(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッド部に、タイヤ赤道の両側でタイヤ周方向に連続してのびる一対のセンター主溝と、タイヤ赤道の両側かつ最もトレッド接地端側でタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝とが設けられることにより、前記一対のセンター主溝の間のセンター陸部と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側の一対のショルダー陸部と、前記センター主溝と前記ショルダー主溝との間の一対のミドル陸部とが設けられた空気入りタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤの回転方向が指定された方向性パターンを具え、
前記センター主溝及び前記ショルダー主溝は、それぞれ、タイヤ赤道側に突出する第1突部と、前記トレッド接地端側に突出する第2突部とがタイヤ周方向に交互に表れるジグザグ状であり、
前記センター主溝は、前記第2突部の溝幅が前記第1突部の溝幅よりも大きく、
前記一対のセンター主溝は、前記センター陸部のタイヤ軸方向の幅がタイヤ周方向に増減を繰り返すように互いのジグザグの位相をずらせて配され、
前記ショルダー主溝は、前記各ミドル陸部のタイヤ軸方向の幅がタイヤ周方向に増減を繰り返すように前記センター主溝とジグザグの位相をずらせて配され、
前記ショルダー主溝の溝幅は、前記センター主溝の溝幅よりも大であり、
前記センター陸部には、前記一対のセンター主溝の間を連通しかつタイヤ軸方向に対して5〜25°の角度θ1で傾斜するセンターサイプが複数設けられ、
前記各ミドル陸部には、前記センター主溝と前記ショルダー主溝との間を連通しかつタイヤ軸方向に対して5〜25°の角度θ2で傾斜するミドルサイプが複数設けられ、
前記センターサイプの前記角度θ1は、前記ミドルサイプの前記角度θ2よりも大であり、
タイヤ赤道の左側のミドル陸部に設けられたミドルサイプと、タイヤ赤道の右側のミドル陸部に設けられたミドルサイプとは、互いに逆向きに、かつ、前記タイヤの回転方向の先着側から後着側に向かって、タイヤ軸方向外側に傾斜していることを特徴とする空気入りタイヤ。
前記センターサイプは、前記各センター主溝の前記第1突部の間を連通する第1センターサイプと、前記各センター主溝の前記第2突部の間を連通する第2センターサイプとを含む請求項1記載の空気入りタイヤ。
前記ミドルサイプは、前記センター主溝の前記第1突部と前記ショルダー主溝の前記第2突部との間を連通する第1ミドルサイプと、前記センター主溝の前記第2突部と前記ショルダー主溝の前記第1突部との間を連通する第2ミドルサイプとを含む請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
前記センター主溝の前記第2突部は、タイヤ軸方向外側の溝縁がタイヤ軸方向外側に突出する向きに屈曲し、タイヤ軸方向内側の溝縁がタイヤ周方向に沿ってのびている請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記ショルダー陸部は、前記ショルダー主溝とトレッド接地端との間を連通しかつタイヤ軸方向に対して5〜25°の角度θ3で傾斜するショルダーサイプが複数設けられ、
前記ショルダーサイプのタイヤ軸方向の内端は、前記ショルダー主溝の前記第1突部と前記第2突部との間に位置している請求項1乃至7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、主溝の配置及びサイプの角度を改善することを基本として、良好なウェット性能と耐摩耗性とを有する空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部に、タイヤ赤道の両側でタイヤ周方向に連続してのびる一対のセンター主溝と、タイヤ赤道の両側かつ最もトレッド接地端側でタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー主溝とが設けられることにより、前記一対のセンター主溝の間のセンター陸部と、前記ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側の一対のショルダー陸部と、前記センター主溝と前記ショルダー主溝との間の一対のミドル陸部とが設けられた空気入りタイヤであって、前記センター主溝及び前記ショルダー主溝は、それぞれ、タイヤ赤道側に突出する第1突部と、前記トレッド接地端側に突出する第2突部とがタイヤ周方向に交互に表れるジグザグ状であり、前記一対のセンター主溝は、前記センター陸部のタイヤ軸方向の幅がタイヤ周方向に増減を繰り返すように互いのジグザグの位相をずらせて配され、前記ショルダー主溝は、前記各ミドル陸部のタイヤ軸方向の幅がタイヤ周方向に増減を繰り返すように前記センター主溝とジグザグの位相をずらせて配され、前記ショルダー主溝の溝幅は、前記センター主溝の溝幅よりも大であり、前記センター陸部には、前記一対のセンター主溝の間を連通しかつタイヤ軸方向に対して5〜25°の角度θ1で傾斜するセンターサイプが複数設けられ、前記各ミドル陸部には、前記センター主溝と前記ショルダー主溝との間を連通しかつタイヤ軸方向に対して5〜25°の角度θ2で傾斜するミドルサイプが複数設けられ、前記センターサイプの前記角度θ1は、前記ミドルサイプの前記角度θ2よりも大であり、タイヤ赤道の左側のミドル陸部に設けられたミドルサイプと、タイヤ赤道の右側のミドル陸部に設けられたミドルサイプとは、互いに逆向きに傾斜していることを特徴としている。
【0007】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記センターサイプは、前記各センター主溝の前記第1突部の間を連通する第1センターサイプと、前記各センター主溝の前記第2突部の間を連通する第2センターサイプとを含むのが望ましい。
【0008】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ミドルサイプは、前記センター主溝の前記第1突部と前記ショルダー主溝の前記第2突部との間を連通する第1ミドルサイプと、前記センター主溝の前記第2突部と前記ショルダー主溝の前記第1突部との間を連通する第2ミドルサイプとを含むのが望ましい。
【0009】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記各ミドルサイプは、前記センター主溝を介して前記センターサイプと連続するように設けられているのが望ましい。
【0010】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記センター主溝は、前記第2突部の溝幅が前記第1突部の溝幅よりも大きいのが望ましい。
【0011】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記センター主溝の前記第2突部は、タイヤ軸方向外側の溝縁がタイヤ軸方向外側に突出する向きに屈曲し、タイヤ軸方向内側の溝縁がタイヤ周方向に沿ってのびているのが望ましい。
【0012】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記センターサイプ及び前記ミドルサイプは、いずれも直線状であるのが望ましい。
【0013】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ショルダー陸部は、前記ショルダー主溝とトレッド接地端との間を連通しかつタイヤ軸方向に対して5〜25°の角度θ3で傾斜するショルダーサイプが複数設けられ、前記ショルダーサイプのタイヤ軸方向の内端は、前記ショルダー主溝の前記第1突部と前記第2突部との間に位置しているのが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明において、センター主溝の溝幅は、ショルダー主溝の溝幅よりも小さく形成されている。これにより、ミドル陸部がセンター陸部側に寄り、大きな荷重が作用するトレッド中央部付近のランド比が高められる。従って、センター陸部及びミドル陸部の各接地圧が低下し、これらの摩耗が抑えられる。
【0015】
一方、トレッド中央部付近のランド比が高められると、そこでのウェット性能が低下するおそれがある。本発明のセンター主溝及びショルダー主溝は、ジグザグ状であり、接地面内の溝の実質的な長さがタイヤ周方向に沿った直線状の溝よりも大きい。しかも、このようなセンター主溝及びショルダー主溝は、タイヤ周方向だけでなくタイヤ軸方向に対してもエッジ効果を発揮する。従って、本発明のタイヤは、小さい溝幅のセンター主溝を有しつつ、トレッド中央部付近のウェット性能が効果的に維持される。
【0016】
本発明のタイヤでは、センター陸部及びミドル陸部のタイヤ軸方向の幅がタイヤ周方向に増減を繰り返す。このため、各陸部の踏面が接地したとき、その幅が小さい部分が適度に撓む。従って、踏面の接地時の部分的な歪みが効果的に抑制され、センター陸部及びミドル陸部の偏摩耗が抑制される。
【0017】
センター陸部には、一対のセンター主溝の間を連通しかつタイヤ軸方向に対して5〜25°の角度θ1で傾斜するセンターサイプが複数本設けられている。各ミドル陸部には、センター主溝とショルダー主溝との間を連通しかつタイヤ軸方向に対して5〜25°の角度θ2で傾斜するミドルサイプが複数設けられている。このようなセンターサイプ及びミドルサイプは、タイヤ周方向に対して優れたエッジ効果を発揮し、ウェット性能を高める。
【0018】
一般に、接地圧が高いセンター陸部の摩耗をミドル陸部の摩耗に近付ける事が摩耗を均一にするため有効である。センター陸部には、ミドル陸部よりも大きな接地圧が作用するので、このセンター陸部の耐摩耗性を相対的により高めることが重要である。本発明では、 センターサイプの前記角度θ1は、ミドルサイプの前記角度θ2よりも大である。これにより、センターサイプで区分された各陸部片は、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向のいずれの力に対しても、互いに接触して支え合う。従って、センター陸部の剛性が高められ、センター陸部とミドル陸部との摩耗が均一になる。
【0019】
タイヤ赤道の左側のミドル陸部に設けられたミドルサイプと、タイヤ赤道の右側のミドル陸部に設けられたミドルサイプとは、互いに逆向きに傾斜している。このようなミドルサイプは、タイヤ軸方向の両側に対して均等にエッジ効果を発揮する。しかも、このようなミドルサイプは、ウェット走行時、ミドル陸部と路面との間の水を、タイヤ軸方向の両外側に案内する。このため、特に、ウェット走行時の直進安定性が高められる。
【0020】
従って、本発明の空気入りタイヤは、良好なウェット性能と耐摩耗性能とを有する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1のトレッド部2の展開図である。本実施形態の空気入りタイヤ1は、例えば、トラックやバス等の重荷重車両用として好適に使用される。
【0023】
本実施形態のトレッド部2は、タイヤの回転方向Rが指定された方向性パターンを具えている。回転方向Rは、例えば、サイドウォール部等に文字やマークで示されている。
【0024】
図1に示されるように、トレッド部2には、一対のセンター主溝10、10と、一対のショルダー主溝20、20とが設けられている。これにより、トレッド部2には、一対のセンター主溝10、10の間のセンター陸部30と、センター主溝10とショルダー主溝20との間の一対のミドル陸部40と、ショルダー主溝20のタイヤ軸方向外側の一対のショルダー陸部50とが区分されている。
【0025】
一対のセンター主溝10、10は、タイヤ周方向の両側でタイヤ周方向に連続してのびている。
【0026】
各センター主溝10は、タイヤ赤道C側に突出する第1突部11と、トレッド接地端Te側に突出する第2突部12とがタイヤ周方向に交互に表れるジグザグ状である。
【0027】
「トレッド接地端Te」とは、正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。
【0028】
前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0029】
前記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0030】
前記「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0031】
第1突部11は、例えば、タイヤ軸方向内側の端縁11iとタイヤ軸方向の外側の端縁11oとがタイヤ周方向に沿って直線状にのびている。一方、第2突部12は、タイヤ軸方向外側の溝縁12oがタイヤ軸方向外側に突出するように屈曲し、タイヤ軸方向内側の溝縁12iがタイヤ周方向に沿って直線状にのびている。
【0032】
第2突部12の溝幅W9は、例えば、第1突部11の溝幅W8よりも大きいのが望ましい。このようなセンター主溝10は、第1突部11から第2突部12に向かう溝内の水の流れを滑らかにし、ウェット性能を高める。
【0033】
一対のセンター主溝10、10は、センター陸部30のタイヤ軸方向の幅がタイヤ周方向に増減を繰り返すように互いのジグザグの位相をずらせて配されている。
【0034】
トレッド接地幅TWは、前記正規状態におけるトレッド接地端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離である。
【0035】
センター主溝10の溝幅W1は、例えば、トレッド接地幅TWの1.5〜3.0%である。このようなセンター主溝10は、トレッド中央部付近の剛性を高めつつ、優れたウェット性能を発揮する。
【0036】
センター主溝10は、タイヤ周方向に対して一方側に傾斜した第1溝部13と、第1溝部13とは逆向きに傾斜した第2溝部14とを含んでいる。
【0037】
第1溝部13及び第2溝部14のタイヤ周方向に対する角度θ5は、例えば、5〜25°である。このようなセンター主溝10は、ウェット走行時、タイヤ軸方向及びタイヤ周方向に対してバランス良くエッジ効果を発揮する。
【0038】
図2には、
図1のトレッド部2のA−A断面図が示されている。
図2に示されるように、センター主溝10の溝深さd1は、例えば、8〜25mmである。このようなセンター主溝10は、優れたウェット性能を発揮する。
【0039】
図1に示されるように、一対のショルダー主溝20、20は、タイヤ赤道Cの両側かつ最もトレッド接地端Te側に設けられ、タイヤ周方向に連続してのびている。
【0040】
ショルダー主溝20は、タイヤ赤道C側に突出する第1突部21と、トレッド接地端Te側に突出する第2突部22とがタイヤ周方向に交互に表れるジグザグ状である。
【0041】
ショルダー主溝20は、各ミドル陸部40のタイヤ軸方向の幅がタイヤ周方向に増減を繰り返すようにセンター主溝10とジグザグの位相をずらせて配されている。
【0042】
ショルダー主溝20の溝幅W2は、センター主溝10の溝幅W1よりも大である。
【0043】
これにより、ミドル陸部40がセンター陸部30側に寄り、大きな荷重が作用するトレッド中央部付近のランド比が高められる。従って、センター陸部30及びミドル陸部40の各接地圧が低下し、これらの摩耗が抑えられる。
【0044】
一方、トレッド中央部付近のランド比が高められると、そこでのウェット性能が低下するおそれがある。本発明のセンター主溝10及びショルダー主溝20は、ジグザグ状であり、接地面内の溝の実質的な長さがタイヤ周方向に沿った直線状の溝よりも大きい。しかも、このようなセンター主溝及びショルダー主溝は、タイヤ周方向だけでなくタイヤ軸方向に対してもエッジ効果を発揮する。従って、本発明のタイヤは、小さい溝幅のセンター主溝10を有しつつ、トレッド中央部付近のウェット性能が効果的に維持される。
【0045】
ウェット性能と耐摩耗性とをさらにバランス良く向上させるために、ショルダー主溝20の溝幅W2とセンター主溝との比W2/W1は、好ましくは1.8以上、より好ましくは2.0以上であり、好ましくは2.6以下、より好ましくは2.4以下である。
【0046】
センター陸部30及びミドル陸部40が略一定の幅でタイヤ周方向に連続してのびている場合、接地時、これらの陸部のタイヤ周方向への逃げ場がなく、タイヤ軸方向への変形が大きくなる。これに伴い、センター陸部30及びミドル陸部40の踏面が接地時に部分的に歪み、陸部のエッジ付近に偏摩耗が発生するおそれがある。本発明では、センター主溝10及びショルダー主溝20は、センター陸部30及びミドル陸部40のタイヤ軸方向の幅がタイヤ周方向に増減を繰り返すように互いのジグザグの位相をずらせて配されている。このため、各陸部の踏面が接地したとき、その幅が小さい部分が適度に撓むことで、踏面の接地時の部分的な歪みが効果的に抑制され、陸部の偏摩耗が抑制される。
【0047】
ショルダー主溝20は、タイヤ周方向に対して一方側に傾斜した第1溝部23と、第1溝部23とは逆向きに傾斜した第2溝部24とを含んでいる。第1溝部23及び第2溝部24のタイヤ周方向に対する角度θ6は、例えば、5〜25°である。このようなショルダー主溝20は、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向に対してバランス良くエッジ効果を発揮する。
【0048】
図2に示されるように、ショルダー主溝20の溝深さd2は、たとえば、8〜25mmである。
【0049】
図3には、センター陸部30の拡大図が示されている。
図3に示されるように、センター陸部30には、一対のセンター主溝10、10の間を連通するセンターサイプ32が複数設けられている。本明細書において、「サイプ」とは、幅が0.5〜1.0mmの切り込みを意味し、排水用の溝とは区別される。本実施形態のセンター陸部30は、サイプよりも大きい溝幅の横溝が設けられていない、いわゆるリブとして形成されている。
【0050】
センター陸部30のタイヤ軸方向の距離W3は、例えば、トレッド接地幅TW(
図1に示す)の0.15〜0.25倍である。このようなセンター陸部30は、ウェット性能と耐摩耗性とをバランス良く高める。
【0051】
センターサイプ32は、タイヤ軸方向に対して5〜25°の角度θ1で傾斜して直線状にのびている。このようなセンターサイプ32は、タイヤ周方向に対して優れたエッジ効果を発揮し、ウェット性能を高める。
【0052】
図2に示されるように、センターサイプ32の深さd3は、例えば、センター主溝10の溝深さd1の0.7〜0.9倍である。このようなセンターサイプ32は、耐摩耗性とウェット性能とをバランス良く高める。
【0053】
図3に示されるように、センターサイプ32は、センター主溝10の第1突部11、11間を連通する第1センターサイプ33と、センター主溝10の第2突部12、12間を連通する第2センターサイプ34とを含んでいる。第1センターサイプ33と第2センターサイプ34とは、互いに平行に配され、かつ、タイヤ周方向に交互に設けられている。
【0054】
図4には、ミドル陸部40の拡大図が示されている。
図4に示されるように、ミドル陸部40には、ミドル横溝41と、ミドルサイプ42とがそれぞれ複数設けられている。
【0055】
ミドル陸部40のタイヤ軸方向の距離W4は、例えば、トレッド接地幅TWの0.15〜0.25倍である。このようなミドル陸部40は、ウェット性能と耐摩耗性とをバランス良く高める。
【0056】
ミドル横溝41は、センター主溝10とショルダー主溝20との間を連通している。ミドル横溝41の溝幅W6は、例えば、センター主溝10の溝幅W1の0.30〜0.45倍である。
【0057】
ミドルサイプ42は、タイヤ軸方向に対して5〜25°の角度θ2で傾斜して直線状にのびている。このようなミドルサイプ42は、タイヤ周方向に対して優れたエッジ効果を発揮し、ウェット性能を高める。
【0058】
センターサイプ32の前記角度θ1(
図3に示され、以下、同様である。)は、ミドルサイプ42の前記角度θ2よりも大である。
【0059】
一般に、接地圧が高いセンター陸部30の摩耗をミドル陸部40の摩耗に近付ける事が摩耗を均一にするため有効である。センター陸部30には、ミドル陸部40よりも大きな接地圧が作用するので、このセンター陸部30の耐摩耗性を相対的により高めることが重要である。本発明では、センターサイプ32の前記角度θ1は、ミドルサイプ42の前記角度θ2よりも大である。これにより、センターサイプ32で区分された各陸部片は、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向のいずれの力に対しても、互いに接触して支え合う。従って、センター陸部30の剛性が高められ、センター陸部30とミドル陸部40との摩耗が均一になる。
【0060】
図1に示されるように、タイヤ赤道Cの左側のミドル陸部40Aに設けられたミドルサイプ42Aと、タイヤ赤道Cの右側のミドル陸部40Bに設けられたミドルサイプ42Bとは、互いに逆向きに傾斜している。このようなミドルサイプ42は、タイヤ軸方向の両側に対して均等にエッジ効果を発揮する。しかも、このようなミドルサイプ42は、ウェット走行時、ミドル陸部と路面との間の水を、タイヤ軸方向の両側に案内する。このため、特に、ウェット走行時の直進安定性が高められる。
【0061】
各ミドルサイプ42は、例えば、タイヤの回転方向Rの先着側から後着側に向かって、タイヤ軸方向外側に傾斜している。このようなミドルサイプ42は、さらにウェット性能を高める。
【0062】
図4に示されるように、ミドルサイプ42は、センター主溝10の第1突部11とショルダー主溝20の第2突部22との間を連通する第1ミドルサイプ43と、センター主溝10の第2突部12とショルダー主溝20の第1突部21との間を連通する第2ミドルサイプ44とを含んでいる。このような第1ミドルサイプ43及び第2ミドルサイプ44は、接地時の踏面の部分的な歪みを、効果的に抑制することができる。
【0063】
図5には、
図4の第2ミドルサイプ44のB−B断面図が示されている。
図5に示されるように、第2ミドルサイプ44は、例えば、ミドル横溝41の溝底41dに設けられている。このような第2ミドルサイプ44は、ミドル横溝41の排水性を補い、ウェット性能をさらに高めることができる。
【0064】
ミドル陸部の踏面40sから第2ミドルサイプ44の底44dまでの深さd4は、例えば、センター主溝10の溝深さd1(
図2に示す)の0.7倍以上、より好ましくは0.75倍以上であり、好ましくは0.9倍以下、より好ましくは0.85倍以下である。これにより、耐摩耗性とウェット性能とがバランス良く高められる。
【0065】
図6には、ショルダー陸部50の拡大図が示されている。
図6に示されるように、ショルダー陸部50は、複数のショルダー横溝51で区分されたショルダーブロック55がタイヤ周方向に並ぶブロック列である。
【0066】
ショルダー横溝51は、例えば、ショルダー主溝20とトレッド接地端Teとの間を連通している。ショルダー横溝51は、例えば、タイヤ軸方向に対して5〜25°の角度θ7で傾斜している。
【0067】
ショルダー横溝51の溝幅W7は、例えば、ショルダー主溝20の溝幅W2の0.65〜0.75倍である。このようなショルダー横溝51は、耐摩耗性を維持しつつウェット性能を効果的に高める。
【0068】
ショルダーブロック55は、例えば、略五角形状の踏面56を有している。ショルダーブロック55の踏面56は、タイヤ軸方向内側に凸となる内側縁57を有している。これにより、ショルダーブロック55のタイヤ軸方向の剛性が高められ、ブロックの耐摩耗性が高められる。
【0069】
ショルダーブロック55には、例えば、ショルダーサイプ52が設けられている。ショルダーサイプ52は、例えば、ショルダー主溝20とトレッド接地端Teとの間を連通している。
【0070】
ショルダーサイプ52は、例えば、タイヤ軸方向に対して5〜25°の角度θ3で傾斜して直線状にのびている。このようなショルダーサイプ52は、タイヤ周方向に対して優れたエッジ効果を発揮する。
【0071】
図2に示されるように、ショルダーサイプ52の深さd5は、例えば、ショルダー主溝の溝深さd2の0.7〜0.9倍である。このようなショルダーサイプ52は、ウェット性能と耐摩耗性とをバランス良く高める。
【0072】
図6に示されるように、ショルダーサイプ52のタイヤ軸方向の内端53は、ショルダー主溝20の第1突部21と第2突部22との間に位置しているのが望ましい。このようなショルダーサイプ52は、ショルダーブロック55の内側縁57の偏摩耗を効果的に抑制する。
【0073】
以上、本発明の空気入りタイヤが詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0074】
図1の基本構造をなすサイズ315/80R22.5の重荷重用タイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例1として、
図7に示されるように、センター主溝とショルダー主溝とが互いに同一の溝幅を有し、センターサイプ及びミドルサイプがタイヤ軸方向に沿ってのびているタイヤが試作された。各テストタイヤの耐偏摩耗性及びウェット性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:7.50×22.5
タイヤ内圧:800kPa
テスト車両:10tトラック、荷台前方に標準積載量の50%の荷物を積載
タイヤ装着位置:全輪
【0075】
<耐摩耗性>
上記テスト車両にて、一般道を一定距離走行したときのセンター主溝の残り溝深さが測定された。結果は、比較例1を100とする指数で表示され、数値が大きい程、耐摩耗性が優れていることを示す。
【0076】
<ウェット性能>
上記テスト車両にて、下記の条件で全長10mのテストコースを通過したときの通過タイムが測定された。評価は、通過タイムの逆数であり、比較例1の値を100とする指数で表示されている。数値が大きい程、通過タイムが小さく、ウェット性能が優れている。
路面:厚さ5mmの水膜を有するアスファルト
発進方法:2速‐1500rpm固定でクラッチを繋いで発進する。
テストの結果が表1に示される。
【0077】
【表1】
【0078】
テストの結果、本発明の空気入りタイヤは、良好なウェット性能と耐摩耗性とを有していることが確認できた。