(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993509
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】光走査装置及び該光走査装置を備えた画像形成装置、並びに、光走査装置の振動ミラー部の質量調整方法。
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20160901BHJP
B41J 2/47 20060101ALI20160901BHJP
H04N 1/113 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
B41J2/47 101Z
H04N1/04 104Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-197984(P2015-197984)
(22)【出願日】2015年10月5日
(62)【分割の表示】特願2013-135616(P2013-135616)の分割
【原出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-48376(P2016-48376A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2015年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】豊田 祐司
【審査官】
佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−75538(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0080051(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0118370(US,A1)
【文献】
特開2003−84226(JP,A)
【文献】
特開2012−226359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B26/00−26/12
B41J2/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光源から出射された光を反射する反射面を有すると共に所定方向に長く形成された振動ミラー部と、該振動ミラー部の長手方向の中央部に連結され、該長手方向に直交する方向に延びて該振動ミラー部を支持するトーションバー部と、上記振動ミラー部を該トーションバー部回りに捻れ振動させる駆動部と、上記振動ミラー部、上記トーションバー部及び上記駆動部を収容する筐体と、を備えた光走査装置であって、
上記振動ミラー部における上記反射面とは反対側面には、レーザー光の照射を受けることで質量を除去可能に構成された質量調整部が形成され、
上記筐体の外部に配置された第2の光源から出射されたレーザー光を、反射又は透過することで上記質量調整部に照射する光学素子部をさらに備え、
上記質量調整部は、上記振動ミラー部の上記反対側面における長手方向の両端部を除く部分である中間部に形成され且つ該長手方向に延びるリブ部からなる、光走査装置。
【請求項2】
請求項1記載の光走査装置において、
上記光学素子部は、上記筐体内に設けられて上記第2の光源から出射されたレーザー光を反射する反射ミラー部からなる、光走査装置。
【請求項3】
請求項1記載の光走査装置において、
上記光学素子部は、上記筐体の壁部に形成されて上記第2の光源から出射されたレーザー光を透過する光透過窓部からなる、光走査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光走査装置を備えた画像形成装置。
【請求項5】
第1の光源から出射された光を反射する反射面を有すると共に所定方向に長く形成された振動ミラー部と、該振動ミラー部の長手方向の中央部に連結され、該長手方向に直交する方向に延びて該振動ミラー部を支持するトーションバー部と、上記振動ミラー部を該トーションバー部回りに捻れ振動させる駆動部と、上記振動ミラー部、上記トーションバー部及び上記駆動部を収容する筐体と、を備えた光走査装置の上記振動ミラー部の質量調整方法であって、
上記振動ミラー部における上記反射面とは反対側面には、レーザー光の照射を受けることで質量を除去可能に構成された質量調整部が形成されており、
上記質量調整部は、上記振動ミラー部の上記反対側面における長手方向の両端部を除く部分である中間部に形成され且つ該長手方向に延びるリブ部からなり、
上記筐体の外部に配置された第2の光源からレーザー光を出射させるとともに、該出射されたレーザー光を、光学素子部により反射又は透過することで上記質量調整部に照射して該質量調整部の質量を除去する質量調整工程を含む、質量調整方法。
【請求項6】
請求項5記載の光走査装置の振動ミラー部の質量調整方法において、
上記質量調整工程は、上記振動ミラー部を上記反射面とは反対側から見たときに、上記質量調整部における質量が除去された部分が該質量調整部の周縁に達しないように、上記質量調整部にレーザー光を照射する工程である、質量調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び該光走査装置を備えた画像形成装置、並びに、光走査装置の振動ミラー部の質量調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、振動ミラー部と振動ミラー部を支持するトーションバー部とを備えた共振型の光走査装置は知られている。この光走査装置では、共振周波数を調整するために振動ミラー部の質量を調整することがしばしば行われる。例えば、特許文献1に示す光走査装置では、振動ミラー部の裏面(反射面とは反対側面)の一部をレーザー加工により除去することで、振動ミラー部の質量を調整するようにしている。
【0003】
上記共振型の光走査装置では、振動ミラー部の汚れを防止するために、振動ミラー部を密閉状の筐体内に収容する場合がある。この場合に、振動ミラー部を筐体内に収容した状態でその質量調整を行う方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、振動ミラー部の表面に、ガスとの化学反応により質量が変化する質量調整部を形成しておき、この化学反応量を調整することで振動ミラー部の質量を調整するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−75538号公報
【特許文献2】特開2005−91544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、振動ミラー部を共振させるための共振周波数は、振動ミラー部の質量やトーションバー部のバネ定数ばかりでなく、例えば振動ミラー部を収容する筐体の剛性等によっても変化する。したがって、振動ミラー部の質量調整(つまり共振周波数の調整)は、振動ミラー部を筐体内に収容した状態で行うことが好ましい。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示す光走査装置では、振動ミラー部を筐体内に収容してしまうと、振動ミラー部の裏面にレーザー光を照射することができず、振動ミラー部の質量調整を行うことができないという問題がある。
【0007】
そこで、上記特許文献2に示すように、振動ミラー部の表面に、ガスと化学反応する質量調整部を形成することが考えられる。こうすることで、振動ミラー部を筐体内に収容した状態でも、振動ミラー部の質量調整を行うことが可能になる。
【0008】
しかしこの場合、ガスを筐体内に密閉するための強固なシール構造が必要となり、コスト増加を招くという問題がある。また、質量調整部としてガス吸収剤又はガス放出剤を別途用意して振動ミラー部の表面に固着させる必要がある。このため、装置全体の構造が複雑になり、延いてはコスト増加を招くという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な装置構成を実現しながら、筐体内に収容された振動ミラー部の質量調整を容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光走査装置は、第1の光源から出射された光を反射する反射面を有すると共に所定方向に長く形成された振動ミラー部と、該振動ミラー部の長手方向の中央部に連結され、該長手方向に直交する方向に延びて該振動ミラー部を支持するトーションバー部と、上記振動ミラー部を該トーションバー部回りに捻れ振動させる駆動部と、上記振動ミラー部、上記トーションバー部及び上記駆動部を収容する筐体と、を備えている。
【0011】
そして、上記振動ミラー部における上記反射面とは反対側面には、レーザー光の照射を受けることで質量を除去可能に構成された質量調整部が形成され、上記筐体の外部に配置された第2の光源から出射されたレーザー光を、反射又は透過することで上記質量調整部に照射する光学素子部をさらに備え、上記質量調整部は、上記振動ミラー部の上記反対側面における長手方向の両端部を除く部分である中間部に形成され且つ該長手方向に延びるリブ部からなる。
【0012】
この構成によれば、筐体の外部に配置された第2の光源から出射されたレーザー光が、光学素子部にて反射又は透過されることで、振動ミラー部の質量調整部に照射される。この結果、質量調整部におけるレーザー光が照射された部分の質量がアブレーション反応により除去される。したがって、振動ミラー部を筐体内に収容した状態でその質量調整を行うことができる。また、質量調整部としてガス吸収剤又はガス放出剤を別途用意したり、ガスを筐体内に密封するために筐体のシール構造を強化したりする必要もない。よって、装置全体の構造を簡素化することができる。
【0013】
また、振動ミラー部に形成された補強用のリブ部を質量調整部としても利用することで、振動ミラー部が揺動時の慣性力により変形するのを抑制しつつ、振動ミラー部の質量調整を容易に行うことができる。
【0014】
上記光学素子部は、上記筐体内に設けられて上記第2の光源から出射されたレーザー光を反射する反射ミラー部からなることが好ましい。
【0015】
この構成によると、第2の光源から出射されたレーザー光は、反射ミラー部(光学素子部)にて反射されて振動ミラー部の質量調整部に照射される。このように、光学素子部として反射ミラー部を採用することで、スペース的な制約がある場合でも、第2の光源から出射されるレーザー光を、振動ミラー部の裏面側(反射面とは反対側)に導いて質量調整部に照射することができる。
【0016】
上記光学素子部は、上記筐体の壁部に形成されて上記第2の光源から出射されたレーザー光を透過する光透過窓部からなることが好ましい。
【0017】
この構成によると、第2の光源から出射されたレーザー光は、筐体の壁部に形成された光透過窓部(光学素子部)を通って振動ミラー部の質量調整部に照射される。このように、光学素子部として光透過窓部を採用することで、第2の光源から出射されたレーザー光を振動ミラー部の裏面側に容易に導いて質量調整部に照射することができる。
【0018】
本発明に係る画像形成装置は、上記光走査装置を備えている。
【0019】
この構成によれば、上記光走査装置を採用することにより、筐体の剛性等も考慮に入れて振動ミラー部の質量調整(共振周波数の調整)を行うことができる。延いては、光走査装置による光の走査特性を向上させることができる。よって、印刷画像の画質を向上させることができる。
【0020】
本発明に係る振動ミラー部の質量調整方法は、上記筐体の外部に配置された第2の光源からレーザー光を出射させるとともに、該出射されたレーザー光を、光学素子部により反射又は透過することで上記質量調整部に照射して該質量調整部の質量を除去する質量調整工程を含んでいる。質量調整部は、上記振動ミラー部の上記反対側面における長手方向の両端部を除く部分である中間部に形成され且つ該長手方向に延びるリブ部からなる。
【0021】
この方法によれば、簡単な装置構成を実現しながら、筐体内に収容された振動ミラー部の質量調整を容易に行うことができる。
【0022】
上記質量調整工程は、上記振動ミラー部を上記反射面とは反対側から見たときに、上記質量調整部における質量が除去された部分が該質量調整部の周縁に達しないように、上記質量調整部にレーザー光を照射する工程であることが好ましい。
【0023】
この方法によれば、振動ミラー部の質量調整部に照射されるレーザー光の照射位置がばらついたとしても、レーザー光が該質量調整部からはみ出ることもない。したがって、第2の光源から出射されたレーザー光によって振動ミラー部の反射面や該反射面に近い部分が傷つけられることもない。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、簡単な装置構成を実現しながら、筐体内に収容された振動ミラー部の質量調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態における光走査装置を備えた画像形成装置を示す概略の断面図である。
【
図2】本実施形態における光走査装置を示す正面側から見た平面図である。
【
図3】本実施形態における光走査装置を示す背面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0027】
《実施形態1》
<レーザープリンター>
図1は、本実施形態における画像形成装置としてのレーザープリンター1の概略構成を示す断面図である。
【0028】
レーザープリンター1は、
図1に示すように、箱状のプリンタ本体2と、手差し給紙部6と、カセット給紙部7と、画像形成部8と、定着部9と、排紙部10とを備えている。そうして、レーザープリンター1は、プリンタ本体2内の搬送路Lに沿って用紙を搬送しながら、不図示の端末等から送信される画像データに基づいて用紙に画像を形成するように構成されている。
【0029】
手差し給紙部6は、プリンタ本体2の1つの側部に開閉可能に設けられた手差しトレイ4と、プリンタ本体2の内部に回転可能に設けられた手差し用の給紙ローラ5とを有している。
【0030】
カセット給紙部7は、プリンタ本体2の底部に設けられている。カセット給紙部7は、互いに重ねられた複数の用紙を収容する給紙カセット11と、給紙カセット11内の用紙を1枚ずつ取り出すピックローラ12と、取り出された用紙を1枚ずつ分離して搬送路Lへと送り出すフィードローラ13及びリタードローラ14とを備えている。
【0031】
画像形成部8は、プリンタ本体2内におけるカセット給紙部7の上方に設けられている。画像形成部8は、プリンタ本体2内に回転可能に設けられた像担持体である感光ドラム16と、感光ドラム16の周囲に配置された帯電器17と、現像部18と、転写ローラ19及びクリーニング部20と、感光ドラム16の上方に配置された光走査装置30と、トナーホッパー21とを備えている。そうして、画像形成部8は、手差し給紙部6又はカセット給紙部7から供給された用紙に画像を形成するようになっている。
【0032】
尚、搬送路Lには、送り出された用紙を、一時的に待機させた後に所定のタイミングで画像形成部8に供給する一対のレジストローラ15が設けられている。
【0033】
定着部9は、画像形成部8の側方に配置されている。定着部9は、互いに圧接されて回転する定着ローラ22及び加圧ローラ23を備えている。そうして、定着部9は、画像形成部8で用紙に転写されたトナー像を当該用紙に定着させるように構成されている。
【0034】
排紙部10は、定着部9の上方に設けられている。排紙部10は、排紙トレイ3と、排紙トレイ3へ用紙を搬送するための一対の排紙ローラ24と、排紙ローラ対24へ用紙を案内する複数の搬送ガイドリブ25とを備えている。排紙トレイ3は、プリンタ本体2の上部に凹状に形成されている。
【0035】
レーザープリンター1が画像データを受信すると、画像形成部8において、感光ドラム16が回転駆動されると共に、帯電器17が感光ドラム16の表面を帯電させる。
【0036】
そして、画像データに基づいて、光走査装置30から感光ドラム16へ出射される。感光ドラム16の表面には、レーザー光が照射されることによって静電潜像が形成される。感光ドラム16上に形成された静電潜像は、現像部18で現像されることにより、トナー像として可視像となる。
【0037】
その後、用紙は、転写ローラ19により感光ドラム16の表面に押し付けられる。そのことにより、用紙に感光ドラム16のトナー像が転写される。トナー像が転写された用紙は、定着部9において定着ローラ23と加圧ローラ24とにより加熱及び加圧される。その結果、トナー像が用紙に定着する。
【0038】
−光走査装置30−
図2〜
図5に示すように、光走査装置30は、光を出射する第1の光源31と、振動体40と、振動体40を収容する筐体50と、を有している。
【0039】
筐体50は、全体視で略直方体状に形成されている。筐体50は、平面視において、縦方向(
図2の上下方向)の長さが横方向(
図2の左右方向)長さに比べて大きい長方形状をなしている。筐体50は、高さ方向の一側(
図2の紙面手前側)が開放する有底の筐体本体部51と、筐体本体部51の該開放側を閉塞する蓋部52と、を有している。筐体本体部51は例えば樹脂材で構成され、蓋部52は透光性を有する部材、例えばガラスにより構成されている。蓋部52は、第1の光源31から後述する振動ミラー部41に入射する光及び振動ミラー部41にて反射された光の双方を透過可能に構成されている。
【0040】
上記振動体40は、いわゆるMEMS(Micro Electro
Mechanical System)デバイスであり、シリコン板をエッチング加工することにより形成されている。具体的には、振動体40は、
図3に示すように、振動ミラー部41と、第1及び第2トーションバー部42,43と、第1及び第2横梁部44,45と、略矩形板状の固定枠部46とを有している。振動ミラー部41は、平面視で略楕円形状をなす薄板状に形成されている。振動ミラー部41は、固定枠部46の略中央に配置されている。振動ミラー部41の長径方向は筐体横方向に一致し、振動ミラー部41の短径方向は筐体縦方向に一致している。振動ミラー部41の厚さ方向の一側面(
図2の紙面に向かって手前側面)は、第1の光源31から出射された光を反射するための反射面41aとされている。この反射面41aには、光の反射率を高めるために例えばアルミやクロムにより光反射膜が形成されている。振動ミラー部41は、上記両トーションバー部42,43回りに捻れ振動することにより、第1の光源31から反射面41aに入射する光の反射方向を変化させて光を所定方向に往復走査させる。
【0041】
振動ミラー部41における上記反射面41aとは反対側面41bには、振動ミラー部41の長手方向に延びる直方体状のリブ部41cが形成されている(
図3参照)。リブ部41cは、振動ミラー部41の反対側面41bにおける長手方向の両端部を除く中間部に形成されている。このように、リブ部41cを振動ミラー部41の長手方向の両端部に形成しないことによって、振動ミラー部41の揺動軸心回りの慣性モーメントを低減して、振動ミラー部41の揺動時における変形を抑制することができる。このリブ部41cは、振動ミラー部41の補強部として機能すると共に、後述するように振動ミラー部41の質量調整部70としても機能する。
【0042】
上記第1及び第2トーションバー部42,43は、筐体縦方向に長い板状をなしている。両トーションバー部42,43は、平面視で振動ミラー部41の中心を通る直線上(短軸の延長線上)に配置されている。第1トーションバー部42は、一端部が振動ミラー部41の長径方向の中央部に連結され、他端部が第1横梁部44の長手方向の中央部に連結されている。第2トーションバー部43は、一端部が振動ミラー部41の長径方向の中央部に連結され、他端部が第2横梁部45の長手方向の中央部に連結されている。
【0043】
第1横梁部及び第2横梁部44,45は、筐体縦方向に互いに間隔を空けて配置されている。振動ミラー部41は、両横梁部44,45の間に配置されている。第1横梁部44の両端部及び第2横梁部45の両端部は、固定枠部46に連結されている。固定枠部46は、筐体縦方向に延びる一対の縦辺部46aと、筐体横方向に延びる一対の横辺部46bとを有している。上記第1及び第2横梁部44,45はそれぞれ、固定枠部46の両縦辺部46a間に跨って配置されている。第1横梁部44及び第2横梁部45にはそれぞれ、駆動部として圧電素子47(
図2及び
図4参照)が2つずつ取り付けられている。各圧電素子47は、不図示の駆動回路に電気的に接続されており、この駆動回路より各圧電素子47に印加する印加電圧を所定の周波数で変動させることにより圧電素子47が伸縮して振動するようになっている。この圧電素子47の振動周波数は、振動ミラー部41の共振周波数に一致するように設定される。この共振周波数は、例えば、振動ミラー部41の質量、トーションバー部42,43のバネ定数、及び筐体50の剛性など様々な要因によって変化する。圧電素子47が上記共振周波数で振動すると、振動ミラー部41が共振して両トーションバー部42,43回りに捻り振動する。
【0044】
上記固定枠部46は、筐体本体部51内に形成された一対の台座部53(
図5参照)により支持されている。一対の台座部53は、筐体本体部51の底壁部54における筐体横方向の中央部を凹ませることにより該筐体横方向の両端部に形成された段差部からなる。この一対の台座部53は、筐体本体部51の縦方向の全体に亘って形成されている。上記固定枠部46は、該一対の台座部53間に跨って配置されている。
【0045】
筐体本体部51の底壁部54における上記一対の台座部53の間に位置する部分には、反射ミラー部55が形成されている。この反射ミラー部55は、例えばアルミやクロム等の反射膜によって形成されている。反射ミラー部55は、平面視で振動ミラー部41よりも筐体縦方向の一側にずれた位置に配置されている。反射ミラー部55は、平面視で筐体横方向に長い長方形状をなしている。反射ミラー部55の長手方向の長さは、上記リブ部41cの長手方向の長さよりも小さい。反射ミラー部55は、平面視において、リブ部41cの長手方向の両端を通り且つ筐体縦方向に延びる2本の仮想線60(
図2参照)の間に配置されている。
【0046】
反射ミラー部55は、振動ミラー41の質量調整を行う際に、第2光源32から該反射ミラー部55に入射するレーザー光を反射して上記振動ミラー部41のリブ部41c(質量調整部70)に照射する光学素子部80として機能する。リブ部41cは、レーザー光の照射を受けることによりアブレーション反応を起こす。そして、このアブレーション反応によりリブ部41cの質量が除去されて振動ミラー部41の質量が調整される。振動ミラー部41の質量調整は、その共振周波数が目標周波数になるように行われる。
【0047】
以下、振動ミラー部41の質量調整手順について具体的に説明する。先ず、筐体本体部51をその開放側が上側になるように調整台の上にセットする。次いで、筐体本体部51内の台座部53上に、振動ミラー部41を含む振動体40を固定し、該固定後に、筐体本体部51の開放側を蓋部52によって閉塞する。そうして、筐体50が密閉された後に、該筐体50の外部に設けられた第2光源32により筐体50内の反射ミラー部55に向けて所定の入射角θでレーザー光を照射する。反射ミラー部55にて反射したレーザー光は、振動ミラー部41のリブ部41cの下面に照射されてアブレーション反応を起こす(
図4参照)。そして、このアブレーション反応によりリブ部41cの質量の一部が除去される。そうして、振動ミラー部41の質量が所定質量に調整される。ここで、リブ部41cのうちアブレーション反応を起こした部分は粒子となって周囲に飛散するものの、飛散した粒子は重力により下方に落下して筐体本体部51の底壁部54に付着する。よって、この飛散した粒子によって振動ミラー部41の反射面41aが汚れることもない。上記レーザー光は、リブ部41cの長手方向に沿ってライン状に照射される。これにより、リブ部41cの下面には、アブレーション反応によってその長手方向に延びる溝部41fが形成される(
図6参照)。レーザー光は、平面視でこの溝部41f(質量調整部70における質量が除去された部分)がリブ部41cの周縁に達しないように照射される。これにより、レーザー光の照射位置がばらついたとしても、レーザー光がリブ部41cからはみ出るのを防止することができる。よって、レーザー光により振動ミラー部41の反射面41aや該反射面41aに近い部分が傷つけられるのを防止することができる。
【0048】
以上説明したように、上記実施形態1では、振動ミラー部41を筐体50内に収容した状態でその質量調整を容易に行うことができる。よって、筐体50の剛性等も考慮に入れて振動ミラー部41の共振周波数を調整することができる。また、質量調整部70としてガス吸収剤又はガス放出剤を別途用意したり、ガスを筐体50内に密封するために筐体50のシール構造を強化したりする必要もないので、装置30全体の構成を簡素化することができる。
【0049】
《実施形態2》
図7及び
図8は、実施形態2を示している。この実施形態2では光学素子部80の構成が上記実施形態とは異なっている。尚、以下の説明において、
図4と同じ部分については同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0050】
すなわち、本実施形態2では、光学素子部80は第2の光源32から出射されるレーザー光を透過する光透過窓部56により構成されている。この光透過窓部56は、レーザー光を透過可能な部材(例えばガラス)を筐体の底壁部54に形成された矩形状の開口部54fに嵌め込むことで形成されている。光透過窓部56は、振動ミラー部41の直下に形成されている。第2の光源32から出射されたレーザー光は、この光透過窓部56を通って振動ミラー部41のリブ部41cの下面に照射される。これにより、上記実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
《他の実施形態》
上記各実施形態では、リブ部41cは、振動ミラー部41の長手方向に延びるように形成されているが、これに限ったものではない。すなわち、リブ部41cは、例えば、
図9に示すように、平面視で両トーションバー部42,43の延長線上に形成されていてもよい。これにより、振動ミラー部41の揺動軸心回りの慣性モーメントを低減して、振動ミラー部41が揺動時の慣性力により変形するのを抑制することができる。
【0052】
上記各実施形態では、筐体50内の圧力調整等は行っていないが、これに限ったものではなく、例えば、筐体50内を真空化するようにしてもよい。これにより、振動ミラー部41に作用する揺動時の空気抵抗を低減して、その振動特性を安定化させることができる。この場合、筐体50内を真空化した後に、振動ミラー部41の質量調整を行うようにすればよい。
【0053】
上記各実施形態では、圧電素子47により振動ミラー部41を振動させるようにしているが、これに限ったものではなく、例えば特開2005−91544号公報(特許文献2)に示すように静電駆動力を利用して振動させるようにしてもよいし、磁石による電磁駆動力を利用して駆動させるようにしてもよい。
【0054】
上記各実施形態では、振動ミラー部41は、平面視で楕円形状に形成されているが、これに限ったものではなく、例えば、長方形状、正方形状、又は真円状など如何なる形状であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、本発明は、光走査装置を備えたプリンター、コピー機、或いはFAX等の画像形成装置や、スキャナー、プロジェクター、或いはバーコードリーダー等の光走査装置に有用であり、特に共振型の光走査装置に対して有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 レーザープリンター(画像形成装置)
30 光走査装置
31 第1の光源
41 振動ミラー部
41a 反射面
41b 反対側面
41c リブ部(質量調整部)
42 トーションバー部
43 トーションバー部
47 圧電素子(駆動部)
50 筐体
55 反射ミラー部(光学素子部)
56 光透過窓部(光学素子部)
70 質量調整部
80 光学素子部