特許第5993455号(P5993455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5993455ホモハリントニンアシル化誘導体、その調製方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993455
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】ホモハリントニンアシル化誘導体、その調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/20 20060101AFI20160901BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20160901BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160901BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20160901BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20160901BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20160901BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20160901BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20160901BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20160901BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20160901BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20160901BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20160901BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20160901BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   C07D491/20CSP
   A61K31/55
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P1/16
   A61P19/00
   A61P1/04
   A61P15/00
   A61P1/18
   A61P11/00
   A61P25/00
   A61P27/16
   A61P17/00
   A61P13/08
【請求項の数】20
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2014-525301(P2014-525301)
(86)(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公表番号】特表2014-521731(P2014-521731A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】CN2012080361
(87)【国際公開番号】WO2013023622
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2015年8月7日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2011/078589
(32)【優先日】2011年8月18日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513052572
【氏名又は名称】ハンジョウ ベンシェン ファーマシューティカル シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】HANGZHOU BENSHENG PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(72)【発明者】
【氏名】シュー ロンツェン
(72)【発明者】
【氏名】ロン フランク
(72)【発明者】
【氏名】シェ フーウェン
(72)【発明者】
【氏名】ライ ホンシ
【審査官】 榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/148654(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1463975(CN,A)
【文献】 特表2002−507615(JP,A)
【文献】 Journal of Natural Products,2010年,Vol.73, No.9,p.1553-1558
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のアシル化ホモハリントニン誘導体
【化1】


(式中、、H、C−C20アルキル、C−C20アルケニル、C−C20共役アルケニル、C−Cシクロアルキル又はシクロアルケニル、アリール、複素環式ラジカル、ヘテロアリール及びアミノ酸側鎖残基から選択され、Hを除くこれらは、ハロゲン、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、チオール及びC−Cアルキルチオからなる群から選択される1種又は2種以上の置換基で置換されていてもよく、前記C−Cシクロアルキル又はシクロアルケニル、アリール、複素環式ラジカル又はヘテロアリールは、C−Cアルキルで置換されていてもよく、前記C−C20アルキル、C−C20アルケニル又はC−C20共役アルケニルは、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよい);
又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−C共役アルケニル、C−Cシクロアルキル又はシクロアルケニル、アリール、複素環式ラジカル、ヘテロアリール及びアミノ酸側鎖残基から選択され、Hを除くこれらが、ハロゲン、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、チオール及びC−Cアルキルチオからなる群から選択される1種又は2種以上の置換基で置換されていてもよく、前記C−Cシクロアルキル又はシクロアルケニル、アリール、複素環式ラジカル又はヘテロアリールが、C−Cアルキルで置換されていてもよく、前記C−Cアルキル、C−Cアルケニル又はC−C共役アルケニルが、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよい、請求項1に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから選択され、これらが、ハロゲン、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、チオール及びC−Cアルキルチオからなる群から選択される1種又は2種以上の置換基で置換されていてもよく、前記C−Cシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールが、C−Cアルキルで置換されていてもよく、前記C−Cアルキル又はC−Cアルケニルが、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよい、請求項1に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
、C−Cアルキル、アリール又はヘテロアリールで置換されたC−Cアルキル、C−Cアルケニル、アリール又はヘテロアリールで置換されたC−Cアルケニル、C−Cシクロアルキル、アリール、C−Cアルキルで置換されたアリール、ヘテロアリール及びC−Cアルキルで置換されたヘテロアリールからなる群から選択され、これらが、ハロゲン、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、チオール及びC−Cアルキルチオからなる群から選択される1種又は2種以上の置換基で置換されていてもよい、請求項1に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
、C−Cアルキル、アリール又はヘテロアリールで置換されたC−Cアルキル、C−Cアルケニル、アリール又はヘテロアリールで置換されたC−Cアルケニル、C−Cシクロアルキル、アリール、C−Cアルキルで置換されたアリール、ヘテロアリール及びC−Cアルキルで置換されたヘテロアリールからなる群から選択され、これらのそれぞれが、1種又は2種以上のハロゲン原子で置換されていてもよい、請求項1に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
アリールが、フェニルであり;ヘテロアリールが、フラニル、チオフェニル、ピリジニル、オキサゾリル又はイソオキサゾリルであり;C−Cシクロアルキルが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルであり;前記基のそれぞれが、C−Cアルキル又はハロゲン原子で置換されていてもよい、請求項1〜5のいずれかに記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項7】
−Cアルキルがメチルである、請求項6に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項8】
ハロゲン原子が塩素又は臭素である、請求項6又は7に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項9】
が、C−Cアルキル、アリール又はヘテロアリールで置換されたC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリール、C−Cアルキルで置換されたアリール、ヘテロアリール及びC−Cアルキルで置換されたヘテロアリールからなる群から選択され、これらのそれぞれが、1種又は2種以上のハロゲン原子で置換されていてもよい、請求項に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項10】
アリールが、フェニルであり;ヘテロアリールが、フラニル、ピリジニル又はチアゾリルであり;シクロアルキルが、シクロペンチルであり、これらのそれぞれが、1種又は2種以上のハロゲン原子で置換されていてもよい、請求項に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項11】
が、メチル;フラニル;ハロゲンで置換されていてもよいピリジニル;メチルで置換されていてもよいチアゾリル;フェニル;及びシクロペンチルからなる群から選択される、請求項10に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項12】
【化2】




からなる群から選択される化合物である、請求項1に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項13】
式(I)の化合物を得るための
1)活性化されていてもよいホモハリントニン及び有機酸RCOHを縮合エステル化させるステップ;
2)ホモハリントニン及び有機アシル塩化物RCOCl若しくは有機無水物(RCO)Oを縮合エステル化させるステップ;又は
3)活性化された有機酸RCOHをホモハリントニンと反応させるステップ
を含み、Rが、請求項1〜12のいずれかに定義されているとおりである、請求項1〜12のいずれかに記載の式(I)の化合物を調製するための方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
抗腫瘍薬の製造における、請求項1〜12のいずれかに記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項16】
腫瘍が、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、肝癌、胃癌、乳癌、胆管細胞癌腫、膵癌、肺癌、結腸直腸癌、骨肉腫、ヒト子宮頸癌、神経膠腫、上咽頭癌腫、咽頭癌腫、食道癌、中耳腫瘍、黒色腫及び前立腺癌から選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれかに記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩を含む、腫瘍を患う対象の治療剤。
【請求項18】
腫瘍が、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、肝癌、胃癌、乳癌、胆管細胞癌腫、膵癌、肺癌、結腸直腸癌、骨肉腫、ヒト子宮頸癌、神経膠腫、上咽頭癌腫、咽頭癌腫、食道癌、中耳腫瘍、黒色腫及び前立腺癌から選択される、請求項17に記載の治療剤。
【請求項19】
抗腫瘍剤としての使用のための、請求項1〜12のいずれかに記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項20】
腫瘍が、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、肝癌、胃癌、乳癌、胆管細胞癌腫、膵癌、肺癌、結腸直腸癌、骨肉腫、ヒト子宮頸癌、神経膠腫、上咽頭癌腫、咽頭癌腫、食道癌、中耳腫瘍、黒色腫及び前立腺癌から選択される、請求項19に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生薬及び薬化学の分野に属し、新規なホモハリントニン誘導体、とりわけアシル化ホモハリントニン誘導体、これらの化合物の調製のための方法、このような化合物を含有する組成物及び抗新生物薬の調製におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
O−3−[(2R)−2,6−ジヒドロキシ−2−(2’−メトキシ−2’−オキソエチル)−6−メチルヘプタノイル]セファロタキシンとしても知られているホモハリントニン(HHT)は、イヌガヤ科(Cephalotaxaceae family)の中国産薬用植物、とりわけセファトタクサス・フォルツネイ(cephatotaxus fortuneif)又はその同属種から抽出及び分離されるアルカロイドである。イヌガヤ科のセファトタクサス属(Cephatotaxus genus)の植物は、9種からなり、これらのうちの8種は、中国原産である。この属の植物は、複数種のアルカロイドを含有し、これらの中で、ハリントニン、ホモハリントニン、イソハリントニン及びデオキシハリントニンが、抽出され、同定され、広範囲に研究されている[ZHONG Sanbao et al., Studies on Semi-synthesis of Cephalotaxine Esters and Correlation of Their Structures with Antitumor activity, Acta Pharmaceutica Sinica, 1994, 29 (1), 33-39;WANG Dingzhi et al., Studies on Alkaloids in Cephatotaxus genus Plants, Acta Pharmaceutica Sinica, 1992, 03, 178-184]。その上、非エステルアルカロイド(即ち、セファロタシン(cephalotacine))も、主成分としてセファトタクサスから分離される。
【0003】
【化1】
【0004】
臨床研究によって、HHTは、急性骨髄性白血病の寛解導入及び寛解後治療に、骨髄異形成症候群(MDS,myelodysplastic syndrome)、慢性骨髄性白血病、真性赤血球増加症及び悪性リンパ腫などの治療に、特に急性非リンパ性白血病の治療に適用し得ることが示されている[ZHANG, Zhixue et al., Clinical study of HAG projects for the treatment of middle and high risk myeloid hyperplasia singular syndrome and acute myeloid leukemia, Journal of Jinggangshan University, 2010, 31(6),108-110;DENG, Jianqun et al., The impact of homoharringtonine to leukemia proto-oncogene bcl-2, c-myc, tumor suppressor gene p15, Chin J of Clinical Rational Drug Use, 2010, 3(7), 15-16;CHEN, Lijuan et al., A Study of Apoptosis on Non-lymphocytic Leukemia Cells Induced by Cytosine Arabinoside and Homoharringtonine, Jiangsu Medical Journal, 1999, 25(4), 257-258;ZHANG, Hui et al., 27 clinical analysis of LD-HA regimen in the treatment of acute myeloid leukemia, Acta Academiae Medicinae Suzhou, 1997, 17(4), 689-690;DING, Suxin et al., 26 clinical analysis of LD-HA regimen in the treatment of hypoplastic leukemia, Acta Academiae Medicinae Suzhou, 1997, 17(1), 89-90;XUE, Yanping et al., Clinical observation of HAD regimen in the treatment of adult acute non-lymphocytic leukemia, Chinese Journal of Hematology, 1995, 16(2), 59-61]。
【0005】
HHTは、細胞分化及びアポトーシスを促進し得る[WANG Yun et al., Experimental study of K562 and CML cell apoptosis and differentiation induced by homoharringtonine, Shanghai Medical Journal, 2001, 24(3), 166-168;LU, Dayong et al., Effect of homoharringtonine on leukemia cell differentiation and tumor metastasis, Journal of Shanghai University, 1999, 5(2), 175-177]。
【0006】
同期KB(ヒト口腔類表皮癌腫)細胞の研究によれば、HHTは、細胞周期特異性を所持し、G1及びG2期における細胞に対して最も強い殺滅効果を有し、S期における細胞に対して比較的より弱い効果を有する[JIN, Wei et al., Studies on the effect of homoharringtonine on HL-60 cells and QCY7703 cells, Acta Chinese Medicine and Pharmacology, 2001, 29(3), 44-45;LUO, Chenmei et al., Effect of homoharringtonine and Xueshuantong on human pterygium fibroblasts cell cyclic variation, Journal of Traditional Chinese Ophthalmology, 1999, 9(2), 67-70]。
【0007】
HHTの薬理効果は、主に真核細胞のタンパク質合成を阻害することにあり、アミノアシル−tRNAのリボースへの結合並びにそのリボソーム及びペプチド鎖の形成を阻害し、それによりポリマー形成の初期段階に影響を与え、ポリリボソームを分解させ、リボソームタンパク質機能を妨げ、細胞内DNAの合成も阻害する[CAI, Zhen et al., Involvement of apoptosis-related gene Survivin, bcl-2 and bax in the homoharringtonine-induced apoptosis of myelodysplastic syndrome cell line(MUTZ-1), Journal of Practical Oncology, 2003, 18(3), 188-191;CAI, Zhen et al., Expression of survivin mRNA in HHT-induced cell apoptosis of hematological malignancy cell lines, Journal of Zhejiang University, 2006, 35(2), 204-208;WANG, Hengxiang et al., Homoharringtonine Induces Apoptosis of K562 Cells through Inhibition of P210bcr/abl, Chinese Journal of Experimental Hematology, 2000, 8(4), 287-289;CHEN, Chunyan et al., Comparative proteomics research of apoptosis initiation induced by homoharringtonine in HL-60 cells, Chinese Journal of Hematology, 2003, 24(12), 624-628;LI, Yufeng et al., Effect of homoharringtonine on the telomerase activity of bone marrow CD34+ cells in patients of chronic myeloid leukemia, Journal of Leukemia-Lymphoma, 2004, 13(1), 42-43;LI, Yufeng et al., Effect of homoharringtonine on bone marrow CD34+CD7+cells in patients of chronic myeloid leukemia, Chinese Journal of Hematology, 2007, 28(10), 706-707;LI, Yufeng et al., Effect of homoharringtonine on T and Th lymphocytes subsets in patients of chronic myeloid leukemia, Leukemia-Lymphoma, 2006, 15(1), 37-39;LI, Yufeng et al., Effect of homoharringtonine on the telomerase activity of bone marrow cells and K562 cells in patients of chronic myeloid leukemia, Chinese Journal of Hematology, 2003, 24(6), 329-329;MENG, Xiaoli, Effects of homoharringtonine on telomerase activity in HL60 cells, Journal of Zhengzhou University, 2004, 39(3), 440-442;XIE, Wanzhuo et al., Effect of telomerase in homoharringtonine-induced apoptosis of HL-60 cells, Chinese Journal of Medical Genetics, 2002, 19(2), 169-171]。これらのハリントニン天然産物の他の用途も開発中である。しかし、これまで、新規なモノ−アシル化及びジ−アシル化ホモハリントニン誘導体の合成及び用途に関する報告は未だ見られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ZHONG Sanbao et al., Studies on Semi-synthesis of Cephalotaxine Esters and Correlation of Their Structures with Antitumor activity, Acta Pharmaceutica Sinica, 1994, 29 (1), 33-39
【非特許文献2】WANG Dingzhi et al., Studies on Alkaloids in Cephatotaxus genus Plants, Acta Pharmaceutica Sinica, 1992, 03, 178-184
【非特許文献3】ZHANG, Zhixue et al., Clinical study of HAG projects for the treatment of middle and high risk myeloid hyperplasia singular syndrome and acute myeloid leukemia, Journal of Jinggangshan University, 2010, 31(6),108-110
【非特許文献4】DENG, Jianqun et al., The impact of homoharringtonine to leukemia proto-oncogene bcl-2, c-myc, tumor suppressor gene p15, Chin J of Clinical Rational Drug Use, 2010, 3(7), 15-16
【非特許文献5】CHEN, Lijuan et al., A Study of Apoptosis on Non-lymphocytic Leukemia Cells Induced by Cytosine Arabinoside and Homoharringtonine, Jiangsu Medical Journal, 1999, 25(4), 257-258
【非特許文献6】ZHANG, Hui et al., 27 clinical analysis of LD-HA regimen in the treatment of acute myeloid leukemia, Acta Academiae Medicinae Suzhou, 1997, 17(4), 689-690
【非特許文献7】DING, Suxin et al., 26 clinical analysis of LD-HA regimen in the treatment of hypoplastic leukemia, Acta Academiae Medicinae Suzhou, 1997, 17(1), 89-90
【非特許文献8】XUE, Yanping et al., Clinical observation of HAD regimen in the treatment of adult acute non-lymphocytic leukemia, Chinese Journal of Hematology, 1995, 16(2), 59-61
【非特許文献9】WANG Yun et al., Experimental study of K562 and CML cell apoptosis and differentiation induced by homoharringtonine, Shanghai Medical Journal, 2001, 24(3), 166-168
【非特許文献10】LU, Dayong et al., Effect of homoharringtonine on leukemia cell differentiation and tumor metastasis, Journal of Shanghai University, 1999, 5(2), 175-177
【非特許文献11】JIN, Wei et al., Studies on the effect of homoharringtonine on HL-60 cells and QCY7703 cells, Acta Chinese Medicine and Pharmacology, 2001, 29(3), 44-45
【非特許文献12】LUO, Chenmei et al., Effect of homoharringtonine and Xueshuantong on human pterygium fibroblasts cell cyclic variation, Journal of Traditional Chinese Ophthalmology, 1999, 9(2), 67-70
【非特許文献13】CAI, Zhen et al., Involvement of apoptosis-related gene Survivin, bcl-2 and bax in the homoharringtonine-induced apoptosis of myelodysplastic syndrome cell line(MUTZ-1), Journal of Practical Oncology, 2003, 18(3), 188-191
【非特許文献14】CAI, Zhen et al., Expression of survivin mRNA in HHT-induced cell apoptosis of hematological malignancy cell lines, Journal of Zhejiang University, 2006, 35(2), 204-208
【非特許文献15】WANG, Hengxiang et al., Homoharringtonine Induces Apoptosis of K562 Cells through Inhibition of P210bcr/abl, Chinese Journal of Experimental Hematology, 2000, 8(4), 287-289
【非特許文献16】CHEN, Chunyan et al., Comparative proteomics research of apoptosis initiation induced by homoharringtonine in HL-60 cells, Chinese Journal of Hematology, 2003, 24(12), 624-628
【非特許文献17】LI, Yufeng et al., Effect of homoharringtonine on the telomerase activity of bone marrow CD34+ cells in patients of chronic myeloid leukemia, Journal of Leukemia-Lymphoma, 2004, 13(1), 42-43
【非特許文献18】LI, Yufeng et al., Effect of homoharringtonine on bone marrow CD34〜+CD7〜+cells in patients of chronic myeloid leukemia, Chinese Journal of Hematology, 2007, 28(10), 706-707
【非特許文献19】LI, Yufeng et al., Effect of homoharringtonine on T and Th lymphocytes subsets in patients of chronic myeloid leukemia, Leukemia-Lymphoma, 2006, 15(1), 37-39
【非特許文献20】LI, Yufeng et al., Effect of homoharringtonine on the telomerase activity of bone marrow cells and K562 cells in patients of chronic myeloid leukemia, Chinese Journal of Hematology, 2003, 24(6), 329-329
【非特許文献21】MENG, Xiaoli, Effects of homoharringtonine on telomerase activity in HL60 cells, Journal of Zhengzhou University, 2004, 39(3), 440-442
【非特許文献22】XIE, Wanzhuo et al., Effect of telomerase in homoharringtonine-induced apoptosis of HL-60 cells, Chinese Journal of Medical Genetics, 2002, 19(2), 169-171
【発明の概要】
【0009】
本発明の一つの目的は、式(I)の新規なモノ−アシル化ホモハリントニン誘導体又は式(II)の新規なジ−アシル化ホモハリントニン誘導体
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R及びRは、H、C−C20アルキル、C−C20アルケニル、C−C20共役アルケニル、C−Cシクロアルキル又はシクロアルケニル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール及びアミノ酸側鎖残基から独立に選択され、水素を除くこれらは、ハロゲン、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、チオール及びC−Cアルキルチオからなる群から選択される1種又は2種以上の置換基で置換されていてもよく、前記C−Cシクロアルキル又はシクロアルケニル、アリール、ヘテロシクリル又はヘテロアリールは、C−Cアルキルで置換されていてもよく、前記C−C20アルキル、C−C20アルケニル又はC−C20共役アルケニルは、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよい);
又は薬学的に許容されるそれらの付加物、錯体若しくは塩を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、式(I)の化合物を得るための
1)活性化されていてもよいホモハリントニン及び有機酸RCOHを縮合エステル化させるステップ;
2)ホモハリントニン及び有機アシル塩化物RCOCl若しくは有機無水物(RCO)Oを縮合エステル化させるステップ;又は
3)活性化された有機酸RCOHをホモハリントニンと反応させるステップ
を含み、Rが、式(I)の化合物について上記に定義されているとおりである、本発明の式(I)のモノ−アシル化ホモハリントニン誘導体を調製するための方法を提供することである。
【0013】
本発明は、式(II)の化合物を得るための
1)活性化されていてもよいホモハリントニン及び有機酸RCOHを縮合エステル化させるステップ(式中、R=Rである)若しくは活性化されていてもよい式(I)の化合物及び有機酸RCOHを縮合エステル化させるステップ;
2)ホモハリントニン及び有機アシル塩化物RCOCl若しくは有機無水物(RCO)Oを縮合エステル化させるステップ(式中、R=Rである)若しくは式(I)の化合物及び有機アシル塩化物RCOCl若しくは有機無水物(RCO)Oを縮合エステル化させるステップ;又は
3)活性化された有機酸RCOHをホモハリントニンと反応させるステップ(式中、R=Rである)若しくは活性化された有機酸RCOHを式(I)の化合物と反応させるステップ
を含み、各式におけるR及びRが、式(II)の化合物について上記に定義されているとおりである、本発明の式(II)のジ−アシル化ホモハリントニン誘導体を調製するための方法も提供する。
【0014】
本発明の別の目的は、少なくとも1種の本発明の化合物を含み、薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい、本発明の化合物を含有する医薬組成物を提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、薬剤、とりわけ抗腫瘍薬の製造における、本発明の化合物又は前記化合物を含む医薬組成物の使用を提供することである。従って、本発明は、腫瘍を患う対象を治療する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の少なくとも1種の化合物の有効量を投与するステップを含む方法も提供する。前記腫瘍は、特に、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、肝癌、胃癌、乳癌、胆管細胞癌腫、膵癌、肺癌、結腸直腸癌、骨肉腫、黒色腫、ヒト子宮頸癌、神経膠腫、上咽頭癌腫、咽頭癌腫、食道癌、中耳腫瘍及び前立腺癌などから選択される。
【0016】
本発明は、腫瘍を治療するために使用される本発明の化合物にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】化合物BS−HH−002のH NMRスペクトルである。
図2】化合物BS−HH−002の13C NMRスペクトルである。
図3】化合物BS−HH−002のLC−MSスペクトルである。
図4】NOD/SCIDマウスの重量に対するBS−HH−002の効果の動的変化を示すプロットである。
図5】NOD/SCIDマウスにおける白血病の移植腫瘍に対するBS−HH−002の効果を描いている曲線である。
図6】NOD/SCIDマウスにおける白血病の移植腫瘍の重量に対するBS−HH−002の効果を示す図である。
図7】NOD/SCIDマウスにおける白血病の移植腫瘍の重量に対するBS−HH−002の効果を示す図であり、ここで、*は、対照群と比較してpが0.05未満であることを示す。
図8】BS−HH−002によるNOD/SCIDマウスにおける白血病の移植腫瘍に対する阻害を示す図である。
図9】BALB/c−nuヌードマウスの重量に対するBS−HH−002の効果を描いている曲線である。
図10】BALB/c−nuヌードマウスの移植胃腫瘍に対するBS−HH−002の効果を描いている曲線である。
図11】BALB/c−nuヌードマウスにおける胃癌の移植腫瘍の重量に対するBS−HH−002の効果を示す図である。
図12】BALB/c−nuヌードマウスにおける胃癌の移植腫瘍の重量に対するBS−HH−002の効果を示す図であり、ここで、*は、対照群と比較してpが0.05未満であることを示し、**は、pは0.01未満であることを示す。
図13】BS−HH−002によるBALB/c−nuヌードマウスにおける胃癌の移植腫瘍に対する阻害を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
具体的には、本発明は、とりわけ以下の項目に関する。
1.式(I)の新規なモノ−アシル化ホモハリントニン誘導体又は式(II)の新規なジ−アシル化ホモハリントニン誘導体
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、R及びRは、H、C−C20アルキル、C−C20アルケニル、C−C20共役アルケニル、C−Cシクロアルキル又はシクロアルケニル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール及びアミノ酸側鎖残基から独立に選択され、水素を除くこれらは、ハロゲン、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、チオール及びC−Cアルキルチオからなる群から選択される1種又は2種以上の置換基で置換されていてもよく、前記C−Cシクロアルキル又はシクロアルケニル、アリール、ヘテロシクリル又はヘテロアリールは、C−Cアルキルで置換されていてもよく、前記C−C20アルキル、C−C20アルケニル又はC−C20共役アルケニルは、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよい);
又は薬学的に許容されるそれらの付加物、錯体若しくは塩。
【0021】
2.R及びRが、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−C共役アルケニル、C−Cシクロアルキル又はシクロアルケニル、アリール、複素環式ラジカル、ヘテロアリール及びアミノ酸側鎖残基から独立に選択され、Hを除くこれらが、ハロゲン、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、チオール及びC−Cアルキルチオからなる群から選択される1種又は2種以上の置換基で置換されていてもよく、前記C−Cシクロアルキル又はシクロアルケニル、アリール、複素環式ラジカル又はヘテロアリールが、C−Cアルキルで置換されていてもよく、前記C−Cアルキル、C−Cアルケニル又はC−C共役アルケニルが、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよい、項目1に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【0022】
3.R及びRが、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから独立に選択され、これらが、ハロゲン、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、チオール及びC−Cアルキルチオからなる群から選択される1種又は2種以上の置換基で置換されていてもよく、前記C−Cシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールが、C−Cアルキルで置換されていてもよく、前記C−Cアルキル又はC−Cアルケニルが、アリール又はヘテロアリールで置換されていてもよい、項目1に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【0023】
4.R及びRが、C−Cアルキル、アリール又はヘテロアリールで置換されたC−Cアルキル、C−Cアルケニル、アリール又はヘテロアリールで置換されたC−Cアルケニル、C−Cシクロアルキル、アリール、C−Cアルキルで置換されたアリール、ヘテロアリール及びC−Cアルキルで置換されたヘテロアリールからなる群から独立に選択され、これらが、ハロゲン、アミノ、C−Cアルキルアミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、チオール及びC−Cアルキルチオからなる群から選択される1種又は2種以上の置換基で置換されていてもよい、項目1に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【0024】
5.R及びRが、C−Cアルキル、アリール又はヘテロアリールで置換されたC−Cアルキル、C−Cアルケニル、アリール又はヘテロアリールで置換されたC−Cアルケニル、C−Cシクロアルキル、アリール、C−Cアルキルで置換されたアリール、ヘテロアリール及びC−Cアルキルで置換されたヘテロアリールからなる群から独立に選択され、これらのそれぞれが、1種又は2種以上のハロゲン原子で置換されていてもよい、項目1に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【0025】
6.アリールが、フェニルであり;ヘテロアリールが、フラニル、チオフェニル、ピリジニル、オキサゾリル又はイソオキサゾリルであり;C−Cシクロアルキルが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルであり;前記基のそれぞれが、C−Cアルキル(好ましくはメチル)又はハロゲン原子(好ましくは塩素若しくは臭素)で置換されていてもよい、項目1〜5のいずれかに記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【0026】
7.式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩である、項目1〜6のいずれかに記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【0027】
8.Rが、C−Cアルキル、アリール又はヘテロアリールで置換されたC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリール、C−Cアルキルで置換されたアリール、ヘテロアリール及びC−Cアルキルで置換されたヘテロアリールからなる群から選択され、これらのそれぞれは、1種又は2種以上のハロゲン原子で置換されていてもよい、項目7に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【0028】
9.アリールが、フェニルであり;ヘテロアリールが、フラニル、ピリジニル又はチアゾリルであり;シクロアルキルが、シクロペンチルであり、これらのそれぞれが、1種又は2種以上のハロゲン原子で置換されていてもよい、項目8に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【0029】
10.Rが、メチル;フラニル;ハロゲンで置換されていてもよいピリジニル;メチルで置換されていてもよいチアゾリル;フェニル;及びシクロペンチルからなる群から選択される、項目9に記載のアシル化ホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩。
【0030】
本発明の化合物のいくつかの例を以下に示す。列挙された化合物は、もっぱら本発明を例示するためのものであり、いかなる意味においても本発明の範囲を制限するものと理解されるべきではない。
【0031】
【化4】

【0032】
上記に示された化合物のいくつかの特徴データを次の表に列挙する。
【0033】
【表1】
【0034】
本発明によれば、以下の化合物は特に好ましい。
【0035】
【化5】

【0036】
本発明は、式(I)又は式(II)の本発明の化合物の塩、溶媒和物、水和物、付加物、錯体、多形体又はプロドラッグにも関する。
【0037】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、指定数の炭素原子を含有する直鎖状又は分岐状炭化水素ラジカル、例えば、C−C20アルキル、C−Cアルキル、C−Cアルキル、C−Cアルキルなどを意味する。アルキルの例には、これらに限定するものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−エイコシルなどが含まれる。
【0038】
用語「アルケニル」は、指定数の炭素原子及び少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含有する直鎖状又は分岐状炭化水素ラジカル、例えば、C−C20アルケニル、C−C10アルケニル、C−Cアルケニル、C−Cアルケニル、C−Cアルケニル、C−Cアルケニル、C−Cアルケニルなどを意味する。アルケニルの例には、これらに限定するものではないが、ビニル、アリル及びエイコセニルが含まれる。
【0039】
用語「共役アルケニル」は、指定数の炭素原子及び共役した少なくとも2個の炭素−炭素二重結合を含有する直鎖状又は分岐状炭化水素ラジカル、例えば、C−C20共役アルケニル、C−C18共役アルケニル、C−C10共役アルケニル、C−C共役アルケニル、C−C共役アルケニル、C−C共役アルケニル、C−C共役アルケニルなどを意味する。共役アルケニルの例には、これらに限定するものではないが、共役ブタジエニル、及び(9Z)−オクタデカ−9−エニルが含まれる。
【0040】
用語「C−Cシクロアルキル又はシクロアルケニル」は、飽和又は不飽和の3〜7員単環式炭化水素ラジカルを意味する。C−Cシクロアルキルの代表例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロプロペニル及びシクロヘキセニルであり得る。
【0041】
用語「アリール」は、6〜14個の炭素原子を含有する単環式アリール又は縮合若しくは非縮合多環式アリールを意味する。多環式アリールの場合、少なくとも1個の環は、芳香族である。アリールは、複素環式ラジカルと縮合したものであってもよい。アリールの例には、フェニル、ビフェニル、ナフチル、5,6,7,8−テトラヒドロナフチル、2,3−ジヒドロベンゾフラニルなどが含まれる。
【0042】
用語「ヘテロアリール」は、環原子(複数可)として環中に1〜4個のヘテロ原子(例えば1、2、3又は4個のヘテロ原子)を有する芳香族環基を意味する。ヘテロ原子は、窒素、酸素又は硫黄を意味する。ヘテロアリールは、5〜7個の環原子を有する単環式ヘテロアリール又は7〜11個の環原子を有する二環式ヘテロアリールであり得る。前記二環式ヘテロアリールは、少なくとも1個の芳香族複素環を含むべきであり、他の環(複数可)は、ヘテロ原子を含む又は含まない芳香族又は非芳香族であってよい。ヘテロアリールの例には、例えば、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、フラニル、チオフェニル、イソオキサゾリル、インドリルなどが含まれる。
【0043】
「ヘテロシクリル」は、環原子として1〜4個のヘテロ原子(例えば1、2、3又は4個のヘテロ原子)を含有する非芳香族環式基を意味する。ヘテロ原子は、窒素、酸素又は硫黄を意味する。複素環式ラジカルは、4〜8個の環原子を有する単環式複素環式ラジカル又は7〜11個の環原子を有する二環式複素環式ラジカルであり得る。複素環式ラジカルは、飽和していてよく、又は飽和しておらず同時に芳香族でなくてよい。複素環式ラジカルの例には、アザシクロブチル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、ピペラジニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニルなどが含まれる。
【0044】
用語「アミノ酸」は、天然アミノ酸を意味する。
【0045】
用語「アミノ酸側鎖残基」は、α炭素上のカルボキシル以外のアミノ酸部分を意味する。
【0046】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。
【0047】
用語「アルキルアミノ」は、指定数の炭素原子を有する1個又は2個のアルキル(シクロアルキルを含む)で置換されたアミノ基を意味する。
【0048】
用語「アルコキシ」には、アルコキシ及びシクロアルキルオキシが含まれる。
【0049】
用語「アルキルチオ」には、アルキルチオ及びシクロアルキルチオが含まれる。
【0050】
用語「式(I)又は式(II)の化合物の薬学的に許容される付加物、又は錯体」は、非化学結合又は非共有分子間力を介してさらに結合した小分子又は生体高分子と、本発明の化合物によって形成される生成物を意味する。
【0051】
本明細書で使用される用語「式(I)又は式(II)の化合物の薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容される陰イオンを含む有機酸と本発明の化合物によって形成される有機酸塩を意味する。これらの有機酸塩には、これらに限定するものではないが、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、乳酸塩、α−ケトグルタル酸塩、及びα−グリセロリン酸塩が含まれる。これらに限定するものではないが、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩及び炭酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩などを含む好適な無機塩も形成され得る。
【0052】
薬学的に許容される塩は、当技術分野でよく知られている標準的な手法を使用して、例えば、十分な量のアルカリ化合物を、薬学的に許容される陰イオンを提供する好適な酸と反応させることによって得ることができる。
【0053】
本明細書で使用される用語「多形体」は、本発明の化合物又はその錯体の固体結晶形態を意味する。一つの同じ化合物の種々の多形体が、異なる物理的、化学的及び/又は分光学的特性を示し得る。異なる物理的特性には、これらに限定するものではないが、安定性(例えば、熱及び光安定性)、圧縮性及び密度(これらは、製品の製剤化及び製造のために重要である)、及び溶出速度(これは、その生物学的利用能及び吸収性に影響を与え得る)が含まれる。安定性における差異は、化学反応性(例えば、一つの多形体からなる剤形が、別の多形体からなるものに比べてより急速に変色するような、特異的酸化)又は機械的特性(例えば、貯蔵において、動力学的に有利な多形体の錠剤の粉砕された部分は、熱力学的により安定な多形体に変換される)又は両方(例えば、一つの多形体からなる錠剤は、高湿度においてより崩壊しやすい)において変化をもたらし得る。種々の多形体の異なる物理的特性は、それらの加工に影響を与え得る。例えば、一つの多形体は、例えば、それらの異なる粒子形状又は粒度分布のために、別のものに比べて、より溶媒和を形成しやすいことがあり、又は洗浄によって濾過若しくは精製されにくいことがある。
【0054】
本明細書で使用される用語「水和物」は、非共有分子間力で結合した化学量論量又は非化学量論量の水をさらに含む本発明の化合物又はその塩を意味する。
【0055】
他に指示がない限り、本明細書で使用される用語「プロドラッグ」は、生物学的条件(インビトロ又はインビボ)下で加水分解、酸化、又は他の反応によって、本発明の化合物を提供し得る本発明の化合物の誘導体を意味する。プロドラッグは、生物学的条件下でこのような反応によってのみ活性になり得、又はその未反応形態で活性を有し得る。典型的には、プロドラッグは、既知の方法、例えば、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery (1995) 172-178, 949-982 (Manfred E. Wolff, 5th edition)、Prodrugs and Targeted Delivery by J. Rautio (2011) 31-60 (Wiley-VCH, Methods and Principles in Medicinal Chemistry, Vol. 47)、及びFundamentals of Medicinal Chemistry (2003) by G. Thomas, 195-200 (Wiley)に記載されたものを使用して調製され得る。
【0056】
本発明の化合物において、ホモハリントニン誘導体は、構造式I及び式IIによって示される立体化学構造中に四つのキラル中心を有する。本明細書で使用される立体化学的な定義及び慣例は、一般的に、MCGRAW-HILL DICTIONARY OF CHEMICAL TERMS (S. P. Parker, Ed., McGraw-Hill Book Company, New York, 1984);及びELIEL, E. AND WILEN, S., STEREOCHEMISTRY OF ORGANIC COMPOUNDS (John Wiley & Sons, Inc., New York, 1994)に従う。多くの有機化合物は、光学活性な形態で存在する、即ち、それらは、平面偏光の平面を回転させる能力を有する。
【0057】
本明細書で使用される用語「治療」、「治療すること」、「治療する」などは、一般的に、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを意味する。効果は、疾患又はその症状を完全に又は部分的に防ぐことに関して予防的であり得、並びに/又は疾患及び/若しくは該疾患に起因する副作用の部分的若しくは完全な安定化若しくは治癒に関して治療的であり得る。本明細書で使用される「治療」は、対象における疾患のいかなる治療も対象にし、(a)疾患又は症状にかかりやすいが、それを有すると未だ診断されていない対象において疾患又は症状が発生するのを防ぐこと;(b)疾患の症状を抑制すること、即ち、その進行を止めること;或いは(c)疾患の症状を軽減すること、即ち、疾患又は症状の退行を引き起こすことを含む。
【0058】
本発明の化合物は、従来の有機化学合成方法により調製することができる。例えば、本発明の式(I)の化合物は、典型的に次のとおり調製される。
【0059】
【化6】
【0060】
6位においてアシル化又はエステル化されている式(I)の化合物は、抽出された天然ホモハリントニン(HHT)を適切な有機酸、有機無水物又は有機アシル塩化物と反応させることによって調製することができる。式(I)中のRは、式(I)について上記に定義されたとおりである。
【0061】
【化7】
【0062】
2’及び6’位においてジアシル化又はジエステル化されている式(II)の化合物も、抽出された天然ホモハリントニン(HHT)を適切な有機酸、有機無水物又は有機アシル塩化物と反応させることによって1段階プロセスで調製することができる。別法として、それらは、式(I)の化合物の中間体を適切な有機酸、有機無水物又は有機アシル塩化物と反応させることによって2段階プロセスで調製することもできる。式(II)中のR及びRは、式(II)について上記に定義されている。
【0063】
例えば、本発明は、本発明の式(I)のモノ−アシル化ホモハリントニン誘導体を調製するための以下の方法を提供する。
【0064】
【化8】
【0065】
式(I)のモノ−アシル化ホモハリントニン誘導体は、縮合剤又は触媒の存在下でホモハリントニン及び有機酸RCOHを縮合エステル化させることによって調製することができる。それは、縮合剤又はアルカリ性試薬の存在下でホモハリントニン及び有機アシル塩化物RCOCl又は有機無水物(RCO)Oを縮合エステル化させることによって調製することもできる。式(I)のモノ−アシル化ホモハリントニンアルカリ誘導体は、有機酸RCOHを活性化して中間体にし、この中間体が続いてホモハリントニンと反応することで調製され得る。式(I)のモノ−アシル化ホモハリントニンアルカリ誘導体は、ホモハリントニンのヒドロキシルを活性化して中間体を形成し、この中間体が続いて有機酸RCOHと反応することでも調製され得る。式(I)中のR、有機酸RCOH中のR及び有機アシル塩化物RCOCl中のRの定義は、上記に式(I)において定義されたものと同一である。
【0066】
本発明は、本発明の式(II)のジ−アシル化ホモハリントニン誘導体を調製するための以下の方法も提供する。
【0067】
【化9】
【0068】
式(II)のジ−アシル化ホモハリントニン誘導体は、上記の方法に従い式(I)のモノ−アシル化ホモハリントニン誘導体を最初に生成し、続いて、縮合剤又は触媒の存在下で式(I)の前記誘導体及び有機酸RCOHを縮合エステル化させることによって調製することができる。それは、縮合剤又はアルカリ性試薬の存在下で式(I)の前記モノ−アシル化ホモハリントニン誘導体及び有機アシル塩化物RCOCl又は有機無水物(RCO)Oを縮合エステル化させることによって調製することもできる。式(II)のジ−アシル化ホモハリントニンアルカリ誘導体は、有機酸RCOHを活性化して中間体にし、この中間体が続いて式(I)のモノ−アシル化ホモハリントニンアルカリ誘導体と反応することで調製され得る。式(II)のジ−アシル化ホモハリントニンアルカリ誘導体は、式(I)のモノ−アシル化ホモハリントニンアルカリ誘導体のヒドロキシルを活性化して中間体を形成し、この中間体が続いて有機酸RCOHと反応することでも調製され得る。
【0069】
式(I)中のR、有機酸RCOH中のR、有機アシル塩化物RCOCl中のR及び有機無水物(RCO)中のRは、上記に式(I)において定義されたものと全て同一である。式(II)中のR及びR、有機酸RCOH中のR、有機アシル塩化物RCOCl中のR、有機酸RCOH中のR及び有機アシル塩化物RCOCl中のRは、上記に式(I)及び式(II)において定義されたものと全て同一である。上記方法は、R及びRが異なる誘導体を調製するためにより適している。R及びRが同じであるジ−アシル化誘導体について、それらの調製は、以下の方法に従って行うことができる。
【0070】
【化10】
【0071】
式(II)の前記ジ−アシル化ホモハリントニン誘導体は、有機酸供給のモル比を増加させること、反応持続時間を延長すること、及び/又はより強い活性化剤を使用することによって調製することができる。上記の有機酸RCOHは、有機酸RCOH又は有機酸RCOHであってよく;式(II)中のR及びRは、上記の式(II)において定義されたものと同一である。
【0072】
上記反応は、典型的に、アルカリ又はアルカリ性試薬の存在下で実施される。本明細書におけるアルカリは、これらに限定するものではないが、有機アルカリ、例えば、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、又はジメチルアミノピリジンであってよい。
【0073】
上記反応は、典型的に、溶液中で実施される。本明細書で使用される溶媒には、これらに限定するものではないが、非プロトン性極性溶媒、例えば、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)又はテトラヒドロフラン(THF)などが含まれる。
【0074】
上記反応は、典型的に、0℃〜50℃の温度で起こり、この温度は、一般的に、使用される原料及びアルカリによって変わる。
【0075】
上記調製反応の原料は、ホモハリントニン(HHT)であり、これは、天然産物からの抽出によって得られ、市販されている。
【0076】
上記調製反応のための有機酸、有機無水物又は有機アシル塩化物は、市販されている。
【0077】
従来の化学変換方法が、本発明を実施するために使用され得る。当業者は、これらの化学変換のために、好適な化学薬品、溶媒、保護基、及び反応条件を決めることができる。関連する情報は、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989);T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons (1999);L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994);及びL. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)及びそれらの後続版に記載されている。
【0078】
保護基は、活性部分(例えば、ヒドロキシル又はアミノ基)に付着することによって、後続の反応において該部分を干渉から防ぎ、該反応の後、従来の方法によって取り除くことができる基を意味する。ヒドロキシル保護基の例には、これらに限定されるものではないが、アルキル、ベンジル、アリル、トリチル(トリフェニルメチルとしても知られている)、アシル(例えば、ベンゾイル、アセチル、又はHOOC−X”−CO−(式中、X”は、アルキリデン、アルケニレン、シクロアルキレン、又はアリーレンである))、シリル(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、及びt−ブチルジメチルシリル)、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル(例えば、ジメチルアミノカルボニル、メチルエチルアミノカルボニル、及びフェニルアミノカルボニル)、アルコキシメチル、ベンジルオキシメチル、及びアルキルメルカプトメチルが含まれる。アミノ保護基の例には、これらに限定するものではないが、アルコキシカルボニル、アルカノイル、アリールオキシカルボニル、アリール置換されたアルキルなどが含まれる。ヒドロキシル及びアミノ保護基は、T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd. Ed., John Wiley and Sons (1991)において議論されている。全てのヒドロキシル及びアミノ保護基は、反応後に従来の方法によって取り除くことができる。
【0079】
本発明は、本発明の式(I)又は式(II)の化合物を含む医薬組成物も提供する。
【0080】
本発明は、上記に定義された本発明の式(I)又は式(II)の少なくとも1種の化合物を含み、薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい医薬組成物を提供する。
【0081】
所与の量の活性成分を有する種々の医薬組成物を調製する方法は、知られており、又は本開示に照らして当業者には明らかである。REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, Martin, E.W., ed., Mack Publishing Company, 19th ed. (1995)に記載されているように、このような医薬組成物を調製する方法は、他の好適な医薬賦形剤、担体、希釈剤などの組み込みを含む。
【0082】
本発明の医薬製剤は、混合、溶解又は凍結乾燥プロセスを含めた既知の方法によって生成される。
【0083】
本発明の化合物は、医薬組成物に処方し、選択された投与様式に適した経路で、例えば、経口で又は非経口(例えば、静注経路、筋肉内経路、局所経路又は皮下経路によって)で対象に投与することができる。
【0084】
従って、本化合物は、不活性希釈剤又は食用担体などの薬学的に許容される担体と共に、全身投与、例えば、経口投与することができる。それらは、硬又は軟ゼラチンカプセル剤に封入することができ、又は錠剤に圧縮することができる。治療的経口投与について、活性化合物は、1種又は2種以上の賦形剤と組み合わせることができ、摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤(wafer)などの形態に取り入れることができる。このような組成物又は製剤は、少なくとも0.1%の活性化合物を含有すべきである。当然、組成物及び製剤中の活性化合物の割合は、変わってよく、所与の単位剤形の約1重量%から約99重量%であってよい。治療的に有用な組成物において、活性化合物は、有効な用量レベルが達成される量で存在する。
【0085】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などは、結合剤、例えばトラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ若しくはゼラチン;賦形剤、例えばリン酸二水素カルシウム;崩壊剤、例えばコーンスターチ、バレイショデンプン、アルギン酸など;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム;及び甘味剤、例えば、スクロース、フルクトース、ラクトース若しくはアスパルテーム;又は着香料、例えば、ペパーミント、ウインターグリーン油若しくはサクランボ香料も含むことができる。単位剤形がカプセル剤である場合、それは、上記の材料に加えて、植物油又はポリエチレングリコールなどの液体媒体を含むことができる。種々の他の材料が、コーティングとして存在してよく、又は固体単位剤形の物理的形態を他の状態に変更することがある。例えば、錠剤、丸剤又はカプセル剤は、ゼラチン、ワックス、セラック又は砂糖などでコーティングすることができる。シロップ剤又はエリキシル剤は、活性化合物、スクロース又はフルクトースなどの甘味剤、メチルパラベン又はプロピルパラベンなどの保存料、染料及び着香料(サクランボ又はオレンジ香料など)を含有することがある。当然、単位剤形の調製において使用されるいかなる材料も、薬学的に許容され、使用される量において実質的に非毒性であるべきである。加えて、活性化合物は、持続放出製剤又はデバイスに組み込むことができる。
【0086】
活性化合物は、注入又は注射によって静脈内又は腹腔内投与することもできる。活性化合物又はその塩の水溶液を調製してよく、非毒性の界面活性剤と混合してもよい。同様に、調製し得るものは、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、又はそれらの混合物中、又は油中の分散液である。通常の貯蔵及び使用条件下で、これらの製剤は、微生物の成長を防ぐために保存料を含有する。
【0087】
注射又は注入に適する医薬品剤形は、活性成分(リポソーム中に封入されていてもよい)を含む無菌水溶液、分散液又は無菌粉末を含んでよく、これらは、無菌注射又は注入用溶液又は分散液の即時調製に適合している。あらゆる場合において、最終剤形は、製造及び貯蔵条件下で無菌の安定な液体でなければならない。液体担体又は媒体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、及びそれらの好適な混合物を含む溶媒又は液体分散媒であってよい。適正な流動性は、例えば、リポソームの形成によって、分散液の場合における必要粒径の維持によって又は界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の予防は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、好ましくは、等張剤、例えば、砂糖、緩衝剤又は塩化ナトリウムが含まれる。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせるための薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物の使用によって得ることができる。
【0088】
注射用無菌溶液は、好適な溶媒中の活性化合物の必要量を上記に列挙された種々の追加の所望の成分と組み合わせ、続いて濾過及び滅菌することによって調製する。注射用無菌溶液を調製するために使用される無菌粉末について、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、これらの技術は、以前に濾過した無菌溶液中に存在するいかなる追加の所望の成分も加えた活性成分の粉末をもたらす。
【0089】
有用な固体担体には、タルク、クレイ、微結晶性セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉固体が含まれる。有用な液体担体には、水、エタノール若しくはエチレングリコール又は水−エタノール/エチレングリコール混合物が含まれ、これらの中に、本発明の化合物を、任意選択で非毒性の界面活性剤を用いて、有効な含有率で溶解又は分散することができる。アジュバント(香料など)及び追加の抗菌剤を、所与の用途のための特性を最適化するために添加することができる。
【0090】
粘稠化剤(合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩及びエステル、脂肪アルコール、変性セルロース又は変性無機材料など)は、使用者の皮膚に直接塗布するための塗り広げ可能なペースト剤、ゲル、軟膏、石鹸などを形成するために液体担体と共に使用することもできる。
【0091】
治療に必要な化合物又はその活性塩若しくは誘導体の量は、選択される特定の塩のみならず、投与経路、治療すべき状態の性質並びに対象の年齢及び状態に応じて変わり、最終的には、主治内科医又は臨床医の裁量によって決められる。
【0092】
上記製剤は、ヒト又は他の哺乳類への投与に適している単位用量を含有する物理的に分離した単位である単位剤形で存在してよい。単位剤形は、1個のカプセル剤若しくは1個の錠剤、又は複数個のカプセル剤若しくは錠剤であってよい。目的とする特定の療法に応じて、単位剤形中の活性成分の量を、約0.1mg〜約1,000mg以上の範囲で変更又は調節することができる。
【0093】
本発明は、薬剤、特に抗腫瘍薬の製造における、本発明による化合物又は本発明の化合物を含む医薬組成物の使用も提供する。従って、本発明は、腫瘍を患う対象を治療する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の少なくとも1種の化合物の治療有効量を投与するステップを含む方法を提供する。本発明のホモハリントニン誘導体又は薬学的に許容されるその塩を、例えば、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、肝癌、胃癌、乳癌、胆管細胞癌腫、膵癌、肺癌、結腸直腸癌、骨肉腫、黒色腫、子宮頸癌、神経膠腫、上咽頭癌腫、咽頭癌腫、食道癌、中耳腫瘍、前立腺癌などの治療のために使用することができる。
【0094】
本発明を、以下の実施例によってより詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、例示のみを目的としており、決して本発明の範囲を制限することを目的としていないことは理解されるべきである。
【0095】
以下の実施例において使用される原料薬品は、市販されているか、当技術分野で知られている合成法によって得ることができる。
【0096】
[実施例1]
化合物BS−HH−001の合成
【0097】
【化11】
【0098】
式中、HHT:ホモハリントニン;AcO:無水酢酸;DIPEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン;DMAP:4−ジメチルアミノピリジン;DCM:ジクロロメタン;BS−HH−001:2,6−ジアセチルホモハリントニン;BS−HH−002:6−アセチルホモハリントニン。
【0099】
ホモハリントニンHHT(125mg、0.23mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(444mg、3.44mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(28mg、0.023mmol)を、ジクロロメタン(2mL)中に溶解する。無水酢酸(351mg、3.44mmol)を、この混合溶液に添加し、35℃未満で24時間反応させる。この反応溶液を水で、次いで飽和重炭酸ナトリウムですすぎ、乾燥し濃縮する。得られる粗生成物を、分取液体クロマトグラフィーによって精製して白色固体として化合物BS−HH−001(43.3mg、30%)を得る。
LC−MS:保持時間:1.11分(98.7%)、m/z:630.5[M+H]
H NMR(300MHz,CDCl):δ 6.60(d,2H)、5.80〜5.93(m,3H)、5.02(s,1H)、3.76(d,J=9.9Hz,1H)、3.67(s,3H)、3.60(s,3H)、3.03〜3.17(m,2H)、2.84(d,J=15.0Hz,1H)、2.52〜2.67(m,3H)、2.37(dd,J=13.5Hz,6.3Hz,1H)、2.00(s,3H)、1.95(s,3H)、1.39(d,6H)。
【0100】
[実施例2]
化合物BS−HH−002の合成
【0101】
【化12】
【0102】
式中、HHT:ホモハリントニン;AcO:無水酢酸。
【0103】
ホモハリントニンHHT(1g、1.84mmol)を、AcO(20mL)に添加し、この反応混合物を、80℃まで加熱し、13時間撹拌する。反応が完了した後、この反応溶液を濃縮して粘稠な粗生成物を得、これに、硬化のために、ジエチルエーテルを添加する。次いで、酢酸エチルを、硬化した粗生成物に添加してそれを溶解する。この混合物を、炭酸カリウムの飽和溶液ですすぎ、次いで濃縮する。得られる粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(EA:PE=1:2)によって精製して黄色の油を得、次いで、これを、ジエチルエーテルと共に再結晶化して白色固体として化合物BS−HH−002(654mg、61%)を得;その間に、ホモハリントニンHHT原料を回収する(354mg)。
BS−HH−002:LC−MS:保持時間:1.00分(96.74%)、m/z:588.2[M+H]
H NMR(400MHz,CDCl):δ6.62(s,1H)、6.55(s,1H)、5.99(d,J=9.6Hz,1H)、5.87(d,J=3.2Hz,2H)、5.06(s,1H)、3.78(d,J=9.6Hz,1H)、3.68(s,3H)、3.57(s,3H)、3.52(s,1H)、3.15〜3.07(m,2H)、2.99〜2.91(m,1H)、2.63〜2.59(m,2H)、2.41〜2.36(m,1H)、2.21(d,J=16.4Hz,1H)、2.05〜1.87(m,6H)、1.76(m,2H)、1.68〜1.63(m,2H)、1.46〜1.39(m,9H)、1.23〜1.14(m,1H)。13C NMR(400MHz,CDCl):δ173.91、170.41、170.30、157.65、146.62、145.75、133.11、128.13、112.60、109.57、100.75、100.03、82.14、74.67、74.41、70.57、57.31、55.63、53.81、51.47、48.48、43.17、42.36、40.57、38.76、31.14、25.70、22.44、20.44、20.13、17.44。
【0104】
得られる化合物BS−HH−002のH NMRスペクトルを、図1に、13C NMRスペクトルを、図2に、LC−MSスペクトルを、図3に示す。
【0105】
[実施例3]
化合物BS−HH−077の合成
【0106】
【化13】

【0107】
式中、HHT:ホモハリントニン;Yi:シクロペンタンカルボン酸;4−ppy:4−(1’−テトラヒドロピロール)ピリジン;DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド;DCM:ジクロロメタン。
【0108】
ホモハリントニン(110mg、0.2mmol)、シクロペンタンカルボン酸(46mg、0.4mmol)及び4−(1’−テトラヒドロピロール)ピリジン(60mg、0.4mmol)を、ジクロロメタン(2mL)中に溶解する。ジシクロヘキシルカルボジイミド(83mg、0.4mmol)を、この溶液に添加し、これを、3時間、加熱還流した後に濾過する。この濾液を濃縮し、得られる粗生成物を、高速液体クロマトグラフィーによって精製して、淡黄色の粉末状固体としてBS−HH−077(35.9mg、28%)を得る。
LC−MS:保持時間:1.52分(95.63%)、m/z:642.6[M+H]
H NMR(300MHz,CDCl):δ6.63(s,1H)、6.59(s,1H)、5.99(d,J=9.0Hz,1H)、5.90(m,2H)、5.09(s,1H)、3.80(m,1H)、3.73(s,3H)、3.57(s,3H)、3.49〜3.54(m,1H)、2.73〜3.02(m,2H)、2.42〜2.65(m,3H)、2.27(m,1H)、2.03〜2.24(m,3H)、1.76〜1.84(m,3H)、1.56(m,2H)、1.40(d,6H)。
【0109】
BS−HH−0022を、ホモハリントニンをフラン−2−アクリル酸と反応させることによって、同じ試薬を使用してBS−HH−001の方法に従って調製する。
LC−MS:保持時間:1.69分(70.42%)、m/z:786.8[M+H]
H NMR(300MHz,CDCl):δ7.46(d,J=6Hz,2H)、7.37〜7.29(m,2H)、6.60(m,4H)、6.46(s,2H)、6.25(d,2H)、5.93(m,3H)、3.71(s,3H)、3.57(s,3H)、1.46(s,6H)。
【0110】
BS−HH−0572を、ホモハリントニンをチオフェン−2−カルボン酸と反応させることによって、同じ試薬を使用してBS−HH−001の方法に従って調製する。
LC−MS:保持時間:1.65分(94.68%)、m/z:766.5[M+H]
H NMR(300MHz,CDCl):δ7.71(m,2H)、7.53(m,2H)、7.05(m,2H)、6.60(d,2H)、5.99(d,1H)、3.75(s,1H)、3.62(s,3H)、3.52(s,3H)、2.24(s,2H)、1.55(d,6H)。
【0111】
BS−HH−059を、ホモハリントニンをフラン−2−カルボン酸と反応させることによって、同じ試薬を使用してBS−HH−077の方法に従って調製する。
LC−MS:保持時間:1.41分(100%)、m/z:640.3[M+H]
H NMR(300MHz,CDCl):δ7.54(m,1H)、7.05(d,1H)、6.58(s,1H)、6.53(s,1H)、6.47(m,1H)、5.99(d,J=9.0Hz,1H)、5.86(m,2H)、5.03(s,1H)、3.78(d,J=9.0Hz,1H)、3.65(s,3H)、3.56(s,3H)、3.51(s,1H)、3.12(m,2H)、2.61(m,1H)、2.38(dd,J=9Hz,2H)、1.86(m,2H)、1.54(d,6H)。
【0112】
BS−HH−061を、ホモハリントニンを5−メチルイソオキサゾール−4−カルボン酸と反応させることによって、同じ試薬を使用してBS−HH−077の方法に従って調製する。
LC−MS:保持時間:1.46分(89.16%)、m/z:655.6[M+H]
H NMR(300MHz,CDCl):δ6.63(s,1H)、6.55(s,1H)、6.00(d,J=9.0Hz,1H)、5.87(m,2H)、5.34(s,1H)、5.06(s,1H)、3.81(d,J=12Hz,1H)、3.69(s,3H)、3.57(s,3H)、3.48(s,1H)、2.61(m,2H)、2.31(m,2H)、2.26(s,3H)、1.49(s,6H)。
【0113】
BS−HH−062を、ホモハリントニンをシクロプロパンカルボン酸と反応させることによって、同じ試薬を使用してBS−HH−077の方法に従って調製する。
LC−MS:保持時間:1.40分(93.07%)、m/z:614.6[M+H]
H NMR(300MHz,CDCl):δ6.62(s,1H)、6.57(s,1H)、6.02(d,J=12.0,1H)、5.90(m,2H)、5.05(s,1H)、3.71(m,4H)、3.57〜3.49(m,4H)、1.41(d,6H)、0.90(m,2H)、0.77(m,2H)。
【0114】
BS−HH−066を、ホモハリントニンを2−クロロニコチン酸と反応させることによって、同じ試薬を使用してBS−HH−077の方法に従って調製する。
LC−MS:保持時間:1.41分(99.12%)、m/z:685.7[M+H]
【0115】
BS−HH−0721を、ホモハリントニンを4−メチルチアゾール−5−カルボン酸と反応させることによって、同じ試薬を使用してBS−HH−077の方法に従って調製する。
LC−MS:保持時間:1.40分(91.07%)、m/z:671.6。
H NMR(300MHz,CDCl):δ8.73(s,1H)、6.60(s,1H)、6.56(s,1H)、6.00(d,J=9.0Hz,1H)、5.89(m,2H)、5.15(s,1H)、3.76〜3.84(m,1H)、3.68(s,3H)、3.57(s,3H)、3.48(s,1H)、2.73(s,3H)、1.52(d,6H)。
【0116】
BS−HH−0722を、ホモハリントニンを4−メチルチアゾール−5−カルボン酸と反応させることによって、同じ試薬を使用してBS−HH−001の方法に従って調製する。
LC−MS:保持時間:1.54分(92.92%)、m/z:796.9[M+H]
H NMR(300MHz,CDCl):δ8.74(d,2H)、6.64(d,2H)、5.93(m,3H)、5.05(s,1H)、3.78(m,1H)、3.67(s,3H)、3.54(s,3H)、3.48(s,3H)、3.10(m,2H)、2.73(d,6H)、1.54(d,6H)。
【0117】
BS−HH−0732を、ホモハリントニンを安息香酸と反応させることによって、同じ試薬を使用してBS−HH−001の方法に従って調製する。
LC−MS:保持時間:1.69分(78.92%)、m/z:754.8[M+H]
H NMR(300MHz,CDCl):δ7.98〜7.88(m,4H)、7.53(m,2H)、7.43〜7.36(m,4H)、6.66(s,1H)、6.60(s,1H)、5.93(m,3H)、5.92(m,3H)、3.63(s,3H)、3.49(s,3H)、1.55(d,6H)。
【0118】
BS−HH−074を、ホモハリントニンをフェニル酢酸と反応させることによって、同じ試薬を使用してBS−HH−077の方法に従って調製する。
LC−MS:保持時間:1.48分(87.91%)、m/z:664.7[M+H]
H NMR(300MHz,CDCl):δ7.28〜7.34(m,5H)、6.62(s,1H)、6.58(s,1H)、5.99(d,J=9.0,1H)、5.9(m,2H)、3.69(s,1H)、3.58(s,3H)、3.50(s,3H)、3.48(s,1H)、1.40(s,3H)、1.37(s,3H)。
【0119】
BS−HH−076を、ホモハリントニンをシクロヘキサンカルボン酸と反応させることによって、同じ試薬を使用してBS−HH−077の方法に従って調製する。
LC−MS:保持時間:1.56分(79.98%)、m/z:656.6[M+H]
H NMR(300MHz,CDCl):δ6.61(s,1H)、6.55(s,1H)、5.97(d,J=9.0,1H)、5.88(m,2H)、5.06(s,1H)、3.81(d,1H)、3.70(s,3H)、3.57(s,3H)、3.48(s,1H)、1.40(s,3H)、1.36(s,3H)。
【0120】
[実施例4]
それらの抗白血病活性についての本発明のホモハリントニン誘導体の評価
(1)実験材料
白血病細胞株:白血病細胞株:K562/adr(薬物耐性、慢性骨髄性白血病(CML,chronic myeloid leukemia))、NB4(急性前骨髄球性白血病(AML,acute promyelocytic leukemia))、Kasumi−1(急性骨髄性白血病M2型(AML−M2,acute myeloid leukemia M2 type))、Jurkat(急性リンパ芽球性白血病(ALL,acute lymphoblastic leukemia))(これらの全ては、Cancer Research Institute of Zhejiang University、Chinaによって寄贈される);及びH9(急性リンパ芽球性白血病、ALL)(これは、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)から購入される)。
試薬:Taihua Natural Plant Pharmaceutical Co., Ltd.社、Shaanxi、Chinaから購入したホモハリントニン(HHT)の標準試料、本発明のホモハリントニン誘導体。
主要な装置:Thermo Scientific 3111インキュベーター及びBio-Rad iMarkマイクロプレートリーダー。
【0121】
(2)実験方法
6000個の十分に成長している白血病細胞を得、96ウェル細胞培養プレートのウェルにそれらを接種する。培養基は、10%ウシ胎仔血清を含有する1640細胞培養基である。様々な濃度のホモハリントニン誘導体を添加し均一に混合した後、37℃の二酸化炭素細胞インキュベーター(5%CO)中にプレートを置き、72時間インキュベートする。次いで、生存細胞濃度を、MTT法によって求める。本実験において、対照群(いかなる化合物によっても処理されていない)における細胞生存度を、100%として設定する。このような基準に基づいて、72時間における白血病細胞成長についての処理後の細胞生存度(%)及び化合物の50%阻害濃度(72時間のIC50値)を計算する。
【0122】
(3)実験結果
実験結果を表1に示す。表1は、本発明のアシル化ホモハリントニン誘導体は、ヒト慢性骨髄性白血病細胞、急性骨髄性白血病細胞及び急性リンパ性白血病細胞の細胞死を誘発し、これらの白血病細胞の成長を阻害し得ることを示している。ホモハリントニン自体と比較して、本発明のアシル化ホモハリントニン誘導体は、著しく高められた抗白血病細胞活性を示す。具体的に、本発明のアシル化ホモハリントニン誘導体のBS−HH−066は、抗Kasumi−1(急性骨髄性白血病M2型、AML−M2)活性を、7倍を上回って増加させ;BS−HH−074は、抗K562/adr(薬物耐性、慢性骨髄性白血病、CML)活性を、5倍を上回って改善し、抗Kasumi−1(急性骨髄性白血病M2型、AML−M2)活性を、5倍を上回って改善し、抗NB4(急性前骨髄球性白血病、AML)及び抗H9(急性リンパ芽球性白血病、ALL)活性を、2倍を上回って改善する。BS−HH−002は、抗Kasumi−1(急性骨髄性白血病M2型、AML−M2)活性を、3.4倍を上回って改善し、抗K562/adr(薬物耐性、慢性骨髄性白血病、CML)活性を、3.2倍を上回って改善し、抗NB4(急性前骨髄球性白血病、AML)活性を、3倍を上回って改善し、抗H9(急性リンパ芽球性白血病、ALL)活性を、5倍を上回って改善する。
【0123】
【表2】
【0124】
[実施例5]
本発明のホモハリントニン誘導体による抗ヒト多発性骨髄腫及びリンパ腫細胞活性の評価
(1)実験材料
多発性骨髄腫及びリンパ腫細胞株:RPMI8226(多発性骨髄腫)、Fuxiang Bio-tech Co. Ltd.社、Shanghai、Chinaより購入。
試薬:実施例4におけるものと同じ。
主要な装置:Thermo Scientific 3111インキュベーター及びBio-Rad iMarkマイクロプレートリーダー。
【0125】
(2)実験方法
6000個の十分に成長している白血病細胞を得、96ウェル細胞培養プレートのウェルにそれらを接種する。培養基は、10%ウシ胎仔血清を含有する1640細胞培養基である。様々な濃度のホモハリントニン誘導体を添加し均一に混合した後、37℃の二酸化炭素細胞インキュベーター(5%CO)中にプレートを置き、72時間インキュベートする。次いで、生存細胞濃度を、MTT法によって求める。本実験において、対照群(いかなる化合物によっても処理されていない)における細胞生存度を、100%として設定する。このような基準に基づいて、72時間における白血病細胞成長についての処理後の細胞生存度(%)及び化合物の50%阻害濃度(72時間のIC50値)を計算する。
【0126】
(3)実験結果
実験結果を表2に示す。表2は、本発明のアシル化ホモハリントニン誘導体は、ヒト骨髄腫細胞及びリンパ腫細胞の細胞死を誘発し、これらの腫瘍細胞の成長を阻害し得ることを示している。本発明のアシル化ホモハリントニン誘導体のBS−HH−001及びBS−HH−002は、抗RPMI8226(多発性骨髄腫)において特に有効である。
【0127】
[実施例6]
本発明のアシル化ホモハリントニン誘導体の抗ヒト固形腫瘍効果の評価
(1)実験材料
ヒト固形腫瘍細胞株:Hep−2(咽頭癌腫)、A549(ヒト肺癌)、CaES−17(食道癌細胞)、PC−3(前立腺癌)、CNE(上咽頭癌腫細胞)、及びSK−OV−3(卵巣癌細胞)(これらの全ては、China Center For Type Culture Collectionから購入される);RKO(ヒト結腸腺癌細胞)、MGC 803(ヒト胃癌細胞)、MG63(骨肉腫)及びU87 MG(悪性神経膠腫細胞)(これらの全ては、Fuxiang Bio-tech Co. Ltd.社、Shanghai、Chinaから購入される);PANC−1(膵癌)、Huh7(ヒト肝癌細胞)、Becap37(ヒト乳癌細胞)、及びHela(ヒト子宮頸癌細胞)(これらの全ては、Cancer Research Institute of Zhejiang University、Chinaによって寄贈される)。
試薬:実施例4におけるものと同じ。
主要な装置:Thermo Scientific 3111インキュベーター及びBio-Rad iMarkマイクロプレートリーダー。
【0128】
(2)実験方法
4000個の十分に成長したヒト固形腫瘍細胞を得、96ウェル細胞培養プレートのウェルにそれらを接種する。培養基は、10%ウシ胎仔血清を含有するDMEM High Glucose細胞培養基である。プレートを、37℃の二酸化炭素細胞インキュベーター(5%CO)中に置き、24時間インキュベートする。様々な濃度のホモハリントニン誘導体を添加し均一に混合した後、プレートを、37℃の二酸化炭素細胞インキュベーター(5%CO)中に置き、72時間インキュベートする。次いで、生存細胞濃度を、MTT法によって求め、薬物処理後の細胞生存度(%)を計算する。本実験において、対照群(いかなる化合物によっても処理されていない)の細胞生存度を、100%として設定する。
【0129】
(3)実験結果を表2に示す。
表2は、本発明のアシル化ホモハリントニン誘導体は、ヒト骨髄腫細胞及びリンパ腫細胞の細胞死を誘発し、これらの腫瘍細胞の成長を阻害し得ることを示している。具体的に、本発明のアシル化ホモハリントニン誘導体のBS−HH−002、BS−HH−0721及びBS−HH−074の抗RPMI8226(多発性骨髄腫)効果は、ホモハリントニンのそれの2倍より大きい。BS−HH−002、BS−HH−0721及びBS−HH−074の抗A549(ヒト肺癌)効果は、ホモハリントニンのそれの3倍より大きい。BS−HH−002及びBS−HH−0721の抗PANC−1(膵癌)効果は、それぞれ、ホモハリントニンのそれの3倍及び4倍より大きい。BS−HH−002、BS−HH−059、BS−HH−0721及びBS−HH−074の抗Becap37(ヒト乳癌細胞)効果は、ホモハリントニンのそれの2倍より大きい。BS−HH−002、BS−HH−059、BS−HH−0721及びBS−HH−074の抗MG63(骨肉腫)効果は、ホモハリントニンのそれより実質的に優れている。BS−HH−002及びBS−HH0721の抗Huh7(ヒト肝癌細胞)効果は、ホモハリントニンのそれの2倍より大きい。BS−HH−002、BS−HH−059及びBS−HH−0721の抗RKO(ヒト結腸腺癌細胞)効果は、ホモハリントニンのそれより実質的に優れている。BS−HH−002、BS−HH−0721及びBS−HH−074の抗Hela(ヒト子宮頸癌細胞)効果は、それぞれ、ホモハリントニンのそれの2.5倍、4.0倍、及び5.6倍より大きい。BS−HH−002及びBS−HH−0721の抗CaES−17(食道癌細胞)効果は、ホモハリントニンのそれの2倍より大きい。BS−HH−0721、BS−HH−074及びBS−HH077の抗CNE(上咽頭癌腫細胞)効果は、それぞれ、ホモハリントニンのそれの10倍、27倍、及び3倍より大きい。BS−HH−002、BS−HH−0721、BS−HH074及びBS−HH−077の抗Hep−2(喉頭癌腫)効果は、ホモハリントニンのそれの2倍より大きい。BS−HH−002及びBS−HH−074の抗PC−3(前立腺癌)効果は、それぞれ、ホモハリントニンのそれの6倍及び10倍より大きい。BS−HH−002の抗SK−OV−3(卵巣癌細胞)効果は、ホモハリントニンのそれの2倍である。
【0130】
【表3】
【0131】
[実施例7]
本発明のアシル化ホモハリントニン誘導体BS−HH−002のインビボ抗腫瘍活性の評価及び毒性の予備的評価
実験7−1:NOD/SCIDマウスにおける白血病の移植腫瘍に対するBS−HH−002の阻害
(1)実験材料
白血病細胞株:Kasumi−1(急性骨髄性白血病M2型、AML−M2)
動物:NOD/SCIDマウス(重複免疫不全マウス)、8週齢、雌、Shanghai Laboratory Animal Center of Chinese Academy of Sciences、Chinaから購入。
【0132】
(2)試薬:BS−HH−002、ここで、BS−HH−002−0.1は、毎回、0.1mg/kgの用量を示し、BS−HH−002−0.3は、毎回、0.3mg/kgの用量を示す。
【0133】
(3)主要な装置:インキュベーター、クリーンベンチ及びラミナーフローラック。
【0134】
(4)実験方法
無菌条件下で、対数増殖期における上記の腫瘍細胞を集め、NOD/SCIDマウスの右腋窩下への皮下注射によってマウス当たり5×10/0.2ml(95%を超える細胞生存度)の量で注射し、白血病の移植腫瘍を有するNOD/SCIDマウスモデルを確立する。マウスに、接種後第3日に投与し、ここで、実験群には、実験的に設計された量で胃内投与し、陰性対照群には、無菌水を胃内投与する。各マウスに、6時間間隔で8:00、14:00及び20:00に毎回0.4mlで1日3回、胃内投与し、10日間、連続投与する。投与前の日は、第0日であり、重量及び腫瘍サイズを、おおよそ5日毎に決定して重量及び腫瘍成長についての動的プロットを作成する。第31日に、マウスを解剖し、腫瘍を取り出し、計量する。薬剤の適用後の腫瘍阻害率(%)を、ゼロである対照群の腫瘍阻害率に基づいて求める。
【0135】
決定値は、平均±標準誤差(M±SD)として示す。各群の実験データを、SPSS 18.0 Statistical SoftwareのOne−way ANOVA法によって分析し、pが0.05未満である場合を、統計的に有意な差を有するものとみなす。
【0136】
【表4】
【0137】
図4に示されているとおり、対照群及び実験群は、体重において明確な差を示さず、明らかな身体的な変化の兆候は、動物に見られない。これらは、BS−HH−002は、二つの所与の用量下で、いかなる明らかな毒性又は副作用も有さないことを示している。
【0138】
図5は、NOD/SCIDマウスにおける白血病の移植腫瘍に対するBS−HH−002の効果を示す曲線である。図5に示されているとおり、BS−HH−002は、注目に値する腫瘍阻害効果を示しているが、明らかな用量への依存性は示していない。
【0139】
図6は、BS−HH−002は、NOD/SCIDマウスにおける白血病の移植腫瘍の重量を実質的に減少させたことを示している。
【0140】
図7は、NOD/SCIDマウスにおける白血病の移植腫瘍の重量に対するBS−HH−002の効果を示している。
【0141】
図8は、BS−HH−002によるNOD/SCIDマウスにおける白血病の移植腫瘍の阻害を示している。
【0142】
上記の表及び図に示されているとおり、インビボ動物実験において、BS−HH−002は、0.1及び0.3mg/kgの両方の用量下で白血病の移植腫瘍の40%を超える阻害率を有する。初期及び最終重量を考慮して、BS−HH−002は、動物の重量に実質的な影響を有さず、明らかな毒性を示していない。
【0143】
実験7−2:BALB/c−nuヌードマウスにおける胃癌の移植腫瘍に対するBS−HH−002の阻害
(1)実験材料
胃癌細胞株:MGC−803
動物:BALB/c−nuヌードマウス、8週齢、雌、Shanghai Laboratory Animal Center of Chinese Academy of Sciences、Chinaから購入。
【0144】
(2)試薬:BS−HH−002、ここで、BS−HH−002−0.1は、毎回、0.1mg/kgの用量を示し、BS−HH−002−0.3は、毎回、0.3mg/kgの用量を示し、BS−HH−002−0.5は、毎回、0.5mg/kgの用量を示し、BS−HH−002−1.0は、毎回、1.0mg/kgの用量を示す。
【0145】
(3)主要な装置:インキュベーター、クリーンベンチ及びラミナーフローラック。
【0146】
(4)実験方法
無菌条件下で、対数増殖期における上記の腫瘍細胞を集め、ヌードマウスの右腋窩下への皮下注射によってヌードマウス当たり2×10/0.2ml(95%を超える細胞生存度)の量で注射し、胃癌の移植腫瘍を有するBALB/c−nuヌードマウスモデルを確立する。マウスに、接種後第3日に投与し、ここで、実験群には、実験的に設計された量で胃内投与し、陰性対照群には、無菌水を胃内投与する。各マウスに、表4に列挙された投与計画で毎回0.4mlを胃内投与する。投与は、1日に1回の場合は8:00に、1日に2回の場合は8:00及び14:00に、1日に3回の場合は6時間間隔で8:00、14:00及び20:00に行われる。投与は10日間連続する。投与前の日は、第0日であり、重量及び腫瘍サイズを、おおよそ5日毎に決定して重量及び腫瘍成長のプロットを作成する。第27日に、マウスを解剖し、腫瘍を取り出し、計量する。対照群についてのゼロの腫瘍阻害率に基づいて、薬剤の効果の後の腫瘍阻害率(%)を計算する。
【0147】
決定値は、平均±標準誤差(M±SD)として示す。各群の実験データを、SPSS 18.0 Statistical SoftwareのOne−way ANOVA法によって分析し、pが0.05未満である場合を、統計的に有意な差を有するものとみなす。
【0148】
【表5】
【0149】
図9は、BALB/c−nuヌードマウスの体重に対するBS−HH−002の効果を示している曲線を示している。
【0150】
図10は、BS−HH−002は、BALB/c−nuヌードマウスにおける胃癌の移植腫瘍に影響を与えることを示している曲線を示している。
【0151】
図11は、BALB/c−nuヌードマウスにおける胃癌の移植腫瘍の重量に対するBS−HH−002の効果を示している。
【0152】
図12は、BALB/c−nuヌードマウスにおける胃癌の移植腫瘍の重量に対するBS−HH−002の効果を示している。
【0153】
図13は、BS−HH−002によるBALB/c−nuヌードマウスにおける胃癌の移植腫瘍の阻害を示している。
【0154】
上記の図に示されているとおり、インビボ実験において、BS−HH−002は、胃癌に対して40%より大きい腫瘍阻害率を有する。腫瘍の質量は、対照群と比べて実質的な差を示し(Pは0.05未満である)、ここで、毎回1.0mg/kgの1日3回の投与計画を有する実験群は、対照群と比べて極めて明確な差を示している(Pは0.01未満である)。その上、初期及び最終重量を考慮して、投与された群及び対照群の両方とも、本質的に同一の傾向で明らかな重量増加を示している。加えて、動物のいずれも、解剖までその中のいかなる群においても死ななかった。これらは、投薬のいずれも動物に対して明らかな毒性及び副作用を生じないことを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13