特許第5993872号(P5993872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5993872触媒床をバイパスする少なくとも1回の工程を含む、切替可能な反応器を用いる、重質炭化水素供給原料の水素化処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993872
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】触媒床をバイパスする少なくとも1回の工程を含む、切替可能な反応器を用いる、重質炭化水素供給原料の水素化処理方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 45/00 20060101AFI20160901BHJP
   C10G 75/00 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   C10G45/00
   C10G75/00
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-548870(P2013-548870)
(86)(22)【出願日】2011年12月20日
(65)【公表番号】特表2014-507519(P2014-507519A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】FR2011000668
(87)【国際公開番号】WO2012095566
(87)【国際公開日】20120719
【審査請求日】2014年12月18日
(31)【優先権主張番号】11/00074
(32)【優先日】2011年1月10日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】バザー−バチ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ボワイエ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ギバール イザベル
(72)【発明者】
【氏名】マルシャル ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】プラン セシル
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−202370(JP,A)
【文献】 特開昭56−055489(JP,A)
【文献】 特開平05−247475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルテン、堆積物、硫黄含有不純物、窒素含有不純物および金属不純物を含有する重質炭化水素フラクションの水素化処理方法であって、炭化水素の供給原料および水素が、水素化処理の条件下に、温度:320〜430℃で、水素分圧:3〜30MPaで、空間速度(HSV):触媒の体積当たりかつ時間当たり0.05〜5で、水素ガス対液体炭化水素供給原料の比:200〜5000標準立方メートル/立方メートルで
、水素化処理触媒上に通され、少なくとも2個の触媒床をそれぞれ含む少なくとも2個の固定床水素化処理保護帯域において、該保護帯域は、周期的に用いられるように直列に配置され、以下:
− 保護帯域の失活および/または閉塞に至るまでの時間に等しいかそれより前の時点まで、供給原料が保護帯域の全ての触媒床中を通過する、工程a)、
− 保護帯域の失活および/または閉塞に至るまでの時間に等しいかそれより前の時点まで、供給原料が、失活および/または閉塞した触媒床をバイパスして、同じ保護帯域のまだ失活および/または閉塞していない次の触媒床上に導入される、工程a’)、
− 工程a’)は、失活および/または閉塞に至るまでの時間に等しいかそれより前の時点まで、供給原料が、同一の保護帯域のまだ失活および/または閉塞していない最後の触媒床上に導入されるまで繰り返され、
− 失活および/または閉塞した保護帯域は、バイパスされ、それが含む触媒は、再生され、および/または、新鮮な触媒と置換され、その間に、他の保護帯域(単数または複数)が用いられる、工程b)、
− 供給原料が、保護帯域の全ての触媒床中を通過する工程c)であって、先行する工程の間に触媒が再生された保護帯域は、他の全ての保護帯域の下流にあるように再接続され、前記工程は、保護帯域の失活および/または閉塞に至るまでの時間に等しいかそれより前の時点まで、継続される、工程c)、
− 保護帯域の失活および/または閉塞に至るまでの時間に等しいかそれより前の時点まで、供給原料が、同じ保護帯域のまだ失活および/または閉塞していない次の触媒床上に導入される、工程c’)であって、工程c’)は、保護帯域の失活および/または閉塞に至るまでの時間に等しいかそれより前の時点まで、同じ保護帯域のまだ失活および/または閉塞していない最後の触媒床上に供給原料が導入されるまで繰り返される、工程c’)
に定義される工程b)、c)およびc’)の連続的な繰り返しからなる方法。
【請求項2】
各保護帯域は、n個の床を有し、各床iは、体積Vを有し、保護帯域の全触媒体積Vtotは、n個の床の体積Vの合計であり;保護帯域のn−1個の第1の床に含まれる床iの各体積Vは、全体積Vtotの5%と、全体積Vtotを床の数nで除算して得られるものに由来する百分率との間で定義される体積Vを有し;2個の連続する床iおよびi+1について、最後の2個の連続する床Vn−1およびVを除き、第1の床の体積Vは、次の床の体積Vi+1以下であり、最後から2番目の床の体積Vn−1は、厳密に、最後の床の体積Vより小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a’)およびc’)の間に、保護帯域におけるバイパスされる触媒床(単数または複数)の最大体積は、式((n−1)Vtot)/nによって与えられた体積より小さいとして規定され、nは、触媒床の全数であり、Vtotは、保護帯域の全触媒体積であり、保護帯域のn個の触媒床の体積の合計によって規定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
水素化処理度は、温度上昇によって維持される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
各保護帯域の入口において、供給原料は、単一段あるいは連続する2段からなるろ過分配器板を通過し、前記板は、触媒床の上流に置かれる、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
供給原料は、保護帯域の各触媒床の上流のろ過分配器板を通過する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
固定床または沸騰床の水素化処理方法に先行することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法を実施するための設備であって、直列に配置された少なくとも2個の固定床反応器(R1a、R1b)を含み、各固定床反応器は、少なくとも2個の触媒床(A1、A2;B1、B2)を含み、各反応器の第1の床は、ガスのための少なくとも1個の入口パイプと、炭化水素供給原料のための入口パイプ(21、22)とを有し、前記供給原料入口パイプは、それぞれ、弁(V1、V3)を含み、かつ、共通のパイプ(3)によって接続され、各反応器は、少なくとも1個の出口パイプ(23、24)を有し、各出口パイプ(23、24)は、流出物の除去のための弁(V5、V6)を含み、各反応器の出口パイプ(23、24)は、弁(V2、V4)を有する追加パイプ(26、27)によって、下流の反応器の供給原料入口パイプ(22、21)に接続される、設備であって、該設備は、各反応器について、各触媒床のための供給原料入口パイプ(31、32)をさらに含み、前記パイプは、それぞれ、弁(V1’、V3’)を有し、第1の床の炭化水素供給原料のための前記入口パイプ(21、22)と接続され、設備の各弁は、別箇に開閉されることが可能であることを特徴とする、設備。
【請求項9】
各反応器の入口において、単一段あるいは連続する2段からなるろ過分配器板を含み、前記板は、触媒床の上流に置かれることを特徴とする請求項8に記載の設備。
【請求項10】
各触媒床の上流に、単一の段あるいは連続する2段からなるろ過分配器板を含むことを特徴とする請求項8または9に記載の設備。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2個の触媒床をそれぞれ含有する切替可能な固定床保護帯域のシステムを用いる、重質炭化水素フラクションの水素化処理方法であって、供給原料が全ての保護帯域中を連続的に通過する工程の間に供給原料と初めに接触させられる触媒床が失活および/または閉塞する毎に、供給原料の導入ポイントが下流にシフトされる、方法に関する。本発明はまた、この方法を実施するための設備に関する。
【0002】
炭化水素供給原料の水素化処理は、石油留分中の硫黄の量を低減させることおよび重質フラクションを、燃料および/または化学製品として品質向上させられ得る、より軽質のフラクションに転化させることがますます必要になるに従って精製業務においてますます重要になってきた。市販燃料に対して各国によって課せられた標準規格を考慮して、ますますより高い含有率の重質フラクション、ヘテロ原子および金属、および、ますますより低い含有率の水素を有する輸入原油を出来る限り品質向上させることが実際に必要である。
【0003】
接触水素化処理は、水素の存在下で、炭化水素供給原料を触媒と接触させることによって、アスファルテン、金属、硫黄および他の不純物の含有率を相当低減させることを可能にし、同時に、水素対炭素の比(H/C)を向上させ、かつ、それを、多かれ少なかれ部分的に、より軽質の留分に転換する。したがって、水素化処理(hydrotreating:HDT)は、特に、HSの生成を伴って供給原料から硫黄を除去する反応を意味する水素化脱硫(hydrodesulphurization:HDS)、NHの生成を伴って供給原料から窒素を除去する反応を意味する水素化脱窒(hydrodenitrogenation:HDN)、および沈殿によって金属を除去する反応を意味する水素化脱金属の反応を意味するが、水素化、水素化脱酸素、水素化脱芳香族、水素化異性化、水素化脱アルキル、および水素化脱アスファルトも意味する。
【0004】
重質供給原料、例えば、常圧残渣(atmospheric residue:AR)または真空残渣(vacuum residue:VR)を処理するために2タイプの水素化処理方法がある:固定床方法および沸騰床方法。Zongら(Recent Patents on Chemical Engineering, 2009, 2, 22-36)は、重質石油供給原料の処理において公知の種々の方法を要約している。
【0005】
固定床方法の技術により、その技術的成熟度、より低いコスト、並びに、安定かつ信頼性の高い性能のために最も幅広い工業的用途が見出された。これらの方法において、供給原料は、直列に配置された幾つかの固定床反応器中を流通し、第1の反応器(単数または複数)は、特に、供給原料の水素化脱金属(hydrodemetallization)(いわゆるHDM工程)、並びに一定の割合の水素化脱硫を行うために用いられ、最後の反応器(単数または複数)は、供給原料の深度精製(deep refining)(水素化処理工程、HDT)、特に水素化脱硫(いわゆるHDS工程)を行うために用いられる。流出物は、最後のHDT反応器から抜き出される。
【0006】
固定床方法によって精製において高い性能がもたらされる(5重量%以下の硫黄および300ppm以下の金属、特に、ニッケルおよびバナジウムを含有する供給原料からの、0.5重量%未満の硫黄を有し、20ppm未満の金属を含有する370℃留分の製造)。このようにして得られる種々の流出物は、良好な品質の重質燃料油、ガスオイルおよびガソリン、あるいは、他の装置、例えば接触分解のための供給原料の製造のための基礎原料としての機能を果たすことができる。
【0007】
この金属含有率を超えると、生じた金属の相当な沈着ために、第1の触媒床が迅速に失活し得ることが知られている。この失活を補うために、反応器の温度が上げられる。しかし、この温度上昇により、コークスの堆積が促進され、粒子内の閉塞(触媒細孔の目詰まり)および粒子外の閉塞(触媒床の目詰まり)のプロセスが加速される。供給原料中のこれらの金属含有率を超えると、沸騰床方法が一般的に好まれる。実際、これらの供給原料の固定床接触水素化処理によって提起される一つの問題が生じるのは、有機金属錯体を含有する石油フラクションの水素化処理反応の間に、これらの錯体の大部分が、水素、硫化水素、および水素化処理触媒の存在下で破壊されるためである。これらの錯体の金属成分は、次いで、固体硫化物の形態で沈殿し、これが、触媒に固着することとなる。このことは、バナジウム、ニッケル、鉄、ナトリウム、チタン、ケイ素および銅の錯体の場合に特によく当てはまり、これらの錯体は、石油の産地に応じて種々のレベルで原油中に自然に存在し、かつ、蒸留の操作の間に、高沸点フラクション、特に残渣中に濃縮される傾向がある。これらの不純物に加えて、コークスも沈着させられ、それらは、一緒に、非常に迅速に触媒系を失活させかつ閉塞させる傾向がある。これらの現象によって、固体を置換するために水素化処理装置が停止させられ、かつ、触媒が過剰消費されるに至り、これらを、当業者は最小限に抑えたいと願っている。
【0008】
これらの供給原料の固定床接触水素化処理によって提起される別の問題は、閉塞である。供給原料中に含まれるアスファルテンおよび堆積物が原因で、触媒床、特に、触媒床の上方部分、より具体的には、供給原料と接触させられる第1の触媒床の上方部分は、かなり迅速に閉塞しやすいことが知られており、この閉塞は、ヘッドロス(head loss)の増加によってまず明らかにされ、遅かれ早かれ、触媒を置換するために装置を停止させることが必要となる。
【0009】
したがって、失活および/または閉塞した、第1の触媒床を置換するために装置を停止させることが必要となった。したがって、このタイプの供給原料のための水素化処理方法は、装置を停止させることなく、出来る限り長い操作サイクルを可能にするように設計されなければならない
【背景技術】
【0010】
(技術水準)
種々の方法で、特に、主要反応器の上流に設置された保護床を用いることにより、固定床配置のこれらの欠点を解消するための試みがあった。保護床の主要な役割は、一定の割合の脱金属を行うことによって、並びに、閉塞に至り得る供給原料中に含まれる粒子をろ過することによって、下流の主要なHDMおよびHDT反応器の触媒を保護することである。保護床は、一般的に、第1のHDMセクションと、次の、第2のHDTセクションとを一般的に含む重質供給原料の水素化処理方法において、HDMセクション中に統合される。保護床は、一般的に、第1の水素化脱金属とろ過とを行うために用いられるが、水素と触媒の存在のために、他の水素化処理反応(HDS、HDN等)が、これらの反応器内で必然的に起こることとなる。
【0011】
したがって、HDM工程の頭部における1個以上の移動床反応器の設備が考慮されてきた(特許文献1または2)。これらの移動床の操作は、並流(例えば、SHELLのHYCON方法)、あるいは向流(例えば、Chevron Lummus GlobalのOCR方法、および本出願人のHYVAHL-M(登録商標)方法)であり得る。
【0012】
HDM反応器の前に固定床保護反応器を加えることも考慮されてきた(特許文献3および4)。ほとんどの場合、この保護反応器は、特に分離弁を用いることによってバイパスされ得る。これにより、閉塞に対する主要反応器の一時的な保護が提供される。
【0013】
さらに、特に本出願人によって、固定床の高性能を、高含有率の金属を有する供給原料を処理するための高い操作因子と組み合わせるシステムであって、アスファルテン、硫黄含有不純物および金属性不純物を含有する重質炭化水素フラクションのための少なくとも2回の工程において水素化処理する方法からなり、第1のいわゆるHDM工程の間に、炭化水素の供給原料および水素が、HDMの条件下に、HDM触媒上を通され、次いで、次の第2の工程の間に、第1の工程からの流出物が、HDTの条件下に、HDT触媒上を通される、システムも記載された(特許文献5および6)。HDM工程は、1個以上の固定床HDM帯域を含み、この固体床HDM帯域は、「切替可能な反応器」とも称される、少なくとも2個の保護HDM帯域によって先行され、この保護HDM帯域も、固定床設計のものであり、周期的に用いられるように直列に配置され、以下:
a)保護帯域が、それらのいずれか1個の失活時および/または閉塞時に最長でも等しい期間にわたって一緒に全て用いられる、工程、
b)失活したおよび/または閉塞した保護帯域がバイパスされ、それが含有する触媒が、再生されおよび/または新鮮な触媒と置換され、その間に、他の保護床(単数または複数)が用いられる、工程、
c)保護帯域が全て一緒に用いられ、先行工程の間に触媒が再生された保護帯域が再接続され、前記工程は、保護帯域のいずれか1個の失活時および/または閉塞時に最長でも等しい期間にわたって続けられる、工程
に規定される工程b)およびc)の連続的な繰り返しからなる。
【0014】
HYVAHL-F(登録商標)の名称によって知られる、この方法は、90%超の全体的な脱硫と、95%程度の全体的な脱金属とを提供し得る。切替可能な反応器の使用により、連続的なサイクルの操作が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第3910834号明細書
【特許文献2】独国特許発明第2124252号明細書(特開昭59−30890号公報)
【特許文献3】米国特許第4118310号明細書
【特許文献4】米国特許第3968026号明細書
【特許文献5】仏国特許出願公開第2681871号明細書(特開平5−202370号公報)
【特許文献6】米国特許第5417846号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
今や、驚くべきことに、切替可能な反応器に含まれる触媒の置換が必要になる前に、切替可能な反応器の使用時間を増大させることが可能であることが見出された。したがって、本発明は、本出願人によってFR2681871において記載されたような切替可能な反応器の性能を、各切替可能な反応器において少なくとも2個の触媒床をこの方法に統合することおよび本方法の所定の工程に、バイパス工程とも呼ばれる、失活および/または閉塞した触媒床をバイパスする少なくとも1回の工程を統合することによって向上させる。
【0017】
触媒床において、閉塞は、流れ方向において触媒床の上方部分において、特に、供給原料と接触させられる第1の触媒床の上方部分において経験的に起こる。同じことが、触媒の失活(金属の沈着)にも当てはまる。本発明によると、触媒床が失活および/または閉塞する毎に、この触媒床は、バイパスされ、供給原料の導入ポイントが、この床に対して下流に、同一の切替可能な反応器のまだ失活および/または閉塞していない次の触媒床上にシフトされる。したがって、反応器の最も閉塞および/または失活した部分(単数または複数)の連続するバイパス工程によって、切替可能な反応器の周期的操作を維持しながら、各切替可能な反応器の体積は、それが使い尽かされるまで(すなわち、その最後の触媒床も失活および/または閉塞するまで)完全に利用される。したがって、同じ反応器の失活および/または閉塞した床(単数または複数)の下流の床(単数または複数)は、より長い時間にわたり用いられる。このことは、供給原料が全ての反応器中を連続的に通過する、切替可能な反応器のサイクルの各工程の継続期間を増大させる効果を有し、このことにより、切替可能な反応器のより長い操作サイクルが提供される。
【0018】
サイクルのこの長期化によって、装置の操作要因の向上、並びに、時間の節約、操作コストの低減および新鮮な触媒の消費の低減に至る。本出願の目的は、したがって、切替可能な反応器のサイクルタイムを増加させることである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な説明)
本発明は、特許FR2681871に記載されたような保護帯域(切替可能な反応器)を用いて行われる水素化処理方法の改良を提供する。FR2681871による保護帯域の操作は、図1に記載されており、2個の保護帯域(または、切替可能な反応器)R1aおよびR1bを含む。この水素化処理方法は、一連のサイクルを含み、各サイクルは、連続する4工程:
− 供給原料が、反応器R1a、次いで反応器R1b中を連続的に通過する、第1の工程(以降、「工程a」と呼ばれる)、
− 供給原料が、反応器R1b中のみを通過し、反応器R1aは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる、第2の工程(以降、「工程b」と呼ばれる)、
− 供給原料が、反応器R1b、次いで反応器R1a中を連続的に通過する、第3の工程(以降、「工程c」と呼ばれる)、
− 供給原料が、反応器R1a中のみを通過し、反応器R1bは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる、第4の工程(以降、「工程d」と呼ばれる)
を含む。
【0020】
本方法の工程a)の間に、供給原料は、ライン(3)および開放弁V1を有するライン(21)を介して、ライン(21’)および固定触媒床Aを含む保護反応器R1aに導入される。この期間の間に、弁V3、V4および弁V5は閉じられる。反応器R1aからの流出物は、パイプ(23)、開放弁V2を有するパイプ(26)、およびパイプ(22’)を介して、固定触媒床Bを含む保護反応器R1bに送られる。反応器R1bからの流出物は、開放弁V6を有する、パイプ(24)および(24’)、並びに、パイプ(13)を介して、主要水素化処理セクション(14)に送られる。
【0021】
本方法の工程b)の間に、弁V1、V2、V4およびV5は閉じられ、供給原料は、ライン(3)、および開放弁V3を有するライン(22)を介して、ライン(22’)および反応器R1bに導入される。この期間の間に、反応器R1bからの流出物は、開放弁V6を有する、パイプ(24)および(24’)、並びに、パイプ(13)を介して、主要水素化処理セクション(14)に送られる。
【0022】
工程c)の間に、弁V1、V2およびV6は閉じられ、弁V3、V4およびV5は開である。供給原料は、ライン(3)およびライン(22)およびライン(22’)を介して、反応器R1bに導入される。反応器R1bからの流出物は、パイプ(24)、開放弁V4を有するパイプ(27)、およびパイプ(21’)を介して、保護反応器R1aに送られる。反応器R1aからの流出物は、開放弁V5を有する、パイプ(23)および(23’)、並びに、パイプ(13)を介して、主要水素化処理セクション(14)に送られる。
【0023】
工程d)の間に、弁V2、V3、V4およびV6は閉じられ、弁V1およびV5は開である。供給原料は、ライン(3)、並びに、ライン(21)および(21’)を介して、反応器R1aに導入される。この期間の間に、反応器R1aからの流出物は、開放弁V5を有する、パイプ(23)および(23’)、並びに、パイプ(13)を介して、主要水素化処理セクション(14)に送られる。
【0024】
次いで、サイクルは再度始まる。FR2681871による切替可能な反応器が機能することを可能とする、装置の弁の操作は、表1に表される。
【0025】
【表1】
【0026】
本発明によると、供給原料が2個の反応器中を連続的に通過する、サイクルの工程(工程a)および工程c))において、失活および/または閉塞した触媒床の追加的バイパス工程(工程a’)および工程c’))が、上記の方法の工程に加えられる。
【0027】
より具体的には、本発明は、アスファルテン、堆積物、硫黄含有不純物、窒素含有不純物および金属不純物を含有する重質炭化水素フラクションの水素化処理方法であって、炭化水素の供給原料および水素が、水素化処理の条件下に、水素化処理触媒上に通され、少なくとも2個の触媒床をそれぞれ含む少なくとも2個の固定床水素化処理保護帯域において、この保護帯域は、周期的に用いられるように直列に配置され、以下:
− 供給原料が、保護帯域の失活時および/または閉塞時に最長でも等しい期間にわたって、保護帯域の全ての触媒床中を通過する、工程a)、
− 保護帯域の失活時および/または閉塞時に最長でも等しい期間にわたって、供給原料は、失活および/または閉塞した触媒床をバイパスして、同じ保護帯域のまだ失活および/または閉塞していない次の触媒床上に導入される、工程a’)であって、工程a’)は、保護帯域の失活時および/または閉塞時に最長でも等しい期間にわたって、同じ保護帯域のまだ失活および/または閉塞していない最後の触媒床上に供給原料が導入されるまで繰り返される、工程a’)、
− 失活および/または閉塞した保護帯域は、バイパスされ、それが含む触媒は、再生されおよび/または新鮮な触媒と置換され、その間に、他の保護帯域(単数または複数)が用いられる、工程b)、
− 供給原料が、保護帯域の全ての触媒床中を通過する工程c)であって、先行する工程の間に触媒が再生された保護帯域は、他の全ての保護帯域の下流にあるように再接続され、前記工程は、保護帯域の失活時および/または閉塞時に最長でも等しい期間にわたって、継続される、工程c)、
− 保護帯域の失活時および/または閉塞時に最長でも等しい期間にわたって、同じ保護帯域のまだ失活および/または閉塞していない次の触媒床上に供給原料が導入される、工程c’)であって、工程c’)は、保護帯域の失活時および/または閉塞時に最長でも等しい期間にわたって同じ保護帯域のまだ失活および/または閉塞していない最後の触媒床上に供給原料が導入されるまで繰り返される、工程c’)、
− 失活および/または閉塞した保護帯域はバイパスされ、それが含む触媒は、再生されおよび/または新鮮な触媒と置換され、その間、他の保護帯域(単数または複数)が用いられる、工程d)
に定義される工程b)、c)、およびc’)の連続的な繰り返しからなる方法に関する。
【0028】
保護帯域、特に、供給原料と接触させられる第1の保護帯域は、徐々に、金属、コークス、堆積物および種々の他の不純物でいっぱいになる。保護帯域が含む触媒(単数または複数)が、実質的に、金属および種々の不純物で飽和した時に、その帯域は、触媒(単数または複数)の置換および/または再生を行うために、接続を外されなければならない。好ましくは、触媒は、置換される。この時点は、失活時および/または閉塞時と呼ばれる。失活時および/または閉塞時は、供給原料、操作条件および用いられる触媒(単数または複数)に関連して変動するが、それは、一般的に、触媒性能の降下(流出物中の金属および/または他の不純物の濃度の上昇)、一定の水素化処理を維持するのに必要とされる温度の上昇、あるいは、閉塞の特定の場合における、ヘッドロスの大幅な増加によって表される。閉塞度を表す、ヘッドロスΔpは、帯域のそれぞれについてサイクルを通して継続的に測定され、帯域中の流れの通過が部分的に妨げられることに由来する圧力の上昇によって定義され得る。温度も、2帯域のそれぞれについて、サイクルを通して継続的に測定される。
【0029】
失活時および/または閉塞時を定義するために、当業者は、まず、処理されるべき供給原料、操作条件および選択される触媒に応じて、ヘッドロスΔpおよび/または温度の最大許容値を規定し、そこから出発して、触媒床のバイパスあるいは保護帯域の接続解除に進むことが必要である。失活時および/または閉塞時は、ヘッドロスおよび/または温度の限界値に達する時の時間としてこのように規定される。原則として、ヘッドロスおよび/または温度の限界値は、反応器の最初の試運転の間に確認される。重質フラクションの水素化処理方法の場合、ヘッドロスの限界値は、一般的に0.3〜1MPa(3〜10バール)、好ましくは0.5〜0.8MPa(5〜8バール)である。温度の限界値は、一般的に、400〜430℃であり、ここおよび以降において、温度は、触媒床の平均測定温度に相当する。失活に達したことを(発熱性反応のより低いレベル)を示す、温度についての別の限界値は、触媒床における温度差(ΔT)が、平均温度値にかかわらず、5℃未満になることである。
【0030】
図2は、2個の切替可能な反応器のシステムを用い、各反応器が2個の触媒床を含む、本発明による水素化処理方法であって、触媒床がバイパスされ得る、方法を示す。図2に示される場合において、本方法は、一連のサイクルを含み、各サイクルは、連続する6工程:
− 供給原料が、反応器R1aの全ての触媒床、次いで、反応器R1bの全ての触媒床中を連続的に通過する、工程a)、
− 供給原料が、第1の反応器R1aの失活および/または閉塞した触媒床A1をバイパスし、下流の次の触媒床A2に導入され、次いで、反応器R1bの全ての触媒床中を通過する、工程a’)(バイパス工程)、
− 床A2の失活および/または閉塞の後、供給原料が、反応器R1bのみの全て触媒床中を通過し、反応器R1aは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる、工程b)、
− 供給原料が、反応器R1bの全ての触媒床、次いで、反応器R1aの全ての触媒床中を連続的に通過する、工程c)、
− 供給原料が、反応器R1bの失活および/または閉塞した触媒床B1をバイパスし、下流の次の触媒床B2に導入され、次いで、反応器R1aの全ての触媒床中を通過する、工程c’)(バイパス工程)、
− 床B2の失活および/または閉塞の後、供給原料が、反応器R1aのみの全ての触媒床中を通過し、反応器R1bは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる、工程d)
を有し、工程a)、b)、c)およびd)は、FR2681871に記載された方法と同一である。
【0031】
したがって、工程a)において、供給原料は、ライン(3)、並びに、開放弁V1を有する、ライン(21)および(21’)を介して、保護反応器R1aに導入され、固定床A1および固定床A2中を通過する。この期間の間に、弁V1’、V3、V3’、V4およびV5は閉じられる。反応器R1aからの流出物は、パイプ(23)、開放弁V2を有するパイプ(26)、およびパイプ(22’)を介して、保護反応器R1bに送られ、触媒床B1およびB2中を通過する。流出物は、開放弁V6を有する、パイプ(24)および(24’)、およびパイプ(13)を介して、反応器R1bから取り出される。
【0032】
徐々に、触媒床、特に、供給原料と接触させられる第1の触媒床(反応器R1aのA1)は、閉塞および/または失活させられることになる。供給原料と接触させられた第1の触媒床が、失活および/または閉塞したとみなされる時の時点は、保護帯域のヘッドロスΔpおよび/または温度から測定される。ヘッドロスおよび/または温度についての最大許容値から、失活および/または閉塞した触媒床をバイパスするか、あるいは、反応器内の触媒の置換に進むかのいずれかが必要であり、ヘッドロスおよび/または温度についての最大許容値は、事前に規定される。この限界値に達する毎に、閉塞および/または失活した触媒床は、反応器の外側にあるバイパス装置により、前記反応器の下流のまだ失活および閉塞していない次の触媒床上に供給原料を導入することによってバイパスされる。
【0033】
したがって、図2によると、一旦、ヘッドロスおよび/または温度の最大値に達すると、弁V1は閉じられ、供給原料は、開放弁V1’を有するライン(31)を介して、反応器R1a中の次の触媒床A2上に導入される(工程a’))。失活および/または閉塞した触媒床A1は、したがって、バイパスされる。触媒床A2は、第1の床A1よりずっと少なく失活および/または閉塞させられ、このことにより、より長い時間にわたってより下方の床A2を用いることによって、第1の期間の長さを相当増加させることが可能となる。
【0034】
徐々に、この次の触媒床A2もまた、閉塞および/または失活する。ヘッドロスおよび/または温度の最大値に達した時、工程b)が行われ、この工程の間に、供給原料は、反応器R1bのみの全ての触媒床中を通過し、反応器R1aは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる。したがって、工程b)の間に、弁V1、V1’、V2、V3’、V4およびV5は閉じられ、供給原料は、ライン(3)、並びに、開放弁V3を有する、ライン(22)および(22’)を介して、反応器R1bに導入される。この期間の間に、反応器R1bからの流出物は、開放弁V6を有する、パイプ(24)および(24’)を介して、並びに、パイプ(13)を介して取り出される。
【0035】
反応器R1bの下流での、触媒が再生されたまたは置換された反応器R1aの再接続の後、本方法の工程c)が行われ、この工程の間に、供給原料は、反応器R1b、次いで反応器R1a中を連続的に通過する。したがって、工程c)の間に、弁V1、V1’、V2、V3’および弁V6は閉じられ、弁V3、V4およびV5は開である。供給原料は、ライン(1)、並びに、ライン(22)および(22’)を介して、反応器R1bに導入される。反応器R1bからの流出物は、パイプ(24)、開放弁V4を有するパイプ(27)、およびパイプ(21’)を介して、保護反応器R1aに送られる。反応器R1aからの流出物は、開放弁V5を有する、パイプ(23)および(23’)を介して、並びに、パイプ(13)を介して取り出される。
【0036】
徐々に、触媒床、特に反応器R1bの第1の床B1が、閉塞および/または失活させられていくことになる。そこで、工程a’)の場合と全く同様に、工程c’)と呼ばれる、失活および/または閉塞した触媒床B1のバイパスが行われる。したがって、図2によると、一旦、ヘッドロスおよび/または温度の最大値に達すると、弁V3は閉じられ、供給原料は、開放弁V3’を有するライン(32)を介して反応器中において、反応器R1b中の次の床B2上に導入される。失活および/または閉塞した触媒床B1は、したがってパイパスされる。触媒床B2は、第1の触媒床B1よりずっと少なく閉塞および/または失活させられ、このことにより、より長い時間にわたってより下方の床B2を用いることによって、第3の期間の長さを相当増加させることが可能となる。
【0037】
徐々に、この次の触媒床B2も閉塞および/また失活させられる。ヘッドロスおよび/または温度の最大値に達する時に、工程d)が行われ、この工程d)の間に、供給原料は、反応器R1aのみの全ての触媒床中を通過し、反応器R1bは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる。この工程の間に、弁V1’、V2、V3、V3’、V4およびV6は閉じられ、弁V1およびV5は開である。
【0038】
供給原料は、ライン(3)、並びに、ライン(21)および(21’)を介して、反応器R1aに導入される。この期間の間に、反応器R1aからの流出物は、開放弁V5を有する、パイプ(23)および(23’)、並びに、パイプ(13)を介して取り出される。
【0039】
反応器R1bにおける触媒の再生および/または置換の後、この反応器は、反応器R1aの下流で再接続され、サイクルが再度始まる。
【0040】
本発明に従ってバイパスされ得る、2個の触媒床を有する2個の切替可能な反応器の機能化を可能とする装置の弁についての操作が、表2に提示される。
【0041】
【表2】
【0042】
外部のバイパスを有する切替可能な反応器のシステムは、3個以上の触媒床、例えば、3、4または5個の触媒床を有する反応器に拡張され得る。この場合、一旦、ヘッドロスおよび/または温度の最大値に達すると、外部のバイパスは、それぞれの追加のラインおよび弁によって、失活および/または閉塞した触媒床の下流の次の触媒床に供給する。したがって、上記に規定されたような工程a’)または工程c’)が繰り返される。この触媒床のバイパスは、流れの方向で反応器の最後の触媒床が失活および/または閉塞するまで継続することができる。その場合、反応器に含まれる触媒を置換することが必要である。図3は、本発明による水素化処理方法であって、2個の切替可能な反応器のシステムを用い、各反応器は、3個の触媒床A1、A2、A3およびB1、B2およびB3をそれぞれ含む、方法を示す。図3において、工程a)、a’)、b)、c)、c’)およびd)(並びに参照符号)は、図2と同一であるが、例外として、工程a’)およびc’)が繰り返される。この繰り返しのみが、この図について記載されることとなる。
【0043】
したがって、工程a’)の間に、一旦、触媒床A1、次いで、触媒床A2が失活および/または閉塞すると、弁V1’は閉じられ、供給原料は、開放弁V1”を有するライン(33)を介して、反応器R1a中の次の触媒床A3上に導入される。この第3の床A3も失活および/または閉塞させられた時に、工程b)(反応器R1aの置換/再生)が行われる。同様に、工程c’)の間に、一旦、触媒床B1、次いで、触媒床B2が失活および/または閉塞させられると、弁V3’は閉じられ、供給原料は、開放弁V3”を有するライン(34)を介して、反応器R1b中の次の触媒床B3上に導入される。この第3の床B3も閉塞および/または失活させられた時に、工程d)(反応器R1bの置換/再生)が行われる。
【0044】
好ましい実施形態において、保護帯域中に含まれる触媒床は、異なるかあるいは同一である体積のものであり得るが、最終の床の体積が、他の床の各体積より大きいという条件を有する。好ましくは、一つの同一の保護帯域中の触媒床は、流れ方向に増加する体積を有する。実際、閉塞および/または失活は、主に第1の触媒床上で起こるので、この第1の床の体積を最小にすることが有利である。
【0045】
各床の体積は、以下のように定義され得る:
各保護帯域は、n個の床を有し、各床iは、体積Vを有し、反応器の全触媒体積Vtotは、n個の床の体積Vの合計である:
tot=V+...V+Vi+1...+Vn−1+V
保護帯域のn−1個の第一の床に含まれる床iの各体積Vは、全体積Vtotの5%と全体積Vtotを床の数nで除算したものに由来する百分率との間で定義される:
5% Vtot≧V≧(Vtot/n)
2個の連続する床iおよびi+1について、第1の床の体積Vは、次の床の体積Vi+1以下であるが、最後の2個の連続する床Vn−1およびVは別である。ここで、最後から2番目の床の体積Vn−1は、厳密に、最後の床の体積Vより小さい。
【0046】
保護帯域中2個の触媒床の場合、第1の床の体積V1は、したがって、5〜49%であり、第2の床の体積は、51〜95%である。
【0047】
保護帯域中3個の触媒床の場合、第1の床の体積V1は、したがって、5〜33%であり、第2の床の体積V2は、5〜33%であり、第3の床の体積V3は、34〜90%である。
【0048】
工程a’)およびc’)の工程の間の、保護帯域内のバイパスされる触媒床(単数または複数)の最大体積は、「バイパス可能な部分」とも呼ばれ、これは、n−1個の床の体積V+...V+Vi+1...+Vn−1の合計(あるいは、全体積−最後の床nの体積)である。バイパスされる触媒床(単数または複数)のこの最大値は、式((n−1)Vtot)/nによって表される百分率より低いとして定義される(nは、保護帯域中の床数であり、Vtotは、保護帯域の全触媒体積である)。
【0049】
一般的には((n−1)Vtot)/n以上である、バイパスされる部分の所定値から出発して、第1の反応器の最後の床中に蓄積された汚染物質および金属の量および第2の反応器中に蓄積された汚染材料および金属の量は、非常に類似する。したがって、ヘッドロスおよび/または温度の上昇が観察されることがあり、2個の反応器内でほぼ同時に最大値に達し、これにより、反応器の連続的な機能不全に至る可能性がある。したがって、第2の反応器を保護するため、および、第2の反応器においてヘッドロスおよび/または温度の増加がある前に第1の反応器を再生する時間を有するために、第1の反応器においてバイパスされ得ない最小体積を有することは重要である。したがって、供給原料が全ての反応器中を連続的に通過する工程の継続期間を最大にするために、限界値を超えることなく、反応器の実質的な量をバイパスすることは有益である。
【0050】
好ましい実施形態において、触媒調節(catalyst conditioning)セクションが用いられ、これにより、操作しながら、すなわち装置の操作を停止させることなく、これらの保護帯域を切り替えることが可能となる:まず、中程度の圧力(10〜50バールであるがしかし、好ましくは15〜25バールである)で操作するシステムにより、接続解除された保護反応器で以下の操作を行うことが可能となる:洗浄、ストリッピング、冷却、その後の使用済み触媒の排出;次いで、新鮮な触媒の装填後の加熱および硫化;次いで、適切な設計のゲート弁による、加圧/減圧のための別のシステムにより、装置を停止させることなく、すなわち、その操作要因に影響を及ぼすことなく、これらの保護帯域の効率的な切替が可能となる。このことは、洗浄、ストリッピング、使用済み触媒の排出、新鮮な触媒の装填、加熱、および硫化の全ての操作が、接続を解除された反応器または保護帯域上で行われるからである。あるいは、操作しながら切替の手順を単純にするために、調節セクションにおいて前活性触媒(pre-activity catalyst)が用いられ得る。
【0051】
各保護帯域は、少なくとも2個の触媒床(例えば、2、3、4あるいは5個の触媒床)を含む。各触媒床は、少なくとも1個の触媒層を含み、触媒層は、1種以上の触媒を含み、触媒層は、少なくとも1個の不活性層で補足されている。触媒床(単数または複数)において用いられる触媒は、同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
したがって、外部のバイパスを有する切替可能な反応器を用いる水素化処理方法によって、サイクルの継続期間を大幅に増加させることが可能となる。バイパスのために、バイパス工程の間に供給原料は切替可能な反応器においてより短い滞留時間を有する。最後の反応器の出口において一定の水素化処理度を維持するために、保護帯域内の温度は、したがって徐々に上昇させられる。温度はまた、触媒の失活に対抗するために、サイクルの間に全体的に上昇させられる。しかし、この温度の上昇は、コークスの沈着を促進し、閉塞のプロセスを加速する。したがって、過度の温度上昇を制限するために、バイパスされる部分は、一層制限されなければならない。バイパスされる反応器の部分は、したがって、サイクルタイムにおける利得と制限された温度上昇との間の最適化に基づく。
【0053】
好ましい変形例によると、各保護帯域の入口において、供給原料は、単一段または連続する2段からなるろ過分配器板を通過し、前記板は、触媒床の上流、好ましくは、各触媒床の上流に置かれる。特許US2009177023に記載される、このろ過分配器板は、ろ過媒体を含む特別な分配器板によって供給原料中に含まれる閉塞粒子を捕捉することを可能にする。したがって、ろ過板により、切替可能な保護帯域を用いる水素化処理方法においてサイクルタイムの利得を増大させることが可能となる。このろ過板は、反応器に供給する気相(水素および供給原料のガス部分)と液相(供給原料の液体部分)との分配を提供しながら同時に、供給原料に含まれる不純物に対するろ過機能を提供する。更に、ろ過板は、触媒床の表面全体にわたって混合物のより一様な分配を確実にし、かつ、板自体の閉塞期の間の不良な分配の問題を制限する。
【0054】
より正確には、ろ過板は、ろ過および分配のための装置であり、前記装置は、触媒床の上流に置かれる板を含み、前記板は、ほぼ水平でありかつ反応器の壁と一体であるベースからなり、これに、ほぼ垂直の煙突体が固定されており、煙突体は、気体の吸入のために頂部において開であり、下流に置かれた触媒床に供給することを目的として気−液混合物を取り出すために底部において開であり、前記煙突体は、液体の吸入のために連続的な側部スリットまたは側部オリフィスによってそれらの高さの所定の割合にわたって穴空けされており、前記板は、煙突体を取り囲むろ過床を支持し、前記ろ過床は、触媒床の粒子のサイズ以下であるサイズの粒子の少なくとも1個の層からなる。ろ過床は、一般的には不活性な粒子からなるが、触媒床の触媒と同一であるかまたは同一の系統に属する触媒の少なくとも1層を含んでもよい。この最後に記載された変形例により、反応器中の触媒床の体積を低減させることが可能となる。
【0055】
ろ過分配器板はまた、2個の段を含み、かつ、2個の連続する板からなり得る:保護床を支持する第1の板は、内部粒子からなり、かつ、触媒床の触媒と同一であるかまたは同一の系統に属する触媒の少なくとも1層からなる。この板は、特許US2009177023に記載されている。この床は、格子に配置され、液相は、保護床中を流れ、ガスは、煙突体を通じて、保護床および第1の板中を通過する。閉塞の終わりに、液体およびガスは、煙突体中を同時に流れ、その間に、第2の板がその分配機能を提供し続けることを可能にする。第2の板は、ガスおよび液体の分配の機能を提供する:それは、液体の通過のための側部穴を有する煙突体からなるか、あるいは、バブルキャップまたはベイパー・リフト(vapour-lift)からなり得る。
【0056】
別の変形例によると、本発明による水素化処理方法は、切替およびバイパスの同じ原理に従って機能する3個以上(例えば3、4または5個)の切替可能な反応器を含み得、各切替可能な反応器は、少なくとも2個の触媒床を有する。
【0057】
図4は、2個の触媒床をそれぞれ有する3個の保護帯域の場合を示す。この方法は、その好ましい実施形態において、一連のサイクルを含み、各サイクルは、連続する9工程:
− 供給原料は、反応器R1aの全ての触媒床、次いで反応器R1bの全ての触媒床、最後に反応器R1cの全ての触媒床中を、連続的に通過する、工程a)、
− 供給原料は、第1の反応器R1aの失活および/または閉塞した触媒床A1をバイパスし、反応器R1aの下流の次の触媒床A2に導入され、次いで、反応器R1bの全ての触媒床、最後に、反応器R1cの全ての触媒床中を通過する、工程a’)(バイパス工程)、
− 供給原料は、反応器R1bの全ての触媒床、次いで、反応器R1cの全ての触媒床中を通過し、反応器R1aは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる、工程b)、
− 供給原料は、反応器R1bの全ての触媒床、次いで反応器R1cの全ての触媒床、最後に反応器R1aの全ての触媒床中を連続的に通過する、工程c)、
− 供給原料は、第2の反応器R1bの失活および/または閉塞した触媒床B1をバイパスし、反応器R1bの下流の次の触媒床B2に導入され、次いで反応器R1cの全ての触媒床、最後に反応器R1aの全ての触媒床中を通過する、工程c’)(バイパス工程)、
− 供給原料は、反応器R1cの全ての触媒床、次いで反応器R1aの全ての触媒床中を通過し、反応器R1bは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる、工程d)、
− 供給原料は、反応器R1cの全ての触媒床、次いで反応器R1aの全ての触媒床、最後に反応器R1bの全ての触媒床中を連続的に通過する、工程e)、
− 供給原料は、第3の反応器R1cの失活および/または閉塞した触媒床C1をバイパスし、反応器R1cの下流の次の触媒床C2に導入され、次いで反応器R1aの全ての触媒床、最後に反応器R1bの全ての触媒床中を通過する、工程e’)(バイパス工程)、
− 供給原料は、反応器R1aの全ての触媒床、次いで反応器R1bの全ての触媒床中を通過し、反応器R1cは、触媒の再生および/または置換のためにバイパスされる、工程f)
を有することとなる。
【0058】
図4に図式的に示された場合において、本方法は、図2に関して記載された方法と同等の方法で機能する(読みやすさのために、ラインのための参照符号は、省略されている)。
【0059】
工程a)の間に、弁V1、V2、V7および弁V8は開であり、弁V1’、V3、V3’、V5、V6、V9、V10およびV10’は閉じられる。
【0060】
工程a’)の間に、弁V1’、V2、V7、V8は開であり、弁V1、V3、V3’、V5、V6、V9、V10およびV10’は閉じられる。
【0061】
工程b)の間に、弁V3、V7およびV8は開であり、弁V1、V1’、V2、V3’、V5、V6、V9、V10およびV10’は閉じられる。
【0062】
工程c)の間に、弁V3、V7、V9およびV5は開であり、弁V1、V1’、V2、V3’、V6、V8、V10およびV10’は閉じられる。
【0063】
工程c’)の間に、弁V3’、V7、V9およびV5は開であり、弁V1、V1’、V2、V3、V6、V8、V10およびV10’は閉じられる。
【0064】
工程d)の間に、弁V10、V9およびV5は開であり、弁V1、V1’、V2、V3、V3’、V6、V7、V8およびV10’は閉じられる。
【0065】
工程e)の間に、弁V10、V9、V2およびV6は開であり、弁V1、V1’、V3、V3’、V5、V7、V8およびV10’は閉じられる。
【0066】
工程e’)の間に、弁V10’、V9、V2およびV6は開であり、弁V1、V1’、V3、V3’、V5、V7、V8およびV10は閉じられる。
【0067】
工程f)の間に、弁V1、V2およびV6は開であり、弁V1’、V3、V3’、V5、V7、V8、V9、V10およびV10’は閉じられる。
【0068】
2個の触媒床を有する2個の切替可能な反応器のシステムのための、上記方法の異なる変形は、3個以上の切替可能な反応器を有するシステムにも適用される。これらの異なる変形は、特に:調節システム、反応器当たり3個以上の触媒床を有する可能性、上記に定義されたような異なる体積を有する床を有する可能性、1個の保護帯域内のバイパスされる触媒床(単数または複数)の体積が((n−1)Vtot)/n未満であること、温度を上昇させることによって水素化処理度を維持すること、第1の触媒床の上流、好ましくは各触媒床の上流の各反応器の入口におけるろ過板の統合である。
【0069】
本発明による方法が行われる際の温度は、有利には320〜430℃であってよく、好ましくは350〜410℃であり、水素分圧は、有利には3〜30MPaであってよく、好ましくは10〜20MPaであり、空間速度(HSV)は、有利には、触媒の体積当たりかつ時間当たり0.05〜5の供給原料の体積であってよく、水素ガス対液体炭化水素供給原料の比は、有利には200〜5000標準立方メートル/立方メートルであってよく、好ましくは500〜1500標準立方メートル/立方メートルである。操作中の各切替可能な反応器のHSVの値は、好ましくは約0.5〜4h−1、ほとんどの場合約1〜2h−1である。切替可能な反応器のHSVの全体値、および各反応器のHSVの値は、反応温度を制御しながら(発熱性の効果を制限しながら)、最大限のHDMを達成するように選択される。
【0070】
用いられる水素化処理触媒は、好ましくは公知の触媒であり、一般的に、水素化脱水素機能を有する少なくとも1種の金属または金属化合物を担体上に含む細粒状の触媒である。これらの触媒は、有利には、少なくとも1種の第VIII族金属、一般的にはニッケルおよび/またはコバルトからなる群から選択される金属、および/または、少なくとも1種の第VIB族金属、好ましくは、モリブデンおよび/またはタングステンを含む触媒である。用いられる担体は、一般的に、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、粘土、およびこれら鉱物の少なくとも2種の混合物を含む群から選択される。
【0071】
供給原料の注入の前に、本発明による方法において用いられる触媒は、好ましくは、金属種を少なくとも部分的に硫化物に転換するための硫化処理に付され、その後に処理されるべき供給原料と接触させられる。硫化による活性化のこの処理は、当業者に周知であり、文献にすでに記載されている任意の方法によって、現場内(in situ)、すなわち、反応器内か、あるいは現場外(ex situ)のいずれかで行われ得る。
【0072】
本発明による方法において処理される供給原料は、有利には、常圧残渣、直接蒸留からの真空残渣、原油、抜頭原油、脱アスファルト油、転化方法からの残渣(例えば、コーキングに由来するもの、あるいは、固定床、沸騰床、または移動床の水素化転化に由来するもの)、任意の起源の重質オイル、特に、オイルサンドまたはオイルシェールから得られるものから選択され、単独または混合して用いられる。これらの供給原料は、有利には、そのままあるいは炭化水素フラクションまたは炭化水素フラクションの混合物により希釈されて用いられ得、この炭化水素フラクションまたは炭化水素フラクションの混合物は、流動接触分解(fluid catalytic cracking:FCC)法から得られる生成物、オイルの軽質留分(Light Cycle Oil:LCO)、オイルの重質留分(Heavy Cycle Oil:HCO)、デカンテッドオイル(decanted oil:DO)、FCCからの残渣から選択され得るか、若しくは、蒸留、ガスオイルフラクション、特に、真空蒸留によって得られるもの(Vacuum Gas Oil:VGO)から得られ得る。重質供給原料はまた、有利には、石炭液化方法から得られる留分、芳香族抽出物、または任意の他の炭化水素留分、あるいはまた、非石油供給原料、例えば、石炭、バイオマスまたは産業廃棄物(例えば、再利用ポリマー)の熱転化(触媒を有するかまたは有さず、および水素を有するまたは有しない)からの気体状および/または液状の誘導体(固体を含有せず、あったとしてもわずかである)を含み得る。
【0073】
前記重質供給原料は、一般的に、1重量%超の、500℃超の沸点を有する分子を有し、金属Ni+Vの含有率は、1重量ppm超、好ましくは20重量ppm超であり、ヘプタン中に沈殿したアスファルテンの含有率は、0.05重量%超、好ましくは1重量%超である。
【0074】
本発明による水素化処理方法は、選択されたHSVおよびHDM触媒の効率に起因して、切替可能な反応器の出口において供給原料の50%以上のHDM(より正確には50〜95%のHDM)をもたらすことを可能にする。
【0075】
切替可能な保護帯域のシステムを用いる本発明による水素化処理方法であって、少なくとも1回のバイパス工程を含む、方法は、有利には、重質炭化水素供給原料の水素化処理のための固定床または沸騰床方法に先行する。
【0076】
好ましくは、それは、本出願人のHyvahl-F(登録商標)方法であって、少なくとも1回の水素化脱金属工程と少なくとも1回の水素化脱硫工程とを含む、方法に先行する。本発明による方法は、好ましくは、HDMセクションの上流で統合され、切替可能な反応器は、保護床として用いられる。図1に示される場合において、供給原料(1)は、パイプ(1)を介して切替可能な保護反応器(単数または複数)に入り、パイプ(13)を介して前記反応器(単数または複数)を出る。保護反応器(単数または複数)を出る供給原料は、パイプ(13)を介して、水素化処理セクション(14)に、より正確には、1個以上の反応器を含むHDMセクション(15)に入る。HDMセクション(15)からの流出物は、パイプ(16)を介して抜き出され、次いで、1個以上の反応器を含むHDTセクション(17)に送られる。最終流出物は、パイプ(18)を介して抜き出される。
【0077】
本発明はまた、本発明による方法を実施するための設備(図2)であって、この設備は、少なくとも2個の固定床反応器(R1a、R1b)を含み、この固定床反応器(R1a、R1b)は、直列に配置され、各反応器は、少なくとも2個の触媒床(A1、A2;B1、B2)を含み、各反応器の第1の床は、ガスのための少なくとも1個の入口パイプ(図示されない)と、炭化水素供給原料のための入口パイプ(21、22)とを有し、供給原料のための前記入口パイプは、それぞれ、弁(V1、V3)を含み、かつ、共通のパイプ(3)によって接続され、各反応器は、少なくとも1個の出口パイプ(23、24)を有し、各出口パイプ(23、24)は、流出物の除去のための弁(V5、V6)を含み、各反応器の出口パイプ(23、24)は、弁(V2、V4)を有する追加パイプ(26、27)によって、下流の反応器の供給原料の入口パイプ(22、21)に接続される、設備であって、この設備は、各反応器について、各触媒床のための供給原料入口パイプ(31、32)をさらに含み、前記パイプは、それぞれ、弁(V1’、V3’)を有し、第1の床の炭化水素供給原料のための前記入口パイプ(21、22)に接続され、設備の各弁は、別個に開閉されることが可能であることを特徴とする、設備に関する。
【0078】
好ましい変形例によると、設備は、各反応器の入口において、触媒床の上流、好ましくは各触媒床の上流に置かれる、単一段または連続する2段からなるろ過分配器板を含む。
【0079】
(実施例1(本発明に合致しない))
供給原料は、中東起源の常圧残渣(AR)(Arabian Medium)および中東起源の真空残渣(VR)(Arabian Light)の混合物(70/30重量%)からなる。この混合物は、周囲温度での高い粘度(0.91cP)、994kg/mの密度、コンラドソン炭素(Conradson carbon)(14重量%)およびアスファルテン(6重量%)の高い含有率、並びに、ニッケル(22重量ppm)、バナジウム(99重量ppm)および硫黄(4.3重量%)の高いレベルによって特徴付けられる。
【0080】
水素化処理方法は、FR2681871に記載された方法に従って行われ、2個の切替可能な反応器の使用を含む。2個の反応器は、CoMoNi/アルミナの水素化脱金属触媒を装填される。サイクルは、工程a)〜工程d)を統合するとして定義される。失活時および/または閉塞時に達するのは、ヘッドロスが0.7MPa(7バール)に達した時、および/または床の平均温度が405℃に達した時、および/または触媒床上での温度差が5℃未満になった時である。
【0081】
方法が行われる際の圧力は19MPaであり、反応器入口における温度は、サイクル開始時に360℃、サイクルの終了時に400℃であり、反応器当たりHSV=2h−1であり、60%前後の脱金属度が維持される。
【0082】
表3および図5は、FR 2681871による方法(バイパスなし)についての操作時間(日)示す。したがって、図5によると、技術水準による反応器R1a(ベースケースR1a)の曲線は、サイクルの開始時に、第1の反応器R1aにおけるヘッドロスがその最大許容値(Δp=0.7MPaまたは7バール)まで増加し、その後に、触媒の置換が必要であることを示す。技術水準(FR2681871)の場合、反応器R1aの操作時間は、したがって210日である。触媒反応器R1aの触媒の置換の際、反応器R1b内のヘッドロスは、約3バールに達していた。供給原料が反応器R1b、次いで新鮮な触媒を含む反応器R1a中を通過する次の期間の間、反応器R1bのヘッドロスは、最大許容値まで増加し、これは、操作の320日に達した。第2のサイクルは、これらの切替可能な反応器について想定され得、反応器R1bの触媒を置換する。
【0083】
第1の帯域の失活時および/または閉塞時(または操作時間)は、したがって210日である。全体として、第1のサイクルについて320日のサイクルタイムおよび2回のサイクルについて627日のサイクルタイムが観察される。
【0084】
(実施例2(本発明に合致する))
実施例1と同一の供給原料および同一の操作条件下で同一の触媒により水素化処理方法が繰り返されるが、本方法は、2個の切替可能な反応器の使用を含み、各反応器は、2個の触媒床を含み、第1の触媒床は、20%の体積を表し、第2の触媒床は80%の体積を表す(20%のバイパス)ことおよび本発明による方法が行われることを例外とする。サイクルは、工程a)〜d)を統合するものとして定義される。失活時および/または閉塞時に達するのは、ヘッドロスが0.7MPa(7バール)に達する時、および/または、床の平均温度が405℃に達する時、および/または、触媒床上の温度差が5℃未満になった時である。HDM度は、60%に維持される。
【0085】
表3および図5は、各反応器において20%のバイパス部分を有する本発明による方法についての操作時間(日)の利得を示す。
【0086】
【表3】
【0087】
したがって、20%のバイパスされた部分を統合する水素化処理方法により、外部バイパスなしの方法によるHDM度と等価である75%のHDM度を維持しながら、第1のサイクルの継続期間を60日(すなわち、18.75%)、2サイクルについて114日(すなわち、18.2%)増加させることが可能であることが理解され得る。
【0088】
図5は、外部バイパスなしで反応器R1aおよびR1bにおいて(FR2681871に従う;ベースケースR1aおよびR1bについての曲線)および20%の外部バイパスを有する反応器R1aおよびR1bにおいて(本発明に従う;曲線PRS ByP R1aおよびR1b)測定された時間の間のヘッドロスの変動を示す。
【0089】
したがって、図5によると、反応器R1aの曲線(曲線PRS ByP R1a)は、サイクルの開始時において、第1の反応器R1aにおけるヘッドロスがその最大許容値(Δp=0.7MPaまたは7バール)まで増加することを示す。この値に達した時に、第1の床はバイパスされ、供給原料は、反応器R1aの第2の床A2上に導入される。次いで、反応器内のヘッドロスは、突然降下し(曲線PRS ByP R1aにおけるフック状部分)、初期のヘッドロスに戻ることなく、次の(第2の)床が閉塞し、ヘッドロスが限界値に再び達するポイントまで再び徐々に増加する。工程a’)の終わりに得られた時間の利得は、ΔtC1− R1a(32日)である。次いで、反応器R1aのヘッドロスは、急激に降下しているが、これは、システムが、反応器R1aの触媒が置換される工程b)に移ったからである。供給原料は、その時、反応器R1b中のみを通過し、次いでR1bおよび置換後のR1aを通過する。
【0090】
曲線R1b(曲線PRS ByP R1b)は、時間に応じた、第2の反応器R1bのヘッドロスを示す。外部のバイパスによる、時間の利得の同じ現象が、工程c’)の終わりに観察される:ΔtC2−R1b(60日)。
【0091】
図2は、切替可能な反応器の第2のサイクルも示す。連続する2サイクルの後の時間の利得は、ΔtC2−R1b(114日)である。サイクル数が多いほど、時間の利得も大きくなることが理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1】2個の保護帯域(または、切替可能な反応器)R1aおよびR1bを含む、FR2681871による保護帯域の操作を示す図である。
図2】2個の切替可能な反応器のシステムを用い、各反応器が2個の触媒床を含む、本発明による水素化処理方法であって、触媒床はバイパスされ得る、方法を示す図である。
図3】本発明による水素化処理方法であって、2個の切替可能な反応器のシステムを用い、各反応器は、3個の触媒床A1、A2、A3およびB1、B2およびB3をそれぞれ含む、方法を示す図である。
図4】2個の触媒床をそれぞれ有する3個の保護帯域の場合を示す図である。
図5】外部バイパスなしで反応器R1aおよびR1bにおいて(FR2681871に従う;ベースケースR1aおよびR1bについての曲線)および20%の外部バイパスを有する反応器R1aおよびR1bにおいて(本発明に従う;曲線PRS ByP R1aおよびR1b)測定された時間の間のヘッドロスの変動を示す。
図1
図2
図3
図4
図5