度の円錐面とされている。
凸ダボ23は、
図4に示すように、その中心C1が、上面25の六角形の頂点P1(2つの側面27が交差する位置)から上面25の中心C2に至る線分S上に配置されている。
線分S上には、中心C2と同心のものを除いて3個のガス流路22がある。
3個の各ガス流路22の中心は、それぞれ中心C2から線分Sの2/8位置、4/8位置、6/8位置にあり、これらは頂点P1から見ても線分Sの2/8位置、4/8位置、6/8位置にあたる。3個の各ガス流路22の間には2つの中実部210があるが、これらの位置は、中心C2から線分Sの3/8位置および5/8位置にあり、これらは頂点P1から見ても線分Sの3/8位置および5/8位置にあたる。
【0043】
凸ダボ23は、前述した線分S上であって、前述した3個のガス流路22のうち、頂点P1に近い側にある2個のガス流路22(中心C2から見て線分Sの4/8位置および6/8位置、頂点P1から見て線分Sの2/8位置および4/8位置)の開口221の間にまたがって配置されている。凸ダボ23の大部分は、2個のガス流路22の間の中実部210(中心C2から見て線分Sの5/8位置、頂点P1から見て線分Sの3/8位置)に形成されており、凸ダボ23の側面の一部が同2個のガス流路22の開口221によって削り取られた形状となっている。
【0044】
凸ダボ23の側面は、2個のガス流路22の開口221のうち上面25の頂点P1に近い側(頂点P1から2/8位置)の開口221において、線分Sから最も離れた一対の頂点P2よりも上面25の中心C2寄りの領域で開口221の辺縁と交差している。これにより、凸ダボ23の側面の一部が同2個のガス流路22の開口221によって削り取られても薄肉部が発生しないようになっている。
また、凸ダボ23は、チェッカー煉瓦20を上下に積み重ねる際、凹ダボ24に嵌め込む操作が円滑に行えるように、上下方向(高さ方向)にテーパが形成され、具体的には上面側(先端側)が小径で上面25に接続する部分では大径とされている。
【0045】
凹ダボ24は、
図6および
図3に示すように、煉瓦本体21の下面26から凹状に窪んだ形状とされている。凹ダボ24の内側形状は、全体として円錐台状(テーパ状)とされ、その底面は下面26と同様に水平であるが、側面は下面26に対して所定角度の円錐面とされている。
凹ダボ24は、
図6に示すように、その中心C1が、下面26の六角形の頂点P1(2つの側面27が交差する位置)から下面26の中心C2に至る線分S上に配置されている。
前述したように、線分S上には、中心C2と同心のものを除いて3個のガス流路22(中心C2あるいは頂点P1から線分Sの2/8位置、4/8位置、6/8位置)があり、これらの間には2つの中実部210(中心C2あるいは頂点P1から線分Sの3/8位置、5/8位置)がある。
【0046】
凹ダボ24は、前述した線分S上であって、前述した3個のガス流路22のうち、中心C2に近い側にある2個のガス流路22(中心C2から見て線分Sの2/8位置および4/8位置、頂点P1から見て線分Sの4/8位置および6/8位置)の開口222の間にまたがって配置されている。凹ダボ24の大部分は、2個のガス流路22の間の中実部210(中心C2から見て線分Sの3/8位置、頂点P1から見て線分Sの5/8位置)に形成されており、凹ダボ24の側面の一部が同2個のガス流路22の開口222によって削り取られた形状となっている。
【0047】
凹ダボ24の側面は、2個のガス流路22の開口222のうち下面26の頂点P1に近い側(頂点P1から4/8位置)の開口222において、線分Sから最も離れた一対の頂点P2よりも下面26の中心C2寄りの領域で開口222の辺縁と交差している。これにより、凹ダボ24の側面の一部が同2個のガス流路22の開口222によって削り取られても薄肉部が発生しないようになっている。
また、凹ダボ24は、チェッカー煉瓦20を上下に積み重ねる際、凹ダボ24に嵌め込む操作が円滑に行えるように、上下方向(高さ方向)にテーパが形成され、具体的には上面側(凹状の底面側)が小径で下面26に開口する部分では大径とされている。
【0048】
なお、凸ダボ23は煉瓦本体21の上面25にその六角形の中心から見て120度間隔で3つ配置され、凹ダボ24は下面26にその六角形の中心から見て120度間隔で3つ配置されている。
上面25に形成された3つの凸ダボ23は、頂点P1からの距離が線分Sの3/8とされ、中心C2からの距離が線分Sの5/8である。
下面26に形成された3つの凹ダボ24は、中心C2からの距離が線分Sの3/8とされ、頂点P1からの距離が線分Sの5/8である。
つまり、上面25の凸ダボ23の頂点P1からの距離と下面26の凹ダボ24の中心C2からの距離とが等しくされている。
【0049】
これにより、
図10あるいは
図12に示すように、複数のチェッカー煉瓦20をラップ積みしたときに、上階層のチェッカー煉瓦20の下面26に形成された3個の凹ダボ24と、下段の3つのチェッカー煉瓦20の上面25にそれぞれ形成された計3個の凸ダボ23とを嵌合させることが可能となる。
これらの凹ダボ24および凸ダボ23は、互いに60度ずつずれた位置に配置され、凹ダボ24の真上には凸ダボ23はなく、凸ダボ23の直下には凹ダボ24はない。このような配置により、本実施形態のチェッカー煉瓦20は、ラップ積みのなかでも特にABC積みを適用することができ、凹ダボ24あるいは凸ダボ23に作用する外力をチェッカー煉瓦20において60度間隔となる各方向に分散させることができる。
【0050】
さらに、上面25の凸ダボ23の中心が頂点P1から線分Sの3/8位置(中心C2から5/8位置)であり、下面26の凹ダボ24の中心が頂点P1から線分Sの5/8位置(中心C2から3/8位置)となる。
このため、ABC積みにあたって、下段のチェッカー煉瓦20の中心C2位置のガス流路22上に上段のチェッカー煉瓦20の頂点P1がくるように積んだ際には、上段のチェッカー煉瓦20の下面26の中心C2に近い(例えば中心C2から3/8位置の)凹ダボ24と、下段のチェッカー煉瓦20の上面25の頂点P1に近い(例えば頂点P1から3/8位置の)凸ダボ23とが同じ位置になり、これらの凸ダボ23および凹ダボ24を、2つのガス流路22の間(計4つのガス流路22に囲まれる状態)に設置しつつ、互いに填め込むことが確実にでき、適切なABC積みを行うことができる。
【0051】
〔チェッカー煉瓦の積み重ね構造〕
本実施形態のチェッカー煉瓦20は、ラップ積み(ABC積み)により積み重ねられて蓄熱室3内に設置される。
先ず、
図7および
図8に示すように、チェッカー煉瓦20を敷き詰めて第1階層を形成する。
チェッカー煉瓦20は、互いに側面27どうしを向かい合わせ、各々の角部分(第2流路溝29が形成された部分)に3つのチェッカー煉瓦20が集まるように配置される。
これにより、3つの第2流路溝29で一本のガス流路22相当の空間が形成され、各側面27間には対向する2つの第1流路溝28によりそれぞれ一本のガス流路22相当の空間が形成される。
【0052】
なお、これらのチェッカー煉瓦20の敷き詰めおよび第1流路溝28および第2流路溝29によるガス流路22相当の空間の形成は、後述する第2階層(
図9および
図10参照)および第3階層(
図11および
図12参照)においても同様であるため、各階層の説明では重複する説明を省略する。
【0053】
次に、
図9および
図10に示すように、第1階層の上にチェッカー煉瓦20を敷き詰めて第2階層を形成する。
第2階層のチェッカー煉瓦20は、各々の中心が第1階層のチェッカー煉瓦20の第2流路溝29の位置に来るように配置する。
第2階層のチェッカー煉瓦20を第1階層のチェッカー煉瓦20の上に積み重ねるにあたっては、第2階層のチェッカー煉瓦20の下面26の凹ダボ24と第1階層のチェッカー煉瓦20の上面25の凸ダボ23とを嵌合させる。
これらの凹ダボ24と凸ダボ23とが嵌合した状態では、第2階層のチェッカー煉瓦20のガス流路22と第1階層のチェッカー煉瓦20のガス流路22(第1流路溝28および第2流路溝29で形成される空間を含む)とは、全て対応するものどうしが連通状態とされる。
これらの第1階層と第2階層との間では、チェッカー煉瓦20側面の通し目地は発生せず、目地を通じてのガス抜けが生じ難い構造となる。
【0054】
続いて、
図11および
図12に示すように、第2階層の上にチェッカー煉瓦20を敷き詰めて第3階層を形成する。
第3階層のチェッカー煉瓦20は、各々の中心が第2階層のチェッカー煉瓦20の第2流路溝29の位置に来るように配置する。
第3階層のチェッカー煉瓦20を第2階層のチェッカー煉瓦20の上に積み重ねる作業は、前述した第2階層のチェッカー煉瓦20を第1階層のチェッカー煉瓦20の上に積み重ねる作業と同様であるので重複する説明は省略する。
第3階層のチェッカー煉瓦20の凹ダボ24と第2階層のチェッカー煉瓦20の凸ダボ23とが嵌合した状態では、第3階層のチェッカー煉瓦20のガス流路22と第2階層および第1階層のチェッカー煉瓦20のガス流路22(第1流路溝28および第2流路溝29で形成される空間を含む)とは、全て対応するものどうしが連通状態とされる。
【0055】
これらの第2階層と第3階層との間でも、チェッカー煉瓦20側面の通し目地は発生せず、前述の第1階層と第2階層との間と併せて、第1階層から第3階層までの全体にわたって目地を通じてのガス抜けが生じ難い構造となる。
さらに、本実施形態では、各層のチェッカー煉瓦20がABC積みされているため、第1階層から第3階層までの何れにおいても、3段のうち1段はチェッカー煉瓦20の頂点(角部30)にチェッカー煉瓦20の中心部が重なる構造となり、荷重を分散することと合わせ、側面の通し目地だけでなく角部の通し目地も発生せず、これらの目地を通じてのガス抜けが非常に生じ難い構造となる。
【0056】
以上のようなチェッカー煉瓦20の積み重ねを繰り返すことにより、蓄熱室3内に例えば30〜40m程度の高さまで、多数のチェッカー煉瓦20が多段に積み上げられた蓄熱領域10を形成することができる。
【0057】
〔実施形態の効果〕
このような本実施形態では、煉瓦本体21を積み重ねる際に、上面25の凸ダボ23および下面26の凹ダボ24が互いに凹凸嵌合し、積み重ねられたチェッカー煉瓦20の間での水平方向のずれを防止することができる。
ここで、上面25および下面26の各ダボ23,24の側面は、各ダボ23,24がまたがる2個のガス流路22の開口221,222のうち、頂点P1に近い側の開口221,222において線分Sから最も離れた頂点P2よりも中心C2寄りの領域で開口221,222の辺縁と交差する。つまり、各ダボ23,24の側面が交差するのは、頂点P1に近い側の開口221,222の中心C2寄りの領域であり、当該開口221,222の中心C2寄りの半分程度までしか各ダボ23,24が削られないことになる。
【0058】
これにより、凸ダボ23がガス流路22で削られても肉厚が薄くなる部分が最小限とされ、凹ダボ24の付近では凹ダボ24によってガス流路22間の中実部210が削られて肉厚が薄くなる部分が最小限とされ、これらの肉厚の薄い部分が最小限とされることで煉瓦の破損を防止することができる。
さらに、凹ダボ24および凸ダボ23として円錐台状のダボを用いたため、製造が容易であるとともに、突起がない分破損しにくくできる。
【0059】
本実施形態では、上下のチェッカー煉瓦20のガス流路22を相互に連通させることができ、積み重ねられた多数のチェッカー煉瓦20を上下方向に貫通する複数のガス流路を形成できる。
また、多数のチェッカー煉瓦20をABC積みすることで、1〜3段目のチェッカー煉瓦20の中心を全て水平方向にずれた状態とすることができ、チェッカー煉瓦20を安定的に積み上げることができる。
さらに、上下に相隣接するチェッカー煉瓦20、20の凸ダボ23と凹ダボ24が嵌合することで、上下に積み重ねられたチェッカー煉瓦20を相互に拘束し、チェッカー煉瓦20間の大きな横ずれを防止できる。
従って、チェッカー煉瓦の荷重を分散し、ダボの割れ欠けを防止し、且つ、上下に隣接する階層同士で通し目地を発生させることなく、目地を通じてのガスの吹き抜け現象も防止できる。
【0060】
なお、チェッカー煉瓦20の凸ダボ23と凹ダボ24とは、互いに隙間無く密接して嵌合するのではなく、チェッカー煉瓦20の熱膨張による小さな横ずれを吸収するために、凸ダボ23と凹ダボ24とが嵌合した状態で各々の間に例えば2.5mmから5mmの隙間(熱膨張代)を設ける。この熱膨張代は、凸ダボ23と凹ダボ24とを嵌合させたときの水平方向の遊び代であり、凹ダボ24の内径は、凸ダボ23の外径に当該熱膨張代を加えた大きさとなる。
このような熱膨張代を設けない場合、上下のチェッカー煉瓦20の熱膨張に差が生じたときに、凸ダボ23又は凹ダボ24が破損してしまうおそれがある。これに対し、上記凸ダボ23と凹ダボ24間に熱膨張代を設けることにより、熱膨張したチェッカー煉瓦20が水平方向に最大で前述した熱膨張代分だけ移動可能となるが、この場合、上下に隣接するチェッカー煉瓦20の間に、この熱膨張代(例えば最大5mm)の水平方向のずれ(横ずれ)が発生する可能性があることを考慮しておくことが望ましい。
【0061】
〔他の実施形態〕
前述した実施形態では、上面25の凸ダボ23の中心を頂点P1から線分Sの3/8位置(中心C2から5/8位置)とし、下面26の凹ダボ24の中心を中心C2から線分Sの3/8位置(頂点P1から5/8位置)としたが、これらの位置は変更することができる。
例えば、上面25の凸ダボ23の中心は、頂点P1から線分Sの3/8位置(中心C2から5/8位置)に限定されるものではなく、例えば頂点P1から線分Sの5/16位置から7/16位置までの間であれば、凸ダボ23の中心を中実部210上に配置することができる。
同様に、下面26の凹ダボ24の中心は、中心C2から線分Sの3/8位置(頂点P1から5/8位置)に限定されるものではなく、例えば中心C2から線分Sの5/16位置から7/16位置までの間であれば、凹ダボ24の中心を中実部210上に配置することができる。
これらの凸ダボ23と凹ダボ24は、凸ダボ23の頂点P1からの距離(線分Sの3/8)と凹ダボ24の中心C2からの距離(線分Sの3/8)とを一致させておけば、ABC積みの際に互いに填め込むことができる。
【0062】
このように、上面25の凸ダボ23の位置および下面26の凹ダボ24の位置は前述した実施形態に限定されない。但し、前述した実施形態のように、上面25の凸ダボ23の中心を頂点P1から線分Sの3/8位置とし、下面26の凹ダボ24の中心を中心C2から線分Sの3/8位置にすれば、各ダボの外周部がガス流路22に跨る位置が、向かい合うガス流路22どうしで均一となり、破損のし易さに偏りが生じ難い(もし破損が生じても均一となる)ことから好ましいといえる。
【0063】
前述した実施形態では、上面25の凸ダボ23を頂点P1に近く(頂点P1から線分Sの3/8位置)、下面26の凹ダボ24を中心C2に近く(中心C2から線分Sの3/8位置)としたが、これとは逆に、上面25の凸ダボ23を中心C2に近く、下面26の凹ダボ24を頂点P1に近くしてもよい。
例えば、上面25の凸ダボ23を中心C2から線分Sの3/8位置(頂点P1から線分Sの5/8位置)とし、下面26の凹ダボ24を頂点P1から線分Sの3/8位置(中心C2から線分Sの5/8位置)としてもよい。この場合でも、凸ダボ23の頂点P1からの距離と凹ダボ24の中心C2からの距離とを一致させておけば、ABC積みの際に互いに填め込むことができる。
【0064】
前述した実施形態では、チェッカー煉瓦20の上面25に凸ダボ23を設け、下面26に凹ダボ24を設けたが、チェッカー煉瓦20の下面26に凸ダボ23を設け、上面25に凹ダボ24を設けてもよい。
【0065】
前述した実施形態では、凹ダボ24および凸ダボ23は円錐台状としたが、これらは六角形の角錐台状(例えば
図25〜
図27の凹ダボ24Aおよび凸ダボ23A参照)であるとしてもよい。
角錐台状のダボを用いる場合、凹状のダボと凸状のダボとの間で面接触を形成することができ、破損の回避に有効である。とくに六角形の角錐台状とすれば、各頂点部分が120度コーナーとなって突起としても緩やかで、破損しにくくできる。
【実施例1】
【0066】
以下、本発明の実施形態のより具体的な実施例について説明する。
〔実施例1〕
図13から
図15には、前述した
図2〜
図6のチェッカー煉瓦20を具体化した実施例1が示されている。
本実施例では、ガス流路22は六角形の断面を有し、対向二面の幅を30mmとし、中実部210の幅(リブ幅)は全て15mmとした。
上面25の凸ダボ23は、円錐台状の下部径を25mm、上部径を20.5mmとした。
下面26の凹ダボ24は、円錐台状の下部径(下面26に開口する側)を28mm、上部径を23.5mmとした。
凹ダボ24と凸ダボ23とは、互いに煉瓦本体21の中心まわりに60度回転させた位置に設置した。煉瓦の高さは施工性を考慮して120mmとした。
【0067】
〔比較例1〕
図16から
図18には、本発明に含まれないチェッカー煉瓦20Zの比較例1が示されている。
この比較例1は、前述した実施例1に対して凸ダボ23および凹ダボ24の大きさが異なる。他の条件は前述した実施例1と同じである。
上面25の凸ダボ23は、円錐台状の下部径を29.5mm、上部径を24mmとした。
下面26の凹ダボ24は、円錐台状の下部径を31.5mm、上部径を27mmとした。
このように凸ダボ23および凹ダボ24が大きく形成されることで、各々はガス流路22の開口221,222の頂点P2を超えて上面25または下面26の頂点P1側まで拡がっており、これにより凸ダボ23および凹ダボ24はガス流路22によって大きく削られている。
【0068】
〔比較例2〕
図19から
図21には、本発明に含まれないチェッカー煉瓦20Zの比較例2が示されている。
この比較例2は、前述した実施例1に対して凸ダボ23および凹ダボ24の大きさが異なる。他の条件は前述した実施例1と同じである。
上面25の凸ダボ23は、円錐台状の下部径を32.5mm、上部径を27.5mmとした。
下面26の凹ダボ24は、円錐台状の下部径を35.5mm、上部径を30.5mmとした。
このような比較例2では、凸ダボ23および凹ダボ24が比較例1よりも更に大きく形成されることで、各々はガス流路22の開口221,222の頂点P2を大きく超えて上面25または下面26の頂点P1側まで拡がっており、これにより凸ダボ23および凹ダボ24はガス流路22によって更に大きく削られている。
【0069】
〔比較例3〕
図22から
図24には、本発明に含まれないチェッカー煉瓦20Zの比較例3が示されている。
この比較例3は、直径30mmの円形断面のガス流路22’および開口221’,222’を形成した点で前述した実施例1と異なる。凸ダボ23および凹ダボ24の大きさを含めた他の条件は前述した実施例1と同じである。
【0070】
〔結果〕
前述した実施例1、比較例1、比較例2、比較例3の形状にて煉瓦の製造を実施した結果、実施例1および比較例1、比較例3の形状は製造することができた。
しかし、比較例2のチェッカー煉瓦は、凹ダボ24の周囲の煉瓦厚みが7.9mmしかなく、製造時に欠落して製品にできなかった。
また、比較例1のチェッカー煉瓦は、製造することはできたものの、凹ダボ24部の周囲の厚みが12.0mmとリブ厚より薄いため、当該部分から亀裂が発生しており、製品化が難しいことが解った。
一方、比較例3のチェッカー煉瓦は、煉瓦製造上の問題はなかったが、実施例1と比較しガス流路表面積が4%小さく、また単体重量が8%重くなり、経済的に熱ロスが大きい。これはガス流路22’が円形であることから、中実部210’の厚みが均一でなく、その薄い部分と厚い部分で蓄熱時間の差が発生するためである。
表1に実施例1および比較例3の煉瓦形状を示す。
【0071】
【表1】
【0072】
さらに、実施例1と比較例3とを比較として、実炉3200m
3用高炉の熱風炉に組み込み、2年間使用した後調査を行った結果、実施例1のチェッカー煉瓦は凹ダボ24の周囲の厚みがリブ厚(中実部210’の厚み)より大きく、使用後も健全であった。
従って、比較例1〜3の何れに対しても、本発明に基づく実施例1が優れたものであるといえる。
【0073】
〔実施例2〕
図25から
図27には、本発明に基づくチェッカー煉瓦20の実施例2が示されている。
実施例2のチェッカー煉瓦20は、前述した実施形態および実施例1における凸ダボ23および凹ダボ24(
図2および
図3参照)が円錐台状であったのに対し、六角錐台状の凸ダボ23Aおよび凹ダボ24Aとされている。それ以外の条件は前述した実施例1と同様である。
このような実施例2のチェッカー煉瓦20を試作した結果、製造可能であり、かつ実炉使用においても各ダボ23,24の周辺での亀裂が無いことが確認された。
実施例1のように各ダボ23,24が円錐台状である場合、相互の嵌合が線接触となることから、面接触となる実施例2がより好ましいといえる。