(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993338
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】プラズマ殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/14 20060101AFI20160901BHJP
A61C 19/00 20060101ALI20160901BHJP
A61B 90/70 20160101ALI20160901BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
A61L2/14
A61C19/00 J
A61B90/70
H05H1/24
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-97371(P2013-97371)
(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公開番号】特開2014-217506(P2014-217506A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】502080704
【氏名又は名称】長田電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153110
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 美紀
【審査官】
松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−244216(JP,A)
【文献】
特開平10−263293(JP,A)
【文献】
特開2006−130399(JP,A)
【文献】
特開2006−269095(JP,A)
【文献】
特開2012−047352(JP,A)
【文献】
特表2013−501332(JP,A)
【文献】
特表2010−536123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/14
A61B 90/10
A61C 19/00
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体からなり内部がエアー通路を形成してなる筒状のハンドピース本体部と、
該ハンドピース本体部の先端部に設けられ、前記エアーが放出される複数の貫通孔を有する第1の電極と、
該第1の電極の前記複数の貫通孔のそれぞれに対向する位置に設けた複数本の針状電極からなる第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に高周波電圧を印加する電源を備え、
それぞれの前記針状電極を位置決めする位置決め用貫通孔と、エアーを通過させるエアー貫通孔とを設けた絶縁体からなる位置決め用部材が、前記第1の電極から所定の間隔を空けて前記ハンドピース本体部の内部に固定され、
前記第2の電極の複数本の前記針状電極は、一端側が前記ハンドピース本体内に設けた同軸コネクタによって束ねられ、他端側が前記位置決め用部材の前記位置決め用貫通孔にそれぞれ通されていることを特徴とするプラズマ殺菌装置。
【請求項2】
前記第2の電極が前記ハンドピース本体部の内部に位置することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ殺菌装置。
【請求項3】
前記第2の電極と前記ハンドピース本体部との間に、前記第2の電極を取り囲む絶縁部材を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ殺菌装置。
【請求項4】
前記第1の電極の複数の貫通孔と連通する貫通孔を有する絶縁部材を、前記第1の電極の前記第2の電極側に設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプラズマ殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ殺菌装置に関し、より詳細には、プラズマ照射範囲の広いプラズマ殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療においても、オートクレーブ等種々の殺菌装置が提案されているが、オートクレープではプラスチックなどの熱に弱い器材を滅菌することはできなかった。また、歯科治療中の患部を殺菌するために、プラズマジェットを利用する技術が提案されている。
【0003】
このような、プラズマジェットを利用する技術として、特許文献1では、歯科治療を行う流体放出系を備えたシリンジに、大気圧下で絶縁破壊電圧が低い希ガスを流した希ガス管路の外周上の電極間に、低周波高圧電源から低周波高電圧を印加して放電を行うことによりプラズマジェットを生成し、希ガス管路の先端からプラズマジェットを照射して、治療患部の濡れ性改善や、治療部位の滅菌を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/008062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載のプラズマジェット照射装置は、プラズマの発生に絶縁破壊電圧の低い希ガスを用い、この希ガスに低周波高電圧を印加するものであり、使用に当って、希ガスを準備しなければならず、また、低周波高電圧(交番電圧)を使用するために、発生したプラズマが熱くなってしまう等の問題があった。
【0006】
図5は、特許文献1に開示されたプラズマジェット照射装置のプラズマ発生部の概略図であり、プラズマジェット照射手段100は、本体の基端側からその内部を経てプラズマジェット照射口101に臨ませた内径数mm程度のガラス管、樹脂管、セラミックス管などの誘電体管から選定される希ガス管路102に、所定の間隔で配置した2個の電極103、104に低周波高圧電源を印加するものであり、プラズマジェット照射手段の希ガス管路102が細く、歯科治療を行うインスツルメント(シリンジ)と一体的に設けられているため、患部へのプラズマ照射は可能であるが、広範囲にプラズマを照射することはできなかった。
【0007】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、希ガス等の特別なガスを用いることなく、かつ、発熱の少ないプラズマ発生を可能にし、更には、広範囲の殺菌に適したプラズマ滅菌装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、プラズマ殺菌装置であって、
導電体からなり内部がエアー通路を形成してなる筒状のハンドピース本体部と、該ハンドピース本体部の先端部に設けられ、前記エアーが
放出される複数の貫通孔を有する第1の電極と、該第1の電極の前記複数の貫通孔のそれぞれに対向する位置に設けた
複数本の針状電極からなる第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に高周波電圧を印加する電源を備え
、それぞれの前記針状電極を位置決めする位置決め用貫通孔と、エアーを通過させるエアー貫通孔とを設けた絶縁体からなる位置決め用部材が、前記第1の電極から所定の間隔を空けて前記ハンドピース本体部の内部に固定され、前記第2の電極の複数の前記針状電極は、一端側が前記ハンドピース本体内に設けた同軸コネクタによって束ねられ、他端側が前記位置決め用部材の前記位置決め用貫通孔にそれぞれ通されていることを特徴としたものである。
【0010】
請求項
2に係る発明は、請求項
1に係る発明において、前記第2の電極が前記ハンドピース本体部の内部に位置することを特徴としたものである。
【0011】
請求項
3に係る発明は、請求項
1または
2に係る発明において、前記第2の電極と前記ハンドピース本体部との間に、前記第2の電極を取り囲む絶縁部材を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項
4に係る発明は、請求項1から
3のいずれか1項に係る発明において、前記第1の電極の複数の貫通孔と連通する貫通孔を有する絶縁部材を、前記第1の電極の前記第2の電極側に設けたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、希ガス等の特別なガスを用いることなく、かつ、発熱の少ないプラズマ発生を可能にし、更には、広範囲の殺菌に適したプラズマ滅菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明によるプラズマ殺菌装置をハンドピース本体部に適用した一実施形態を説明するための図である。
【
図2】
図1のプラズマ殺菌装置本体部とハンドピース本体部の関係を説明するための図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るハンドピース本体部のプラズマ発生部の例を説明するための図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るハンドピース本体部のプラズマ発生部の他の例を説明するための図である。
【
図5】従来のプラズマジェット照射装置のプラズマ発生部の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明のプラズマ殺菌装置に係る好適な実施の形態について説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
【0017】
図1は、本発明によるプラズマ殺菌装置をハンドピース本体部に適用した一実施形態を説明するための図であり、
図2は、
図1のプラズマ殺菌装置本体部とハンドピース本体部の関係を説明するための図である。図中、10はプラズマ殺菌装置本体部、11はプラズマ殺菌装置本体部10内に設けられたパルス電源、12は送風源、20は送風源12からのエアーが送風される送風チューブであり、パルス電源11からのパルス電圧が送給される一対のリード線(図示なし)が設けられている。30は送風チューブ20の先端に接続されたハンドピース本体部、40はハンドピース本体部30の先端に着脱自在にかつ交換可能に連接されたチップで、このチップ40にはプラズマ照射管41が一体的に或いは着脱可能に連結されている。なお、50は、前記パルス電源11、送風源12等を制御するための無線式のフットスイッチである。
【0018】
送風源12は、例えば、エアーポンプを内蔵し、該エアーポンプにて大気(エアー)をそのまま送風チューブ20内を通してハンドピース本体部30に送り、プラズマ照射管41のプラズマ照射口42から放出する。パルス電源11は、例えば、AC100Vの商用電源より高電圧のパルス電圧を作り、このパルス高電圧をチューブ20内に配設されたリード線を通してハンドピース本体部30内に送り、後述するように、ハンドピース本体部30の先端部近傍において、プラズマ放電を発生させ、エアー中の酸素及び水蒸気を電離してプラズマを発生させている。発生したプラズマは、チップ40を通してプラズマ照射管41のプラズマ照射口42から放出されることになる。
【0019】
図3は、本発明の一実施形態に係るハンドピース本体部のプラズマ発生部の例を説明するための図である。プラズマ発生部は、筒状のハンドピース本体部30の先端部に設けた第1の電極32と、針状電極35からなる第2の電極35とを備えている。ハンドピース本体部30の内部は、エアー通路31となっており、第1の電極32は、エアーを通過させるための多数の断面円形状の貫通孔32’を有する円盤状の導電部材から構成されている。また、第1の電極32はハンドピース本体部30を介して接地されている。
【0020】
第2の電極35は、例えば、直径0.2mmのタングステン線からなる複数本の針状電極からなり、針状電極は同軸コネクタ36によって束ねられている。また、プラズマ発生部には、第1の電極32の貫通孔32’と対向する位置に、貫通孔32’と連通する貫通孔34’を有する円盤状の絶縁部材34が設けられている。そして、第2の電極35の各針状電極は、それらの先端が少なくとも円盤状の絶縁部材34の貫通孔34’内に位置するように配設され、第1の電極32の貫通孔32’の周縁部と対向している。このため、第1の針状電極の先端が、第2の電極と接触することがない。絶縁部材34の貫通孔34’は、第1の電極32の貫通孔32’とともに、エアーの通路となる。
【0021】
なお、針状電極は、その先端が、第1の電極32の貫通孔内32’内に位置するまで伸ばされてもよいが、第1の電電極と接触することがないようにする必要がある。このため、絶縁部材34を設けることが望ましいが、針状電極が第1の電極32の貫通孔32’の中心位置にくるようにしておけば、絶縁部材34がなくてもよい。
【0022】
さらに、第2の電極35であるの針状電極とハンドピース本体部30との間には、針状電極を取り囲む絶縁部材33を介在させている。これにより、針状電極に何らかの力がかかって変形したとしても、針状電極とハンドピース本体部30とが接触することがなく、短絡事故を防止することができる。また、針状電極とハンドピース本体部30との間で放電が発生することがない。
【0023】
そして、パルス電源13によって、例えば、AC100Vの商用電源から高電圧の高周波パルス電圧を発生させ、この高周波パルス電圧を間欠的(周期的)に第1の電極32と第2の電極35間に印加することにより低温プラズマを発生させている。この低温プラズマは、非平衡プラズマとして中性ラジカルの強い化学的反応性によって、殺菌などに用いることができる。本実施形態では、第2の電極のそれぞれの針状電極と第1の電極の貫通孔32’の周縁部とがプラズマ発生部となる。なお、第1の電極32はハンドピース本体とともに接地されているため、ハンドピース本体部の使用者も接地されることになる。
【0024】
上述のように、本発明の一実施形態では、エアー通路を有するハンドピース本体部に対して、複数のプラズマ発生部を設けているため、通常のエアーの噴出のみならず、多量のプラズマを噴出することができる。そして、通常のエアー噴出とプラズマの噴出との切換えは、ハンドピース本体部30に設けた図示しないスイッチ、あるいは、
図1で示す無線式のフットスイッチ50によって切換えることができる。
【0025】
図4は、本発明の一実施形態に係るハンドピース本体部のプラズマ発生部の他の例を説明するための図である。
図4に示すハンドピース本体部30のプラズマ発生部には、第2の電極35の針状電極を位置決めするための位置決め用部材37を設けている。この位置決め用部材37は絶縁材料からなり、個々の第2電極の針状電極を挿通して位置決めするための位置決め用貫通孔38と、エアーを通過させるエアー通路用貫通孔39とが設けられている。ここで、位置決め用貫通孔38の中心は、第1の電極32の貫通孔32’の中心に位置するように配置されている。そして、位置決め用部材37は、位置決め用貫通孔38に第2の電極の針状電極を通した状態で、前記第1の電極から所定の間隔を空けてハンドピース本体部30内に配置される。
【0026】
針状電極と位置決め用貫通孔38との間、および、位置決め用部材38と絶縁部材33との間は、接着剤等により適宜固着すればよい。これにより、第2の電極35の針状電極は、正確に、第1の電極32の貫通孔32’と対向することが可能になる。なお、針状電極はハンドピース本体部30の長手方向に直角に交わる平面上で位置決めされるため、先述した絶縁部材33を省くことも可能である。
【符号の説明】
【0027】
10…プラズマ殺菌装置本体部、11…パルス電源、12…送風源、20…送風チューブ、30…ハンドピース本体部、31…エアー通路、32…第1の電極、33、34…絶縁部材、35…第2の電極、36…同軸コネクタ、37…位置決め用部材、38…位置決め用貫通孔、39…エアー通路用貫通孔、40…チップ、41…プラズマ照射管、42…プラズマ照射口、100…プラズマジェット照射手段、101…プラズマジェット照射口、
102…希ガス管路、103、104…電極。