(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記精査処理実行部は、前記入金紙幣カセットを前記精査処理の対象カセットとした前記精査処理の実行済みの紙幣を、前記入金紙幣カセットに収納された前記リジェクト紙幣について前記求めた金額と枚数に相当する分、前記識別部の識別結果に応じて前記金種ごとの出金紙幣カセットに収納する請求項2に記載の自動両替取引装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による自動両替取引装置の実施例について、図面を用いて説明する。
【0010】
[実施例1]
図1は実施例1の自動両替取引装置(以下、BTRと称する)10の構成を概略的に示す説明図、
図2はBTR10の構成を機能的に示す説明図である。BTR10は、例えば金融機関や小売店、公共施設等に設置され、両替を所望する顧客による操作と、顧客からの両替貨幣の受け入れとを経て、顧客指定の金種の貨幣を放出する両替処理を行う装置である。
【0011】
図1〜
図2に示すように、BTR10は、操作部12と、紙幣入出金口13と、硬貨取出口14と、包装硬貨取出口15と、カード挿入口16と、明細票取出口17と、取扱状態表示部18と、カード機構部210と、明細票処理装置220と、硬貨を取り扱う硬貨処理装置230と、紙幣を取り扱う紙幣処理装置100と、BTR10の各部を制御する本体制御部400と、を備えている。カード機構部210と明細票処理装置220は、カード挿入口16と明細票取出口17との間でカードや明細票のやりとりができるよう、装置内部に位置する。硬貨処理装置230は、硬貨取出口14と包装硬貨取出口15との間で硬貨の受け渡しができるよう、当該出口下方側に位置する。紙幣処理装置100は、紙幣入出金口13との間で紙幣の受け渡しができるよう、当該出口下方側に位置する。
【0012】
操作部12は、両替取引に必要な情報の画面表示機能と顧客の操作を検知する検知機能とを兼ね備えたユーザーインターフェースとして機能し、両替を所望する顧客が両替取引を行う際の取引操作の誘導画面を表示したり、両替金種の指定などを顧客のキー入力操作により受付ける。なお、操作部12はタッチパネル等により構成された入力兼表示部(入力表示部ともいう)として構成することが望ましく、様々な情報を表示画面に表示し、この表示画面に含まれる色々な項目への押下ももちろん検知する。紙幣入出金口13は、両替するために顧客が投入した紙幣を受け入れて紙幣処理装置100に受け渡す共に、両替された紙幣を紙幣処理装置100から受け取って顧客に放出する。硬貨取出口14は、両替された硬貨を硬貨処理装置230から受け取って顧客に放出する。包装硬貨取出口15は、両替された包装硬貨を硬貨処理装置230から受け取って顧客に放出する。カード挿入口16は、両替時に顧客が投入したカードを受け入れてカード機構部210に受け渡すと共に、カード機構部210にて読み込み済みのカードを顧客に返却する。カード機構部210は、受け入れたカードの磁気ストライプ又はICチップへのリード・ライト機能を備え、その読み取り結果を本体制御部400に送信する。読み取ったカード情報は、両替手数料等の算出に用いられるが、本発明の要旨とは直接関係しないので、その説明は省略する。明細票取出口17は、両替取引の内容等が明細票処理装置220にて印字された明細票を顧客に放出する。取扱状態表示部18は、BTR10が取扱中か、取扱中止状態であるかを表示する。
【0013】
硬貨処理装置230は、硬貨出金機構部231と、包装硬貨出金機構部232と、手数料硬貨入金部233とを備える他、CPU、メモリー等のハード構成とプログラム、データ等のソフト構成とからなる制御部を備え、本体制御部400の制御を受けて、顧客との間で両替取引に関わる硬貨取引を行う。つまり、硬貨出金機構部231は、両替後の硬貨を個別に硬貨取出口14から顧客に払い出す。包装硬貨出金機構部232は、両替後の硬貨を包袋硬貨として包装硬貨取出口15から顧客に払い出す。手数料硬貨入金部233は、両替取引の際の手数料徴収が必要とされた場合に、硬貨取出口14からの硬貨投入を受け付け、その硬貨を保管する。この場合、手数料の要否やその額は、カード機構部210にて読み取ったカード情報に基づいて本体制御部400にて求められる。
【0014】
紙幣処理装置100は、紙幣入出金制御部110と、搬送機構部140とを備え、この紙幣入出金制御部110は、本体制御部400の制御を受けて、顧客との間で両替取引に関わる紙幣取引を行う。つまり、この紙幣入出金制御部110は、CPU、メモリー等のハード構成とプログラム、データ等のソフト構成とを備え、本体制御部400による制御の下、両替紙幣の入金(収納)や出金(繰り出し)、精査といった処理を行なう。なお、紙幣入出金制御部110は、本体制御部400の制御の下、本発明における紙幣からの紙幣情報取得、リジェクト紙幣の収納搬送および枚数計数や正損判定結果等の紙幣管理等の機能を果たす入出金・搬送制御部120と、精査とこれに伴う紙幣搬送や紙幣収納の制御を図る精査・搬送制御部130を備える。
【0015】
本体制御部400は、BTR10の各機器制御の全体を統括すべく、CPU、メモリー等のハード構成とプログラム、データ等のソフト構成とを備え、既述した操作部12や、硬貨処理装置230、紙幣処理装置100等を制御する。
【0016】
図3は実施例における紙幣処理装置100の構成を概略的に示す説明図である。紙幣処理装置100は、その上部に搬送機構部140を備え、その下部を紙幣金庫部150とする。搬送機構部140は、紙幣Sの紙幣入出金口13に繋がる紙幣入出口部141と、図示しない撮像部を有し搬送される紙幣Sの真偽・金種の識別、記番号の読み取り取得および計数といった処理を行う識別部142と、計数と識別を経た紙幣Sを一時的に保留する一時保留部143と、上記の紙幣入出口部141と識別部142と一時保留部143および後述の各種金種カセットとの間に種々の搬送路を形成する搬送経路部144とを備える。
【0017】
搬送経路部144は、例えばローラーやベルト、搬送経路を切り替えるゲート等を用いて構成される。そして、この搬送経路部144は、紙幣入出口部141と識別部142とを、一時保留部143と識別部142とを、および、後述の各種金種カセットと識別部142とを、それぞれ結ぶ往復軌道の搬送路やこれらをループ状に結ぶ無限軌道上の搬送路を、適宜、合流・分岐させることで、種々の搬送経路を形成する。具体的には、搬送経路部144は、紙幣入出金口13から受け入れた紙幣Sを紙幣入出口部141から識別部142を経由して一時保留部143に搬送する搬送経路k1を形成する。この他に形成される経路としては、紙幣入出金口13から受け入れた紙幣Sを紙幣入出口部141から識別部142を経由して紙幣入出口部141に返却する搬送経路k2、一時保留部143に一時保留した紙幣Sを一時保留部143から識別部142を経由して後述の各種金種カセットのそれぞれに搬送する搬送経路k3、後述の各種金種カセットの間での紙幣Sの搬送を識別部142を経由して行う搬送経路k4等があり、この逆の経路についても搬送経路部144にて形成される。また、搬送経路部144は、搬送経路k4から各種金種カセットへの紙幣収納と各カセットからの紙幣受取も行うよう、構成されている。
【0018】
紙幣金庫部150は、紙幣を金種別に収納する複数のカセットを並べて備え、金種ごとの出金紙幣カセット151〜153と、入金紙幣カセット154と、装填補充用紙幣カセット155と、分配リジェクト回収部156と、リジェクト回収部157と、取忘れ回収部158とを備える。出金紙幣カセット151〜153は、両替して出金される出金紙幣を保管するために金種ごとに準備される。出金紙幣カセットの個数を多くすれば多種類の紙幣への両替取引が可能となるが、BTR10の奥行き寸法の制約や1カセット当たりの収納容量を大きく確保する上から、出金紙幣カセットを図示するように3個程度、準備することが一般的である。仮に、寸法制約が緩めば、4個以上の出金紙幣カセットを金種ごとに準備することもできる。また、用意した3個の出金紙幣カセット151〜153について、その金種の割り当てを種々の態様とできる。つまり、BTR10の設置環境や顧客の両替取引の傾向等によって、3個の出金紙幣カセット151〜153の金種を種々割り当てできる。
図4は3個の出金紙幣カセット151〜153についての金種の割り当て例を示す説明図である。
図4の上段の態様では、千円、5千円の2種類の金種の紙幣を出金用の両替紙幣として出金することを意図し、BTR10として常用されている。この場合、千円紙幣への両替取引はその頻度が高いことから、2個の出金用紙幣カセットが千円の金種に割り当てられている。下段の態様は、万円紙幣への両替あるいは万円の新券紙幣への両替といった需要に応えることを意図して、千円、5千円、万円の3種類の金種に金種ごとに一つのカセットが割り当てられている。
【0019】
入金紙幣カセット154は、顧客が両替を所望して入金した紙幣(入金紙幣)を収納するために準備され、装填補充用紙幣カセット155は、出金紙幣カセット151〜153の紙幣(出金紙幣)を補充する際に用いられる。分配リジェクト回収部156は、紙幣の装填補充の際に生じたリジェクト紙幣を収納するために用いられる。取忘れ回収部158は、両替紙幣として紙幣入出口部141に搬送した出金紙幣を顧客が取り忘れた際に、紙幣入出口部141から回収して収納する。リジェクト回収部157は、既存のBTRでは、リジェクト紙幣の収納のために用いられているが、本実施例では、分配リジェクト回収部156の予備、或いは、後述する出金紙幣の入金紙幣カセット154への収納後に行う精査処理完了の際の紙幣保管用に用いる。つまり、本実施例のBTR10は、出金搬送の際に生じたリジェクト紙幣を入金紙幣カセット154に収納するので、敢えてリジェクト回収部157を用いる必要はない。その一方で、BTR10の装置寸法やカセット寸法は、既存のままであるので、リジェクト回収部157をそのまま備える。
【0020】
上記の出金紙幣カセット151〜153と入金紙幣カセット154および装填補充用紙幣カセット155は、搬送経路部144が形成する搬送路に対して、搬送されている紙幣の受け取りとカセット内紙幣の繰り出しを行う収納繰り出し機構159を備える。この収納繰り出し機構159は、搬送経路部144と共に紙幣入出金制御部110(詳しくは
図2の入出金・搬送制御部120や精査・搬送制御部130)の制御を受け、搬送されてくる紙幣のカセット内への収納と、カセット内の紙幣を繰り出して搬送路に受け渡す紙幣繰り出しとを行う。よって、収納繰り出し機構159を有する出金紙幣カセット151〜153と入金紙幣カセット154および装填補充用紙幣カセット155は、紙幣Sを入出金可能な状態で搬送路と接続され、搬送路から紙幣Sを受け入れて収納すると共に、紙幣Sをカセットから繰り出して搬送路上に送り出すことになる。
【0021】
装填補充用紙幣カセット155は、本実施例における両替取引において紙幣入出金に関与しないが、出金紙幣カセット151〜153への紙幣補充において、搬送路への紙幣受渡を行う。つまり、出金紙幣カセット151〜153に保管した出金紙幣に不足が起きると、補充用の各種金種の紙幣を収納済みの装填補充用紙幣カセット155がセットされ、紙幣入出金制御部110は、紙幣補充を行う。この紙幣補充に当たり、紙幣入出金制御部110は、装填補充用紙幣カセット155から補充用の紙幣を1枚ずつ繰り出して搬送経路k4に受け渡した上で、カセットから受け渡された補充紙幣を、搬送経路k4にて搬送しつつ、識別部142にて計数識別し、その識別金種に応じた出金紙幣カセット151〜153に補充紙幣を収納する。こうした補充用の紙幣の搬送を、装填補充用紙幣カセット155が空になるまで繰り返すことで、紙幣補充が完了する。本体制御部400は、上記の補充収納の際の識別部142での識別計数結果と、補充前の時点でのカセット内の紙幣枚数とから、補充完了後の紙幣収納枚数をカセットごとに確定する。なお、こうした紙幣補充の際に、識別部142にて識別不能とされた紙幣は、搬送経路k4にて分配リジェクト回収部156まで搬送され、当該カセットに回収収納される。
【0022】
本実施例では、上記のように各カセットを搬送路と接続するが、両替取引においては、出金紙幣カセット151〜153は、搬送路に出金紙幣を繰り出して受け渡し、入金紙幣カセット154は、搬送路から入金紙幣を受け入れて収納することになる。つまり、搬送経路部144による既述した経路形成により、顧客が両替取引の際に紙幣入出口部141に入金された入金紙幣は、この紙幣入出口部141から識別部142を経由して入金紙幣カセット154に搬送して収納され、金種ごとの出金紙幣カセット151〜153から繰り出した出金紙幣は、識別部142を経由して紙幣入出口部141に搬送して出金(放出)されることになる。こうした入金紙幣搬送と出金紙幣搬送を、両替取引の開始から終了までの顧客操作と合わせて、以下、説明する。なお、BTR10では、包袋硬貨への両替も行うが、本実施例は出金紙幣の搬送に伴う処理に特徴があるので、以下の両替取引においては、硬貨の両替放出についてはその説明を省略する。
【0023】
顧客は、所望する両替取引を行うに当たり、操作部12(
図1参照)を操作する。この際、顧客は、両替紙幣の金種とその枚数を指定し、これに見合った額の紙幣を紙幣入出金口13に投入する。必要であれば、顧客はカードをカード挿入口16に挿入する。BTR10の本体制御部400は、この顧客操作を受けて、両替紙幣として出金すべき金種の紙幣の枚数を把握し、紙幣の入金を受け付ける。そして、紙幣処理装置100の紙幣入出金制御部110は、本体制御部400の制御下、紙幣入出口部141に顧客から投入された紙幣(入金紙幣)を、1枚ずつ紙幣入出口部141から搬送経路部144の既述した搬送経路k1に繰り出し、識別部142にて計数識別する。この際、識別部142にて識別不能な入金紙幣は、既述した搬送経路k2にて紙幣入出口部141に返却され、識別部142にて識別可能であった入金紙幣は、識別部142から搬送経路k1にて一時保留部143に搬送されて、この一時保留部143に一時的に収納される。本体制御部400は、識別部142を経由した入金紙幣の一時保留部143へ収納に際し、識別部142からの識別結果を受け取り、入金紙幣の金種とその枚数を記憶する。仮に、この入金額が、顧客操作に伴う両替取引の出金額に不足すれば、本体制御部400は、操作部12に入金額が不足の旨や、その不足額を表示し、この不足額の入金を顧客に促す。一時保留部143に収納された紙幣は、顧客が両替済み貨幣(硬貨および/または紙幣)を全て紙幣入出金口13や包装硬貨取出口15から抜き取るまでの間は保持される。
【0024】
本体制御部400は、上記した入金紙幣の一時保留部143での一時的収納に続き、顧客が両替設定した金種の紙幣を顧客設定の枚数だけ出金すべく、紙幣処理装置100の紙幣入出金制御部110を制御する。つまり、紙幣入出金制御部110は、顧客設定の金種に対応した出金紙幣カセット151〜153から紙幣を1枚ずつ繰り出して搬送経路k4に受け渡した上で、カセットから受け渡された出金紙幣を識別部142にて計数識別する。この際、本体制御部400は、識別部142からの識別結果を受け取り、出金紙幣の金種とその枚数を記憶する。この記憶結果は、出金紙幣カセット151〜153のいずれのカセットから出金されて顧客に両替放出された出金紙幣の総額、および金種ごとの出金枚数の算出に用いられる。識別部142にて正常に計数識別された出金紙幣は、搬送経路k1にて紙幣入出口部141まで出金搬送され、顧客が設定した金種の紙幣が顧客設定の枚数だけ出金されるまで、この出金搬送が繰り返される。顧客が設定した金種の紙幣が顧客設定の枚数だけ紙幣入出口部141に搬送されると、紙幣入出金制御部110は、紙幣入出金口13を開放して両替紙幣を顧客に提供する。顧客が紙幣を全て抜き取ると、紙幣入出金制御部110は、紙幣入出金口13を閉鎖した上で、一時保留部143に一時保留した入金紙幣の入金紙幣カセット154への搬送収納を行う。つまり、紙幣入出金制御部110は、一時保留部143に一時保留した入金紙幣を、この一時保留部143から搬送経路k3、識別部142を経由して、搬送経路k4にて入金紙幣カセット154まで入金搬送し、入金紙幣カセット154に収納する。一時保留部143から入金紙幣カセット154への入金搬送の際、本体制御部400は、識別部142からの識別結果を受け取り、入金紙幣の金種とその枚数を両替取引の都度に記憶する。この記憶結果は、入金紙幣カセット154に収納済みの入金紙幣の総額、および金種ごとの収納枚数の集計に用いられる。
図5は両替取引に伴って入金紙幣が入金紙幣カセット154に収納された際の入金紙幣金種とその枚数の集計結果を示す説明図である。この
図5は、図示する金種の紙幣が図示する枚数だけ、入金紙幣カセット154に収納済みであることを意味する。
【0025】
次に、本実施例で特徴的な出金搬送の際のリジェクト紙幣の取扱について説明する。なお、説明を簡略化するため、出金紙幣カセット151〜153は、
図4の上段に示したように、それぞれ千円、千円、5千円で運用されており、顧客所望の両替取引がa枚の千円紙幣を出金紙幣として両替出金する場合を例に挙げ、出金リジェクト紙幣の取扱を以下説明する。
図6は両替出金の前後におけるカセット内の紙幣収納の様子と出金リジェクト紙幣の収納搬送の様子とを示す説明図である。なお、図示の都合から、出金紙幣カセット151〜153および入金紙幣カセット154等のカセットを図では略称表記することとする。
【0026】
紙幣入出金制御部110は、搬送機構部140(
図3参照)を制御しつつ、
図6の中段に示すように、千円札保管の出金紙幣カセット153から千円紙幣を1枚ずつ繰り出して、その出金紙幣を、搬送経路k4に受け渡した上で識別部142にて計数識別し、計数識別が正常な出金紙幣については、これを搬送経路k1を経て紙幣入出口部141に出金搬送する。こうした出金搬送を紙幣入出口部141への千円紙幣の搬送枚数がa枚に達するまで継続する。この出金搬送の継続の間において、識別部142にて識別不能とされたリジェクト紙幣(以下、出金リジェクト紙幣と称する)は、紙幣入出金制御部110による搬送機構部140の制御により、識別部142から搬送経路k3を経て一時保留部143に、一時退避の目的で搬送収納される。この場合、出金紙幣カセット153は、装填補充用紙幣カセット155を用いた紙幣補充により、新札もしくは新札に近い千円紙幣の補充を既に受けている。よって、出金紙幣カセット153からの出金紙幣が識別部142にて識別不能とされるのは、複数枚の紙幣が重なって搬送されたいわゆる連れ出しが原因であると予想される。そして、一時保留部143への出金リジェクト紙幣の搬送・収納は、識別部142での識別不能が起きるごとになされる。上記の連れ出しによる識別不能では、その枚数の計数ができないので、一時保留部143に収納された出金リジェクト紙幣の枚数は、通常、不知となるが、これは、後述の精査処理にて、解消される。
【0027】
紙幣入出口部141への千円紙幣の搬送枚数がa枚に達して両替のための出金搬送が終了すると、紙幣入出金制御部110は、搬送機構部140を制御しつつ、
図6の下段に示すように、一時保留部143に収納済みの出金リジェクト紙幣である千円紙幣を1枚ずつ繰り出して、収納済み出金リジェクト紙幣の全てを、搬送経路k3に受け渡した上で識別部142を経由して、搬送経路k4を経て入金紙幣カセット154に収納する。ところで、入金紙幣カセット154への出金リジェクト紙幣の収納前の状態、即ち
図6に示す上段或いは中段の状態では、既に入金紙幣カセット154には両替取引の際の入金紙幣が収納済みであり、この収納済み入金紙幣の総額、および金種ごとの収納枚数は、既述した入金搬送の際の識別部142での計数識別により、
図5に示すように、既知である。そして、出金リジェクト紙幣の入金紙幣カセット154への収納に際しても、本体制御部400および紙幣入出金制御部110は、識別部142からの識別結果を受け取り、出金リジェクト紙幣の金種とその枚数を記憶する。この記憶結果は、適宜、他の紙幣処理の際に用いることができる。
【0028】
本実施例では、既述したように千円紙幣だけの両替出金に限らず、千円紙幣と五千 円紙幣が混在した両替出金も可能であり、この混在両替出金において起きる出金リジェクト紙幣についても、千円紙幣と五千円紙幣とが混在して一時保留部143に収納される。このため、本実施例では、一時保留部143から千円紙幣と五千円紙幣とが混在して出金リジェクト紙幣として繰り出されるが、その混在した出金リジェクト紙幣の全てを金種に拘わらず入金紙幣カセット154に収納し、後述の精査処理の対象を入金紙幣カセット154の収納紙幣(混在紙幣)とする。よって、本実施例では、一時保留部143に収納済みの出金リジェクト紙幣を入金紙幣カセット154に収納する際の識別部142での計数識別を省略することができるので、処理負荷の軽減が可能となる。また、本実施例では、混在した出金リジェクト紙幣の全てを金種に拘わらず入金紙幣カセット154に収納するので、識別部142より下流の搬送経路k4での紙幣搬送において、出金リジェクト紙幣を複数のカセットに区別して収納する必要がない。加えて、出金リジェクト紙幣は、入金用だけに用意された入金紙幣カセット154に収納される故に、両替出金のためにカセットからの繰り出しを受けることはない。このため、紙幣搬送過程における紙幣の区分収納の機会や繰り出しを受ける機会が少ない分、紙幣に損傷を与えて紙幣状態を悪化させてしまうリスクを軽減できる。
【0029】
次に、本実施例のBTR10における精査処理について説明する。この精査処理は、既述したように一時保留部143に一時保留して入金紙幣カセット154に収納する出金リジェクト紙幣の枚数の不知の解消に有益である。精査処理は、カセットに収納済みの全ての紙幣の金額とその収納枚数とを確定する処理であり、定期的、或いは、カセットの紙幣収納枚数が不知となったような場合に行われ、カセットに収納済みの全ての紙幣を繰り出して識別部142を経由してカセット外に搬送し、その際の識別部142の識別結果に基づいて、カセット収納済み紙幣の金額と枚数とを確定する。本実施例では、既述したように一時保留部143に収納された出金リジェクト紙幣の枚数は不知であり、この枚数不知の出金リジェクト紙幣を入金紙幣カセット154に収納することから、入金紙幣カセット154を精査処理の対象とする。また、既述した出金の例では、出金紙幣カセット153から出金された出金紙幣が識別不能であったことから、出金後の出金紙幣カセット153の紙幣収納枚数も不知となるので、この出金紙幣カセット153についても精査処理の対象とする。勿論、定期的な精査処理の際には、出金紙幣カセット151〜153の全てが精査処理の対象となる。
図7は入金紙幣カセット154について行う精査処理の際の出金リジェクト紙幣と入金紙幣の収納搬送の様子を示す説明図である。この
図7に示す状況では、入金紙幣カセット154は、既述したように枚数および金種が既知の入金紙幣(
図5参照)と、枚数および金種が不知の出金リジェクト紙幣とを、混在して収納している。
【0030】
精査処理は、BTR10の両替取引運用を一時的に中断して行われ、例えば、係員による操作部12の特異な操作や、
図1に示す装置裏面の側からのメンテナンス専用操作を契機に開始される。紙幣入出金制御部110は、本体制御部400の制御を受けながら、搬送機構部140(
図3参照)を制御しつつ、
図7の上段に示すように、入金紙幣カセット154から収納済み紙幣を1枚ずつ繰り出す。この場合の収納済み紙幣は、既述したように、枚数および金種が既知の入金紙幣と枚数および金種が不知の出金リジェクト紙幣とが混在した紙幣である。そして、紙幣入出金制御部110は、この収納済み紙幣を、搬送経路k4に受け渡した上で識別部142にて計数識別する。この精査処理における識別部142での識別対象紙幣、即ち入金紙幣カセット154に収納済み紙幣は、既述したように両替取引に伴って正常に入金紙幣カセット154に入金された入金紙幣と、新札であるが故に連れ出しにて識別不能とされた出金リジェクト紙幣である。よって、精査処理の際の識別部142での識別は、その多くが正常になされるが、識別不能が起こることも有り得る。よって、以下の説明に当たっては、識別部142での識別が全て正常になされた場合を先に説明し、その後、精査処理の際の識別不能が起きた場合の処理について説明する。
【0031】
[精査処理:識別正常]
識別部142での識別が正常になされれば、紙幣入出金制御部110は、識別済み紙幣を搬送経路k4を経て装填補充用紙幣カセット155に搬送して、この装填補充用紙幣カセット155に収納する。紙幣入出金制御部110は、こうした紙幣搬送を、入金紙幣カセット154に収納済みの紙幣を1枚ずつ繰り出しながら行うので、入金紙幣カセット154に収納済み紙幣の全ては、識別部142を経由して、
図7の中段に示すように、装填補充用紙幣カセット155に収納される。この繰り出し収納の際、本体制御部400は、識別部142からの識別結果を受け取り、今回の精査処理に付された紙幣、即ち入金紙幣と出金リジェクト紙幣の混在紙幣のそれぞれについての金種とその枚数を記憶する。この記憶結果は、入金紙幣カセット154に収納済みであった入金紙幣(枚数および金種が既知)と、出金リジェクト紙幣(枚数および金種が不知)とについてのそれぞれの枚数および金種のいわゆる合算した集計結果となる。
図8は入金紙幣カセット154についての精査処理に伴って計数および識別された紙幣金種とその枚数の集計結果を示す説明図である。この
図8は、その上段で、入金紙幣カセット154からの紙幣繰り出し収納の際に、図示する金種の紙幣が図示する枚数だけ、入金紙幣カセット154から装填補充用紙幣カセット155に繰り出し収納されたことを表す。この場合、括弧内の数値は、
図5にて確定済みの入金紙幣についての記憶結果である。また、
図8は、その下段で、後述の精査完了に伴う紙幣分離収納の後に、図示する金種の紙幣が図示する枚数だけ、入金紙幣カセット154またはリジェクト回収部157に収納されたことを表している。なお、図において出金カセットA等は空欄であるが、これは、精査処理が未実施であるのであって、これらカセットについての精査処理に伴い、カセットごとに枚数と金額が計上される。
【0032】
紙幣入出金制御部110は、入金紙幣カセット154に収納済みの紙幣(混在紙幣)の全てを識別部142を経由して装填補充用紙幣カセット155に収納する既述した繰り出し収納に続き、装填補充用紙幣カセット155に収納した紙幣を、入金紙幣カセット154での入金紙幣と出金リジェクト紙幣とに分けながら、入金紙幣カセット154またはリジェクト回収部157に回収収納する。即ち、紙幣入出金制御部110は、装填補充用紙幣カセット155に繰り出し収納済みの紙幣を、当該カセットから一枚ずつ繰り出して、その繰り出し収納済み紙幣の全てを、搬送経路k4に受け渡し、識別部142にて識別計数する。そして、紙幣入出金制御部110は、
図5および
図8の集計結果を参照しつつ、識別部142での紙幣ごとの識別結果に基づいて、
図5に示された金種の紙幣を、入金紙幣として入金紙幣カセット154に搬送収納し、
図8の下段に示された金種の紙幣を、出金搬送の際にリジェクトを起こした紙幣(出金リジェクト紙幣)として、リジェクト回収部157に回収収納する。つまり、紙幣入出金制御部110は、入金紙幣カセット154の精査処理のために装填補充用紙幣カセット155に繰り出し収納した紙幣を、入金紙幣カセット154での収納紙幣であった出金リジェクト紙幣と入金紙幣とに区分けして、入金紙幣カセット154とリジェクト回収部157に回収収納する。こうした回収収納には、種々の手法を適用できるが、本実施例では、入金紙幣カセット154に収納済み紙幣は、両替取引に伴って正常に入金された入金紙幣と、新札であるが故に連れ出しにて識別不能とされた出金リジェクト紙幣とであり、これら紙幣は両替取引のみならず各種の紙幣取引において特段の支障を及ぼすものではない。よって、本実施例では、次のような回収収納手法を採用した。
【0033】
紙幣入出金制御部110は、装填補充用紙幣カセット155から一枚ずつ紙幣を繰り出して識別部142にて識別計数する都度に、その識別した金種が
図5に示す入金紙幣の金種に該当すれば、その紙幣を入金紙幣カセット154に搬送して回収収納する。こした回収搬送を、
図5に示す金種の紙幣が
図5に示す枚数だけ入金紙幣カセット154に収納されるまで継続する。これにより、入金紙幣カセット154の紙幣収納状態は、
図5の入金紙幣の収納状態と一致するので、その後に装填補充用紙幣カセット155から繰り出される紙幣については、これを、リジェクト回収部157に搬送して収納すればよい。こうすれば、識別金種と枚数の照合だけで済むので、処理負荷を軽減できる。なお、入金紙幣カセット154に回収収納された紙幣は、金種ごとの枚数と集計金額が一致するものの、精査処理前に入金紙幣カセット154に収納されていた紙幣とは、物理的に一致するものではない。しかしながら、入金紙幣カセット154に収納された紙幣は、係員による入金紙幣の回収操作により、銀行等にカセットごと持ち出されるので、BTR10での両替取引の運用に特段の支障はない。
【0034】
この他、次のようにすることもできる。通常、紙幣は紙幣ごとに固有の情報としての記番号を有し、識別部142は、金種判別の他、この記番号の読み取りも可能に構成されている。よって、入金紙幣カセット154に入金紙幣が収納される際の当該入金紙幣の記番号を記憶しておき、装填補充用紙幣カセット155からの上記した回収収納の際に識別部142で読み取った記番号を、入金紙幣についての記憶済み記番号と照合し、その一致があった紙幣を、入金紙幣そのものとして、入金紙幣カセット154に回収収納するようにすることもできる。こうすれば、両替取引に伴う入金紙幣の何らかの追跡調査が必要な場合に、有益となる。
【0035】
[精査処理:識別不能発生]
図9は入金紙幣カセット154についての精査処理の際に識別不能が起きた場合の紙幣搬送の様子を示す説明図である。入金紙幣カセット154には、既述したように入金紙幣と出金リジェクト紙幣とが混在して、その精査処理の際には、入金紙幣および出金リジェクト紙幣は、これを区別することなくカセットから繰り出される。そして、この精査処理のための繰り出し搬送において識別部142での識別不能は、入金紙幣と出金リジェクト紙幣とで大きな差が無く起き得る。これは、出金リジェクト紙幣は、新札である故にその出金の際の連れ出しによる識別不能を招きやすいが、
図6で説明したような入金紙幣カセット154への搬送経路k4等による搬送および収納を既に受けている。よって、出金リジェクト紙幣が、入金紙幣に比べて、入金紙幣カセット154からの精査処理に伴う繰り出しに搬送で高い確率で識別不能となることはさほどない。こうしたことから、以下の説明に当たっては、入金紙幣カセット154の収納紙幣を入金紙幣と出金リジェクト紙幣とに区別しない。このことは、そもそも紙幣の混在を想定しない出金紙幣カセット151〜153のそれぞれを精査対象とする場合にも当て嵌めることができる。
【0036】
精査処理における紙幣の識別不能は予測できないことから、
図7で説明したとおり、紙幣入出金制御部110は、本体制御部400の制御を受けながら、搬送機構部140(
図3参照)を制御する。つまり、紙幣入出金制御部110は、
図9の上段に示すように、入金紙幣カセット154から収納済み紙幣を1枚ずつ繰り出しつつ、その繰り出した紙幣を、搬送経路k4に受け渡した上で識別部142にて計数識別する。この際、紙幣入出金制御部110は、識別部142で正常に識別計数された紙幣を、既述したとおり、搬送経路k4を経て装填補充用紙幣カセット155に搬送して、この装填補充用紙幣カセット155に収納する。こうした収納に当たり、紙幣入出金制御部110は、識別部142の識別結果を記憶する。その一方、紙幣入出金制御部110は、識別部142で識別不能とされた紙幣(精査時リジェクト紙幣)を、
図9の下段に示すように、識別部142の下流側でk1に受け渡して一時保留部143に一時的に収納する。こうした識別部142での識別結果に応じた紙幣の振分収納は、入金紙幣カセット154に収納済みの紙幣が無くなるまで継続されるので、装填補充用紙幣カセット155には、金種およびその枚数が既知の紙幣が収納され、一時保留部143には、識別不能故に金種や枚数不知の精査時リジェクト紙幣が収納される。この場合、精査対象カセットが出金紙幣カセット151〜153であれば、精査前のカセット収納済み紙幣の金種とその枚数は既知であることから、一時保留部143に識別不能として一時的に収納された精査時リジェクト紙幣の金種と枚数を確定できる。
【0037】
図9の下段に示すように、一時保留部143に精査時リジェクト紙幣が存在した状態となると、紙幣入出金制御部110は、この精査時リジェクト紙幣のリトライ処理を実行する。
図10は精査処理の際に識別不能とされた精査時リジェクト紙幣のリトライ処理における紙幣搬送の様子を示す説明図、
図11はリトライ処理に関しての係員報知の内容を例示して示す説明図である。
【0038】
図10に示すリトライ処理では、紙幣入出金制御部110は、
図10の上段に示すように、一時保留部143から収納済み紙幣(精査時リジェクト紙幣)を1枚ずつ繰り出しつつ、その繰り出した紙幣を、搬送経路k1に受け渡した上で識別部142にて計数識別する。この際、紙幣入出金制御部110は、識別部142で正常に識別計数された紙幣を、既述したとおり、搬送経路k4を経て装填補充用紙幣カセット155に搬送して、この装填補充用紙幣カセット155に収納する。こうした収納に当たり、紙幣入出金制御部110は、識別部142の識別結果を記憶する。その一方、紙幣入出金制御部110は、識別部142で識別不能とされた紙幣(精査リトライ時リジェクト紙幣)を、
図10の上段に示すように、識別部142の下流側で搬送経路k1に受け渡して紙幣入出口部141に一時的に収納する。こうした識別部142での識別結果に応じた紙幣の振分収納は、一時保留部143に収納済みの紙幣(精査時リジェクト紙幣)が無くなるまで継続されるので、装填補充用紙幣カセット155には、金種およびその枚数が既知の紙幣が収納され、紙幣入出口部141には、識別不能故に金種や枚数不知の精査リトライ時リジェクト紙幣が収納される。この場合、一時保留部143に収納済みの紙幣(精査時リジェクト紙幣)の全てが装填補充用紙幣カセット155に収納されれば、その時点で、上記のリトライ処理は終了する。
【0039】
ところで、精査処理の対象となる入金紙幣カセット154、および出金紙幣カセット151〜153は、連れ出しを引き起こしやすい新札を収納していることから、精査処理における識別部142の識別不能は、新札であるが故の連れ出しによる識別不能と予想される。こうした連れ出しは、紙幣が搬送機構部140での上記した搬送経路k1等を搬送される度に、起き難くなることがよく知られている。よって、一時保留部143に収納済みの紙幣(精査時リジェクト紙幣)のリトライ処理は、通常、一度で済むことが多いものの、
図10の上段に示すように紙幣入出口部141に識別部142で識別不能とされた紙幣(精査リトライ時リジェクト紙幣)が収納された場合には、リトライ処理を繰り返す。つまり、
図10の下段に示すように、紙幣入出金制御部110は、紙幣入出口部141から収納済み紙幣(精査リトライ時リジェクト紙幣)を1枚ずつ繰り出しつつ、その繰り出した紙幣を、搬送経路k1に受け渡した上で識別部142にて計数識別する。この際、紙幣入出金制御部110は、識別部142で正常に識別計数された紙幣を、既述したとおり、搬送経路k4を経て装填補充用紙幣カセット155に搬送して、この装填補充用紙幣カセット155に収納する。こうした収納に当たり、紙幣入出金制御部110は、識別部142の識別結果を記憶する。その一方、紙幣入出金制御部110は、識別部142で識別不能とされた紙幣(精査リトライ時リジェクト紙幣)を、
図10の下段に示すように、識別部142の下流側で搬送経路k1に受け渡して一時保留部143に改めて一時的に収納する。こうした識別部142での識別結果に応じた紙幣の振分収納は、紙幣入出口部141に収納済みの紙幣(精査リトライ時リジェクト紙幣)が無くなるまで継続されるので、装填補充用紙幣カセット155には、金種およびその枚数が既知の紙幣が収納され、一時保留部143には改めて識別不能故に金種や枚数不知の精査リトライ時リジェクト紙幣が収納される。この場合にあっても、既述したように新札の搬送履歴により識別部142での識別不能は起き難くなるので、
図10の下段に示すように、紙幣入出口部141に紙幣(精査リトライ時リジェクト紙幣)が収納される事態は、起き難いと予想される。なお、
図10のおけるリトライ処理において、一時保留部143や紙幣入出口部141に精査リトライ時リジェクト紙幣が収納されない状態となると、装填補充用紙幣カセット155に精査処理伴い収納された紙幣は、精査対象カセットであった入金紙幣カセット154に戻されて収納される。
【0040】
紙幣入出金制御部110は、
図10の下段に示すように、紙幣入出口部141に紙幣(精査リトライ時リジェクト紙幣)が収納されると、操作部12に或いは係員専用の図示しない表示部に
図11の表示を行う。この
図11の表示には、金種判別不能の紙幣が残っている旨の表示と、係員による再度のリトライ処理の実行要否の決定ボタン(中止ボタン、実行ボタン)の表示とが含まれ、係員はいずれかのボタン操作を行う。紙幣入出金制御部110は、このボタン操作に応じて、上記のリトライ処理の終了、或いは
図10の上段と下段に示すリトライ処理を再実行する。なお、中止ボタンを経てリトライ処理が終了した場合、一時保留部143や紙幣入出口部141に紙幣が残っていれば、その紙幣は、係員による目視検査を経て、例えば分配リジェクト回収部156に係員により収納され、その枚数や金種は操作部12での係員操作を経て本体制御部400に入力される。
【0041】
以上説明したように、本実施例のBTR10では、顧客の入金した貨幣を異なる金種の貨幣に両替して出金する両替取引を行うに当たり、顧客からの紙幣の入金と顧客への紙幣の出金に関与する紙幣入出口部141と、入金紙幣の保管用に準備された入金紙幣カセット154と、両替して出金される出金紙幣の保管用に金種ごとに準備された出金紙幣カセット151〜153と、搬送される紙幣ごとに金種を少なくとも識別する識別部142を備え、入金紙幣を識別部142を経由して入金紙幣カセット154に搬送して収納する収納搬送と、金種ごとの出金紙幣カセット151〜153から繰り出した出金紙幣を識別部142を経由して紙幣入出口部141に搬送して出金する出金搬送とを行うと共に、該出金搬送の際に識別部142による識別が不能であった出金リジェクト紙幣を、紙幣の収納と繰り出しが可能な繰出収納カセットである入金紙幣カセット154に収納する紙幣入出金制御部110と、カセットに収納済みの全ての紙幣を繰り出して識別部142を経由してカセット外に搬送し、識別部142の識別結果に基づいて、カセットに収納済み紙幣の金額と枚数とを確定する精査処理を行う本体制御部400および紙幣入出金制御部110を備え、出金リジェクト紙幣が収納された入金紙幣カセット154を少なくとも精査処理の対象カセットとする(
図7)。このため、本実施例によれば、入金紙幣の保管用の入金紙幣カセット154と出金紙幣の保管用の出金紙幣カセット151〜153との区分運用を図った上で、その運用されるカセットに収納済みの紙幣の精査管理が可能なBTR10を提供することができる。
【0042】
また、本実施例では、入金紙幣カセット154への入金紙幣の入金搬送の際に、識別部142による識別結果に基づいて、入金紙幣カセット154に収納済みの入金紙幣についての金種と枚数とを算出して記憶する(
図5)。また、入金紙幣カセット154について実行した精査処理の際に識別部142の識別結果に基づいて確定した入金紙幣カセット154に収納済み紙幣(入金紙幣)の金額と枚数とを、
図5の金種と枚数と比較して、入金紙幣カセット154に収納された出金リジェクト紙幣の金額と枚数とを求める(
図8)。このため、出金リジェクト紙幣を収納する入金紙幣カセット154については、収納紙幣の枚数と金額を的確に管理できる。
【0043】
また、本実施例では、入金紙幣カセット154についてなした精査処理済みの紙幣のうち、入金紙幣カセット154に収納された出金リジェクト紙幣に相当する金種と枚数の紙幣を、識別部142の識別結果に応じて入金紙幣カセット154以外のリジェクト回収部157に収納する(
図7下段)。よって、入金紙幣カセット154には、精査処理を経て、顧客からの入金紙幣に相当する分だけの金種と枚数の紙幣を収納できる。そして、出金リジェクト紙幣に相当する金種と枚数の紙幣については、その枚数や金種を管理した上で、リジェクト回収部157を介して、通常の係員管理とすることができる。
【0044】
また、本実施例では、精査処理にて識別不能な事態が起きると、一時保留部143や紙幣入出口部141を利用して紙幣搬送を繰り返すリトライ処理を実行する(
図10)。よって、本実施例によれば、精査処理で連れ出しにより識別不能とされる紙幣を極力少なくできる。なお、
図10に示した精査リトライ処理は、既存の精査処理を行う場合にも適用できる。
【0045】
[実施例2]
本実施例では、出金リジェクト紙幣を出金紙幣カセット151〜153のいずれかに収納する点に特徴がある。
図12は実施例2での両替出金の前後におけるカセット内の紙幣収納の様子と出金リジェクト紙幣の収納搬送の様子とを示す説明図である。この実施例2では、搬送経路k3を経て一時保留部143に一時的に収納した出金リジェクト紙幣を(
図12中段)、
図12の下段に示すように、識別部142を経由した後に、搬送経路k4にて出金紙幣カセット151〜153のいずれかに収納する。このカセット選択は、識別部142での金種識別によってなされる。この実施例2であっても、入金紙幣の保管用の入金紙幣カセット154と出金紙幣の保管用の出金紙幣カセット151〜153との区分運用を図った上で、その運用されるカセットに収納済みの紙幣の精査管理が可能となる。そして、この実施例2では、出金リジェクト紙幣を出金紙幣カセット151〜153に収納するので、この出金リジェクト紙幣を両替取引の出金紙幣として再利用できる。
【0046】
[実施例3]
本実施例では、出金リジェクト紙幣を装填補充用紙幣カセット155に収納する点に特徴がある。
図13は実施例3での両替出金の前後におけるカセット内の紙幣収納の様子と出金リジェクト紙幣の収納搬送の様子とを示す説明図である。この実施例3では、搬送経路k3を経て一時保留部143に一時的に収納した出金リジェクト紙幣を(
図13中段)、
図13の下段に示すように、識別部142を経由した後に、搬送経路k4にて装填補充用紙幣カセット155に収納する。この実施例3であっても、入金紙幣の保管用の入金紙幣カセット154と出金紙幣の保管用の出金紙幣カセット151〜153との区分運用を図った上で、その運用されるカセットに収納済みの紙幣の精査管理が可能となる。そして、この実施例3では、出金リジェクト紙幣を両替取引の紙幣入出金に関与しない装填補充用紙幣カセット155に収納するので、装填補充用紙幣カセット155への出金リジェクト紙幣の収納を入金紙幣カセット154と出金紙幣カセット151〜153を用いた両替取引と区別して実行できることから、次の両替取引に速やかに移行できる。
【0047】
以上、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施例1では、精査処理後において、出金リジェクト紙幣に相当する枚数と金種の紙幣をリジェクト回収部157に収納するようにしたが(
図7下段)、このリジェクト回収部157を装備しない構成であってもよい。この場合には、精査処理の際、出金リジェクト紙幣を、一旦、一時保留部143や紙幣入出口部141に退避目的で収納し、その後、装填補充用紙幣カセット155に収納すればよい。
【0048】
また、出金リジェクト紙幣を一時保留部143に一時退避させ(
図6中段)、出金動作の完了後に出金リジェクト紙幣を入金紙幣カセット154に収納するようにしているが、一時保留部143への一時退避ではなく、装填補充用紙幣カセット155への一時的な収納退避を図る方式でもよい。
【0049】
また、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細にその構成等につき説明したのであり、必ずしも実施例に記した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
更に、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計等することによりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリーや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体におくことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上、必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。