特許第5993367号(P5993367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993367
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】建築用外装材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/66 20060101AFI20160901BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20160901BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   E04B1/66 A
   E04F13/08 101W
   B32B27/00 103
【請求項の数】14
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-509974(P2013-509974)
(86)(22)【出願日】2012年4月13日
(86)【国際出願番号】JP2012060105
(87)【国際公開番号】WO2012141281
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2015年3月19日
(31)【優先権主張番号】特願2011-91533(P2011-91533)
(32)【優先日】2011年4月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 敏彦
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0145067(US,A1)
【文献】 特開2002−069288(JP,A)
【文献】 特開2004−002604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/66
B32B 27/00
C08L 33/14
C08L 71/02
C08L 83/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有する有機重合体(A)、及び、(B)可塑剤を含有する硬化性組成物の硬化物を建築用外装下地配置した建築用外装材であって、(A)成分の有機重合体が、主鎖骨格にオキシエチレンの繰り返し単位を有するポリオキシアルキレン系重合体(A1)であって、(A1)成分中のオキシエチレンの繰り返し単位の重量が(A1)成分の全重量の1〜80wt%であるポリオキシアルキレン系重合体、および/または、側鎖にオキシエチレンの繰り返し単位を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)であって、(A2)成分中のオキシエチレンの繰り返し単位の重量が、(A2)成分の全重量の1〜50wt%である(メタ)アクリル酸エステル系重合体、であり、可塑剤(B)が、主鎖骨格中にオキシエチレンの繰り返し単位を有するポリオキシアルキレン系重合体(B1)であり、更に、前記硬化物の厚みが、0.1〜3.0mmであることを特徴とする建築用外装材。
【請求項2】
(B1)成分中のオキシエチレンの繰り返し単位の重量が、(B1)成分の全重量の1〜80wt%であることを特徴とする請求項に記載の建築用外装材。
【請求項3】
ポリオキシアルキレン系重合体(B)が、主鎖骨格を構成するオキシアルキレンの繰り返し単位として、オキシエチレンとオキシプロピレンからなり、オキシエチレンとオキシプロピレンの繰り返し単位の重量比率が、10/90〜80/20であるポリオキシアルキレン系重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の建築用外装材。
【請求項4】
可塑剤(B)の数平均分子量が300〜15000であることを特徴とする請求項からのいずれかに記載の建築用外装材。
【請求項5】
(A1)成分のポリオキシアルキレン系重合体が、オキシエチレンの繰り返し単位とオキシプロピレンの繰り返し単位を有するポリオキシアルキレン系重合体(A1)であって、(A1)成分中のオキシエチレンの繰り返し単位の重量が(A1)成分の全重量の1〜80wt%であり、(A1)成分中のオキシプロピレンの繰り返し単位の重量が(A1)成分の全重量の1〜95wt%である、ポリオキシアルキレン系重合体であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の建築用外装材。
【請求項6】
(A1)成分のポリオキシアルキレン系重合体が、主鎖骨格を構成するオキシアルキレンの繰り返し単位として、オキシエチレンとオキシプロピレンのみからなり、オキシエチレンとオキシプロピレンの繰り返し単位の重量比率が、5/95〜80/20であるポリオキシアルキレン系重合体であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の建築用外装材。
【請求項7】
築用外装下地が、木質系下地、または、無機系下地であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の建築用外装材。
【請求項8】
質系下地が、無垢材、合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード、ファイバーボード、ランバーコアボード、単板積層材、からなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項7に記載の建築用外装材。
【請求項9】
機系下地が、コンクリート、モルタル、ALC、石膏、サイディングボード、スレート、からなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項7に記載の建築用外装材。
【請求項10】
請求項1からのいずれかに記載の建築用外装材を用いてなる建築用外装壁材。
【請求項11】
請求項1からのいずれかに記載の建築用外装材を用いる建物の防水方法。
【請求項12】
請求項1からのいずれかに記載の建築用外装材を用いる建物の外壁の防水方法。
【請求項13】
請求項1からのいずれかに記載の建築用外装材を用いる建物の開口部周辺の防水方法。
【請求項14】
請求項1からのいずれかに記載の建築用外装材を用いる建物の屋根の防水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素原子に結合した水酸基または加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基(以下、「反応性ケイ素基」ともいう。)を有するポリオキシアルキレン系重合体を含有する硬化性組成物を建築用外装下地に塗布した建築用外装材に関する。
【背景技術】
【0002】
木造住宅やモルタル仕上げ住宅などの外装壁材の結露防止シート材として透湿性に優れたポリオレフィン系の不織布シート(例えば、デュポン社製タイベック)が、従来より用いられている。このような不織布は、(特許文献1)などに開示されており、また製造法としては(特許文献2)などに開示されている。このようにして得られた不織布は適度な孔径を有しており、水を遮断し、空気や水蒸気は通す性質を有する。外部からの水の進入を防ぎ、かつ内部に溜まった水分を水蒸気として外部へ放出することが可能となり、これにより木材や鉄骨の腐食による建物の老朽化やカビ発生による室内空気の汚染の課題を解決している。
【0003】
前記不織布の取付には、釘やタッカーなどの留め付け具が用いられており、その留め付け具により生じた穴から漏水する可能性がある。
【0004】
こうした問題を解決するため、透湿性を備えた液状塗膜防水材が開発されている(特許文献3)。この場合、防水材層が連続的に形成されるため、釘等によって発生する隙間が減少する。
【0005】
しかしながら、(特許文献3)等に開示された液状塗膜防水材で使用されている組成物は、ラテックスポリマー(水系エマルジョン)を使用するものであり、低温時または高湿時には塗膜形成に長時間が必要になる為、冬季に施工し難いという問題があった。また、ラテックスポリマー系の塗膜は弾性に乏しいため、長期間の下地の歪に追従できず、ひび割れや破断等が発生したりし、防水性が低下するなどの問題があった。
【0006】
一方、分子中に少なくとも1個の反応性ケイ素基を含有する有機重合体は、室温においても湿分等による反応性ケイ素基の加水分解反応等を伴うシロキサン結合の形成によって架橋し、ゴム状硬化物が得られるという性質を有することが知られている。
【0007】
これらの反応性ケイ素基を有する有機重合体の中でも、主鎖骨格がポリオキシアルキレン系重合体やポリ(メタ)アクリル酸エステル系重合体である有機重合体は、(特許文献4)、(特許文献5)、などに開示されており、既に工業的に生産され、シーリング材、接着剤などの用途に広く使用されている。
【0008】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、比較的低粘度である為に、無溶剤または少量の溶剤添加で、十分な施工性を有する非水系の液状塗膜防水材を設計可能である。更に、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、低温時も実用的硬化性を得ることは可能であり、冬季に施工が可能となる。更に、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、硬化後に良好な弾性を示すゴム状体となるため、下地への十分な追従性が期待できる。
【0009】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を液状塗膜防水材として用いた建築用外装材は、(特許文献6)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭42−19520号公報(米国特許第3169899号公報)
【特許文献2】特公昭43−21112号公報(米国特許第3532589号公報)
【特許文献3】米国公開特許2007/0042196号公報
【特許文献4】特開昭55−9669号公報(米国特許第4507469号公報)
【特許文献5】特開平11−130931号公報(米国特許第6552118号公報)
【特許文献6】米国公開特許2009/0145067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献6に記載の液状塗膜防水材を用いても、該建築用外装材の透湿性は十分とは言えず、透湿性の改善が望まれていた。
【0012】
本発明は、反応性ケイ素基を有する有機重合体を含有する硬化性組成物であって、水蒸気透過性(=透湿性)に優れ、低温時施工が可能で、可塑剤の硬化物表面への移行が少ない硬化性組成物を、建築用外装下地に塗布した建築用外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、このような問題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有する有機重合体を含有する硬化性組成物を用いることで、得られる硬化塗膜の水蒸気透過性を顕著に改善し、上記課題を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本願発明は、
シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有する有機重合体(A)を含有する硬化性組成物を建築用外装下地に塗布した建築用外装材であって、(A)成分の有機重合体が、主鎖骨格にオキシエチレンの繰り返し単位を有するポリオキシアルキレン系重合体(A1)であって、(A1)成分中のオキシエチレンの繰り返し単位の重量が(A1)成分の全重量の1〜80wt%であるポリオキシアルキレン系重合体、および/または、側鎖にオキシエチレンの繰り返し単位を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)であって、(A2)成分中のオキシエチレンの繰り返し単位の重量が、(A2)成分の全重量の1〜50wt%である(メタ)アクリル酸エステル系重合体、であり、更に、前記硬化性組成物を硬化させてなる硬化物の厚みが、0.1〜3.0mmであることを特徴とする建築用外装材に関する。
好ましくは、前記の硬化性組成物が、さらに、(B)可塑剤を含有する建築用外装材である。
より好ましくは、可塑剤(B)が、ポリオキシアルキレン系重合体(B1)である前記に記載の建築用外装材である。
より好ましくは、ポリオキシアルキレン系重合体(B1)が、主鎖骨格中にオキシエチレンの繰り返し単位を有するポリオキシアルキレン系重合体である前記に記載の建築用外装材である。
より好ましくは、(B1)成分中のオキシエチレンの繰り返し単位の重量が、(B1)成分の全重量の1〜80wt%である前記に記載の建築用外装材である。
より好ましくは、ポリオキシアルキレン系重合体(B)が、主鎖骨格を構成するするオキシアルキレンの繰り返し単位として、オキシエチレンとオキシプロピレンからなり、オキシエチレンとオキシプロピレンの繰り返し単位の重量比率が、0/100〜80/20であるポリオキシアルキレン系重合体である前記いずれかに記載の建築用外装材である。
より好ましくは、可塑剤(B)の数平均分子量が300〜15000である前記いずれかに記載の建築用外装材である。
より好ましくは、(A1)成分のポリオキシアルキレン系重合体が、オキシエチレンの繰り返し単位とオキシプロピレンの繰り返し単位を有するポリオキシアルキレン系重合体(A1)であって、(A1)成分中のオキシエチレンの繰り返し単位の重量が(A1)成分の全重量の1〜80wt%であり、(A1)成分中のオキシプロピレンの繰り返し単位の重量が(A1)成分の全重量の1〜95wt%である、ポリオキシアルキレン系重合体である前記いずれかに記載の建築用外装材である。
より好ましくは、(A1)成分のポリオキシアルキレン系重合体が、主鎖骨格を構成するするオキシアルキレンの繰り返し単位として、オキシエチレンとオキシプロピレンのみからなり、オキシエチレンとオキシプロピレンの繰り返し単位の重量比率が、5/95〜80/20であるポリオキシアルキレン系重合体である前記いずれかに記載の建築用外装材である。
より好ましくは、前記いずれかに記載の建築用外装下地が、木質系下地、または、無機系下地である建築用外装材である。
より好ましくは、前記に記載の木質系下地が、無垢材、合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード、ファイバーボード、ランバーコアボード、単板積層材、からなる群から選択される一つ以上である建築用外装材である。
より好ましくは、前記に記載の無機系下地が、コンクリート、モルタル、ALC、石膏、サイディングボード、スレート、からなる群から選択される一つ以上である建築用外装材である。
本発明の好ましい実施態様としては、前記いずれかに記載の建築用外装材を用いてなる建築用外装壁材が挙げられる。
本発明の好ましい実施態様としては、前記いずれかに記載の建築用外装材を用いる建物の防水方法が挙げられる。
本発明の好ましい実施態様としては、前記いずれかに記載の建築用外装材を用いる建物の外壁の防水方法が挙げられる。
本発明の好ましい実施態様としては、前記いずれかに記載の建築用外装材を用いる建物の開口部周辺の防水方法が挙げられる。
本発明の好ましい実施態様としては、前記いずれかに記載の建築用外装材を用いる建物の屋根の防水方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本願の硬化性組成物の使用により低温時施工が可能となり、該硬化性組成物を塗布して得られる硬化塗膜は、水蒸気透過性に優れる上に可塑剤の硬化物表面への移行が少ない。従って、該硬化性組成物を塗布して得られる建築用外装材は、簡便な施工が可能な上に、該建築物の室内空気の汚染防止が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0017】
本発明では(A)成分として、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A1)、および/または反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)(以下、まとめて「有機重合体」ともいう)を使用する。(A)成分の重合体の主鎖骨格として、ポリオキシアルキレン系重合体および/または(メタ)アクリル酸エステル系重合体を用いることによって、良好な水蒸気透過性が達成される。特に、ポリオキシアルキレン系重合体は、水蒸気透過性がより高い為に好ましい。
【0018】
前記反応性ケイ素基を有する有機重合体中に含有される反応性ケイ素基は、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シラノール縮合触媒によって加速される反応によりシロキサン結合を形成することにより架橋しうる基である。反応性ケイ素基としては、一般式(1):
−SiR13-aa (1)
(式中、R1は、炭素原子数1から20のアルキル基、炭素原子数6から20のアリール基、炭素原子数7から20のアラルキル基または(R’)3SiO−(R’は、それぞれ独立に、炭素原子数1から20の置換あるいは非置換の炭化水素基である)で示されるトリオルガノシロキシ基である。また、Xは、それぞれ独立に、水酸基または加水分解性基である。さらに、aは1、2、3のいずれかである)で表される基があげられる。
【0019】
加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの内では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましく、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点からアルコキシ基が特に好ましい。
【0020】
加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、硬化性の点から2個または3個が好ましい。加水分解性基や水酸基がケイ素原子に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。ケイ素原子上に3つの水酸基又は加水分解性基を有する反応性ケイ素基は、活性が高く良好な硬化性が得られること、また、得られる硬化物の復元性、耐久性、耐クリープ性に優れることから好ましい。一方、ケイ素原子上に2つの水酸基又は加水分解性基を有する反応性ケイ素基は、貯蔵安定性に優れ、また、得られる硬化物が高伸び、高強度であることから好ましい。
【0021】
また上記一般式(1)におけるR1の具体例としては、たとえばメチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基や、 R’がメチル基、フェニル基等である(R’)3SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基等があげられる。これらの中ではメチル基が特に好ましい。
【0022】
反応性ケイ素基のより具体的な例示としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基が挙げられる。活性が高く良好な硬化性が得られることから、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。
【0023】
また、貯蔵安定性の点からはジメトキシメチルシリル基が特に好ましい。また、トリエトキシシリル基およびジエトキシメチルシリル基は、反応性ケイ素基の加水分解反応に伴って生成するアルコールが、エタノールであり、より高い安全性を有することから特に好ましい。
【0024】
反応性ケイ素基の導入は公知の方法で行えばよい。すなわち、例えば以下の方法が挙げられる。
【0025】
(イ)分子中に水酸基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基および不飽和基を有する有機化合物を反応させ、不飽和基を含有する有機重合体を得る。もしくは、不飽和基含有エポキシ化合物との共重合により不飽和基含有有機重合体を得る。ついで得られた反応生成物に反応性ケイ素基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する。
【0026】
(ロ)(イ)法と同様にして得られた不飽和基を含有する有機重合体にメルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
【0027】
(ハ)分子中に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基を有する有機重合体に、この官能基に対して反応性を示す官能基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
【0028】
以上の方法のなかで、(イ)の方法、または(ハ)のうち末端に水酸基を有する重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法は、比較的短い反応時間で高い転化率が得られる為に好ましい。更に、(イ)の方法で得られた反応性ケイ素基を有する有機重合体は、(ハ)の方法で得られる有機重合体よりも低粘度で作業性の良い硬化性組成物となること、また、(ロ)の方法で得られるポリオキシアルキレン系重合体は、メルカプトシランに基づく臭気が強いことから、(イ)の方法が特に好ましい。
【0029】
(イ)の方法において用いるヒドロシラン化合物の具体例としては、たとえば、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、フェニルジクロロシランのようなハロゲン化シラン類;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、1−[2−(トリメトキシシリル)エチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのようなアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシランのようなアシロキシシラン類;ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシランのようなケトキシメートシラン類などがあげられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちではとくにハロゲン化シラン類、アルコキシシラン類が好ましく、特にアルコキシシラン類は、得られる硬化性組成物の加水分解性が穏やかで取り扱いやすいために最も好ましい。アルコキシシラン類の中で、メチルジメトキシシランは、入手し易く、得られる有機重合体を含有する硬化性組成物の硬化性、貯蔵安定性、伸び特性、引張強度が高い為に特に好ましい。また、トリメトキシシランは、得られる硬化性組成物の硬化性および復元性の点から特に好ましい。
【0030】
(ロ)の合成法としては、たとえば、メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物を、ラジカル開始剤および/またはラジカル発生源存在下でのラジカル付加反応によって、有機重合体の不飽和結合部位に導入する方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。前記メルカプト基および反応性ケイ素基を有する化合物の具体例としては、たとえば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシランなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
(ハ)の合成法のうち末端に水酸基を有する重合体とイソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法としては、たとえば、特開平3−47825号公報に示される方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。前記イソシアネート基および反応性ケイ素基を有する化合物の具体例としては、たとえば、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルトリエトキシシラン、イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン、イソシアネートメチルジエトキシメチルシランなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
トリメトキシシラン等の一つのケイ素原子に3個の加水分解性基が結合しているシラン化合物は不均化反応が進行する場合がある。不均化反応が進むと、ジメトキシシランやテトラヒドロシランのようなかなり危険な化合物が生じる。しかし、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランでは、このような不均化反応は進行しない。このため、ケイ素含有基としてトリメトキシシリル基など3個の加水分解性基が一つのケイ素原子に結合している基を用いる場合には、(ロ)または(ハ)の合成法を用いることが好ましい。
【0033】
一方、一般式(2):
H−(SiR22O)mSiR22−R3−SiX3 (2)
(式中、Xは前記に同じ。2×m+2個のR2は、それぞれ独立に、炭化水素基または−OSi(R’’)3(R’’は、それぞれ独立に、炭素原子数1から20の置換あるいは非置換の炭化水素基である)で示されるトリオルガノシロキシ基であり、入手性およびコストの点から、炭素原子数1から20の炭化水素基が好ましく、炭素原子数1から8の炭化水素基がより好ましく、炭素原子数1から4の炭化水素基が特に好ましい。R3は2価の有機基であり、入手性およびコストの点から、炭素原子数1から12の2価の炭化水素基が好ましく、炭素原子数2から8の2価の炭化水素基がより好ましく、炭素原子数2の2価の炭化水素基が特に好ましい。また、mは、0から19の整数であり、入手性およびコストの点から、1が好ましい)で表されるシラン化合物は、不均化反応が進まない。このため、(イ)の合成法で、3個の加水分解性基が1つのケイ素原子に結合している基を導入する場合には、一般式(2)で表されるシラン化合物を用いることが好ましい。一般式(2)で示されるシラン化合物の具体例としては、1−[2−(トリメトキシシリル)エチル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1−[2−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1−[2−(トリメトキシシリル)ヘキシル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0034】
反応性ケイ素基を有する有機重合体は直鎖状、または分岐を有してもよく、その数平均分子量はGPCにおけるポリスチレン換算において500〜100,000程度、より好ましくは1,000〜50,000であり、特に好ましくは3,000〜30,000である。数平均分子量が500未満では、硬化物の伸び特性の点で不都合な傾向があり、100,000を越えると、高粘度となる為に作業性の点で不都合な傾向がある。
【0035】
高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物を得るためには、有機重合体に含有される反応性ケイ素基は重合体1分子中に平均して少なくとも1個、好ましくは1.1〜5個存在するのがよい。分子中に含まれる反応性ケイ素基の数が平均して1個未満になると、硬化性が不充分になり、良好なゴム弾性挙動を発現しにくくなる。反応性ケイ素基は、有機重合体分子鎖の主鎖の末端あるいは側鎖の末端にあってもよいし、また、両方にあってもよい。特に、反応性ケイ素基が分子鎖の主鎖の末端にあるときは、最終的に形成される硬化物に含まれる有機重合体成分の有効網目鎖長が長くなるため、高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなる。
【0036】
前記ポリオキシアルキレン系重合体(A1)は、主鎖骨格にオキシエチレンの繰り返し単位を有するポリオキシアルキレン系重合体であって、(A1)成分中のオキシエチレンの繰り返し単位の重量が(A1)成分の全重量の1〜80wt%であることが必須である。3〜70wt%であることが好ましく、5〜60wt%であることがより好ましく、10〜50wt%であることが更に好ましく、20〜45wt%であることが特に好ましく、30〜40wt%であることが最も好ましい。1%未満では、水蒸気透過性の点で不都合な傾向があり、80%を越えると、高粘度となる為に作業性の点で不都合な傾向がある。
【0037】
前記ポリオキシアルキレン系重合体(A1)は、本質的に一般式(3):
−R4−O− (3)
(式中、R4は、炭素原子数1から14の直鎖状もしくは分岐アルキレン基である。)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、一般式(3)におけるR4は、炭素原子数1から14の、さらには2から4の、直鎖状もしくは分岐状アルキレン基が好ましい。一般式(3)で示される繰り返し単位の具体例としては、
−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2CH(C25)O−、−CH2C(CH32O−、−CH2CH2CH2CH2O−
等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。
【0038】
前記ポリオキシアルキレン系重合体(A1)は、主鎖骨格にオキシエチレンの繰り返し単位を有することが必須であるが、主鎖骨格にオキシプロピレンの繰り返し単位も有することが、得られる重合体が非晶質であり、比較的低粘度である点から好ましい。(A1)成分中のオキシプロピレンの繰り返し単位の重量が(A1)成分の全重量の1〜95wt%であることが好ましく、5〜85wt%であることがより好ましく、10〜80wt%であることが更に好ましく、20〜70wt%であることが特に好ましく、40〜60wt%であることが最も好ましい。1%未満では、高粘度となる為に作業性の点で不都合な傾向があり、95%を越えると、水蒸気透過性の点で不都合な傾向がある。
【0039】
前記ポリオキシアルキレン系重合体(A1)の主鎖骨格を構成するするオキシアルキレンの繰り返し単位としては、オキシエチレンとオキシプロピレンのみからなることが好ましい。その場合、オキシエチレンとオキシプロピレンの繰り返し単位の重量比率は、5/95〜80/20であることがより好ましく、10/90〜70/30であることが更に好ましく、20/80〜60/40であることが特に好ましく、30/70〜50/50であることが最も好ましい。オキシエチレンとオキシプロピレンの繰り返し単位の重量比率が、10/90よりも小さい場合には、水蒸気透過性の点で不都合な傾向があり、80/20よりも大きい場合には、高粘度となる為に作業性の点で不都合な傾向がある。
【0040】
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、例えば、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、特開昭61−215623号に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物−ポルフィリン錯体触媒による重合法、特公昭46−27250号、特公昭59−15336号、米国特許3278457号、米国特許3278458号、米国特許3278459号、米国特許3427256号、米国特許3427334号、米国特許3427335号等に示される複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、特開平10−273512号に例示されるポリホスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法、特開平11−060722号に例示されるホスファゼン化合物からなる触媒を用いる重合法等、があげられるが、特に限定されるものではない。
【0041】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の製造方法は、特公昭45−36319号、同46−12154号、特開昭50−156599号、同54−6096号、同55−13767号、同55−13468号、同57−164123号、特公平3−2450号、米国特許3632557、米国特許4345053、米国特許4366307、米国特許4960844等の各公報に提案されているもの、また特開昭61−197631号、同61−215622号、同61−215623号、同61−218632号、特開平3−72527号、特開平3−47825号、特開平8−231707号の各公報に提案されている数平均分子量6,000以上、Mw/Mnが1.6以下の高分子量で分子量分布が狭いポリオキシアルキレン系重合体が例示できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0042】
上記の反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0043】
また、本発明の効果を大きく損なわない範囲で、(A1)成分以外のポリオキシアルキレン系重合体を含有しても良い。
【0044】
一方、ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格中にはウレタン結合成分等の他の成分を含んでいてもよい。
【0045】
前記ウレタン結合成分としては特に限定されないが、イソシアネート基と活性水素基との反応により生成する基(以下、アミドセグメントともいう)を挙げることができる。
【0046】
前記アミドセグメントは一般式(4):
−NR5−C(=O)− (4)
(R5は水素原子または1価の有機基であり、好ましくは炭素原子数1から20の置換あるいは非置換の1価の炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数1から8の置換あるいは非置換の1価の炭化水素基である)で表される基である。
【0047】
前記アミドセグメントとしては、具体的には、イソシアネート基と水酸基との反応により生成するウレタン基;イソシアネート基とアミノ基との反応により生成する尿素基;イソシアネート基とメルカプト基との反応により生成するチオウレタン基などを挙げることができる。また、本発明では、上記ウレタン基、尿素基、及び、チオウレタン基中の活性水素が、更にイソシアネート基と反応して生成する基も、一般式(4)の基に含まれる。
【0048】
アミドセグメントと反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の工業的に容易な製造方法を例示すると、末端に活性水素含有基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、過剰のポリイソシアネート化合物を反応させて、ポリウレタン系主鎖の末端にイソシアネート基を有する重合体とした後、あるいは同時に、該イソシアネート基の全部または一部に一般式(5)
W−R6−SiR13-aa (5)
(ただし、式中、R1、X、aは前記と同じ。R6は、2価の有機基であり、より好ましくは炭素原子数1から20の置換もしくは非置換の2価の炭化水素基である。Wは水酸基、カルボキシル基、メルカプト基およびアミノ基(1級または2級)から選ばれた活性水素含有基である。)で表されるケイ素化合物のW基を反応させる方法により製造されるものを挙げることができる。この製造方法に関連した、有機重合体の公知の製造法を例示すると、特公昭46−12154号(米国特許3632557号)、特開昭58−109529号(米国特許4374237号)、特開昭62−13430号(米国特許4645816号)、特開平8−53528号(EP0676403)、特開平10−204144号(EP0831108)、特表2003−508561(米国特許6197912号)、特開平6−211879号(米国特許5364955号)、特開平10−53637号(米国特許5756751号)、特開平11−100427号、特開2000−169544号、特開2000−169545号、特開2002−212415号、特許第3313360号、米国特許4067844号、米国特許3711445号、特開2001−323040号、などが挙げられる。
【0049】
また、末端に活性水素含有基を有するポリオキシアルキレン系重合体に一般式(6)
O=C=N−R6−SiR13-aa (6)
(ただし、式中R1、R6、X、aは前記に同じ。)で示される反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物とを反応させることにより製造されるものを挙げることができる。この製造方法に関連した、有機重合体の公知の製造法を例示すると、特開平11−279249号(米国特許5990257号)、特開2000−119365号(米国特許6046270号)、特開昭58−29818号(米国特許4345053号)、特開平3−47825号(米国特許5068304号)、特開平11−60724号、特開2002−155145号、特開2002−249538号、WO03/018658、WO03/059981、などが挙げられる。
【0050】
末端に活性水素含有基を有するポリオキシアルキレン系重合体としては、末端に水酸基を有するオキシアルキレン重合体(ポリエーテルポリオール)が挙げられる。
【0051】
ポリエーテルポリオールとしては、いかなる製造方法において製造されたものでも使用することが出来るが、全分子平均で分子末端当り少なくとも0.7個の水酸基を末端に有するものが好ましい。具体的には、従来のアルカリ金属触媒を使用して製造したオキシアルキレン重合体や、複合金属シアン化物錯体やセシウムの存在下、少なくとも2つの水酸基を有するポリヒドロキシ化合物などの開始剤に、アルキレンオキシドを反応させて製造されるオキシアルキレン重合体などが挙げられる。
【0052】
上記の各重合法の中でも、複合金属シアン化物錯体を使用する重合法は、より低不飽和度で、Mw/Mnが狭く、より低粘度でかつ、高耐酸性、高耐候性のオキシアルキレン重合体を得ることが可能であるため好ましい。
【0053】
前記ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トルエン(トリレン)ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0054】
一般式(5)のケイ素化合物としては特に限定はないが、具体的に例示すると、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、等のアミノ基含有シラン類;γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等のヒドロキシ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;等が挙げられる。また、特開平6−211879号(米国特許5364955号)、特開平10−53637号(米国特許5756751号)、特開平10−204144号(EP0831108)、特開2000−169544号、特開2000−169545号に記載されている様に、各種のα,β−不飽和カルボニル化合物と一級アミノ基含有シランとのMichael付加反応物、または、各種の(メタ)アクリロイル基含有シランと一級アミノ基含有化合物とのMichael付加反応物もまた、一般式(5)のケイ素化合物として用いることができる。
【0055】
一般式(6)の反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物としては特に限定はないが、具体的に例示すると、γ−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−トリエキシシリルプロピルイソシアネート、γ−メチルジメトキシシリルプロピルイソシアネート、γ−メチルジエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルメチルイソシアネート、トリエトキシメチルシリルメチルイソシアネート、ジメトキシメチルシリルメチルイソシアネート、ジエトキシメチルシリルメチルイソシアネート等が挙げられる。また、特開2000−119365号(米国特許6046270号)に記載されている様に、一般式(5)のケイ素化合物と、過剰の前記ポリイソシアネート化合物を反応させて得られる化合物もまた、一般式(6)の反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物として用いることができる。
【0056】
本発明の(A)成分であるポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格中にアミドセグメントが多いと、ポリオキシアルキレン系重合体の粘度が高くなり、作業性の悪い組成物となる場合がある。一方、(A)成分の主鎖骨格中のアミドセグメントによって、本発明の組成物の硬化性が向上する傾向がある。従って、(A)成分の主鎖骨格中にアミドセグメントを含む場合、アミドセグメントは1分子あたり平均で、1〜10個が好ましく、1.5〜7個がより好ましく、2〜5個が特に好ましい。1個よりも少ない場合には、硬化性が十分ではない場合があり、10個よりも大きい場合には、ポリオキシアルキレン系重合体が高粘度となり作業性の悪い組成物となる場合がある。
【0057】
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A2)は、側鎖にオキシエチレンの繰り返し単位を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体であって、ポリオキシエチレン鎖を有する単量体単位を含有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体である。(A2)成分中のオキシエチレンの繰り返し単位の重量が(A2)成分の全重量の1〜50wt%であることが必須である。3〜45wt%であることが好ましく、5〜40wt%であることがより好ましく、10〜35wt%であることが更に好ましく、20〜30wt%であることが特に好ましい。1%未満では、水蒸気透過性の点で不都合な傾向があり、50%を越えると、高粘度となる為に作業性の点で不都合な傾向がある。
【0058】
前記ポリオキシエチレン鎖を有する単量体は、一般式(7)
CH2=C(R7)COOR8 (7)
(R7は水素原子またはメチル基である。R8はポリオキシエチレン鎖を含有する有機基である)で表され、エチレンオキシドが開環した単位を1個以上、好ましくは1〜50個、より好ましくは1〜30個、更に好ましくは2〜20個、特に2〜10個有するモノマーが好ましい。
【0059】
前記一般式(7)で示される単量体単位を重合体(A2)中に有することにより、硬化性組成物に透湿性を付与することができる。
【0060】
前記一般式(7)で示される単量体を具体的に例示すると、一般式(8)や一般式(9)で示されるようなモノマーが挙げられる。
CH2=C(R7)COO−(CH2CH2O)b−(CH2CH(CH3)O)c9 (8)
(ただし、式中R7は前記に同じ。R9は水素原子又は1価の炭化水素基。bは1以上の整数。cは0または1以上の整数。)
CH2=C(R7)COO−(CH2CH2O)d−(CH2CH(CH3)O)eCOC(R7)=CH2 (9)
(ただし、式中R7は前記に同じ。dは1以上の整数。eは0または1以上の整数。)
式(8)中のb、c、式(9)中のd、e、はそれぞれ1〜50が好ましく、1〜30がより好ましく、2〜20が更に好ましく、2〜10であることが特に好ましい。
【0061】
前記一般式(7)で示される単量体の具体例としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウリロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド−プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド−プロピレンオキシド(ブロックタイプ)変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0062】
前記一般式(7)で示される単量体の具体例としては、日本油脂製の、ブレンマーE、ブレンマーPE、ブレンマーAE、ブレンマーPEP、ブレンマーAEP、ブレンマーPET、ブレンマーAET、ブレンマーPME、ブレンマーAME、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマー50AOEP−800B、ブレンマーPLE、ブレンマーALE、ブレンマーPSE、ブレンマーASE、ブレンマーPKE、ブレンマーAKE、ブレンマーPNE、ブレンマーANE、ブレンマーPNEP−600、ブレンマーPDE、ブレンマーADE、ブレンマーPDC、ブレンマーADC、ブレンマーPDBE、ブレンマーADBE、ブレンマーPDBEP、ブレンマーADBEP、ブレンマー43PDBPE−800B、等が挙げられる。
【0063】
(A2)成分は、ポリオキシエチレン鎖を有しない単量体(以下、「その他単量体」ともいう。)とも共重合可能であり、ポリオキシエチレン鎖を有しない(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを例示すると、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルジメトキシメチルシラン、メタクリロイルオキシメチルジエトキシメチルシラン、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ビス(トリフルオロメチル)メチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマーが挙げられる。前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体では、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとともに、以下のビニル系モノマーを共重合することもできる。該ビニル系モノマーを例示すると、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。上記のポリオキシエチレン鎖を有しない単量体のなかでも、生成物の物性等から、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーからなる重合体が好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーからなる(メタ)アクリル酸エステル系重合体であり、特に好ましくはアクリル酸エステルモノマーからなるアクリル酸エステル系重合体である。本願の用途においては硬化性組成物の低粘度、塗膜の低モジュラス、高伸び、耐候、耐熱性等の物性が要求される点から、アクリル酸ブチル系モノマーが更に好ましい。なお上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/あるいはメタクリル酸を表す。
【0064】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体の合成法としては、特に限定されず、公知の方法で行えばよい。但し、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物などを用いる通常のフリーラジカル重合法で得られる重合体は、分子量分布の値が一般に2以上と大きく、粘度が高くなるという問題を有している。従って、分子量分布が狭く、粘度の低い(メタ)アクリル酸エステル系重合体であって、高い割合で分子鎖末端に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得るためには、リビングラジカル重合法を用いることが好ましい。
【0065】
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒として(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法としては例えば、Matyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁などが挙げられる。
【0066】
反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製法としては、たとえば、特公平3−14068号公報、特公平4−55444号公報、特開平6−211922号公報等に、連鎖移動剤を用いたフリーラジカル重合法を用いた製法が開示されている。また、特開平9−272714号公報等に、原子移動ラジカル重合法を用いた製法が開示されているが、特にこれらに限定されるものではない。
【0067】
上記の反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、単独で使用してもよいし2種以上併用してもよい。
【0068】
本願の(A1)成分と(A2)成分は、単独で使用してもよいし併用してもよい。また、本願の(A1)成分とポリオキシエチレン鎖を有しない(メタ)アクリル酸エステル系重合体を併用してもよいし、本願の(A2)成分とポリオキシエチレン鎖を有しないポリオキシアルキレン系重合体を併用してもよい。
【0069】
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体をブレンドしてなる有機重合体の製造方法は、特開昭59−122541号、特開昭63−112642号、特開平6−172631号、特開平11−116763号公報等に提案されているが、特にこれらに限定されるものではない。
【0070】
さらに、反応性ケイ素官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体をブレンドしてなるポリオキシアルキレン系重合体の製造方法としては、他にも、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体の存在下で(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合を行う方法が利用できる。この製造方法は、特開昭59−78223号、特開昭59−168014号、特開昭60−228516号、特開昭60−228517号等の各公報に具体的に開示されているが、これらに限定されるものではない。
【0071】
本発明の硬化性組成物には(B)成分として可塑剤を添加することができる。可塑剤の添加により、硬化性組成物の粘度やスランプ性および組成物を硬化して得られる硬化物の引張り強度、伸びなどの機械特性が調整できる。
【0072】
(B)成分の可塑剤は、20℃における蒸気圧が0.01KPa未満であることが好ましい。20℃における蒸気圧が0.01KPa以上であると、その蒸気が大気を汚染する場合がある。また、(B)成分の可塑剤は、(A)成分と非反応性であることが好ましい。
【0073】
可塑剤の例としては、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシル等の非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチル等の脂肪族エステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル、等の炭化水素系油;プロセスオイル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤類をあげることができる。
【0074】
また、高分子可塑剤を使用することができる。高分子可塑剤を使用すると重合体成分を分子中に含まない可塑剤である低分子可塑剤を使用した場合に比較して、初期の物性を長期にわたり維持する。更に、該硬化物にアルキド塗料を塗布した場合の乾燥性(塗装性ともいう)を改良できる。高分子可塑剤の具体例としては、ビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステル類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤;分子量500以上、さらには1000以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールあるいはこれらポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基、アミノ基などに変換した誘導体等のポリオキシアルキレン系重合体;ポリスチレンやポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、ポリクロロプレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
これらの高分子可塑剤のうちで、(A)成分の重合体と相溶するものが好ましい。この点から、ポリオキシアルキレン系重合体やビニル系重合体が好ましい。また、透湿性、表面硬化性、深部硬化性、貯蔵安定性の点から、ポリオキシアルキレン系重合体(B1)がより好ましい。
【0076】
また、相溶性および耐候性、耐熱性の点からビニル系重合体が好ましい。ビニル系重合体の中でもアクリル系重合体および/又はメタクリル系重合体が好ましく、ポリアクリル酸アルキルエステルなどアクリル系重合体がさらに好ましい。この重合体の合成法は、分子量分布が狭く、低粘度化が可能なことからリビングラジカル重合法が好ましく、原子移動ラジカル重合法がさらに好ましい。また、特開2001−207157号公報に記載されているアクリル酸アルキルエステル系単量体を高温、高圧で連続塊状重合によって得た、いわゆるSGOプロセスによる重合体を用いるのが好ましい。
【0077】
可塑剤の数平均分子量は、好ましくは300〜15000であるが、より好ましくは500〜10000であり、さらに好ましくは700〜8000、特に好ましくは800〜5000である。最も好ましくは1000〜3000である。分子量が低すぎると熱や降雨により可塑剤が経時的に流出し、初期の物性を長期にわたり維持できず、アルキド塗装性が改善できない。また、分子量が高すぎると粘度が高くなり、作業性が悪くなる。高分子可塑剤の分子量分布は特に限定されないが、狭いことが好ましく、1.80未満が好ましい。1.70以下がより好ましく、1.60以下がなお好ましく、1.50以下がさらに好ましく、1.40以下が特に好ましく、1.30以下が最も好ましい。
【0078】
数平均分子量はビニル系重合体の場合はGPC法で、ポリオキシアルキレン系重合体の場合は末端基分析法で測定される。また、分子量分布(Mw/Mn)はGPC法(ポリスチレン換算)で測定される。
【0079】
前記ポリオキシアルキレン系重合体(B1)は、反応性ケイ素基を有してもよいが、深部硬化性の点から反応性ケイ素基を有しないポリオキシアルキレン系重合体が好ましい。
【0080】
前記ポリオキシアルキレン系重合体(B1)は、水蒸気透過性の点から、主鎖骨格にオキシエチレンの繰り返し単位を有することが好ましい。(B1)成分中のオキシエチレンの繰り返し単位の重量は(B1)成分の全重量の1〜80wt%であることが好ましく、5〜60wt%であることがより好ましく、10〜50wt%であることが更に好ましく、20〜45wt%であることが特に好ましく、30〜40wt%であることが最も好ましい。1%未満では、水蒸気透過性の点で不都合な傾向があり、80%を越えると、高粘度となる為に作業性の点で不都合な傾向がある。
【0081】
一方、前記ポリオキシアルキレン系重合体(B1)は、主鎖骨格にオキシプロピレンの繰り返し単位を有することが、得られる可塑剤が非晶質であり、比較的低粘度である点から好ましい。(B1)成分中のオキシプロピレンの繰り返し単位の重量が(B1)成分の全重量の10wt%以上であることが好ましく、20wt%以上であることがより好ましく、30wt%以上であることが更に好ましく、40wt%以上であることが特に好ましく、50wt%以上であることが最も好ましい。10%未満では、高粘度となる為に作業性の点で不都合な傾向がある。
【0082】
前記ポリオキシアルキレン系重合体(B1)の主鎖骨格を構成するするオキシアルキレンの繰り返し単位としては、オキシエチレンとオキシプロピレンのみからなることが好ましい。その場合、オキシエチレンとオキシプロピレンの繰り返し単位の重量比率は、0/100〜80/20であることがより好ましく、10/90〜70/30であることが更に好ましく、20/80〜60/40であることが特に好ましく、30/70〜50/50であることが最も好ましい。オキシエチレンとオキシプロピレンの繰り返し単位の重量比率が、10/90よりも小さい場合には、水蒸気透過性の点で不都合な傾向があり、80/20よりも大きい場合には、高粘度となる為に作業性の点で不都合な傾向がある。
【0083】
前記ポリオキシアルキレン系重合体(B1)の合成法としては、例えば、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、特開昭61−215623号に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物−ポルフィリン錯体触媒による重合法、特公昭46−27250号、特公昭59−15336号、米国特許3278457号、米国特許3278458号、米国特許3278459号、米国特許3427256号、米国特許3427334号、米国特許3427335号等に示される複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、特開平10−273512号に例示されるポリホスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法、特開平11−060722号に例示されるホスファゼン化合物からなる触媒を用いる重合法等、があげられるが、特に限定されるものではない。
【0084】
可塑剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また低分子可塑剤と高分子可塑剤を併用してもよい。なおこれら可塑剤は、重合体製造時に配合することも可能である。
【0085】
可塑剤の使用量は、(A)成分の重合体100重量部に対して5〜150重量部、好ましくは10〜120重量部、さらに好ましくは20〜100重量部である。5重量部未満では可塑剤としての効果が発現しなくなり、150重量部を越えると硬化物の機械強度が不足する。
【0086】
(A)成分および(B)成分以外の各種添加剤については、後述する。
【0087】
<<硬化性組成物>>
本発明の硬化性組成物においては、目的とする物性に応じて、(A)成分および(B)成分以外の各種の配合剤を添加することができる。
【0088】
<硬化触媒>
本発明の硬化性組成物には硬化触媒を添加することができる。具体例としては、2−エチルヘキサン酸錫、バーサチック酸錫、2−エチルヘキサン酸ビスマス等のカルボン酸金属塩;2−エチルヘキサン酸、バーサチック酸等のカルボン酸;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ビス(メチルマレエート)、ジブチル錫ビス(エチルマレエート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ビス(トリデシルマレエート)、ジブチル錫ビス(ベンジルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ビス(エチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ビス(ノニルフェノキサイド)、ジブテニル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(エチルアセトアセテート)、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫ジラウレート等のジアルキル錫ジカルボキシレートとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価の有機錫化合物;テトライソプロポキシチタニウム、テトラn−ブトキシチタニウム、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)などの有機チタネート類;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)などのジルコニウム化合物類;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族第一級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン、ブチルステアリルアミン等の脂肪族第二級アミン類;トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン等の脂肪族第三級アミン類;トリアリルアミン、オレイルアミン、などの脂肪族不飽和アミン類;ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミン等の芳香族アミン類;および、その他のアミン類として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ベンジルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−ラウリルオキシプロピルアミン、3−ジメチルアミノプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5(DBN)等が挙げられる。
【0089】
硬化触媒は(A)成分100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜7重量部、より好ましくは0.5〜4重量部の範囲で使用される。
【0090】
<シランカップリング剤>
本発明の硬化性組成物にはシランカップリング剤を添加することができる。具体例としては、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、(イソシアネートメチル)トリメトキシシラン、(イソシアネートメチル)ジメトキシメチルシラン、(イソシアネートメチル)トリエトキシシラン、(イソシアネートメチル)ジエトキシメチルシラン等のイソシアネート基含有シラン類;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−エチルアミノ)−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノメチルジエトキシメチルシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N,N‘−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン等のアミノ基含有シラン類;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン型シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン類;トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類等を挙げることができる。また、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステル等もシランカップリング剤として用いることができる。シランカップリング剤の反応物としては、上記アミノシランとエポキシシランの反応物、アミノシランとイソシアネートシランの反応物、各種シランカップリング剤の部分縮合体等を挙げる事ができる。
【0091】
シランカップリング剤は(A)成分100重量部に対して、0.1〜15重量部程度が好ましく、1〜10重量部程度がより好ましく、3〜7重量部程度が特に好ましい。配合量がこの範囲を下回ると、接着性や貯蔵安定性が十分ではない場合がある。一方、配合量がこの範囲を上回ると、深部硬化性が十分ではない場合がある。
【0092】
<充填剤>
本発明の硬化性組成物には充填剤を添加することができる。充填剤としては、フュームシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、およびカーボンブラックの如き補強性充填剤;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、PVC粉末、PMMA粉末など樹脂粉末の如き充填剤;石綿、ガラス繊維およびフィラメントの如き繊維状充填剤等が挙げられる。これらの中でも、コストおよび粘度の点から重質炭酸カルシウムや膠質炭酸カルシウムが好ましい。
【0093】
充填剤を使用する場合、その使用量は(A)成分の重合体100重量部に対して1〜250重量部が好ましく、さらに好ましくは10〜200重量部である。一方、充填剤は塗膜の水蒸気透過度を低下させる傾向があることから、使用量は(A)成分の重合体100重量部に対して10重量部以下であることが好ましく、1重量部以下がより好ましく実質的に使用しないことがさらにより好ましい。
【0094】
<垂れ防止剤>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて垂れを防止し、作業性を良くするためにチクソ性付与剤(垂れ防止剤)を添加しても良い。垂れ防止剤としては特に限定されないが、例えば、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類等が挙げられる。また、特開平11−349916号公報に記載されているような粒子径10〜500μmのゴム粉末や、特開2003−155389号公報に記載されているような有機質繊維を用いると、チクソ性が高く作業性の良好な硬化性組成物が得られる。これらチクソ性付与剤(垂れ防止剤)は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。チクソ性付与剤は反応性ケイ素基を有する重合体(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲で使用される。
【0095】
<その他各種添加剤>
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、たとえば、光硬化性物質、酸素硬化性物質、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、難燃剤、溶剤、硬化性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、防蟻剤、防かび剤などがあげられる。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。各種添加剤の具体例は、たとえば、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号、特開2001−72854号、特開2008−303650号の各公報などに記載されている。
【0096】
<硬化性組成物の調整方法>
本発明の硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1成分型として調製することも可能であり、硬化剤として別途硬化触媒、充填材、可塑剤、水等の成分を配合しておき、該配合材と硬化性組成物の主剤成分を使用前に混合する2成分型として調製することもできる。作業性の点からは、1成分型が好ましい。
【0097】
前記硬化性組成物が1成分型の場合、すべての配合成分が予め配合されるため、水分を含有する配合成分は予め脱水乾燥してから使用するか、また配合混練中に減圧などにより脱水するのが好ましい。前記硬化性組成物が2成分型の場合、反応性ケイ素基を有する重合体を含有する主剤に硬化触媒を配合する必要がないので配合剤中には若干の水分が含有されていてもゲル化の心配は少ないが、長期間の貯蔵安定性を必要とする場合には脱水乾燥するのが好ましい。脱水、乾燥方法としては粉状などの固状物の場合は加熱乾燥法、液状物の場合は減圧脱水法または合成ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲル、生石灰、酸化マグネシウムなどを使用した脱水法が好適である。また、イソシアネート化合物を少量配合してイソシアネート基と水とを反応させて脱水してもよい。また、3−エチル−2−メチル−2−(3−メチルブチル)−1,3−オキサゾリジンなどのオキサゾリジン化合物を配合して水と反応させて脱水してもよい。かかる脱水乾燥法に加えてメタノール、エタノールなどの低級アルコール;n−プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルシリケート、エチルシリケート、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物を添加することにより、さらに貯蔵安定性は向上する。
【0098】
脱水剤、特にビニルトリメトキシシランなどの水と反応し得るケイ素化合物の使用量は反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部の範囲が好ましい。
【0099】
本発明の硬化性組成物の調製法には特に限定はなく、例えば上記した成分を配合し、ミキサーやロールやニーダーなどを用いて常温または加熱下で混練したり、適した溶剤を少量使用して成分を溶解させ、混合したりするなどの通常の方法が採用されうる。
【0100】
本発明の硬化性組成物は、大気中に暴露されると水分の作用により、三次元的に網状組織を形成し、ゴム状硬化物へと硬化する。
【0101】
本発明の(A)成分である反応性ケイ素基を有する重合体は、比較的低粘度であるために、非水系および/または非溶剤系(または溶剤含有量が少ないハイソリッド系)で塗布可能な組成物を設計し易い。水系エマルジョン組成物は、低温時または高湿時には塗膜形成に長時間が必要で、寒冷時に施工し難いという問題から、本発明の硬化性組成物は、非水系の硬化性組成物であることが好ましい。更に、環境負荷低減の観点から、本発明の硬化性組成物は、非溶剤系(またはハイソリッド系)の硬化性組成物であることが好ましい。
【0102】
非水系の硬化性組成物とする場合、本発明の硬化性組成物中の水の含有量は、(A)成分100重量部に対し、10重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましく、0.1重量部以下が更に好ましく、実質的に水を含有しないことが最も好ましい。水の含有量がこの範囲を上回ると、貯蔵安定性が低下する傾向が有り、また塗膜物性が低下することがある。
【0103】
非溶剤系の硬化性組成物とする場合、本発明の硬化性組成物中の溶剤の含有量は、(A)成分100重量部に対し、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましく、1重量部以下が更に好ましく、0.1重量部以下が特に好ましく、実質的に含有しないことが最も好ましい。溶剤の含有量がこの範囲を上回ると、塗膜形成時のVOCが多くなり、環境への負荷が大きくなる傾向がある。
【0104】
また、本発明の硬化性組成物は、施工の簡便さ、混合不良や混合比率ミスによる塗膜性能の低下が無い事、などから1液型であることが好ましい。
【0105】
<建築用外装下地>
本発明の硬化性組成物を塗付する際の建築用外装下地としては、特に限定は無いが、具体的には、コンクリート、モルタル、ALC、石膏、サイディングボード、スレートなどの無機系下地や、無垢材、合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード、ファイバーボード、ランバーコアボード、単板積層材などの木質系下地、アスファルト、変性ビチューメン、EPDM、TPOなどの防水シート、ウレタンフォーム断熱材などの有機系下地、金属パネルなどの金属系下地が挙げられる。無機系下地または、木質系下地の方が、本願の建築用外装材の効果が出やすい為に好ましく、木質系下地はより好ましく、木質系下地の中でも、合板や配向性ストランドボードは更に好ましい。
【0106】
<硬化物の厚み>
本発明の硬化性組成物を硬化して得られる塗膜の厚みは、0.1〜3.0mmであることが好ましく、0.2〜2.0mmであることがより好ましく、0.3〜1.0mmであることが更に好ましく、0.4〜0.8mmであることが特に好ましい。塗膜の厚みがこの範囲を下回ると、塗膜の長期耐久性、防水性、引き裂き抵抗性等の塗膜物性が低下する傾向がある。塗膜の厚みがこの範囲を上回ると、透湿性が低下し、また、高コストになる傾向がある。
【0107】
<塗布方法>
本発明の硬化性組成物の塗付方法としては特に限定は無いが、特開平10−298488号公報に記載されているように、刷毛、ローラー、エアースプレー、エアレススプレーなどの公知の塗布方法により行うことができる。
【0108】
<水蒸気透過性(透湿性)>
本発明の硬化性組成物を硬化して得られる塗膜の水蒸気透過性は、以下の方法により評価することができる。本発明の硬化性組成物を厚みが均一なシート状に成型し、23℃相対湿度50%で3日間養生した後、更に50℃で4日間養生する。得られたシート状硬化物の厚みをマイクロメーターを用いて測定した後、JIS Z0208のカップ法に準拠して、条件B(温度40±0.5℃、相対湿度90±2%)で透湿度の値を測定する。ここで、透湿度の値は用いた材料の特性に依存するとともに評価したシートの厚みに依存する値である。また、全く同一の厚みにシートを成型することは困難である。従って、用いた材料の透湿性を表し、かつ、シートの厚みにほぼ依存しない値として、シート状硬化物の透湿度の値[β](単位:g/m2・24h)とシート状硬化物の厚み[α](単位:mm)から計算された[α×β×0.209×10-10」(単位:g・cm/cm2・sec・cmHg)の値を、本発明では、水蒸気透過性を表す値と定義する。
【0109】
本発明の硬化性組成物を硬化して得られる塗膜の水蒸気透過性は、70×10-10g・cm/cm2・sec・cmHg以上であることが好ましく、80×10-10g・cm/cm2・sec・cmHg以上であることがより好ましく、100×10-10g・cm/cm2・sec・cmHg以上であることが更に好ましく、120×10-10g・cm/cm2・sec・cmHg以上であることが特に好ましく、150×10-10g・cm/cm2・sec・cmHg以上であることが最も好ましい。塗膜の水蒸気透過性がこの範囲を下回ると、塗布した下地材からの水蒸気の透過が十分ではなく、下地材周辺で結露が発生したり、カビが発生するなどの課題が生じる場合がある。
【0110】
<<用途>>
(A)成分である反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体および/または(メタ)アクリル酸エステル系重合体は比較的低粘度である為、本発明の硬化性組成物を建築用外装下地に塗布した建築用外装材は、水蒸気透過性が高く、かつ、外部からの水の侵入を防ぐ為の十分な防水性を有する。従って、本発明の硬化性組成物は、建物用の防水材として有用で、特に、透湿性塗膜防水材として有用である。透湿性塗膜防水材とは、硬化前は液状で、ハケやヘラ、ローラーなどで下地に塗布するか、あるいは吹付機により施工して成膜・硬化させ、シームレスな防水層を形成する防水材であって、硬化した塗膜は水蒸気透過性を有するために、下地からの水分を外部に放出することが可能な塗膜防水材である。塗膜防水材は、(1)シームレスな塗膜を形成するので、継ぎ目がなく防水の信頼性が高い、(2)複雑な形状の部位にも対応できる、等の特長がある。
【0111】
従来の透湿性防水シートは、その高い透湿性・防水性を活用し、外壁下地に施工することによって、外部からの雨水などのバルクの水分の侵入を防ぎつつ、外装壁材からの水蒸気を外部に放出することによって外装壁材の結露を防止する防水材として、各種の商業ビルや集合住宅、戸建て住宅などに多く使用されており、特に外壁通気工法を採用する建物において多く使用されている。しかし、透湿性防水シートの重ね合わせ部は釘や粘着テープが使用されるため、長期間の間に釘穴や粘着テープの隙間から水分が浸入し、鉄骨や木材などの各種建築基材にダメージを与えることがある。透湿性防水シートの重ね合わせ部の隙間を通して入る外部空気に含まれる水蒸気及び該水蒸気が凝縮して生じた水分もまた、各種建築基材に大きなダメージを与える。これ以外にも、外部空気が隙間を通して内部へ入ることで建物内部の温度が変化し易くなり、温度調節の効率が低下し、エネルギーロスを引き起こしたりしている。本発明の硬化性組成物は、液状塗布可能であるために容易にシームレスな塗膜を形成することができ、外部からの水分や空気の浸入を十分に防止できることから、建物の外壁下地用塗膜防水材として特に有用である。
【0112】
本発明の硬化性組成物を外壁下地へ塗付し硬化させた後には、各種の外装仕上げ材が施工される。外装の仕上げ方に特に限定はないが、例えば、内断熱工法の場合、本発明の硬化性組成物を外壁下地へ塗布して硬化させた後、スタッコや塗料、レンガ、タイル、石材、サイディングボード、金属パネルなどを施工して仕上げる方法が好ましい。また、外断熱工法の場合、本発明の硬化性組成物を外壁下地へ塗布して硬化させた後、断熱ボードを敷設してからスタッコや塗料、レンガ、タイル、石材、サイディングボード、金属パネルなどを施工して仕上げる方法が好ましい。
【0113】
また、窓やドアなどの建物の開口部周辺(サッシ下端や窓枠周囲など)の防水は、形状が複雑であるために、防水の難易度が高く、漏水のクレームの多くが開口部周辺で発生している。本発明の硬化性組成物は、液状塗布可能であるために複雑な形状に対応しやすく、硬化後の塗膜は十分な防水性と透湿性を示すことから、建物の開口部周辺用透湿性塗膜防水材として特に有用である。又、本発明の硬化性組成物は、ダクト周り、壁手すりや、手すりコーナー等にも有用である。
【0114】
本発明の硬化性組成物を建物の開口部周辺に塗付し硬化させた後には、各種の窓やドア、ダクトなどがその開口部へ組み込まれる。
【0115】
更に、本発明の硬化性組成物は、継ぎ目がない塗膜を形成するので防水の信頼性が高いことから、高い防水性能を必要とする屋根用透湿性塗膜防水材として特に有用である。建物の屋根用透湿性塗膜防水材は、野地板などの屋根用下地材に塗布する防水材である。
【0116】
以上のように、本発明の硬化性組成物は、(1)硬化塗膜が高い水蒸気透過性を有する為に、外部からの雨水などのバルクの水分の侵入を防ぎつつ、建築用外装下地からの水蒸気を外部に放出することによって外装材の結露を防止する防水材として有効に機能する。(2)作業性の良好な塗膜防水材として使用できる為、複雑な形状の部位にも施工でき、継ぎ目がなく防水信頼性が高いシームレスな塗膜を形成する。
【0117】
従って、本発明の硬化性組成物を建築用外装下地に塗布した建築用外装材を用いると、建物を効果的に防水することができ、建物の防水方法として優れている。
【0118】
特に、本発明の建築用外装材を外壁に用い、建築用外装壁材として使用した場合に、本発明の効果が顕著であるために好ましい。
【0119】
前述の通り、本発明の建築用外装材を壁面に使用すると、下地材側に溜まった水分を外部に逃がすことができ、木材や鉄骨の腐食による建物の老朽化やカビ発生による室内空気の汚染を防ぐことができる為、建物の外壁の防水方法として優れている。
【0120】
また、本発明の硬化性組成物は、建物の開口部周辺などの複雑な形状の部位に対しても、継ぎ目や隙間無く防水できる為に、本発明の建築用外装材は、建物の開口部周辺の防水方法として優れている。
【0121】
更に、本発明の硬化性組成物は、継ぎ目や隙間無く防水できる為に、特に高い防水性能を必要とする屋根に有効であり、本発明の建築用外装材は、建物の屋根の防水方法として優れている。
【実施例】
【0122】
つぎに実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0123】
下記合成例中、「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。送液システムとして東ソー製HLC−8120GPCを用い、カラムは東ソー製TSK−GEL Hタイプを用い、溶媒はTHFを用いて測定した。
【0124】
本発明におけるビニル系重合体の合成例を以下に示す。
【0125】
(合成例1)
ニューポールPE−64 (三洋化成製、オキシエチレンの繰り返し単位とオキシプロピレンの繰り返し単位のモル比率が25/30であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、水酸基価=36)91.3gと、イソホロンジイソシアネート:8.7gを、ネオスタンU−360(日東化成製、S基含有有機錫化合物)0.01gを触媒として、100℃で5時間反応させウレタンプレポリマーを得た。その後、50℃に冷却し、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製)3.9gを添加し、100℃で5時間反応させ、イソシアネート吸収帯がIRスペクトルで消失した事を確認した。得られたトリエトキシシリル基末端ポリオキシアルキレン系重合体(A−1)の数平均分子量は6,370であった。オキシエチレンの繰り返し単位の重量は、得られた重合体(A−1)の全重量の35wt%であった。また、オキシプロピレンの繰り返し単位の重量は、得られた重合体(A−1)の全重量の56wt%であった。
【0126】
(合成例2)
ニューポールPE−64:44.8gと、サンニックスPP−2000(三洋化成製、ポリオキシプロピレングリコール、水酸基価=56)44.8gと、イソホロンジイソシアネート:10.4gを、ネオスタンU−360:0.01gを触媒として、100℃で5時間反応させウレタンプレポリマーを得た。その後、50℃に冷却し、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン:3.9gを添加し、100℃で5時間反応させ、イソシアネート吸収帯がIRスペクトルで消失した事を確認した。得られたトリエトキシシリル基末端ポリオキシアルキレン系重合体(A−2)の数平均分子量は6,400であった。オキシエチレンの繰り返し単位の重量は、得られた重合体(A−2)の全重量の17wt%であった。また、オキシプロピレンの繰り返し単位の重量は、得られた重合体(A−2)の全重量の72wt%であった。
【0127】
(比較合成例1)
サンニックスPP−2000:88.0gと、イソホロンジイソシアネート:12.0gを、ネオスタンU−360:0.01gを触媒として、100℃で5時間反応させウレタンプレポリマーを得た。その後、50℃に冷却し、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン:3.9gを添加し、100℃で5時間反応させ、イソシアネート吸収帯がIRスペクトルで消失した事を確認した。得られたトリエトキシシリル基末端ポリオキシアルキレン系重合体(A−3)の数平均分子量は6,610であった。オキシプロピレンの繰り返し単位の重量は、得られた重合体(A−3)の全重量の88wt%であった。
【0128】
(比較合成例2)
PEG−2000(三洋化成製、ポリオキシエチレングリコール、水酸基価=56)88.0gと、イソホロンジイソシアネート:12.0gを、ネオスタンU−360:0.01gを触媒として、100℃で5時間反応させウレタンプレポリマーを得た。その後、50℃に冷却し、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン:3.9gを添加し、100℃で5時間反応させて得られた重合体は、室温で固状であり、取扱い難いポリマーであった。オキシエチレンの繰り返し単位の重量は、得られた重合体の全重量の88wt%であった。
【0129】
(実施例1〜5、比較例1〜3)
表1に示す処方にしたがって、(A)成分、可塑剤、脱水剤、接着付与剤および硬化触媒などをそれぞれ計量し、ミキサーを用いて、脱水条件下にて実質的に水分の存在しない状態で混練した後、防湿性の容器に密閉し、1液型硬化性組成物を得た。表1の1液型組成物は、使用時に各容器から各1液型組成物を吐出し、後述の評価を行った。
【0130】
なお、(A)成分以外の各種配合剤は、以下に示すものを使用した。
<可塑剤>Jayflex DINP(エクソンモービルケミカル製、ジイソノニルフタレート)、サンニックスPP−1000(三洋化成製、ポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量:1,000)、ニューポール50HB−260(三洋化成製、オキシエチレンの繰り返し単位とオキシプロピレンの繰り返し単位のモル比率が10/7であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテルモノオール)
<脱水剤>A-171(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製、ビニルトリメトキシシラン)
<接着性付与剤>A−1120(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)
<硬化触媒>ネオスタンU-220H(日東化成製、ジブチルスズビスアセチルアセトナート)
(硬化後塗膜表面への可塑剤の移行)
表1の各組成物を、テトラフルオロエチレンフィルム上に塗布し、厚さ約1mmとなるようにスペーサーと平スパチュラで調整した後、恒温恒湿室(23℃/50%RH)で3日間、そして50℃オーブン中で4日間、養生し、塗膜状の硬化物を得た。40℃/90%RHの条件下で24時間放置し、塗膜表面への可塑剤の移行を目視と指触で評価した。結果を表1に示す。
【0131】
(硬化塗膜の引張試験)
表1の各組成物を、ポリエチレン製の型枠に気泡が入らないように注意深く流し込み、23℃で3日間、さらに50℃で4日間養生させて厚さ2mmの硬化塗膜を得た。得られた硬化塗膜から3号ダンベルを打ち抜き、23℃50%RHで引張試験(引張速度200mm/分)を行い、100%伸張時応力(M100)、破断時応力(Tb)、破断時伸び(Eb)を調べた。結果を表1に示す。
【0132】
(硬化塗膜の透湿性)
表1の各組成物を、テトラフルオロエチレンフィルム上に塗布し、スペーサーと平スパチュラで厚みを調整した後、恒温恒湿室(23℃/50%RH)で3日間、そして50℃オーブン中で4日間養生し、表1に示す厚みの塗膜を作成した。得られた塗膜の厚みを測定し、JIS Z0208に準じて透湿度を評価した。また、水蒸気透過係数(単位:g・cm/cm2・sec・cmHg)は、塗膜厚み(A,単位:mm)と透湿度(B,単位:g/m2・24h)の値から、次式に従って算出した。
<水蒸気透過係数>=<厚み>×<透湿度>×0.209×10-10
結果を表1に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
表1に示すとおり、主鎖骨格にオキシエチレンの繰り返し単位を有するポリオキシアルキレン系重合体であるA−1やA−2を用いた実施例1〜5の硬化性組成物を硬化して得られた塗膜は、何れも高い水蒸気透過係数を示した。一方、主鎖骨格にオキシエチレンの繰り返し単位を有しないポリオキシアルキレン系重合体であるA−3を用いた比較例1〜3の硬化性組成物を硬化して得られた塗膜は、低い水蒸気透過係数、あるいは、硬化後塗膜表面への可塑剤の移行が見られた。また、引張物性値は、A−1を使用した実施例1〜3の硬化塗膜が、より高いTbを示した。
【0135】
次に、実施例1〜5と比較例1〜2の各組成物を、厚み5mmの木質下地の片面の全面に、厚み0.5mmとなるように塗布し、23℃/50%RHで3日、50℃で4日養生し、建築用外装材を作成した。得られた壁材の被塗布面に、それぞれ同一量の水をかけて湿らせ、その塗布面を壁材と同サイズのガラス板でカバーした。壁材とガラス板をクリップで固定し、その端部周囲を非透湿性のシーリング材で封止した。得られた壁材/ガラス積層体を、塗布面を上にして、恒温恒湿室(23℃/50%RH)で放置した。ガラス越しに合板の乾燥状態を経時で確認した。その結果、表1で算出された水蒸気透過係数の高い組成物を塗布した壁材ほど、より短時間で乾燥する事を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0136】
(A)成分である反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体および/または(メタ)アクリル酸エステル系重合体は比較的低粘度である為、本発明の硬化性組成物を建築用外装下地に塗布した建築用外装材は、水蒸気透過性が高く、かつ、外部からの水の侵入を防ぐ為の十分な防水性を有する。従って、本発明の硬化性組成物は、建物用の防水材として有用で、特に、透湿性塗膜防水材として有用である。