(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、
図1を用いて、本発明の一実施形態に係るエンジン1について説明する。
【0018】
図1に示すように、エンジン1は、ディーゼルエンジンであり、本実施形態においては、六つの気筒A1、気筒A2、気筒A3、気筒A4、気筒A5、気筒A6を有する直列六気筒エンジンである。エンジン1は、吸気管2を介して供給される外気と、アクセルペダル6の操作に基づいて各燃料噴射弁4・4・・から供給される燃料とを気筒A1からA6の内部において混合して燃焼させることで出力軸を回転駆動させる。エンジン1は、燃料の燃焼により発生する排気を、排気管3を介して外部へ排出する。また、エンジン1は、燃料の燃焼により発生する熱をラジエータ5を介して外部へ排出する。なお、エンジン1は、ディーゼルエンジンに限定されるものではない。
【0019】
エンジン1は、エンジン1の回転速度Vを検出する回転速度センサ7、アクセルペダル6の操作量Sを検出する操作量検出センサ8、エンジン1の冷却水温度Tを検出する冷却水温度センサ9、燃料噴射弁4の燃料噴射量と燃料噴射時期とを制御するECU10を具備する。
【0020】
回転速度センサ7は、エンジン1の回転速度Vを検出するものである。回転速度センサ7は、ロータリーエンコーダから構成され、エンジン1の出力軸に設けられる。なお、本実施形態において、回転速度センサ7をロータリーエンコーダから構成しているが、回転速度Vを検出することができるものであればよい。
【0021】
操作量検出センサ8は、アクセルペダル6の操作量Sを検出するものである。操作量検出センサ8は、ストロークセンサ又は角度センサから構成され、アクセルペダル6の出力レバーに設けられる。なお、本実施形態において、操作量検出センサ8をストロークセンサ又は角度センサから構成しているが、操作量Sを検出することができればよい。
【0022】
冷却水温度センサ9は、エンジン1の冷却水温度Tを検出するものである。冷却水温度センサ9は、温度センサ等から構成され、エンジン1の冷却水の熱交換を行うラジエータ5に配置される。
【0023】
制御装置であるECU10は、エンジン1を制御するものである。ECU10には、エンジン1の制御を行うための種々のプログラムやデータが格納される。ECU10は、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。ECU10は、エンジン1の回転速度Vが負荷によらず目標回転速度Vtを維持するようにエンジン1を制御するアイソクロナス制御を行う。
【0024】
ECU10は、燃料の噴射制御を行うための種々のプログラムや、操作量Sに基づいたエンジン1の目標回転速度Vtを算出するための回転速度マップM1、目標回転速度Vtと回転速度Vとに基づいた気筒Ai(気筒A1、気筒A2、気筒A3、気筒A4、気筒A5、気筒A6のうち選択した任意の気筒を示す)への噴射量Qi(噴射量Q1、噴射量Q2、噴射量Q3、噴射量Q4、噴射量Q5、噴射量Q6のうち選択した任意の噴射量を示す)を算出するための基準燃料噴射量マップM2、回転速度Vと噴射量Qiとに基づいた燃料の基準噴射角θsを算出するための基準噴射角マップM3、回転速度Vと噴射量Qiとに基づいた燃料の遅角噴射角θrを算出するための遅角噴射角マップM4、回転速度Vと噴射量Qiと遅角噴射角θrとに基づいた増加量ΔQを算出するための噴射増加量マップM5、冷却水温度Tに基づいた温度補正係数Tfを算出するための温度補正マップM6、回転速度Vと増加量ΔQと遅角によって他の気筒で増減した燃料の平均増減量ΔQaveとに基づいたセタン価Cを算出するためのセタン価マップM7、等を記憶する。
【0025】
目標回転速度Vtは、アクセルペダル6が操作量Sだけ操作された場合に、エンジン1が一定速度で回転する回転速度である。
【0026】
噴射量Qiは、回転速度Vを目標回転速度Vtにするために必要な出力Wをエンジン1が出力するための基準となる気筒Aiの燃料噴射量である。
【0027】
基準噴射角θsは、回転速度V及び噴射量Qiのときに黒煙、NOx等の排気成分及び騒音の発生を抑制し最適化させる基準となる燃料噴射時期である。
【0028】
遅角噴射角θrは、回転速度V及び噴射量Qiのときに燃料のセタン価Cを算出するため一の気筒Aiの燃料噴射時期を遅角させる遅角操作の基準となる遅角噴射角である。
【0029】
増加量ΔQは、回転速度V、噴射量Qi及び遅角噴射角θrのときにエンジン1の回転速度Vを目標回転速度Vtにするため一の気筒Aiへの燃料噴射量を増加させる基準となる燃料増加量である。
【0030】
平均噴射量Qaveは、一の気筒Aiにおける遅角操作の影響を受けることなく、燃料噴射量の増減が行われていない他の気筒Aj(気筒A1、気筒A2、気筒A3、気筒A4、気筒A5、気筒A6のうち選択した任意の気筒を示す)の平均噴射量である。
【0031】
合計増減量ΔQtotal(i)は、一の気筒Aiの噴射量Qiを増加量ΔQだけ増加させて遅角噴射角θr噴射した場合の他の気筒において、エンジン1の回転速度Vを目標回転速度Vtにするため平均噴射量Qaveよりも増加された噴射量の合計増減量である。
【0032】
平均増減量ΔQaveは、各気筒A1からA6の全てについて所定の順番で前記一の気筒Aiに設定した場合に、それぞれ算出された合計増減量ΔQtotal(i)の平均値である。
【0033】
温度補正係数Tfは、冷却水温度Tのときに燃料のセタン価Cを算出するため決定される遅角噴射角θrと増加量ΔQとを補正する基準となる補正係数である。
【0034】
ECU10は、燃料噴射弁4・4・・と接続され、燃料噴射弁4・4・・を制御することが可能である。
【0035】
ECU10は、回転速度センサ7に接続され、回転速度センサ7が検出する回転速度Vを取得することが可能である。
【0036】
ECU10は、操作量検出センサ8に接続され、操作量検出センサ8が検出する操作量Sを取得することが可能である。
【0037】
ECU10は、冷却水温度センサ9に接続され、冷却水温度センサ9が検出する冷却水温度Tを取得することが可能である。
【0038】
ECU10は、取得した操作量Sに基づいて回転速度マップM1から目標回転速度Vtを算出することが可能である。
【0039】
ECU10は、算出した目標回転速度Vtと回転速度Vとの差に基づいて基準燃料噴射量マップM2から噴射量Qiを算出することが可能である。
【0040】
ECU10は、取得した回転速度Vと噴射量Qiとに基づいて基準噴射角マップM3から基準噴射角θsを算出することが可能である。
【0041】
ECU10は、取得した回転速度Vと噴射量Qiとに基づいて遅角噴射角マップM4から遅角噴射角θrを算出することが可能である。
【0042】
ECU10は、取得した回転速度Vと、噴射量Qiと、遅角噴射角θrとに基づいて噴射増加量マップM5から増加量ΔQを算出することが可能である。
【0043】
ECU10は、取得した冷却水温度Tに基づいて温度補正マップM6から温度補正係数Tfを算出することが可能である。
【0044】
ECU10は、算出した温度補正係数Tfに基づいて遅角噴射角θrを適切な噴射時期に進角補正又は遅角補正し、増加量ΔQを適切な量に増量又は減量することが可能である。
【0045】
ECU10は、一の気筒Aiにおける遅角操作の影響を受けることなく、燃料噴射量の増減が行われていない他の気筒の噴射量Qiの平均噴射量Qave(i)を算出することが可能である。
【0046】
ECU10は、一の気筒Aiにおける遅角操作の影響を受け、燃料噴射量の増減が行われた他の気筒毎の燃料噴射量Qi(以下、「Qj」と記す)と平均噴射量Qave(i)との差を積算した他の気筒の合計増減量ΔQtotal(i)を算出することが可能である。
【0047】
ECU10は、気筒A1からA6毎の合計増減量ΔQtotal(i)の平均増減量ΔQaveを算出することが可能である。
【0048】
ECU10は、取得した回転速度Vと、算出した増加量ΔQと、平均増減量ΔQaveとに基づいてセタン価マップM7からセタン価Cを算出することが可能である。
【0049】
ECU10は、取得した操作量Sと、回転速度Vと、算出した目標回転速度Vtと噴射量Qiと基準噴射角θsとに基づいて燃料噴射弁4を制御することが可能である。
【0050】
以下では、
図2を用いて、本発明の一実施形態に係るエンジン1の始動後におけるECU10のセタン価Cを算出する制御態様について説明する。
【0051】
図2(a)に示すように、ECU10は、エンジン1の運転状態がアイドリング状態である場合、回転速度Vと算出した噴射量Qiとに基づいて遅角噴射角マップM4から遅角噴射角θrを算出する。合わせて、ECU10は、回転速度Vと噴射量Qiと遅角噴射角θrとに基づいて噴射増加量マップM5から増加量ΔQを算出する。なお、本実施形態において、エンジン1はアイドリング状態であるがこれに限定するものではなく、エンジン1の出力Wと回転速度Vが一定である状態であればよい。
【0052】
ECU10は、気筒A1、気筒A4、気筒A2、気筒A6、気筒A3、気筒A5の順に燃料を噴射させる気筒A1からA6のうち、遅角操作を行う一の気筒Aiを設定する。ECU10は、遅角操作が行われる一の気筒Aiの燃料噴射の直前に燃料噴射がされた気筒A1からA6の噴射量Q1からQ6の平均噴射量Qave(i)を算出する。
【0053】
図2(b)に示すように、ECU10は、算出した平均噴射量Qave(i)に算出した増加量ΔQを加えて遅角操作時の噴射量(Qave(i)+ΔQ)を算出する。ECU10は、一の気筒Aiに遅角噴射角θrで、算出した遅角操作時の噴射量(Qave(i)+ΔQ)の燃料を噴射するように燃料噴射弁4を制御する。
【0054】
図2(c)に示すように、ECU10は、一の気筒Aiの遅角操作の影響で噴射量が増減された他の気筒の噴射量Qjにおける平均噴射量Qave(i)からの増減量を積算した合計増減量ΔQtotal(i)を以下の数1によって算出する。ここでkは積算する噴射回数(本実施形態においてはk=4)、iは積算する気筒番号を示す。なお、合計増減量ΔQtotal(i)を算出する他の気筒(本実施形態におけるkの値)はこれに限定されるものではない。
【数1】
【0055】
ECU10は、遅角操作による影響をうけない程度の間隔で、全気筒が順番に一の気筒Aiに設定されるまで一度しか一の気筒Aiに設定されないように総気筒数の倍数でない間隔をあけた気筒を次の一の気筒Aiに設定する。そして、ECU10は、遅角操作を行う一の気筒Ai毎に合計増減量ΔQtotal(i)を前述の数1により算出する。
【0056】
図2(d)に示すように、ECU10は、各気筒A1からA6における遅角操作により算出した合計増減量ΔQtotal(i)の平均増減量ΔQaveを以下の数2によって算出する。ここでmは遅角操作を行った回数(合計増減量ΔQtotal(i)の数、本実施形態においてはm=6)を示す。なお、平均増減量ΔQaveを算出するための遅角操作の回数は(本実施形態におけるmの値)はこれに限定されるものではない。
【数2】
【0057】
図2(e)に示すように、ECU10は、取得した回転速度Vと、算出した増加量ΔQと、平均増減量ΔQaveとに基づいて、セタン価マップM7からセタン価Cを算出する。
【0058】
また、ECU10は、冷却水温度Tが基準温度Ts以下の場合、冷却水温度Tに基づいて温度補正マップM6から温度補正係数Tfを算出する。ECU10は、算出した温度補正係数Tfに基づいて遅角噴射角θrを適切な噴射時期に進角補正又は遅角補正し、増加量ΔQを適切な量に増量又は減量することがきる。これにより、エンジン1の冷却水温度Tが基準温度Tsよりも低く、エンジンの燃焼状態が通常の状態と異なる場合においても適切にセタン価Cを算出することができる(
図4参照)。
【0059】
次に、
図3から
図6を用いて、ECU10のセタン価C算出のため噴射時期を遅角する制御態様について具体的に説明する。ここでは、気筒A1の噴射時期を遅角する際の制御態様について説明する。
【0060】
図3に示すように、エンジン1の始動後、ステップS110において、ECU10は、回転速度センサ7が検出する回転速度Vと、操作量検出センサ8が検出する操作量Sと、冷却水温度センサ9が検出する冷却水温度Tとを取得し、ステップをステップS120に移行させる。
【0061】
ステップS120において、ECU10は、取得した操作量Sに基づいて回転速度マップM1から目標回転速度Vtを算出し、取得した回転速度Vと、算出した目標回転速度Vtに基づいて基準燃料噴射量マップM2から噴射量Qiを算出し、ステップをステップS130に移行させる。
【0062】
ステップS130において、ECU10は、取得した回転速度Vと、算出した噴射量Qiとからエンジン1がアイドリング状態か否か判定する。その結果、エンジン1がアイドリング状態であると判定した場合、ECU10はステップをステップS200に移行させる。一方、エンジン1がアイドリング状態でないと判定した場合、ECU10はステップをステップS110に移行させる。
【0063】
ステップS200において、ECU10は、セタン価算出制御Aを開始し、ステップをステップS210に移行させる(
図4参照)。ECU10は、セタン価算出制御Aが終了すると噴射時期を遅角する制御を終了する。
【0064】
図4に示すように、セタン価算出制御AのステップS210において、ECU10は、算出した回転速度Vと噴射量Qiとから遅角噴射角θrを算出し、更に算出した回転速度Vと、噴射量Qiと、遅角噴射角θrとから増加量ΔQを算出する。
【0065】
ステップS220において、ECU10は、取得した冷却水温度Tが基準温度Ts以下か否か判定する。その結果、取得した冷却水温度Tが基準温度Ts以下であると判定した場合、ECU10はステップをステップS230に移行させる。一方、取得した冷却水温度Tが基準温度Ts以下よりも高いと判定した場合、ECU10はステップをステップS240に移行させる。
【0066】
ステップS230において、ECU10は、取得した冷却水温度Tに基づいて温度補正マップM6から温度補正係数Tfを算出し、算出した温度補正係数Tfに基づいて遅角噴射角θrを適切な噴射時期に進角補正又は遅角補正し、増加量ΔQを適切な量に増量又は減量する補正をし、ステップをステップS240に移行させる。
【0067】
ステップS240において、ECU10は、遅角操作による影響をうけない程度の間隔で、全気筒が順番に一の気筒Aiに設定されるまで一度しか一の気筒Aiに設定されないように総気筒数の倍数でない間隔をあけた気筒を次の一の気筒Aiに設定し、ステップをステップS250に移行させる。本実施形態において、
図5に示すように、まず一の気筒として気筒A1を設定し、その次に気筒A1の遅角操作による影響をうけない程度の間隔で総気筒数の倍数でない11気筒分の間隔をあけた気筒A5を次に遅角操作を行う一の気筒として設定する。これにより、気筒A1からA6は、気筒A1、気筒A5、気筒A3、気筒A6、気筒A2、気筒A4の順に一の気筒に設定される。なお、気筒数の間隔はこれに限定されるものではない。
【0068】
ステップS250において、ECU10は、一の気筒Aiにおける遅角操作の影響を受けることなく燃料噴射量の増減が行われていない他の気筒の噴射量の平均噴射量Qave(i)を算出し、これに算出したΔQを加えて遅角操作時の噴射量(Qave(i)+ΔQ)を算出し、ステップをステップS260に移行させる。本実施形態において、
図5及び
図6に示すように、遅角操作が行われる気筒A1の燃料噴射の直前に燃料噴射がされた気筒A1からA6の噴射量Q1からQ6の平均噴射量Qave(1)を算出し、これに算出したΔQを加えて気筒A1の遅角操作時の噴射量Q1を算出する。
【0069】
ステップS260において、ECU10は、遅角操作を行う一の気筒Aiに遅角噴射角θrで算出した遅角操作時の噴射量(Qave(i)+ΔQ)の燃料を噴射するように燃料噴射弁4を制御し、ステップをステップS270に移行させる。本実施形態において、
図6に示すように、一の気筒A1に遅角噴射角θrで、算出した遅角操作時の噴射量Q1(Qave(i)+ΔQ)の燃料を噴射するように燃料噴射弁4を制御する。
【0070】
ステップS270において、ECU10は、一の気筒Aiの遅角操作の影響で噴射量が増減された他の気筒の噴射量Qjにおいて、平均噴射量Qave(i)からの増減量を積算した合計増減量ΔQtotal(i)を前述の数1によって算出し、ステップをステップS270に移行させる。本実施形態において、
図5及び
図6に示すように、一の気筒A1の遅角操作の影響で遅角操作後に燃料が噴射された4つの気筒である気筒A4、気筒A2、気筒A6及び気筒A3の噴射量が増減された場合、その噴射量Q4、噴射量Q2、噴射量Q6及び噴射量Q3における平均噴射量Qave(1)よりも増減された噴射量の積算値である合計増減量ΔQtotal(1)を数1により算出する。
【0071】
ステップS280において、ECU10は、全ての気筒Aiのそれぞれにおいて合計増減量ΔQtotal(i)を算出したか否か判定する。その結果、全ての気筒Aiのそれぞれにおいて合計増減量ΔQtotal(i)を算出したと判定した場合、ECU10はステップをステップS290に移行させる。一方、全ての気筒Aiのそれぞれにおいて合計増減量ΔQtotal(i)を算出していないと判定した場合、ECU10はステップをステップS240に移行させる。本実施形態において、
図5に示すように、全ての気筒A1からA6のそれぞれにおいて合計増減量ΔQtotal(1)、合計増減量ΔQtotal(2)、合計増減量ΔQtotal(3)、合計増減量ΔQtotal(4)、合計増減量ΔQtotal(5)及び合計増減量ΔQtotal(6)を算出したか否か判定する。
【0072】
ステップS290において、ECU10は、各気筒A1からA6における遅角操作により算出した合計増減量ΔQtotal(i)の平均増減量ΔQaveを前述の数2によって算出し、ステップをステップS300に移行させる。本実施形態において、全ての気筒A1からA6について一度ずつ遅角操作が行われているので合計増減量ΔQtotal(1)、合計増減量ΔQtotal(2)、合計増減量ΔQtotal(3)、合計増減量ΔQtotal(4)、合計増減量ΔQtotal(5)及び合計増減量ΔQtotal(6)の平均増減量ΔQaveを数2によって算出する。
【0073】
ステップS300において、ECU10は、取得した回転速度Vと、算出した増加量ΔQと、平均増減量ΔQaveとに基づいてセタン価Cを算出した後、セタン価算出制御Aを終了すると同時に噴射時期を遅角する制御を終了する(
図3参照)。本実施形態において、平均増減量ΔQaveを算出するために6×11=66回の燃料噴射が必要になる。エンジン1の回転速度を800rpmとした場合、66/{800/60×(6/2)}=1.65sのエンジン運転時間で平均増減量ΔQaveが算出される。つまり、セタン価Cの算出に全気筒を用いても作業者が違和感を覚えない程度の時間でセタン価算出制御を完了することができる。
【0074】
以上の如く、本発明の一実施形態に係るエンジン1は、エンジン1の回転速度Vを維持するため気筒毎に燃料噴射を制御するエンジン1の制御装置であるECU10において、エンジン1の回転速度Vに基づいて一の気筒Aiの燃料噴射時期の遅角量を考慮した遅角噴射角θrを算出し、遅角噴射角θrに基づいてエンジン1の回転速度Vを維持するために必要な一の気筒Aiの燃料噴射量である噴射量Qiの増加量ΔQを算出し、一の気筒Aiの燃料噴射時期を遅角すると同時に一の気筒Aiの噴射量Qiを増加し、エンジン1の回転速度Vと、一の気筒Aiの噴射量Qiの増加量ΔQと、一の気筒Aiの燃料噴射時期を遅角すると同時に一の気筒の噴射量Qiを増加したことで噴射量Qiが増減した他の気筒Ajの燃料噴射量である噴射量Qjの合計増減量ΔQtotal(i)と、に基づいて燃料のセタン価Cを算出するものである。このように構成することにより、遅角によるエンジン1の回転速度Vの低下を低減させている。また、把握が容易な噴射量Qiの増減に基づいてセタン価Cが算出される。これにより、エンジン1の運転状態を安定させつつセタン価Cの算出精度を向上させることができる。
【0075】
また、全ての気筒について所定の順番で前記一の気筒Aiに設定し、設定した一の気筒Ai毎の他の気筒Ajの噴射量Qjの合計増減量ΔQtotal(i)を平均して燃料のセタン価Cを算出するものである。このように構成することにより、一つの気筒毎に所定の順番で遅角させることで遅角によるエンジン1の回転速度Vの低下が低減される。また、各気筒のねじり振動の影響が低減される。これにより、エンジン1の運転状態を安定させつつセタン価Cの算出精度を向上させることができる。
【0076】
また、燃料噴射が行われる一の気筒Aiの順番にそってエンジン1の気筒数である6気筒の倍数でない気筒数である11気筒毎に選択した一の気筒Aiの順番を所定の順番とするものである。このように構成することにより、遅角によるエンジン1の回転速度Vの変動が重なることによる速度変動の共振の発生を防止する。また、エリアジングによる算出誤差を防止する。これにより、エンジン1の運転状態を安定させつつセタン価Cの算出精度を向上させることができる。
【0077】
また、一の気筒Aiの燃料噴射時期を遅角したことによる噴射量Qiの増減が行われていない他の気筒の燃料噴射量の平均噴射量Qave(i)を算出し、一の気筒Aiの燃料噴射時期を遅角したことによる燃料噴射量の増減が行われた他の気筒Aj毎の噴射量Qjと平均噴射量Qaveとの差の積算値を他の気筒Ajの噴射量Qjの合計増減量ΔQtotal(i)とするものである。このように構成することにより、一の気筒Aiの燃料噴射時期を遅角するだけでセタン価Cの算出に必要な燃料噴射量の増減量ΔQと合計増減量ΔQtotal(i)とが取得される。また、遅角の影響による燃料噴射量の合計増減量ΔQtotal(i)が精度よく取得される。これにより、エンジン1の運転状態を安定させつつセタン価Cの算出精度を向上させることができる。
【0078】
また、負荷の増減によってエンジン1の回転速度Vが変動した場合、一の気筒Aiの燃料噴射時期の遅角を中止するものである。このように構成することにより、セタン価Cの算出制御によって作業機等による作業が中断されることがない。これにより、エンジン1の運転状態を安定させつつセタン価Cの算出精度を向上させることができる。