特許第5993732号(P5993732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993732
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】鋸刃
(51)【国際特許分類】
   B23D 61/12 20060101AFI20160901BHJP
   B23D 55/00 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   B23D61/12 B
   B23D55/00 Z
【請求項の数】23
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-267310(P2012-267310)
(22)【出願日】2012年12月6日
(65)【公開番号】特開2013-139078(P2013-139078A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2012年12月6日
【審判番号】不服2015-8309(P2015-8309/J1)
【審判請求日】2015年5月7日
(31)【優先権主張番号】13/313102
(32)【優先日】2011年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505333849
【氏名又は名称】アーウィン インダストリアル トゥール カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーク ティ クラナ
【合議体】
【審判長】 久保 克彦
【審判官】 栗田 雅弘
【審判官】 刈間 宏信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−9634(JP,A)
【文献】 特開2006−102851(JP,A)
【文献】 特開昭64−11708(JP,A)
【文献】 特開2004−195608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D61/12
B23D55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の歯が形成された切削縁部を備える金属切削用の鋸刃であって、
前記複数の歯はそれぞれ、歯先と、前記歯先の一方の側に位置する逃げ面と、前記逃げ面に対して前記歯先の反対側に位置し、少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する平面に対して正のすくい角を形成するすくい面と、刃溝と、前記すくい面と前記刃溝との間に形成され、前記すくい面に対して外側に隆起する隆起部であって、前記すくい面と前記刃溝を接続する平坦な接続面を有する隆起部とを備え、
前記接続面は、少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する前記平面に対して鋭角にて傾斜しており、
前記接続面と前記刃溝が接続する部分において歯の輪郭が凸に形成され、
前記接続面は、前記すくい面に隣接する内側端部と、前記刃溝に隣接する外側端部とを有し、
前記内側端部は、前記歯先から下方に少なくとも25/1000インチ(0.635mm)の深さに位置し、
少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する前記平面に対して平行な方向における、前記接続面の前記内側端部と前記外側端部との間の距離は、65/1000インチ(1.651mm)未満であり、
前記接続面が、少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する前記平面に対して64°から79°の範囲内の鋭角にて傾斜し、
前記刃溝の入口面が前記外側端部から、前記平面に対して垂直の方向に延びている、
ことを特徴とする鋸刃。
【請求項2】
請求項1に記載の鋸刃であって、前記接続面が、少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する前記平面に対して66°から70°の範囲内の鋭角にて傾斜していることを特徴とする鋸刃。
【請求項3】
請求項1に記載の鋸刃であって、前記接続面の前記内側端部が、前記歯先から下方に25/1000インチ(0.635mm)ら65/1000インチ(1.651mm)の範囲内の深さに位置することを特徴とする鋸刃。
【請求項4】
請求項1に記載の鋸刃であって、前記接続面の前記内側端部が、前記歯先から下方に30/1000インチ(0.762mm)ら55/1000インチ(1.397mm)の範囲内の深さに位置することを特徴とする鋸刃。
【請求項5】
請求項に記載の鋸刃であって、前記正のすくい角が10°から17°の範囲内であることを特徴とする鋸刃。
【請求項6】
請求項に記載の鋸刃であって、前記正のすくい角が12°から16°の範囲内であることを特徴とする鋸刃。
【請求項7】
請求項1に記載の鋸刃であって、少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する前記平面に対して平行な方向における、前記接続面の前記内側端部と前記外側端部との間の前記距離が、少なくとも5/1000インチ(0.127mm)であることを特徴とする鋸刃。
【請求項8】
請求項に記載の鋸刃であって、少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する前記平面に対して平行な方向における、前記接続面の前記内側端部と前記外側端部との間の前記距離が、少なくとも15/1000インチ(0.381mm)であることを特徴とする鋸刃。
【請求項9】
請求項に記載の鋸刃であって、少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する前記平面に対して平行な方向における、前記接続面の前記内側端部と前記外側端部との間の前記距離が、5/1000インチ(0.127mm)ら25/1000インチ(0.635mm)の範囲内であることを特徴とする鋸刃。
【請求項10】
請求項に記載の鋸刃であって、少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する前記平面に対して平行な方向における、前記接続面の前記内側端部と前記外側端部との間の前記距離が、8/1000インチ(0.2032mm)ら20/1000インチ(0.508mm)の範囲内であることを特徴とする鋸刃。
【請求項11】
請求項1に記載の鋸刃であって、
前記複数の歯が繰り返しの目振りパターンを形成しており、そのパターンには、先頭の非アサリ歯と、前記先頭の非アサリ歯の後続に位置し比較的軽度の目振り幅を有する少なくとも1つの軽度アサリ歯と、前記先頭の非アサリ歯の後続に位置し前記軽度アサリ歯の目振り幅に比べて比較的重度の目振り幅を有する少なくとも1つの重度アサリ歯とが含まれ、
前記重度アサリ歯は、前記先頭の非アサリ歯および前記軽度アサリ歯のうちの少なくとも一方のすくい角に比べて小さいすくい角を形成していることを特徴とする鋸刃。
【請求項12】
請求項11に記載の鋸刃であって、前記重度アサリ歯が、前記先頭の非アサリ歯および前記後続の軽度アサリ歯の両方のすくい角に比べて小さいすくい角を形成していることを特徴とする鋸刃。
【請求項13】
請求項12に記載の鋸刃であって、前記重度アサリ歯が、前記先頭の非アサリ歯のすくい角および前記後続の軽度アサリ歯のすくい角のそれぞれに比べて、少なくとも60%まで小さいすくい角を形成していることを特徴とする鋸刃。
【請求項14】
請求項13に記載の鋸刃であって、前記重度アサリ歯が、前記先頭の非アサリ歯のすくい角および前記後続の軽度アサリ歯のすくい角のそれぞれに比べて、60%から80%の範囲内まで小さいすくい角を形成していることを特徴とする鋸刃。
【請求項15】
請求項13に記載の鋸刃であって、前記繰り返しの目振りパターンには、先頭の非アサリ歯と、後続の軽度右アサリ歯と、後続の重度左アサリ歯と、後続の重度右アサリ歯と、後続の軽度左アサリ歯とが含まれることを特徴とする鋸刃。
【請求項16】
請求項15に記載の鋸刃であって、前記先頭の非アサリ歯の直後に前記後続の軽度右アサリ歯が位置し、その直後に前記後続の重度左アサリ歯が位置し、その直後に前記後続の重度右アサリ歯が位置し、その直後に前記後続の軽度左アサリ歯が位置することを特徴とする鋸刃。
【請求項17】
請求項1に記載の鋸刃であって、
前記複数の歯が繰り返しの目振りパターンを形成しており、そのパターンには、先頭の非アサリ歯と、前記先頭の非アサリ歯の後続に位置し比較的軽度の目振り幅を有する少なくとも1つの軽度アサリ歯と、前記先頭の非アサリ歯の後続に位置し前記軽度アサリ歯の目振り幅に比べて比較的重度の目振り幅を有する少なくとも1つの重度アサリ歯とが含まれ、
前記重度アサリ歯は、前記先頭の非アサリ歯の一次逃げ角および前記後続の軽度アサリ歯の一次逃げ角に比べて小さい一次逃げ角を形成していることを特徴とする鋸刃。
【請求項18】
請求項17に記載の鋸刃であって、前記重度アサリ歯の一次逃げ角が0°から8°の範囲内であることを特徴とする鋸刃。
【請求項19】
請求項17に記載の鋸刃であって、前記重度アサリ歯の一次逃げ面が、前記先頭の非アサリ歯の一次逃げ面および前記軽度アサリ歯の一次逃げ面に比べて短いことを特徴とする鋸刃。
【請求項20】
請求項19に記載の鋸刃であって、前記重度アサリ歯の一次逃げ面の長さが2/1000インチ(0.0508mm)ら6/1000インチ(0.1524mm)の範囲内であることを特徴とする鋸刃。
【請求項21】
請求項1に記載の鋸刃であって、前記鋸刃が帯鋸刃またはホールカッターであることを特徴とする鋸刃。
【請求項22】
複数の歯が形成された切削縁部を備える金属切削用の鋸刃であって、
前記複数の歯はそれぞれ、歯先と、前記歯先の一方の側に位置する逃げ面と、前記逃げ面に対して前記歯先の反対側に位置し、少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する平面に対して正のすくい角を形成するすくい面と、刃溝と、前記すくい面と前記刃溝との間にて前記すくい面に対して外側に隆起して設けられ、金属切屑に接線状に接触しカールさせ、カールした金属切屑をすくい面から引き離して前記すくい面に対して前記刃溝の反対側へ移動させる手段とを備え、
前記手段の金属切屑に接触する表面は、平坦であって、前記すくい面と前記刃溝を接続し、前記刃溝と接続する部分において、前記刃溝と共に歯の輪郭を凸に形成し、
前記手段は、少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する前記平面に対して64°から79°の範囲内の鋭角にて傾斜し、
前記手段は、前記すくい面に隣接する内側端部と、前記刃溝に隣接する外側端部とを有し、
前記刃溝の入口面が前記手段の前記外側端部から、前記平面に対して垂直の方向に延びている、
ことを特徴とする鋸刃。
【請求項23】
請求項22に記載の金属切削用の鋸刃であって、前記手段は、
(i)前記内側端部は、前記歯先から下方に少なくとも25/1000インチ(0.635mm)の深さに位置し、
(ii)少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する前記平面に対して平行な方向における、前記内側端部と前記外側端部との間の距離は、65/1000インチ(1.651mm)未満であることを特徴とする鋸刃。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋸刃に関し、特に、切削が難しい材料を切削するための、帯鋸刃やホールカッターなどの金属切削用鋸刃に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の帯鋸刃であって、特に、工具鋼、ステンレス鋼、ニッケルベースの合金、あるいは他の硬化または加工硬化材料や、比較的高い剪断応力を示す材料などの、切削が難しい材料の切削に使用される帯鋸刃における欠点の一つは、刃の寿命が望まれるほど長くないことか、刃が材料を所望どおりにまっすぐに切れないことか、その両方である。現在の帯鋸刃の設計では、2つの別個の方法を用いることで、これらの欠点を解消しようとしている。1つめのアプローチは、「切溝形成」歯の要素と「切溝非形成」歯の要素とを区別することなく、伝統的な歯または目振りの構成に極端なすくい角を適用することであった。2つめのアプローチは、すくい面に「半径」要素を組み入れて切屑を捉えることであった。これらの方法は、刃が新しくて比較的鋭利なうちは適度に有効でありうるが、重大な欠点がある。1つめの方法では、切溝形成歯のすくい面における比較的積極的な「自動送り込み」構造の採用によって、工具が早く摩耗してしまう。このアプローチでは、制御不可能かつ予測不可能な状態で歯が破断するか「欠ける」傾向がある。他方、2つめの方法では、フルに切屑と接触する半径要素によって、工具と切屑との界面領域が拡大し、それによって切削抵抗(cutting forces)が増大して、より多くの発生熱が工具に印加される結果、望まれるより早く摩耗が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7832320号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した従来技術の欠点および問題点のうちの1つまたはそれ以上を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、金属切削用の帯鋸刃または穴鋸またはホールカッターなどの鋸刃を提供する。その鋸刃は、複数の歯が形成された切削縁部を備える。複数の歯はそれぞれ、歯先と、歯先の一方の側に位置する逃げ面と、逃げ面に対して歯先の反対側に位置するすくい面と、刃溝と、すくい面と刃溝との間に形成され、すくい面に対して外側に隆起する隆起部であって、すくい面と刃溝を接続する平坦な接続面を有する隆起部とを備える。隆起部の接続面は、少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する平面に対して鋭角にて傾斜している。隆起部の接続面と刃溝が接続する部分において歯の輪郭が凸に形成される。隆起部の接続面は、すくい面に隣接する内側端部と、刃溝に隣接する外側端部とを有する。内側端部は、歯先から下方に少なくとも約25/1000インチの深さに位置する。少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する平面に対して実質的に平行な方向における、隆起部の接続面の内側端部と外側端部との間の距離は、約65/1000インチ未満である。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態では、隆起部の接続面は、少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する平面に対して、約64°から約79°の範囲内の鋭角にて傾斜しており、その範囲は好ましくは約66°から約70°である。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態では、隆起部の接続面の内側端部は、歯先から下方に約25/1000インチから約65/1000インチの範囲の深さに位置し、その範囲は好ましくは約30/1000インチから約55/1000インチである。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態では、すくい面は、正のすくい角を形成している。すくい面が、歯先間に延伸する平面に対して90°より大きい角度にて内側に傾斜している場合に、すくい面は正のすくい角を形成する。それに対し、すくい面が、歯先間に延伸する平面に対して90°の向きである場合は、すくい面は「ゼロ度」のすくい角を形成する。正のすくい角は、歯先間に延伸する平面に対して90°を超えて内側にすくい面が傾斜している度合いに基づいて特定される。たとえば91°であれば、正のすくい角は1°、92°であれば、正のすくい角は2°、などである。本発明の現在の好適な実施形態では、正のすくい角は約10°から約17°の範囲内であり、より好ましくは約12°から約16°の範囲内である。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する平面に対して実質的に平行な方向における、隆起部の接続面の内側端部と外側端部との間の距離は、少なくとも約5/1000インチであり、好ましくは少なくとも約10/1000インチであり、より好ましくは少なくとも約15/1000インチであり、さらに好ましくは少なくとも約20/1000インチである。本発明の他の実施形態では、少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する平面に対して実質的に平行な方向における、隆起部の接続面の内側端部と外側端部との間の距離は、約5/1000インチから約25/1000インチの範囲内であり、より好ましくは約8/1000インチから約20/1000インチの範囲内である。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態では、複数の歯が繰り返しの目振りパターンを形成しており、そのパターンには、先頭の非アサリ歯と、先頭の非アサリ歯の後続に位置し比較的軽度の(小さい)目振り幅を有する少なくとも1つの軽度アサリ歯と、先頭の非アサリ歯の後続に位置し軽度アサリ歯の目振り幅に比べて比較的重度の(大きい)目振り幅を有する少なくとも1つの重度アサリ歯とが含まれる。重度アサリ歯は、先頭の非アサリ歯および軽度アサリ歯のうちの少なくとも一方のすくい角に比べて小さいすくい角を形成している。このような実施形態のいくつかでは、重度アサリ歯は、先頭の非アサリ歯および後続の軽度アサリ歯の両方のすくい角に比べて小さいすくい角を形成している。このような実施形態のいくつかでは、重度アサリ歯は、先頭の非アサリ歯のすくい角および後続の軽度アサリ歯のすくい角のそれぞれに比べて、少なくとも約60%まで小さいすくい角を形成している。また、このような実施形態のいくつかでは、重度アサリ歯は、先頭の非アサリ歯のすくい角および後続の軽度アサリ歯のすくい角のそれぞれに比べて、約60%から約80%の範囲内まで小さいすくい角を形成している(すなわち、約10°から約17°の約60%から約80%であって、より好ましくは、約12°から約16°の約60%から約80%である)。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、繰り返しの目振りパターンには、先頭の非アサリ歯と、後続の軽度右アサリ歯と、後続の重度左アサリ歯と、後続の重度右アサリ歯と、後続の軽度左アサリ歯とが含まれる。このような実施形態のいくつかでは、先頭の非アサリ歯の直後に後続の軽度右アサリ歯が位置し、その直後に後続の重度左アサリ歯が位置し、その直後に後続の重度右アサリ歯が位置し、その直後に後続の軽度左アサリ歯が位置する。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態では、複数の歯が繰り返しの目振りパターンを形成しており、そのパターンには、先頭の非アサリ歯と、先頭の非アサリ歯の後続に位置し比較的軽度の(小さい)目振り幅を有する少なくとも1つの軽度アサリ歯と、先頭の非アサリ歯の後続に位置し軽度アサリ歯の目振り幅に比べて比較的重度の(大きい)目振り幅を有する少なくとも1つの重度アサリ歯とが含まれる。重度アサリ歯は、先頭の非アサリ歯の一次逃げ角および後続の軽度アサリ歯の一次逃げ角に比べて小さい一次逃げ角を形成している。このような実施形態のいくつかでは、重度アサリ歯の一次逃げ角は、約0°から約8°の範囲内である。いくつかの実施形態では、重度アサリ歯の一次逃げ面は、先頭の非アサリ歯の一次逃げ面および軽度アサリ歯の一次逃げ面に比べて短い。このような実施形態のいくつかでは、重度アサリ歯の一次逃げ面の長さは、約2/1000インチから約6/1000インチの範囲内である。
【0013】
他の態様では、本発明は、帯鋸刃またはホールカッター刃などの金属切削用鋸刃を提供する。その金属切削用鋸刃は、複数の歯が形成された切削縁部を備える。複数の歯はそれぞれ、歯先と、歯先の一方の側に位置する逃げ面と、逃げ面に対して歯先の反対側に位置するすくい面と、刃溝と、すくい面と刃溝との間にてすくい面に対して外側に隆起して設けられ、金属切屑に接線状に接触しカールさせ、カールした金属切屑をすくい面から引き離して当該すくい面に対して刃溝の反対側へ移動させる手段とを備える。この手段の金属切屑に接触する表面は、平坦であって、前記すくい面と前記刃溝を接続し、前記刃溝と接続する部分において、前記刃溝と共に歯の輪郭を凸に形成する。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、金属切屑に接触してカールさせ移動させる手段は、(i)少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する平面に対して鋭角にて傾斜しており、(ii)すくい面に隣接する内側端部と、刃溝に隣接する外側端部とを有し、(iii)内側端部は、歯先から下方に少なくとも約25/1000インチの深さに位置し、(iv)少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する平面に対して実質的に平行な方向における、内側端部と外側端部との間の距離は、約65/1000インチ未満である。本発明のいくつかの実施形態では、金属切屑に接触してカールさせ移動させる手段は、実質的に平坦または非曲線状の隆起部である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の利点の一つは、実質的に平坦すなわち非曲線状の隆起部あるいは類似の手段によって、比較的きつくカールした金属切屑を形成し、歯の前端またはすくい面から放出または移動し、刃溝の遠位側または反対側へ運ぶことが可能になる点である。発生した切屑をこのように移送することによって、利用可能な刃溝の容量を効率的に使用でき、さらに、従来技術の金属切削用鋸刃に比べて工具−切屑間の接触ゾーンが減少することに起因して、すくい面の表面に生じる熱を低減できる。本発明の現在の好適な実施形態のさらなる利点は、従来技術の鋸刃で見られるような歯先における切削抵抗の増大による悪影響なしに比較的きつくカールした金属切屑を形成しやすくする構造設計の範囲内に、実施形態の隆起部の接続面の深さ位置ならびに接続面の長さおよび傾斜角が含まれていることである。より詳細には、実質的に平坦すなわち非曲線状の隆起部の接続面が、歯先から下方に約25/1000インチから約65/1000インチの範囲内(好ましくは約30/1000インチから約55/1000インチの範囲内)の深さに位置することと、少なくとも2つの歯の歯先の間に延伸する平面に対して実質的に平行な方向における、隆起部の接続面の内側端部と外側端部との間の距離が、約5/1000インチから約25/1000インチの範囲内(より好ましくは約8/1000インチから約20/1000インチの範囲内)であることとによって、隆起部は、歯先における切削抵抗の増大による悪影響なしに、きつくカールした金属切屑を形成できるようになっている。本発明のさらなる利点は、実質的に平坦すなわち非曲線状の隆起部の接続面が、切屑に接線状に接触することで、切屑に接触する隆起部の接続面の表面積と、結果として歯にかかる切削抵抗とを減少させるが、それでもなお、比較的きつくカールした金属切屑を形成し、放出または移動して刃溝の反対側へ運ぶ点である。
【0016】
本発明の現在の好適な実施形態のいくつかにおける更なる利点は、従来技術の鋸刃との比較で、刃の寿命の向上と、よりまっすぐな切削との両方を可能にする、マルチレベルの目振り構造を採用している点である。全体的な切削抵抗の主たる要因は、非アサリ歯および軽度アサリ歯の相対切削効率であることが見出されている。したがって、本発明の現在の好適な実施形態では、それらの歯が、上述の切屑制御用の突起部と共に比較的積極的な(大きな)すくい角を有することで、抵抗が比較的低い状態で切削材料に切り込む。また、刃の比較的長い寿命と比較的まっすぐな切削との両方を達成するうえで鍵となる要素は、重度アサリ歯であることが見出されている。本発明のいくつかの実施形態では、重度アサリ歯は、より非積極的な(より小さな)すくい角を有し、好ましくは、非アサリ歯および軽度アサリ歯のすくい角の約60%から約80%の範囲のすくい角を有する。より非積極的なすくい角を有することによって歯の摩耗が比較的遅くなるか制御されることに起因して、重度アサリ歯は実質的にまっすぐな切削を維持することができるが、それでもなお上述のように、非アサリ歯および軽度アサリ歯の構成によって、比較的低い切削抵抗が維持され切屑がしっかりと制御される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態における更なる利点は、重度アサリ歯に、たとえば約0°から約8°の範囲内の逃げ角などの、非アサリ歯および軽度アサリ歯に比べて比較的浅い一次逃げ角を設け、約2/1000インチから約6/1000インチの範囲内の一次逃げ面長さを設けることによって、重度アサリ歯が、比較的安定的で「未摩耗」状態の歯の構成を有することである。その結果、重度アサリ歯は比較的均一または一定的に摩耗し、より鋭利な歯先を備える(たとえば、より積極的な(より深い)一次逃げ角や、より長い一次逃げ面を備える)鋸歯に本来的に生じうる歯の比較的無秩序な摩耗を回避するが、それでもなお上述のように、非アサリ歯および軽度アサリ歯の構成によって、比較的低い切削抵抗が維持され切屑がしっかりと制御される。
【0018】
したがって、本発明による金属切削用帯鋸刃などの鋸刃は、たとえば工具鋼、ステンレス鋼、ニッケルベースの合金、あるいは他の硬化または加工硬化材料や、比較的高い剪断応力を示す材料などの、切削が難しい材料を切削する場合において、ユーザに重要な恩恵をもたらす。本発明の鋸刃のさらなる利点は、そのような材料の切削を、従来技術の鋸刃に比べて向上した刃寿命と、よりまっすぐな切削とをもって実現可能にすることである。
【0019】
本発明や現在の好適な実施形態の他の目的および利点は、以下に記載する現在の好適な実施形態の詳細な説明および添付の図を参照することで、さらに容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を実施している帯鋸刃を示す部分側面図である。
図2図1の帯鋸刃の歯の寸法特徴を示す表である。
図3図1の帯鋸刃において2つ連続する歯の例を示す部分拡大側面図である。
図4】本発明の帯鋸刃の代替実施形態の歯の寸法特徴を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に、本発明の実施形態による、切削が難しい材料を切削するための鋸刃を、全体的に符号10で示す。図1において、鋸刃10は帯鋸刃であって、切削縁部14と背縁部16とを備え且つ長手軸「L」および横断軸「T」が定義された鋸身12から成る。切削方向(前進方向)は、矢印「a」で示す方向である。帯鋸刃10の切削縁部14には、複数の歯18,18が設けられている。図1に示すように、隣接する歯の歯先間で測定される間隔が、ピッチ「P」である。ただし、通常の技術を有する当業者が本明細書の記載に基づいて理解するように、ピッチは、隣接する各歯における他の多数の対応部分間で測定することも可能である。
【0022】
図3を参照すると、各歯18は、歯先20と、歯先の一方の側に位置する一次逃げ面22と、一次逃げ面に対して歯先の反対側に位置するすくい面24と、刃溝28と、一次逃げ面と刃溝との間に形成された二次逃げ面32と、すくい面と刃溝との間に形成された隆起部の、実質的に平坦すなわち非曲線状の接続面30とを備える。各一次逃げ面22は、連続する非アサリ歯の歯先の間に延伸する平面13または刃の長手軸Lに対して、鋭角の一次逃げ角CAを形成しており、各二次逃げ面32は、平面13に対して鋭角の二次逃げ角CA2を形成している。図示の実施形態では、各一次逃げ角は各二次逃げ角より小さい。一次逃げ角は約22°から約32°の範囲内であり、二次逃げ角は約34°から約44°の範囲内である。各刃溝28は、二次逃げ面32と略平坦な刃溝ベース部38との間に延伸する第1の刃溝半径部「R1」と、刃溝ベース部38と直線状接続面30との間に延伸する第2の刃溝半径部「R2」とを含む。
【0023】
各直線状接続面30は、すくい面24の基部に実質的につながる内側端部31と、刃溝28への入口に位置する外側端部33とを有する。直線状接続面30の内側端部31とすくい面24の基部との間に、接合半径部RPが形成されている。図示の実施形態では、接合半径RPは約5/1000インチから約15/1000インチの範囲内である。以下で説明するようにすくい角が正であることと、半径RPが極小であることに起因して、通常は接合半径部RPには、すくい面から流れ落ちてくる切屑は接触しない。むしろ切屑は、以下で説明するように、接続面30の実質的に平坦すなわち非曲線状の表面に接線状に接触する。図示のとおり直線状接続面30は、連続する非アサリ歯の歯先間に延伸する平面13に対して鋭角「PA」にて傾斜する実質的に平坦または非曲線状の表面を、自身の内側端部31と外側端部33との間に有する。本発明の図示の実施形態では、鋭角「PA」は約64°から約79°の範囲内であり、好ましくは約66°から約70°の範囲内である。
【0024】
接続面30は、内側端部31と外側端部33との間で、平面13に平行な方向に沿って前方に距離「P1」にて突出している。本発明の図示の実施形態では、P1は約5/1000インチから約25/1000インチの範囲内であり、より好ましくは約8/1000インチから約20/1000インチの範囲内である。したがってP1は、少なくとも約5/1000インチであり、好ましくは少なくとも約10/1000インチから約15/1000インチである。図3に示すように各歯は、直線状接続面30の外側端部33に隣接して(好ましくはつなげて)形成された、実質的に平坦な刃溝入口面35を有する。図示のとおり、平坦な刃溝入口面35は、連続する非アサリ歯の歯先間に延伸する平面13に対して略垂直である。第2の刃溝半径部「R2」が、刃溝入口面35の外側端部と平坦な刃溝ベース面38の内側端部との間に延伸する。
【0025】
図3に最もはっきり図示するように、各すくい面24は、正のすくい角「RA」を形成している。すくい面が、連続する歯の歯先間に延伸する平面に対して90°より大きい角度にて内側に傾斜している場合に、すくい面は正のすくい角を形成する。すくい面が、歯先間に延伸する平面に対して90°の向きである場合は、すくい面は「ゼロ度」のすくい角を形成する。正のすくい角は、歯先間に延伸する平面に対して90°を超えて内側にすくい面が傾斜している度合いに基づいて特定される。たとえば91°であれば、正のすくい角は1°、92°であれば、正のすくい角は2°、などである。図示の実施形態では、各正すくい角RAは約10°から約17°の範囲内であり、好ましくは約12°から約16°の範囲内である。
【0026】
実質的に平坦すなわち非曲線状の接続面30によって、比較的きつくカールした切屑を形成し、各歯18のすくい面24から引き離して各刃溝28の遠位側または反対側へ放出することができる。切屑をこのように移送することにより、利用可能な刃溝の容量をより効率的に使用できる。上述した数値範囲(特にD1、PA、およびP1に関する数値範囲)は、歯先における切削抵抗の増大による悪影響なしに上述のきつくカールした切屑を形成しやすくする構造設計の範囲を画定するものである。また、接続面30によって、鋸刃表面における切屑の接触ゾーンを減少でき、その結果、すくい面の表面に生じる熱を低減できる。直線状接続面30が実質的に平坦すなわち非曲線状であること、ならびに、その傾斜角、長さ、および正すくい面の基部と刃溝入口との間の位置に起因して、接続面30は切屑に接線状に接触し、それによって、切屑に接触する隆起部の接続面の表面積と、結果として歯にかかる切削抵抗とを減少させるが、それでもなお、比較的きつくカールした切屑を形成し、放出または移動して刃溝28の反対側へ運ぶ。
【0027】
図1および図2に示すように、帯鋸刃10には、5つの歯の繰り返しによるマルチレベルの目振りパターンが設けられている。そのパターンは、刃溝(1)を有する第1の先頭非アサリ歯(S)と、比較的軽度の右への目振り幅(R(l))で振り出され刃溝(2)を有する第2の歯と、比較的重度の左への目振り幅(L(h))で振り出され刃溝(3)を有する第3の歯と、比較的重度の右へ目振り幅(R(h))で振り出され刃溝(4)を有する第4の歯と、比較的軽度の左への目振り幅(L(l))で振り出され刃溝(5)を有する第5の歯とを含むものであり、以下に示すとおりである。
S -R(l)-L(h)-R(h)-L(l)において、
S=かき歯=アサリなし=基準歯先平面、
R(l)=右軽度アサリ=基準歯先平面、
L(h)=左重度アサリ=歯先最大下げ幅、
R(h)=右重度アサリ=歯先最大下げ幅、および
L(l)=左軽度アサリ=基準歯先平面。
【0028】
各非アサリ歯(S)の歯先20は基準歯先平面13に位置し、各軽度アサリ歯(R(l)またはL(l))の歯先20は、基準歯先平面13に位置するか平面13から比較的わずかに下がった位置にあり、各重度アサリ歯(R(h)またはL(h))の歯先20は、基準歯先平面13から最大に下がった位置にある。このマルチレベルの目振り構成を用いると、比較的深く細い切屑を形成することで切削が難しい材料を効果的に切削でき、その結果、従来技術の鋸刃に比べて、刃の寿命が向上し、よりまっすぐな切削が可能になる。
【0029】
図2の表では、5つの歯の繰り返しパターンにおける各歯を刃溝番号(「刃溝#」)で特定するとともに、それぞれのピッチ、二次逃げ角(CA2)、第1の刃溝半径R1、刃溝平坦部38の長さ、第2の刃溝半径R2、ならびに、すくい面24の基部および直線状接続面30の内側端部31の深さD1の例示的な寸法を記載する。当業者が本明細書の記載に基づいて理解するように、これらの寸法は一例であって、現在既知または後に知られる多くの他の寸法を採用することができる。
【0030】
全体的な切削抵抗の主たる要因は、非アサリ歯(たとえばS)および軽度アサリ歯(たとえばR(l)およびL(l))の相対切削効率であることが見出されている。したがって、図1から図3に関する上記説明で示したとおり、それらの歯は、上述の切屑制御用の突起部30と共に、比較的積極的な(大きな)すくい角RA(すなわち、約10°から約17°の範囲内で、好ましくは約12°から約16°の範囲内のすくい角)を有することで、抵抗が比較的低い状態で切削材料に切り込む。また、刃の比較的長い寿命と比較的まっすぐな切削との両方を達成するうえで鍵となる要素は、重度アサリ歯(R(h)およびL(h))であることが見出されている。したがって、本発明の他の実施形態では、重度アサリ歯(R(h)およびL(h))は、より非積極的な(より小さな)すくい角RAを有し、好ましくは、非アサリ歯(S)および軽度アサリ歯(R(l)およびL(l))のすくい角RA(すなわち、重度アサリ歯より小さい目振り幅を有する歯のすくい角)の約60%から約80%の範囲内のすくい角を有する。この代替実施形態では、重度アサリ歯(R(h)およびL(h))のすくい角は、約6°から約14°の範囲内であり、より好ましくは約7°から約13°の範囲内である。重度アサリ歯(R(h)およびL(h))が比較的より非積極的なすくい角RAを有することによって歯の摩耗が比較的遅くなるか制御されることに起因して、重度アサリ歯は実質的にまっすぐな切削を維持することができるが、それでもなお上述のように、非アサリ歯Sおよび軽度アサリ歯R(l),L(l)の構成によって、比較的低い切削抵抗が維持され切屑がしっかりと制御される。
【0031】
図4の表では、別の実施形態における5つの歯の繰り返しパターンの各歯を刃溝番号(「刃溝#」)で特定するとともに、それぞれのピッチ、すくい角RA、一次逃げ角CA、二次逃げ角CA2、第1の刃溝半径R1、刃溝平坦部38の長さ、および第2の刃溝半径R2の例示的な寸法を記載する。刃溝「3」および「4」はそれぞれ、左重度アサリ歯および右重度アサリ歯であり、表からわかるように、非アサリ歯(S)および軽度アサリ歯(R(l)およびL(l))の比較的積極的なすくい角RA(すなわち約16°)に比べて、実質的により非積極的な約10°のすくい角RAを有する。当業者が本明細書の記載に基づいて理解するように、これらの寸法は一例であって、現在既知または後に知られる多くの他の寸法を採用することができる。
【0032】
本発明の別の具体例の帯鋸刃には、以下のような、7つの歯の繰り返しによる2段目振りパターンが設けられている。
S -R(h)-L(h)-R(l)-L(l)-R(h)-L(h)において、
S=かき歯=アサリなし=基準歯先平面、
R(h)=右重度アサリ=歯先最大下げ幅、
L(h)=左重度アサリ=歯先最大下げ幅、
R(l)=右軽度アサリ=基準歯先平面、
L(l)=左軽度アサリ=基準歯先平面、
R(h)=右重度アサリ=歯先最大下げ幅、および
L(h)=左重度アサリ=歯先最大下げ幅。
【0033】
上述の説明に倣い、Sは先頭の非アサリ歯であり、R(h)は比較的重度の目振り幅で右に振り出された第2の歯であり、L(h)は比較的重度の目振り幅で左に振り出された第3の歯であり、R(l)は比較的軽度の目振り幅で右に振り出された第4の歯であり、L(l)は比較的軽度の目振り幅で左に振り出された第5の歯であり、R(h)は比較的重度の目振り幅で右に振り出された第6の歯であり、L(h)は比較的重度の目振り幅で左に振り出された第7の歯である。上述のとおり、非アサリ歯(S)および軽度アサリ歯(R(l)およびL(l))は、比較的積極的なすくい角RA(すなわち、約10°から約17°の範囲内で、好ましくは約12°から約16°の範囲内のすくい角)を有する一方、重度アサリ歯(R(h)およびL(h))は、より非積極的なすくい角RAを有し、それは好ましくは、非アサリ歯(S)および軽度アサリ歯(R(l)およびL(l))のすくい角RAの約60%から約80%の範囲内である。
【0034】
本発明のさらに別の具体例の帯鋸刃には、以下に示すように、10個の歯の繰り返しピッチパターンが設けられており、そのピッチパターンには、7個-3個のマルチレベルの目振りパターンが含まれる。
S -R(l)-L(m)-R(m)-L(l)-R(h)-L(h)- S -R(h)-L(h)
S=かき歯=アサリなし=基準歯先平面、
R(l)=右軽度アサリ=基準歯先平面、
L(m)=左中度アサリ=基準歯先平面、
R(m)=右中度アサリ=基準歯先平面、
L(l)=左軽度アサリ=基準歯先平面、
R(h)=右重度アサリ=歯先最大下げ幅、
L(h)=左重度アサリ=歯先最大下げ幅、
S=かき歯=アサリなし=基準歯先平面、
R(h)=右重度アサリ=歯先最大下げ幅、および
L(h)=左重度アサリ=歯先最大下げ幅。
【0035】
S、R(l)、L(l)、R(h)、およびL(h)の各歯は、上記説明のとおりである。歯L(m)は、左軽度アサリ歯の目振り幅と左重度アサリ歯の目振り幅との間の中位の目振り幅で左に振り出されている。歯R(m)は、右軽度アサリ歯の目振り幅と右重度アサリ歯の目振り幅との間の中位の目振り幅で右に振り出されている。上述と同様に、非アサリ歯(S)、軽度アサリ歯(R(l)およびL(l))、ならびに中度アサリ歯(R(m)およびL(m))は、比較的積極的なすくい角RA(すなわち、約10°から約17°の範囲内で、好ましくは約12°から約16°の範囲内のすくい角)を有する一方、重度アサリ歯(R(h)およびL(h))は、より非積極的なすくい角RAを有し、それは好ましくは、非アサリ歯(S)、軽度アサリ歯(R(l)およびL(l))、ならびに中度アサリ歯(R(m)およびL(m))のすくい角RAの約60%から約80%の範囲内である。このピッチ/目振りパターンによって、切屑がより細かく切断されやすくなり、それによって重度アサリ歯(R(h)およびL(h))にかかる切削抵抗が減少する。
【0036】
本発明の代替実施形態では、重度アサリ歯(R(h)およびL(h))は、非アサリ歯(S)ならびに軽度アサリ歯(R(l)およびL(l))に比べて(さらに、該当する場合は中度アサリ歯(R(m)およびL(m))にも比べて)、比較的浅い一次逃げ角CAを形成している。現在の好適な実施形態では、重度アサリ歯の逃げ角CAは、約0°から約8°の範囲内である。さらに、重度アサリ歯(R(l)およびL(l))の一次逃げ面22の長さ(すなわち、歯先20から、一次逃げ面22と二次逃げ面32との接合部までの距離)は、約2/1000インチから約6/1000インチの範囲内である。このような比較的浅い逃げを重度アサリ歯に設けることで、重度アサリ歯は、安定的で「未摩耗」状態の歯の構成を有することになる。一方で、非アサリ歯および軽度アサリ歯は、図1から図3の実施形態に関連して説明した構成を有する。その結果、重度アサリ歯は比較的均一または一定的に摩耗し、より鋭利な歯先を備える(たとえば、より積極的な(より深い)一次逃げ角を備える)鋸歯に本来的に生じうる歯の無秩序な摩耗を回避するが、それでもなお、図1から図3に関連して説明した非アサリ歯および軽度アサリ歯の構成によって、比較的低い切削抵抗が維持され切屑がしっかりと制御される。
【0037】
通常の技術を有する当業者が本明細書の記載に基づいて理解するように、添付の請求項で規定される範囲から逸脱することなく、本発明の上記および他の実施形態に数々の変更や修正を加えることができる。たとえば、歯の構成において、本明細書に記載のものとは異なる数々の形状や寸法を採用することが可能である。同様に、本明細書に記載のものとは異なる数々の目振り、ピッチ、目振りパターン、またはピッチパターンを歯列に採用することができる。さらに、本発明は帯鋸刃に限定されず、たとえば穴鋸またはホールカッターに適用することもできる。またさらに、本発明の鋸刃は、バイメタル、超硬刃、もしくは他の現在既知または後に知られる鋸刃材料などの、数々の異なる材料または複合材料で構成されることができる。したがって、本明細書における実施形態の詳細な説明は、限定するためではなく、実例を示すためのものであると理解すべきである。
【符号の説明】
【0038】
10 鋸刃、13 平面、14 切削縁部、18 歯、20 歯先、22 一次逃げ面、24 すくい面、28 刃溝、30 (隆起部の)接続面、31 内側端部、32 二次逃げ面、33 外側端部、CA 一次逃げ角、CA2 二次逃げ角、RA すくい角。
図1
図2
図3
図4