特許第5993759号(P5993759)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993759
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】エンジンの吸気冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/18 20060101AFI20160901BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20160901BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   F01P3/18 G
   F01P3/18 Q
   F01P3/20 M
   F01P7/16 504A
   F01P7/16 504B
   F01P7/16 501
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-36644(P2013-36644)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-163336(P2014-163336A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220217
【氏名又は名称】東京ラヂエーター製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】酒川 佳
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕一
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−211545(JP,A)
【文献】 特開2010−249129(JP,A)
【文献】 特表2011−522996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 3/18
F01P 7/16
F02B 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの冷却水が流通する冷却水回路と、前記エンジンの吸気を過給する過給器と、を備えるエンジンにおいて、前記エンジンに備えられるエンジンの吸気冷却装置であって、
前記冷却水回路は、第1冷却水回路と、第2冷却水回路とを含み、
吸気を前記第1冷却水回路の冷却水により冷却する第1吸気冷却装置と、前記第1吸気冷却装置により冷却された吸気を前記第2冷却水回路の冷却水によりさらに冷却する第2吸気冷却装置と、が備えられ、
前記第1冷却水回路は、前記エンジンから出た冷却水を、前記第1吸気冷却装置を流通させて再びエンジンに戻し、
前記第2冷却水回路は、前記エンジンから出た冷却水を、前記第2吸気冷却装置を流通させて再びエンジンに戻し、
前記エンジンから出て前記第1吸気冷却装置へと向かう冷却水と、前記第2吸気冷却装置から出て前記エンジンへと向かう冷却水と、の間で熱交換を行う熱交換器を備えたことを特徴とするエンジンの吸気冷却装置。
【請求項2】
前記第1冷却水回路は、冷却水を冷却する第1ラジエタを備えると共に、前記第2冷却水回路には、前記第2冷却水回路を流れる冷却水を冷却する第2ラジエタが備えられ、
前記エンジンから出て、前記第2ラジエタにより冷却された冷却水が、前記第2吸気冷却装置を流通することを特徴とする
請求項1に記載のエンジンの吸気冷却装置。
【請求項3】
前記第1吸気冷却装置から出た前記第1冷却水回路の冷却水と、前記熱交換器を出た前記第2冷却水回路の冷却水と、を合流させて、前記エンジンへと戻すことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの吸気冷却装置。
【請求項4】
前記熱交換器に入る前記第1冷却水回路の冷却水の水温を検出する第1水温検出部と、
前記熱交換器に入る前記第2冷却水回路の冷却水の水温を検出する第2水温検出部と、
前記第2冷却水回路の冷却水を、前記熱交換器を流通させずバイパスさせるバイパス流路と、
前記第2冷却水回路の冷却水を、前記バイパス流路に流すか否かを制御するバルブと、
前記バルブの動作を制御する制御装置と、
をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第2冷却水回路の冷却水の水温が前記第1冷却水回路の冷却水の水温よりも低い場合は、前記第2冷却水回路の冷却水を前記熱交換器に流通させるように、前記バルブを制御し、
前記第1冷却水回路の冷却水の水温が前記第2冷却水回路の冷却水の水温よりも低い場合は、前記第2冷却水回路の冷却水を前記熱交換器に流通させずバイパスさせるように、前記バルブを制御する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のエンジンの吸気冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、過給器付きエンジンに備えられる吸気冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気によって吸気を過給する過給器付きエンジンが一般に用いられている。過給器により吸気が過給されると、吸気温度が高温となる。また、排気を吸気側に再循環させるEGRシステムが備わっている場合は、さらに吸気温度が高温となる場合がある。吸気温度が高温となると燃費効率が低下する虞がある。
【0003】
これを防ぐために、過給された吸気の温度を下げる冷却装置を備えることが行われている。冷却装置は、例えばエンジンの冷却水を吸気通路に流通させ、冷却水によって吸気温度を低下させている。
【0004】
一方で、エンジンの冷却水は、エンジンの運転に最適な温度に制御されるため、吸気と冷却水との気水温度差が大きくとれず、吸気温度の低下に限度がある。
【0005】
これに対して、エンジンの冷却水回路の一部を分岐した第2冷却水回路に、第2のラジエタを備え、このラジエタによって低温となった冷却水によって、エンジンに吸気される吸気温度を低下させる内燃機関の冷却装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0066697号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
吸気温度を下げるために冷却水温度を下げると、この低温の冷却水がエンジンに流入する。特にエンジンの暖機時に低温の冷却水温度が流入した場合は、エンジン内部で冷却水温度が低下して、エンジンの暖機が遅れてしまう。エンジンの暖機が遅れてしまうと、エンジンの燃費性能が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされてものであり、エンジンの吸気を冷却する冷却装置を備えながら、エンジンの暖機の遅れを改善することができるエンジンの吸気冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様によると、エンジンの冷却水が流通する冷却水回路と、エンジンの吸気を過給する過給器と、を備えるエンジンにおいて、エンジンに備えられるエンジンの吸気冷却装置であって、冷却水回路は、第1冷却水回路と、第2冷却水回路とを含み、吸気を第1冷却水回路の冷却水により冷却する第1吸気冷却装置と、第1吸気冷却装置により冷却された吸気を第2冷却水回路の冷却水によりさらに冷却する第2吸気冷却装置と、が備えられ、第1冷却水回路は、エンジンから出た冷却水を、第1吸気冷却装置を流通させて再びエンジンに戻し、第2冷却水回路は、エンジンから出た冷却水を、第2吸気冷却装置を流通させて再びエンジンに戻し、エンジンから出て第1吸気冷却装置へと向かう冷却水と、第2吸気冷却装置から出てエンジンへと向かう冷却水と、の間で熱交換を行う熱交換器を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記態様によれば、エンジンから出た第1冷却水回路の冷却水と、第2吸気冷却装置から出た第2冷却水回路の冷却水とが、熱交換器において熱交換を行うので、エンジンへと戻る第2冷却水回路の冷却水温度が上昇して、エンジンのコールドスタート時においても、エンジンの暖機の遅れ改善される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態のエンジンを中心とした冷却装置の説明図である。
図2】本発明の第2の実施形態のエンジンを中心とした冷却装置の説明図である。
図3】本発明の第2の実施形態のコントローラが実行する処理のフローチャートである。
図4】本発明の第3の実施形態のエンジンを中心とした冷却装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態のエンジン10を中心とした冷却装置1の説明図である。
【0014】
第1の実施形態の冷却装置1は、例えば車両に搭載されて、車両の駆動源であるエンジン10と、過給器(タービン)18とを備え、過給された吸気の温度を、冷却水(クーラント)を用いて適切に冷却するものである。
【0015】
図1において、太矢印は高温側冷却水回路31、細矢印は低温側冷却水回路32、点線は排気管16内の排気の流れ、一点鎖線は吸気管14内の吸気の流れを示す。
【0016】
冷却装置1は、エンジン10と、エンジン10の冷却水を流通させる冷却水回路30とを備える。
【0017】
エンジン10の内部には、冷却水が流通する冷却水流路11が形成される。冷却水流路11は冷却水回路30に連通する。冷却水流路11には、ウォーターポンプ(W/P)12とサーモスタット(T/S)13とが備えられている。
【0018】
ウォーターポンプ12は、冷却水を冷却水流路11及び冷却水回路30に循環させる。サーモスタット13は、冷却水の温度が低い場合にはラジエタ41をバイパスさせ、冷却水の温度が高い場合には、冷却水をラジエタ41に経由させて冷却水温度を低下させる。
【0019】
エンジン10には、吸気管14及び排気管16が連通する。吸気管14は、タービン18により過給される。過給された吸気は、高温側インタクーラ(第1吸気冷却装置)71及び低温側インタクーラ(第2吸気冷却装置)72により温度が低下され、温度が低下された吸気がエンジン10に送られる。排気管16は、エンジン10の排気をタービン18を介して排出する。排気はタービン18を回転させ、タービン18の回転により吸気管14の吸気が過給される。
【0020】
エンジン10には、ファン19が備えられる。ファン19によりラジエタ41及びサブラジエタ42に送風され、これらの冷却が促進される。
【0021】
排気管16からはEGR回路20が分岐する。EGR回路20は、排気の一部を吸気に再循環させる排気再循環装置(EGR)を構成する。EGR回路20には、高温側の第1のEGRクーラ(第1排気冷却装置)21と、その下流側に位置する同じく高温側の第2のEGRクーラ(第2排気冷却装置)22とが備えられ、EGRバルブ23を介して吸気管14に連通する。
【0022】
EGR回路20によって排気の一部を吸気に戻すことにより、エンジン10の燃焼室における酸素濃度を低下させて燃焼温度を低下させることができ、NOx等の酸化物の発生が抑制される。再循環される排気の温度は低いほど効率が高いため、排気温度を低下させるための高温側の第1のEGRクーラ21及びその下流側に位置する同じく高温側の第2のEGRクーラ22を設けている。
【0023】
吸気管14において、高温側インタクーラ71と低温側インタクーラ72とには、それぞれに冷却水が流通し、タービン18により過給された吸気の温度を低下させる。吸気温度は場合により高温となり、冷却水との温度差が大きいため、高温側インタクーラ71と低温側インタクーラ72との二段階で吸気温度を低下させている。高温側インタクーラ71によって温度が低下された吸気を、さらに低温側インタクーラ72によって温度を低下させる。吸気管14において、高温側インタクーラ71及び低温側インタクーラ72の下流側に、EGRバルブ23が備えられる。EGRバルブ23は、EGR回路20を経由して吸気管14に再循環する排気の量を制御する。
【0024】
冷却水回路30は、高温側冷却水回路(第1冷却水回路)31と低温側冷却水回路(第2冷却水回路)32とを備える。
【0025】
高温側冷却水回路31は、エンジン10の冷却水流路11のほか、ラジエタ(第1ラジエタ)41、高温側の第1のEGRクーラ21及びその下流側に位置する同じく高温側の第2のEGRクーラ22を経由する冷却水回路により構成される。
【0026】
高温側冷却水回路31においては、エンジン10のウォーターポンプ12から送出される冷却水は、エンジンの冷却水流路11を循環すると共に、ラジエタ41を経由して、再びエンジン10の冷却水流路に戻る。また、ウォーターポンプ12から送出される冷却水の一部は、エンジン10を出て、高温側の第1のEGRクーラ21及びその下流側に位置する同じく高温側の第2のEGRクーラ22を経由して、再びエンジン10の冷却水流路11に戻る。また、ウォーターポンプ12から送出される冷却水の一部は、エンジン10を出て、熱交換器76、及び高温側インタクーラ71を経由して、再びエンジン10の冷却水流路11に戻る。
【0027】
低温側冷却水回路32は、サーモスタット44、サブラジエタ(第2ラジエタ)42、低温側インタクーラ72及び熱交換器76を経由する冷却水回路により構成される。
【0028】
エンジン10のウォーターポンプから送出される冷却水は、エンジン10を出てサーモスタット44及びサブラジエタ42を経由して低温側インタクーラ72に送られる。低温側インタクーラ72を出た冷却水は熱交換器76を介して、再びエンジン10の冷却水流路11へと戻る。サーモスタット44は、低温側冷却水回路32の冷却水の温度が低い場合はサブラジエタ42をバイパスさせて、冷却水温度がさらに低下することを防ぐ。
【0029】
このように、低温側冷却水回路32は、冷却水がサブラジエタ42を通過することにより、高温側冷却水回路31よりも低温の冷却水が流通するように構成されている。
【0030】
熱交換器76は、高温側冷却水回路31においてエンジン10から出た冷却水と、低温側冷却水回路32において低温側インタクーラ72から出た冷却水と、で熱交換を行う。熱交換器76は、例えば二重管構造を有し、高温側冷却水回路31の冷却水と低温側冷却水回路32の冷却水とが互いに対向流となるように構成することにより熱交換を行う。
【0031】
このように構成された本発明の第1の実施形態の動作を説明する。
【0032】
エンジン10が停止してから長時間経過した場合など、エンジン10及び冷却水の温度が低い状態からエンジン10を始動(コールドスタート)するときは、エンジン10の摺動抵抗が大きく、また、触媒の効率も低下しているので、エンジン10の動作効率が低く燃費性能が悪化すると共に、排気中の規制物質も増加する。このため、エンジン10のコールドスタート時にはエンジン10の暖機をできるだけ速やかに行う必要がある。
【0033】
そこで、本発明の第1の実施形態の冷却装置1は、前述のような構成により、次のように動作する。
【0034】
エンジン10において、ウォーターポンプ12によって冷却水流路11を冷却水が循環する。このとき、冷却水温度が低い場合は、サーモスタット13が切り換えられ、ラジエタ41をバイパスする。これにより、エンジン10の運転により冷却水が加熱されて、冷却水温度が上昇する。
【0035】
冷却水流路11の流通する冷却水の一部は、高温側冷却水回路31に流れ、高温側の第1のEGRクーラ21及びその下流側に位置する同じく高温側の第2のEGRクーラ22を経由して冷却水流路11に戻る。また、高温側冷却水回路31の冷却水の一部は、高温側インタクーラ71を経由して、冷却水流路11に戻る。
【0036】
このように、高温側冷却水回路31では、高温の排気と接触することで冷却水の温度が低下しないように構成されている。また、高温側インタクーラ71において、過給された高温の吸気と接触することで冷却水の温度の低下が抑えられる。これにより、エンジン10のコールドスタート時にも、比較的高温の冷却水が流通することで、エンジン10の暖機の遅れが改善される。
【0037】
冷却水流路11を流通する冷却水の一部は、低温側冷却水回路32に流れ、サブラジエタ42、低温側インタクーラ72及び熱交換器76を経由して冷却水流路11に戻る。低温側冷却水回路32の冷却水は、サブラジエタ42で外気と熱交換を行うことで温度が低下する。温度が低下した冷却水は低温側インタクーラ72において過給された吸気と熱交換を行うことにより、吸気温度を低下させると共に冷却水温度が上昇する。低温側インタクーラ72を出た冷却水は、熱交換器76で高温側冷却水回路31の冷却水と熱交換を行うことでさらに温度が上昇する。温度が上昇した冷却水は、再びエンジン10へと戻る。高温側冷却水回路31の冷却水は、熱交換器76で低温側冷却水回路32の冷却水と熱交換を行うことで若干温度が低下するが、高温側インタクーラ71において過給された高温の吸気と熱交換を行うことにより温度が上昇して再びエンジン10へと戻る。
【0038】
このように、低温側冷却水回路32では、サブラジエタ42において冷却水温度が低下した冷却水により、低温側インタクーラ72で過給された吸気の温度を低下させる。
【0039】
温度が低下した冷却水は、低温側インタクーラ72と熱交換器76とを通過することにより温度が再び上昇させられて、この冷却水が再びエンジン10に戻るように構成されている。この冷却水は、高温側冷却水回路31と低温側冷却水回路32とが合流してエンジン10に戻る。このとき、高温側冷却水回路31と低温側冷却水回路32とが混じり合う。この構成により、低温側冷却水回路32において、エンジン10に戻る冷却水の温度が低下することがないので、エンジン10の暖機の遅れが改善される。
【0040】
以上のように、本発明の第1の実施形態では、エンジン10から出た高温側冷却水回路31の冷却水と、低温側インタクーラ72から出た低温側冷却水回路32の冷却水とが、熱交換器76において熱交換を行うように構成した。
【0041】
特に、低温側冷却水回路32は、サブラジエタ42によって冷却水の温度を低下させているので、過給された吸気の温度を低下させることができ、エンジンの動作効率を向上しつつ、NOxの発生を抑制できる。
【0042】
エンジン10へと戻る低温側冷却水回路32の冷却水は、熱交換器76を通過することによって温度が上昇するので、エンジン10の暖機の遅れが改善される。高温側インタクーラ71に流れる高温側冷却水回路31の冷却水は、熱交換器76を通過することによって温度が低下するので、高温側インタクーラ71において吸気温度を低下させることができる。高温側インタクーラ71を出た冷却水は、エンジン10の手前で低温側冷却水回路32の冷却水と合流してエンジン10に流れるので、エンジン10に流れる冷却水の温度が上昇して、エンジン10の暖機の遅れが改善される。
【0043】
これにより、エンジン10のコールドスタート時にも、エンジン10の暖機の遅れが改善される。
【0044】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0045】
図3は、本発明の第2の実施形態のエンジン10を中心とした冷却装置1の説明図である。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0046】
第2の実施形態では、低温側冷却水回路32おいて、熱交換器76の入口側にバルブ85を設け、熱交換器76をバイパスするバイパス通路86を設けた。このバルブ75の開閉によって、熱交換器76を流れる低温側冷却水回路32の冷却水を制御する。
【0047】
また、第2の実施形態では、高温側冷却水回路31から熱交換器76へと流入する冷却水の水温を検出する第1水温計81と低温側冷却水回路32から熱交換器76へと流入する冷却水の水温を検出する第2水温計82と、を備えた。これら第1水温計81が検出した高温側冷却水回路31の水温TwHと、第2水温計82が検出した低温側冷却水回路32の水温TwLとに基づいて、バルブ85の開閉を制御するコントローラ60を備えた。
【0048】
次に、このように構成された第2の実施形態の冷却装置1の動作を説明する。
【0049】
図3は、本発明の第2の実施形態のコントローラ60が実行する冷却水回路の制御のフローチャートである。
【0050】
図3のフローチャートは、エンジン10が起動されたときにコントローラ60により実行される。
【0051】
まず、コントローラ60は、低温側冷却水回路32において、冷却水温度がサーモスタット44の開弁温度に到達したか否かを確認する(ステップS10)。冷却水温度がサーモスタット44の開弁温度に到達していない場合は、冷却水温度が低い状態であると判定できるため、第1水温計81及び第2水温計82の誤動作を判定できる。なお、冷却水温度ではなく、サーモスタット44が開弁したか否かを確認してもよい。
【0052】
次に、コントローラ60は、第1水温計81から、高温側冷却水回路31の熱交換器76の入口側の水温TwHを検出する。また、第2水温計82から、低温側冷却水回路32の熱交換器76の出口側の水温TwLを検出する。そして、水温TwLが水温TwHよりも低いか否かを判定する(ステップS20)。
【0053】
水温TwLが水温TwHよりも低いと判定した場合は、ステップS30に移行して、コントローラ60は、バルブ85を開くように制御する。これにより、低温側冷却水回路32の冷却水が熱交換器76を通過するようになり、熱交換器76において、低温側冷却水回路32の冷却水と高温側冷却水回路31の冷却水とが熱交換を行う。その後、ステップS40に移行する。
【0054】
ステップS40では、コントローラ60は、水温TwLが水温TwHよりも高いか否かを判定する。水温TwLが水温TwH未満である場合は、ステップS40の処理を繰り返し、待機する。この場合は、バルブ85は開いたままであり、熱交換器76において、低温側冷却水回路32の冷却水と高温側冷却水回路31の冷却水とが熱交換を行う。
【0055】
水温TwLが水温TwHよりも高いと判定した場合は、ステップS50に移行し、コントローラ60は、バルブ85を閉じるように制御する。これにより、低温側冷却水回路32の冷却水は、熱交換器76を通過せずバイパス通路86を通過するようになり、熱交換器76を流れる高温側冷却水回路31の冷却水との間で熱交換は行われない。その後、ステップS60に移行する。
【0056】
ステップS20において、水温TwLが水温TwH以上であると判定した場合は、ステップS30及びS40の処理を行うことなく、すなわち、バルブ85を開くことなくステップS50に移行し、コントローラ60は、バルブ85を閉じるように制御する。
【0057】
ステップS60では、コントローラ60は、エンジン10の運転が停止されたか否かを判定する。エンジン10が運転中である場合は、ステップ20に戻り、処理を繰り返す。エンジン10の運転が停止された場合は、本フローチャートによる処理を終了する。
【0058】
このように第2の実施形態の冷却装置1では、コントローラ60が、熱交換器76において、低温側冷却水回路32の水温TwLと、高温側冷却水回路31の水温TwHとの温度に基づいて、バルブ85を開閉して熱交換を行わせるか否かを決定する。
【0059】
すなわち、熱交換器76に流入する低温側冷却水回路32の冷却水の温度TwLが高温側冷却水回路31の冷却水の温度TwHよりも低い場合は、熱交換器76において熱交換を行う。これにより、低温側冷却水回路32の冷却水温度を上昇させることができて、エンジン10に流入する冷却水の温度が低下することなく、エンジンの暖機の遅れが改善される。また、熱交換器76における熱交換により、高温側冷却水回路31の冷却水温度を低下させることができて、高温側インタクーラ71において過給された吸気の温度をより冷却することができる。
【0060】
一方で、熱交換器76に流入する低温側冷却水回路32の冷却水の温度TwLよりも高温側冷却水回路31の冷却水の温度TwHが低い場合は、熱交換器76での熱交換を行なわない。これにより、低温側冷却水回路32の冷却水よりも低温の冷却水と熱交換を行わないことで、エンジン10に流入する冷却水の温度が低下することなく、エンジンの暖機の遅れが改善される。また、高温側冷却水回路31の冷却水温度がより高温の冷却水と熱交換を行わないことで、高温側インタクーラ71において過給された吸気の温度をより冷却することができる。
【0061】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0062】
図4は、本発明の第3の実施形態のエンジン10を中心とした冷却装置1の説明図である。なお、第1及び第2の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0063】
第3実施形態では、第1又は第2実施形態における高温側の第2のEGRクーラ22に代えて低温側の第3のEGRクーラ24を備え、これに低温側冷却水回路32の冷却水が流入するように構成した。また、EGR回路20に備えられる高温側の第1のEGRクーラ21に流入する高温側冷却水回路31の冷却水と、低温側の第3のEGRクーラ24から出た低温側冷却水回路32の冷却水とで熱交換を行う第2熱交換器46を備えた。前述のように、エンジン10の吸気温度は低いほど効率がよいので、EGRにより再循環される排気温度を低下させるために、低温側の第3のEGRクーラ24にサブラジエタ42から出た低温の冷却水が流れるように構成した。
【0064】
高温側冷却水回路31においては、エンジン10のウォーターポンプ12から送出される冷却水の一部は、エンジン10を出て、第2熱交換器46及び高温側の第1のEGRクーラ21を経由して、再びエンジン10の冷却水流路11に戻る。
【0065】
低温側冷却水回路32においては、サブラジエタ42を出た冷却水の一部が、低温側の第3のEGRクーラ24に送られる。低温側の第3のEGRクーラ24を出た冷却水は第2熱交換器46を介して、再びエンジン10の冷却水流路11へと戻る。
【0066】
第2熱交換器46は、高温側冷却水回路31においてエンジン10から出た冷却水と、低温側冷却水回路32において低温側の第3のEGRクーラ24から出た冷却水と、で熱交換を行う。第2熱交換器46は、熱交換器76と同様に、例えば二重管構造を有し、高温側冷却水回路31の冷却水と低温側冷却水回路32の冷却水とが互いに対向流となるように構成することにより熱交換を行う。
【0067】
このように、第3の実施形態では、EGRにより再循環される排気を冷却するために、高温側の第1のEGRクーラ21と低温側の第3のEGRクーラ24とを吸気管14に設けたことは前述の第1及び第2実施例と共通であるが、低温側の第3のEGRクーラ24は、サブラジエタ42において冷却水温度が低下した冷却水によって排気温度を低下させるように構成した。
【0068】
高温側冷却水回路31では、高温の排気と接触することで冷却水の温度が低下しないように構成されているので、エンジン10のコールドスタート時にも、比較的高温の冷却水が流通することで、エンジン10の暖機の遅れが改善される。
【0069】
また、低温側冷却水回路32では、サブラジエタ42によって温度が低下された冷却水が、低温側の第3のEGRクーラ24及び第2熱交換器46を経由して冷却水流路11に戻る。低温側冷却水回路32の冷却水は、低温側の第3のEGRクーラ24において排気と熱交換を行うことにより、排気温度を低下させると共に冷却水温度は上昇する。低温側の第3のEGRクーラ24を出た冷却水は、第2熱交換器46で高温側冷却水回路31の冷却水と熱交換を行うことでさらに温度が上昇する。温度が上昇した冷却水は、再びエンジン10へと戻る。
【0070】
これら高温側冷却水回路31の冷却水と低温側冷却水回路32の冷却水とはエンジン10の手前で合流して、エンジン10に戻る。この構成により、低温側冷却水回路32において、エンジン10に戻る冷却水の温度が低下することがないので、エンジン10の暖機の遅れが改善される。
【0071】
なお、第3の実施形態においても、コントローラ60が、低温側冷却水回路32の水温と高温側冷却水回路31の水温とに基づいて、第2熱交換器46をバイパスさせるか否かを決定してもよい。
【0072】
低温側冷却水回路32おいて、第2熱交換器46の入口側にバルブ65を設け、第2熱交換器46をバイパスするバイパス通路66を設ける。このバルブ65の開閉によって、第2熱交換器46を流れる低温側冷却水回路32の冷却水を制御する。
【0073】
また、高温側冷却水回路31から第2熱交換器46へと流入する冷却水の水温を検出する第3水温計61と低温側冷却水回路32から第2熱交換器46へと流入する冷却水の水温を検出する第4水温計62と、を備えた。
【0074】
コントローラ60は、前述の第2実施形態と同様に、第3水温計61が検出した高温側冷却水回路31の水温TwH3と第4水温計62が検出した低温側冷却水回路32の水温TwL4とに基づいて、バルブ65の開閉を制御する。
【0075】
例えば、第2熱交換器46に流入する低温側冷却水回路32の水温TwL4が高温側冷却水回路31の水温TwH3よりも低い場合は、第2熱交換器46において熱交換を行うようにバルブ65を切り換える。これにより、低温側冷却水回路32の冷却水温度を上昇させることができて、エンジン10に流入する冷却水の温度が低下することなく、エンジンの暖機の遅れが改善される。また、高温側冷却水回路31の冷却水温度を低下させることができて、高温側の第1のEGRクーラ21において、排気温度をより冷却することができる。
【0076】
一方で、第2熱交換器46に流入する低温側冷却水回路32の水温TwL4よりも高温側冷却水回路31の水温TwH3が低い場合は、第2熱交換器46での熱交換を行なわないようにバルブ65を切り換える。これにより、低温側冷却水回路32の冷却水よりも低温の冷却水と熱交換を行わないことで、エンジン10に流入する冷却水の温度が低下することなく、エンジンの暖機の遅れが改善される。また、高温側冷却水回路31の冷却水温度がより高温の冷却水と熱交換を行わないことで、高温側の第1のEGRクーラ21での排気をより冷却することができる。
【0077】
このように、第3実施形態では、第1及び第2実施形態と同様に過給された吸気の温度を低下させるだけでなく、排気温度を高温側の第1のEGRクーラ21で低下させた後、低温側冷却水回路32の冷却水によって低温側の第3のEGRクーラ24において排気温度を下げることができる。このように構成した場合にも、高温側冷却水回路31及び低温側冷却水回路32を循環してエンジン10に戻る冷却水の温度を低下させることがないので、エンジン10のコールドスタート時にも、エンジン10の暖機の遅れを改善することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0079】
1 冷却装置
10 エンジン
11 冷却水流路
12 ウォーターポンプ(W/P)
13 サーモスタット(T/S)
18 過給器(タービン)
20 EGR回路
21 第1のEGRクーラ(第1排気冷却装置)
高温側の第1のEGRクーラ[第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態]
22 第2のEGRクーラ(第2排気冷却装置)
高温側の第2のEGRクーラ[第1実施形態、第2実施形態]
23 EGRバルブ
24 第3のEGRクーラ(第3排気冷却装置)
低温側の第3のEGRクーラ[第3実施形態]
30 冷却水回路
31 高温側冷却水回路(第1冷却水回路)
32 低温側冷却水回路(第2冷却水回路)
41 ラジエタ(第1ラジエタ)
42 サブラジエタ(第2ラジエタ)
60 コントローラ
71 高温側インタクーラ(第1吸気冷却装置)
72 低温側インタクーラ(第2吸気冷却装置)
76 熱交換器
81 第1水温計
82 第2水温計
85 バルブ
86 バイパス通路
図1
図2
図3
図4