(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993645
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】鼻汁吸引器
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
A61M1/00 161
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-161158(P2012-161158)
(22)【出願日】2012年7月20日
(65)【公開番号】特開2014-18499(P2014-18499A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000238625
【氏名又は名称】武内容器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592134114
【氏名又は名称】丹平製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】武内 清治
(72)【発明者】
【氏名】谷 洋次郎
【審査官】
宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2001/036020(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/018288(WO,A1)
【文献】
特開2003−024432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に鼻汁吸込ノズルを取付けている可撓性を有する鼻汁吸引管と、先端にマウスピースを取付けている可撓性を有する吸気管とのそれぞれの基端部を鼻汁収容容器に連結、連通させ、上記鼻汁吸込ノズルの先部を鼻孔内に差し込んで上記マウスピースから吸気管を通じて吸気することにより、鼻汁収容容器内を通じて上記鼻汁吸引管に吸引力を発生させ、その吸引力により鼻腔内の鼻汁を上記吸込ノズルから鼻汁吸引管を通じて上記鼻汁収容容器内に吸引、収容するように構成した鼻汁吸引器において、上記鼻汁吸込ノズルは、その長さ方向の中央部を鼻孔の孔径よりも大径の球体部に形成していると共にこの大径球体部から先端に向かうに従って徐々に小径に形成して鼻孔の孔径よりも小径の差込部に形成してあり、さらに、上記大径球体部の基端側に、上記鼻汁吸引管の先端部に着脱自在に且つ気密状態となるように挿嵌した小径の接続筒部を突設してノズル全体の形状が紡錘形状となるように形成してあり、この鼻汁吸込ノズルの先端面を除く先端部から上記大径の球体部の基端部に亘る外周面に鼻汁吸込ノズルの長さ方向に長い条溝を周方向に間隔を存して複数条、設けていて、これらの条溝により鼻汁吸込ノズルを鼻孔内に差し込んだ際に鼻腔内を外気に連通させる通気路を形成していることを特徴とする鼻汁吸引器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻腔内に滞留している鼻汁を吸引、除去する鼻汁吸引器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
風邪やアレルギー性鼻炎などに罹った場合、鼻汁、鼻閉、くしゃみなどの症状が発生して円滑な呼吸が妨げられ、特に、乳幼児においては鼻をかむことができないために、気分が悪くなって寝つけない事態が発生する。このため、母親等の介護者が鼻汁吸引器を使用して鼻腔内に溜っている鼻汁を吸引、除去することが行われている。また、乳幼児でなくても鼻汁吸引器を使用して自ら鼻汁を吸引、除去することが行われている。
【0003】
このような鼻汁吸引器としては、例えば、特許文献1に記載されているように、一端に鼻汁吸引ヘッド(以下、鼻汁吸込ノズルとする)を備えた可撓性を有する鼻汁吸引管の基端部を鼻汁収容容器の上端部に連結、連通させると共に、一端にマウスピースを取付けている可撓性を有する吸気管の基端部を上記鼻汁収容容器における上記鼻汁吸引管とは別な部分に連結、連通させてなる構造のものが知られている。
【0004】
このように構成した鼻汁吸引器は使用に際して、鼻汁吸込ノズルを、その先端部を乳幼児等の鼻孔内に差し込んだ状態となるように鼻孔に宛てがう一方、介護者等がマウスピースを銜えて吸引すると、その吸引力は吸気管から鼻汁収容容器内を通じて鼻汁吸引管に作用し、この吸引力によって鼻孔内に差し込んでいる鼻汁吸込ノズルを通じて鼻腔内の鼻汁が鼻汁吸引管内に吸入され、この鼻汁吸引管を通じて収容容器内に鼻汁を収容することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−24432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように構成した鼻汁吸引器によれば、吸気管から鼻汁収容容器、鼻汁吸引管、鼻汁吸込ノズルを通じて鼻腔内の鼻汁を吸引すると、鼻汁が鼻汁吸引管側に吸引、除去されるに伴って鼻腔内に発生する負圧が増大して鼻汁の吸引除去が円滑に行われなくなるばかりでなく、増大する負圧によって吸込ノズル鼻腔内の粘膜を傷つけたり、鼓膜の圧力が変動して聴覚に異常をきたす虞れがある等の問題点があった。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、吸気管から鼻汁収容容器、鼻汁吸引管、鼻汁吸込ノズルを通じて鼻腔内の鼻汁を吸引、除去する際に、鼻腔内に大きな負圧を発生させることなく、さらには違和感等を与えることなく、鼻腔内の鼻汁を円滑に吸引、除去することができる鼻汁吸引器を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の鼻汁吸引器は、請求項1に記載したように、先端に鼻汁吸込ノズルを取付けている可撓性を有する鼻汁吸引管と、先端にマウスピースを取付けている可撓性を有する吸気管とのそれぞれの基端部を鼻汁収容容器に連結、連通させ、上記鼻汁吸込ノズルの先部を鼻孔内に差し込んで上記マウスピースから吸気管を通じて吸気することにより、鼻汁収容容器内を通じて上記鼻汁吸引管に吸引力を発生させ、その吸引力により鼻腔内の鼻汁を上記吸込ノズルから鼻汁吸引管を通じて上記鼻汁収容容器内に吸引、収容するように構成した鼻汁吸引器において、上記鼻汁吸込ノズル
は、その長さ方向の中央部を鼻孔の孔径よりも大径の球体部に形成していると共にこの大径球体部から先端に向かうに従って徐々に小径に形成して鼻孔の孔径よりも小径の差込部に形成してあり、さらに、上記大径球体部の基端側に、上記鼻汁吸引管の先端部に着脱自在に且つ気密状態となるように挿嵌した小径の接続筒部を突設してノズル全体の形状が紡錘形状となるように形成してあり、この鼻汁吸込ノズルの先端面を除く先端部から上記大径の球体部の基端部に亘る外周面に鼻汁吸込ノズルの長さ方向に長い条溝を周方向に間隔を存して複数条、設けていて、これらの条溝により鼻汁吸込ノズルを鼻孔内に差し込んだ際に鼻腔内を外気に連通させる通気路を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、鼻汁収容容器に吸気管と鼻汁吸引管とを連結、連通し、鼻汁吸引管の先端に取付けている鼻汁吸込ノズルを鼻孔内に差し込んだ状態にして吸気管の先端のマウスピースを通じて吸気することにより、鼻汁収容容器内を介して上記鼻汁吸引管に吸引力を発生させて鼻腔内の鼻汁を上記鼻汁吸込ノズルから鼻汁吸引管を通じて上記鼻汁収容容器内に吸引、収容するように構成した鼻汁吸引器において、上記鼻汁吸込ノズルの外周面に、この鼻汁吸込ノズルを鼻孔内に差し込んだ際に鼻腔内を外気に連通させる通気路を形成しているので、鼻汁吸引管内の吸引力によって鼻腔内の鼻汁が鼻汁吸込ノズルを通じて該鼻汁吸引管側に吸引、除去されるに従って、鼻汁吸込ノズルの外周面に形成している通気路を通じて外気を鼻腔内に流入させることができる。
【0010】
従って、吸引時に発生する鼻腔内の負圧を増大させることなく、鼻腔内の鼻汁を鼻汁吸込ノズルから吸引管を通じて鼻汁収容容器内に円滑に吸引、収容することができると共に、負圧によって鼻腔内の粘膜を傷つけたり、鼓膜等に違和感を与えたりすることなく鼻汁の吸引、除去を可能にすることができる。
【0011】
さらに、
本発明によれば、鼻汁吸込ノズルの外周面にこの鼻汁吸込ノズルの長さ方向に長い条溝を周方向に間隔を存して複数条、設けることによって上記通気路を形成しているので、鼻汁吸込ノズルを鼻孔内に差し込んでその外周面を鼻孔の孔壁面に密接させれば、これらの条溝によって鼻腔内を外気に確実に連通させた通気路を構成することができる。
【0012】
その上、上記鼻汁吸込ノズルの形状を先端部が鼻孔よりも小径で中央部が鼻孔よりも大径の紡錘形状に形成しているので、鼻孔内へのこの鼻汁吸込ノズルの差し込みが痛みや違和感を与えることなく円滑且つ確実に行えるのは勿論、紡錘形状の鼻汁吸引ノズルの外周面に上記通気路を形成しているので、鼻孔内に鼻汁吸引ノズルを差し込んだ際に、通気路に鼻汁が入っても鼻孔を閉塞しているのは孔壁に密接しているノズルの大径部の通気路部分だけであるから、外気によってこの通気路部分内の鼻汁を簡単に排除することができて、鼻腔内と外気とを通気路により確実に連通させることができ、上述したように、吸引時に発生する鼻腔内の負圧を増大させることなく、鼻腔内の鼻汁を吸込ノズルから吸引管を通じて鼻汁収容容器内に円滑に吸引、収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図6】鼻汁吸込ノズルを鼻孔内に差し込んだ状態の簡略横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の具体的な実施例を図面について説明すると、
図1、
図2において、鼻汁吸引器Aは、先端に鼻汁吸込ノズル2を取付けている可撓性を有する鼻汁吸引管1の基端部と、先端にマウスピース4を取付けている可撓性を有する吸気管3の基端部とを鼻汁収容容器5の上端部にそれぞれ連結、連通させてなり、上記マウスピース4を口にくわえて吸気することにより、上記吸気管3、鼻汁収容容器5を通じて上記鼻汁吸引管1に吸引力を発生させ、鼻孔Bに差し込んでいる上記鼻汁吸込ノズル2からこの鼻汁吸込ノズル2に連通している上記鼻汁吸引管1を通じて鼻腔C内の鼻汁を鼻汁収容容器5内に吸引、収容するように構成している。
【0015】
上記鼻汁吸引管1と吸気管3は、シリコン樹脂等の軟質の合成樹脂製管であるが、鼻汁吸込ノズル2とマウスピース4は、軟質、硬質いずれの合成樹脂成形品であってもよい。また、鼻汁収容容器5は合成樹脂成形品からなり、その上端開口部はキャップ体6によって密閉されている。このキャップ体6は内周面に雌螺子部6aを設けていて、鼻汁収容容器5の開口上端部外周面に設けている雄螺子部5aに着脱自在に螺合させている。なお、鼻汁収容容器5は、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の透明ないしは半透明の合成樹脂から形成されていることが好ましい。
【0016】
さらに、キャップ体6の天壁部下面外周部にシール片7を貼着してあり、このシール片7を鼻汁収容容器5の口縁上端面に密接させることによって容器内が気密状態となるように構成している。
【0017】
また、上記キャップ体6の天壁部の2個所には上記鼻汁吸引管1の基端部と吸気管3の基端部とをそれぞれ着脱自在に且つ気密に接続させた接続筒部8、9を上方に向かって突設していると共に、これらの接続筒部8、9の下端部をキャップ体6の天壁部の下面から下方に突出させていて、接続筒部8、9内の貫通孔8a、9aを通じて鼻汁収容容器5の上端部内を上記鼻汁吸引管1と吸気管3内にそれぞれ連通させている。
【0018】
なお、鼻汁吸引管1と吸気管3とをそれぞれ接続させるこれらの接続筒部8、9は、両方共、キャップ体6の天壁部に設けておくことなく、いずれか一方をキャップ体6側に、他方を鼻汁収容容器5側に設けておいてもよく、要するに、鼻汁吸引管1と吸気管3との基端部を鼻汁収容容器5の上端部内に連通させるように構成しておけばよい。
【0019】
上記鼻汁吸引管1の先端に取付けている鼻汁吸込ノズル2はその先端から基端に亘って鼻汁吸込孔を貫設している。この鼻汁鼻汁吸込ノズル2は、その長さ方向の中央部を鼻孔Bの孔径よりも大径の球体部に形成していると共にこの大径球体部2aから先端に向かうに従って徐々に小径に形成して鼻孔Bの孔径よりも小径の差込部2bに形成してあり、さらに大径球体部2aの基端側に、上記鼻汁吸引管1の先端部に着脱自在に且つ気密状態となるように挿嵌した小径の接続筒部2cを突設して、全体の形状を紡錘形状に形成している。
【0020】
さらに、この鼻汁吸込ノズル2の外周面に、
図3、
図4に示すように、この鼻汁吸込ノズル2の長さ方向に長い適宜深さを有する条溝10A を上記差込部2bの先端部から大径球体部2aの基端部間に亘って刻設してあり、この条溝10A を鼻汁吸込ノズル2の周方向に所定間隔毎に複数条設けて、これらの条溝10A により、鼻汁吸込ノズル2を鼻孔B内に差し込んだ際に鼻腔C内を外気に連通させる通気路10を形成している。
【0021】
上記吸気管3の先端に取付けているマウスピース4は、口に銜えやすいように偏平筒状に形成してあり、その基端部に小径の接続筒部4aを一体に設けていて、この接続筒部4aを吸気管3の先端部に着脱自在に且つ気密状態となるように挿嵌することにより、吸気管3に連結、連通させている。
【0022】
このように構成した鼻汁吸引器Aの使用態様を述べると、
図5に示すように、吸気管3の先端に取付けているマウスピース4を口に銜える一方、鼻汁吸込ノズル2をその大径球体部2aが鼻孔Bの孔壁に密接するまで鼻孔Bに差し込んだ状態となるように鼻孔Bに宛てがう。
【0023】
この状態にしてマウスピース4を通じて吸気管3内の空気を吸い込むと、吸気管3内に吸引力が発生して、この吸引力は鼻汁収容容器5内を通じて鼻汁吸引管1に伝達され、鼻腔C内の鼻汁が鼻汁吸込ノズル2からの吸引力によってこの鼻汁吸込ノズル2から鼻汁吸引管1を通じて鼻汁収容容器5内に吸引、収容される。
【0024】
この際、鼻孔Bが鼻汁吸込ノズル2によって外気との連通が遮断されていると、鼻汁吸引管1側からの吸引力によって鼻腔C内の鼻汁が吸引、排除されるに従って鼻腔C内が減圧されて大きな負圧が発生し、鼻汁の円滑な吸引、排除が困難になるばかりでなく、鼻腔C内の粘膜を傷つけたりする虞れあるが、鼻孔Bに密接している鼻汁吸込ノズル2の外周面には上記のように、該鼻汁吸込ノズル2の長さ方向に長い適宜深さの条溝10A からなる通気路10を設けているので、吸引力によって鼻腔C内の鼻汁が鼻汁吸込ノズル2を通じて鼻汁吸引管1に吸引、除去されるに従って外気が上記通気路10を通じて鼻腔C内に流入し、鼻腔C内に大きな負圧を発生させることなく鼻汁吸込ノズル2から鼻汁吸引管1を通じて鼻汁を鼻汁収容容器5内に円滑に吸引、収容することができる。
【0025】
なお、
図5においては、本人が鼻腔C内の鼻汁を吸引、除去している状態を示しているが、自分で鼻をかむことができない乳幼児などの場合には、
図7に示すように、母親等の介護者が鼻汁吸引器Aのマウスピース4を銜える一方、鼻汁吸込ノズル2の先端部を乳幼児の鼻孔Bに差し込んだ状態にして上記同様に、鼻腔C内に溜まっている鼻汁を吸引、除去すればよい。鼻汁収容容器5内に収容された鼻汁は、鼻汁吸引器Aの使用後、キャップ体6を取り外して排出し、この鼻汁収容容器5を鼻汁吸引管1や鼻汁吸込ノズル2、吸気管3、マウスピース4と共に洗浄して次の鼻汁吸引、除去に使用する。
【符号の説明】
【0026】
A 鼻汁吸引器
B 鼻孔
C 鼻腔
1 鼻汁吸引管
2 鼻汁吸込ノズル
3 吸気管
4 マウスピース
5 鼻汁収容容器
6 キャップ体
10 通気路