特許第5993845号(P5993845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5993845先ダイシング法を行う微細加工されたウェーハへの接着剤の被覆
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993845
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】先ダイシング法を行う微細加工されたウェーハへの接着剤の被覆
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   H01L21/78 Q
   H01L21/78 M
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-514235(P2013-514235)
(86)(22)【出願日】2011年6月3日
(65)【公表番号】特表2013-531889(P2013-531889A)
(43)【公表日】2013年8月8日
(86)【国際出願番号】US2011039070
(87)【国際公開番号】WO2011156228
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2014年6月2日
(31)【優先権主張番号】61/352,563
(32)【優先日】2010年6月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ファンキュ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・レオン
(72)【発明者】
【氏名】ラジ・ペディ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ユンサン
【審査官】 竹口 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−112345(JP,A)
【文献】 特開2000−124164(JP,A)
【文献】 特開2003−007652(JP,A)
【文献】 特表2005−532678(JP,A)
【文献】 特開2006−45406(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/052021(WO,A1)
【文献】 特開平8−217851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/301、21/52、21/58、21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回路を上面側に有する半導体ウェーハから個々の半導体回路を製造する方法であって、以下の工程:
(1)前記ウェーハの裏面側にテープを貼る工程;
(2)前記ウェーハに対して、該ウェーハの上面側の隣接する回路間にダイシング溝またはビアホールを、最終的な目標深さまたは僅かに深い深さまで形成する工程;
(3)前記ウェーハの裏面側からテープを除去し、該ウェーハの上面側にテープを貼る工程;
(4)前記ウェーハの裏面側から材料を除去することによりウェーハを薄くする工程;
(5)回路の裏面側に接着剤被膜を塗布する工程;
(6)前記接着剤を熱的または光化学的にBステージ硬化させる工程;
(7)前記ウェーハの上面側からテープを除去し、接着剤被膜にテープを貼る工程
を含み、該接着剤被膜が、
(i)融点が80〜130℃である固形エポキシ樹脂;
(ii)粘度が50mPas未満であり、沸点が150℃より大きいアクリレート樹脂;および(iii)以下の構造式を有する、ポリマーのメルカプタン−ペンダントシリコーン:
【化1】
(式中、nは5〜500の間の整数であり、mは1〜5の整数である)
を含む、該方法
【請求項2】
複数の回路およびはんだ突起物を上面側に有する半導体ウェーハから個々の半導体回路を製造する方法であって、以下の工程:
(1)前記ウェーハの裏面側にテープを貼る工程;
(2)前記ウェーハの上面側の隣接する回路およびはんだ突起物間で、ウェーハを完全に貫いて、ウェーハの裏面側のテープまでダイシングする工程;
(3)前記ウェーハの上面側に接着剤被膜を塗布する工程;
(4)前記接着剤を熱的または光化学的にBステージ硬化させる工程
を含み、該接着剤被膜が、
(i)融点が80〜130℃である固形エポキシ樹脂;
(ii)粘度が50mPas未満であり、沸点が150℃より大きいアクリレート樹脂;および(iii)以下の構造式を有する、ポリマーのメルカプタン−ペンダントシリコーン:
【化2】
(式中、nは5〜500の間の整数であり、mは1〜5の整数である)
を含む、該方法。
【請求項3】
2以上の半導体ウェーハから個々の半導体回路を製造する方法であって、前記ウェーハが該ウェーハの上面側に複数の回路を有し、かつ該ウェーハを貫いてビアホールを有し、以下の工程:
(1)第1のウェーハを供給する工程;
(2)第2のウェーハを供給し、該第2のウェーハの上面側に接着剤被膜を塗布する工程;
(3)前記接着剤を熱的または光化学的にBステージ硬化させる工程;
(4)前記第2のウェーハの上面側の接着剤被膜を前記第1のウェーハの裏面側に接触させ、熱および圧力を印加し、2つのウェーハを共に結合させる工程;
(5)任意に、さらなるウェーハを供給し、該さらなるウェーハの上面側に接着剤被膜を塗布する工程;
(6)前記さらなるウェーハの接着剤を熱的または光化学的にBステージ硬化させる工程;
(7)前記さらなるウェーハの上面側の接着剤被膜を前記第2のウェーハの裏面側に接触させ、熱および圧力を印加し、2つのウェーハを共に結合させる工程;
(8)任意に、次のウェーハのために工程(5)〜(7)を繰り返す工程;
(9)最下のウェーハの裏面側にテープを貼る工程;
(10)前記第1のウェーハの上面側の隣接する回路およびビアホール間で、複数のウェーハを完全に貫いて、最下のウェーハの裏面側のテープまでダイシングする工程
を含み、該接着剤被膜が、
(i)融点が80〜130℃である固形エポキシ樹脂;
(ii)粘度が50mPas未満であり、沸点が150℃より大きいアクリレート樹脂;および(iii)以下の構造式を有する、ポリマーのメルカプタン−ペンダントシリコーン:
【化3】
(式中、nは5〜500の間の整数であり、mは1〜5の整数である)
を含む、該方法
【請求項4】
前記接着剤被膜をスピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、またはニードルディスペンシング法(needle dispensing)により塗布する請求項1,2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記接着剤被膜がダイシングストリートおよびビアホールに実質的に存在しない請求項1,2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記接着剤被膜を5〜100マイクロメーターの範囲内の厚みで塗布する請求項1,2または3に記載の方法。
【請求項7】
塗布された接着剤が、ダイの縁の近傍で接着剤の厚みが減少するメニスカスを形成する請求項1,2または3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2010年6月8日に出願された米国仮特許出願第61/352,563号の利益を主張するものであり、当該出願の開示内容を参考文献として本明細書に組み入れるものとする。
【0002】
本発明は半導体ダイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電気機器および電子機器の小型化およびスリム化のために、より薄い半導体ダイが必要になってきている。より薄い半導体ダイを製造するための1つの方法に、個々のダイを切り出す半導体ウェーハの裏面側から過剰な材料を除去する方法がある。ウェーハの中には、通常の半導体回路に加えて、シリコン貫通ビア法(TSV)を用いてビアホールを微細加工されているものがある。過剰なウェーハは研削法で除去されるのが典型的であり、通常、裏面側研削法と呼ばれている。ウェーハを薄くする前に個々の半導体回路にダイシングする場合、当該方法は「先ダイシング法(dicing before grinding)」またはDBG法と呼ばれている。
【0004】
DBG法においては、ダイシングテープと呼ばれる支持テープをウェーハの裏面側に貼り、回路間でダイシング溝を、裏面側研削を行う予定の深さに合致する深さまで、または当該深さを過ぎる深さまで、ソー(saw)またはレーザーにより切り込む。ビアホールはこのとき、TSV法を用いて加工される。ダイシングテープはウェーハの裏面側から除去され、別の支持テープをウェーハの上面側に貼り、裏面側研削時において回路を保護する。ウェーハの裏面側の材料はビアホールおよびダイシング溝に到達するまで除去され、ダイを個片化する。
【0005】
裏面研削工程後、フィルム状接着剤被膜(通常はウェーハの形状に予備成形されている)をウェーハの裏面側全体に積層する。この接着剤は、あとで個々のダイを、選ばれた支持体に取り付けるのに使用される。当該フィルム状接着剤の使用により、当該フィルムを切るためのさらなるソーイング工程(sawing step)が必要とされる。さらなるソーイング工程がないと、ダイは接着剤フィルムにより互いに連結されたままであり、手に取って、設計された支持体に配置させることができない。
【0006】
研削法にはダイを周りに移動させる傾向があり、機械ソー(mechanical saw)を用いるのは困難なため、ダイシングストリートはもはや直線ではない。その代わりに、平行でないダイシング溝を切り込むようにプログラムできるレーザーソー(laser saw)が使用される。フィルムの代わりに、UV硬化性を有し得るものもある接着剤ペーストを用いると、当該接着剤被膜はダイシングストリートを被覆するので、再び、レーザーソーを用いることが必要となる。レーザーソーを使用すると遅くなり、またレーザーソー自体が高価で追加的な装置である。
【0007】
別のDBG法において、接着剤は、切り込まれたウェーハの裏面側にインクジェットヘッドを用いて正確に塗布することができる。しかしながら、この方法はかなりゆっくりであり、しかもかなり低粘度の液体を必要とする。
【0008】
アンダーフィル(underfill)を予め適用する方法でも同様の問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような問題の解決手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は半導体ウェーハの製造方法に関する。当該半導体ウェーハは複数の回路および/またははんだ突起物を該ウェーハの上面側に有し、ビアホール(via holes)を該ウェーハを貫いて有する。
【0011】
一実施態様においては、本発明は、複数の回路を上面側に有する半導体ウェーハから個々の半導体回路を製造する方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
(1)前記ウェーハの裏面側にテープを貼る工程;
(2)前記ウェーハに対して、該ウェーハの上面側の隣接する回路およびビアホール間にダイシング溝(dicing grooves)を、最終的な目標深さまたは僅かに深い深さまで形成する工程;
(3)前記ウェーハの裏面側からテープを除去し、該ウェーハの上面側にテープを貼る工程;
(4)前記ウェーハの裏面側から材料を除去することによりウェーハを薄くする工程;
(5)回路の裏面側に接着剤被膜(adhesive coating)を塗布する工程;
(6)前記接着剤を熱的または光化学的にBステージ硬化(B-stage curing)させる工程;
(7)前記ウェーハの上面側からテープを除去し、接着剤被膜にテープを貼る工程。
【0012】
第2の実施態様においては、本発明は、複数の回路およびはんだ突起物(solder bumps)を上面側に有する半導体ウェーハから個々の半導体回路を製造する方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
(1)前記ウェーハの裏面側にテープを貼る工程;
(2)前記ウェーハの上面側の隣接する回路およびはんだ突起物間で、ウェーハを完全に貫いて、ウェーハの裏面側のテープまでダイシングする工程;
(3)前記ウェーハの上面側に接着剤被膜を塗布する工程;
(4)前記接着剤を熱的または光化学的にBステージ硬化させる工程。
【0013】
第3の実施態様においては、本発明は、2以上の半導体ウェーハから個々の半導体回路を製造する方法であって、前記ウェーハが該ウェーハの上面側に複数の回路を有し、かつ該ウェーハを貫いてビアホールを有し、以下の工程を含む方法:
(1)第1のウェーハを供給する工程;
(2)第2のウェーハを供給し、該第2のウェーハの上面側に接着剤被膜を塗布する工程;
(3)前記接着剤を熱的または光化学的にBステージ硬化させる工程;
(4)前記第2のウェーハの上面側の接着剤被膜を前記第1のウェーハの裏面側に接触させ、熱および圧力を印加し、該2つのウェーハを共に結合させる工程;
(5)任意に、さらなるウェーハを供給し、該さらなるウェーハの上面側に接着剤被膜を塗布する工程;
(6)前記さらなるウェーハの接着剤を熱的または光化学的にBステージ硬化させる工程;
(7)前記さらなるウェーハの上面側の接着剤被膜を前記第2のウェーハの裏面側に接触させ、熱および圧力を印加し、該2つのウェーハを共に結合させる工程;
(8)任意に、次のウェーハのために工程(5)〜(7)を繰り返す工程;
(9)最下のウェーハの裏面側にテープを貼る工程;
(10)前記第1のウェーハの上面側の隣接する回路およびビアホール間で、複数のウェーハを完全に貫いて、最下のウェーハの裏面側のテープまでダイシングする工程。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ウェーハの上面側において複数の回路は、工業文献でよく提供されている半導体の製造方法に従って形成される。ウェーハは半導体材料であり、典型的には、シリコン、ヒ化ガリウム、ゲルマニウム、または類似の化合物半導体材料である。回路はウェーハの上面またはそれより下方または上方に形成することができ、また被膜、例えば不動態化層により保護することができる。本明細書中、これらの全てをウェーハの上面と呼ぶものとする。ビアホールは、あるウェーハから別のウェーハへの回路の通路であり、ウェーハの厚みを完全に貫いて形成される。
【0015】
本発明の方法で使用されるテープの一種は一般にダイシングテープと呼ばれている種類のものである。当該テープは多くの出所から市販されており、ひとつの形態においては、キャリヤ上の感圧性または紫外線過敏性接着剤からなっている。このようなテープの目的は、その後のダイシング作業中にウェーハを支持することである。
【0016】
ダイシング溝および/またはビアホールは、ウェーハの上面側において、隣接する回路間で、裏面研削後のウェーハの最終的目標深さまで形成される。作業によっては、ダイシング溝および/またはビアホールはウェーハの前面側において、ウェーハの目標深さよりも僅かに深く切り込まれる。このように僅かに深い切り込みは最終的な個々のダイの個片化(singulation)を促進する。ダイシング溝は、ダイシングストリート(dicing streets)、ダイシングライン(dicing lines)、またはダイシングトレンチ(dicing trenches)としても知られている。ダイシング溝および/またはビアホールの形成方法として、例えば、機械式またはレーザー式ダイシング法またはドリル法、および湿式または乾式エッチング法が挙げられる。
【0017】
ウェーハから過剰な材料を除去するために(ウェーハを薄くするために)、裏面研削工程を用いる場合、ダイシングテープをウェーハの裏面側から除去し、裏面研削テープとして一般に知られているテープを、通常は積層により、ウェーハの上面側に貼る。このような2つの補助的工程であるダイシングテープの除去工程および裏面研削テープの貼付工程を行う順序は重要ではない。裏面研削テープは、次の加工工程中、回路を保護し、かつ、ウェーハを切った後、回路を定位置に保持するように作用する。特定の実施態様においては、裏面研削テープはUVテープである。その接着剤は初期には粘着性があり、その後は照射により硬化して容易に剥離する。
【0018】
ウェーハを薄くする方法は効果的なあらゆる方法が使用できる。特定の実施態様においては、ウェーハの裏面側をウェーハの目標深さに合致する深さまで機械的に研削する。
【0019】
裏面研削作業の後、典型的には、当該ウェーハの裏面側に被膜を塗布する。このようなウェーハ裏面側被膜は接着剤であり、個々のダイを支持体に取り付けるために最終的に利用される。ウェーハ裏面側被膜の塗布は、あらゆる効果的な方法、例えばスピンコート法、スクリーン印刷法、型板印刷法、スプレー印刷法またはジェット印刷法により行われる。好ましい実施態様においては、当該塗布作業はスプレーコート法により行われる。
【0020】
スプレーコート法では、単位面積あたり、所定の比較的少量の接着剤を付着させる。液滴の寸法は1マイクロメーター〜1ミリメーターの範囲内であり、液滴の付着速度は100m/秒未満である。
【0021】
このような作業に好ましいスプレーコートヘッドは圧縮空気圧駆動式スプレーヘッド、例えばアジムテック(Asymtek)で販売されているスプレイヤー(sprayer)DJ2200である。
【0022】
液滴の寸法および付着速度を制御することにより、接着剤の厚みを制御することができるので、被覆される表面のトポグラフィー(topography)に合った非常に薄い被膜を塗布することができる。典型的には当該被膜は、5〜100マイクロメーターの範囲内の厚みに塗布される。
【0023】
かなり少量の接着剤がダイシング溝およびビアホールに入るかもしれないが、接着剤はダイシング溝およびビアホールに実質的に存在しない。
【0024】
ダイシング溝に入る被膜の量を有意に減少させることにより、接着剤はダイを互いに連結させず、ダイは個片化されたままである。
【0025】
薄い被膜を塗布するさらなる利点は、ダイシング溝が接着剤の流れに対する小規模バリアとして作用するので、個片化された各ダイ上の接着剤にメニスカスを形成させることである。メニスカスはダイの縁の近傍で接着剤厚みの僅かな減少をもたらし、これにより、さらなるソーイング工程が不要になるという利点が付与される。さらなるソーイング工程がない場合、ソーブレード(saw blades)の圧力に典型的に起因するソーイング線での付着力の増加がない。付着力の増加がない場合、ダイを手に取って、次の作業工程へ移動させることがより容易である。
【0026】
ビアホールに入る被膜の量を有意に減少させることにより、当該ホールが開いたままとなり、その後の除去を必要としない。
【0027】
被膜の化学的組成物は、後の加工要件を満たすあらゆる接着剤組成物である。そのような接着剤は当該分野で既知のものである。ある実施態様においては、当該被膜はBステージ化可能な液体である(あらゆる適切な塗布法、例えばスピンコート法、スプレーコート法、型板印刷法、スクリーン印刷法、またはジェット印刷法で塗布できる)。
【0028】
被膜組成物は、その目的のために適したまたは現在、利用されているあらゆる接着剤/封入剤被膜であってもよい。適切な被膜組成物は典型的にはエポキシ樹脂から製造され、ある場合には、固形のエポキシ樹脂、例えば、クレゾールノボラックエポキシ、フェノールノボラックエポキシ、ビスフェノール−Aエポキシ、およびフェノール環系および縮合環系から成る骨格(例えばジシクロペンチエニル基)を含むグリシジル化樹脂から成る群から選択されるエポキシ樹脂を含む。被膜組成物の1つの実施態様においては、エポキシ樹脂は、被膜の15〜40重量%の量で存在する。被膜組成物の別の実施態様においては、エポキシ樹脂は、融点が80〜130℃の固体である。
【0029】
当該エポキシ類と組み合わせて使用することができる他の適切な樹脂はアクリレート樹脂である。適切なアクリレート樹脂は、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、1,10デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリプロポキシレート(メタ)アクリレートから成る群から選択されるものを含む。
【0030】
他のアクリレート樹脂は、キョウエイシャケミカル社から入手できるポリペントキシレートテトラヒドロフルフリルアクリレート;サートマー社から入手できるポリブタジエンウレタンジメタクリレート(CN302、NTX6513)およびポリブタジエンジメタクリレート(CN301、NTX6039、PRO6270);ネガミケミカルインダストリーズ社から入手できるポリカーボネートウレタンジアクリレート(アートレジンUN9200A);ラドキュアスペシャリティーズ社から入手できるアクリル化脂肪族ウレタンオリゴマー(エベクリル230、264、265、270、284、4830、4833、4834、4835、4866、4881、4883、8402、8800−20R、8803、8804);ラドキュアスペシャリティーズ社から入手できるポリエステルアクリレートオリゴマー(エベクリル657、770、810、830、1657、1810、1830);およびサートマー社から入手できるエポキシアクリレート樹脂(CN104、111、112、115、116、117,118、119、120、124、136)を含む。
【0031】
さらにアクリレート樹脂は、単環アセタールアクリレート、環状アセタールを含む(メタ)アクリレート(例えば、サートマー社から入手できるSR531);THFアクリレート(例えば、サートマー社から入手できるSR285);置換シクロヘキシル(メタ)アクリレート(例えば、サートマー社から入手できるCD420);アセトアセトキシエチルメタクリレート、2−アセトアセトキシエチルアクリレート、2−アセトアセトキシプロピルメタクリレート、2−アセトアセトキシプロピルアクリレート、2−アセトアセタミドエチルメタクリレート、および2−アセトアセタミドエチルアクリレート;2−シアノアセトキシエチルメタクリレート、2−シアノアセトキシエチルアクリレート、N(2−シアノアセトキシエチル)アクリルアミド;2−プロピオニルアセトキエチルアクリレート、N(2−プロピオニルアセトキシエチル)メタクリルアミド、N−4−(アセトアセトキシベンジルフェニルアクリルアミド、エチルアクリロイルアセテート、アクリロイルメチルアセテート、N−エタクリロイルオキシメチルアセトアセタミド、エチルメタクリロイルアセトアセテート、N−アリルシアノアセタミド、メチルアクリロイルアセトアセテート、N(2−メタクリロイルオキシメチル)シアノアセタミド、エチル−a−アセトアセトキシメタクリレート、N−ブチル−N−アクリロイルオキシエチルアセトアセタミド、モノアクリル化ポリオール、モノメタクリロイルオキシエチルフタレート、およびそれらの混合物を含む。
【0032】
被膜組成物の1つの実施態様では、粘度が50mPas未満で、沸点が150℃より大きいアクリレートが選択される。被膜組成物の特定の実施態様では、アクリレートは、環の中に少なくとも1つの酸素を含む5員環または6員環を含む。被膜組成物の1つの実施態様では、アクリレート樹脂は被膜組成物の15〜50重量%である。
【0033】
エポキシ樹脂用の適切な硬化剤は、0より大きく50重量%までの範囲の量で存在し、限定されるものではないが、フェノール類、芳香族ジアミン類、ジシアンジアミド類、パーオキサイド類、アミン類、イミダゾール類、3級アミン類、およびポリアミド類を含む。適切なフェノール類は、スケネクタディインターナショナル社から市販されている。適切な芳香族ジアミン類は、1級アミン類であり、ジアミノジフェニルスルホンおよびジアミノジフェニルメタンが含まれ、シグマアルドリッチ社から市販されている。適切なジシアンジアミド類はSKWケミカルズ社から入手できる。適切なポリアミド類はエアープロダクツアンドケミカルズ社から市販されている。適切なイミダゾール類は、エアープロダクツアンドケミカルズ社から市販されている。適切な3級アミン類はシグマアルドリッチ社から入手できる。
【0034】
アクリレート樹脂の適切な硬化剤は、その量が0.1〜10%であり、特に限定されるものではないが、公知のアセトフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系およびパーオキサイド系の光開始剤のいずれかを含む。具体例として、ジエトキシアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、チオキサントン、2−エチルアントラキノン等を含む。BASF社により販売されている光開始剤のイルガキュアおよびダロキュアの系統が、有用な光開始剤の例である。
【0035】
被膜組成物は、熱により硬化可能な樹脂、およびUV光により開始されるフリーラジカル重合により硬化可能な樹脂を含むことも可能である。特定の実施態様においては、このような二重硬化被膜組成物は、熱により硬化可能なエポキシ樹脂、およびUV照射により硬化可能なアクリレート樹脂を含む。被膜組成物の一つの実施態様においては、エポキシ樹脂としてグリシジル化o−クレゾールホルムアルデヒドノボラック、およびアクリレート樹脂としてトリメチルシクロヘキシルアクリレートを含む。
【0036】
被膜組成物は反応性硫黄化合物、例えばチオールまたはジチオエステル、を含むこともできる。被膜組成物の1つの実施態様では、反応性硫黄化合物は、ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、オクチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、イソプロピルキサンチンジスルフィド、およびメルカプタン−ペンダントシロキサンポリマーから成る群から選択される。反応性硫黄化合物は、被膜組成物の0.1〜7重量%の量で存在する。
【0037】
メルカプタン−ペンダントシロキサンポリマーの1例は以下の構造式:
【化1】
(式中、nは5〜500の間の整数であって、繰り返し単位の重合数を示し、mは1〜5の整数である)を有する。ポリマーのメルカプタン−ペンダントシロキサンは、被膜組成物の0.1〜7重量%の量で存在する。
【0038】
被膜組成物の一つの実施態様においては、当該組成物は、(i)融点が80〜130℃である固形エポキシ樹脂;(ii)粘度が50mPas未満であり、沸点が150℃より大きいアクリレート樹脂;および(iii)以下の構造式を有する、ポリマーのメルカプタン−ペンダントシリコーンを含む:
【化2】
(式中、nは5〜500の間の整数であり、mは1〜5の整数である)。
【0039】
いくつかの被膜組成物においては、導電性フィラーまたは非導電性フィラーのいずれを存在させることもできる。適切な非導電性フィラーの具体例として、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、バーミキュライト、雲母、ウォラストナイト、炭酸カルシウム、チタニア、砂、ガラス、硫酸バリウム、ジルコニウム、炭化珪素、窒化硼素、ダイアモンド、アルミナ、および有機ポリマーを含み、該有機ポリマーは限定されるものではないが、ハロゲン化エチレンポリマー、例えば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、および塩化ビニルを含む。適切な導電性フィラーの具体例として、カーボンブラック、グラファイト、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウムを含む。特定の種類のフィラーが重要というのではなく、応力低減やボンドライン制御等の特定の最終用途の要求に合わせて当業者により選択され得る。
【0040】
ボンド部のボンドラインの厚さを制御するために、配合物の中にスペーサーも含んでもよく、その種類および量は、選択された樹脂系および最終用途に適合するように、特定の用途の必要性に合わせて実施者により選択される;一般的には被膜組成物の10〜30重量%の範囲の量である。一実施態様においては、フィラーは、平均粒径が2μmより大きく、単ピークの粒径分布を示す球状である。粒径が小さくなり、2峰性の分布になると、許容できない程度の高いチキソトロピー指数の状態となり、スピンコート性能の不良および被膜厚みの不均一をもたらす。
【0041】
他の添加剤は、限定されるものではないが、接着促進剤、消泡剤、ブリード防止剤、レオロジーコントロール剤、およびフラックス剤が含まれ、その種類および量は当業者には公知であり、被膜配合物の中に含有させてもよい。好ましい実施態様では、溶媒は当該組成物に用いない。
【0042】
被膜は熱的または光化学的にBステージ化されて室温で比較的不粘着になる。Bステージ化(およびその変形、例えばBステージ化可能)とは、当該接着剤が、硬化して不粘着性になるように、加熱されて、溶媒を除去することおよび/または部分的に硬化することを意味する。(被膜は、あとで個々のダイを支持体に取り付けるとき、ダイの取り付け中またははんだのリフロー中、加熱されて軟化して流動化させることができ、その後、高温に加熱されて最終硬化させることができる。)