特許第5993325号(P5993325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993325
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】レトルト食品とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20160901BHJP
【FI】
   A23L15/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-51413(P2013-51413)
(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-176328(P2014-176328A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 郁恵
(72)【発明者】
【氏名】井上 直明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 章一
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−052124(JP,A)
【文献】 特開2010−022363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵をマイクロ波で膨化乾燥させた細片状の卵乾燥物、卵液、増粘材及び水を、混合した状態で加熱凝固させた卵加工品を加配することを特徴とするレトルト食品の製造方法。
【請求項2】
卵をマイクロ波で膨化乾燥させた細片状の卵乾燥物1〜10質量%、卵液10〜40質量%、増粘材0.01〜1.0質量%及び水20〜60質量%を、混合した状態で加熱凝固させた卵加工品を加配する、請求項1に記載のレトルト食品の製造方法。
【請求項3】
加熱した一部の水に、卵をマイクロ波で膨化乾燥させた細片状の卵乾燥物、卵液、増粘材及び残部の水を加え、これらを混合して加熱凝固させて卵加工品を製造する、請求項1又は2に記載のレトルト食品の製造方法。
【請求項4】
加熱した一部の水に、卵をマイクロ波で膨化乾燥させた細片状の卵乾燥物を加え、その後に卵液、増粘材及び残部の水を加える、請求項3に記載のレトルト食品の製造方法。
【請求項5】
卵をマイクロ波で膨化乾燥させた細片状の卵乾燥物に、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、カラギーナンから選ばれる1以上の安定剤を含む、請求項1〜4のいずれかに1項記載のレトルト食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト食品とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第3954747号公報(特許文献1)には、丼の具等の卵加工食品における、半熟様とする箇所に利用できる半熟様卵加工食品用組成物に係る発明として、卵黄液0.5〜20重量%、水60〜97重量%及び澱粉類0.4〜20重量%を含み、加熱増粘により30℃の粘度を500〜25000cPsに調整したペーストと、扁平状の不定形固形物、糸状固形物、棒状固形物からなる群より選択される1種又は2種以上の卵黄及び/又は卵白を含む卵固形物とを、混合物として含有し、該混合物における前記ペーストと前記卵固形物との配合割合が、重量比で10:90〜90:10である半熟様卵加工食品用組成物が提案されている。
また、特開2010−22363号公報(特許文献2)には、マイクロ波にて膨化乾燥させた鶏卵加工品を含有することを特徴とするレトルト食品が提案されており、当該鶏卵加工品では、レトルト殺菌特有の硬化やぱさつきを生じることなく、味抜けやレトルト臭が低減されるとされている。
【0003】
ところで、料理として、汁の多い煮物等の仕上げに、卵や卵を含む汁をといて流し、材料を包むようにした「たまごとじ(卵綴じ)」が知られている。これとは別に、水で溶いた片栗粉を汁に入れ、煮たったところへ卵汁を流し込みながらかきまぜた吸い物、かきたま汁等の「かきたま(掻き卵/掻き玉)」が知られている。前記の「たまごとじ」は、とじられた卵と汁がつながって一体となり、ふっくらとしてボリューム感がある特有の外観と、弾力がありやわらかい特有の食感が得られることが好適である。一方、「かきたま」は、これとは異なり、汁の中に卵が雲状等に散らばった外観で、卵と汁が分かれた性状のものである。なお、本明細書において、「たまごとじ状」とは前記のたまごとじ様の性状を指し、「かきたま状」とは前記のかきたま様の性状を指す。
【0004】
卵加工品を含むレトルト食品では、レトルト処理の加圧加熱殺菌によって卵たんぱくが過度に変性し、卵が凝固して汁から分離して「かきたま状」となり、卵加工品と汁とがつながった、一体感のある「たまごとじ状」に調製することができないという問題があった。同時に「かきたま状」となった卵加工品は、ふっくらとしたやわらかい食感に欠け、硬く、パサパサしたものになるという問題があった。そして、前述の特許文献1及び特許文献2に記載された発明を実施しても、前記の問題を解決することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3954747号公報
【特許文献2】特開2010−22363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、卵のつながりがよく、ふっくらとしていてボリューム感があり、弾力と柔らかさのある食感を有する高品質の卵加工品を含むレトルト食品を提供する点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、卵をマイクロ波で膨化乾燥させた細片状の卵乾燥物、卵液、増粘材及び水を、混合した状態で加熱凝固させた卵加工品を含有することを特徴とするレトルト食品、を最も主要な特徴とする。 本発明は、卵をマイクロ波で膨化乾燥させた細片状の卵乾燥物、卵液、増粘材及び水を、混合した状態で加熱凝固させた卵加工品を加配することを特徴とするレトルト食品の製造方法、を別の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレトルト食品は、卵のつながりがよく、ふっくらとしていてボリューム感があり、弾力と柔らかさのある食感を有する高品質の卵加工品を含むという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(マイクロ波で膨化乾燥させた卵乾燥物)
卵をマイクロ波で膨化乾燥させた細片状の卵乾燥物を用いる。
卵としては、鶏、家鴨等の全卵、卵黄、卵白、卵黄及び卵白の適宜混合物、これらの加工卵を用いることができる。卵は生のものに限らず、冷凍品を解凍したもの、乾燥品を水戻ししたもの、濃縮卵を水和したものであってもよい。
【0010】
マイクロ波を照射する前記の卵を、任意の成分を含んだ卵生地として用いることができる。卵生地の好適態様は次の通りである。
すなわち、前記の卵を、各々の形態で生卵に換算して、卵生地に1質量%以上、好ましくは20質量%以上含有することが好ましい。マイクロ波加熱による膨化乾燥を促進する目的で、卵生地の水分含量を10〜90質量%とするか、蛋白質含量を0.5〜95質量%とするか、両者を上記の範囲とすることが好ましい。蛋白質成分として、卵の他に肉、魚介類、乳、果実、穀類等を含むことができる。
【0011】
卵乾燥物に滑らか舌触りを付与する目的でキサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、カラギーナン等の安定剤を、単独あるいは任意の組合せで含むことができる。キサンタンガムを含むことが好ましい。卵生地に安定剤を3〜7質量%含むことが望ましい。マイクロ波加熱における蛋白の凝集硬化を抑制する目的で乳化剤を含むことができる。塩類を卵生地中に添加することもできる。前記の成分を卵に加え、適宜混合して卵生地を得る。なお、本明細書において、各成分の含有割合は、特段の説明がない限り固形物換算での割合を指す。
【0012】
前記の卵又は卵生地を、マイクロ波加熱に供する前に適宜成型することが好ましい。卵(卵生地)を型に入れて予備加熱してもよいし、ベルト式マイクロ波加熱装置のベルトに載せて成型することもできる。
【0013】
次いで、卵(卵生地)をマイクロ波加熱に供して膨化乾燥する。マイクロ波加熱は、マイクロ波の出力0.5〜150kw、照射エネルギー100〜4000J/gで行うことが望ましい。これにより卵(卵生地)を膨化乾燥させることができる。マイクロ波加熱には適宜マイクロ波加熱装置を用いればよい。
【0014】
卵(卵生地)のマイクロ波加熱の条件は、卵(卵生地)が膨化乾燥され、卵乾燥物が得られる条件であればよい。例えば、卵乾燥物の膨化率、すなわち(加熱後の卵乾燥物の体積)/(加熱前の卵(卵生地)体積)が2〜15倍となる条件が好ましい。マイクロ波加熱及び必要によりその後で行うことができる熱風乾燥等の仕上げ乾燥によって、卵乾燥物の水分含量を0〜15重量%とすることが好ましい。
【0015】
前記の卵乾燥物を細片状とする。マイクロ波加熱した卵乾燥物を、粉砕、カッティング等によって、フレーク状、顆粒状等の所望の細片形状に成型すればよい。細片状の卵乾燥物の大きさ寸法は1〜10mm程度にすることが好ましい。なお、本発明で用いる卵乾燥物は、特開2010−22363号公報に記載されているマイクロ波にて膨化乾燥させた鶏卵加工品と同様のものを用いればよく、特開2010−22363号公報に記載されている卵乾燥物に係る発明内容は本明細書に含まれるものとする。前記の卵乾燥物は、卵加工品に1〜10質量%、好ましくは2〜5質量%含有することが好ましい。
【0016】
(卵液)
卵液としては、鶏、家鴨等の全卵、卵黄、卵白、卵黄及び卵白の適宜混合物、これらの加工卵を用いることができる。生以外のものとしては、冷凍品を解凍したもの、乾燥品を水戻ししたもの、濃縮卵を水和したもの等を用いることができる。上記の卵液は、各々の形態で生卵に換算して、卵加工品に10〜40質量%、好ましくは15〜30質量%含有することが好ましい。
【0017】
(増粘材)
増粘材としては、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、カラギーナン等を用いることができ、キサンタンガムが好ましい。増粘材は、卵加工品に0.01〜1.0質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%含有することが好ましい。増粘材が後記する水に分散して、水に好ましい粘度を与え、これと卵乾燥物及び卵液とを混合した状態で加熱凝固させて、一体感や食感に優れた、たまごとじ状の卵加工品を得ることができる。
【0018】
(水)
水は、卵液に含まれる水分とは別に加えられる水のことで、調味液、牛乳等として加えられてもよい。上記の水(調味液、牛乳等の場合には固形分、油分を除く水分)は、卵加工品に20〜60質量%、好ましくは30〜50質量%含有することが好ましい。これにより、水が増粘材の分散媒となり、増粘材が分散した水と卵乾燥物及び卵液とを混合した状態で加熱凝固させて、一体感や食感に優れた、たまごとじ状の卵加工品を得ることができる。
卵乾燥物、卵液、増粘材及び水以外に卵加工品に含む任意の成分として、本発明の主旨を逸脱しなり限り、塩類、糖類、有機酸等、着色料及び各種具材等を適宜添加してもよい。
【0019】
(卵加工品の製造)
前記の卵をマイクロ波で膨化乾燥させた細片状の卵乾燥物、卵液、増粘材及び水を、混合した状態で加熱凝固させて卵加工品を製造する。
具体的には、卵乾燥物、卵液、増粘材及び水を混合して、卵たんぱくの凝固温度以上に加熱すればよい。混合しながら加熱するのがよい。
【0020】
典型的には、加熱した一部の水に、卵乾燥物、卵液、増粘材及び残部の水を加え、これらを混合して加熱凝固させて卵加工品を製造することができる。この場合に、加熱した一部の水に、卵乾燥物を加え、その後に卵液、増粘材及び残部の水を加えるのがよい。前記の加熱した一部の水を混合しながら、卵乾燥物、卵液、増粘材及び残部の水を加えてもよい。また、加熱した一部の水に、卵乾燥物、卵液、増粘材及び残部の水の混合物、あるいは卵液、増粘材及び残部の水の混合物を加えてもよい(以下これらの混合物を「卵液の混合物」という場合がある)。加熱した一部の水に、卵乾燥物及び/又は卵液と、予め増粘材を分散させた残部の水とを混合したものを加えてもよい。前記の加熱しておく一部の水1に対して、前記の残部の水を0.2〜0.7の比率で用いるのがよい。前記の各々の手段を適宜組合せて実施することができる。調製する卵加工品の大きさは任意である。
【0021】
前記の卵加工品を製造する場合の具体的な条件として、加熱処理の温度条件は、卵たんぱくが凝固する温度以上であればよく、例えば卵たんぱくが65℃程度で凝固することを勘案して、各製造方法に応じて設定すればよい。例えば、前述の製造方法において、卵乾燥物、卵液、増粘材及び水を混合する場合には、原料の温度を卵たんぱくが凝固する温度以上とすればよい。一部の水を加熱する場合には、当該水の量を勘案して、当該水を例えば90℃以上、好ましくは92〜97℃に加熱することができる。
【0022】
なお、前述のように、加熱した一部の水に、卵乾燥物、卵液、増粘材及び残部の水を加える方法では、当該予め加熱する一部の水の卵たんぱくの凝固温度に加熱した場合の粘度を5〜3000cpとするのが好ましく、95℃の粘度を5〜3000cpとするのが好ましい。当該水に、前記と同様の増粘材を適宜加配して粘度を調整することができる。前記の粘度により、予め加熱した一部の水に、卵乾燥物、卵液、増粘材及び残部の水を穏やかに広げて、つながって一体感のあるたまごとじ状に固まった卵加工品を得ることが可能となる。なお、本明細書における粘度は、いずれも、B型粘度計を用いて被測定液を当該温度にして測定したときの粘度を指す。
【0023】
さらに、前記卵液の混合物の25℃における粘度を30〜5000cpとするのが好ましい。これにより、加熱した一部の水に卵液の混合物を広げて、つながって一体感のあるたまごとじ状に固まった卵加工品を得ることが可能となる。
【0024】
(レトルト食品の製造)
本発明のレトルト食品は、卵をマイクロ波で膨化乾燥させた細片状の卵乾燥物、卵液、増粘材及び水を、混合した状態で加熱凝固させた卵加工品を含有することを特徴とする。レトルト食品を製造するための方法は任意である。前述のようにして調製した卵加工品を、容器に充填密閉してレトルト処理すればよい。
【0025】
本発明のレトルト食品には、本発明の主旨を逸脱しなり限り、塩類、糖類、有機酸、着色料及び各種具材等の任意のものを任意の量で用いることができる。典型的には、具材等を充填した容器に前記の卵加工品を充填し、容器を密閉してレトルト処理すればよい。上記のように、卵加工品と具材等とを含んでレトルト食品とすることが望ましい。レトルト食品の種類としては、卵玉子丼、親子丼、カツ丼、スープ、オムレツ、カルボナーラ、蟹玉、芙蓉蟹、天津飯、中華スープ等の卵含有食品が挙げられる。
【0026】
レトルト処理によると、卵たんぱくが過度に変性することにより、高品質の卵加工品を得ることが困難であり、特に一体感のあるたまごとじ状に固まった卵加工品を得ることが極めて困難であった。すなわち、レトルト処理により卵加工品がかきたま状に固まり、卵加工品から液体が分離した。
【0027】
本発明によれば、卵のつながりがよく、ふっくらとしていてボリューム感があり、弾力と柔らかさのある食感を有する高品質の卵加工品を含有するレトルト食品を得ることが可能となる。つまり、弾力と吸収性のあるマイクロ波で膨化乾燥させた細片状の卵乾燥物を、卵液、増粘材及び水と混合し、該卵乾燥物をこれらで包むような状態で広げて加熱凝固させた卵加工品により、レトルト処理による負荷を受けた場合にも、卵加工品の一体感が崩れにくく、液体が分離しにくく、卵加工品の弾力性や柔軟性が保たれる。
【実施例】
【0028】
実施例1
(卵乾燥物)
全卵液80質量部、キサンタンガム6質量部及び植物油14質量部を混練した生地を、連続式のマイクロ波加熱装置のコンベアに載せ、出力50kw、照射エネルギー1300J/gのマイクロ波照射条件下でマイクロ波加熱乾燥した。得られたマイクロ波乾燥物は、マイクロ波乾燥前の生地に比べて約14倍に膨化していた。このマイクロ波乾燥物を1〜15mmのフレーク状に粉砕し、水分含量約13重量%の細片状の卵乾燥物2.7質量部を得た。
【0029】
(卵液の混合物)
全卵液25質量部、キサンタンガム0.08質量部及び水4質量部を混合して卵液の混合物を調製した。上記卵液の混合物は、25℃における粘度が約1500cpであった。
【0030】
(予め加熱する一部の水)
澱粉2質量部、粉体調味料16.22質量部及び水50質量部を混合して調味液を調製した。上記調味液は、95℃における粘度が約1000cpであった。
【0031】
(卵加工品及びレトルト食品の製造)
前記の卵乾燥物を、95°Cに加熱し攪拌している前記の調味液に徐々に投入した。攪拌を続け、次に前記の卵液の混合物を徐々に投入した。卵液の混合物を投入してから約5分間攪拌を続け、原料を凝固させた。これにより、一体感のあるたまごとじ状に固まった親子丼の素が得られた。
ボイルした鶏肉片とたまねぎ合計40gを充填したレトルトパウチに、前記の親子丼の素60gを充填し、密閉してレトルト処理した。
【0032】
保存後に前記のレトルト食品を食したところ、卵加工品がつながって一体感のあるたまごとじ状に固まり、卵加工品はふっくらとしていてボリューム感があり、弾力と柔らかい食感を有する高品質のものであった。
【0033】
実施例2
実施例1で用いたものと同じ卵乾燥物8.6質量部及び卵液の混合物91.4質量部を用いた。これらを混合しながら95°Cになるまで徐々に品温を上げて加熱し、原料を凝固させて卵加工品(やわらか卵のような食品)を製造した。上記の卵加工品100gをレトルトパウチに充填し、密閉してレトルト処理した。
保存後に前記のレトルト食品を食したところ、卵加工品は、つながって一体感のあるたまごとじ状に固まったもので、ふっくらとしていてボリューム感があり、弾力と柔らかい食感を有する高品質のものであった。
【0034】
実施例3
ボイルした鶏肉片とたまねぎ合計40gを充填したレトルトパウチに、実施例2で得た卵加工品18.6gと調味液81.4gとを充填し、密閉してレトルト処理した。
保存後に上記のレトルト食品(親子丼の素)を食したところ、卵加工品が一体感のあるたまごとじ状に固まったもので、卵加工品はふっくらとしていてボリューム感があり、弾力と柔らかい食感を有する高品質のものであった。
【比較例】
【0035】
比較例1
(マイクロ波で膨化乾燥させた卵乾燥物のみを用いた場合)
実施例1で用いたものと同じ卵乾燥物10質量部及び調味液50質量部を用い、上記の卵乾燥物を、95°Cに加熱し攪拌している上記の調味液に徐々に投入して親子丼の素を製造した。ボイルした鶏肉片とたまねぎ合計40gを充填したレトルトパウチに、前記の親子丼の60素gを充填し、密閉してレトルト処理した。
【0036】
保存後に前記のレトルト食品を食したところ、卵加工品と調味液とが分離し、調味液に細片の卵加工品が「かきたま状」に分散したもので、卵加工品はボリューム感がないものであった。また、卵加工品は弾力がなくパサパサとした食感のものであった。
【0037】
比較例2
(卵液のみを用いた場合)
実施例1で用いたものと同じ卵液の混合物27質量部及び調味液33質量部を用い、上記卵液の混合物を、95°Cに加熱し攪拌している上記の調味液に徐々に投入し、約5分間攪拌を続け、原料を凝固させて親子丼の素を製造した。ボイルした鶏肉片とたまねぎ合計40gを充填したレトルトパウチに前記の親子丼の素60gを充填し、密閉してレトルト処理した。
保存後に前記のレトルト食品を食したところ、卵加工品と調味液とが分離し、調味液に細いすじ状の卵加工品が「かきたま状」に分散したもので、卵加工品はボリューム感がないものであった。また、卵加工品は硬い食感のものであった。
【0038】
比較例3
(卵固形物)
全卵液80質量部、キサンタンガム6質量部及び植物油14質量部を混練した生地を、フライパンで加熱して凝固し、厚さが3mm程度の扁平なシートを得た。得られたシートを1〜15mmの扁平な細片状のものにカッティングして卵固形物1.6質量部を得た。
【0039】
マイクロ波で膨化乾燥させた卵乾燥物を上記の卵固形物に代える以外は実施例1と同様にしてレトルト食品を製造した。保存後に前記のレトルト食品を食したところ、卵加工品は、前記の卵固形物の粒がわかる状態で分散した、不均一な組織の塊状物であった。上記の塊状の卵加工品が調味液に「かきたま状」に分散したもので、卵加工品はボリューム感がなく、硬い食感のものであった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
卵加工品を具材等として含むレトルト食品に適用できる。