(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の交流回転電機のインバータ制御装置を備えた車両の電動駆動システムの概略図である。
【0009】
バッテリ136の高電位側は、バッテリ136の高電位側の直流配線138aを介して、コンデンサモジュール500の正極側の電源端子509に接続される。バッテリ136の低電位側は、バッテリ136の低電位側の直流配線138aを介して、コンデンサモジュール500の負極側の電源端子508に接続される。バッテリ136には、ニッケル水素蓄電池やリチウムイオン電池などが用いられる。コンデンサモジュール500の正極側の電源端子509と正極側のコンデンサ端子506は、電気的に接続されている。コンデンサモジュール500の負極側の電源端子504と負極側のコンデンサ端子504は、電気的に接続されている。コンデンサモジュール500の正極側のコンデンサ端子506は、インバータ140の上アームの各相スイッチング素子Q
up、Q
vp、Q
wpのコレクタ側に接続される。コンデンサモジュール500の負極側のコンデンサ端子504は、インバータ140の下アームの各相スイッチング素子Q
un、Q
vn、Q
wnのエミッタ側に接続される。
【0010】
ここで、インバータ140は、バッテリ136の直流電圧を可変電圧、可変周波数の交流に変換し、交流回転電機(モータ)305に流す3相交流(モータ電流)を制御するものである。インバータ140の上アームとして動作するU相のスイッチング素子Q
upおよびダイオードD
upと、下アームとして動作するU相のスイッチング素子Q
unおよびダイオードD
unとで、U相の上下アームの直列回路150が構成される。V相およびW相についても同様に、各相において、上下アームの直列回路150が構成される。なお、インバータ140のスイッチング素子Q
up〜Q
wnには、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)や金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)などが用いられる。
【0011】
インバータ140の各相(U相〜W相)の上下アームの直列回路150の中点部分である接続点は、各相の交流バスバー802と接続される。インバータ140の各相の交流バスバー802は、各相の交流配線187aと接続され、U相とV相については電流センサ180を介して、それぞれの相の固定子巻線312U、312Vに接続される。W相については、直接固定子巻線312Wに接続される。本実施形態では、U相とV相に電流センサ180を配置した回路図で説明しているが、U相とW相に電流センサ180を配置してもよく(
図2参照)、V相とW相に電流センサ180を配置してもよく(
図3参照)、U相とV相とW相に電流センサ180を配置してもよい(
図4参照)。電流センサ180は、モータ電流を検出し、検出信号i
us、i
vsを制御器172に入力する。
【0012】
電流センサ180には、たとえばカレントトランスなどが用いられるが、他のタイプの電流センサであってもよい。インバータ140の出力である3相交流は数kHzから数十kHzで変化するが、この電流波形を精度よくサンプリングするために充分な周波数特性を持ったものであればよい。
【0013】
交流回転電機(モータ)305は、インバータ140の出力であるモータ電流(3相交流)によって、回転子320が回転制御され、モータトルクT
mを生成する。生成されたモータトルクT
mは、回転軸360を介してギアボックス16に伝達される。ギアボックス16は、伝達されたモータトルクT
mをギアボックス16内のギアを介して駆動トルクT
sに変換し、駆動シャフト17に伝達する。駆動シャフト17は、伝達された駆動トルクT
sによって車両の駆動輪18を駆動し、車両(不図示)を加速/減速させる。
【0014】
制御器172は、電流検出部605、角度演算部602、電流指令演算部607、補正器600、電流制御部603、PWM演算部604を備えており、上位の制御装置である車両制御装置(不図示)から通信用コネクタ21を介して受信したトルク指令T
m*と電流センサ180の検出信号i
us、i
vsと回転センサ306の検出信号R
sigに基づき、インバータ140の各スイッチング素子Q
up〜Q
wnをON/OFFするスイッチング指令v
Gup*〜v
Gwn*を生成する。このスイッチング指令v
Gup*〜v
Gwn*に基づいて、ドライバ回路174は、インバータ140の各スイッチング素子Q
up〜Q
wnをON/OFFするためのゲート信号v
Gup〜v
Gwnを生成する。このゲート信号v
Gup〜v
Gwnによりインバータ140の各スイッチング素子Q
up〜Q
wnがON/OFFされて、各相の固定子巻線312U〜312Wに印加するU〜W相の交流電圧が生成され、回転電機305が回転駆動・制御される。なお、回転センサ306には、レゾルバなどが用いられる。
【0015】
なお、本発明による交流回転電機のインバータ制御装置は、上位制御装置(不図示)からのトルク指令T
m*を受けて、ドライバ回路174に入力するスイッチング指令v
Gup*〜v
Gwn*を生成するまでの動作を行う装置部分をインバータ制御装置としている。
【0016】
電流検出部605は、A/D変換器を介して、電流センサ180の検出信号i
us、i
vsを検出電流i
ud、i
vdに変換し、変換したU相とV相の検出電流i
ud、i
vdを補正演算部601に入力する。角度演算部602は、回転子320の回転センサ306の検出信号R
sigを回転子320の電気角θ
reに変換し、変換した回転子320の電気角θ
reを電流制御部603と補正器600に入力する。電流指令演算部607は、トルク指令T
m*に対応したd軸電流指令値i
d*とq軸電流指令値i
q*を算出し、算出したd軸電流指令値i
d*とq軸電流指令値i
q*を電流制御部603に入力する。
【0017】
補正器600は、角度演算部602で算出した回転子320の電気角θ
reと電流制御部603で算出したインバータ140のU相出力電圧指令値v
u*とV相出力電圧指令値v
v*を用いて電流センサ180のオフセット誤差を補正するものであり、オフセット量演算部606と補正演算部601から構成されている。オフセット量演算部606は、入力された回転子320の電気角θ
reとU相出力電圧指令値v
u*とV相出力電圧指令値v
v*を用いて、U相出力電圧指令値v
u*のオフセット量v
uo*とV相出力電圧指令値v
v*のオフセット量v
vo*を算出し、補正演算部601へ入力する。
【0018】
補正演算部601では、入力されたU相出力電圧指令値v
u*のオフセット量v
uo*とV相出力電圧指令値v
v*のオフセット量v
vo*を用いて、電流検出部605で検出した検出電流値i
us、i
vsのオフセット誤差を補正してU相補正電流i
ucとV相補正電流i
vcを算出し、算出したU相補正電流i
ucとV相補正電流i
vcを用いて、W相補正電流i
wcを式(1)で算出し、算出した各相(U相〜W相)の補正電流i
uc〜i
wcを電流制御部603に入力する。補正器600の詳細な演算内容については、後述する。
【0020】
電流制御部603は、入力された回転子320の電気角θ
reを用いて、各相(U相〜W相)の補正電流i
uc〜i
wcを3相交流/dq軸変換し、d軸とq軸の補正電流i
dc、i
qcを生成し、生成したd軸とq軸の補正電流i
dc、i
qcが、d軸とq軸の電流指令値i
d*、i
q*とそれぞれ一致するように、比例積分制御などによりd軸とq軸の電圧指令値v
d*、v
q*を算出する。電流制御部603は、算出したd軸とq軸の電圧指令値v
d*、v
q*を、回転子320の電気角θ
reを用いて、dq軸/3相交流変換し、各相出力電圧指令値v
u*〜v
w*を生成し、生成した各相(U相〜W相)の出力電圧指令値v
u*〜v
w*をPWM演算部604に入力する。さらに、電流制御部603は、U相出力電圧指令値v
u*とV相出力電圧指令値v
v*を補正器600に入力する。
【0021】
なお、下記に記述する式(2)は3相交流/dq軸変換時に使用し、式(3)はdq軸/3相交流変換時に使用するものである。
【0024】
PWM演算部604は、入力された各相(U相〜W相)の出力電圧指令値v
u*〜v
w*と搬送波(キャリア)を比較して、インバータ140の各スイッチング素子Q
up〜Q
wnのスイッチング指令v
Gup*〜v
Gwn*を算出し、ドライバ回路174に入力する。
【0025】
ドライバ回路174は、入力されたインバータ140の各スイッチング指令v
Gup*〜v
Gwn*をゲート信号v
Gup〜v
Gwnに変換し、変換したゲート信号v
Gup〜v
Gwnをインバータ140の各相のスイッチング素子Q
up〜Q
wnのゲートに入力し、インバータ140の各スイッチング素子Q
up〜Q
wnをON/OFFさせる。
【0026】
図5は、本発明によるインバータ制御装置を備えた電力変換装置200の一例の外観斜視図である。
図5で例示する電力変換装置200は、平面形状がほぼ正方形の直方体形状である。8は蓋、10はアルミなどの金属材で形成されたハウジング、12は流路形成体、13は冷却媒体の入口配管、14は出口配管、420は下カバーである。コネクタ21は、外部との接続のために設けられた信号用のコネクタである。蓋8は、電力変換装置200を構成する回路部品が収納されるハウジング10の上部開口部に固定される。通信用コネクタ21は、蓋8に形成された開口部に装着されており、電力変換装置200内の制御器172(
図1参照)を動作させる低電圧の直流電力を供給する。ハウジング10の下部に固定される流路形成体12は、コンデンサモジュール500(
図1参照)および後述するパワーモジュール300を保持するとともに、水などの冷却媒体によってこれらを冷却する。入口配管13および出口配管14は、流路形成体12の一側面に設けられ、入口配管13から供給された冷媒は、流路形成体12内の流路に流入し、出口配管14から排出される。なお、冷媒の流入および流出する方向を変更しても、冷却効率や圧力損失に対して大きな影響を与えない。
【0027】
交流コネクタ187は、ハウジング10の配管13と配管14が設けられている側面に取り付けられた交流インターフェイス185(後述する
図6を参照)に装着され、交流インターフェイス185に装着された交流コネクタ187の交流配線187aは、配管13と配管14の間を通って下方に延びている。直流コネクタ138は、交流インターフェイス185が設けられた側面に隣接する側面に設けられた直流インターフェイス137(後述する
図6を参照)に装着され、直流インターフェイス137に装着された直流コネクタ138の直流配線138aも電力変換装置200の下方に延びている。
【0028】
図6は、
図5に例示する電力変換装置200の分解斜視図である。
蓋8の内側の、すなわちハウジング10の上部収納空間には、制御器172(
図1参照)を実装した制御回路基板20が配置されており、本発明によるインバータ制御装置はたとえばこの制御回路基板20に搭載されるが、構成によっては別の基板に搭載してもよい。
【0029】
流路形成体12には、入口配管13から流入した冷媒が流れる流路が形成されている。流路は、流路形成体12の3つの側面に沿って流れるようなコの字形状の流路を形成している。入口配管13から流入した冷媒はコの字形形状流路の一端から流路内に流入し、流路内を流れた後に、流路の他端に接続されている出口配管14から流出される。流路の上面には、3つの開口部402a〜402cが形成されており、直列回路150(
図1参照)を内蔵したパワーモジュール300U〜300Wがそれらの開口部402a〜402cから流路内に挿入される。
【0030】
パワーモジュール300Uには、U相の直列回路150が内蔵され、パワーモジュール300Vには、V相の直列回路150が内蔵され、パワーモジュール300Wには、W相の直列回路150が内蔵されている。これらパワーモジュール300U〜300Wは、同一構成になっており、外観形状も同一形状である。
【0031】
開口部402a〜402cは、挿入されたパワーモジュール300U〜300Wのフランジ部によって塞がれる。流路形成体12には、コの字形形状の流路によって囲まれるように、電装部品を収納するための収納空間405が形成されている。
【0032】
図6の例では、この収納空間405にコンデンサモジュール500が収納されている。コンデンサモジュール500の正極側の電源端子509は、バッテリ136の高電位側に接続され、コンデンサモジュール500の負極側の電源端子508は、バッテリ136の低電位側に接続される(
図1参照)。収納空間405に収納されたコンデンサモジュール500は、流路内を流れる冷媒によって冷却される。
【0033】
コンデンサモジュール500の上方には、交流バスバー802U〜802Wが装着されたバスバーアッセンブリ800が配置される。バスバーアッセンブリ800には、電流センサ180が固定されている。ドライバ回路174を実装したドライバ回路基板22は、バスバーアッセンブリ800に設けられた支持部材807aに固定されることにより、バスバーアッセンブリ800の上方に配置される。
【0034】
制御回路基板20とドライバ回路基板22は、フラットケーブル(不図示)によって接続され、フラットケーブルは、隔壁10cに形成されたスリット状の開口10dを通って下部収納空間から上部収納空間へと引き出される。このように、パワーモジュール300U〜300Wとドライバ回路基板22と制御回路基板20とが高さ方向に階層的に配置され、制御回路基板20が強電系のパワーモジュール300U〜300Wから最も遠い位置に配置されるので、制御回路基板20側に混入するスイッチングノイズを低減することができる。
【0035】
さらに、ドライバ回路基板22と制御回路基板20とは隔壁10cによって区画された別の収納空間に配置されるため、隔壁10cが電磁シールドとして機能し、ドライバ回路基板22から制御回路基板20に混入するノイズを低減することができる。さらに、ハウジング10に一体に形成された隔壁10cに制御回路基板20が固定されるため、外部からの振動に対して制御回路基板20の機械的な共振周波数が高くなり、車両側からの振動の影響を受けにくくなる。
なお、本発明によるインバータ制御装置の適用は、
図5、6に例示する電力変換装置200の構成に限定されるものではなく、インバータ動作をする電力変換装置であれば適用することができる。
【0036】
図7は本発明によるインバータ制御装置を用いて駆動される交流回転電機(モータ)305の一例であり、この回転軸方向の断面図を示す概略図である。
図8は、
図7に例示する交流モータ305の径方向の断面図を示す概略図であるが、モータハウジング370は省略されている。
【0037】
交流回転電機305は、永久磁石界磁の永久磁石同期回転電機で、特に、永久磁石322を回転子鉄心321に埋め込んだ埋め込み磁石型の永久磁石同期回転電機である。また、固定子310の固定子鉄心311の内側にギャップを介して回転子320が配置される内転型の回転電機で、固定子鉄心311の単一ティース311Tに固定子巻線312を巻回する集中巻モータである。
なお、本発明によるインバータ制御装置の適用は、上記の構成の永久磁石同期回転電機の駆動装置に限定されず、3相交流によって駆動される回転電機(モータ)の駆動装置であれば適用することができる。固定子コイルが分布巻であっても適用することができる。
【0038】
回転子320は、回転子鉄心321と永久磁石322と回転軸360を備える。回転子320と回転センサ306は、回転軸360で接続されている。回転軸360は、軸受350で回転支持されている。回転センサ306の固定子側は、モータハウジング370にネジなどで固定されている(不図示)。固定子310は、圧入ないしキー溝などでモータハウジング370に固定されている(不図示)。固定子310の巻線312は、U,V,Wの3相巻線(312U、312V、312W;不図示)が順次に配置されている。
【0039】
回転子320の永久磁石322は、ギャップ面方向にN極の極性を持つ永久磁石322Nと、S極の極性を持つ永久磁石322Sとが順次交互に配置されている。ここで、永久磁石322の材料は、ネオジムなどの希土類磁石が保持力の面から好適であるが、その他の希土類磁石あるいはフェライト磁石であってもよい。
図7、8に例示する回転電機では、16極24スロットの2対3、すなわち、極数=2、スロット数=3の整数倍のモータ系列の例を図示したが、4対3、あるいは8対9、10対12などの系列であってもよい。また、
図7、8では、埋め込み磁石型の集中巻同期電動機の例について説明したが、表面磁石型同期電動機であっても、分布巻の固定子を備えた回転電機であっても、本発明によるインバータ制御装置は適用することができる。さらには、誘導モータなどの他の交流回転電機であっても同様に適用可能である。
【0040】
次に、補正器600の動作、すなわち3相交流(モータ電流)のオフセット量補正の演算方法を説明する。まず、補正器600内のオフセット量演算部606の詳細な演算方法について説明する。
【0041】
図9は、本発明による第1の実施形態のインバータ制御装置におけるオフセット量演算部606内の演算のブロック図である。
オフセット量演算部606は、角度変化量演算部608と角度変化量積算部609と補間演算部610とメモリ611と直流量演算部612とローパスフィルタ613から構成されており、インバータ140のU相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*のオフセット量v
uo*、v
vo*を算出するものである。
角度変化量演算部608は、入力された回転子320の電気角θ
reを用いて、回転子320の電気角変化量Δθ
reを算出し、算出した電気角変化量Δθ
reを角度変化量積算部609に入力する。
【0042】
図10は、本発明による第1の実施形態のインバータ制御装置における角度変化量演算部608の演算処理を説明するための概略図である。
角度変化量演算部608は、最新の搬送波のピークP
2時にサンプリングした回転子320の電気角θ
re2から、最新の搬送波のピークP
2の1つ前のピークP
1時にサンプリングした回転子320の電気角θ
re1を減算して、回転子320の電気角変化量Δθ
re(=θ
re2−θ
re1)を算出し、算出した電気角変化量Δθ
reを角度変化量積算部609に入力する。
角度変化量演算部608は、搬送波のピーク時(
図10の搬送波のプラス側の周期的な最大値の位置)に上述した演算を逐次処理する。
【0043】
角度変化量積算部609は、入力された電気角変化量Δθ
reを積算して電気角変化量積算値Δθ
re_addを算出し、算出した電気角変化量積算値Δθ
re_addを補間演算部610に入力する。なお、角度変化量積算部609は、搬送波のピーク時に上述した演算を逐次処理する。
【0044】
補間演算部610は、入力された電気角変化量積算値Δθ
re_addと、U相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*を用いて、電気角変化量積算値Δθ
re_addが予め設定した電気角変化量積算値Δθ
re_Sに到達した時のU相とV相の出力電圧指令値X
u*、X
v*を算出し、算出したU相とV相の出力電圧指令値X
u*、X
v*をメモリ611に入力する。
【0045】
図11は、本発明による第1の実施形態のインバータ制御装置における補間演算部610の演算処理を説明するための概略図である。
補間演算部610は、予め設定した電気角変化量積算値Δθ
re_Sが、電気角変化量積算値Δθ
re_addの最新値Δθ
re_add2と最新値Δθ
re_add2の1つ前の値Δθ
re_add1との範囲内に存在するか否かを判定する。予め設定した電気角変化量積算値Δθ
re_Sが、電気角変化量積算値Δθ
re_addの最新値Δθ
re_add2と最新値Δθ
re_add2の1つ前の値Δθ
re_add1との範囲内に存在する場合には、補間演算部610は、電気角変化量積算値Δθ
re_addの最新値Δθ
re_add2の1つ前の値Δθ
re_add1が予め設定した電気角変化量積算値Δθ
re_Sに到達するまでの時間差Δtを式(4)で算出する。
【0046】
【数4】
ここで、式(4)および
図11内に示したTは、搬送波の1周期を表している。
【0047】
補間演算部610は、式(4)で算出した時間差Δtと、U相の出力電圧指令値v
u*の最新値v
u2*と最新値v
u2*の1つ前の値v
u1*を用いて、電気角変化量積算値Δθ
re_addが予め設定した電気角変化量積算値Δθ
re_Sに到達した時のU相の出力電圧指令値(=U相の電圧指令補間値)X
u*を式(5)で算出する。
【0048】
【数5】
同様に、補間演算部610は、式(4)で算出した時間差Δtと、V相の出力電圧指令値v
u*の最新値v
u2*と最新値v
u2*の1つ前の値v
u1*を用いて、電気角変化量積算値Δθ
re_addが予め設定した電気角変化量積算値Δθ
re_Sに到達した時のV相の出力電圧指令値(=V相の出力電圧指令補間値)X
u*を式(6)で算出する。
【0050】
補間演算部610は、算出したU相とV相の出力電圧指令補間値X
u*、X
v*をメモリ611に入力する。そして、補間演算部610は、予め設定した電気角変化量積算値Δθ
re_Sに所定値θ
re_Sを加え、予め設定した電気角変化量積算値Δθ
re_Sの値を更新する。補間演算部610は、予め設定した電気角変化量積算値Δθ
re_Sが、電気角変化量積算値Δθ
re_addの最新値Δθ
re_add2と最新値Δθ
re_add2の1つ前の値Δθ
re_add1との範囲内に存在する場合のみ、上述した演算を逐次処理する。
【0051】
なお、本実施形態では、上述したように搬送波のピーク(P
A、P
B)時の回転子320の電気角θ
reと、U相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*を用いて、U相とV相の出力電圧指令補間値X
u*、X
v*を算出するように説明したが、回転子320の電気角θ
reと、U相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*は、搬送波のピーク(P
A、P
B)時とボトム(B
A、B
B)時の両方の値を用いることもでき、ボトム(B
A、B
B)時のみの値も用いることができる。
【0052】
メモリ611は、回転子320の電気角θ
reの1周期分のU相とV相の出力電圧指令補間値X
u*(0)〜X
u*(11)、X
v*(0)〜X
v*(11)を記憶している。メモリ611は、補間演算部610から入力されたU相とV相の出力電圧指令補間値X
u*、X
v*を、メモリ611に記憶していた最古の出力電圧指令補間値に上書きする。このように、補間演算部610から入力されたU相とV相の最新の出力電圧指令補間値X
u*、X
v*を、メモリ611に記憶していた最古の出力電圧指令補間値に上書きすることで、回転子320の電気角θ
reの1周期分の最新のU相とV相の出力電圧指令補間値X
u*(0)〜X
u*(11)、X
v*(0)〜X
v*(11)をメモリ611に記憶させておくことができる。
【0053】
本実施形態では、予め設定した電気角変化量積算値Δθ
re_Sを更新するために加える所定値θ
re_Sをπ/6としているため、メモリに記憶させておくU相の出力電圧指令補間値は、X
u*(0)〜X
u*(11)の12個(=2π/(π/6))となる。V相についても同様に、X
v*(0)〜X
v*(11)の12個(=2π/(π/6))となる。なお、本実施形態では、U相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*のオフセット量v
uo*、v
vo*の抽出精度とメモリ611に記憶するデータ量のバランスを考慮して、所定値θ
re_Sをπ/6に設定しているが、所定値θ
re_Sは、0より大きくπ以下の範囲で、2πが割り切れるような値である。
【0054】
以上
図11を参照して説明したように、本発明によるインバータ制御装置では、必要なタイミング(Δθ
re_S)での出力電圧指令値である出力電圧指令補間値を、内挿計算による補間演算を補間演算部610で行っている。これにより、搬送波の周波数と、出力電圧指令値あるいは3相電流の周波数が同期しない非同期PWM制御の場合であっても、必要なタイミングで出力電圧指令値を算出することができる。
【0055】
直流演算部612は、メモリ611に記憶しておいたU相の出力電圧指令補間値X
u*(0)〜X
u*(11)を入力し、入力したU相の出力電圧指令補間値X
u*(0)〜X
u*(11)を式(7)に代入し、式(7)を周波数ゼロすなわちK=0で展開し、U相の出力電圧指令値v
u*の直流量v
udc*を算出し、算出したU相の出力電圧指令値v
u*の直流量v
udc*をローパスフィルタ613に入力する。
【0056】
同様に、直流演算部612は、メモリ611に記憶しておいたV相の出力電圧指令補間値X
v*(0)〜X
v*(11)を入力し、入力したV相の出力電圧指令補間値X
v*(0)〜X
v*(11)を式(8)に代入し、式(8)を周波数ゼロすなわちK=0で展開し、V相の出力電圧指令値v
v*の直流量v
vdc*を算出し、算出したV相の出力電圧指令値v
v*の直流量v
vdc*をローパスフィルタ613に入力する。
【0058】
【数8】
ここで、式(7)と式(8)は離散フーリエ変換であり、式(7)と式(8)内のKは周波数の次数であり、NはU相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*の基本波の分割数すなわち2πを所定値θ
re_Sで割った値である。
【0059】
ローパスフィルタ613のカットオフ周波数は、電流指令値i
d*やi
q*の変化の周波数、すなわち出力電圧指令値v
u*やv
v*の変化の周波数より低い周波数に設定されており、入力されたU相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*の直流量v
udc*、v
vdc*のカットオフ周波数以上の周波数成分を減衰させ、U相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*のオフセット量v
uo*、v
vo*を生成する。ローパスフィルタ613は、生成したU相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*のオフセット量v
uo*、v
vo*を補正演算部601に入力する。
【0060】
電流センサ180のオフセット誤差は、温度変化の影響で変化するが、電流センサ180のオフセット誤差の変化は、周波数的に電流指令値i
d*、i
q*や、出力電圧指令値v
u*やv
v*の変化の周波数よりはるかに低い(時間的に遅い)ため、電流センサ180のオフセット誤差に起因して発生するU相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*のオフセット量v
uo*、v
vo*の変化は、ローパスフィルタ613によって減衰されることはない。さらに言えば、ローパスフィルタ613のカットオフ周波数は、電流センサ180のオフセット誤差に起因して発生するU相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*のオフセット量v
uo*、v
vo*の変化を減衰させないように設定する。
【0061】
なお、ローパスフィルタ613の演算周期は、回転子320の電気角θ
reの周期よりも短く設定しているため、インバータ出力周波数の1周期内にU相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*のオフセット量v
uo*、v
vo*を算出することができる。ローパスフィルタ613は、回転子320の電気角θ
reの周期よりも短い周期で上述した演算を逐次処理する。
【0062】
また、以上に説明した本実施形態では、ローパスフィルタ613をディジタルフィルタで構成しているが、デジタルフィルタの代わりにアナログフィルタを用いることも可能である。ただし、この場合は、
図9の直流量演算部612の後に、DAコンバータを追加する。
【0063】
図12は、U相の出力電圧指令値v
u*と直流演算部612で算出したU相の直流量v
udc*とローパスフィルタ613で生成したU相のオフセット量v
uo*を示す図である。
図12において、U相出力電圧指令値v
u*のオフセットは一定であるが、直流演算部612で算出したU相出力電圧指令値v
u*の直流量v
udc*は、モータの加速期間で脈動する。これは、回転子320の電気角θ
reの1周期内において、U相出力電圧指令値v
u*の振幅が過渡的に変化しているためである。
【0064】
一方、ローパスフィルタ613で生成したU相出力電圧指令値v
u*のオフセット量v
uo*は、モータの加速期間においてもほぼ一定の値を抽出できており、高精度にU相出力電圧指令値v
u*のオフセット量v
uo*を算出することができている。また、V相出力電圧指令値v
v*のオフセット量v
vo*についても、U相と同様に、高精度に算出することができる(不図示)。さらに、モータの減速期間においても、モータの加速期間と同様に、U相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*のオフセット量v
uo*、v
vo*を高精度に算出することができる(不図示)。すなわち、本実施形態では、モータの加減速時においても、高精度にU相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*のオフセット量v
uo*、v
vo*を高精度に算出することができる。
【0065】
次に、補正器600内の補正演算部601の動作、すなわち出力電圧指令値のオフセット誤差の補正演算方法について説明する。
【0066】
まず、従来技術について簡単に説明する。
電流センサ180がオフセット誤差を持つ場合、インバータ140の出力電流を検出する電流センサ180の検出信号i
us、i
vsおよびこれを電流値に変換して得られた検出電流i
ud、i
vdはそれぞれオフセット誤差を含んでいる。このオフセット誤差を含む検出電流に基づいて電流制御部603は出力電圧指令値v
u*、v
v*、v
w*を算出してインバータ140の出力電流を制御する。
オフセット誤差の補正を行わずこのような制御サイクルを実行すると、インバータ140の出力電圧指令値v
u*、v
v*、v
w*は、電流センサ180のオフセット誤差に対応したオフセット量v
uo*、v
vo*、v
wo*を持った値となる。すなわちインバータ140の実際の出力電流は、このオフセット量に対応したオフセット電流を含んだものとなるが、この出力電流の電流センサ180による検出信号i
us、i
vsでは見掛け上オフセットが無いような検出信号となる。
【0067】
特開2010−284017号公報で開示されているオフセット量の補正方法では、電気角1周期分のモータ電流を平均してオフセット量を算出するので、電気角の周期より速く制御することは難しい。また、
図12で説明したように、電気角1周期内で出力電圧指令値が過渡的に変化した場合にも算出されるオフセット量が変動する。
【0068】
本発明では、上記で説明したように、このオフセット量を電気角1周期以内で安定して算出することができ、これに基づいてU相とV相の電流センサ180のオフセット誤差を補正するので、電気角1周期以内でモータのオフセット電流を確実に低減することができる。
【0069】
補正演算部601は、入力されたU相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*のオフセット量v
uo*、v
vo*を用いて、U相とV相の電流センサ180のオフセット誤差の補正量Δi
u_add、Δi
v_addを算出し、算出した補正量Δi
u_add、Δi
v_addをU相とV相の検出電流i
ud、i
vdに加算することにより、U相とV相の電流センサ180のオフセット誤差を補正する。
【0070】
図13は、本発明による第1の実施形態のインバータ制御装置における補正演算部601の演算処理を説明するための図である。
【0071】
補正演算部601は、U相の出力電圧指令値v
u*のオフセット量v
uo*が0より大きいか否かを判定する。U相の出力電圧指令値v
u*のオフセット量v
uo*が0より大きい場合には、補正演算部601は、正の所定の補正刻み量Δi
uを積算しながら上記補正量Δi
u_addを算出する処理を繰り返し、オフセット量v
uo*と0との差が所定の値以下となるようにして、U相の電流センサ180のオフセット誤差の補正量Δi
u_addを算出する。
【0072】
U相の出力電圧指令値v
u*のオフセット量v
uo*が0より小さい場合には、補正演算部601は、負の所定の補正刻み量Δi
uを積算しながら上記補正量Δi
u_addを算出する処理を繰り返し、オフセット量v
uo*と0との差が所定の値以下となるようにして、U相の電流センサ180のオフセット誤差の補正量Δi
u_addを算出する。V相の電流センサ180のオフセット誤差の補正量Δi
v_addについても、U相の電流センサ180のオフセット誤差の補正量Δi
u_addを算出する方法と同じ方法で算出することができる。
【0073】
補正演算部601は、算出したU相とV相の電流センサ180のオフセット誤差の補正量Δi
u_add、Δi
v_addを、それぞれU相とV相の検出電流i
ud、i
vdに加算し、U相とV相の電流センサ180のオフセット誤差を補正して補正電流i
uc、i
ucを生成する。補正演算部601は、生成したU相とV相の補正電流i
uc、i
vcを式(1)に代入し、W相の補正電流i
vcを算出する。そして、補正演算部601は、各相(U相〜W相)の補正電流i
uc、i
vc、i
vcを電流制御部603に入力する。
【0074】
本実施形態では、U相とV相の補正電流i
uc、i
vcを算出する方法として、U相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*のオフセット量v
uo*、v
vo*が0より大きい場合には、正の所定の補正刻み量Δi
u、Δi
vを積算し、U相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*のオフセット量v
uo*、v
vo*が0より小さい場合には、負の所定の補正刻み量Δi
u、Δi
vを積算してU相とV相の電流センサ180のオフセット誤差の補正量Δi
u_add、Δi
v_addを算出し、算出した補正量Δi
u_add、Δi
v_addを検出電流i
ud、i
vdに加算する方法で説明した。しかしながら、U相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*のオフセット量v
uo*、v
vo*が0より大きい場合に、負の所定の補正刻み量Δi
u、Δi
vを積算し、U相とV相の出力電圧指令値v
u*、v
v*のオフセット量v
uo*、v
vo*が0より小さい場合には、正の所定の補正刻み量Δi
u、Δi
vを積算してU相とV相の電流センサ180のオフセット誤差の補正量Δi
u_add、Δi
v_addを算出し、算出した補正量Δi
u_add、Δi
v_addを検出電流i
ud、i
vdから減算する方法でもよい。
【0075】
以上説明したように、補正演算部601は、回転子320の電気角θ
reの周期よりも短い周期で上述した演算を逐次処理する。このように、回転子320の電気角θ
reの周期よりも短い周期でU相とV相の電流センサのオフセット誤差を補正できるので、インバータ出力周波数の1周期内に加減速等の変動があってもモータのオフセット電流を確実に低減することができる。
【0076】
(第2の実施形態)
図14は、本発明による第2の実施形態のインバータ制御装置を備えた車両の電動駆動システムの概略図である。
上述した第1の実施形態は、電流センサ180で検出したU相とV相の検出電流i
ud、i
vdを補正することにより、モータのオフセット電流を低減する方式であるが、第2の実施形態は、各相の出力電圧指令値v
u*、v
v*、v
w*を補正して、モータのオフセット電流を低減する方式である。第2の実施形態では、制御器172以外の構成は、上述した第1の実施形態と同じであるので、第2の実施形態では、制御器172の構成と演算内容について説明する。
【0077】
なお、第2の実施形態でも第1の実施形態と同様に、U相とV相に電流センサ180を配置した回路図で説明するが、U相とW相に電流センサ180を配置してもよく(
図15参照)、V相とW相に電流センサ180を配置してもよく(
図16参照)、3相(U相、V相、W相)全てに電流センサ180を配置しても良い(
図17参照)。
【0078】
本実施形態(第2の実施形態)の制御器172は、電流検出部605、電流演算部614、角度演算部602、電流指令演算部607、補正器600、電流制御部603、PWM演算部604を備えており、上位の制御装置である車両制御装置(不図示)から通信用コネクタ21を介して受信したモータトルク指令T
m*と電流センサ180の検出信号i
us、i
vsと回転センサ306の検出信号R
sigに基づき、インバータ140の各スイッチング素子Q
up〜Q
wnをON/OFFするスイッチング指令v
Gup*〜v
Gwn*を生成し、各相の固定子巻線312U〜312W(不図示)に印加する交流電圧を制御するものである。
【0079】
電流検出部605は、A/D変換器を介して、電流センサ180の検出信号i
us、i
vsを検出電流i
ud、i
vdに変換し、変換したU相とV相の検出電流i
ud、i
vdを電流演算部614に入力する。電流演算部614は、入力されたU相とV相の検出電流i
ud、i
vdを用いてW相の検出電流i
wdを算出し、算出した各相(U相〜W相)の検出電流i
ud〜i
wdを電流制御部603に入力する。
なお、W相の検出電流i
wdは、上述した式(1)を用いて算出する。
【0080】
角度演算部602は、モータ305内に内蔵されている回転センサ(
図1参照)の検出信号R
sigを回転子(
図1参照)の電気角θ
reに変換し、変換した回転子の電気角θ
reを電流制御部603と補正器600に入力する。電流指令演算部607は、モータトルク指令T
m*に対応したd軸電流指令値i
d*とq軸電流指令値i
q*を算出し、算出したd軸電流指令値i
d*とq軸電流指令値i
q*を電流制御部603に入力する。
【0081】
電流制御部603は、入力された回転子の電気角θ
reを用いて、各相(U相〜W相)の検出電流i
ud〜i
wdを3相交流/dq軸変換し、d軸とq軸の検出電流i
dd、i
qdを生成し、生成したd軸とq軸の検出電流i
dd、i
qdが、d軸とq軸の電流指令値i
d*、i
q*とそれぞれ一致するように、比例積分制御などによりd軸とq軸の電圧指令値v
d*、v
q*を算出する。電流制御部603は、算出したd軸とq軸の電圧指令値v
d*、v
q*を、回転子の電気角θ
reを用いて、dq軸/3相交流変換し、各相出力電圧指令値v
u*〜v
w*を生成し、生成した各相(U相〜W相)の出力電圧指令値v
u*〜v
w*を補正器600に入力する。
なお、3相交流/dq軸変換は上述した式(2)を用いて演算し、dq軸/3相交流変換は上述した式(3)を用いて演算する。
【0082】
補正器600は、角度演算部602で算出した回転子の電気角θ
reと電流制御部603で算出したインバータ140の各相(U相〜W相)の出力電圧指令値v
u*〜v
w*を用いて、各相(U相〜W相)の出力電圧指令値v
u*〜v
w*のオフセット量を補正するものであり、オフセット量演算部606と補正演算部601を備えいる。
【0083】
オフセット量演算部606は、入力された回転子の電気角θ
reと各相(U相〜W相)の出力電圧指令値v
u*〜v
w*を用いて、各相の出力電圧指令値v
u*〜v
w*のオフセット量v
uo*〜v
wo*を算出し、補正演算部601へ入力する。なお、各相の出力電圧指令値v
u*〜v
w*のオフセット量v
uo*〜v
wo*は、
図9から
図12を用いて上述した方法と同様の方法で算出することができる。
【0084】
補正演算部601では、入力された各相の出力電圧指令値v
u*〜v
w*から各相の出力電圧指令値v
u*〜v
w*のオフセット量v
uo*〜v
wo*を減算する繰り返し計算を行い、各相の出力電圧指令値v
u*〜v
w*のオフセットを低減させて各相の出力電圧指令補正値v
uc*〜v
wc*を算出し、算出した各相の出力電圧指令補正値v
uc*〜v
wc*をPWM演算部604に入力する。
なお、本実施形態で、上述した各演算部の演算周期は、モータ305内に内蔵されている回転子の電気角θ
reの周期よりも短く設定している。
【0085】
PWM演算部604は、入力された各相(U相〜W相)の出力電圧指令補正値v
uc*〜v
wc*と搬送波(キャリア)を比較して、インバータ140の各スイッチング素子Q
up〜Q
wnのスイッチング指令v
Gup*〜v
Gwn*を算出し、ドライバ回路174に入力する。
【0086】
このように、モータ305に内蔵されている回転子の電気角θ
reの周期よりも短い周期で、電流センサ180のオフセット誤差に起因して生じる各相の出力電圧指令値v
u*〜v
w*のオフセット量v
uo*〜v
wo*を補正できるので、インバータ出力周波数の1周期内にモータのオフセット電流を低減することができる。
【0087】
以上で説明したように、本発明によるインバータ制御装置では、従来技術のように3相交流の検出電流からオフセット量を算出せず、出力電圧指令値からオフセット量を算出している。算出されたオフセット量を用いて補正電流を算出(第1の実施形態)するか、あるいは出力電圧指令補正値を算出(第2の実施形態)するので、従来技術のように、検出されたオフセット量がこのオフセット量の補正のために見掛け上キャンセルされることがない。したがって、本発明により、検出されたオフセット量で確実に3相交流のオフセット量の補正が可能となる。
【0088】
また、本発明によるインバータ制御装置では、さらに、オフセット量を算出し、補正を行うタイミングに合わせて、出力電圧指令値である出力電圧指令補間値を求めているため、同期PWM制御だけでなく、非同期PWMにも本発明によるインバータ制御装置および制御方法を適用することができる。
本発明によるインバータ制御装置では、電気角1周期分の出力電圧指令補間値をメモリの蓄積した後は、インバータの搬送波の周期毎あるいはインバータ出力周波数以下で逐次的に補正計算を行うので、同期PWM制御や非同期PWM制御にかかわらず、モータの加減速時においても、高い応答性でモータのオフセット電流を低減することが可能となる。
【0089】
以上の説明は本発明の実施形態および変形実施の例であり、本発明はこれらの実施形態や変形実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の特徴を損なわずに様々な変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0090】
8…電力変換装置の蓋、8a…蓋8に形成された開口、10…ハウジング、10c…隔壁、10d…隔壁10cに形成されたスリット状の開口、12…流路形成体、
13…冷却媒体の入口配管、14…冷却媒体の出口配管、16…ギアボックス、
17…駆動シャフト、18…車両の駆動輪、20…制御回路基板、21…通信用コネクタ、22…ドライバ回路基板、
136…バッテリ、137…直流インターフェイス、138…直流コネクタ、
138a…直流配線、140…インバータ、150…上下アームの直列回路、
172…制御器、174…ドライバ回路、180…電流センサ、
185…交流インターフェイス、187…交流コネクタ、187a…交流配線、
200…電力変換装置、
300…パワーモジュール、300U…U相のパワーモジュール、
300V…V相のパワーモジュール、300W…W相のパワーモジュール、
305…交流回転電機(モータ)、306…回転センサ、310…固定子、311…固定子鉄心、
311T…固定子鉄心の単一ティース、312…固定子巻線、312U…固定子U相巻線、
312V…固定子V相巻線、312W…固定子W相巻線、320…回転子、
321…回転子鉄心、322S…S極の永久磁石、322N…N極の永久磁石、
322…永久磁石、350…軸受、360…回転軸、370…モータハウジング
402a…流路上面の開口部、402b…流路上面の開口部、
402c…流路上面の開口部、405…電子部品を収納するための収納空間、
420…下カバー、500…コンデンサモジュール、
504…コンデンサモジュールの負極側のコンデンサ端子、
506…コンデンサモジュールの正極側のコンデンサ端子、
508…コンデンサモジュールの負極側の電源端子、
509…コンデンサモジュールの正極側の電源端子、
600…補正器、601…補正演算部、602…角度演算部、603…電流制御部、
604…PWM演算部、605…電流検出部、606…オフセット量演算部、
607…電流指令演算部、608…角度変化量演算部、609…角度変化量積算部、
610…補間演算部、611…メモリ、612…直流量演算部、
613…ローパスフィルタ、614…電流演算部
802…交流バスバー、802U…U相の交流バスバー、802V…V相の交流バスバー、
802W…W相の交流バスバー、800…バスバーアッセンブリ、
807a…バスバーアッセンブリ800に設けられた支持部材
Q
up、Q
un、Q
vp、Q
vn、Q
wp、Q
wn…スイッチング素子、
D
up、D
un、D
vp、D
vn、D
wp、D
wn…ダイオード、
T
m…モータトルク、T
m*…トルク指令、T
s…駆動トルク、
i
us、i
vs、i
ws…電流センサの出力信号、i
ud、i
vd、i
wd…検出電流、
i
uc、i
vc、i
wc…補正電流、
i
d*、i
q*…d軸とq軸の電流指令値、Δi
u_add、Δi
v_add…オフセット誤差の補正量、
Δi
u、Δi
v…所定の補正刻み量、
R
sig…回転センサの検出信号、θ
re…回転子の電気角、Δθ
re…回転子の電気角変化量、
Δθ
re_add…回転子の電気角変化量積算値、
Δθ
re_S…予め設定した回転子の電気角変化量積算値
θ
re_S…予め設定した回転子の電気角変化量積算値を更新するために加える所定値
v
u*、v
v*、v
w*…出力電圧指令値、v
udc*、v
vdc*…出力電圧指令値の直流量、
v
uc*、v
vc*、v
wc*…出力電圧指令補正値、
v
uo*、v
vo*、v
wo*…出力電圧指令値のオフセット量、
v
Gup*、v
Gun*、v
Gvp*、v
Gvn*、v
Gwp*、v
Gwn*…スイッチング指令、
v
Gup、v
Gun、v
Gvp、v
Gvn、v
Gwp、v
Gwn…ゲート信号、
X
u*、X
v*…出力電圧指令補間値、
X
u*(0)〜X
u*(11)、X
v*(0)〜X
v*(11)…出力電圧指令補間値の12個の最新値
P…搬送波(キャリア)のピーク、B…搬送波(キャリア)のボトム、
T…搬送波(キャリア)の1周期、
Δt…回転子の電気角変化量積算値の最新値の1つ前の値と予め設定した回転子の電気角変化量積算値との時間差