(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記下層膜は、露光光に含まれる代表波長に対し2〜90%の透過率をもち、かつ、前記代表波長に対する位相シフト量が略180°であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトマスク。
前記下層膜は、露光光に含まれる代表波長に対し2〜60%の透過率をもち、かつ、前記代表波長に対する位相シフト量が0°を越え90°以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトマスク。
前記ラインアンドスペースパターンは、前記遮光部のエッジに隣接し、前記遮光部を中心として対称に形成された第1半透光部と第2半透光部とを有するラインパターンを含むことを特徴とする請求項5に記載のフォトマスク。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、フラットパネルディスプレイの配線パターンの微細化が望まれている。そしてこうした微細化は、フラットパネルディスプレイの明るさの向上、反応速度の向上といった画像品質の高度化のみならず、省エネルギーの観点からも、有利な点があることに関係する。これに伴い、フラットパネルディスプレイの製造に用いられるフォトマスクにも、微細な線幅精度の要求が高まることとなる。しかし、フォトマスクの転写用パターンを単純に微細化することによって、フラットパネルディスプレイの配線パターンを微細化しようとすることは容易ではない。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、微細かつ高精度な転写用パターンを備えるフォトマスク、その製造方法、係るフォトマスクを用いたパターン転写方法、及びフラットパネルディスプレイの製造方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、
透明基板上に形成された下層膜及び上層膜がそれぞれパターニングされた転写用パターンを備えたフォトマスクの製造方法であって、
透明基板上に、下層膜、上層膜が積層して形成されたフォトマスクブランクを用意する工程と、
前記上層膜の上に形成されたレジストパターンをマスクとして前記上層膜をエッチングする上層膜予備エッチング工程と、
少なくともエッチングされた前記上層膜をマスクとして前記下層膜をエッチングし、下層膜パターンを形成する下層膜パターニング工程と、
少なくとも前記レジストパターンをマスクとして前記上層膜をサイドエッチングし、上層膜パターンを形成する上層膜パターニング工程と、
を有するフォトマスクの製造方法が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、
前記下層膜は、前記転写用パターンを被転写体に転写するときに用いる露光光を一部透過する半透光膜であり、前記上層膜は、前記露光光を実質的に遮光する遮光膜である第1の態様に記載のフォトマスクの製造方法が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、
前記転写用パターンは、前記透明基板が露出した透光部と、前記透明基板上に下層膜と上層膜が積層して形成された遮光部と、前記透明基板上に下層膜が形成され、上層膜が無い半透光部と、を備える第1又は第2の態様に記載のフォトマスクの製造方法が提供される。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、
前記転写用パターンは、前記遮光部のエッジに隣接して形成された線幅0.1μm〜1.0μmの前記半透光部を有する第1〜第3のいずれかの態様に記載のフォトマスクの製造方法が提供される。
【0010】
本発明の第5の態様によれば、
前記下層膜は、露光光に含まれる代表波長に対し2〜90%の透過率をもち、かつ、前記代表波長に対する位相シフト量が略180°である第1〜第4のいずれかの態様に記載のフォトマスクの製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第6の態様によれば、
前記下層膜は、露光光に含まれる代表波長に対し2〜60%の透過率をもち、かつ、前記代表波長に対する位相シフト量が0°を越え90°以下である第1〜第4のいずれかの態様に記載のフォトマスクの製造方法が提供される。
【0012】
本発明の第7の態様によれば、
前記上層膜パターニング工程と、前記上層膜予備エッチング工程とにおいて、同一のエッチャントを用いたウェットエッチングを実施する第1〜第5のいずれかの態様に記載のフォトマスクの製造方法が提供される。
【0013】
本発明の第8の態様によれば、
透明基板上の下層膜及び上層膜がそれぞれパターニングされて形成された透光部、遮光部、半透光部を含む転写用パターンを備えたフォトマスクであって、
前記透光部は、前記透明基板が露出してなり、
前記遮光部は、前記透明基板上において、前記下層膜上に上層膜が積層して形成されてなり、
前記半透光部は、前記透明基板上に前記下層膜が形成されてなり、かつ、前記遮光部のエッジに隣接して形成された1.0μm以下の一定線幅の部分を有するフォトマスクが提供される。
【0014】
本発明の第9の態様によれば、
透明基板上の下層膜及び上層膜がそれぞれパターニングされて形成された透光部、遮光部、半透光部を含む転写用パターンを備えたフォトマスクであって、
前記透光部は、前記透明基板が露出してなり、
前記遮光部は、前記透明基板上において、前記下層膜上に上層膜が積層して形成されてなり、
前記半透光部は、前記透明基板上に前記下層膜が形成されてなり、かつ、前記遮光部の第1のエッジに隣接して形成された第1半透光部と、前記遮光部の前記第1のエッジに対向する第2のエッジに隣接して形成された第2半透光部と、をそれぞれ有し、
前記第1半透光部の線幅と前記第2半透光部の線幅との差が0.1μm以下であるフォトマスクが提供される。
【0015】
本発明の第10の態様によれば、
前記下層膜は、露光光に含まれる代表波長に対し2〜90%の透過率をもち、かつ、前記代表波長に対する位相シフト量が略180°である第8又は第9に記載のフォトマスクが提供される。
【0016】
本発明の第11の態様によれば、
前記下層膜は、露光光に含まれる代表波長に対し2〜60%の透過率をもち、かつ、前記代表波長に対する位相シフト量が0°を越え90°以下である第8又は第9に記載のフォトマスクが提供される。
【0017】
本発明の第12の態様によれば、
第1〜7のいずれかの態様に記載の製造方法によるフォトマスク、又は第8〜10のいずれかの態様に記載のフォトマスクを用い、i線、h線、g線のいずれかを含む露光光源を有する露光装置により、被転写体上に前記転写用パターンを転写するパターン転写方法が提供される。
【0018】
本発明の第13の態様によれば、
第1〜7のいずれかの態様に記載の製造方法によるフォトマスク、又は第8〜10のいずれかの態様に記載のフォトマスクを用い、i線、h線、g線のいずれかを含む露光光源を有する露光装置により、被転写体上に前記転写用パターンを転写する工程を有するフラットパネルディスプレイの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、微細かつ高精度な転写用パターンを備えるフォトマスク、その製造方法、係るフォトマスクを用いたパターン転写方法、及びフラットパネルディスプレイの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
先行文献1に記載の位相シフトマスクの製造方法は、透明基板上の遮光層をパターニングし、この遮光層を被覆するように透明基板上に位相シフト層を形成し、この位相シフト層をパターニングするというものである。先行文献1に開示された製造工程を
図1に示す。
【0022】
まず、透明基板10上に遮光層11が形成され(
図1(A))、次に、遮光層11の上にフォトレジスト層12が形成される(
図1(B))。続いて、フォトレジスト層12を露光及び現像することで、遮光層11の上にレジストパターン12P1が形成される(
図1(C))。レジストパターン12P1をエッチングマスクとして用い、遮光層11が所定のパターン形状にエッチングされる。これにより、透明基板10上に所定形状にパターニングされた遮光層パターン11P1が形成される(
図1(D))。レジストパターン12P1を除去した後(
図1(E))、位相シフト層13が形成される。位相シフト層13は、透明基板10の上に遮光層パターン11P1を被覆するように形成される(
図1(F))。
【0023】
続いて、位相シフト層13の上にフォトレジスト層14が形成される(
図1(G))。次に、フォトレジスト層14を露光及び現像することで、位相シフト層13の上にレジストパターン14P1が形成される(
図1(H))。レジストパターン14P1をエッチングマスクとして用い、位相シフト層13が所定のパターン形状にエッチングされる。これにより、透明基板10上に所定形状にパターニングされた位相シフト層パターン13P1が形成される(
図1(I))。
【0024】
位相シフト層パターン13P1の形成後、レジストパターン14P1は除去される(
図1(J))。以上のようにして、遮光層パターン11P1の周囲に位相シフト層パターン13P1が形成された位相シフトマスク1が製造される。
【0025】
しかしながら、本発明者らの検討によると、この方法で高精度のフォトマスクを製造しようとするとき、以下のような課題が生じることがある。すなわち、フォトレジスト層12の露光(つまり第1の描画工程(
図1(C))と、フォトレジスト層14の露光(つまり第2の描画工程(
図1(H))との間において、相互のアライメントずれをゼロとすることは不可能である。このため、遮光層パターン11P1と位相シフト層パターン13P1との間にアライメントずれが発生してしまうことがある。
【0026】
図2は、
図1(J)に記載した位相シフトマスク1の部分拡大図(破線部分の拡大図)である。上記のアライメントずれが発生した場合、
図2に示す寸法Aと寸法Bとが異なってしまう。すなわち、線幅方向において、位相シフト層の機能が非対称となってしまう。場合によっては、このパターンにおいて、線幅方向の一方には位相シフト効果が強く現われ、他方には位相シフト効果が殆ど現れない転写像(フォトマスクを透過した光による光強度分布)が生じてしまうことがある。このような転写用パターンを持つフォトマスクを用いてフラットパネルディスプレイを製造すると、線幅の制御が失われ、精度の高い回路パターンが得られなくなってしまう。
【0027】
複数回のフォトリソグラフィ工程を経て製造されるフォトマスクにおいて、複数回のパターニングを共通のアライメントマーク等を参照しながら行うことにより、極力ずれを排除する努力を行うことができる。しかしながら、アライメントずれを0.5μm以下とすることは容易ではない。このようなアライメントずれによる線幅ばらつきは、微細線幅(例えば1.0μm以下)のパターンにおいては極めて深刻であるし、0.5μm以下の線幅をもつパターンは安定して形成することができない状況となる。
【0028】
そこで、本発明者らは、微細線幅であっても、線幅制御が精緻に行えるフォトマスクの製造方法について検討した。以下に、本発明の一実施形態について説明する。
【0029】
(フォトマスクの製造方法)
まず、本発明の一実施形態に係るフォトマスク100の製造方法を説明する。
【0030】
本実施形態に係るフォトマスク100の製造方法は、
図3に例示するように、
透明基板10上に形成された下層膜20及び上層膜30がそれぞれパターニングされた転写用パターンを備えたフォトマスク100の製造方法であって、
透明基板10上に、下層膜20、上層膜30が形成されたフォトマスクブランク100bを用意する工程と、
上層膜30の上に形成されたレジストパターン40pをマスクとして上層膜30をエッチングする上層膜予備エッチング工程と、
レジストパターン40p又はエッチングされた上層膜30aをマスクとして、下層膜20をエッチングし、下層膜パターン20pを形成する下層膜パターニング工程と、
レジストパターン40pをマスクとして上層膜30aをサイドエッチングし、上層膜パターン30pを形成する上層膜パターニング工程と、を有する。
【0031】
ここで、透明基板10としては、表面を研磨した石英ガラス基板などが用いられる。大きさは特に制限されず、当該マスクを用いて露光する基板(例えばフラットパネルディスプレイ用基板など)や、用途に応じて適宜選定される。例えば一辺300mm以上の矩形基板が用いられる。
【0032】
本実施形態では、この透明基板10上に、下層膜20、上層膜30がこの順に積層されたフォトマスクブランク100bを用意する。
【0033】
上層膜30と下層膜20とは、それぞれのエッチャント(エッチング液、又はエッチングガス)に対して耐性をもつ素材であることが好ましい。なお、上層膜30に対しては後述する上層膜パターニング工程にてサイドエッチングを行うことから、上層膜30の素材としては、等方性エッチングの傾向が大きいウェットエッチングに適した素材を用いることが好ましい。
【0034】
また、下層膜20は、本実施形態のフォトマスク100を露光機に搭載して露光する際に、その露光光を一部透過する半透光膜であることが好ましい。下層膜20の具体的な素材を例示すると、Cr化合物(Crの酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物など)、Si化合物(SiO
2、SOG)、金属シリサイド化合物(TaSi、MoSi、WSi又はそれらの窒化物、酸窒化物など)等を挙げることができる。
【0035】
上層膜30の具体的な素材を例示すると、Cr又はCr化合物(Crの酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物など)の他、Ta、W又はそれらの化合物(上記金属シリサイドを含む)等を挙げることができる。
【0036】
上層膜30と下層膜20とは、積層した状態で、露光光を実質的に透過しない(光学濃度ODが3以上)ものとすることが好ましいが、フォトマスク100の用途によっては、露光光の一部を透過する(例えば透過率≦20%)ものとすることもできる。本実施形態においては、一例として、上層膜30は光学濃度(OD)3以上の遮光膜であり、下層膜20は露光光を一部透過する半透光膜であるものとして説明する。なお、下層膜20の好ましい透過率範囲、及び位相シフト特性については後述する。
【0037】
なお、本発明の製造方法を適用できる層構成であれば、上記の上層膜30、下層膜20の他に、透明基板10上に他の膜が形成される場合を排除しない。例えば、上層膜30と下層膜20との界面にエッチングストッパ膜等の他の膜が形成されていてもよく、上層膜30の上面に他の膜が形成されていてもよく、下層膜20の下面に他の膜が形成されていてもよい。
【0038】
下層膜20、上層膜30が形成されたフォトマスクブランク100bは、上層膜30の上に更にレジスト膜40を塗布し、レジスト付きのフォトマスクブランクとして用いる。そして、このブランクのレジスト膜40に対し、描画機を用いて所定のパターンを描画する(
図3(A))。レジスト膜はポジ型でもネガ型でも良いが、本態様ではポジ型で説明する。
【0039】
次いで、レジスト膜40を現像し、レジストパターン40pを形成する(
図3(B))。
【0040】
そして、このレジストパターン40pをマスクとして、上層膜30を予備的にエッチングする工程(上層膜予備エッチング工程)を実施する(
図3(C))。この予備的にエッチングされた上層膜30を、
図3では上層膜30aとしている。上層膜30がCr系遮光膜である場合には、クロム用エッチャントとして知られる硝酸第2セリウムアンモニウムを含むエッチング液を使用できる。なお、塩素系ガスのエッチングガスを用いたドライエッチングを適用しても構わない。このCr系遮光膜は表面にCr化合物による反射防止層をもつ構成でもよい。
【0041】
この後、レジストパターン40pを除去せずに、レジストパターン40pと、予備的にエッチングされた上層膜30aをマスクとして用い、下層膜20を続けてエッチングする工程(下層膜パターニング工程)を実施する(
図3(D))。下層膜20がMoSi系の材料である場合には、弗化水素酸、珪弗化水素酸、弗化水素アンモニウムなどのフッ素化合物に、過酸化水素、硝酸、硫酸などの酸化剤を添加したエッチング液を使用することができる。なお、フッ素系のエッチングガスを用いたドライエッチングを適用しても構わない。
【0042】
次に、レジストパターン40pを除去せずに、再度、上層膜30aをサイドエッチングする工程(上層膜パターニング工程)を行う。ここでは、上述のクロム用ウェットエッチャントを使用することができる。ウェットエッチングは、等方的に対象の膜をエッチングする傾向があるので、上層膜30aは、レジストパターン40pの下で水平方向にエッジ部分が溶出する(
図3(E))。
【0043】
なお、このサイドエッチング工程(上層膜パターニング工程)にはウェットエッチングを適用し、それ以外のエッチング工程に、ドライエッチングを適用しても構わない。好ましくは、エッチング工程では、すべてウェットエッチングを適用することが、設備上便宜的である。
【0044】
上層膜パターニング工程の後、レジストパターン40pを除去することで、本実施形態に係るフォトマスク100の製造が完了する(
図3(F))。
【0045】
(フォトマスクの構成)
続いて、上述の手法により製造されたフォトマスク100の構成を説明する。
図4(A)は本実施形態に係るフォトマスク100の断面拡大図を、
図4(B)はその上面SEM画像(部分拡大図)をそれぞれ示す。
【0046】
図4に示すように、本実施形態に係るフォトマスク100は、透明基板10上の下層膜20及び上層膜30がそれぞれパターニングされて形成された透光部103、遮光部102、半透光部101a,101bを含む転写用パターンを備えたフォトマスク100であって、
透光部103は、透明基板10が露出してなり、
遮光部102は、透明基板10上において、下層膜20(下層膜パターン20p)上に上層膜30(上層膜パターン30p)が積層して形成されてなり、
半透光部101a,101bは、透明基板10上に下層膜20(下層膜パターン20p)が形成されてなり、かつ、遮光部102のエッジに隣接して形成された1.0μm以下の一定線幅の部分を有することを特徴とする。
【0047】
なお、上記一定幅に特に制約は無いが、例えば0.1〜1.0μm程度の微細線幅であることが有利である。
【0048】
また、
図4に示すように、本実施形態に係るフォトマスク100は、上層膜パターン30pが下層膜パターン20pの水平方向中央に位置している。そして、上層膜パターン30pのエッジに隣接して、下層膜パターン20pの一部が一定の幅で露出している。
【0049】
本発明のフォトマスク100は以下の態様を含む。つまり、
「透明基板10上の下層膜20及び上層膜30がそれぞれパターニングされて形成された透光部103、遮光部102、半透光部101a,101bを含む転写用パターンを備えたフォトマスク100であって、
透光部103は、透明基板10が露出してなり、
遮光部102は、透明基板10上において、下層膜20(下層膜パターン20p)上に上層膜30(上層膜パターン30p)が積層して形成されてなり、
半透光部101a,101bは、透明基板10上に上層膜30(上層膜パターン30p)が形成されてなり、かつ、遮光部102の第1のエッジに隣接して形成された第1半透光部101aと、遮光部102の第1のエッジに対向する第2のエッジに隣接して形成された第2半透光部101bと、をそれぞれ有し、
第1半透光部101aの線幅と第2半透光部101bの線幅との差が0.1μm以下であることを特徴とするフォトマスク100」。
【0050】
より好ましくは、第1半透光部101aの線幅と第2半透光部101bの線幅との差が、0.01μm以上、0.1μm以下である。
【0051】
或いは、以下の態様も含む。つまり、
「透明基板10上の下層膜20及び上層膜30がそれぞれパターニングされて形成された透光部103、遮光部102、半透光部101a,101bを含む転写用パターンを備えたフォトマスク100であって、
透光部103は、透明基板10が露出してなり、
遮光部102は、透明基板10上において、下層膜20(下層膜パターン20p)上に上層膜30(上層膜パターン30p)が積層して形成されてなり、
半透光部101a,101bは、透明基板10上に上層膜30(上層膜パターン30p)が形成されてなり、かつ、透光部103の第1のエッジに隣接して形成された第1半透光部101aと、透光部103の第1のエッジに対向する第2のエッジに隣接して形成された第2半透光部101bと、をそれぞれ有し、
第1半透光部101aの線幅と第2半透光部101bの線幅との差が0.1μm以下であることを特徴とするフォトマスク100」と表現することもできる。
【0052】
つまり、半透光部101a,101bは、遮光部102のエッジに隣接するとともに、透光部103のエッジに隣接している。この場合も、上記と同様に、第1半透光部101aの線幅と第2半透光部101bの線幅の差が、例えば0.01μm以上、0.1μm以下であることが好ましい。
【0053】
図4(A)に、所定の遮光部102における対向する2つのエッジのそれぞれに隣接して、半透光部101a,101bが形成されている様子を示す。これらを第1半透光部101a、第2半透光部101bとすると、これらは遮光部102を中心に対称に形成され、線幅の不一致が実質的に防止されている。すなわち、第1半透光部101aの線幅に対して、第2半透光部101bの線幅のずれは0.1μm以内とすることができる。より好ましくは、0.05μm以内とすることができる。また、フォトマスク100が備える転写用パターンの全体において、半透光部101a,101bの線幅精度を、上記範囲内とすることが可能である。従って、第1半透光部101aの線幅と第2半透光部101bの線幅とが、いずれも1.0μm以下(0.1〜1.0μm)であるときに、本実施形態の効果が顕著となる。
【0054】
ここで、転写用パターンの形状、すなわち上層膜パターン30pと下層膜パターン20pの形状は、フォトマスク100の用途に応じて決定すれば良い。例えば、
図5のようなラインアンドスペースパターンや、
図6のようなホールパターンを転写用パターンとして備えるフォトマスク100を製造する際に、本実施形態は有利に適用できる。
図5に示すように、ラインアンドスペースパターンの場合は、ラインパターンの中央に遮光部102が配置され、ラインパターンのエッジ部分、つまりスペースパターンとの境界部分に、細い一定幅の半透光部101a,101bが形成されている。
図6に示すように、ホールパターンの場合には、遮光部102に開口したホールのエッジに一定幅の半透光部101a,101bが形成されている。
【0055】
下層膜パターン20pの一部が露出している部分の幅は、上層膜パターン30pの線幅の1/2以下であれば良い。但し、上述のようにこの部分の幅が0.1μmから1.0μmであるときに、本実施形態の効果が顕著となる。特に、下層膜パターン20pの露出部分の幅(下層膜20を半透光膜とするとき、この部分がフォトマスク100における半透光部101a,101bの線幅となる)が1.0μm以下の時に、本実施形態の効果が顕著となる。このような寸法は、上述した先行文献の方法などの従来方法では、均一に得ることが難しい寸法だからである。また、この部分の幅が0.1μm以上であるときに、フォトマスク100の転写用パターンとしての光学的な機能が有利に発揮される。
【0056】
(位相シフト型マスクとして用いる場合)
下層膜20を位相シフト膜、上層膜30を遮光膜として構成した場合、本実施形態に係るフォトマスク100は位相シフトマスクとして用いることができる。このとき、下層膜20は、露光光に含まれる代表波長に対して例えば2〜90%の透過率を有する膜とし、好ましくは2〜60%、更に好ましくは2〜30%の透過率を有する膜とする。また、前記代表波長に対する位相シフト量が略180°となるような膜とするのが好ましい。略180°とは、180±30°であることをいう。より好ましくは、180°±10°とする。
【0057】
上記の位相シフトマスクにおいては、透光部103を透過する光(上記代表波長の光)の位相と、透明基板10上に下層膜20(下層膜パターン20p)が形成されてなる半透光部101a,101bを透過する光(上記代表波長の光)の位相とを、略180°ずらすことで、半透光部101a,101bと透光部103との境界において、光の相互干渉を起こさせることができ、転写像のコントラストを向上させることができる。上記半透光部101a,101bを通る光の位相シフト量φ(rad)は、そこに使用された下層膜20の屈折率(複素屈折率実部)nと膜厚dとに依存し、下記式(1)の関係が成り立つ。
【0058】
φ = 2πd(n−1)/λ ・・・(1)
ここでλは露光光の波長である。
【0059】
したがって、位相を180°ずらすためには、半透光膜の膜厚dを
d = λ/{2(n−1)} ・・・(2)
とすればよい。そして、この位相シフトマスクにより、必要な解像度を得るための焦点深度の増大が達成され、露光波長を変えずに解像度とプロセス適用性とを改善させることができる。
【0060】
図9に、バイナリマスク(透明基板上に遮光膜パターンのみが形成されたマスク)のラインアンドスペース(L/S)パターンを示す。また、
図10には、
図9と同じピッチのL/Sパターンであって、ライン部のエッジに一定幅の位相シフト部分を形成したものを示す。なお、
図10の転写用パターンは、本実施形態の製造方法により製造することができる。
【0061】
図9及び
図10の転写用パターンを、LCD用露光装置を用いて被転写体上にそれぞれ転写するとき、被転写体が受ける光強度曲線を
図11に示す。
図11の縦軸は光透過強度を、横軸は被転写体上の転写位置を示している。
図11の点線は
図10に記載の位相シフトマスク(実施例)透過した光の光透過強度を示し、実線は
図9に記載のバイナリマスク(比較例)を透過した光の光透過高強度を示している。
図11によれば、
図10の位相シフトマスクにおいては、スペース部とライン部との境界において、逆位相の回折光が干渉することから、コントラストが向上し、優れたパターニング精度が得られることが分かる。
【0062】
なお、
図10のパターンが、仮に
図7に示すようなパターンずれを持っている場合、ラインパターンの両エッジにおいて得られる干渉作用が非対称になることから、被転写体上に得られるパターンの精度が劣化する。
【0063】
図10の位相シフトマスクは、本実施形態の下層膜20を位相シフト膜で構成し、本実施形態の上層膜30を遮光膜で構成することで得られることは、既に述べた通りである。ここで、好適な位相シフト膜としては、露光光を略180°シフトするものであるが、露光光が複数波長を含む場合(例えば、i線、h線、g線を含む光源を使用する場合)には、代表波長として、これらの波長のいずれかに対して、略180°の位相シフト作用のあるものとする。
【0064】
ここで、例えば位相シフト量180°とは、透明基板10のみを透過する光と、透明基板10及び下層膜20を透過する光と、の間の位相差が180°となる意味である。ラジアン表記すれば(2n+1)π(ここでn=0,1,2,・・)となる。
【0065】
(透過補助型マスクとして用いる場合)
更に、本実施形態のフォトマスク100の別の態様として、下層膜20は、露光光に含まれる代表波長に対し2〜60%の透過率をもち、かつ、前記代表波長に対する位相シフト量が0°を越え90°以下であるような膜として構成されていてもよい。この場合の下層膜20は、上記の位相シフト作用を発揮させてコントラストを向上させる機能というよりも、透光部103の透過光量を補助する機能をもつ(以下、係る膜を透過補助膜ともいう)。例えば、
図4に示す本実施形態に係るフォトマスク100において、下層膜パターン20pをこの透過補助膜パターンとすることにより、透光部103の透過光量を補助することができる。詳細は実施例にて説明する。
【0066】
このようなフォトマスク100は、露光装置の照射光量を増加させるのと同様な作用効果をもち、省エネルギー、或いは露光時間の短縮、生産効率の向上に著しいメリットをもたらす。
【0067】
上記光量補助の機能は、透過率があまりにも小さいと十分に発揮できず、透過率が大きすぎると転写像のコントラストを劣化させるため、下層膜20の透過率は上記の2〜60%の範囲とする。なお、下層膜20の透過率の好ましい範囲は10〜45%、より好ましくは10〜30%、更に好ましくは10〜20%である。
【0068】
また、位相シフト量が過度に小さい場合には、下層膜20(半透光膜)を構成する素材の選択が容易でないこと、位相シフト量が過度に大きい場合には、逆位相の光の干渉が生じて透過光量の補助効果が損なわれることを考慮して、該膜の素材と膜厚とを選択することが望ましい。下層膜20の位相シフト量の範囲は、0°を越え、90°以下(これは、ラジアン表記すると、(2n−1/2)π〜(2n+1/2)π(nは整数)との意味である)とし、好ましくは5〜60°、更に好ましくは5〜45°である。
【0069】
上記光量補助機能をもつフォトマスクの構成例について、
図12に上面構成を示す。ここでは、ピッチ6μm(ライン部3μm、スペース部3μm)のラインアンドスペースパターンを例示する。ライン部の中央は幅2μmの遮光部からなり、その両サイドのエッジに隣接してそれぞれ幅0.5μm(合計1.0μm)の半透光部(HT部)が形成されている。このような転写用パターンをLCD用露光機によって露光したときの透過光の強度分布カーブ(シミュレーション結果)を、
図14に示す。
図14の縦軸は光透過強度を、横軸は被転写体上の転写位置を示している。
図14の実線は
図12に記載の透過補助型のフォトマスク(実施例)透過した光の光透過強度を示し、点線は
図13に記載の同寸法のバイナリマスク(比較例)を透過した光の光透過高強度を示している。
図14によれば、
図12の透過補助型のフォトマスクにおいては、
図13のバイナリマスクに比べてスペース部に対応する透光部の透過光量が増加していることが分かる。
【0070】
このような機能を有するフォトマスクは、特に、パターンの微細化に伴って有利である。透光部の線幅が狭くなるに従い、該部分の透過光量が減少し(
図14でいうピーク部が下がり)、被転写体上に形成されたレジスト膜の感光閾値に達しなくなると、エッチングマスクとなるレジストパターンの機能を奏しにくくなるからである。
【0071】
仮に、上層膜パターンと下層膜パターンとの間に、
図7に例示したようなアライメントずれが発生した場合、被転写体上での転写位置(パターン位置)がずれてしまうと共に、透光部のピーク光量が低下して転写精度が損なわれてしまう。係る様子を
図15に示す。
図15の縦軸は、被転写体上での透過光強度を、横軸は被転写体上での転写位置を示している。
図15においては、アライメントずれがない場合の透過光強度分布を“曲線AL_E0”で示し、0.1〜0.5μmのアライメントずれが発生した場合の透過光強度分布をそれぞれ“曲線AL_E0.1〜0.5”で示している。
図15によれば、本実施形態に係るフォトマスク100は、こうした不都合を生じさせない、転写性能に優れたフォトマスクであることがわかる。
【0072】
なお、こうした効果は、ラインアンドスペースパターンに限らず、ホールパターンでも同様に得られることが確認された。
【0073】
すなわち、上層膜30の両サイドに露出した下層膜20による光学的な効果は、それが位相シフト効果であっても、光量補助効果であっても、或いは他の光学的な挙動による効果であっても、設計値に基づき、線幅方向において対称に発生させることが求められる。ここで、先行文献1に開示された手法のように、複数回のフォトリソグラフィ工程を利用してフォトマスクを製造する場合には、相互パターン(上層膜パターンと下層膜パターン)の相互アライメントずれをゼロにすることは不可能であり、0.3μm程度、或いはそれ以上のアライメントずれが生じてしまう。
【0074】
これに対して、本実施形態においては、1回の描画工程で描画したレジストパターン40pを用いて、2つの膜パターンを形成する。これにより、上層膜パターン30pと下層膜パターン20pとの間のアライメントずれの発生を防止することができる。その結果、位相シフト効果や光量補助効果等の光学的効果を、設計値に基づき、線幅方向において対称に発生させることが可能となる。更に、フォトリソグラフィ工程の回数を1回に減らすことで、生産工程の効率化を図ることもできる。すなわち、上記したような高度な光学的機能を有するフォトマスクを生産性良く得ることができる。
【0075】
なお、本実施形態に係るフォトマスク100を用いて被転写体上にパターン転写を行う際、使用する露光装置に特に制限は無い。但し、本実施形態に係るフォトマスク100は、例えばi線、h線、g線を含む光源をもつLCD用露光装置を用いて露光を行う際に、特に好適に用いることができる。
【0076】
なお、位相シフト膜パターンを用いた本実施形態に係るフォトマスク100においては、上記の波長のうち、単一波長(例えばi線)のみを使用して露光しても良い。また、露光装置の露光解像限界が3μm以上であるときに、本実施形態のフォトマスク100を用いる効果が特に顕著となる。
【0077】
また、透過補助膜を用いた本実施形態に係るフォトマスク100においては、被転写体へパターンを転写する際の走査露光の所要時間を短縮させることも可能である。これは、係るフォトマスク100が、露光装置の照射光量を増加させるのと同様な作用効果を有するためである。特に、被転写体の面積が比較的大きい(例えば1000mm〜3100mmなど)な、表示装置(フラットパネルディスプレイ等)を製造する際のフォトマスクとして用いる場合に、特に有利な効果が得られる。