(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993456
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】制御された屈折率摂動を有する光ファイバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/027 20060101AFI20160901BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
C03B37/027 A
G02B6/02 356A
G02B6/02 411
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-527187(P2014-527187)
(86)(22)【出願日】2012年8月16日
(65)【公表番号】特表2014-529569(P2014-529569A)
(43)【公表日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】US2012051016
(87)【国際公開番号】WO2013028439
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年6月29日
(31)【優先権主張番号】61/526,007
(32)【優先日】2011年8月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シン
(72)【発明者】
【氏名】レイン,チャールズ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】リー,ミン−ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,アンピン
(72)【発明者】
【氏名】モズディ,エリック ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ターラー,ジョセフ ディー
【審査官】
立木 林
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0194512(US,A1)
【文献】
米国特許第04038062(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0093294(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0238306(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/012−37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉内の加熱ガラス源から光ファイバーを線引きする工程、及び
異なる方位位置に配置された複数の摂動源によって、前記光ファイバーに屈折率摂動を与える工程であって、前記屈折率摂動が、周波数の異なる前記複数の摂動源によって、前記光ファイバーに応力を発生させることにより与えられる工程、
を有してなり、
前記屈折率摂動を与える工程が、複数のガス源を用いて前記線引きされたファイバーの外表面にガスを吹き付ける工程を含んで成ることを特徴とする光ファイバーの製造方法。
【請求項2】
加熱炉内の加熱ガラス源から光ファイバーを線引きする工程、及び
異なる方位位置に配置された複数の摂動源によって、前記光ファイバーに屈折率摂動を与える工程であって、前記屈折率摂動が、周波数の異なる前記複数の摂動源によって、前記光ファイバーに応力を発生させることにより与えられる工程、
を有してなり、
前記屈折率摂動を与える工程が、複数のレーザー出力を用いて前記線引きされたファイバーを加熱する工程を含んで成ることを特徴とする光ファイバーの製造方法。
【請求項3】
前記屈折率摂動が、前記光ファイバーの軸長に沿った異なる位置に与えられることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバーの製造方法。
【請求項4】
加熱炉内の加熱ガラス源から光ファイバーを線引きする工程、及び
複数の異なる方位位置に配置された複数の摂動源によって、前記光ファイバーに屈折率摂動を与える工程であって、前記屈折率摂動が、前記複数の摂動源によって前記ファイバーに応力を発生させることにより、該ファイバーの軸長に沿った異なる位置の外表面に略螺旋状に同期して与えられる工程、
を有してなり、
前記屈折率摂動を与える工程が、複数のガス源を用いて前記線引きされたファイバーの外表面にガスを吹き付ける工程を含んで成ることを特徴とする光ファイバーの製造方法。
【請求項5】
前記ガスを吹き付ける工程が、対応するチョッパーと共に配置された前記複数のガス源を用いてガスを吹き付ける工程を含んで成り、前記チョッパーが前記光ファイバーに吹き付けられる前記ガス源からの空気出力を制御するものであることを特徴とする請求項4記載の光ファイバーの製造方法。
【請求項6】
加熱炉内の加熱ガラス源から光ファイバーを線引きする工程、及び
複数の異なる方位位置に配置された複数の摂動源によって、前記光ファイバーに屈折率摂動を与える工程であって、前記屈折率摂動が、前記複数の摂動源によって前記ファイバーに応力を発生させることにより、該ファイバーの軸長に沿った異なる位置の外表面に略螺旋状に同期して与えられる工程、
を有してなり、
前記屈折率摂動を与える工程が、複数のレーザー出力によって前記線引きされたファイバーの表面を加熱する工程を含んで成ることを特徴とする光ファイバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、米国法典第35巻第119条に基づき、2011年8月22日出願の米国仮特許出願第61/526007号を優先権主張するものであり、その内容は信頼のおけるものであり本引用により全体がそのまま本願に組み込まれたものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は光ファイバーの製造方法に関し、特には、光ファイバーの線引き過程においてファイバーに摂動を与える方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来の光ファイバーの製造工程には、一般に、線引き加熱炉内の光ファイバー母材から光ファイバーを線引きする工程、線引きしたファイバーを冷却する工程、及びファイバーが十分冷えた後に行われる被覆工程がある。多モードファイバーの帯域幅を向上させ、ファイバーの製造歩留まりを高めるために多くの努力がなされている。屈折率分布の正確性を高めようとする努力もなされている。帯域幅を向上させる1つの方法に、多モードファイバーにモード結合を生じさせる方法がある。一部の試みにおいて、ファイバーを紡糸又は撚糸することによりモード混在が生じる短い範囲の屈折率変動又は摂動を与え、多モードの帯域幅を向上させることが提案されている。しかし、ファイバーの紡糸はガラス及び被覆の両方に複雑な影響を及ぼし、被覆が損傷し減衰が生じる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、従来の方法の欠点を伴わずに光ファイバーに摂動を与える光ファイバーの製造方法の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施の形態によれば、光ファイバーの製造方法が提供される。この方法は加熱炉内の加熱ガラス源から光ファイバーを線引きする工程を含んでいる。また、この方法は異なる方位位置に配置された複数の摂動源によって、光ファイバーに屈折率摂動を与える工程も含み、屈折率摂動が、周波数の異なる複数の摂動源によって、光ファイバーに応力を発生させることにより与えられることを特徴とするものである。
【0006】
別の実施の形態によれば、光ファイバーの製造方法が提供される。この方法は加熱炉内の加熱ガラス源から光ファイバーを線引きする工程を含んでいる。また、この方法は複数の異なる方位位置、且つ光ファイバーの軸長に沿った異なる位置に配置された複数の摂動源によって、光ファイバーに屈折率摂動を与える工程も含み、屈折率摂動が、複数の摂動源によってファイバーに応力を発生させることにより、ファイバーの軸長に沿った異なる位置の外表面に略螺旋状に同期して与えられることを特徴とするものである。
【0007】
更なる特徴及び効果は以下の詳細な説明に述べてあり、当業者にとってそれ等の説明によりある程度明らかであり、またこれに続く詳細な説明、特許請求の範囲、及び添付図面を含む、本明細書に記載の実施の形態を実施することにより認識することができる。
【0008】
前記概要説明及び以下の詳細な説明は単なる例示に過ぎず、特許請求の範囲の本質及び特徴を理解するための要旨及び骨格の提供を意図したものである。添付図面は理解を深めるためのものであり、本明細書に組み込まれ本明細書の一部を構成するものである。図面には1つ以上の実施の形態が示してあり、説明と併せそれぞれの実施の形態の原理及び作用を説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態に係る、屈折率摂動組立体を備えた光ファイバー製造システムの概略図。
【
図2】
図1のファイバー及び屈折率摂動組立体の拡大図。
【
図3A】各種実施の形態に係る、開放窓を備えたガスチョッパー又はシャッターの概略図。
【
図3B】各種実施の形態に係る、開放窓を備えたガスチョッパー又はシャッターの概略図。
【
図3C】各種実施の形態に係る、開放窓を備えたガスチョッパー又はシャッターの概略図。
【
図4】チョッパー同期制御方式における、ファイバー位置に応じたチョッパーの開閉状態を示すタイミング図。
【
図5】チョッパー非同期制御方式における、ファイバー位置に応じたチョッパーの開閉状態を示すタイミング図。
【
図6A】第2の実施の形態に係る、摂動源としてレーザービームを用いた屈折率摂動組立体を示す図。
【
図6B】第2の実施の形態に係る、摂動源としてレーザービームを用いた屈折率摂動組立体を示す図。
【
図6C】第2の実施の形態に係る、摂動源としてレーザービームを用いた屈折率摂動組立体を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面に例を示す、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図面全体を通し、同一又は同様の部品には可能な限り同一の参照番号が付してある。
【0011】
光ファイバーの製造システム及び方法において、線引き工程により光ファイバーが製造され、ガラスの段階でモード結合が生じ、多モードファイバー(MMF)の帯域が改善されるよう光ファイバーに摂動が与えられる。以下、
図1〜6Cを用いて、本光ファイバーの製造システム及び方法について説明する。
図1〜6Cにおいて、同様の参照番号は同一又は対応する要素を示す。本明細書において「裸光ファイバー」とは母材から直接線引きされ、外表面に保護被覆層が施される前(例えば、ポリマーを主成分とする材料で被覆される前)の光ファイバーを意味する。また、本明細書において「屈折率摂動」とは、ファイバーにおける屈折率の局所的変化を意味する。本光ファイバーの製造システム及び方法によれば、特に多モードファイバーに対し、屈折率摂動を与えて光ファイバーを形成することができ、かかる摂動は、以下に開示するように、ファイバーの長さに沿って様々な方向に分布させることができる。
【0012】
図1は、1つの実施の形態に係る、ファイバーの製造方法に従ってファイバーを製造する光ファイバーの製造システム10を示す概略図である。システム10は、1つの例によれば、約2000℃まで加熱できる加熱炉12を有している。一般に光ファイバー母材14と呼ばれる加熱ガラス源が加熱炉内にセットされ、そこからファイバーが線引きされて裸光ファイバー18が製造される。母材14は如何なるガラス又は材料から成っていてもよく、光ファイバーの製造に適したドーピングが施されていてもよい。母材14から線引きされた後、裸光ファイバー18は、加熱炉12の出口16から出る際に所望の温度範囲となるよう既存の方法、例えば、除冷処理装置(図示せず)又はその他の方法によって所望の温度に冷却される。加熱炉12の出口16から出る光ファイバー18は、一定の線引き速度で線引きされ、一定のファイバー径を有し、部分的に凝固し、冷却されるに従い更に凝固する融解状態となるファイバー温度を有している。1つ以上のセンタリング装置を用いて、出口16から出る裸光ファイバー18をその中心に位置させることができる。
【0013】
図1の実施の形態において、屈折率摂動組立体20が出口16の下流に配置され、光ファイバー18に屈折率摂動を与えるよう構成されている。
図1の実施の形態において、屈折率摂動組立体20は、裸光ファイバー18の外表面に制御された屈折率摂動を与える、異なる方位位置に異なる角度で配置された複数の摂動源を有している。本実施の形態において、摂動源は各々が光ファイバー18の外表面にガスを吹き付け局所的に冷却することにより、光ファイバー18の外表面に屈折率摂動を与えるよう構成されて成る複数の制御されたガス吹き付け装置30A〜30Cを有している。ガラス転移温度の前後(ファイバーの根元付近又は加熱炉から出るファイバー部分の近傍)又はガラス転移温度と仮想温度との間の温度となる、ファイバー18の位置にガスが吹き付けられる。加熱炉12から出てくる熱く融解したファイバーに空気のような冷たいガスを吹き付けると、ファイバー18の応力によって固有非対称屈折率分布又はファイバーの複屈折が生じる。屈折率摂動は光ファイバー18の軸長に沿ってファイバーの様々な方向に分布する。屈折率摂動を制御された方法によって与えることにより、多モード光ファイバーの帯域が向上すると共に、ファイバーの紡糸又は撚糸の必要がなくなるか又は必要性が低下するという利点が得られる。屈折率摂動を異なる方向に分布させるため、幾つかの異なる方位位置から屈折率摂動が与えられ、各々の摂動装置30A〜30Cは光ファイバー18の軸長に沿った異なる位置(即ち、異なる軸長位置)に配置することができる。本明細書に開示した方法によって、所望の高周波数で所望の方向に屈折率摂動を与えることができるため、モード結合がより効果的となり、短距離方式において帯域幅が向上する。各種実施の形態によれば、この屈折率摂動を与える方法によってファイバーの紡糸を廃止するか又は本方法と組み合わせて紡糸を軽減することができる。
【0014】
屈折率摂動を与える工程に続き、裸光ファイバー18が被覆装置22に導かれそこで裸光ファイバー18の外表面に一次保護被覆層が施される。次に、被覆されたファイバーが紫外線ランプを備えた硬化装置24に通され被覆が硬化される。硬化装置24を出た保護層付き光ファイバー18は、例えば1つ以上のローラ26やトラクター28のような製造システム10内の様々な処理段階を通過することができる。トラクター28によって、ファイバー製造システム全体を通して線引きされ、最終的に保存スプールに巻設される光ファイバー18に必要な張力を与えることができる。トラクター28を制御することにより、ファイバー18の線引き速度が制御可能であることは勿論である。
【0015】
図2は
図1に示す第1の実施の形態に係る屈折率摂動組立体20を更に示す図である。本実施の形態において、組立体20は光ファイバー18の外表面の周囲に等方位角度間隔120°で配置されたガス吹き付け装置30A〜30Cとして示す3つの屈折率摂動源を備えている。図示の実施の形態において、ガス吹き付け装置30A〜30Cは、それぞれ光ファイバーの軸長に沿って互いに異なる位置に配置され、光ファイバー18の外表面に対し、制御された方法によって、所望の入射角度でガスを吹き付ける。ガス吹き付け装置30A〜30Cの各々は、光ファイバー18の外表面に向けて加圧ガスが照射されるよう配向されたガス吹き付け針32A〜32Cを有している。1つの実施の形態によれば、ガス吹き付け針32A〜32Cは、ガス源から供給される加圧冷却ガス流を連続的に出力する。このガスは、窒素、ヘリウム、酸素、又は空気を含むガス混合物等の任意の適切な冷却ガスであってよい。また、ガス吹き付け装置30A〜30Cの各々は、1つ以上の開口部36A〜36Cによって画成される開放窓パターンを有する円盤として示す、光学チョッパー又はシャッター34A〜34Cも備えている。光学チョッパー又はシャッター34A〜34Cの各々は、ガスが通過しファイバー18に到達することができる1つ以上の窓開口部及びファイバー18対するガスの通路を遮断する隙間のない領域を有している。チョッパー34A〜34Cの各々が対応するガス吹き付け針32A〜32Cと連携することにより、光ファイバー18の外表面に対する針32A〜32Cからの加圧ガスの吹き付けが制御される。光学チョッパー又はシャッター34A〜34Cは、各々がマイクロプロセッサ40として示すモータ制御回路によって制御される、対応するモータ38A〜38Cによって回転する。従って、チョッパー又はシャッター34A〜34Cは、対応する針32A〜32Cからの加圧ガス流出力を切り刻む又は開閉するように動作する。
【0016】
チョッパー34A〜34Cの各々は所望の形状を有する開放窓を備え、モータ38A〜38Cが制御され、チョッパー34A〜34Cが回転することによって、光ファイバー18の外表面に対し所望のガス噴射が行われる。チョッパー34A〜34Cの各々は対応するモータ38A〜38Cによって、角周波数ω(ラジアン/秒)又は周波数F(ヘルツ)で回転し、1完全回転のうち規定された時間、ファイバーに対しガスが吹きつけられる。1つの実施の形態によれば、複数の摂動源30A〜30Cによって、非同期的にファイバー18の軸長に沿った異なる位置の外表面に略螺旋状に屈折率摂動が与えられる。その際、制御された位相及び同期周波数でモータ38A〜38Cが動作する。任意の空気吹き付け針32A〜32Cの空気吹き付け作用は以下の関数で表すことができる。
【0018】
ここで、Ziはi番目の摂動装置の初期位置、
【0019】
はチョッパー窓の初期位相、vは線引き速度、ωiはチョッパーの回転角周波数である。チョッパー34A〜34C及び空気吹き付け装置32A〜32Cを設置し、各々のチョッパー34A〜34Cの開放窓36A〜36Cが互いに同期して開き加圧ガスが通過するよう制御することができる。
【0020】
1つの例によれば、3つの摂動装置30A〜30Cを用い、第1の摂動装置30Aをファイバーに対し軸長0メートルの位置、第2の摂動装置30Bをファイバーに対し軸長0.1メートルの位置、第3の摂動装置30Cをファイバーに対し軸長0.2メートルの位置にそれぞれ配置される。本例において、ファイバーの線引き速度は毎秒10メートルに設定される。光学チョッパー34A〜34Cは同じ周波数、例えば、100Hzで回転する。各々のチョッパーの位相は0、π/3、及び2π/3ラジアンに設定される。ガス吹き付け針32A〜32Cがそれぞれ0、π/3、及び2π/3ラジアンの角度から光ファイバーに作用するよう配向される。同期制御の1つの実施の形態において、チョッパー34A〜34Cの回転に伴う、チョッパー34A〜34Cの窓36A〜36Cの開閉状態を
図4に示す。ファイバー長0.1メートル毎に、1つのチョッパーのみの窓36A〜36Cが開き、空気のような冷却ガスが対応する窓を通して光ファイバー18の外表面に吹き付けられる。この処理が各々のチョッパー34A〜34Cによって順に行われ、無期限に繰り返すことができる。モード結合のための所望の周波数が発生するようチョッパー34A〜34Cを駆動するモータの速度を制御することができる。別の実施の形態によれば、1つ以上のチョッパー34A〜34Cに多数の開放位置及び閉鎖位置を設けることにより、空間周波数を増大させることができる。
【0021】
図3A〜3Cは、ガス吹き付け装置30A〜30Cの各々に用いることができる、光学チョッパーの3つの例を示す図である。
図3Aに示す光学チョッパー30Aは180°の広がりを持つ開放窓36Aを備え、1/2回転の間又は1回転の1/2時間、加圧ガス流を通過させることができる。
図3Bに示す光学チョッパー30Aは120°の広がりを持つ開放窓36Aを備え、1/3回転毎又は1回転の1/3時間毎に、加圧ガス流を通過させることができる。
図3Cに示す光学チョッパー30Aは、異なる周波数成分を混合できる2つの窓36Aを備えた複雑な窓構成を有している。各々のチョッパー34A〜34Cの窓の数をチョッパー乗数と定義する。
図2に示す例では、チョッパー乗数3において、0.03メートル、即ち3センチメートルのモード結合パターンの空間的周期を得ることができる。モータ38A〜38C及びチョッパー34A〜34Cの性能により、必要があれば、1ミリメートル以下の空間的周期を得ることができる。別の例によれば、各々のチョッパーの一周に等角度に配置された10個の開放窓36Aを設けることができ、ファイバー18に対する吹き付けパターンの空間周波数を10倍にすることができる。このように、別の方法では困難な空間周波数を得ることができる。
【0022】
別の実施の形態によれば、光ファイバーの製造方法により、異なる方位位置に配置された、周波数の異なる複数の摂動源によって、光ファイバーに屈折率摂動を与えることができる。本実施の形態において、駆動モータの周波数を互いに僅かに異なる値に設定し、異なる周波数間の脈動によってチョッパー34A〜34Cを異なる時間に開放させ、結果としてファイバーに沿って高周波にて分布するファイバーの応力を非対称とすることによって、非同期摂動を与える方法を実施することができる。このことは、個々のモータの周波数を制御して互いに異なる所望の回転速度を得るマイクロプロセッサ40のような制御回路によって達成できる。1つの例において、毎秒10メートルの線引き速度、各々がランダムに選択された位相の同一位置、且つ軸方向変位量0メートル、0.1メートル、及び0.2メートルのチョッパーにおいて、第1のチョッパー34Aが85Hzの周波数で回転し、第2のチョッパー34Bが100Hzの周波数で回転し、第3のチョッパー34Cが115Hzの周波数で回転するようチョッパーの周波数を選択することができる。本例のチョッパーの状態を
図5に示す。ファイバー位置の任意の時点において、1つ以上のチョッパーが開放され、冷却ガスが開放窓を通して光ファイバー18の外表面に吹き付けられる。各々のチョッパーに対応するモータ速度の違いに起因する脈動により、ファイバー18の位置に応じて非常に異なる周波数成分が混合された複雑なパターンが見られ、これによって多モードファイバーのモード結合が促進される。
【0023】
3つの摂動源30A〜30Cを用いた摂動組立体20を示したが、より多くの屈折率摂動装置が使用可能であることは勿論である。1つの実施の形態によれば、屈折率摂動装置の数が3〜20であり、3〜6とすることができる。チョッパーの間隔を等角度として示したが、間隔は均一でも不均一でもよいことは勿論である。摂動装置30A〜30Cの軸方向の配置を光ファイバー18の長さに沿った異なる軸位置として示したが、摂動装置を同じ軸位置又はファイバー18の同じ長さ位置に配置できることは勿論である。チョッパー34A〜34Cに多数の窓を設けた場合、窓は等角度間隔又は非等角度間隔に設けることができることは勿論である。別の実施の形態によれば、モータを変調することにより、チョッパー34A〜34Cの速度が同じにならないようにすることができる。更に別の実施の形態よれば、これ等のチョッパー34を空気が通る開放窓を備えたリングモータに置き換えることができる。また、屈折率摂動を与える方法を用いることにより、ファイバー紡糸の廃止又は軽減が可能である一方、各種実施の形態によれば、光ファイバーの製造方法と組み合わせてファイバー紡糸を実施することもできる。
【0024】
図6A〜6Cは第2の実施の形態に係る屈折率摂動組立体120を示す図である。本実施の形態においては、光ファイバー18に対し、異なる方位位置に配置されたレーザービームから成る複数の摂動源によって屈折率摂動が与えられる。第1の実施の形態で説明した冷却空気を吹き付けて加熱炉から出てくる光ファイバーを冷却するのに対し、本実施の形態では光ファイバー18の選択された位置を加熱することにより屈折率摂動が与えられる。従って、レーザービームが、ファイバー18内部の応力により屈折率摂動が誘起されるよう光ファイバー18の温度分布を変える加熱源となる。図示のように、摂動組立体120は、レーザー出力を発生するレーザー源130、及びレーザー出力又はビームを異なる方位位置及び裸ファイバー18の外表面に向けるための3つのミラー136A〜136Cを備えている。ミラー136Aはマイクロプロセッサ140のような制御回路によって制御されるモータ138に接続されている。マイクロプロセッサ140からの制御信号によって動作するモータ138によってビーム誘導ミラー136が操作され、所望のビーム方向が得られる。
図6Aに示すように、レーザー源130で発生したレーザー出力が第1のレーザービームに対し第1の位置又は角度にあるミラー136Aによって第1の角度からファイバー18に向けて反射される。次いで、ミラー136Aが第2の位置又は角度に移動し、第1のミラーからのレーザー出力を第2のミラー136Bに向けて照射し、第2のミラー136Bは、第1の角度と異なる第2の角度、即ち
図6Aに示す第1のレーザービームに対して120°の角度で第2のレーザービームを光ファイバー180の別の位置に照射する。
図6Cにおいて、ミラー136Aが更に第3の位置又は角度に移動し、レーザー出力の方向を変えて第3のミラー136Cに向けて照射し、第3のミラー136Cは第1及び第2の角度と異なる第3の角度、即ち
図6Aに示す第1のレーザービームに対して240°の角度で第3のレーザービームをファイバー18の外表面に向けて照射する。
【0025】
レーザービームをファイバー18に向けて直接反射させることや、ここに示し説明した方向とは異なる方向に誘導できることは勿論である。更に、ここで説明したミラー構成に代えて、多数のレーザー源を採用できることも勿論である。本明細書に述べた様々な実施の形態により、光ファイバーの非同期加熱又は異なる周波数による作用が可能なようにレーザービームを制御することができる。更に、軸長に沿った光ファイバーの異なる位置又は同じ軸長にレーザービームを作用させることが可能であることも勿論である。レーザーの照射期間及び向きの両方をマイクロプロセッサ140で制御することにより、所望の温度分布を得ることができる。最適な結果が得られるようレーザーの出力を変えることができる。約10マイクロメートルで動作する炭酸ガスレーザー、1〜2マイクロメートで動作するYAGレーザー又はファイバーレーザー、及びファイバーの吸収スペクトル近傍の波長で動作するその他のレーザーを含み、これに限定されないレーザーによって温度分布を変えることができる。ビームホモジナイザー及び/又は光学レンズのような光学素子を用いて、加熱プロファイル及び強度分布を変化させることができる。ビームホモジナイザーはレーザービームの強度分布を変化させ、レンズはファイバー上におけるビームサイズを変化させる。これらを単独で使用することも組み合わせて使用することも可能である。
【0026】
線引き速度に対し所望に摂動周波数で脈動する2つ以上の独立したレーザー源によってレーザー加熱の実施の形態を実現することができる。Qスイッチレーザーのようなパルスレーザーは、1KHzを超える周波数を有し高出力であることが知られていると共に、動作を同期させることにより複雑な摂動パターンを得ることができる。周波数の非常に高い摂動の実施により、可動光学素子の使用を抑制することができる。
【0027】
このように、本光ファイバーの製造方法は、光ファイバー、特に多モードファイバーに屈折率摂動を与え、ガラスの段階でモード結合を生じさせることができ有益である。異なる角度からのモード結合がより効果的となり、短距離方式において帯域幅が向上するよう異なる方向に摂動が分布される。
【0028】
本発明の精神又は特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な改良及び変形が可能であることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0029】
10 光ファイバーの製造システム
12 加熱炉
14 母材
16 出口
18 裸光ファーバー
20、120 屈折率摂動組立体
22 被覆装置
24 硬化装置
26 ローラ
28 トラクター
30A〜30C ガス吹き付け装置/摂動装置/摂動源
32A〜32C ガス吹き付け針
34A〜34C 光学チョッパー/シャッター
36A〜36C 開放窓
38A〜38C、138 モータ
40、140 マイクロプロセッサ
130 レーザー源
136A〜136C ミラー