(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、上記従来のティルターでは、上述した3方向以外にブームを動かすことができないため、椅子に腰掛けたままでは、ドラムセットのシンバルを所望の位置や角度に調整できないことがある。この場合、演奏者は、椅子から立ち上がって、ドラムよりも遠くに配置されているシンバルスタンドの近くまで行かざるを得なかった。そして、シンバルの位置を調整するため、シンバルスタンドのパイプジョイントを操作して上段パイプを動かしてみたり、シンバルスタンドの設置位置を変更したりしていた。しかしながら、パイプジョイントの操作は、手が届き難い低い場所で行われることが多いため、演奏者にとって煩わしく、面倒な作業であった。また、シンバルスタンドの設置位置を変更する作業は、シンバルスタンドを手で持って動かすことにより行われるため、シンバルスタンドの三脚をドラムの支持脚等に接触させてしまう虞があった。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、楽器の位置や角度を所望の位置や角度に調整することのできる楽器用ティルター及びシンバルスタンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、楽器用ティルターであって、ティルター本体と、ティルター本体に組み付けられ、ロッドを保持するホルダと
、ホルダにロッドを保持する保持部材とを備え、ティルター本体は、第1軸線に沿って延びる構造体に取り付けられると共に、第1軸線周りに回動可能に構成され、ホルダは、第1軸線と直交する第2軸線周りに回動可能に組み付けられ、ホルダは、ロッドを、ロッドの軸線である第3軸線周りに回動可能にかつ第3軸線に沿って摺動可能に保持
し、保持部材により、ホルダがティルター本体に組み付けられると共に、ティルター本体が構造体に取り付けられ、保持部材は、ボルトと、ボルトに螺着されたナットとからなり、ティルター本体は、第1クランプと、第1クランプに連結される第2クランプとを備え、第1及び第2クランプには、ボルトの軸部が挿通される挿通孔が設けられ、ナットを締め付けると、第1及び第2クランプにより構造体が挟持されてティルター本体が構造体に固定され、ナットを緩めると、第1及び第2クランプによる構造体の挟持が解除されてティルター本体が第1軸線周りに回動可能になることを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、ティルター本体を構造体の第1軸線周りに回動可能に構成することで、従来のティルターと比較して、ロッドの移動可能な方向を1方向増やすことができる。その結果、ロッドを、第1〜第3軸線周りにそれぞれ回動させると共に、第3軸線に沿って摺動させることができる。このため、ロッドを異なる4つの方向にそれぞれ動かしながら、楽器の位置や角度を調整することができる。よって、ロッドの可動範囲が広がるため、楽器の位置や角度を、所望の位置や角度に調整することができる。
また、この構成によれば、保持部材が、ホルダに対しロッドを保持する機能と、ティルター本体に対しホルダを組み付ける機能と、構造体に対しティルター本体を取り付ける機能とを備えている。つまり、保持部材は、構造体に対するティルター本体の固定と、ティルター本体に対するホルダの固定と、ホルダに対するロッドの固定とを同時に解除するための構成を有することができる。また、この構成によれば、ナットを締め付けると、第1及び第2クランプにより構造体が挟持されるため、構造体に対してティルター本体を確実に固定することができる。一方、ナットを緩めると、第1及び第2クランプによる構造体の挟持が解除されるため、ティルター本体を第1軸線周りに回動させることができる。
【0014】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1記載の発明において、ティルター本体及びホルダは、それらの間に複数の摩擦プレートを介装させた状態で組み付けられ、ナットを締め付けると、複数の摩擦プレートの間に生じる摩擦が増大してホルダがティルター本体に固定され、ナットを緩めると、複数の摩擦プレートの間に生じる摩擦が減少してホルダが第2軸線周りに回動可能になることを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、ナットの締め付けに加え、複数の摩擦プレートの間に生じる摩擦を利用することで、ティルター本体に対してホルダを確実に固定することができる。一方、ナットを緩めることで、複数の摩擦プレートの間に生じる摩擦が減少するため、ホルダを第2軸線周りに回動させることができる。また、段階的に角度を調整可能なギヤ式ティルターとは異なり、無段階での角度調整が可能となる。更に摩擦プレートの数を増やすことで、ティルター本体にホルダを固定する力を大きくすることができる。
【0016】
請求項
3に記載の発明は、請求項
1又は
2記載の発明において、ボルトは、ロッドが挿通されるリング部を有し、ホルダは、リング部と対応する位置にロッドを保持する保持部を有し、ナットを締め付けると、リング部によりロッドが保持部に押圧されてロッドがホルダに固定され、ナットを緩めると、リング部によるロッドの押圧が解除されてロッドが第3軸線周りに回動可能にかつ第3軸線に沿って摺動可能になることを要旨とする。
【0017】
この構成によれば、ナットを締め付けると、リング部によりロッドがホルダの保持部に押圧されるため、ホルダに対してロッドを確実に固定することができる。一方、ナットを緩めると、リング部によるロッドの押圧が解除されるため、ロッドを第3軸線周りに回動させたり、第3軸線に沿って摺動させたりすることができる。
【0018】
つまり、ナットを緩めるだけで、ティルター本体を第1軸線周りに回動させること、ホルダを第2軸線周りに回動させること、ロッドを第3軸線周りに回動させたり第3軸線に沿って摺動させたりすることが同時に行える。よって、1箇所操作するだけでロッドを異なる4つの方向に動かすことができるため、楽器の位置や角度を調整する際の操作性が向上する。
【0019】
請求項
4に記載の発明は、請求項1〜
3のうちいずれか一項に記載の発明において、ロッドは、長尺状のブームからなり、ブームの先端には、楽器用ティルターとは別のティルターが取り付けられていることを要旨とする。
【0020】
この構成によれば、楽器用ティルターをブームティルターとして使用することができる。また、構造体に取り付けられたティルターと、ブームの先端に取り付けられた別のティルターとを併用することで、楽器の位置や角度を更に細かく微調整することができる。
【0021】
請求項
5に記載の発明は、請求項
4記載の発明において、別のティルターは、ブームの先端に取り付けられる第2ティルター本体と、第2ティルター本体に組み付けられ、第2ロッドを保持する第2ホルダとを備え、第2ホルダは、ブームの軸線と直交する第4軸線周りに回動可能に組み付けられ、第2ホルダは、第2ロッドを、第2ロッドの軸線である第5軸線周りに回動可能にかつ第5軸線に沿って摺動可能に保持することを要旨とする。
【0022】
この構成によれば、ブームを、第1〜第3軸線周りにそれぞれ回動させかつ第3軸線に沿って摺動させると共に、第2ロッドを、第4〜第5軸線周りにそれぞれ回動させたり、第5軸線に沿って摺動させたりすることができる。つまり、ブームを異なる4つの方向にそれぞれ動かしながら、更に第2ロッドを異なる3つの方向にそれぞれ動かすことにより、楽器の位置や角度を微調整することができる。
【0023】
請求項
6に記載の発明は、シンバルスタンドであって、スタンドと、スタンドの上端に取り付けられた楽器用ティルターと、楽器用ティルターに保持され、シンバルが取り付けられるロッドとを備え、楽器用ティルターは、ティルター本体と、ティルター本体に組み付けられ、ロッドを保持するホルダと
、ホルダにロッドを保持する保持部材とを備え、ティルター本体は、第1軸線に沿って延びる構造体に取り付けられると共に、第1軸線周りに回動可能に構成され、ホルダは、第1軸線と直交する第2軸線周りに回動可能に組み付けられ、ホルダは、ロッドを、ロッドの軸線である第3軸線周りに回動可能にかつ第3軸線に沿って摺動可能に保持
し、保持部材により、ホルダがティルター本体に組み付けられると共に、ティルター本体が構造体に取り付けられ、保持部材は、ボルトと、ボルトに螺着されたナットとからなり、ティルター本体は、第1クランプと、第1クランプに連結される第2クランプとを備え、第1及び第2クランプには、ボルトの軸部が挿通される挿通孔が設けられ、ナットを締め付けると、第1及び第2クランプにより構造体が挟持されてティルター本体が構造体に固定され、ナットを緩めると、第1及び第2クランプによる構造体の挟持が解除されてティルター本体が第1軸線周りに回動可能になることを要旨とする。
【0024】
この構成によれば、請求項1と同等の作用効果を奏することができる。
請求項7に記載の発明は、楽器用ティルターであって、ティルター本体と、ティルター本体に組み付けられ、ロッドを保持するホルダと、ホルダにロッドを保持する保持部材とを備え、ティルター本体は、第1軸線に沿って延びる構造体に取り付けられると共に、第1軸線周りに回動可能に構成され、ホルダは、第1軸線と直交する第2軸線周りに回動可能に組み付けられ、ホルダは、ロッドを、ロッドの軸線である第3軸線周りに回動可能にかつ第3軸線に沿って摺動可能に保持し、保持部材により、ホルダがティルター本体に組み付けられると共に、ティルター本体が構造体に取り付けられ、保持部材は、少なくともボルトを含み、ティルター本体は、第1クランプと、第1クランプに連結される第2クランプとを備え、第1クランプには、ボルトの軸部が挿通される挿通孔が設けられ、第2クランプには、ボルトの軸部が締め付けられるねじ孔が設けられ、ボルトをねじ孔に締め付けると、第1及び第2クランプにより構造体が挟持されてティルター本体が構造体に固定され、ボルトを緩めると、第1及び第2クランプによる構造体の挟持が解除されてティルター本体が第1軸線周りに回動可能になることを要旨とする。
この構成によれば、請求項1と同等の作用効果を奏することができる。
請求項8に記載の発明は、シンバルスタンドであって、スタンドと、スタンドの上端に取り付けられた楽器用ティルターと、楽器用ティルターに保持され、シンバルが取り付けられるロッドとを備え、楽器用ティルターは、ティルター本体と、ティルター本体に組み付けられ、ロッドを保持するホルダと、ホルダにロッドを保持する保持部材とを備え、ティルター本体は、第1軸線に沿って延びる構造体に取り付けられると共に、第1軸線周りに回動可能に構成され、ホルダは、第1軸線と直交する第2軸線周りに回動可能に組み付けられ、ホルダは、ロッドを、ロッドの軸線である第3軸線周りに回動可能にかつ前記第3軸線に沿って摺動可能に保持し、保持部材により、ホルダがティルター本体に組み付けられると共に、ティルター本体が構造体に取り付けられ、保持部材は、少なくともボルトを含み、ティルター本体は、第1クランプと、第1クランプに連結される第2クランプとを備え、第1クランプには、ボルトの軸部が挿通される挿通孔が設けられ、第2クランプには、ボルトの軸部が締め付けられるねじ孔が設けられ、ボルトをねじ孔に締め付けると、第1及び第2クランプにより構造体が挟持されてティルター本体が構造体に固定され、ボルトを緩めると、第1及び第2クランプによる構造体の挟持が解除されてティルター本体が第1軸線周りに回動可能になることを要旨とする。
この構成によれば、請求項1と同等の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、楽器の位置や角度を、所望の位置や角度に調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る楽器用ティルターをブームティルターに具体化した一実施形態について、
図1〜
図9を参照して説明する。
図1に示すように、シンバルスタンド10は、スタンド12と、スタンド12の上端に取り付けられたブームティルター13と、ブームティルター13とは別のシンバルティルター15と、シンバルが取り付けられるシンバルホルダ16とを備えている。スタンド12は、三脚20と、三脚20の中央から上方に延びる支柱21とを備えている。支柱21は、径の異なる3本のパイプと、径の異なる2本のパイプを固定する2つのパイプジョイント22とを備えている。3本のパイプのうち最も上方に位置する上パイプ23と中央に位置する中央パイプ24とには、別のパイプとの固定位置を記憶するため、メモリロック25,26がそれぞれ装着されている。
【0028】
図2に示すように、上パイプ23の下端には、筒状のゴム部材27が挿入されている。また、ゴム部材27の内側には、テーパ状の外周面を有するストッパ28が挿入されている。ゴム部材27は、ストッパ28によって上パイプ23の下端に固定されている。また、上パイプ23の上端には、ピン29により、略円柱状の支持具30が固定されている。支持具30は、上パイプ23の上開口端に取り付けられる下部30aと、ブームティルター13が取り付けられる円柱状の上部30bとを備えている。支柱21及び支持具30は、第1軸線に沿って延びる構造体に相当する。
【0029】
図1及び
図2に示すように、ブームティルター13は、ティルター本体31と、ロッドとしての長尺状のブーム32と、ブーム32を保持するホルダ33と、保持部材としてのボルト34及びナット35とを備えている。ボルト34は、先端に雄ねじを有する軸部34aと、リング部34bからなる頭部とを有している。ボルト34及びナット35により、ブーム32がホルダ33に保持され、ホルダ33がティルター本体31に組み付けられると共に、ティルター本体31が支持具30に取り付けられる。
【0030】
図1のR1に示すように、ティルター本体31は、支柱21及び支持具30に対して、第1軸線周りに回動可能に取り付けられている。
図1のR2に示すように、ホルダ33は、ティルター本体31に対して、第1軸線と直交する第2軸線周りに回動可能に組み付けられている。
図1のR3に示すように、ブーム32は、ホルダ33により、ブーム32の軸線である第3軸線周りに回動可能に保持されている。また、
図1のR4に示すように、ブーム32は、ホルダ33により、第3軸線に沿って摺動可能に保持されている。
【0031】
図2に示すように、ティルター本体31は、金属製の第1及び第2クランプ36,37と、樹脂製の上リング38及び下リング39とを備えている。第1クランプ36は、下リング39の外周面が嵌合される円筒状の基部36aと、上リング38の外周面が嵌合されるリング部36bと、第2クランプ37が連結されるクランプ部36cとを備えている。
【0032】
図3及び
図4に示すように、クランプ部36cの側部には、第2クランプ37の基端が連結される連結部36eが形成されている。第2クランプ37は、連結ピン40を介し、連結部36eに対して回転可能に連結されている。クランプ部36cの中央には、第2クランプ37の先端に面する突部36fが形成されている。
【0033】
突部36f及び第2クランプ37の先端には、ボルト34が挿通される挿通孔36g,37gがそれぞれ形成されている。挿通孔36g,37gに挿通されたボルト34にナット35を締め付けることで、第2クランプ37の先端が突部36fに固定される。これにより、第1クランプ36及び第2クランプ37が支持具30の上部30bを挟持するため、ティルター本体31は、支柱21及び支持具30に対して動かないように保持される。こうして、ティルター本体31が支柱21に固定される。一方、ナット35を緩めることで、第1及び第2クランプ36,37による挟持が解除されるため、ティルター本体31は、支柱21の軸線である第1軸線C1周りに回動可能となる。
【0034】
図2〜
図4に示すように、第1クランプ36は、第2クランプ37と反対側に、ホルダ33の一部を収容する凹部36dを有している。ホルダ33は、ブーム32を保持する保持体33aと、第1クランプ36の凹部36dに配置される基部33b及び筒体33cとを備えている。筒体33cは、ホルダ33の中央から突出しかつ略十字状に形成されている。また、ホルダ33は、ブーム32を保持する保持孔33dと、ボルト34のリング部34bが配置される配置孔33eと、ボルト34の軸部34aが挿通される挿通孔33fとを有している。配置孔33e、挿通孔33f及び保持孔33dは、ホルダ33の略中央で互いに連通している。
【0035】
ホルダ33は、基部33bと第1クランプ36との間に8枚の摩擦プレートを介装させた状態で、ティルター本体31に組み付けられている。8枚の摩擦プレートは、取付片41aを有する4枚の摩擦プレート41と、取付片41aを有しない4枚の摩擦プレート42とからなる。取付片41aには、ねじ43が挿通される挿通孔41bが形成されている。第1摩擦プレート41は、円形状の中央孔41cを有している。第2摩擦プレート42は、略十字状の中央孔42cを有している。
【0036】
第1摩擦プレート41は、基部33bと第1クランプ36との間で、第2摩擦プレート42と交互に配置されている。第1及び第2摩擦プレート41,42は、中央孔41c,42cにホルダ33の筒体33cを挿入させた状態で互いに密着している。第1摩擦プレート41は、L字型の支持片44とねじ43とによって、第1クランプ36の連結部36e付近に固定されている。第2摩擦プレート42は、筒体33cに対して回動しないように嵌合されている。
【0037】
ボルト34は、ホルダ33の配置孔33e及び挿通孔33f、第1及び第2摩擦プレート41,42の中央孔41c,42cの順に通過してから、第1及び第2クランプ36,37の挿通孔36g,37gに挿通されて、ナット35に螺着されている。この状態でナット35を締め付けることで、第1及び第2摩擦プレート41,42間に生じる摩擦が増大して、ホルダ33がティルター本体31に対して回動しないように保持される。こうして、ホルダ33がティルター本体31に固定される。この場合、
図5に示すように、ボルト34のリング部34bによりブーム32が保持孔33dの内周面に押圧されるため、ブーム32がホルダ33に固定される。保持部としての保持孔33dは、断面略扇形を有している。このため、ブーム32は、ホルダ33に固定された状態で、ブーム32の軸線に沿って、保持孔33dの上内周面と下内周面とにそれぞれ線接触している。
【0038】
一方、ナット35を緩めることで、第1及び第2摩擦プレート41,42間に生じる摩擦が減少するため、ホルダ33がティルター本体31に対して第2軸線C2周りに回動可能になる。また、この場合、
図4の実線で示すように、リング部34bによるブーム32の押圧が解除されるため、ブーム32は、ホルダ33に対して第3軸線C3周りに回動可能になる。また、ブーム32は、ホルダ33に対して第3軸線C3に沿って摺動可能にもなる。
【0039】
また、ナット35を緩めたときに第1及び第2摩擦プレート41,42がホルダ33から抜けることを防止するため、筒体33cの内周面に雌ねじが形成されると共に、筒体33cの雌ねじに筒状のプレートストッパ46が固定されている。プレートストッパ46は、筒体33cの端面に当接される頭部46aと、筒体33cの雌ねじに螺合されるねじ部46bとを有している。プレートストッパ46の中央には、ボルト34の軸部34aが挿通されている。
【0040】
図1及び
図6に示すように、ブーム32には、ホルダ33との固定位置を記憶するため、メモリロック45が装着されている。ブーム32の先端には、シンバルホルダ16と共に、シンバルティルター15が取り付けられている。シンバルティルター15は、ブーム32の先端に嵌合される第2ティルター本体51と、第2ロッドとしてのL型ロッド52と、L型ロッド52を保持する第2ホルダ53と、保持部材としてのボルト54及びナット55とを備えている。ボルト54は、先端に雄ねじを有する軸部54aと、リング部54bからなる頭部とを有している。
【0041】
ボルト54及びナット55により、L型ロッド52が第2ホルダ53に保持され、第2ホルダ53が第2ティルター本体51に組み付けられる。
図1のR5に示すように、第2ホルダ53は、第2ティルター本体51に対して、ブーム32の軸線と直交する第4軸線周りに回動可能に組み付けられている。
図1のR6に示すように、L型ロッド52は、第2ホルダ53により、L型ロッド52の軸線である第5軸線周りに回動可能に保持されている。また、
図1のR7に示すように、L型ロッド52は、第2ホルダ53により、第5軸線に沿って摺動可能に保持されている。
【0042】
図6及び
図7に示すように、第2ティルター本体51は、ブーム32の先端に固定される固定部51cと、第2ホルダ53が組み付けられる有底筒部51dとを有している。有底筒部51dの中央には、ボルト54の軸部54aが挿通される挿通孔51aが形成されている。第2ティルター本体51は、第2ホルダ53に面する側に、第2ホルダ53の一部を収容する凹部51bを有している。
【0043】
第2ホルダ53は、L型ロッド52を保持する保持体53aと、第2ティルター本体51の凹部51bに配置される基部53b及び筒体53cとを備えている。筒体53cは、ホルダ53の中央から突出しかつ略十字状に形成されている。また、第2ホルダ53は、L型ロッド52を保持する保持孔53dと、ボルト54のリング部54bが配置される配置孔53eと、ボルト54の軸部54aが挿通される挿通孔53fとを有している。配置孔53e、挿通孔53f及び保持孔53dは、第2ホルダ53の略中央で互いに連通している。配置孔53eと保持孔53dとの境界には、段差53gが形成されている。
【0044】
L型ロッド52の基端は、第2ホルダ53の保持孔53dから突出している。L型ロッド52の基端には、L型ロッド52の径よりも大きい頭部56aを有するボルト56が螺着されている。頭部56aが段差53gに当接されることで、第2ホルダ53からのL型ロッド52の脱落が防止される。
【0045】
第2ホルダ53は、基部53bと第2ティルター本体51との間に6枚の摩擦プレートを介装させた状態で、第2ティルター本体51に組み付けられている。摩擦プレートは、取付片58aを有する3枚の摩擦プレート58と、取付片58aを有しない3枚の摩擦プレート59とからなる。第1摩擦プレート58は、円形状の中央孔58cを有している。第2摩擦プレート59は、略十字状の中央孔59cを有している。
【0046】
第1摩擦プレート58は、基部53bと第2ティルター本体51との間で、第2摩擦プレート59と交互に配置されている。第1及び第2摩擦プレート58,59は、それらの中央孔58c,59cに第2ホルダ53の筒体53cを挿入させた状態で互いに密着している。第1摩擦プレート58は、L字型の支持片57とねじ60とによって、第2ティルター本体51に固定されている。第2摩擦プレート59は、筒体53cに対して回動しないように嵌合されている。
【0047】
ボルト54は、第2ホルダ53の配置孔53e及び挿通孔53f、第1及び第2摩擦プレート58,59の中央孔58c,59cの順に通過してから、第2ティルター本体51の挿通孔51aに挿通されて、ナット55に螺着されている。この状態でナット55を締め付けることで、第1及び第2摩擦プレート58,59間に生じる摩擦が増大して、第2ホルダ53が第2ティルター本体51に対して回動しないように保持される。こうして、第2ホルダ53が第2ティルター本体51に固定される。また、この場合、
図8に示すように、ボルト54のリング部54bによりL型ロッド52が保持孔53dの内周面に押圧されるため、L型ロッド52が第2ホルダ53に固定される。保持部としての保持孔53dは、断面略扇形を有している。このため、L型ロッド52は、第2ホルダ53に固定された状態で、L型ロッド52の横方向に延びる軸線に沿って、保持孔53dの上内周面と下内周面とにそれぞれ線接触している。
【0048】
一方、ナット55を緩めることで、第1及び第2摩擦プレート58,59間に生じる摩擦が減少するため、第2ホルダ53が第2ティルター本体51に対して第4軸線C4周りに回動可能になる。また、この場合、
図7の実線で示すように、リング部54bによるL型ロッド52の押圧が解除されるため、L型ロッド52は、第2ホルダ53に対して第5軸線C5周りに回動可能になる。また、L型ロッド52は、第2ホルダ53に対して第5軸線C5に沿って摺動可能にもなる。
【0049】
ナット55を緩めたときに第1及び第2摩擦プレート58,59が第2ホルダ53から抜けることを防止するため、筒体53cの内周面に雌ねじが形成されると共に、筒体53cの雌ねじに筒状のプレートストッパ50が固定されている。プレートストッパ50は、筒体53cの端面に当接される頭部50aと、筒体53cの雌ねじに螺合されるねじ部50bとを有している。プレートストッパ50の中央には、ボルト54の軸部54aが挿通されている。
【0050】
図6及び
図9に示すように、L型ロッド52の先端には、シンバルホルダ16を構成する留具61、フェルト製の上下一対の緩衝部材62,63、及びリテーナ64等が取り付けられている。リテーナ64は、シンバルホルダ16を構成する部品のうち最も下方の位置で、L型ロッド52に固定されている。L型ロッド52におけるリテーナ64の上方には、筒状のガイド部材66が装着されている。ガイド部材66は、ウレタンゴム等の弾性材料からなる。ガイド部材66には、上下一対の緩衝部材62,63が装着されている。
【0051】
緩衝部材62,63は、中央孔62c,63cを有する円板部62a,63aと、円板部62a,63aに固着された環状部62b,63bとからなる。環状部62b,63bは、シンバルと接触する部分であるため、耐磨耗性を考慮して比較的硬いフェルト材により形成されている。環状部62b,63bは、シンバルとの接触面積を小さくするため、円板部62a,63aの中央孔62c,63cよりも大きい内径を有している。
円板部62a,63aは、シンバルの振動吸収を考慮して、比較的軟らかいフェルト材により形成されている。
【0052】
緩衝部材62,63は、環状部62b,63bによりシンバルを挟持する位置に配置されている。L型ロッド52における緩衝部材62の上方には、留具61が配置されている。留具61は、L型ロッド52の先端に形成された雄ねじ52aに螺着されている。留具61の一部は、緩衝部材62の中央孔62cに挿入されている。
【0053】
次に、上記のブームティルター13の作用について説明する。
図1及び
図4に示すように、ブームティルター13のナット35を緩めることで、第1及び第2クランプ36,37による支持具30の挟持が解除される。このため、ティルター本体31は、支柱21の軸線である第1軸線C1周りに回動可能となる。同時に、
図4の実線で示すように、リング部34bによるブーム32の押圧が解除されるため、ブーム32は、ホルダ33に対して第3軸線C3周りに回動可能になる。また、ブーム32は、ホルダ33に対して第3軸線C3に沿って摺動可能にもなる。このように、ティルター本体31を支柱21の第1軸線C1周りに回動可能に構成したことで、従来のティルターと比較して、ブーム32の移動可能な方向を1方向増やすことができる。その結果、ブーム32を、第1〜第3軸線周りにそれぞれ回動させると共に、第3軸線に沿って摺動させることが可能となる。
【0054】
図1及び
図7に示すように、シンバルスタンド10は、更に、ブームティルター13とは別のシンバルティルター15を備えている。シンバルティルター15のナット55を緩めることで、第2ホルダ53が第2ティルター本体51に対して第4軸線C4周りに回動可能になる。同時に、
図7の実線で示すように、リング部54bによるL型ロッド52の押圧が解除されるため、L型ロッド52は、第2ホルダ53に対して第5軸線C5周りに回動可能になる。また、L型ロッド52は、第2ホルダ53に対して第5軸線C5に沿って摺動可能にもなる。
【0055】
本実施形態によれば、ブーム32を、第1〜第3軸線周りにそれぞれ回動させかつ第3軸線に沿って摺動させると共に、L型ロッド52を、第4〜第5軸線周りにそれぞれ回動させかつ第5軸線に沿って摺動させたりすることができる。このように、ブーム32を異なる4つの方向にそれぞれ動かしながら、更に、L型ロッド52を異なる3つの方向にそれぞれ動かすことができる。このため、シンバルがシンバルスタンド10に取着されている状態で、シンバルの可動範囲を従来よりも広げることができる。よって、演奏者は、椅子に腰掛けたままでも、ブーム32とL型ロッド52を動かしながら、ドラムセットのシンバルの位置や角度を、所望の位置や角度に調整することができる。
【0056】
従って、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ティルター本体31は、支柱21に対して、支柱21の軸線である第1軸線C1周りに回動可能に取り付けられている。ホルダ33は、ティルター本体31に対して、第1軸線と直交する第2軸線C2周りに回動可能に組み付けられている。ブーム32は、ホルダ33により、ブーム32の軸線である第3軸線C3周りに回動可能にかつ第3軸線C3に沿って摺動可能に保持されている。本実施形態によれば、ティルター本体31を支柱21の第1軸線C1周りに回動可能に構成することで、従来のティルターと比較して、ブーム32の移動可能な方向を1方向増やすことができる。その結果、ブーム32を、第1軸線C1〜第3軸線C3周りにそれぞれ回動させると共に、第3軸線C3に沿って摺動させることができる。このため、ブーム32を異なる4つの方向にそれぞれ動かしながら、シンバルの位置や角度を調整することができる。よって、ブーム32の可動範囲が広がるため、シンバルを所望の位置や角度に調整することができる。
【0057】
(2)ボルト34及びナット35により、ブーム32がホルダ33に保持され、ホルダ33がティルター本体31に組み付けられると共に、ティルター本体31が支持具30に取り付けられる。この構成によれば、ボルト34及びナット35が、ホルダ33に対しブーム32を保持する機能と、ティルター本体31に対しホルダ33を組み付ける機能と、支柱21に対しティルター本体31を取り付ける機能とを備えている。つまり、ボルト34及びナット35は、支柱21に対するティルター本体31の固定と、ティルター本体31に対するホルダ33の固定と、ホルダ33に対するブーム32の固定とを同時に解除するための構成を有することができる。
【0058】
(3)ナット35を締め付けることで、第1クランプ36及び第2クランプ37が支持具30の上部30bを挟持するため、ティルター本体31が支柱21に対して確実に固定される。ナット35を緩めることで、第1及び第2クランプ36,37による支持具30の挟持が解除されるため、ティルター本体31を、支柱21の第1軸線C1周りに回動させることができる。
【0059】
(4)ナット35を締め付けることで、第1及び第2摩擦プレート41,42間に生じる摩擦が増大するため、ティルター本体31に対してホルダ33を確実に固定することができる。ナット35を緩めることで、第1及び第2摩擦プレート41,42間に生じる摩擦が減少するため、ティルター本体31に対してホルダ33を第2軸線C2周りに回動させることができる。
【0060】
また、ブームティルター13によれば、段階的に角度を調整可能なギヤ式ティルターとは異なり、無段階で角度を調整することができる。更に、第1及び第2摩擦プレート41,42の数を増やすことで、ティルター本体31にホルダ33を固定する力を大きくすることができる。シンバルティルター15においても、ブームティルター13と同等の作用効果を奏することができる。
【0061】
(5)ナット35を締め付けることで、ボルト34のリング部34bによりブーム32が保持孔33dの内周面に押圧されるため、ホルダ33に対してブーム32を確実に固定することができる。ナット35を緩めることで、リング部34bによるブーム32の押圧が解除されるため、ホルダ33に対して、ブーム32を第3軸線C3周りに回動させたり、第3軸線C3に沿って摺動させたりすることができる。よって、上記(3)(4)の効果を考慮すれば、ナット35を緩めるだけで、ティルター本体31を第1軸線C1周りに回動させること、ホルダ33を第2軸線C2周りに回動させること、ブーム32を第3軸線C3周りに回動させたり第3軸線C3に沿って摺動させたりすることが同時に行える。よって、1箇所操作するだけで、ブーム32を異なる4つの方向に動かすことができる。従って、シンバルの位置や角度を調整する際の操作性が向上する。
【0062】
(6)シンバルスタンド10は、スタンド12の上端に取り付けられたブームティルター13と、ブーム32の先端に取り付けられたシンバルティルター15とを備えている。この構成によれば、ブームティルター13とシンバルティルター15とを併用することで、シンバルの位置や角度を更に細かく微調整することができる。
【0063】
(7)第2ホルダ53は、第2ティルター本体51に対して、ブーム32の軸線と直交する第4軸線周りに回動可能に組み付けられている。また、L型ロッド52は、第2ホルダ53により、L型ロッド52の軸線である第5軸線周りに回動可能にかつ第5軸線に沿って摺動可能に保持されている。この構成によれば、ブーム32を、第1〜第3軸線周りにそれぞれ回動させかつ第3軸線に沿って摺動させると共に、L型ロッド52を、第4〜第5軸線周りにそれぞれ回動させたり、第5軸線に沿って摺動させたりすることができる。つまり、ブーム32を異なる4つの方向にそれぞれ動かしながら、更にL型ロッド52を異なる3つの方向にそれぞれ動かすことにより、シンバルの位置や角度を微調整することができる。
【0064】
(8)ブームティルター13において、筒体33cの内周面に雌ねじが形成されると共に、筒体33cの雌ねじに筒状のプレートストッパ46が固定されている。この構成によれば、ナット35を緩めた場合、プレートストッパ46のねじ部46bが筒体33cの雌ねじに螺合しているため、ホルダ33から第1及び第2摩擦プレート41,42が抜けることを防止できる。また、シンバルティルター15においても、筒体53cの内周面に雌ねじが形成されると共に、筒体53cの雌ねじに筒状のプレートストッパ50が固定されている。このため、ナット55を緩めた場合、プレートストッパ50のねじ部50bが筒体53cの雌ねじに螺合しているため、第2ホルダ53から第1及び第2摩擦プレート58,59が抜けることも防止できる。
【0065】
なお、本実施形態は、以下のように変更してもよい。
・本実施形態において、上パイプ23の上端に略円柱状の支持具30を固定し、支持具30の上部30bにブームティルター13を取り付けた。これに代えて、ブームティルター13を、上パイプ23の上端に直接取り付けてもよい。
【0066】
・本実施形態において、ボルト34にナット35を締め付けて、ティルター本体31を支柱21に固定した。これに代えて、第2クランプ37の挿通孔37gをねじ孔に変更し、ボルト34を第2クランプ37のねじ孔に締め付けて、ティルター本体31を支柱21に固定してもよい。同様に、シンバルティルター15においても、第2ティルター本体51の挿通孔53fをねじ孔に変更し、ボルト54をねじ孔に締め付けて、第2ホルダ53を第2ティルター本体51に固定してもよい。
【0067】
・本実施形態において、ブームティルター13及びシンバルティルター15を、ギヤ式ティルターに変更してもよい。
・本実施形態において、ブーム32に代えてL型ロッド52をホルダ33に固定し、ブームティルター13をシンバルティルターとして使用してもよい。
【0068】
・本実施形態において、ブーム32及びL型ロッド52を保持する保持部は、保持孔33d,53dであったが、ブーム32及びL型ロッド52の外周面と一致するU字型の凹部であってもよい。
【0069】
・本実施形態において、楽器用ティルターをシンバルスタンドのティルターに適用したが、ドラムスタンドのティルターに適用してもよい。