(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
超音波振動を利用して、生体組織の凝固/切開処置を行なう超音波処置具では、ハンドピース内に超音波振動源として、ボルト締めランジュバン振動子を内蔵したものがある。
【0003】
このような、ボルト締めランジュバン振動子は、例えば、特許文献1(特開2009−220014号公報)には、が開示されており、電気信号を機械振動に変換する圧電素子が、金属部材からなるフロントマス、バックマスに挟まれて、ボルトにより強固に締結されて、一体化していて、全体が一体となって振動する。
【0004】
ところで、圧電素子が金属部材に挟まれて、接着などを含めて何らかの方法で一体化して振動する振動子は、ランジュバン振動子と呼ばれ、これら圧電素子と金属部材の一体化の方法としてボルトによる締結を使用しているものはボルト締めランジュバン振動子と呼ばれている。従来のボルト締めランジュバン振動子の一般的な構成としては、圧電素子としてチタン酸ジリコン酸鉛(PZT,Pb(Zrx,Ti
1-x)O3)が使用され、圧電素子の形状はリング状に加工されて、リング内部にボルトが押通されている。
【0005】
PZTは、高い生産性や高い電気機械変換効率を有し、圧電材料として優れた特性を持っているため、長年、超音波振動子やアクチュエーターなどの様々分野で用いられてきている。しかしながら、PZTは鉛を使用しているため、環境への悪影響の観点から、近年は鉛を使用しない非鉛圧電材料の使用が望まれている。
【0006】
超音波処置具で使用する高出力用途超音波振動子に適した高い電気機械変換効率を有する非鉛圧電材料の1つに、圧電単結晶のLiNbO3(ニオブ酸リチウム単結晶)がある。このLiNbO3は、機械加工性があまりよくないので、ランジュバン振動子またはボルト締めランジュバン振動子で使用するためには、安価に加工、組み立てを行う方法が必要とされている。
【0007】
LiNbO3をはじめとする圧電単結晶を用いたランジュバン振動子を安価に作成する方法として、金属材料を接合材として、その溶融状態を経て、各部材(圧電単結晶素子、絶縁板および金属部材)を接合して一体化する構成のものがある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を用いて本発明について説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0018】
(第1の実施の形態)
先ず、本発明の第1の実施の形態について、図面に基いて以下に説明する。
図1は、超音波医療装置の全体構成を示す断面図、
図2は振動子ユニットの全体の概略構成を示す図、
図3は他の態様の超音波医療装置の全体構成を示す断面図、
図4は超音波振動子の構成を示す斜視図、
図5は超音波振動子の構成を示す側面図、
図6はLiNbO3ウエハの構成を示す平面図、
図7はLiNbO3ウエハの構成を示す側面図、
図8は溝が形成されたLiNbO3ウエハの構成を示す側面図、
図9は下地金属が成膜されたLiNbO3ウエハの構成を示す断面図、
図10はLiNbO3ウエハから個片化される複数の圧電単結晶チップの構成を示す断面図、
図11は圧電単結晶チップの構成を示す斜視図、
図12は超音波振動子の構成を示す分解斜視図、
図13は超音波振動子の構成を示す斜視図、
図14は正電側接合金属および負電側接合金属の厚さを説明するための超音波振動子の断面図、
図15は超音波振動子の構成を示す断面図、
図16は超音波振動子の構成を示す斜視図、
図17は変形例の超音波振動子の構成を示す分解斜視図である。
【0019】
(超音波医療装置)
図1に示す、超音波医療装置1は、主に超音波振動を発生させる超音波振動子2を有する振動子ユニット3と、その超音波振動を用いて患部の治療を行うハンドルユニット4とが設けられている。
【0020】
ハンドルユニット4は、操作部5と、長尺な外套管7からなる挿入シース部8と、先端処置部30とを備える。挿入シース部8の基端部は、操作部5に軸回り方向に回転可能に取り付けられている。先端処置部30は、挿入シース部8の先端に設けられている。ハンドルユニット4の操作部5は、操作部本体9と、固定ハンドル10と、可動ハンドル11と、回転ノブ12とを有する。操作部本体9は、固定ハンドル10と一体に形成されている。
【0021】
操作部本体9と固定ハンドル10との連結部には、背面側に可動ハンドル11を挿通するスリット13が形成されている。可動ハンドル11の上部は、スリット13を通して操作部本体9の内部に延出されている。スリット13の下側の端部には、ハンドルストッパ14が固定されている。可動ハンドル11は、ハンドル支軸15を介して操作部本体9に回動可能に取り付けられている。そして、ハンドル支軸15を中心として可動ハンドル11が回動する動作に伴い、可動ハンドル11が固定ハンドル10に対して開閉操作されるようになっている。
【0022】
可動ハンドル11の上端部には、略U字状の連結アーム16が設けられている。また、挿入シース部8は、外套管7と、この外套管7内に軸方向に移動可能に挿通された操作パイプ17とを有する。外套管7の基端部には、先端側部分よりも大径な大径部18が形成されている。この大径部18の周囲に回転ノブ12が装着されるようになっている。
【0023】
操作パイプ19の外周面には、リング状のスライダ20が軸方向に沿って移動可能に設けられている。スライダ20の後方には、コイルばね(弾性部材)21を介して固定リング22が配設されている。
【0024】
さらに、操作パイプ19の先端部には、把持部23の基端部が作用ピンを介して回動可能に連結されている。この把持部23は、プローブ6の先端部31と共に超音波医療装置1の処置部を構成している。そして、操作パイプ19が軸方向に移動する動作時に、把持部23は、作用ピンを介して前後方向に押し引き操作される。このとき、操作パイプ19が手元側に移動操作される動作時には作用ピンを介して把持部23が支点ピンを中心に時計回り方向に回動される。これにより、把持部23がプローブ6の先端部31に接近する方向(閉方向)に回動する。このとき、片開き型の把持部23と、プローブ6の先端部31との間で生体組織を把持することができる。
【0025】
このように生体組織を把持した状態で、超音波電源から電力を超音波振動子2に供給し、超音波振動子2を振動させる。この超音波振動は、プローブ6の先端部31まで伝達される。そして、この超音波振動を用いて把持部23とプローブ6の先端部31との間で把持されている生体組織の治療を行う。
【0026】
(振動子ユニット)
ここで、振動子ユニット3について説明する。
振動子ユニット3は、
図2に示すように、超音波振動子2と、この超音波振動子2で発生した超音波振動を伝達する棒状の振動伝達部材であるプローブ6とを一体的に組み付けたものである。
【0027】
超音波振動子2は、超音波振動子の振幅を増幅するホーン32が連設されている。ホーン32は、ジュラルミン、あるいは例えば64Ti(Ti−6Al−4V)などのチタン合金によって形成されている。ホーン32は、先端側に向かうに従って外径が細くなる円錐形状に形成されており、基端外周部に外向フランジ33が形成されている。なお、ここでホーン32の形状は円錐形状に限るものではなく、先端側に向かうに従って外径が指数関数的に細くなる指数形状や、先端側に向かうに従って段階的に細くなるステップ形状などであってもよい。
【0028】
プローブ6は、例えば64Ti(Ti−6Al−4V)などのチタン合金によって形成されたプローブ本体34を有する。このプローブ本体34の基端部側には、上述のホーン32に連設された超音波振動子2が配設されている。このようにして、プローブ6と超音波振動子2とを一体化した振動子ユニット3が形成されている。なお、プローブ6は、プローブ本体34とホーン32とが螺着されており、プローブ本体34とホーン32が接合される。
【0029】
そして、超音波振動子2で発生した超音波振動は、ホーン32で増幅されたのち、プローブ6の先端部31側に伝達するようになっている。プローブ6の先端部31には、生体組織を処置する後述する処置部が形成されている。
【0030】
また、プローブ本体34の外周面には、軸方向の途中にある振動の節位置の数箇所に弾性部材でリング状に形成された間隔をあけて2つのゴムライニング35が取り付けられている。そして、これらのゴムライニング35によって、プローブ本体34の外周面と後述する操作パイプ19との接触を防止するようになっている。つまり、挿入シース部8の組み立て時に、振動子一体型プローブとしてのプローブ6は、操作パイプ19の内部に挿入される。このとき、ゴムライニング35によってプローブ本体34の外周面と操作パイプ19との接触を防止している。
【0031】
また、超音波振動子2は、超音波振動を発生させるための電流を供給する図示しない電源装置本体に電気ケーブル36を介して電気的に接続される。この電気ケーブル36内の配線を通じて電源装置本体から電力を超音波振動子2に供給することによって、超音波振動子2が駆動される。なお、振動子ユニット3は、超音波振動を発生させる超音波振動子2、発生した超音波振動を増幅させるホーン32および増幅された超音波振動を伝達するプローブ6を備えている。
【0032】
なお、超音波振動子2と振動子ユニット3は、必ずしも
図1に示したように操作部本体9内に収納されている必要はなく、例えば、
図3に示すように操作パイプ19内に収納されていてもよい。この
図3の超音波医療装置1において、超音波振動子2の折れ止52から操作部本体9の基部に配設されたコネクタ38までの間にある電気ケーブル36は金属パイプ37の中に挿通されて収納されている。ここで、コネクタ38は、必須ではなく、電気ケーブル36を操作部本体9内部まで延長し、直接超音波振動子2の折れ止52に接続する構成であってもよい。超音波医療装置1は、
図3のような構成により、操作部本体9内を、より省スペース化を向上することができる。なお、
図3の超音波医療装置1としての機能は、
図1と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0033】
(超音波振動子)
ここで、本発明の積層型超音波振動デバイスとしての超音波振動子2について以下に説明する。
振動子ユニット3の超音波振動子2は、
図4および
図5に示すように、先端から順に振動伝達部材の1つであるプローブ本体34に螺着などされて接続されたホーン32と、このホーン32の後方に連設された、ここでは矩形状(四角柱形状)の積層振動子41と、ホーン32の基端から電気ケーブル36まで積層振動子41を覆うカバー体51と、を有して構成されている。なお、積層振動子41を覆うカバー体51は、基端部分に2つのFPC(フレキシブルプリント基板)47,48と電気的に接続された電気ケーブル36の配線36a,36bを覆う折れ止52を有している。
【0034】
積層振動子41は、矩形状(四角柱状)のセラミックスなどの絶縁板42,43が前後に配設され、前方側が絶縁板42を介してホーン32と一体形成された、ここでは矩形状(四角柱状)の金属ブロック体としてのフロントマス39に接合され、後方側が絶縁板43を介して矩形状(四角柱状)の金属ブロック体としてのバックマス44に接合されている。なお、フロントマス39およびバックマス44は、ジェラルミン、あるいは、例えば、64Ti(Ti−6Al−4V)などのチタン合金によって形成されている。
【0035】
積層振動子41は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)などの耐熱性を有した非鉛の単結晶材料から形成された、複数、ここでは4つの圧電単結晶体である圧電単結晶チップ61が積層されている。これら絶縁板42、各圧電単結晶チップ61および絶縁板43の間には、それぞれを接合する例えば、AuSn共晶ハンダ、一般的な非鉛ハンダなどから形成される正電極層および接合層となる正電側接合金属62、負電極層および接合層となる負電側接合金属63が交互に介装されている。なお、フロントマス39と絶縁板42の間、および絶縁板43とバックマス44の間にも、電極層とはならないが、これらフロントマス39および絶縁板42と絶縁板43およびバックマス44とを接合するために、例えば、AuSn共晶ハンダ、一般的な非鉛ハンダなどから形成された接合金属層が介装される。
【0036】
(超音波振動子の製造方法)
ここで、積層型超音波振動デバイスとしての超音波振動子2の製造方法について以下に説明する。
超音波振動子2は、キュリー点が高く、接合金属の融点でも圧電特性が劣化しない圧電材料を使用し、ここではLiNbO3ウエハ40(
図6参照)から作成される。
【0037】
先ず、LiNbO3ウエハ40は、
図7および
図8に示すように、
図6の破線Bに沿って両面に、後述の面取り部66となるV状の溝64がウエハ表裏面の同じ位置にダイシングにより形成される。なお、LiNbO3ウエハ40は、フォトレジストのパターニング、エッチングにより溝64が形成されてもよい。この時、溝64の深さは、LiNbO3ウエハ40の厚さの半分以下とし、LiNbO3ウエハ40が個片化されないと共に、この後のプロセスでLiNbO3ウエハ40が破損しないように十分な機械的強度を維持できる深さとする。
【0038】
続いて、溝64が形成されたLiNbo3ウエハ40は、
図9に示すように、両面に正電側接合金属62および負電側接合金属63となるAuSn共晶ハンダまたは非鉛ハンダなどと良好な密着性および濡れ性を有する、例えば、Ti/Ni/Au、Ti/Pt/Au、Cr/Ni/AuまたはCr/Ni/Pd/Auからなる下地金属65が蒸着、スパッタ、鍍金などによって成膜される。このように、溝64をLiNbO3ウエハ40に形成した後、下地金属65を成膜することで、溝64内部にも下地金属65が成膜される。
【0039】
最後に、溝64の幅より厚さの薄いダイシングブレードを使用して、LiNbO3ウエハ40の予め溝64を形成した部分を、これら溝64に沿った中央部分を再度ダイシングすることにより、
図10に示すように、LiNbO3ウエハ40が複数の圧電単結晶チップ61に個片化される。このように、
図11に示すように、側面角部が切り欠かれて全ての外周に面取り部66が形成され、且つ表裏2面(紙面では上下面)および各面取り部66にも下地金属65が成膜された圧電単結晶素子としての圧電単結晶チップ61が製作される。
【0040】
次に、個片化された、ここでは4つの圧電単結晶チップ61を用いた積層振動子41を含む超音波振動子2が組み立てられる。先ず、ホーン32と一体形成されるフロントマス39の一面(後方端面)、各絶縁板42,43の両面、バックマス44の一面(前方端面)のそれぞれにも、LiNbO3ウエハ40と同様に下地金属65を成膜する。
図12示す、ホーン32に一体形成されたフロントマス39、各絶縁板42,43、バックマス44および各圧電単結晶チップ61の下地金属65上に、AuSn共晶ハンダまたは非鉛ハンダなどをスクリーン印刷またはリボン形態により配設する。
【0041】
そして、
図13に示すように、先端側からフロントマス39を有するホーン32、絶縁板42、複数、ここでは4つの圧電単結晶チップ61、絶縁板43およびバックマス44の順に積層する。この積層体を、AuSn共晶ハンダまたは非鉛ハンダなどが溶融する温度以上に加熱してゆっくり冷却することで、先端側の絶縁板42、複数、ここでは4つの圧電単結晶チップ61および基端側の絶縁板43のそれぞれの間に正電側接合金属62または負電側接合金属63が形成され、フロントマス39と絶縁板42の間および絶縁板43とバックマス44の間に接合金属層が形成されて一体化される。なお、加熱の際に必要に応じて超音波振動子2の長手軸方向を圧縮するように加圧を行うとよい。
【0042】
ここで、正電側接合金属62および負電側接合金属63は、圧電単結晶チップ61の表裏2面の全ての側面角部が切り欠かれて各面取り部66が形成されているため、圧電単結晶チップ61または絶縁板42,43がそれぞれ積層方向に沿って対向する表面の離間距離となる内方の厚さd1に対して、超音波振動子2の長手方向回りの周方向の各外表面における積層方向の厚さd2,d3が大きく(d1<d2,d1<d3)形成される。即ち、正電側接合金属62および負電側接合金属63は、圧電単結晶チップ61または絶縁板42,43のそれぞれの対向距離となる内方側の厚さd1よりも外方側の外表面部分における積層方向に沿って幅広(厚さd2,d3)となっている。なお、正電側接合金属62および負電側接合金属63の幅広の各外表面は、積層振動子41の側面の一部を構成し、それらの平面のうち、幾つかが後述する電気接続平面部62a,63aとなる。また、ここでは絶縁板42,43は、面取り部66が形成されていないため、負電側接合金属63は、積層方向に沿った圧電単結晶チップ61間の外表面の厚さd2のほうが絶縁板42,43と圧電単結晶チップ61の間の外表面の厚さd3よりも大きく(d2>d3)となっている。勿論、絶縁板42,43の圧電単結晶チップ61との対向面側に面取り部66を形成してもよい。
【0043】
このように形成された正電側接合金属62および負電側接合金属63は、
図14および
図15に示すように、FPC47,48における導通部としての電気接点と、はんだ、導電性ペーストなどを用いて形成された電気接続部49を介して電気的に接続される。即ち、正電側接合金属62および負電側接合金属63と、各FPC47,48との電気的接続を取るために、幅広に形成された正電側接合金属62および負電側接合金属63の外表面となる電気接続平面部62a,63aとFPC47,48の電気接点が電気接続部49を介して接触して、FPC47,48が固定される。
【0044】
このようにして、正電側接合金属62および負電側接合金属63と、各FPC47,48との電気的接続が確立される。そして、FPC47,48には、上述の電気ケーブル36の配線36a,36b(
図4および
図5参照)が接続される。こうして、FPC47,48は、電気ケーブル36の配線36a,36bからの駆動信号を正電側接合金属62および負電側接合金属63に電気的に接続された電気接続部49によって、積層振動子41の側面の一部を構成する電気接続平面部62aおよび正電側接合金属62を介して各圧電単結晶チップ61に印加して、負電側接合金属63および電気接続平面部63aから帰還させる。
【0045】
なお、正電側接合金属62、負電側接合金属63および電気接続部49の露出する表面部分には、樹脂などの絶縁体で覆い、不良となる不要な電気的接続の発生を防いでもよく、FPC47,48の機械的固定の補強を目的として、正電側接合金属62および負電側接合金属63にFPC47,48を接着剤で固定しても良い。さらに、FPC47,48は、各圧電単結晶チップ61の表面に接着剤で固定してもよい。
【0046】
以上に説明した製造プロセスにより、ホーン32に一体形成されたフロントマス39、各絶縁板42、4つの圧電単結晶チップ61およびバックマス44を接合金属層となる正電側接合金属62および負電側接合金属63により積層して一体化し、この積層体の側面に設けられるFPC47,48から電気接続部49を介して、正電側接合金属62に駆動信号を印加して、負電側接合金属63により帰還させることで、超音波振動子2の全体を超音波振動させるようにしている。
【0047】
以上のように構成されたランジュバン振動子としての超音波振動子2は、絶縁板42,43または各圧電単結晶チップ61を接合する金属接合層としての正電側接合金属62および負電側接合金属63の厚さd1を薄くしても、FPC47,48との電気的接続を行う正電側接合金属62および負電側接合金属63の外表面部分における積層方向の厚さd2(d3)を厚く(幅広に)形成することができる構成となる。これにより、各圧電単結晶チップ61を接合する部分のうち内部(内方)の大部分の厚さd1を薄く保って、外周部分だけ厚さd2(d3)が厚くなるようにすることで、電気的接続の信頼性の向上および振動性能の低下防止を同時に実現することができる。
【0048】
したがって、積層型超音波振動デバイスとしての本実施の形態のランジュバン振動子である超音波振動子2は、駆動信号を印加する配線(FPC47,48)と金属接合材料(正電側接合金属62および負電側接合金属63)との電気的接続(電気接続部49)を形成する部分における電気的接続の信頼性を向上させると共に、振動性能の低下を防止することができる構成となる。
【0049】
なお、上述では、ホーン32に一体形成されたフロントマス39、各絶縁板42、4つの圧電単結晶チップ61およびバックマス44が矩形ブロック体の例を挙げたが、これに限定されることなく、これら部材の形状が、
図17に示すように、例えば、円柱形状としたものでもよい。なお、ここでの圧電単結晶チップ61にも、両面外周の角部を切り欠いた面取り部66が形成されるものである。
【0050】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について、図面に基づいて以下に説明する。なお、第1の実施の形態にて記載した各構成要素に関し、同一構成のものについては同じ符号を用いて、それらの詳細な説明を省略する。
図18は、LiNbO3ウエハの表面を示す平面図、
図19はLiNbO3ウエハの裏面を示す平面図、
図20はLiNbO3ウエハの構成を示す側面図、
図21は溝が形成されたLiNbO3ウエハの構成を示す側面図、
図22は下地金属が成膜されたLiNbO3ウエハの構成を示す断面図、
図23はLiNbO3ウエハから個片化される複数の圧電単結晶チップの構成を示す断面図、
図24は圧電単結晶チップの構成を示す斜視図、
図25は4つの圧電単結晶チップの構成を示す分解斜視図、
図26は超音波振動子の構成を示す断面図、
図27は超音波振動子の構成を示す斜視図である。
【0051】
ここでの積層型超音波振動デバイスとしての超音波振動子2は、製造時において、LiNbO3ウエハ40を、
図18および
図19に示す破線Bに沿って、V状の溝64がウエハ表裏面の異なる位置にダイシングにより形成される。即ち、LiNbO3ウエハ40は、
図20および
図21に示すように、V状の溝64がウエハ表裏面の厚さ方向に直交した方向に対して異なる位置となるように互い違いに形成される。
【0052】
そして、溝64が形成されたLiNbo3ウエハ40は、
図22に示すように、ここでも両面に下地金属65が成膜される。次に、これら溝64に沿った中央部分および溝64に直交した方向の所定箇所を再度ダイシングすることにより、
図23に示すように、LiNbO3ウエハ40が複数のチップに個片化される。こうして、
図24に示すように、表裏一方の対角方向の側面角部が切り欠かれて2つの面取り部66が形成され、ここでも表裏2面(紙面では上下面)および2つの面取り部66にも下地金属65が成膜された圧電単結晶素子としての圧電単結晶チップ61が製作される。
【0053】
このように製作された4つの圧電単結晶チップ61は、
図25に示すように、各面取り部66が形成された離反する2つの面が合わせられると共に、面取り部66が対向するように、AuSn共晶ハンダまたは非鉛ハンダなど(不図示)が設けられて積層される。即ち、両端に配置される2つの圧電単結晶チップ61と、これら2つに対向して内側に配置される2つの圧電単結晶チップ61のそれぞれの面取り部66が近接して対向するように積層され、さらに内側に配置される2つの圧電単結晶チップ61の対向する面に形成された面取り部66が近接して対向するように積層される。
【0054】
こうして、個片化されて積層された4つの圧電単結晶チップ61は、第1の実施の形態と同様に、下地金属65が成膜され、AuSn共晶ハンダまたは非鉛ハンダなどが設けられたフロントマス39を有するホーン32、絶縁板42、絶縁板43およびバックマス44と共に積層され、加熱冷却処理されることで、接合金属層、正電側接合金属62および負電側接合金属63が形成された超音波振動子2が製作される(
図26参照)。
【0055】
このように、本実施の形態の超音波振動子2は、圧電単結晶チップ61の表裏2面の一辺の側面角部が切り欠かれて各面取り部66が形成されているため、正電側接合金属62および負電側接合金属63が離反する積層振動子41の2つの側面において、他の2つの側面よりも幅広に(厚さが大きく)形成される。そして、幅広に形成された2つの側面のうちの幾つかの平面が電気接続平面部62a,63aを構成し、これら電気接続平面部62a,63aには、
図26に示すように、FPC47,48が電気接続部49を介して電気的に接続される。そして、ここでも、FPC47,48には、上述の電気ケーブル36の配線36a,36b(
図4および
図5参照)が接続される。
【0056】
以上のように構成されたランジュバン振動子としての本実施の形態の超音波振動子2は、第1の実施の形態に記載したように、駆動信号を印加する配線(FPC47,48)と金属接合材料(正電側接合金属62および負電側接合金属63)との電気的接続(電気接続部49)を形成する部分における電気的接続の信頼性を向上させると共に、振動性能の低下を防止する効果に加え、LiNbO3ウエハ40に溝64を形成して個片化する圧電単結晶チップ61の面取り部66を加工するダイシングの工程箇所が減るので、圧電単結晶チップ61の作成コストを削減することができる。
【0057】
さらに、組み立て後の超音波振動子2は、電気的接続が行われない各側面において、圧電単結晶チップ61の部分に面取り部66が形成されていないため、正電側接合金属62および負電側接合金属63の幅が小さく(薄く)なり、露出部分が小さいままなので、FPC47,48の電気接点をはんだ、導電性ペーストなどを用いて形成された電気接続部49を接続するときに、不要な電気的接続を起こり難くすることもできるという利点もある。
【0058】
(第1の変形例)
図28は、超音波振動子の構成を示す斜視図である。
ここでの超音波振動子2は、
図28に示すように、長手方向の中心軸Xと積層振動子41の離反する角部を通る平面Pによって区分けされた2つの側面の正電側接合金属62および負電側接合金属63の電気接続平面部62a,63aにFPC47,48の電気接点をはんだ、導電性ペーストなどを用いて形成された電気接続部49を接続する構成となっている。換言すると、FPC47,48は、隣接する積層振動子41の2つの側面において、正電側接合金属62および負電側接合金属63の電気接続平面部62a,63aと電気接続部49を介して電気的に接続されている。即ち、積層振動子41の隣接する2つの側面に電気接続平面部62a,63aが形成されるように面取り部66の位置が合うように4つの圧電単結晶チップ61が積層される。
【0059】
このような構成では、FPC47,48と正電側接合金属62および負電側接合金属63が電気接続部49を介して電気的接続を取るために積層振動子41の側面にFPC47,48を固定するプロセスを行う際、上述の各実施の形態と異なり、FPC47,48を取り付ける積層振動子41の2つの側面の反対側の2つの側面にFPC47,48が存在しないため、超音波振動子2の固定が容易に行え、FPC47,48を電気接続平面部62a,63aと電気的に接続して取り付ける工程が容易となる。
【0060】
(第2の変形例)
図29は、超音波振動子の構成を示す斜視図である。
ここでの超音波振動子2は、
図29に示すように、駆動に必要な正負の電圧が圧電単結晶チップ61に印加されるように積層振動子41の1つの側面において、1つのFPC50が正電側接合金属62および負電側接合金属63の電気接続平面部62a,63aと電気接続部49を介して電気的に接続されている。なお、2つのFPC47,48を積層振動子41の1つの側面に固定する構成としてもよい。ここでも、積層振動子41の1つの側面に電気接続平面部62a,63aが形成されるように面取り部66の位置が合うように4つの圧電単結晶チップ61が積層される。
【0061】
以上に記載の構成では、超音波振動子2の積層振動子41が直方体形状として例に挙げたが、これに限定されることなく、角柱、柱体など所望の超音波振動が励起できる形状であれば如何なる形状としてもよい。
【0062】
さらに、ホーン32、外向フランジ33およびフロントマス39は、予めそれらの形状が形成されたものではなく、金属ブロック体として、絶縁板42,43、圧電単結晶チップ61およびバックマス44を一体化してから、切削加工するようにしてもよい。
【0063】
以上の説明から本発明のランジュバン振動子である超音波振動子2は、駆動信号を印加する配線となるFPC47,48,50と金属接合材料としての正電側接合金属62および負電側接合金属63の電気的接続を形成する部分となる圧電単結晶チップ61の端部に面取り部66を設けて、積層振動子41の1つまたは2つの側面により幅広の電気接続平面部62a,63aを形成して、これら電気接続平面部62a,63aにFPC47,48,50との電気接続部49を形成することで、電気接続平面部62a,63aと電気接続部49との接合の面積を広くして、これらの電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0064】
このようにして本発明では、超音波振動子2の振動性能の観点からは、複数の圧電単結晶チップ61との間に形成される接合金属となる正電側接合金属62および負電側接合金属63の厚さが薄いほうがよく、電気的接続を行う部分のみ正電側接合金属62および負電側接合金属63の電気接続平面部62a,63aの厚さが厚い(面積が広い)ほうがよいので、正電側接合金属62および負電側接合金属63のうち内部の大部分を薄く保って超音波振動子2の振動性能の低下を防止し、正電側接合金属62および負電側接合金属63の外周部だけ厚くなるようにすることで、電気接続平面部62a,63aを幅広にしてFPC47,48,50との電気的接続の信頼性の向上を同時に実現することができるようにしている。
【0065】
上述の実施の形態に記載した発明は、その実施の形態および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0066】
例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。