特許第5993608号(P5993608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993608
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】車両搬送装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/24 20060101AFI20160901BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   E04H6/24 B
   B65G1/04 565
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-104514(P2012-104514)
(22)【出願日】2012年5月1日
(65)【公開番号】特開2013-231322(P2013-231322A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 亨
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】小野 右季
(72)【発明者】
【氏名】新井 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 公基
(72)【発明者】
【氏名】神林 隆
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−169451(JP,A)
【文献】 特表2007−514884(JP,A)
【文献】 特開2009−234523(JP,A)
【文献】 特開2011−161990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 13/00
B62D 11/00−24
E04H 6/24
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行駆動装置により全方向に自走可能で且つ車両下部に進入可能な台車本体と、
該台車本体の台車フレームに連結部材を介して取り付けられるリフターフレームに、前記台車フレームの側面に沿う格納位置と前記車両の各車輪を前後から挟み付けるように支持しつつリフトアップする展開位置との間で回動自在な一対のリフトバーを、前記車両の車輪に対応させて枢着することによって形成したリフターと
を備え、
前記走行駆動装置を、前記台車フレームに水平旋回自在に取り付けられた転向フレームの中心部に、走行車輪を回転駆動自在に配設した走行ユニットにより構成し、該走行ユニットを台車フレームの前後方向へ二基配設し、各走行ユニットの走行車輪と転向フレームとを、遠隔操作器により走行経路に応じて速度調整しつつ回転駆動するよう構成し
前記台車本体を前進・後退させる走行方向と、該走行方向に対し直交する左右方向へ台車本体を横行させる横行方向と、前記台車本体を斜行させる斜行方向とに対応させて、操作器本体からジョイスティックを傾動自在に突設し、該ジョイスティックの基点からの傾斜角度に応じて前記台車本体の各方向への速度を調整自在とすることにより、前記遠隔操作器を構成し、
前記遠隔操作器の操作器本体に走行曲釦と横行曲釦と旋回釦とを配設し、
前記走行曲釦を押した状態でジョイスティックを基点から傾斜させる方向及び角度に応じて前記台車本体の湾曲走行における湾曲方向と曲率と湾曲走行速度とを調整自在とし、
前記横行曲釦を押した状態でジョイスティックを基点から傾斜させる方向及び角度に応じて前記台車本体の湾曲横行における湾曲方向と曲率と湾曲横行速度とを調整自在とし、
前記旋回釦を押した状態でジョイスティックを基点から傾斜させる方向及び角度に応じて前記台車本体の旋回方向と旋回速度とを調整自在とするよう構成したことを特徴とする車両搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、任意の位置に停車した車両を駐車施設における所定位置に搬送できるようにした入出車装置の一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【0003】
特許文献1に示される装置は、それぞれ車両支持機構及び走行機構を備える左側搬送台車と右側搬送台車とからなり、該左側搬送台車と右側搬送台車とがそれぞれ独立して移動しつつ、協働して車両を支持し、搬送するようになっている。
【0004】
前記左側搬送台車と右側搬送台車は、無線通信によってリアルタイムに情報交換を行うことにより、協働している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−169451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示されるような搬送台車では、車両の左右両側に充分な空きスペースがない場合、該車両の左右両側に搬送台車が寄り付くことができず、車両を搬送することができなくなるという欠点を有していた。
【0007】
又、車両の試験設備等においては、作業員が数人で車両を押しながら移動させることもあり、このような場合、作業員の負担が大きく、手間と時間がかかってしまうため、簡単な構成で車両を確実に搬送できる装置の開発が望まれていた。
【0008】
尚、床面に貼り付けられた誘導テープに沿って走行する無軌道床上自動搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)を前記車両の試験設備等に適用することも可能ではあるが、この場合、車両を予め設定された走行経路で且つ決められた速度パターンで搬送する形となるため、その条件が少しでも崩れると車両を搬送することが難しくなる一方、手動操作でも限られた操作しかできないことが多くなっていた。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、車両の左右両側に充分な空きスペースがなくても、簡単な構成で車両を確実に且つ走行経路と速度パターンを自由に選択しつつ搬送し得、搬送作業の効率向上を図り得る車両搬送装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、走行駆動装置により全方向に自走可能で且つ車両下部に進入可能な台車本体と、
該台車本体の台車フレームに連結部材を介して取り付けられるリフターフレームに、前記台車フレームの側面に沿う格納位置と前記車両の各車輪を前後から挟み付けるように支持しつつリフトアップする展開位置との間で回動自在な一対のリフトバーを、前記車両の車輪に対応させて枢着することによって形成したリフターと
を備え、
前記走行駆動装置を、前記台車フレームに水平旋回自在に取り付けられた転向フレームの中心部に、走行車輪を回転駆動自在に配設した走行ユニットにより構成し、該走行ユニットを台車フレームの前後方向へ二基配設し、各走行ユニットの走行車輪と転向フレームとを、遠隔操作器により走行経路に応じて速度調整しつつ回転駆動するよう構成し
前記台車本体を前進・後退させる走行方向と、該走行方向に対し直交する左右方向へ台車本体を横行させる横行方向と、前記台車本体を斜行させる斜行方向とに対応させて、操作器本体からジョイスティックを傾動自在に突設し、該ジョイスティックの基点からの傾斜角度に応じて前記台車本体の各方向への速度を調整自在とすることにより、前記遠隔操作器を構成し、
前記遠隔操作器の操作器本体に走行曲釦と横行曲釦と旋回釦とを配設し、
前記走行曲釦を押した状態でジョイスティックを基点から傾斜させる方向及び角度に応じて前記台車本体の湾曲走行における湾曲方向と曲率と湾曲走行速度とを調整自在とし、
前記横行曲釦を押した状態でジョイスティックを基点から傾斜させる方向及び角度に応じて前記台車本体の湾曲横行における湾曲方向と曲率と湾曲横行速度とを調整自在とし、
前記旋回釦を押した状態でジョイスティックを基点から傾斜させる方向及び角度に応じて前記台車本体の旋回方向と旋回速度とを調整自在とするよう構成したことを特徴とする車両搬送装置にかかるものである。
【0011】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0012】
車両を搬送する際には、台車本体を車両下部に進入させ、リフターのリフトバーを格納位置から回動させ、各車輪を前後から挟み付けるように支持しつつリフトアップする展開位置まで回動させると、車両がリフターによって支持され、この状態で、台車フレームの前後方向へ二基配設した各走行ユニットの走行車輪と転向フレームとを、遠隔操作器にて走行経路に応じて速度調整しつつ回転駆動することにより台車本体を自走させれば、車両を搬送することが可能となる。
【0013】
この結果、特許文献1に示されるような搬送台車とは異なり、車両の左右両側に充分な空きスペースがなくても、車両の前後の少なくとも一方には必ずスペースはあるため、台車本体を車両下部に進入させることさえできれば、車両を搬送することができなくなる心配はない。
【0014】
又、本発明の車両搬送装置を車両の試験設備等において利用すれば、作業員が数人で車両を押しながら移動させなくて済み、作業員の負担が大幅に軽減され、手間と時間がかからなくなり、作業効率を向上させることが可能となる。
【0015】
更に又、床面に貼り付けられた誘導テープに沿って走行する無軌道床上自動搬送車を前記車両の試験設備等に適用するのに比べ、車両を予め設定された走行経路に限定されることなく、状況に応じた最適な速度パターンで搬送することが可能となり、搬送作業を非常に効率よく行えるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両搬送装置によれば、車両の左右両側に充分な空きスペースがなくても、簡単な構成で車両を確実に且つ走行経路と速度パターンを自由に選択しつつ搬送し得、搬送作業の効率向上を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の車両搬送装置の実施例を示す平面図である。
図2】本発明の車両搬送装置の実施例を示す側面図である。
図3】本発明の車両搬送装置の実施例を示す後面図である。
図4】本発明の車両搬送装置の実施例における台車フレームとリフターフレームとをつなぐ連結部材を示す側面図であって、図1のIV−IV矢視相当図である。
図5】本発明の車両搬送装置の実施例における遠隔操作器の操作と該操作による台車本体の動作(走行)とを示す概要図である。
図6】本発明の車両搬送装置の実施例における遠隔操作器の操作と該操作による台車本体の動作(横行)とを示す概要図である。
図7】本発明の車両搬送装置の実施例における遠隔操作器の操作と該操作による台車本体の動作(左斜め前方及び右斜め後方への斜行)とを示す概要図である。
図8】本発明の車両搬送装置の実施例における遠隔操作器の操作と該操作による台車本体の動作(右斜め前方及び左斜め後方への斜行)とを示す概要図である。
図9】本発明の車両搬送装置の実施例における遠隔操作器の操作と該操作による台車本体の動作(左方への湾曲走行)とを示す概要図である。
図10】本発明の車両搬送装置の実施例における遠隔操作器の操作と該操作による台車本体の動作(右方への湾曲走行)とを示す概要図である。
図11】本発明の車両搬送装置の実施例における遠隔操作器の操作と該操作による台車本体の動作(前方への湾曲横行)とを示す概要図である。
図12】本発明の車両搬送装置の実施例における遠隔操作器の操作と該操作による台車本体の動作(後方への湾曲横行)とを示す概要図である。
図13】本発明の車両搬送装置の実施例における遠隔操作器の操作と該操作による台車本体の動作(時計回り方向への旋回)とを示す概要図である。
図14】本発明の車両搬送装置の実施例における遠隔操作器の操作と該操作による台車本体の動作(反時計回り方向への旋回)とを示す概要図である。
図15】本発明の車両搬送装置の実施例における台車本体の動作の一例(湾曲走行)を示す概要図である。
図16】本発明の車両搬送装置の実施例における台車本体の動作の一例(湾曲横行)を示す概要図である。
図17】本発明の車両搬送装置の実施例における台車本体の動作の一例(走行ライン変更)を示す概要図である。
図18】本発明の車両搬送装置の実施例における台車本体の動作の一例(横行ライン変更)を示す概要図である。
図19】本発明の車両搬送装置の実施例における台車本体の動作の一例(走行と横行の組み合わせ)を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1図19は本発明の車両搬送装置の実施例であって、1は車両であり、走行駆動装置2により全方向に自走可能で且つ車両1下部に進入可能な台車本体3に、車両1をリフトアップするリフター4を設けたものである。
【0022】
前記台車本体3は、車両1の前後方向へ延びる台車フレーム3aの複数所要箇所にキャスタ3bを取り付けると共に、該台車フレーム3aの前後方向中間部に走行駆動装置2を設けてある。
【0023】
前記リフター4は、台車本体3の台車フレーム3aの前部と後部(長手方向両端部)にそれぞれ連結部材5を介して取り付けられるリフターフレーム4aに、前記台車フレーム3aの側面に沿う格納位置と前記車両1の各車輪1aを前後から挟み付けるように支持しつつリフトアップする展開位置との間で回動自在な一対のリフトバー4bを、前記車両1の車輪1aに対応させて枢着することによって形成してある。
【0024】
本実施例の場合、前記車両1の車輪1aに対応させて一対のリフトバー4bを配設してあるが、その駆動に関しては、車輪1aの前側(図1の右側)に配設される左右二本のリフトバー4bを一組とし、且つ車輪1aの後側(図1の左側)に配設される左右二本のリフトバー4bを一組とし、該左右一組としたリフトバー4bの枢着点から張り出すリンク4cの先端部間に、車両1幅方向へ延びる油圧シリンダ6のシリンダ本体6a基端とロッド6b先端とを掛け渡すように連結し、該油圧シリンダ6を収縮させることにより、前記リフトバー4bを台車フレーム3aの側面に沿う格納位置に回動させる一方、前記油圧シリンダ6を伸長させることにより、前記リフトバー4bを車両1の各車輪1aの下側を前後から挟み付けるように支持しつつリフトアップする展開位置に回動させるようにしてある。尚、前記リフターフレーム4aの複数所要箇所、並びにリフトバー4bの先端部にはそれぞれ、車両1の荷重を支持するキャスタ4dを取り付けてある。
【0025】
前記走行駆動装置2は、前記台車フレーム3aに対して水平旋回自在に取り付けられた円板状の転向フレーム2aの中心部に、走行車輪2bをモータ2cにより減速機2dを介して回転駆動自在に配設した走行ユニット2Aにより構成し、該走行ユニット2Aを台車フレーム3aの前後方向へ所要の間隔をあけて二基配設し、各走行ユニット2Aの転向フレーム2aの外周に設けたリングギヤ2eにそれぞれ転向駆動ピニオン2fを噛合させ、該転向駆動ピニオン2fを図示していないモータにより減速機を介して回転駆動することにより、前記各走行ユニット2Aの転向フレーム2aを個別に旋回させるよう構成してある。
【0026】
前記連結部材5は、図4に示す如く、前記台車フレーム3aに設けられ且つ上下方向へ延びるピン5aと、前記リフターフレーム4aに設けられ且つ前記ピン5aに嵌装されるブラケット5bとから構成し、前記リフター4に加わる車両1の荷重を前記台車本体3の走行駆動装置2に伝えないよう構成してある。尚、前記上下方向へ延びるピン5aを台車フレーム3aの代わりにリフターフレーム4aに設け、前記ピン5aに嵌装されるブラケット5bをリフターフレーム4aの代わりに台車フレーム3aに設けて前記連結部材5を構成することも可能である。
【0027】
又、前記台車本体3の台車フレーム3a後部には、図1及び図3に示す如く、前記油圧シリンダ6への圧油の給排を油圧配管系統7aを介して行う油圧ユニット7と、前記台車本体3並びにリフター4の動作を制御する制御機器8と、該制御機器8やモータ2cに通電を行う鉛蓄電池等のバッテリー9とを搭載してある。
【0028】
一方、前記台車本体3並びにリフター4の動作は、遠隔操作器10によって作業員が遠隔操作できるようにしてあり、該遠隔操作器10は、図5図14に示す如く、前記台車本体3を前進・後退させる走行方向と、該走行方向に対し直交する左右方向へ台車本体3を横行させる横行方向と、前記台車本体3を斜行させる斜行方向とに対応させて、操作器本体10aからジョイスティック10bを傾動自在に突設し、該ジョイスティック10bの基点Oからの傾斜角度に応じて前記台車本体3の各方向への速度を調整自在としてある。
【0029】
又、前記遠隔操作器10の操作器本体10aには、走行曲釦10cと横行曲釦10dと旋回釦10eとを配設し、前記走行曲釦10cを押した状態でジョイスティック10bを基点Oから傾斜させる方向及び角度に応じて前記台車本体3の湾曲走行における湾曲方向と曲率と湾曲走行速度とを調整自在とし、前記横行曲釦10dを押した状態でジョイスティック10bを基点Oから傾斜させる方向及び角度に応じて前記台車本体3の湾曲横行における湾曲方向と曲率と湾曲横行速度とを調整自在とし、前記旋回釦10eを押した状態でジョイスティック10bを基点Oから傾斜させる方向及び角度に応じて前記台車本体3の旋回方向と旋回速度とを調整自在とするよう構成してある。
【0030】
尚、前記遠隔操作器10には、図示していないが、メイン電源のオン・オフを行う電源スイッチ、該電源スイッチをオンにした際に点灯する電源表示灯、前記リフター4のリフトバー4bを格納位置に回動させるリフター格納ボタン、前記リフター4のリフトバー4bのうち車両1の後側の車輪1aの後方に配置されるリフトバー4bのみを単独で展開位置に回動させるリフター単独展開ボタン、前記リフター4のリフトバー4b全部を展開位置に回動させるリフター全部展開ボタン、緊急時に台車本体3並びにリフター4の動作を停止させる非常停止ボタンが設けられている。
【0031】
又、前記台車本体3の台車フレーム3aにおける上面の複数所要箇所には、図1及び図2に示す如く、車両1下面に接触した場合にオンとなって車両1に対し台車フレーム3aが干渉していることを知らせるテープ状スイッチ11を貼り付けてある。
【0032】
又、前記台車本体3の台車フレーム3a後部に搭載された制御機器8の車両1と対面する所要箇所には、該車両1との距離が設定値未満となった際に警報を発する超音波センサ12を取り付けてある。
【0033】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0034】
車両1を搬送する際には、先ず、遠隔操作器10の電源スイッチ(図示せず)をオンにし、台車本体3を車両1の後方に位置させ、リフター4のリフトバー4bを全て格納位置に回動させた状態から、リフター単独展開ボタン(図示せず)を押してリフター4のリフトバー4bのうち車両1の後側の車輪1aの後方に配置されるリフトバー4bのみを単独で展開位置に回動させておく。
【0035】
続いて、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを走行方向における前進方向へ傾斜させると、図1に示す状態から、走行駆動装置2の二基の走行ユニット2Aの転向フレーム2aが右回転(右旋回)する方向(時計回り方向)へ回転駆動され、走行駆動装置2の二基の走行ユニット2Aの走行車輪2bの向きが90°転向されると共に、該走行車輪2bが回転駆動され、台車本体3が前進し、これにより、該台車本体3を車両1下部に進入させることが可能となる。
【0036】
ここで、前記リフター4のリフトバー4bのうち車両1の後側の車輪1aの後方に配置されるリフトバー4bのみを単独で展開位置に回動させてあるため、該リフトバー4bが車両1の後側の車輪1aに接触する位置まで前記台車本体3を前進させ停止させるようにすれば、特別なセンサ等を用いなくても、車両1に対する台車本体3の位置決めを簡単且つ自動的に行うことができる。
【0037】
この状態から、前記遠隔操作器10のリフター全部展開ボタン(図示せず)を押すと、既に展開位置にあるリフター4のリフトバー4bを除く残りのリフトバー4b全部が格納位置から展開位置に回動するため、各車輪1aの下側を前後から挟み付けるように支持しつつリフトアップすることが可能となる。
【0038】
次に、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを、図5に示す如く、走行方向における前進方向(図5においては右方向)へ傾斜させれば、台車本体3上の車両1(図2参照)を前進させる方向へ搬送することが可能となり、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを走行方向における後退方向(図5においては左方向)へ傾斜させれば、台車本体3上の車両1(図2参照)を後退させる方向へ搬送することが可能となる。尚、前記ジョイスティック10bを走行方向へ倒す角度を大きくするほど、それに比例して走行速度が増加する。
【0039】
又、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを、図6に示す如く、横行方向における左方向(図6においては上方向)へ傾斜させると、前記走行駆動装置2の二基の走行ユニット2Aの転向フレーム2aの旋回により走行車輪2bの向きが横行方向へ転向され、台車本体3上の車両1(図2参照)を左に横行させる方向へ搬送することが可能となり、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを横行方向における右方向(図6においては下方向)へ傾斜させると、台車本体3上の車両1(図2参照)を右に横行させる方向へ搬送することが可能となる。尚、前記ジョイスティック10bを横行方向へ倒す角度を大きくするほど、それに比例して横行速度が増加する。
【0040】
更に又、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを、図7に示す如く、左斜め前方(図7においては右斜め上方向)の斜行方向へ傾斜させると、前記走行駆動装置2の二基の走行ユニット2Aの転向フレーム2aの旋回により走行車輪2bの向きが左斜め前方の斜行方向へ転向され、台車本体3上の車両1(図2参照)を左斜め前方に斜行させる方向へ搬送することが可能となり、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを右斜め後方(図7においては左斜め下方向)の斜行方向へ傾斜させると、台車本体3上の車両1(図2参照)を右斜め後方に斜行させる方向へ搬送することが可能となる。前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを、図8に示す如く、右斜め前方(図8においては右斜め下方向)の斜行方向へ傾斜させると、前記走行駆動装置2の二基の走行ユニット2Aの転向フレーム2aの旋回により走行車輪2bの向きが右斜め前方の斜行方向へ転向され、台車本体3上の車両1(図2参照)を右斜め前方に斜行させる方向へ搬送することが可能となり、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを左斜め後方(図8においては左斜め上方向)の斜行方向へ傾斜させると、台車本体3上の車両1(図2参照)を左斜め後方に斜行させる方向へ搬送することが可能となる。尚、前記ジョイスティック10bを斜行方向へ倒す角度を大きくするほど、それに比例して斜行速度が増加する。
【0041】
一方、図9に示す如く、前記走行曲釦10cを押し、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを横行方向における左方向(図9においては上方向)へ傾斜させると、前記走行駆動装置2の二基の走行ユニット2Aの転向フレーム2aの旋回により走行車輪2bの向きが前後で相反する角度(図9では逆ハの字状となる角度)に転向され、この状態で、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを走行方向における前進方向へ傾斜させれば、台車本体3上の車両1(図2参照)を左斜め前方へカーブさせる形で前進させる方向へ搬送することが可能となる。前記走行車輪2bの向きが逆ハの字状に転向された状態で、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを走行方向における後退方向へ傾斜させれば、台車本体3上の車両1(図2参照)を左斜め後方へカーブさせる形で後退させる方向へ搬送することが可能となる。尚、前記走行曲釦10cを押した状態で、前記ジョイスティック10bを横行方向へ倒す角度を大きくしていくと、その途中の予め設定された所要箇所までは、該ジョイスティック10bを倒す角度に比例して前記逆ハの字状に転向される走行車輪2bの転向角度がきつくなり湾曲走行の曲率半径が小さくなるが、該転向角度には限界値を設定してあり、前記ジョイスティック10bを前記所要箇所を越えて横行方向における左方向へ傾斜させたとしても、前記走行車輪2bの転向角度は限界値以上にはならないようにしてある。この場合、前記ジョイスティック10bを走行方向へ倒す角度を大きくするほど、それに比例して走行速度が増加する点は、前記前進・後退の走行時と同様である。
【0042】
又、図10に示す如く、前記走行曲釦10cを押し、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを横行方向における右方向(図10においては下方向)へ傾斜させると、前記走行駆動装置2の二基の走行ユニット2Aの転向フレーム2aの旋回により走行車輪2bの向きが前後で相反する角度(図10ではハの字状となる角度)に転向され、この状態で、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを走行方向における前進方向へ傾斜させれば、台車本体3上の車両1(図2参照)を右斜め前方へカーブさせる形で前進させる方向へ搬送することが可能となる。前記走行車輪2bの向きがハの字状に転向された状態で、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを走行方向における後退方向へ傾斜させれば、台車本体3上の車両1(図2参照)を右斜め後方へカーブさせる形で後退させる方向へ搬送することが可能となる。尚、前記走行曲釦10cを押した状態で、前記ジョイスティック10bを横行方向へ倒す角度を大きくしていくと、その途中の予め設定された所要箇所までは、該ジョイスティック10bを倒す角度に比例して前記ハの字状に転向される走行車輪2bの転向角度がきつくなり湾曲走行の曲率半径が小さくなるが、該転向角度には限界値を設定してあり、前記ジョイスティック10bを前記所要箇所を越えて横行方向における右方向へ傾斜させたとしても、前記走行車輪2bの転向角度は限界値以上にはならないようにしてある。この場合、前記ジョイスティック10bを走行方向へ倒す角度を大きくするほど、それに比例して走行速度が増加する点は、前記前進・後退の走行時と同様である。
【0043】
更に、図11に示す如く、前記横行曲釦10dを押し、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを走行方向における前進方向(図11においては右方向)へ傾斜させると、前記二個の走行車輪2bの向きは横行方向へ向いたまま変わらないが、後方に位置する走行車輪2bの回転速度が前方に位置する走行車輪2bの回転速度より大きく設定され、この状態で、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを横行方向における左方向(図11においては上方向)へ傾斜させれば、台車本体3上の車両1(図2参照)を前方へカーブさせる形で左横行させる方向へ搬送することが可能となる。前記後方に位置する走行車輪2bの回転速度が前方に位置する走行車輪2bの回転速度より大きく設定された状態で、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを横行方向における右方向(図11においては下方向)へ傾斜させれば、台車本体3上の車両1(図2参照)を前方へカーブさせる形で右横行させる方向へ搬送することが可能となる。尚、前記横行曲釦10dを押した状態で、前記ジョイスティック10bを走行方向における前進方向へ倒す角度を大きくしていくと、その途中の予め設定された所要箇所までは該ジョイスティック10bを倒す角度に比例して前記後方に位置する走行車輪2bと前方に位置する走行車輪2bとの回転速度差が大きくなり湾曲横行の曲率半径が小さくなるが、該回転速度差には限界値を設定してあり、前記ジョイスティック10bを前記所要箇所を越えて走行方向における前進方向へ傾斜させたとしても、前記回転速度差は限界値以上にはならないようにしてある。この場合、前記ジョイスティック10bを横行方向へ倒す角度を大きくするほど、それに比例して横行速度が増加する点は、前記横行時と同様である。
【0044】
又、図12に示す如く、前記横行曲釦10dを押し、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを走行方向における後退方向(図12においては左方向)へ傾斜させると、前記二個の走行車輪2bの向きは横行方向へ向いたまま変わらないが、前方に位置する走行車輪2bの回転速度が後方に位置する走行車輪2bの回転速度より大きく設定され、この状態で、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを横行方向における左方向(図11においては上方向)へ傾斜させれば、台車本体3上の車両1(図2参照)を後方へカーブさせる形で左横行させる方向へ搬送することが可能となる。前記前方に位置する走行車輪2bの回転速度が後方に位置する走行車輪2bの回転速度より大きく設定された状態で、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを横行方向における右方向(図11においては下方向)へ傾斜させれば、台車本体3上の車両1(図2参照)を後方へカーブさせる形で右横行させる方向へ搬送することが可能となる。尚、前記横行曲釦10dを押した状態で、前記ジョイスティック10bを走行方向における後退方向へ倒す角度を大きくしていくと、その途中の予め設定された所要箇所までは該ジョイスティック10bを倒す角度に比例して前記前方に位置する走行車輪2bと後方に位置する走行車輪2bとの回転速度差が大きくなり湾曲横行の曲率半径が小さくなるが、該回転速度差には限界値を設定してあり、前記ジョイスティック10bを前記所要箇所を越えて走行方向における後退方向へ傾斜させたとしても、前記回転速度差は限界値以上にはならないようにしてある。この場合、前記ジョイスティック10bを横行方向へ倒す角度を大きくするほど、それに比例して横行速度が増加する点は、前記横行時と同様である。
【0045】
更に、図13に示す如く、前記旋回釦10eを押し、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを横行方向における右方向(図13においては下方向)へ傾斜させると、前記二個の走行車輪2bの向きは横行方向へ向いたまま変わらないが、前方に位置する走行車輪2bが横行方向における右方向へ進行し且つ後方に位置する走行車輪2bが横行方向における左方向へ進行するようそれぞれの回転方向が逆向きに設定され、台車本体3上の車両1(図2参照)をその位置で時計回り方向へ旋回させることが可能となる。尚、前記旋回釦10eを押した状態で、前記ジョイスティック10bを横行方向における右方向へ倒す角度を大きくするほど、それに比例して時計回り方向への旋回速度が増加する。
【0046】
又、図14に示す如く、前記旋回釦10eを押し、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを横行方向における左方向(図14においては上方向)へ傾斜させると、前記二個の走行車輪2bの向きは横行方向へ向いたまま変わらないが、前方に位置する走行車輪2bが横行方向における左方向へ進行し且つ後方に位置する走行車輪2bが横行方向における右方向へ進行するようそれぞれの回転方向が逆向きに設定され、台車本体3上の車両1(図2参照)をその位置で反時計回り方向へ旋回させることが可能となる。尚、前記旋回釦10eを押した状態で、前記ジョイスティック10bを横行方向における左方向へ倒す角度を大きくするほど、それに比例して反時計回り方向への旋回速度が増加する。
【0047】
そして、例えば、上記の図5及び図10に示す運転操作を組み合わせることにより、図15に示す如く、台車本体3を湾曲走行させることが可能となる一方、上記の図6及び図12に示す運転操作を組み合わせることにより、図16に示す如く、台車本体3を湾曲横行させることが可能となる。
【0048】
又、上記の図5及び図8に示す運転操作を組み合わせることにより、図17に示す如く、台車本体3を走行ライン変更させる形で走行させることが可能となる一方、上記の図6及び図7に示す運転操作を組み合わせることにより、図18に示す如く、台車本体3を横行ライン変更させる形で横行させることが可能となる。
【0049】
更に又、上記の図5図7に示す運転操作を組み合わせることにより、図19に示す如く、台車本体3を走行と横行を組み合わせる形で曲線的に移動させることが可能となる。
【0050】
尚、図15図19に示すパターン以外にも、必要に応じて台車本体3を複雑な経路で移動させることが可能となることは勿論である。
【0051】
前記車両1が搭載された台車本体3を所定の位置へ移動させ、必要に応じて車両1の向きを変更した後、前記遠隔操作器10のリフター格納ボタン(図示せず)を押すと、前記リフター4のリフトバー4bが格納位置に回動し、前記車両1がリフトアップされていた状態から地上に降ろされ、この後、前記遠隔操作器10のジョイスティック10bを走行方向における後退方向(図5においては左方向)へ傾斜させ、台車本体3を後退させると、該台車本体3を車両1下部から引き出すことが可能となり、車両1の搬送が完了する。
【0052】
尚、上述の例では、前記台車本体3を車両1の後方から進入させる場合について説明したが、該台車本体3を車両1の前方から進入させても同様に車両1の搬送を行えることは言うまでもない。
【0053】
この結果、特許文献1に示されるような搬送台車とは異なり、車両1の左右両側に充分な空きスペースがなくても、車両1の前後の少なくとも一方には必ずスペースはあるため、台車本体3を車両1下部に進入させることさえできれば、車両1を搬送することができなくなる心配はない。
【0054】
又、本実施例の車両搬送装置を車両1の試験設備等において利用すれば、作業員が数人で車両1を押しながら移動させなくて済み、作業員の負担が大幅に軽減され、手間と時間がかからなくなり、作業効率を向上させることが可能となる。
【0055】
更に又、床面に貼り付けられた誘導テープに沿って走行する無軌道床上自動搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)を前記車両の試験設備等に適用するのに比べ、車両を予め設定された走行経路に限定されることなく、状況に応じた最適な速度パターンで搬送することが可能となり、搬送作業を非常に効率よく行えるようになる。
【0056】
一方、前記車両搬送装置においては、前記台車フレーム3a及びリフターフレーム4aのいずれか一方に設けられ且つ上下方向へ延びるピン5aと、前記台車フレーム3a及びリフターフレーム4aのいずれか他方に設けられ且つ前記ピン5aに嵌装されるブラケット5bとから前記連結部材5を構成し、前記リフター4に加わる車両1の荷重を前記台車本体3の走行駆動装置2に伝えないよう構成してあるため、走行駆動装置2の走行車輪2bの耐荷重を大きくしなくて済み、該走行車輪2bの外径が小さく抑えられ、車両1下部に進入させる必要があることから高さが制限される台車本体3に走行車輪2bを搭載する上で有効となる。
【0057】
こうして、車両1の左右両側に充分な空きスペースがなくても、簡単な構成で車両1を確実に且つ走行経路と速度パターンを自由に選択しつつ搬送し得、搬送作業の効率向上を図り得る。
【0058】
尚、本発明の車両搬送装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、台車フレームに伸縮機構を設けるようにすれば、ホイールベースの異なる車両にも適用可能となること等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
1 車両
1a 車輪
2 走行駆動装置
2A 走行ユニット
2a 転向フレーム
2b 走行車輪
3 台車本体
3a 台車フレーム
4 リフター
4a リフターフレーム
4b リフトバー
5 連結部材
5a ピン
5b ブラケット
6 油圧シリンダ
10 遠隔操作器
10a 操作器本体
10b ジョイスティック
10c 走行曲釦
10d 横行曲釦
10e 旋回釦
O 基点
図1
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