特許第5993609号(P5993609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993609
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02P 7/06 20060101AFI20160901BHJP
   F16K 31/04 20060101ALN20160901BHJP
【FI】
   H02P7/06 G
   !F16K31/04 G
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-106565(P2012-106565)
(22)【出願日】2012年5月8日
(65)【公開番号】特開2013-236443(P2013-236443A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】染谷 秀明
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 亮
(72)【発明者】
【氏名】阿部 卓司
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−161855(JP,A)
【文献】 特開2007−331851(JP,A)
【文献】 特開2005−214299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 7/00−7/347
H02P 29/00−29/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源からの電力の供給を受けて操作端を駆動するモータと、前記外部電源からの電力の供給を受けて充電される蓄電体とを備え、前記外部電源の遮断時に前記蓄電体に蓄えられている電力によって前記モータを強制的に駆動し、このモータによって駆動される操作端が所定の開度に達したことを検出して、前記蓄電体からの前記モータへの電力の供給を遮断する電動アクチュエータにおいて、
前記蓄電体からの前記モータへの電力の供給通路に設けられ、前記蓄電体からの前記モータへの電力の供給通路を開閉するスイッチ手段と、
操作者からの指示に応じ、前記蓄電体からの電力の供給を受けて動作し、前記蓄電体からの前記モータへの電力の供給通路に設けられている前記スイッチ手段を開とするセット手段と、
前記外部電源の遮断が復旧された場合、その外部電源からの電力の供給を受けて動作し、前記蓄電体からの前記モータへの電力の供給通路に設けられている前記スイッチ手段を閉とするリセット手段と
を備えることを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載された電動アクチュエータにおいて、
操作者からの指示に応じ、セットされている電池の電力を前記セット手段に供給して当該セット手段を動作させ、前記蓄電体からの前記モータへの電力の供給通路に設けられている前記スイッチ手段を開とする電池パック
を備えることを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された電動アクチュエータにおいて、
前記セット手段への電力の供給に伴って給電され、当該セット手段が動作したことを知らせる報知手段
を備えることを特徴とする電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブやダンパなどの操作端を駆動する電動アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空調設備では、その冷温水配管に設けられるバルブの開閉動作やダクト内を通って空調エリアに供給される調和空気の風量を加減するダンパの開度調整動作を行わせるために電動アクチュエータが用いられている。
【0003】
この種の通常の電動アクチュエータは、電動アクチュエータの内部にモータを備え、空調用コントローラからの制御指令に応じて、バルブやダンパなどの操作端の開度を設定開度するように動作する。
【0004】
このような電動アクチュエータでは、供給されている電源に停電が生じると、操作端の開度は停電直前の動作開度のままとなり、もはや適切な開度制御が行われなくなる。
【0005】
そこで、電動アクチュエータに供給されている電源が停電となった場合に、所定開度(例えば、全閉)に強制的に動作させ、電源が再び通常状態に復帰するまで、その所定開度を維持するタイプの電動アクチュエータも提案され、既に存在する。以下、このようなタイプの電動アクチュエータを緊急遮断機能付き電動アクチュエータと呼ぶ。
【0006】
現在、緊急遮断機能付き電動アクチュエータとしては具体的には2タイプ提案されており、1つのタイプはスプリングリターン型、もう1つのタイプは2次電源駆動型と称されている。
【0007】
スプリングリターン型電動アクチュエータは、電動アクチュエータの駆動軸に対して全閉状態を維持するように付勢されるリターンスプリングを搭載し、電源が供給されている場合はこのリターンスプリングの付勢力に抗して駆動モータを駆動させてバルブやダンパなどの操作端の開度を調整し、停電が生じた場合にはリターンスプリングの付勢力によってバルブやダンパなどの操作端を強制的に所定開度に動作させる。
【0008】
一方、2次電源駆動型電動アクチュエータは、2次電池や電気二重層コンデンサ等で構成される蓄電体を搭載し、電源が供給されているときは、この電源でDCモータを駆動させてバルブやダンパなどの操作端の開度を調整し、停電が生じた場合には蓄電体を動作電源とし、モータを駆動させてバルブやダンパなどの操作端を強制的に所定開度に動作させる。
【0009】
ところで、このような2つのタイプの緊急遮断機能付き電動アクチュエータ同士を比較すると、スプリングリターン型は、リターンスプリングの付勢力が通常時のモータ駆動に対して抵抗として働くので、その抵抗に打ち勝つためにトルクの大きなモータを使用しなくてはならず、電動アクチュエータの大型化・重量化・コストアップをもたらすという短所を持つ。
【0010】
これに対して、2次電源駆動型は、スプリングリターン型のような短所を有さず、また近年、蓄電体である2次電池や電気二重層コンデンサの容量の改善などもあって、2次電源駆動型電動アクチュエータが有利になりつつある。
【0011】
図9に、例えば特許文献1に記載された電動遮蔽弁のモータ駆動回路を示す。同図において、1は商用電源、2は電源スイッチ、3は交流電圧を規定の直流電圧に変換する定電圧回路、4はリレー、5はモータ(DCモータ)、6は開側リミットスイッチ、7は閉側リミットスイッチ、8,9はリレー4の接点(リレー接点)、10は蓄電体(電気二重層コンデンサ)、11はダイオード、12は抵抗である。
【0012】
このモータ駆動回路では、電源スイッチ2をオンとすると、定電圧回路3から直流電圧が出力され、リレー4が励磁され、リレー接点8,9がそれぞれ端子8a,9a側に切り換わる。このとき、モータ5が中間開度の状態にあり、開側リミットスイッチ6が端子6a側にあり、閉側リミットスイッチ7が端子7a側にあるとする。また、開度指令として、全開指令を受けているものとする。
【0013】
すると、モータ5が回転し、弁が開方向へ駆動される。そして、開側リミットスイッチ6が作動して、端子6b側に切り換わると、すなわち弁が全開となると、モータ5が停止する。一方、蓄電体10は、抵抗12を介して充電される。
【0014】
この状態で、例えば停電などが発生し、定電圧回路3からの直流電圧の出力がなくなると、リレー4の励磁が解けて、リレー接点8,9がそれぞれ端子8b,9b側に切り換わる。このとき、蓄電体10に蓄えられている電力がダイオード11と閉側リミットスイッチ7を通じ、モータ5に供給され、モータ5が逆回転し、弁が閉方向に駆動される。そして、閉側リミットスイッチ7が作動して、端子7b側に切り換わると、すなわち弁が全閉となると、モータ5が停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平11−101359号公報
【特許文献2】特許第4774207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、図9に示されたモータ駆動回路では、メンテナンス時、電源スイッチ2をオフとし、弁開度を全閉以外の任意の位置に保持したいような場合があり、このような場合、蓄電体10に蓄電された電力を放電する必要が生じる。
【0017】
すなわち、メンテナンスに際して電源スイッチ2をオフとすると、停電と同様な状態が発生し、蓄電体10に蓄えられている電力によってモータ5が強制的に駆動され、弁が全閉とされる。このような状態で、全閉状態の弁を開方向へ動かそうとすると、閉側リミットスイッチ7が端子7a側に切り換わり、モータ5への蓄電体10からの電力の供給が再開され、モータ5が弁を全閉状態に戻そうとする。
【0018】
したがって、メンテナンス時、電源スイッチ2をオフとし、弁開度を全閉以外の任意の位置に保持したいような場合、モータ5が弁を全閉状態に戻そうとしなくなるまで、蓄電体10に蓄電されている電力を放電しなければならない。このため、放電終了まで作業に待ち時間が発生するとともに、放電した分の電力が無駄となってしまう。
【0019】
なお、特許文献2には、充電電源(蓄電体)とアクチュエータ(モータ)との間にスイッチ手段と電源監視手段を設け、電源監視手段が停電を検出するとスイッチ手段をオンにして充電電源とアクチュエータとを接続し、その接続された充電電源によりアクチュエータが作動して閉弁すると、スイッチ手段をオフにして充電電源とアクチュエータとの接続を断って、開閉用のハンドルでもって弁を開放できるようにした遮断弁が示されている。
【0020】
この特許文献2に示された技術を適用して考えられるモータ駆動回路を図10に示す。このモータ駆動回路では、特許文献2に示されたスイッチ手段に相当する構成としてスイッチ13を設け、電源監視手段に相当する構成として電源監視部14を設けている。電源監視部14は停電を検出してスイッチ13をオンとする。
【0021】
この図10に示された構成では、メンテナンスに際して電源スイッチ2をオフとすると、リレー接点8,9が端子8b,9b側に切り換わるとともに、電源監視部14によってスイッチ13がオンとされ、蓄電体10に蓄えられている電力がダイオード11と閉側リミットスイッチ7とスイッチ13を通じ、モータ5に供給される。これにより、モータ5が逆回転し、弁が閉方向に駆動される。そして、閉側リミットスイッチ7が作動して、端子7b側に切り換わると、すなわち弁が全閉となると、モータ5が停止する。また、弁が全閉となると、スイッチ13がオフとされる。
【0022】
このスイッチ13は、一旦オフとされると、弁の開閉状態に拘わらず、オフの状態を維持する。これにより、手動によるハンドル操作で弁の開放動作を行った際に、閉側リミットスイッチ7が作動して端子7a側に切り換わっても、蓄電体10に蓄えられている電力がモータ5に供給されることがない。このため、蓄電体10に蓄電されている電力を放電しなくても、手動による弁の開放動作が可能となる。
【0023】
しかしながら、この構成では、メンテナンスの終了後、通常の使用状態へ復帰させるために、スイッチ13をオンとする必要があるが、スイッチ13のオンへの復帰作業(通常使用状態への復帰作業)を手動にすると、復帰作業を失念する可能性がある。また、タイマ手段を設け、タイマ手段の計時に基づいて、閉弁後のスイッチ13を所定時間経過後にオンとすることが考えられるが、弁を手動開閉できる時間が限られてしまうという問題がある。
【0024】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、蓄電体に蓄電された電力をすべて放電することなく、また通常使用状態への復帰作業を失念することなく、時間の制約を受けずに、メンテナンスを行うことが可能な電動アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
このような目的を達成するために本発明は、外部電源からの電力の供給を受けて操作端を駆動するモータと、外部電源からの電力の供給を受けて充電される蓄電体とを備え、外部電源の遮断時に蓄電体に蓄えられている電力によってモータを強制的に駆動し、このモータによって駆動される操作端が所定の開度に達したことを検出して、蓄電体からのモータへの電力の供給を遮断する電動アクチュエータにおいて、蓄電体からのモータへの電力の供給通路に設けられ、蓄電体からのモータへの電力の供給通路を開閉するスイッチ手段と、操作者からの指示に応じ、蓄電体からの電力の供給を受けて動作し、蓄電体からのモータへの電力の供給通路に設けられているスイッチ手段を開とするセット手段と、外部電源の遮断が復旧された場合、その外部電源からの電力の供給を受けて動作し、蓄電体からのモータへの電力の供給通路に設けられているスイッチ手段を閉とするリセット手段とを備えることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、メンテナンスに際して外部電源を遮断すると、蓄電体に蓄えられている電力によってモータが強制的に駆動される。そして、このモータによって駆動される操作端が所定の開度(例えば、全閉)に達したことが検出されると、蓄電体からのモータへの電力の供給が遮断される。例えば、閉側リミットスイッチによって全閉に達したことが検出されると、蓄電体からのモータへの電力の供給が遮断される。
【0027】
本発明において、蓄電体からのモータへの電力の供給通路にはスイッチ手段が設けられている。このスイッチ手段は通常使用状態では閉とされている。操作者は、メンテナンスを行いたい場合、手動操作スイッチをオンとするなどして、セット手段を動作させる。セット手段は、蓄電体からの電力の供給を受けて動作し、蓄電体からのモータへの電力の供給通路に設けられているスイッチ手段を開とする。これにより、操作端を手動で操作しても、蓄電体に蓄えられている電力がモータに供給されることがなく、蓄電体に蓄電されている電力を放電する必要がなくなる。
【0028】
また、本発明では、メンテナンスの終了後、外部電源を復旧すると、その外部電源からの電力の供給を受けてリセット手段が動作し、蓄電体からのモータへの電力の供給通路に設けられているスイッチ手段を閉とする。これにより、メンテナンスの終了後、再通電を実施した時点で、スイッチ手段が自動的に開から閉に切り換わり、通常使用状態へ自動復帰する。これにより、通常使用状態への復帰作業を失念することがなくなる。また、再通電を実施するまで、操作端を手動で操作することが可能であり、時間の制約を受けることもない。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、蓄電体からのモータへの電力の供給通路を開閉するスイッチ手段と、操作者からの指示に応じ、蓄電体からの電力の供給を受けて動作し、蓄電体からのモータへの電力の供給通路に設けられているスイッチ手段を開とするセット手段と、外部電源の遮断が復旧された場合、その外部電源からの電力の供給を受けて動作し、蓄電体からのモータへの電力の供給通路に設けられているスイッチ手段を閉とするリセット手段とを設けたので、メンテナンスの終了後、再通電を実施した時点で、スイッチ手段が自動的に開から閉に切り換わり、通常使用状態へ自動復帰するものとなり、蓄電体に蓄電された電力をすべて放電することなく、また通常使用状態への復帰作業を失念することなく、時間の制約を受けずに、メンテナンスを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る電動アクチュエータの一実施の形態の要部を示す回路図である。
図2】この電源アクチュエータの電源スイッチオン時の動作を説明する図である。
図3】この電源アクチュエータの停電時の動作を説明する図である。
図4】この電源アクチュエータのメンテナンスに際する電源スイッチオフ時の動作を説明する図である。
図5】この電源アクチュエータのメンテナンスモードへの移行状態(セットコイル利用時)を示す図である。
図6】この電源アクチュエータのメンテナンスモードへの移行状態(電池パック利用時)を示す図である。
図7】この電源アクチュエータのメンテナンスの終了に際して電源スイッチをオンとした状態を示す図である。
図8】LED(発光ダイオード)を設けてセットコイルが動作したことを知らせるようにした例を示す図である。
図9】特許文献1に記載された電動遮蔽弁のモータ駆動回路を示す図である。
図10】特許文献2に示された技術を適用して考えられるモータ駆動回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1はこの発明に係る電動アクチュエータの一実施の形態の要部を示す回路図である。
【0032】
図1において、21は商用電源、22は電源スイッチ、23は交流電圧を規定の直流電圧に変換する定電圧回路、24はリレー、25はバルブやダンパなどの操作端(図示せず)を駆動するモータ(DCモータ)、26は開側リミットスイッチ、27は閉側リミットスイッチ、28,29はリレー24の接点(リレー接点)、30は蓄電体(電気二重層コンデンサ)、31は本発明でいうスイッチ手段に相当するラッチングリレーの接点(ラッチングリレー接点)、32は本発明でいうセット手段に相当するラッチングリレーのセットコイル、33は本発明でいうリセット手段に相当するラッチングリレーのリセットコイル、34は電池パック、35は接点自動復帰スイッチ、Tr1はトランジスタ、R1,R2は抵抗である。
【0033】
この電動アクチュエータ100において、モータ25のそれぞれの端子は、リレー接点28のコモン端子28cおよびリレー接点29のコモン端子29cに接続されている。また、リレー接点28の常開接点端子28aは開側リミットスイッチ26の端子26aに接続され、リレー接点28の常閉接点端子28bは閉側リミットスイッチ27の端子27aに接続されている。また、リレー接点29の常閉接点端子29bはラッチングリレー接点31を介し、開側リミットスイッチ26のコモン端子26cとともに蓄電体30の一端に接続され、リレー接点29の常開接点端子29aは閉側リミットスイッチ27のコモン端子27cとともに蓄電体30の他端に接続されている。
【0034】
蓄電体30の一端はトランジスタTr1および抵抗R1を介して定電圧回路23からの直流電圧の出力ラインL1に接続され、蓄電体30の他端は定電圧回路23からの直流電圧の出力ラインL2に接続されている。抵抗R2は定電圧回路23からの直流電圧の出力ラインL1とトランジスタTr1のベースとの間に接続されている。また、リレー24およびリセットコイル32は定電圧回路23からの直流電圧の出力ラインL1とL2との間に並列に接続されている。
【0035】
セットコイル32は、蓄電体30の一端と他端との間に接続されており、セットコイル32と蓄電体30の一端との接続ラインに接点自動復帰スイッチ35が接続されている。電池パック34は、電池BTとスイッチSW1とを直列に接続した回路構成とされており、必要に応じてセットコイル32に対して並列に接続する。電池パック34の接続については後述する。リセットコイル33は定電圧回路23からの直流電圧の出力ラインL1とL2との間に接続されている。セットコイル32は、通電付勢されると、ラッチングリレー31を開とし、リセットコイル33は、通電付勢されると、ラッチングリレー31を閉とする。
【0036】
なお、この例において、電源スイッチ22は電動アクチュエータ100の構成要素として設けられているが、電動アクチュエータ100の外部にあってもよい。また、図1には示していないが、モータ25が駆動されないときに操作端の開度を操作可能な手動開度操作手段として、開閉用のハンドルなどが設けられている。
【0037】
この電動アクチュエータ100では、電源スイッチ22をオンとすると、定電圧回路23から直流電圧が出力され、リレー24が励磁され、リレー接点28,29がそれぞれ常開接点端子28a,29a側に切り換わる。このとき、モータ25が中間開度の状態にあり、開側リミットスイッチ26が端子26a側にあり、閉側リミットスイッチ27が端子27a側にあるとする。また、開度指令として、全開指令を受けているものとする。
【0038】
すると、図2に示す矢印の経路で電流が流れ、モータ25が矢印A方向へ回転し、操作端が開方向へ駆動される。そして、開側リミットスイッチ26が作動して、端子26b側に切り換わると、すなわち操作端が全開となると、モータ25が停止する。一方、蓄電体30は、抵抗R1,トランジスタTr1を介する電流の供給を受けて充電される。また、ラッチングリレー接点31は、リセットコイル33が通電付勢されることから、閉状態を保持する。この閉とされた状態がラッチングリレー接点31の通常使用状態である。
【0039】
〔停電時の緊急遮断〕
この状態で、停電が発生し、すなわち外部電源が遮断され(図3参照)、定電圧回路23からの直流電圧の出力がなくなると、リレー24の励磁が解けて、リレー接点28,29がそれぞれ常閉接点端子28b,29b側に切り換わる。このとき、蓄電体30に蓄えられている電力によって、図3に示す矢印の経路で電流が流れ、モータ25が矢印B方向へ回転(逆回転)し、操作端が閉方向へ駆動される。そして、閉側リミットスイッチ27が作動して、端子27b側に切り換わると、すなわち操作端が全閉となると、モータ25が停止する。
【0040】
〔メンテナンス〕
メンテナンスに際して電源スイッチ22をオフとすると(図4参照)、停電と同様な状態が発生し、定電圧回路23からの直流電圧の出力がなくなる。これにより、上述した「停電時の緊急遮断」と同様にして、図4に示す矢印の経路で電流が流れ、モータ25が矢印B方向へ回転(逆回転)し、操作端が閉方向へ駆動される。そして、閉側リミットスイッチ27が作動して、端子27b側に切り換わると、すなわち操作端が全閉となると、モータ25が停止する。
【0041】
一方、電源スイッチ22がオフとされると、リセットコイル33が通電付勢されなくなる。このため、ラッチングリレー接点31は、セットコイル32によって開とすることが可能な状態となる。
【0042】
操作者は、メンテナンスに際して、操作端を全閉以外の任意の位置に保持したい場合、接点自動復帰スイッチ35をオンとする。この接点自動復帰スイッチ35は、操作者が押している間だけオンとなり、押すのを止めると自動でオフの状態に復帰する。接点自動復帰スイッチ35がオンとなると、セットコイル32が蓄電体30からの電力の供給を受けて通電付勢され、ラッチングリレー接点31が開とされる(図5参照)。
【0043】
なお、蓄電体30に電力がたまっておらず、接点自動復帰スイッチ35をオンとしてもセットコイル32が通電付勢されない場合には、電池パック34をセットコイル32に対して並列に接続し、スイッチSW1をオンとして、電池BTからの電力をセットコイル32へ与え、ラッチングリレー接点31を開とする(図6参照)。
【0044】
このラッチングリレー接点31が開とされた状態をメンテナンスモードと呼ぶ。すなわち、本実施の形態では、接点自動復帰スイッチ35をオンとしたり、あるいは電池パック34を接続し、スイッチSW1をオンとすることにより、電動アクチュエータ100をメンテナンスモードに移行させる。
【0045】
このメンテナンスモードでは、手動によるハンドル操作で操作端の開放動作を行った際、閉側リミットスイッチ27が作動して端子27a側に切り換わっても、蓄電体30に蓄えられている電力がモータ25に供給されることがない。これにより、蓄電体30に蓄電されている電力を放電しなくても、手動による操作端の開放動作が可能となる。
【0046】
〔メンテナンスの終了〕
メンテナンスの終了後、電源スイッチ22をオンとすると、すなわち外部電源を復旧し、再通電を実施すると(図7参照)、定電圧回路23からの直流電圧を受けてリセットコイル33が動作し、ラッチングリレー接点31を閉とする。
【0047】
これにより、メンテナンスの終了後、再通電を実施した時点で、ラッチングリレー接点31が自動的に開から閉に切り換わり、通常使用状態へ自動復帰する。これにより、通常使用状態への復帰作業を失念することがなくなる。また、再通電を実施するまで、操作端を手動で操作することが可能であり、時間の制約を受けることもない。
【0048】
また、電源スイッチ22をオンとすると、定電圧回路23からの直流電圧を受けてリレー24が動作し、リレー接点28,29がそれぞれ常開接点端子28a,29a側に切り換わる。これにより、メンテナンス時に操作端の開度を全閉以外の任意の位置に保持した状態から、操作端の開度の制御動作が再開される。
【0049】
なお、図8に示すように、セットコイル32に対して並列にLED(発光ダイオード)36を接続し、セットコイル32が動作したことを知らせるようにしてもよい。すなわち、蓄電体30に電力がたまっていれば、接点自動復帰スイッチ35をオンとした時、セットコイル32への蓄電体30からの電力の供給に伴ってLED36への給電が行われ、LED36が発光し、ラッチングリレー接点31が開とされたことを知らせる。
【0050】
LED36が発光しなかった場合、蓄電体30に電力がたまっていないと判断し、電池パック34をセットコイル32に対して並列に接続し、スイッチSW1をオンとして、電池BTからの電力をセットコイル32へ与え、ラッチングリレー接点31を開とする。この際、セットコイル32への電池パック34からの電力の供給に伴ってLED36への給電が行われ、LED36が発光し、ラッチングリレー接点31が開とされたことを知らせる。
【0051】
なお、上述した実施の形態では、スイッチ手段としてラッチングリレー接点31を用い、セット手段としてラッチングリレーのセットコイル32を用い、リセット手段としてラッチングリレーのリセットコイル33を用いるようにしたが、このようなものに限られるものではない。
【0052】
すなわち、スイッチ手段は、蓄電体30からのモータ25への電力の供給通路を開閉することができるものであればよく、セット手段は、操作者からの指示に応じ、蓄電体からの電力の供給を受けて動作し、蓄電体30からのモータ25への電力の供給通路に設けられているスイッチ手段を開とすることができるものであればよく、リセット手段は、外部電源の遮断が復旧された場合、その外部電源からの電力の供給を受けて動作し、蓄電体30からのモータ25への電力の供給通路に設けられているスイッチ手段を閉とすることができるものであればよく、どのような形態のものでも構わない。
【0053】
また、LED36に代えてブザーなどを設けてもよく、人間の五感にて感知できる素子であれば、セットコイル32が動作したことを知らせる手段はどのようなものであってもよい。
【0054】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0055】
21…商用電源、22…電源スイッチ、23…定電圧回路、24…リレー、25…モータ(DCモータ)、26…開側リミットスイッチ、27…閉側リミットスイッチ、28,29…リレー接点、30…蓄電体(電気二重層コンデンサ)、31…ラッチングリレーの接点(ラッチングリレー接点)、32…ラッチングリレーのセットコイル、33…ラッチングリレーのリセットコイル、34…電池パック、35…接点自動復帰スイッチ、36…LED(発光ダイオード)、100…電動アクチュエータ。
図1
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図7
図8
図9
図10