特許第5993878号(P5993878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5993878患者状態の自動診断のための二酸化炭素モニタリングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993878
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】患者状態の自動診断のための二酸化炭素モニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/083 20060101AFI20160901BHJP
   A61M 16/00 20060101ALN20160901BHJP
   G01N 33/497 20060101ALN20160901BHJP
【FI】
   A61B5/08 100
   !A61M16/00 370Z
   !G01N33/497 A
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-554054(P2013-554054)
(86)(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公表番号】特表2014-513996(P2014-513996A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】IB2012050807
(87)【国際公開番号】WO2012114286
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2015年2月5日
(31)【優先権主張番号】61/445,192
(32)【優先日】2011年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/576,907
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ババエイザディ サイード
(72)【発明者】
【氏名】ヘルフェンバイン エリック
(72)【発明者】
【氏名】バトラー ダウン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ソフィア ホワイ
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−508036(JP,A)
【文献】 特表2012−505693(JP,A)
【文献】 特表2003−532442(JP,A)
【文献】 特表2008−529714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/083
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿管、高度気道確保、心肺蘇生、若しくは換気治療を受けている患者で使用するための二酸化炭素モニタリングシステムであって、
患者から呼吸ガスを受信し、前記呼吸ガスの二酸化炭素含量を検知して二酸化炭素測定信号を生成する二酸化炭素センサと、
前記二酸化炭素測定信号を二酸化炭素信号ストリームとしてデジタル化して保存するプリプロセッサと、
複数の呼吸候補を識別する、前記二酸化炭素信号ストリームに応答する呼吸候補検出器と、
各呼吸候補に対する呼気終末二酸化炭素値を決定する呼吸キャラクタライザと、
各呼吸候補を吸候補の前記呼気終末二酸化炭素値に基づいて真の呼吸若しくは外部CPR圧迫の結果として生じるアーチファクトとして分類する呼吸分類器と、
患者治療の有効性を決定する、前記呼吸分類器からの複数の真の呼吸に応答する治療分析器と、
前記患者治療の有効性に関する出力命令を提供する出力生成器とを有する、二酸化炭素モニタリングシステム。
【請求項2】
前処理された二酸化炭素信号ストリームからノイズを除去するフィルタをさらに有する、請求項1に記載の二酸化炭素モニタリングシステム。
【請求項3】
前記呼吸キャラクタライザがさらに各呼吸候補について波形基線、波形振幅、波形周波数、波形勾配、波形リズム、及び波形コーナーの少なくとも一つを決定し、さらに前記呼吸分類器が各呼吸候補について波形基線、波形振幅、波形周波数、波形勾配、波形リズム、及び波形コーナーの少なくとも一つに基づいて各呼吸候補を真の呼吸若しくはアーチファクトとして分類する、請求項1に記載の二酸化炭素モニタリングシステム。
【請求項4】
前記治療分析器への治療入力をさらに有し、前記治療分析器がさらに前記患者治療の有効性を決定するために前記治療入力に応答する、請求項1に記載の二酸化炭素モニタリングシステム。
【請求項5】
前記治療入力が前記二酸化炭素センサにおける前記呼吸ガスの受信の開始を示すスイッチを有する、請求項4に記載の二酸化炭素モニタリングシステム。
【請求項6】
前記出力命令が、呼吸が受信されないこと若しくは異常二酸化炭素波形の一つを有する異常状態に応答する、請求項1に記載の二酸化炭素モニタリングシステム。
【請求項7】
前記出力命令が前記高度気道確保をチェックするための視覚若しくは聴覚の助言を有する、請求項1に記載の二酸化炭素モニタリングシステム。
【請求項8】
前記出力命令が前記複数の真の呼吸からの呼気終末二酸化炭素値における減少を有する異常状態に応答する、請求項1に記載の二酸化炭素モニタリングシステム。
【請求項9】
前記出力命令が心肺蘇生の有効性の視覚若しくは聴覚の助言を有する、請求項8に記載の二酸化炭素モニタリングシステム。
【請求項10】
前記出力命令が気道閉塞、無呼吸、若しくは望ましくない換気率の一つを有する異常状態に応答する、請求項1に記載の二酸化炭素モニタリングシステム。
【請求項11】
前記出力命令が患者チェック若しくは換気装置調節設定の一つを有する、請求項10に記載の二酸化炭素モニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された医療二酸化炭素(CO2)モニタリングシステム、及び特に患者に適用される挿管若しくは他の高度な気道確保療法若しくは心肺蘇生(CPR)療法、若しくは呼吸療法の有効性を自動的に決定するCO2モニタリングシステムに関する。呼吸療法は喘息などの閉塞性気道疾患のための気管支拡張剤への反応を観察することを含み得る。こうした治療の有効性はCO2波形の変化する形状に見られ得る。システムは治療中の自己心拍再開(ROSC)の発生も決定する。
【背景技術】
【0002】
CO2モニタリングシステムは現在患者の呼吸を観察するために病院の手術室及び集中治療室で利用されている。一般的にこうしたシステムは患者の酸素摂取量及び呼吸CO2を観察する高性能でかなり大きな換気システムである。しかしながら、より高度なCO2モニタリングが望ましい他の状況がある。一つの状況は、先端が患者の気道の中に挿入される呼吸装置によって患者に空気が供給される、挿管若しくは高度な気道確保(advanced airway placement)である。もう一つは心停止に襲われた患者へのCPRの適用である。もう一つは患者が閉塞性気道疾患、例えば喘息などから呼吸困難になっているとき、及び呼気CO2が観察されながら気管支拡張剤などの呼吸療法が適用されているときである。こうした状況では、Koninklijke Philips North America{Andover,MA}によって製造されるMRx除細動器モニタなどの携帯装置が望ましく、これは院内で使用され得るが持ち運びでき、事故現場若しくは心停止した患者の場所へ運ばれることができる。こうした携帯モニタはこれらの状況の各々において適用される処置の有効性を決定するために患者のCO2呼気を観察しCO2波形を解釈することができることが望ましい。
【0003】
例えば、挿管は誤って適用される場合患者の命にかかわる可能性がある困難な手順で有名である。チューブが肺の代わりに消化管に誤って送られる、認識されていない食道挿管は、来院前の気道確保において大きな危険であり、無酸素性脳傷害の長期後遺症及び死につながり得る。場合によっては、患者が現場で最初は正しく挿管されていたとしても、気管内チューブ(ETT)は救急科への搬送中に気管から移動してしまうかもしれない。ある研究において、救急科に到着する患者の全体の誤った気道確保率は驚くべき25%であり、うち16.7%が食道であった。加えて、ETTの正しい留置を確認する観察法は信頼できないことがわかっている。高度な声門上気道(supraglottic advanced airways)の使用は誤挿管率を減少させたが、これらの装置もまたそれに続く悲惨な結果を伴って誤留置される可能性がある。
【0004】
過換気による死は心肺蘇生中に生じるもう一つのよくある生命にかかわる気道確保問題である。少なくとも一つの研究は、一見したところ十分な訓練にもかかわらず、専門救助者が院外CPR中に常に患者を過換気することを示している。研究は過度の換気率が冠動脈かん流圧と生存率を著しく減少させることも示した。認識されていない、不注意による過換気は現在不良な心停止からの生存率に寄与している可能性がある。CPRの存在下で、換気率の決定は一般的に使用されるインピーダンス法よりもCO2波形を用いてより正確に実行されることができ、呼気終末CO2の分析と組み合わされるとき、これは不注意による過換気の検出のための有効な方法となり得る。外傷性脳損傷の存在下での過換気もまた極めて有害であり、脳虚血をもたらし得る。
【0005】
有効なCPRは心停止患者にとって重要な処置として広く認識されている。CPRは一般に適用されるが、その質は不十分な訓練若しくは介護者の疲労のために悪いことが多い。必要なことは実施されたCPRが有効であるか否かの介護者へのリアルタイム表示である。CPRが有効でない場合、介護者は技術を向上させるように指導されることができる。発明者らはCPR品質の一つの指標が患者の呼気CO2プロファイルにあるかもしれないことを認識した。
【0006】
上述の処置の各々は、成功の場合、自己心拍再開(ROSC)をもたらす。携帯モニタがROSCの発生を自動的に認識し、その表示を救助者に与えることも望ましい。同様に、ROSC後の自己心拍の喪失はetCO2値における急落として最初に検出され、CPRを再開するための指標となり得る。
【0007】
肺気腫、喘息、慢性気管支炎若しくは嚢胞性線維症などの閉塞性気道疾患などから呼吸困難の患者は、その気道を確保するために気管支拡張剤などの薬剤を投与されることが多い。CO2波形の形状は、閉塞性気道を診断するため、及び処置の有効性を観察するための両方に使用されることができる。
【0008】
CO2分析技術、すなわちカプノグラフィは、患者のCO2呼気の傾向に基づいて患者の状態を決定するために現在使用されている。従来技術及び共同譲渡された特許出願、表題"Carbon Dioxide Monitoring System"(WO2010/052608)は、挿管、高度気道確保、CPR処置、若しくは換気の最中にCO2モニタリング及び解釈を提供する携帯モニタリング装置に組み込まれるカプノグラフモニタを記載する。装置は患者に適用されている特定の処置を識別するための入力設定を組み込み、その処置中に予測され得る呼吸状態にモニタが反応するようになっている。
【0009】
上述の問題から、発明者らは、必要なものは心血管治療の有効性についてフィードバックを与える改良されたカプノグラフィシステムであることを認識した。システムにおける改良は呼吸の自動検出、アーチファクトからの真の呼吸の区別、及び治療中の患者のCO2呼気における生理学的傾向を考慮する治療分析に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特に心臓及び呼吸関連救助中の意思決定プロセスで臨床医を支援するためにCO2波形を分析することによって、臨床意思決定支援を提供するためのシステムを記載することが本発明の原理に従う。システムはユーザのニーズを処理ハードウェアと一致させる適切なレベルで動作可能なソフトウェアスケーラブルアルゴリズムにおいて実装され得る。システムのアルゴリズムは患者のCO2波形を分析し、パラメータとイベントを生成する。分析の結果は直接報告されるか、若しくは関連する臨床ステートメントを報告するために使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ソフトウェアアルゴリズムは好適にはマシン(ホスト)に依存しないように設計され、従って一つよりも多くの動作環境で使用されることができる。アルゴリズムの共通ソースコードは適切なレベルの機能性を実現するように、及びホストデバイスの動作環境に適合するように構成されることができる。アルゴリズムは動作環境仕様だけでなくCO2信号入力、制御、及び出力信号のための特定インターフェースを含む。
【0012】
従って本発明の目的は、救命の心血管救助技術が一般に利用される病院若しくは外来環境での使用のための携帯モニタリング装置にCO2モニタリング法が組み込まれるシステムを提供することである。方法は、方法が任意のコンピュータプロセッサ及びオペレーティングシステムハードウェアによって使用され得るように、マシンに依存しないソフトウェアアルゴリズムにおいて随意に実装され得る。
【0013】
本発明の別の目的は有用な治療情報を介護者に提供するために呼吸中のCO2の変化を処理して分析するCO2モニタリングシステムを提供することである。システムは患者の呼吸のCO2レベルの測度である信号を生成するCO2センサを使用する。CO2信号はCO2モニタによってデジタル化され記録される。CO2信号ストリームは随意に"きれいな"CO2信号を生成するために低減されたノイズ成分とノイズレベルについて分析される。コーナー及びピークなどの波形の様々な特性が検出され測定される。真の呼吸からアーチファクトを決定して除去するために特性はアーチファクト検出器に適用される。そして提供されている推定処置と処置の有効性を識別するために真の呼吸のストリームが分析される。悪い呼吸状態が発見される場合、モニタは可聴若しくは可視の警報を発し得るか、及び/又はディスプレイ若しくはアナンシエータを用いて臨床助言ステートメントを発し得る。
【0014】
本発明の別の目的は患者のCO2呼気を用いて挿管、高度気道確保、若しくはCPR中の処置の有効性を決定するためのシステムを提供することである。システムは、患者が処置中に改善しているかどうか、又は気管内チューブ若しくは高度気道が適切に置かれているかどうかを決定するために真の呼吸のシーケンスにわたって呼気終末CO2測定値の新規の使用を有する。
【0015】
本発明の別の目的は自己心拍再開(ROSC)若しくは自己心拍喪失の発生を識別するためのシステムを提供することである。方法は除細動器などの医療救命装置に組み込まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】患者に動作可能なように接続される本発明のCO2モニタリングシステムをブロック図形式で図示する。
図2】CO2信号の典型的な呼吸候補部分のパラメータを図示する。
図3】カプノグラフィ波形から患者の状態を決定する方法のフローチャートを図示する。
図4】CPR圧迫を受けている患者のCO2信号のアーチファクト呼吸シーケンスを図示する。
図5】不注意で過換気されている患者から生成され得る呼吸速度傾向及び計算された呼気終末CO2(etCO2)傾向と並べられるCO2信号の典型的な呼吸シーケンスを図示する。
図6】誤挿管された患者のCO2信号の典型的な呼吸シーケンスを図示する。
図7】不適切なETT若しくは高度気道確保の場合に気道確保を分析しユーザガイダンスを提供する方法のフローチャートを図示する。
図8】CPRの有効性を決定するための方法で使用される測定されたetCO2信号と計算された呼吸速度をグラフ形式で図示する。
図9】ROSCを決定するための方法で使用される測定されたetCO2信号をグラフ形式で図示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
最初に図1を参照すると、CO2モニタ20とCO2分析器22を含むCO2モニタリングシステム14がブロック図形式で図示される。CO2モニタは対象患者10を観察するために使用されているよう図示される。CO2モニタ20はCO2を観察することができ、血圧、血中酸素、ECG及び同様のものなど、他の患者機能を観察することもできてもよい。CO2モニタ20はコントロール、ディスプレイ、及びインジケータライト、及び聴覚アラーム及びプロンプトも有し得る。
【0018】
患者の呼吸ガスはCO2モニタ20内のCO2センサ12に供給される。CO2センサ12は対象の呼気中のCO2ガス濃度を検知する。センサ12からのCO2測定信号はCO2プロセッサ22へ伝達される。CO2プロセッサ22はCO2モニタ20から離れて存在するものとして図1に図示される。しかしながら、本発明はそう限定されない。CO2プロセッサ22はモニタ20内に存在してもよく、別の装置であってもよく、若しくは代替的にソフトウェアモジュールとして構成されてもよい。
【0019】
CO2プロセッサ22はCO2信号をサンプルのストリームへデジタル化し、ストリームを後で使用するためにコンピュータメモリに保存するプリプロセッサ24を有する。デジタル化されたCO2信号ストリームは連続CO2波形をあらわす。波形は好適にはmmHgでのCO2の経時変化である。例示的なCO2信号ストリームは図2,4,5,6,8及び9に図示される。
【0020】
プリプロセッサ24から出力されるCO2信号ストリームは随意にノイズ低減フィルタ26においてノイズ成分を低減するために処理され得る。フィルタ26においてノイズ成分を分析するための一つの技術は、CO2信号ストリームの高周波数成分を分析することである。きれいなCO2波形は比較的わずかな高周波数成分を示す。従ってフィルタ26は信号ストリームノイズレベルを低減するデジタルローパスフィルタを有し得る。
【0021】
デジタル化されフィルタされたCO2信号ストリームは呼吸候補検出器30において第1の波形検出を受ける。CO2呼吸候補を検出するための一つの技術は連続CO2サンプルにおける差を検出することであり、これは事実上CO2波形の傾きを検出する。図2において例示的な呼吸候補シーケンス100を参照すると、バックグラウンドノイズ閾値レベル104からはしる急激に上昇する傾き108は患者呼気の開始の特性であるか、若しくはアーチファクトイベントを示し得る。呼気若しくはアーチファクトイベントのさらなる表示は、バックグラウンドノイズ閾値レベル104を下回る急激に下降する傾き110である。従って呼吸候補検出器30は不応期間によって分離される呼吸1及び呼吸2などの呼吸候補の時系列を識別するように動作する。
【0022】
まだ図1を参照すると、呼吸候補のシーケンスは次に呼吸キャラクタライザ32によって処理される。呼吸キャラクタライザ32は各呼吸候補に対して特性のセットを決定する。これらの特性は波形候補の基線、波形の振幅、前の候補に関する波形の周波数、波形のリズム、波形のコーナー、波形の傾き、及び波形の形状の特性を含み得る。
【0023】
呼吸候補特性は各候補波形が呼吸波形若しくはアーチファクトであるかどうかを評価するために呼吸分類器34において分類される。特に、外部CPR圧迫の結果として生じるアーチファクトは真の呼吸波形形状から特徴的な特性を持つ。呼吸分類器34はそれに従って呼吸候補を分析し、真の呼吸をアーチファクトから分離する。治療入力64は随意に分析の精度を向上させるために呼吸分類器34に治療識別子を伝達し得る。真の呼吸からアーチファクトを区別する方法は以下でより詳細に論じられる。
【0024】
呼吸分類器34は真の呼吸のシーケンスを治療分析器36へ伝達する。治療分析器36は少なくとも二つの真の呼吸の傾向に基づいて潜在する患者治療の有効性を決定するように動作する。例示的な決定はCPRの有効性、気管内チューブ(ETT)若しくは高度気道の適切留置及び/又は継続的な適切留置、及び救命治療中の自己心拍再開(ROSC)の発生である。加えて、CPR中の過換気若しくは低換気の発生が治療分析器36によって決定されることができる。
【0025】
治療入力64は随意に分析の精度を向上させるために治療分析器36へ提供され得る。例えば、挿管若しくは気道確保、又は気管支拡張剤治療の開始の開始時間が、治療入力スイッチなどのユーザ入力によって伝達され得る。以下により詳細に記載する通り、開始時間は気道確保分析において有用である。
【0026】
治療分析器36によって決定される患者治療の有効性はいくつかの方法で出力生成器40を介してまたユーザへ伝達され得る。ディスプレイ60は臨床ガイダンス生成器42によって生成される出力命令を提供し得るか、又はアラーム44によって生成されるアラーム若しくはアラートを表示し得る。アナンシエータ62は臨床ガイダンス生成器42からの可聴命令若しくはアラーム44からのアラーム信号を提供し得る。ディスプレイ60とアナンシエータ62はモニタ20内に存在するものとして図1に図示されるが、いずれも分析器22内に、若しくはネットワーク中央監視場所などの完全に異なる場所に配置されてもよいことが理解される。臨床ガイダンス命令は特定の問題若しくは困難が調査されるべきであること、若しくは代替的に患者が改善していることをユーザに通知する。異常若しくは誤用を示すために"呼吸が受信されていない"若しくは"異常CO2波形"などの出力命令が生成され得る。
【0027】
CO2モニタリングシステム20が患者に結合されるとき、これは挿管、CPR、若しくは換気などの患者に適用されている処置を識別するように設定されるべきである。これは手動スイッチ若しくは臨床医によって設定されるモニタリングシステムへの入力によってなされ得る。設定は使用されている特定治療装置によって自動的になされてもよい。例えば、挿管装置の空気路がCO2モニタ20に接続されるとき、モニタは空気路の接続を検知し、それによって挿管が観察されていることを知らされ得る。CPRの場合患者の胸部に置かれCPR中に押圧されるCPRパッドがモニタ20に接続され、CPRが実行されていることをモニタに知らせ得る。換気中に換気装置若しくはその空気路はモニタ20に接続されて換気が実行されていることをモニタに知らせ得る。治療計画の識別は適用されている治療計画中に予測され得る呼吸状態に特に反応するようにモニタ20を調整する。この治療の自動識別は治療入力64に付加的に若しくは代替的に供給され得る。
【0028】
図2は正常なCO2波形100の標準パラメータを図示する。患者が息を吐いて呼気フェーズが開始するとき、波形は呼気のCO2含量の持続的プラトーレベル106が得られるまで、急な傾き108で基線CO2値をあらわすバックグラウンドノイズレベル104から上昇する。波形100は持続的レベルに達するときにコーナーアルファ112を示す。患者が呼気を終えるとき、波形は下り行程の下降する傾き110に沿ってコーナーベータ114から次の吸気フェーズの開始の信号へ落ちる。そして波形は患者の呼吸の頻度と周期性でこのように繰り返す。
【0029】
図2におけるCO2呼吸波形の形状は他の識別可能で有用な特性を含む。波形コーナー102a,102b,102c,102d,103a,103b,103c及び103dは呼気と吸気の主要イベントを規定する。最大振幅点102e及び103eは各呼吸に対する呼気終末CO2(etCO2)値を規定する。プラトー形状106、若しくはプラトー形状106の一部は真の呼吸の指標になり得る。これらは急性気道閉塞の存在を決定するためにも使用され得る。上記パラメータは波形基線、波形振幅、波形周波数、波形勾配、及び波形リズムなどの呼吸特性を決定するために容易に使用されることができる。
【0030】
図3は臨床治療決定をガイドするためにユーザに情報を与えるためのカプノグラフィシステムを使用する方法を図示する。方法は患者装用式CO2センサからステップ312においてCO2データが受信されるときに開始される。CO2データはステップ314においてデジタル化されて保存され、随意にステップ326においてノイズを低減するためにフィルタされる。ステップ326の出力は患者からの呼吸のシーケンスを包含するCO2波形である。
【0031】
ステップ330においてCO2波形から呼吸候補が選択される。図2に戻って参照すると、ステップ330は連続CO2サンプルにおける差を検出すること、従って事実上CO2波形の傾きを検出することによってCO2呼吸候補を検出するための技術を組み込み得る。図2において例示的な呼吸候補シーケンス100を参照すると、バックグラウンドノイズ閾値レベル104からはしる急激に上昇する傾き108は患者の呼気の開始の特徴を示しているか、若しくはアーチファクトイベントを示している可能性がある。呼気若しくはアーチファクトイベントのさらなる表示は、バックグラウンドノイズ閾値レベル104を下回るそれに続く急激に下降する傾き110である。従って呼吸候補検出器30は不応期間によって分離される呼吸1及び呼吸2などの呼吸候補の時系列を識別するように動作する。そして得られる呼吸候補のシーケンスはさらなる処理のために呼吸候補注釈ステップ332へ提供される。
【0032】
呼吸候補のシーケンスのためのパラメータはステップ332で計算される。コーナー102a‐d、ピーク値102e、プラトー106勾配、上り行程(upstroke)108勾配、下り行程(downstroke)110勾配、基線値104、シーケンス周波数及びリズムの安定性が決定される。そしてパラメータは呼吸分類ステップ333に渡される。
【0033】
呼吸はステップ333においてアーチファクト若しくは真の呼吸として分類される。CO2信号ストリームにおけるアーチファクトの一つの原因はCPR中に導入される。CPRは速いペースで、一般的に毎分約100圧迫で胸部圧迫を加えることによって実行される。こうした速いがしっかりした圧迫は肺を圧迫させ、短く高い周波数増分で圧迫から跳ね返らせ、いくらかのガスを肺に循環させる。従ってCPRアーチファクトは典型的な呼吸、図2と同様の形状を示す可能性があり、又は図4に図示の通り"バンプ"470としてあらわれる可能性がある。
【0034】
ステップ333は次のアルゴリズムによってアーチファクトを区別する。アルゴリズムの精度はボタンなどのユーザ入力364若しくはCPRが実施されているときのCPR力センサ信号を用いて増加され得る。図2の一般的形状を持つCO2波形の場合、CPRアーチファクトは次式の場合呼吸2について決定される。
時間(103a‐102c)<T1*(平均呼吸ギャップ) 及び
時間(103d‐103a)<T2
T1は約0.4から0.5の範囲を持つ平均呼吸ギャップの固定割合であり、平均呼吸ギャップは真の呼吸の度に更新される動的な値であり、T2は約600ミリ秒の値を持つ適正な呼吸の持続期間の固定間隔である。
【0035】
図4の複数のバンプ形状470を持つCO2波形呼吸候補の場合、CPRアーチファクトは最大バンプ間隔460a、460b、若しくは460cが550ミリ秒よりも短い場合に決定される。バンプ間隔はCO2波形470がピーク‐ピークバンプ振幅の平均の75%に等しい閾値線450を越えるところで測定される。
【0036】
アーチファクトと分類される呼吸候補はステップ334において真の呼吸と分類される呼吸候補から分離される。アーチファクト呼吸候補は通常は破棄されない。CPRが実行されているという出力命令を提供するため、若しくはCPR中にCO2が肺で交換されているかどうかを示す呼気終末CO2測定値を得るために、アーチファクト候補のさらなる分析がステップ370で起こり得る。こうした測定値はCPRの有効性を決定するために有用である。
【0037】
真の呼吸はステップ334から呼吸シーケンス生成ステップ335へ渡される。ステップ335において、真の呼吸は呼気終末CO2傾向曲線520及び呼吸速度傾向曲線530のようなパラメータを決定するためにさらに処理される。ここで図5を参照すると、曲線520は真の呼吸etCO2値の移動平均など、既知の方法によって計算され得る。呼吸速度傾向曲線530はCO2換気信号ストリーム510によって示される通り、真の呼吸の移動出現頻度(running occurrence rate)など、既知の方法によって計算され得る。これらの値の出力は治療分析ステップ336へ伝達される。
【0038】
治療分析ステップ336は何らかの形で潜在する治療が有効であるか若しくは不完全であるかどうかを決定する。第1の決定は過換気の場合である。図5は520において下降しているetCO2値と組み合わせて毎分15呼吸などの閾値よりも大きい呼吸速度530が過換気状態540の指標であることを示す。こうした状態において、過換気信号がガイダンス及びアラート出力ステップ340へ提供され、救助者に換気を減らすよう警告する。
【0039】
治療分析ステップ336は患者における気管内チューブ若しくは高度気道の誤留置若しくは取り外しも検出する。図6は不適切な気管内挿管から生じるCO2波形600の一実施例を示す。胃の中のCO2のために挿管直後に見られる2、3の正常に見える真の呼吸620a及び620bは留置が適切であるという誤った観念につながり得る。しかしながら本発明の方法は、所定期間610、この場合は約20秒間、真の呼吸のシーケンスを連続的に分析し、不適切な気道確保が検出される場合に修正出力ガイダンスを提供する。
【0040】
挿管治療を分析する方法636は図7によって図示される。第1の真の呼吸がステップ710において受信され、ここでetCO2値が評価される。etCO2値が最初に3mmHgなどの下位閾値未満である場合、ステップ720は第1の呼吸アラートをステップ750において提供するよう指示をガイダンス出力ステップ640へ送る。第1の呼吸アラートはetCO2が低いというガイダンスを有する。
【0041】
しかしながら、第1の真の呼吸etCO2値が閾値を上回る場合、ステップ730において休止期間が入力される。20秒などの休止期間がステップ730において終了した後、第2の真の呼吸がステップ740において受信される。そして第2の真の呼吸は第1の真の呼吸と同様にステップ720において分析される。第2のetCO2値がある期間にわたって閾値以下へ減衰した場合、誤留置された若しくは取り外された気管内チューブが示される。そしてステップ720は挿管アラートステップ760においてアラートが生成されるようにガイダンス出力ステップ640へ指示を与える。第2の真の呼吸が閾値を超え続ける場合、適切なチューブ留置を示す第3の出力ガイダンスがステップ640において生成される。
【0042】
挿管治療を分析するための代替的方法は、図7の第1のステップ720を完全にスキップし、真の呼吸を分析する前に時間Tだけただ単に休止することを含む。この代替的方法は好適には挿管若しくは気道確保期間の開始を示す治療分析ステップ636へのユーザ入力664からの信号によって開始される。
【0043】
ここで図8を参照すると、進行中のCPRの有効性を分析する治療分析ステップ336が記載される。真の呼吸シーケンス及び対応するデータは図3に図示される前述の方法ステップに従って得られる。しかしながら、治療分析ステップ336はCPRの有効性を評価するために計算された呼吸速度傾向820及びetCO2傾向曲線800の検出された段階的変化をさらに使用する。図8の実施例において、呼吸速度820は15の高い閾値限度より下にあるが、etCO2傾向は2分間にわたって20から30mmHgへ、すなわち50%の増加を示す。etCO2が徐々に増加する呼吸速度820は進行中のCPRが有効であることを示す。有効な場合、対応する臨床ガイダンス命令が出力ステップ340において出される。他方で、呼吸速度820とetCO2傾向パラメータが有効CPRを示すことができない場合、対応する臨床ガイダンス命令及び/又はアラートが出力ステップ340において出される。
【0044】
CPR有効性決定の精度はCPR圧迫が生じているという表示で改良される。ユーザ入力364、CPRセンサからの情報、若しくはステップ334からのCPRアーチファクト呼吸候補のストリーム370のいずれかが、進行中のCPRを確認するために治療分析ステップ336において使用され得る。CPRセンサからの情報は呼吸分類ステップ333においてetCO2アルゴリズムと併用されることもできる。従って、方法は誤ったCPR有効性ガイダンスを回避することができる。
【0045】
ここで図9を参照すると、自己心拍再開(ROSC)の発生について分析する治療分析ステップ336が記載される。真の呼吸シーケンス及び対応するデータは図3に図示される前述の方法ステップに従って得られる。しかしながら、治療分析ステップ336はROSCの発生を確認するために計算された呼吸速度傾向820及びetCO2傾向曲線900の検出された急激な変化をさらに使用する。
【0046】
図9の実施例において、etCO2傾向は一つの真の呼吸から次の真の呼吸へ、50%よりも大きい25から60mmHgへの急増を示す。急増するetCO2は患者が自然に、補助なしでCO2を交換し始めたことを示す。ROSCが検出される場合、対応する臨床ガイダンス命令が出力ステップ340において出される。他方で、etCO2傾向パラメータがROSCを示すことができない場合、対応する臨床ガイダンス命令及び/又はアラートが出力ステップ340において出される。またetCO2傾向が60から10mmHgなどの急低下を示す場合も、自己心拍喪失が示され、CPRを再開するようアラートが提供され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9