特許第5993940号(P5993940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993940
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】生体直交型薬物活性化
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/48 20060101AFI20160908BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   A61K47/48
   A61P43/00 123
【請求項の数】15
【全頁数】120
(21)【出願番号】特願2014-510929(P2014-510929)
(86)(22)【出願日】2012年5月16日
(65)【公表番号】特表2014-515040(P2014-515040A)
(43)【公表日】2014年6月26日
(86)【国際出願番号】IB2012052446
(87)【国際公開番号】WO2012156919
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年5月13日
(31)【優先権主張番号】11166241.7
(32)【優先日】2011年5月16日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11166942.0
(32)【優先日】2011年5月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11176741.4
(32)【優先日】2011年8月5日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/515,432
(32)【優先日】2011年8月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/515,458
(32)【優先日】2011年8月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11176736.4
(32)【優先日】2011年8月5日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11192572.3
(32)【優先日】2011年12月8日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11192577.2
(32)【優先日】2011年12月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ロビラルト,マルク ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,ヘンリキュス マリー
(72)【発明者】
【氏名】テン フーフェ,ウォルテル
(72)【発明者】
【氏名】フェルステーヘン,ロニー マティウ
(72)【発明者】
【氏名】ロッシン,ラファエッラ
【審査官】 深谷 良範
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/051530(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0023916(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/119389(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/119382(WO,A1)
【文献】 HAUN,J.B. et al,Bioorthogonal chemistry amplifies nanoparticle binding and enhances the sensitivity of cell detection,Nature Nanotechnology,2010年,Vol.5, No.9,p.660-665
【文献】 ROSSIN,R. et al,In Vivo Chemistry for Pretargeted Tumor Imaging in Live Mice,Angewandte Chemie International Edition,2010年,Vol.49, No.19,p.3375-3378
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/48
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロドラッグ化合物とアクチベータ化合物とを含むプロドラッグットであり、前記プロドラッグ化合物は、トリガー部分Tに結合された薬物D含み、前記トリガー部分がジエノフィルを含み、及び前記アクチベータ化合物前記ジエノフィルと反応可能であるジエンを含み、記ジエノフィルは、以下の式(1a)の構造を含み
【化85】
式(1a)中、T、Fはそれぞれ独立してH、又はアルキル、F、Cl、BrもしくはIからなる群から選択される置換基であり
A及びPはそれぞれ独立してCR又はCRであり(ただし、少なくとも1つはCRである);Xは(O−C(O))−(L−(D)、S−C(O)−(L−(D)、O−C(S)−(L−(D)、S−C(S)−(L−(D)、又はO−S(O)−(L−(D)であり、ここで、p=0又は1であり;ここで(Lンカーであり、n=0又は1であり、ここでLは直鎖及び/又は分岐鎖であり;
Y、Z、Q、Xは一緒になって、−員の脂肪族性又はヘテロ脂肪族性部分を形成し;
それぞれのRは独立して、H、アルキル、アリール、OR’、SR’、S(=O)R’’’、S(=O)R’’’、S(=O)NR’R’’、Si−R’’’、Si−O−R’’’、OC(=O)R’’’、SC(=O)R’’’、OC(=S)R’’’、SC(=S)R’’’、F、Cl、Br、I、N、SOH、SOH、SOH、POH、POH、NO、NO、CN、OCN、SCN、NCO、NCS、CF、CF−R’、NR’R’’、C(=O)R’、C(=S)R’、C(=O)O−R’、C(=S)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)S−R’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’C(=O)−R’’’、NR’C(=S)−R’’’、NR’C(=O)O−R’’’、NR’C(=S)O−R’’’、NR’C(=O)S−R’’’、NR’C(=S)S−R’’’、OC(=O)NR’−R’’’、SC(=O)NR’−R’’’、OC(=S)NR’−R’’’、SC(=S)NR’−R’’’、NR’C(=O)NR’’−R’’、NR’C(=S)NR’’−R’’、CR’NR’’からなる群から選択され、ここでそれぞれのR’及びそれぞれのR’’は独立してH、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立してアリール又はアルキルであり;
は、、N、NH又はOを介して結合された1又は複数の治療部分又は薬物であり、これらの原子が前記治療部分の一部であり;
は、
【化6】
(式中、XはO又はS又はNH又はNRであり、ここでRはアルキル又はアリールである)
【化98】
【化99】
(式中、波線は結合されたトリガー又はDであり、
破線は、結合されたT又はS−T又はM又はS−Mである)
から選択され、
前記リンカーL及び前記トリガー部分の少なくとも1つは、標的化試薬T又はマスキング部分Mを含み;
式中、スペーサーSは、アルキル、ポリエチレングリコール、ペプチド、又はポリラクチドであり、
標的化試薬Tは、抗体、抗体断片、タンパク質、又はペプチドであり、
マスキング部分Mは、タンパク質、ペプチド、ポリマー、ポリエチレングリコール、又は炭水化物であり;
式中、前記薬物Dは、抗体、抗体誘導体、抗体断片Fab2、抗体断片Fab、抗体断片scFV、二重特異性抗体、三重特異性抗体、抗体断片融合体、二重特異性mAb断片、三重特異性mAb断片、タンパク質、アプタマー、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖、ペプチド、ペプトイド、ステロイド、有機薬物化合物、トキシン、ホルモン、ウイルス、ファージ、リシンAの免疫トキシン、ジフテリアトキシン、コレラトキシン、アウリスタチン、メイタンシン、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、メイタンシノイドDM1及びDM4、アウリスタチンMMAE、CC1065、カンプトテシン、SN−38、抗増殖/抗腫瘍薬、抗生物質、サイトカイン、抗炎症性薬、抗ウイルス剤、降圧剤、化学増感剤及び放射線増感剤、ジヒドロ葉酸レダクターゼインヒビター、及びチミジル酸シンターゼインヒビター、DNAアルキル化剤、放射線増感剤、DNAインターカレーター、DNA開裂剤、抗チューブリン剤、トポイソメラーゼインヒビター、白金系薬物、アントラサイクリン、ビンカ薬物、ブレオマイシン、細胞毒性ヌクレオシド、タキサン、レキシトロプシン、プテリジン、ジイネン、ポドフィロトキシン、ドラスタチン、メイタンシノイド、分化誘導剤、タキソール、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、5−フルオロウラシル、DNAマイナーグルーブバインダー、6−メルカプトプリン、シトシンアラビノシド、メルファラン、ロイロシン(leurosine)、ロイロシダイン(leurosideine)、アクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、マイトマイシンC、マイトマイシンA、カミノマイシン、アミノプテリン、タリソマイシン、エトポシド、エトポシドフォスフェート、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソテール、レチノイン酸、酪酸、N8−アセチルスペルミジン、カンプトテシン、エスペラミシン、エンジイン、マイトマイシン、アントラサイクリン、1−(2−クロロエチル)1,2−ジメタンスルフォニルヒドラジド、シタラビン、アングイジン、及び6−メルカプトプリンの群から選択され;
前記アクチベータ化合物が、(4)に記載のジエンから選択されるジエンを含み
【化88】
式(4)中、R及びRはそれぞれ独立してH、アルキル、アリール、CF、CF−R’、NO、NO、OR’、SR’、CN、C(=O)R’、C(=S)R’、OC(=O)R’’’、SC(=O)R’’’、OC(=S)R’’’、SC(=S)R’’’、S(=O)R’、S(=O)R’’’、S(=O)OR’、POR’R’’、S(=O)NR’R’’、C(=O)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)O−R’、C(=S)S−R’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’R’’、NR’C(=O)R’’、NR’C(=S)R’’、NR’C(=O)OR’’、NR’C(=S)OR’’、NR’C(=O)SR’’、NR’C(=S)SR’’、OC(=O)NR’R’’、SC(=O)NR’R’’、OC(=S)NR’R’’、SC(=S)NR’R’’、NR’C(=O)NR’’R’’、NR’C(=S)NR’’R’’からなる群から選択され、ここでそれぞれのR’及びそれぞれのR’’は独立してH、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立してアリール又はアルキルであり;
式(4)中、AはNであり;BはNであり;Xは、Nあり;Yは、Nである
キット。
【請求項2】
が(O−C(O))−(L−(D)であり、p=0又は1、及びn=0又は1である、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記ジエノフィルが式(1b)の構造を持ち
【化89】
ここで、それぞれのRは独立して、H、アルキル、アリール、OR’、SR’、S(=O)R’’’、S(=O)R’’’、Si−R’’’、Si−O−R’’’、OC(=O)R’’’、SC(=O)R’’’、OC(=S)R’’’、SC(=S)R’’’、F、Cl、Br、I、N、SOH、SOH、POH、NO、NO、CN、CF、CF−R’、C(=O)R’、C(=S)R’、C(=O)O−R’、C(=S)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)S−R’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’C(=O)−R’’’、NR’C(=S)−R’’’、NR’C(=O)O−R’’’、NR’C(=S)O−R’’’、NR’C(=O)S−R’’’、NR’C(=S)S−R’’’、NR’C(=O)NR’’−R’’、NR’C(=S)NR’’−R’’、CR’NR’’からなる群から選択され、それぞれのR’及びそれぞれのR’’は独立してH、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立してアリール又はアルキルであり;ここで2つのRa、d部分は環を形成し得るものであ
請求項1記載のキット。
【請求項4】
請求項に記載のキットであり、前記ジエノフィルが次の構造、
【化90】
(ここで破線は、結合されたT又はS−T又はM又はS−Mの残りを示す。波線はD、L−Dの残りを示す、場合によりT又はS−T又はM又はS−Mを含む。)
【化91】
(ここで破線は、結合されたT又はS−T又はM又はS−Mの残りを示す。波線はD、L−Dの残りを示す、場合によりT又はS−T又はM又はS−Mを含む。)
【化92】
(ここで破線は、結合されたT又はS−T又はM又はS−Mの残りを示す。波線はD、L−Dの残りを示す、場合によりT又はS−T又はM又はS−Mを含む。)
から選択されるキット。
【請求項5】
請求項1記載のキットであり、前記ジエンがR及びRでパラ置換されたテトラジンである式(7)の構造を持ち
【化93】
式(7)中、R及びRがそれぞれ独立して、H、アルキル、F、CONHR、CONR、COR、−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2,6−ピリミジル、3,5−ピリミジル、2,4−ピリミジル、2,4−イミダジル(imidazyl)、2,5−イミダジル及びフェニルからなる群から選択される置換基を表し前記置換基は、NO、F、Cl、CF、CN、COOR、CONHR、CONR、COR、SOR、SOOR、SONR2、PO、NO、及びArからなる群から選択される1又は複数の電子吸引基で置換されてもよく、ここでRはH又はC−Cアルキルであり、及びArはフェニル、ピリジル又はナフチルである
キット。
【請求項6】
請求項に記載のキットであり、前記ジエンが、式(8a)又は(8b)のいずれかの構造を持ち
【化94】
ここでそれぞれのR及びそれぞれのRは独立して、H、アルキル、アリール、CF、CF−R’、NO、OR’、SR’、C(=O)R’、C(=S)R’、OC(=O)R’’’、SC(=O)R’’’、OC(=S)R’’’、SC(=S)R’’’、S(=O)R’、S(=O)R’’’、S(=O)NR’R’’、C(=O)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)O−R’、C(=S)S−R’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’R’’、NR’C(=O)R’’、NR’C(=S)R’’、NR’C(=O)OR’’、NR’C(=S)OR’’、NR’C(=O)SR’’、NR’C(=S)SR’’、OC(=O)NR’R’’、SC(=O)NR’R’’、OC(=S)NR’R’’、SC(=S)NR’R’’、NR’C(=O)NR’’R’’、及びNR’C(=S)NR’’R’’からなる群から選択され、それぞれのR’及びそれぞれのR’’は独立してH、アリール又はアルキルであり、R’’’は独立してアリール又はアルキルである、
キット。
【請求項7】
請求項1に記載のキットであり、前記ジエン
【化95】
からなる群から選択される、キット。
【請求項8】
請求項に記載のキットであり、薬物D又はリンカーL又はトリガー部分Tの少なくとも1つが標的化試薬T含む、キット。
【請求項9】
請求項に記載のキットであり、L又はトリガー部分Tの少なくとも1つがマスキング部分Mを含み前記Mペプチドである、キット。
【請求項10】
請求項1記載のキットであり、前記薬物が、T−細胞係合抗体構成物である、キット。
【請求項11】
請求項1記載のキットであり、前記プロドラッグ化合物が、抗体−トキシン又は抗体−薬物共役物である、キット。
【請求項12】
前記ジエノフィルは、式(1a)の構造を有し、式(1a)中、RとTとFとは、Hである、請求項1に記載のキット。
【請求項13】
前記ジエンは、式(4)の構造を有し、
式(4)中、R及びRはそれぞれ独立してH、アルキル、アリールからなる群から選択され、
AはNであり;
BはNであり;
Xは、Nであり;
Yは、Nである、請求項1に記載のキット
【請求項14】
前記ジエノフィルは、式(1b)の構造を有し、式(1b)中、RとTとFとは、Hであり、多くとも4つの場合において、Rは水素ではない、請求項3に記載のキット。
【請求項15】
式(1b)中、それぞれのRは独立してH、又は最大4つの場合、アルキル、アリール、OR’、SR’、S(=O)R’’’、S(=O)R’’’、S(=O)NR’R’’、Si−R’’’、Si−O−R’’’、OC(=O)R’’’、SC(=O)R’’’、OC(=S)R’’’、SC(=S)R’’’、F、Cl、Br、I、N、SOH、SOH、SOH、POH、POH、NO、NO、CN、OCN、SCN、NCO、NCS、CF、CF−R’、NR’R’’、C(=O)R’、C(=S)R’、C(=O)O−R’、C(=S)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)S−R’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’C(=O)−R’’’、NR’C(=S)−R’’’、NR’C(=O)O−R’’’、NR’C(=S)O−R’’’、NR’C(=O)S−R’’’、NR’C(=S)S−R’’’、OC(=O)NR’−R’’’、SC(=O)NR’−R’’’、OC(=S)NR’−R’’’、SC(=S)NR’−R’’’、NR’C(=O)NR’’−R’’、NR’C(=S)NR’’−R’’、CR’NR’’からなる群から選択される置換基であり、ここでそれぞれのR’及びそれぞれのR’’は独立してH、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立してアリール又はアルキルである、請求項3に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非生物的、生体直交型化学反応の手段により活性化される、プロドラッグなどの不活性化薬物に基づく治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医学分野において、ヒト又は動物の体内の特定の場所で活性化されるプロドラッグなどの不活性化合物の使用はよく知られている。また、プロドラッグなどの不活性化物の標的化(ターゲット)送達は広く研究されている。多くの努力が薬物送達システムに向けられており、これは標的位置(サイト)において及び/又は望ましい時間(タイミング)において薬物放出選択性をもたらすものである。1つの方法は、局所的及び特異的酵素活性により特異的に(全身性)プロドラッグを選択的に活性化することである。しかし多くの場合に、興味の対象となる標的サイトは好適な過剰発現酵素を持たない。他の方法は、酵素を標的化組織に、抗体指向酵素プロドラッグ治療(ADEPT)と呼ばれる技術で移送するものである。この方法では、酵素は、腫瘍サイトに、腫瘍関連抗原に結合する抗体と共役することで、標的化される。共役物の全身投与、標的での局在化及び非結合共役物の排除後、設計されたプロドラッグが全身に投与され局所的に活性化される。この方法は、内因性酵素によっては達成されてはならない反応触媒を必要とする。これらの要求に応じる非哺乳類由来の酵素は、非常に免疫原性であり得るものであって、実際繰り返し投与を不可能にする。又は、プロドラッグは疾患サイトに標的化され、次に疾患特異的又は非特異的内因性活性化プロセスを受ける(例えば、pH、酵素、チオール含有化合物など)。
【0003】
標的化抗がん治療は、従来のがん化学療法に比較して、非特異的毒性を低減するように及び有効性を改善するように設計される。この方法は、モノクローナル抗体(mAb)の、がん細胞への高能力の共役小分子治療を特異的に送達する強力な標的化能力により具体化される。毒性の問題に対応する試みで、化学療法剤(薬)は、抗体又はタンパク質レセプターリガンドなどの標的化分子と結合し、これは腫瘍細胞に高い特異性で結合し、抗体−薬物共役物(ADC)又は免疫共役物と呼ばれる化合物を形成する。理論上では免疫共役物の毒性は低いが、というのはこれらは細胞毒性薬物を、特細胞表面抗原又はレセプターを発現する腫瘍に向けるからである。この戦略の成功は限定的であったが、その理由のひとつとしては、細胞毒性薬物が大きな抗体又はタンパク質レセプターリガンドと共役する際に不活性化又は活性低下を起こす傾向があるからである。免疫共役物の有望な進展は、リンカーを介して抗体へ結合された(リンクされた)細胞毒性薬物であり、これは腫瘍サイト又は腫瘍細胞内部で開裂する((Senter et al、Current Opinion in Chemical Biology 2010、14:529−537)。理想的には、mAbは、腫瘍細胞上実質的に発現し、正常組織上で限定的に発現する抗原特異的結合る。特異性は、そうでなければ臨床応用のためには毒性すぎる薬物の利用を可能にする。この分野での最近の研究のほとんどが、高度に強力な細胞毒性試薬の使用に向けられてい。これは、条件付き安定性を与え、薬物送達が循環中ではなく、腫瘍結合後に起こるようなリンカー技術の開発を必要とする。
【0004】
共役物として薬物は不活性であるが、標的に局在化されると薬物が、例えばpH又は酵素により放出され、これは標的特異的(specific)であり得るが、またより一般的(generic)となり得る。薬物放出は、腫瘍組織内の低pH、低酸素、特定酵素などの細胞外機構により活性化され得るが、一般にはより選択的薬物放出は、細胞内、ほとんどはリソソーマル放出機構(例えば、グルタチオン、プロテアーゼ、カタボリズム)を通じて達成され得るものであって、最初に内在化されるべき抗体共役物を必要とする。特定の細胞内放出機構(例えばグルタチオン、カテプシン)は通常は、その性質に依存するが親薬物が細胞を逃げ出して近隣の細胞を攻撃する結果となり得る。このことは、抗体−薬物共役物の範囲についての重要な作用機構として見なされ、特に異種のレセプター発現性又は不十分なmAb浸透性を持つ腫瘍ではそうである。開裂可能なリンカーの例は:ヒドラゾン(酸不安定)、ペプチドリンカー(カプシンB開裂可能)、立体障害性ジスルフィド部分(チオール開裂可能)である。非開裂可能リンカーもまたmAb−薬物共役物で使用され得る。これらの構成物は、カタボリズムでその薬物を放出し、その結果薬物分子はなお1つのアミノ酸に結合されていると考えられる。薬物のサブセットのみがかかる共役物として活性を取り戻す。また、これらのアミノ酸結合薬物は細胞を逃げ出すことができない。それでも、リンカーが安定である場合、これらの構成物は一般に、最も安全と考えられ、及び薬物及び標的に依存して非常に有効であり得る。
【0005】
現在の抗体−薬物共役物放出戦略は限界を持つ。細胞外薬物放出機構は通常は、大きく非特異的であり(pH感受性リンカーと同様に)毒性を与える結果となる。細胞内放出は、mAb−薬物の効率(例えばレセプター−介在内在化)に依存し、一方いくつかの癌は、十分な高複製数で存在する癌特異的及び効果的な内在化標的を持たない。細胞内放出はさらに、十分高濃度で、活性化酵素(プロテアーゼ)又は分子(グルタチオンなどのチオール)の存在に依存する。細胞内放出の次に、薬物は、ある場合には、細胞から標的近隣細胞へ逃げ出す。この効果は、全ての細胞が十分な量の標的レセプターを発現していない不均一な腫瘍には有利であると考えられる。さらに、薬物を浸透させることが難しい腫瘍において重要なことは、対流を妨げる高間質圧である。これは特に、mAb(共役物)などの大きな構成物について問題となる。この機構はまた、結合サイトバリアが生じる場合に重要となる。一度標的化試薬が血管系を離れ、レセプターに結合すると、腫瘍内での動きは制限される。血管周囲空間内で制限されるmAb共役物の可能性はその標的の親和性に比例する。浸透性は、mAb投与量の増加により改善されるが、この方法は、例えば肝臓への毒性を制限する投与量により制限される。さらには、死につつある細胞から出る抗原が、腫瘍間質空間に存在し、そこでこれらは、mAb−共役物がその標的細胞に結合することを妨げ得る。また、多くの標的が、無効な内在によって妨害され、及び異なる薬物は同じやりかたでmAbへリンクされ得ない。さらには、標的内で内因性要素により選択的開裂され一方で、標的への途中での内因性要素に対して安定である(特に、全mAbをゆっくり排除する場合)ようにリンカーを設計することは手間がかかる。その結果として、最適薬物、リンカー、mAb及び標的の組み合わせが選択され、それぞれの場合により最適化されることが必要となる。
【0006】
効果的なプロドラッグ方法から利益を得られる他の応用分野は、T−細胞係合抗体構成物(例えば、二−又は三特異的抗体断片)であり、これは免疫システムに係合することで癌に作用する。活性化T細胞をがん細胞と直接接触させることは、がん細胞を殺す強力な方法を与えることであると、長く考えられてきた(Thompson et al.、Biochemical and Biophysical Research Communications 366(2008)526−531)。これをするために作成されてきた多く二特異性抗体において、大部分は2つの抗体結合サイトからなり、その一方のサイトは腫瘍を標的とし、他のサイトはT細胞を標的とする(Thakur et al.Current Opinion in Molecular Therapeutics 2010、12(3)、340−349)。しかし、活性T細胞結合サイトを含む二特異性抗体では末梢T細胞結合が生じ得る。これは、共役物が腫瘍へ近づくことを妨げるだけでなく、またサイトカイン・ストームを起こしてT細胞を枯渇させ得る。必要とされる際及び場所でのみ(即ち、腫瘍結合アームを介して腫瘍局在化後)その中でUV光の照射に続いて抗T細胞活性が回復される光活性化可能な抗−T細胞抗体は、これらの問題を解決するために使用されてきた。抗ヒトCD3(T細胞標的化)抗体は、光開裂性1−(2−ニトロフェル)エタノール(NPE)コーティングにより可逆的に抑制された(Thompson et al.、Biochemical and Biophysical Research Communications 366(2008)526−531)。しかし、光系活性化は、光が浸透し得る身体の領域に制限され、転移性癌などの全身性疾患を治療するために変更することは容易ではない。
【0007】
プロドラッグ方法から利益を得る強く関連する構成物は、三特異性T細胞係合抗体構成物であり、これは例えば癌標的化試薬に加えてCD3及びCD28T細胞係合部分を持つ。かかる構成物は、そのまま使用するには毒性が高く、且つCD3もしくはCD28のいずれか又は両方の結合領域はマスクされる必要がある。
【0008】
標的化薬物を選択的かつ予想可能に標的サイトで活性化し、さらに均一な浸透性及び標的化に依存せず、さらに標的への途中及び標的内で、及び指標ごとに、及び患者ごとに変化し得る内因性パラメータに依存せず、活性化できることが望ましい。
【0009】
現在のプロドラッグ活性化の欠点を解消するために、非生物的、生体直行型化学反応、即ちStaudinger反応を使用してプロドラッグの活性化を引き起こすことが提案されている(Bioconjugate Chem 2008,19,714−718)。簡単に、導入された概念では、プロドラッグは薬物とトリガーの共役物であり、この薬物−トリガー共役物は、例えば酵素や特定のpHにより内因的に活性化されるのではなく、トリガーから薬物の放出を誘導するため(又は逆に、薬物からトリガーを放出するが、この放出プロセスの別の見方である)、アクチベータ、即ちプロドラッグ内でトリガー部分と反応する種類の制御された投与により、活性化される。この概念の提案されたStaudinger方法は、しかし、十分作用しないことが分かり、応用分野も、Staudinger反応により課せられる放出機構に特定の性質からみて限定的である。Staudinger反応を使用する他の欠点は、反応速度が限定されていることであり、及びこれらの反応のホスフィン成分が酸化に不安定であることである。従って、生理的条件で安定で、お互いに対してより反応性であり、及び種々の機構の手段により結合された薬物放出を誘導することができる非生物的、生体直交型反応のための反応物を提供すること、それにより、非常に汎用性のある活性化薬物放出方法を提供することが望ましい。
【0010】
選択的プロドラッグ活性化のための内因性活性化機構(例えばpH、酵素)に依存しない生体適合性化学反応の使用は、がん治療の強力な新規なツールとなる。必要なときに必要な位置でプロドラッグを選択的に活性化することは、癌を含めて身体内に多くのプロセスを広く制御することが可能になる。抗腫瘍抗体治療などの治療は、それにより、より特異的となり、正常細胞と腫瘍との間の増大した治療コントラストをもたらし、望まない副作用を低減させる。T細胞係合抗癌抗体においては、本発明は、不活性抗体構成物(即ちこれは従ってプロドラッグである)の全身投与及び腫瘍標的化を可能にし、さらに非特異的な(オフターゲットの,off-target)毒性を低減させることを可能にする。十分な腫瘍への取り込みと非標的化領域からの排除より、腫瘍結合抗体はアクチベータの投与により活性化され、これは抗体又は特定の抗体領域上の1以上のトリガーと反応し、その結果トリガーは除去されてT細胞結合機能回復さる。これは、T細胞活性化及び抗癌作用をもたらす(即ち、これはこの場合薬物放出である)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Senteretal、Current Opinion in Chemical Biology 2010、14:529−537
【非特許文献2】Thakuretal.Current Opinion in Molecular Therapeutics 2010、12(3)、340−349)
【非特許文献3】Thompsonetal.、Biochemical and Biophysical Research Communications366(2008)526−531
【非特許文献4】Bioconjugate Chem2008、19、714−718
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、非生物的、生体直交型化学反応の手段により活性化される、プロドラッグなどの不活性化薬物に基づく治療方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1又は複数の前記要求により良く対応するために、本発明はプロドラッグの投与及び活性化のためのキットを提供し、前記キットは、薬物が、直接又は間接的に、トリガー部分に結合された(リンクされた)薬物及び前記トリガー部分のためのアクチベータを含み、前記トリガー部分がジエノフィルを含み、及び前記アクチベータがジエンを含み、前記ジエノフィルが式(1a)を満たす。
【0014】
【化1】
式(1a)中、T、Fはそれぞれ独立してH、又はアルキル、F、Cl、BrもしくはIからなる群から選択される置換基を表し;
A及びPはそれぞれ独立してCR又はCRであり(ただし、少なくとも1つはCRである);
は(O−C(O))−(L−(D)、S−C(O)−(L−(D)、O−C(S)−(L−(D)、S−C(S)−(L−(D)、又はO−S(O)−(L−(D)であり、ここで、p=0又は1であり;(L任意のリンカーであり、n=0又は1であり、好ましくはTにS、N、NH、又はOを介してリンク(結合され)、ここでこれらの原子は、直線及び/又は分岐して配置された複数単位からなり得る前記リンカーの一部であり
Y、Z、Q、Xは一緒になって、任意には1つ又はそれ以上の芳香族部分に縮合する4−員脂肪族性又はヘテロ脂肪族性部分を形成し
それぞれのRは独立して、H、アルキル、アリール、OR’、SR’、S(=O)R’’’、S(=O)R’’’、S(=O)NR’R’’、Si−R’’’、Si−O−R’’’、OC(=O)R’’’、SC(=O)R’’’、OC(=S)R’’’、SC(=S)R’’’、F、Cl、Br、I、N、SOH、SOH、SOH、POH、POH、NO、NO、CN、OCN、SCN、NCO、NCS、CF、CF−R’、NR’R’’、C(=O)R’、C(=S)R’、C(=O)O−R’、C(=S)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)S−R’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’C(=O)−R’’’、NR’C(=S)−R’’’、NR’C(=O)O−R’’’、NR’C(=S)O−R’’’、NR’C(=O)S−R’’’、NR’C(=S)S−R’’’、OC(=O)NR’−R’’’、SC(=O)NR’−R’’’、OC(=S)NR’−R’’’、SC(=S)NR’−R’’’、NR’C(=O)NR’’−R’’、NR’C(=S)NR’’−R’’、CR’NR’’からなる群から選択され、ここでそれぞれのR’及びそれぞれのR’’は独立してH、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立してアリール又はアルキルであり;
それぞれのRは独立して、H、アルキル、アリール、O−アリール、O−アルキル、OH、C(=O)NR’R’’R’及びR’’はそれぞれ独立してH、アリール又はアルキルである)、又はR’CO−アルキルR’はH、アルキル又はアリールである)からなる群から選択され
それぞれのRは独立してH、アルキル、アリール、O−アルキル、O−アリール、OHからなる群から選択され;
ここで2以上のRa、b、c、部分がともに環を形成し得るものであり;
は1又は複数の治療部分又は薬物であり、好ましくはS、N、NH、又はOを介して結合され、これらの原子が前記治療部分の一部である。
【0015】
他の側面では、本発明はプロドラッグを提供し、これは前記式(1a)を満たすトランス−シクロオクテン部分に、直接又は間接的に結合した薬物化合物を含む。
【0016】
他の側面では、本発明はプロドラッグへ薬物化合物を変性させる方法を提供し、前記プロドラッグは、非生体、生体直交型反応で引き起こされるものであり、当該方法は、薬物を準備するステップと、前記薬物を式(1a)を満たす環状部分に化学的に結合するステップを含む。
【0017】
さらに他の側面では、本発明は治療の方法を提供し、当該方法において、薬物で変化し得る疾患に罹患する患者は、活性化の後にアクチベータの投与により薬物が放出されるトリガー部分を有するプロドラッグを前記患者に投与することにより治療される。ここで前記トリガー部分が式(1a)を満たす環構造を含む。
【0018】
さらに他の側面では、本発明は8−員非芳香族環モノ−アルニレン部分(好ましくはシクロオクテン部分及びより好ましくはトランス−シクロオクテン部分)を含む化合物であり、前記部分、動物又はヒトのプロドラッグ治療で使用するための薬物への結合を含む
【0019】
他の側面では、本発明はジエンの、好ましくはテトラジンの、生理的環境下で、式(1a)を満たす化合物に結合された物質の放出のためのアクチベータとしての使用である。これに関連して本発明はまた、生理的環境下で、式(1a)を満たす化合物に結合された物質の放出のためのアクチベータとしてのテトラジンの使用、及び生理的環境下で、式(1a)を満たす化合物に結合された物質の放出を活性化するための方法に関する。ここでテトラジンがアクチベータとして使用される。
【0020】
他の側面では、本発明は、式(1a)を満たす化合物とジエン、好ましくはテトラジンとの間の電子要求ディールスアルダー反応の使用を、生理的環境下で、式(1a)を満たす化合物に結合され、共有結合形で投与される物質の放出のための化学ツールとして提供する。
【0021】
レトロディールスアルダー反応
前記式(1a)のジエノフィル及びジエンは、逆電子要求ディールスアルダー反応の可能性をもつ。前記アクチベータと前記トリガーとの前記レトロディールスアルダー反応により前記プロドラッグの活性化(アクティベーション)が前記薬物の放出を起こす。
【0022】
以下の反応式は、(3,6)−ジ−(2−ピリジル)−s−テトラジンジエントランス−シクロオクテンジエノフィルとの[4+2]ディールスアルダー反応を、続いて、生成物と二窒素が形成されるレトロディールスアルダー反応の式を示す。反応生成物は互変異性体を生じてよく、且つこれはスキーム内に示される。トランスシクロオクテン誘導体は、古典的なディールスアルダー反応のように電子吸引基を持たず、この型のディールスアルダー反応は古典的な反応とは区別され、しばしば「逆電子要求ディールスアルダー反応」と言われている。以下の記載では、両方の反応ステップの順序、即ち最初のディールスアルダーシクロ付加(通常は逆電子要求ディールスアルダー反応)及び続くレトロディールスアルダー反応は、短く「レトロディールスアルダー反応」又は「レトロDA」と参照される。時には「rDA」と省略され得る。
前記反応の生成物は、従ってレトロディールスアルダー反応付加物又はrDA付加物である。
【0023】
【化2】
【発明を実施するための形態】
【0024】
一般に、本発明は、薬物が、式(1a)を満たすトランス−シクロオクテン誘導体から、テトラジン誘導体などの適合性のあるジエンとのシクロ付加反応の際に放出され得る、という認識に基づく。式(1a)のジエノフィルは、それが実質的に任意のジエンと反応する(及び薬物放出を生じる)という利点を持つ。
【0025】
理論に縛られることなく、本発明者は、レトロディールスアルダー付加物の分子構造は、このrDA付加物内での自然除去反応が薬物を放出するようなものである、と考えている。特に、本発明者は、好適に変性されたrDA成分がrDA付加物を導き、ジエノフィルにおける薬物への結合がジエンの孤立電子対の存在により不安定化する、と考えている。
【0026】
プロドラッグ活性化においてレトロディールスアルダー反応を使用する一般概念はスキーム1に示される。
スキーム1:
【0027】
【化3】
キームで、「TCO」とはトランス−シクロオクテンを意味する。用語トランス−シクロオクテンは、ここでは、1又は複数のヘテロ原子を含むように使用され、特に式(1a)を満たす構造を意味する。広い意味で、本発明者は、Staudinger反応に基づいて行った試み以外に、プロドラッグのためのトリガー部分としてTCOを選択することは、薬物(活性)部分をプロドラッグ(活性化可能)部分にるための有用なツールを提供する、ことを見出し、活性化は、ジエノフィル(トリガー)とジエン(アクチベータ)との強力な、非生物的、生体直交型反応、即ちレトロディールスアルダー反応により生じ、かつプロドラッグは薬物−ジエノフィル共役物である。
【0028】
理解されるべきことは、スキーム1で、レトロディールスアルダー付加物において並びに最終生成物において示されたTCO基及び示されたジエン基、それらの基がレトロディールスアルダー反応で変換された後それぞれTCO及びジエン基の残基である、ということである。
【0029】
非生物的、生体直交型化学反応の適用を成功させるために必要なことは、2つの関与する官能基がその反応性を微調整されて、共存する官能性との干渉を防止することである。理想的には、反応相手は、非生物的で、生理的条件で反応性であり、お互いにのみ反応性であって、その細胞/生理的環境を無視できる(生体直交性)ものである。生理的環境で課される選択性の要求は、ほとんどの従来の反応の使用を除外する。
【0030】
電子要求ディールスアルダー反応は、しかし、低濃度及び準当量条件で動物内で有効であることが示された(R.Rossin et al、Angewandte Chemie Int Ed 2010、49、3375−3378)。本発明での反応相手は、歪みのかかったトランス−シクロオクテン(TCO)誘導体、及び好適なジエン、例えばテトラジン誘導体などである。TCOテトラジンとのシクロ付加反応は中間体をもたらし、の中間体は次にレトロディールスアルダーシクロ付加反応で二窒素の排除により再構成されジヒドロピリダジン共役物を形成する。これとその互変異性体は、レトロディールスアルダー付加物である。
【0031】
本発明者は、式(1a)のTCOの構造は、TCOジエノフィル内に利用可能な二重結合とジエンを含む反応の結果それに結合された薬物の放出を引き起こすために非常に優れていることを認識するに至った。これを可能にすると思われる特徴は、
(a)rDA反応の性質であり、二重結合の再構成を含み、脱離カスケードを引き起こすために使用され得る;
(b)rDA付加物の性質であり、ジヒドロピリダジン基を持ち、これは非芳香族であり(又は他の非芳香族基)、脱離反応で再構成されて共役二重結合を形成するか、芳香族基(例えばピリダジン)を形成する;
(c)rDA付加物の性質であり、これはジヒドロピリダジン基を持ち、これは弱塩基であり、従って脱離反応を触媒し得るものである。
【0032】
広い意味で、本発明は、式(1a)のジエノフィルを用いるrDA反応、並びにrDA付加物は、生体直交型反応で引き起こされる薬物放出を可能とする多用途のプラットフォームを具体化するという認識を使用する。
【0033】
応は生体直交型であるという事実及び多くの構造選択肢が反対のために存在するということは、当業者には明らかである。例えばrDA反応はプレターゲット医薬の分野で知られている。国際公開第2010/119382号、国際公開第2010/119389号及び国際公開第2010/051530号を参照文献とする。本発明は反応の完全に異なる使用を提供するものであるが、理解されるべきことは、プレ標的化で使用されるrDA反応対のために利用可能な種々の構造可能性はまた、本発明の分野で利用可能である、ということである。
【0034】
本発明で使用されるジエノフィルトリガー部分は、トランス−シクロオクテン環を含み、環は場合により1又は複数のヘテロ原子を含む。以下、この8員環部分をトランス−シクロオクテン部分と定義し、読みやすさのために「TCO」部分と略記する。理解されるべきことは、本質は、ジエノフィルとして作用する且つ反応の際その共役された薬物から放出される前記8員環の可能性にある、ということである。当業者は、ジエノフィル活性が、環の全ての炭素原子の存在に必ずしも依存ないという事実を知っているが、これはヘテロ環モノアルケニレン8−員環もジエノフィル活性を持つことが知られてるからである。
【0035】
従って、一般には本発明は、薬物置換トランスシクロオクテンに厳密に限定されるものではない。有機化学の当業者は、他の8員環系ジエノフィルが存在し、これはトランスシクロオクテンと同じ環内二重結合を持つが、環内のいずれの場所に1又は複数のヘテロ原子を持つ、ということを認識している。即ち、本発明は一般に、共役された薬物を有する、8員環非芳香族性環状アルケニレン部分、好ましくはシクロオクテン部分、及びより好ましくはトランスシクロオクテン部分に関わる
【0036】
インビボ作用がしばしば僅かな構造変化で変化される例えば医薬的活性物質を含む場合以外、本発明は、薬物共役の好適な設計と組み合わせられる正しい化学反応性を何よりもまず要求する。従って、可能な構造は、当業者にとってこれらがジエノフィルとして反応性であることをよく知っているものに拡張される。
【0037】
留意すべきことは、命名法の選択に依存して、TCOジエノフィルはまた、E−シクロオクテンとして記載される、ということである。従来の命名法を参照して、理解されるべきことは、シクロオクテン環の置換の結果として、置換基の位置及び分子量に依存して、同じシクロオクテン異性体が形式的にZ−異性体として記載されることになる、ということである。本発明では、本発明のいずれの置換体は、形式的に「Z」又は「E」、「シス」また「トランス」異性体であろうと、無置換トランスシクロオクテン、又は無置換E−シクロオクテンの誘導体として考える。用語「トランス−シクロオクテン」(TCO)はE−シクロオクテン同様に交換可能に使用され、又置換が形式的に反対の命名法を要求する場合でも本発明の全てのジエノフィルについて維持される。即ち、本発明は、以下番号付けされたように炭素原子1と6がE−(エントゲーゲン)即ちトランス配置である。
【0038】
【化4】
本発明はさらに、具体的な実施態様に関して説明され、図面を参照するが本発明はこれらに限定されるものではなく特許請求の範囲にのみ限定されるものでる。請求項内のいずれの参照記号も、範囲を限定するものとして解釈されない。記載された図面は模式的でありなんらを限定するものではない。図面において、ある要素のサイズは誇張されており、説明することを目的とするだけのものである。特許請求の範囲の全ての参照番号は、本発明を限定するものではない。不定冠詞また定冠詞「ひとつの」、「前記」を伴って使用される限定的又は非限定的物の単数名詞形は、特に記載がない限り複数を含む。
【0039】
さらに留意されるべきことは、明細書や特許請求の範囲で使用される用語「含む」は、列記される手段に限定されるべきではなく、他の要素やステップを含むことを除外するものではない。従って、表現「手段A及びBを含む装置」とは、部品AとBのみからなる装置に限定されるべきではない。これは、本発明においては、関連する部品がA及びBであることのみを意味する。
【0040】
以下いくつかの化学式で、「アルキル」及び「アリール」が参照される。ここで、「アルキル」は、それぞれ独立して、10炭素原子までの脂肪族、直鎖、分岐、飽和、不飽和及び/又は環状ヒドロカルビル基を示し、1〜10のO、N又はSなどのヘテロ原子を含むことができ、「アリール」は、それぞれ独立して、20炭素原子までの芳香族基又はヘテロ芳香族基を示し、置換されていてよく、及び1〜10のO、N、P又はSなどのヘテロ原子を含むことができる。「アリール」基はまた、「アルキルアリール」又は「アリールアルキル」基(簡単な例ではベンジル基)を含む。「アルキル」、「アリール」、「アルキルアリール」及び「アリールアルキル」が含む炭素原子の数は、かかる用語の前に指定されることで示される(即ち、C1−10アルキルは、アルキルが1から10の炭素原子を含み得ることを意味する)。本発明のある化合物は、キラル中心及び互変異性体を含み、及び全てのエナンチオマー、ジアステレオマー及び互変異性は、それらの混合物も含めて本発明の範囲に含まれる。いくつかの式で、基又は置換基は、「A」、「B」、「X」、「Y」などの文字で参照され、種々の(数字付き)「R」基で参照される。これらの文字の定義は、それぞれの式について読まれるべきものであり、即ち異なる式ではこれらの文字は特に断りがない限り、それぞれ独立して、異なる意味を持ち得る。
【0041】
ここで記載される本発明の全ての実施態様では、アルキルは好ましくは低級アルキルであり(C1−4アルキル)であり、それぞれのアリールは好ましくはフェニルである。
初期の研究で、前(プレ)標的化放射線免疫イメージングのために逆電子要求ディールスアルダー反応の利用が示された(R.Rossin et al、Angewandte Chemie Int Ed 2010、49、3375−3378)。この特定のシクロ付加反応は、(3,6)−ジ−(2−ピリジル)−s−テトラジン誘導体とE−シクロオクテンとの間で生じ、続いてレトロディールスアルダー反応が起こって生成物と窒素を形成する。トランスシクロオクテン誘導体は、古典的なディールスアルダー反応におけるように電子吸引基を含まないことから、このタイプのディールスアルダー反応は、古典的な反応とは区別され、しばしば、「逆電子要求ディールスアルダー反応」と参照されている。以下の記載で、一連の両方の反応ステップ、ち最初のディールスアルダーシクロ付加(通常は逆電子要求ディールスアルダーシクロ付加)及び続くレトロディールスアルダー反応は短く「レトロディールスアルダー反応」とよばれる。
【0042】
レトロディールスアルダー反応
レトロディールスアルダーカップリング化学は一般には、一組の反応物を含む。当該一組の反応物がカップリングして不安定な中間体を形成し、この中間体がレトロディールスアルダー反応による唯一の副生成物として小分子(出発化合物に依存して、例えばN、CO、RCNなど)を放出して、レトロディールスアルダー付加物を形成する。当該一組の反応物は、一方の反応物として(即ち一の生体直交型反応基)、例えば電子不足テトラジンなどのテトラジン誘導体などの好適なジエンと、及び方の反応物として(即ち、他の生体直交型反応基)、好適ジエノフィル例えば歪みのかかったシクロ(TCO)を有する。
【0043】
例えば電子不足(置換)テトラジンとTCO部分との非常に速い反応は、接続中間体を形成し、これは、[4+2]レトロディールスアルダーシクロ付加の唯一の副生成物としてのNを放出してジヒドロピリダジンレトロディールスアルダー付加物に再配置される。水環境では、最初に形成される4,5−ジヒドロピリダジン生成物は、1,4−ジヒドロピリダジン生成物に互変異性化し得る。
【0044】
つの反応種は、非生物的であり、インビボで迅速な代謝や副反応を受けない。これらは生体直交型であり、例えばこれらは、生理的媒体中で選択的にそれぞれと反応する。従って、本発明の化合物及び方法は、生物中で使用され得る。さらには、反応基は比較的小さく、生物サンプル中、又は生物中に、それらの中の分子のサイズを大きく変更することなく導入することを可能にする。逆電子要求ディールスアルダー反応及び一組の反応性化学種の挙動についての参照文献は:Thalhammer、F;Wallfahrer、U;Sauer、J、Tetrahedron Letters、1990、31(47)、6851−6854;Wijnen、JW;Zavarise、S;Engberts、JBFN、Journal Of Organic Chemistry、1996、61、2001−2005;Blackman、ML;Royzen、M;Fox、JM、Journal Of The American Chemical Society、2008、130(41)、13518−19)、R.Rossin、P.RenartVerkerk、SandraM.van den Bosch、R.C.M.Vulders、l.Verel、J.Lub、M.S.Robillard、Angew Chem Int Ed 2010、49、3375、N.K.Devaraj、R.Upadhyay、J.B.Haun、S.A.Hilderbrand、R.Weissleder、Angew Chem Int Ed 2009、48、7013、及びDevaraj et al.、Angew.Chem.Int.Ed.、2009、48、1−5、である。
【0045】
理解されるべきことは、広い意味で、本発明により、レトロディールスアルダーカップリング及び続く薬物活性化化学は、基本的にいずれの分子、基又は部分の組に適用でき、これらはプロドラッグ治療に使用され得るものである、ということである。即ち、かかる一組の一方は、ジエノフィル(トリガー)に結合される(リンクされる)薬物を含む。他の一つは、ジエノフィルとの反応に使用するための相補的ジエンであり得る。
【0046】
トリガー
ロドラッグは、Tとして示されるトリガー部分に、直接又は間接的に結合されたDとして示される薬物(Drug)を含み、トリガー部分はジエノフィルである。ジエノフィルは、広い意味で、8員環非芳香族性環状アルケニレン部分(好ましくはシクロオクテン部分、及びより好ましくはトランスシクロオクテン)である。場合により、トランスシクロオクテン(TCO)部分は、同じ面内に実質的に固定される少なくとも2つの環結合を持ち、及び/又はこれは場合により、アキシ位で少なくとも1つの置換基を有し及びクアトリアル位に有しない。有機化学の当業者は、用語「実質的に同じ面内に固定される」とは、結合が通常は同じ面内に固定されるという結合理論を意味することを理解する。かかる同じ面内での固定の典型例は、二重結合及び歪のかかった縮合環を含む。例えば、少なくとも2つの環外結合は、酸素結合する二重結合の結合2個(即ちC=O)であり得る。少なくとも2つの環結合はまた、2つの隣接する炭素原子の一重結合であり得る、これは、これらの結合が一緒になって縮合環(即ちTCO環に縮合される)の一部分であり、縮合環は実質的に平面構造を有し、それにより2つの一重結合が実質的に1つの同じ面で固定される場合である。後者の例は、シクロプロピル及びシクロブチルなどの歪みのかかった環を含む。理論に縛られることなく本発明者は、同じ面内の少なくとも2つの環外結合の存在は、TCO環を少なくとも部分的に平坦化させ、これによりレトロディールスアルダーにおけるより高い反応性を導くことを可能にすると確信する
【0047】
本発明ではTCOは次の式(1a)を満たす。
【0048】
【化5】
A及びPはそれぞれ独立してCR又はCRであり、ただし少なくとも1つはCRである。Xは、(O−C(O))−(L−(D)、S−C(O)−(L−(D)、O−C(S)−(L−(D)、S−C(S)−(L−(D)、O−S(O)−(L−(D)、であり、ここでp=0又は1、(L任意のリンカーであり、n=0又は1、好ましくはS、N、NH、又はOを介してTに結合され、これらの原子はリンカーの一部であり、直線的及び/又は分岐させて配置される複数のユニットからなる。Dは、1又は複数の治療部分又は薬物であり、好ましくはS、N、NH、又はOを介して結合され、これらの原子は治療部分の一部である。好ましくは、Xは(O−C(O))−(L−(D)であり、ここでp=0又は1であり、好ましくは1、及びn=0又は1である。
【0049】
好ましくは、DがT又はLにNHを介して結合される場合、このNHはDからの一級アミン(−NH)残基であり、及びDがNを介して結合される場合には、NはDからの二級アミン(−NH−)残基である。同様に、好ましくは、DがO又はSを介して結合される場合には、O又はSは、それぞれ、Dからのヒドロキシル(−OH)残基又はスルフヒドリル(−SH)残基である。
【0050】
さらに好ましくは、Dに含まれるS、N、NH、又はO部分がDの脂肪族性又は芳香族性炭素に結合されている。
【0051】
好ましくはLがTにNHを介して結合される場合、このNHはLからの一級アミン(−NH)残基であり、及びLがNを介して結合されている場合には、このNはLからの二級アミン(−NH−)残基である。同様に、好ましくは、LがO又はSを介して結合される場合には、O又はSは、それぞれ、Lからのヒドロキシル(−OH)残基又はスルフヒドリル(−SH)残基である。
【0052】
さらに好ましくは、Lに含まれるS、N、NH、又はO部分がの脂肪族性又は芳香族性炭素に結合されている。
【0053】
本発明においてリンカーLが参照される場合、これは自壊性であるか又はそうでないか、又はそれらの組み合わせであり得るものであり、及び複数の自壊性ユニットからなることができる。
【0054】
さらに明確にする方法で、p=0及びn=0である場合、薬物は直接脱離反応の脱離基を構成し、及びp=0及びn=1の場合、自壊性リンカーは脱離反応の脱離基を構成する。リンカーLと薬物Dの結合位置及び方法は当業者に知られている(例えば、Papot et al、Anti−Cancer Agents in Medicinal Chemistry、2008、8、618−637を参照)。それにもかかわらず、自壊性リンカーLの典型的な、限定的ではない例はベンジル誘導体であり例えば以下に示される。右側に、複数のユニットを持つ自壊性リンカーが示され、このリンカーは、COと4−アミノベンジルアルコールの1ユニットに分解するだけでなく、また1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オンユニットへ分解する。
【0055】
【化6】
ひとつの興味深い実施態様では、Y、Z、X、Qはそれぞれ独立して、CR、C=CR、C=O、C=S、C=NR、S、SO、SO、O、NR及びSiR、からなる群から選択され、Y、Z、X、及びQの最大3つがC=CR、C=O、C=S及びC=NRからなる群から選択され、ここで2つのR基は一緒になって環を形成し、及び隣接する原子の対が存在しない限り、O−O、O−NR、S−NR、O−S、O−S(O)、O−S(O)及びS−S、からなる群から選択され、SiはCR又はOにのみ隣接する。
【0056】
好ましい実施態様では、式(1a)のTCOは全て炭素環である。他の好ましい実施態様では、式(1a)のTCOはヘテロ環炭素環であり、環に1から3の酸素原子を、及び好ましくは1つの酸素原子を含む。
【0057】
もう一つの興味深い実施態様では、結合PQ、QX、XZ、ZY、YAの一つが縮合環の部分であるか、CR=CRからなり、2つの環外結合が同じ面に固定され、及びただしPQ及びYAは芳香族5−又は6−員環の部分、共役7員環の部分又はCR=CRの部分でもなく;縮合環の部分ではない場合には、P及びAは独立してCR又はCRであり、ただし少なくとも1つはCRであり;縮合環の部分である場合には、P及びAは独立してCR又はCRあり、ただし少なくとも1つはCXであり;残りの基(Y、Z、X、Q)はお互いに独立して、CR、C=CR、C=O、C=S、C=NR、S、SO、SO、O、NR、SiRであり、多くとも1つの基がC=CR、C=O、C=S、C=NRであり、隣接する原子対が存在せずO−O、O−NR、S−NR、O−S、O−S(O)、O−S(O)、及びS−Sからなる群から選択され、存在すればSiは、CR又はOに隣接し、及びCR=CR結合は、存在すればCR又はC=CR基に隣接し;
T、Fはそれぞれ独立してH、又はアルキル、F、Cl、BrもしくはIからなる群から選択される置換基を表す。
【0058】
いくつかの実施態様では縮合環は、2つの環結合が実質的に同じ面に固定される結果となる。これらは、以下に定義されるような縮合3−員環、縮合4−員環、縮合二環式7−員環、縮合芳香族5−員環、縮合芳香族6−員環及び縮合平面共役7−員環から選択される。
【0059】
縮合3−員環は:
【0060】
【化7】
であり、ここでE、Gは前記8−員環の部分であり、PQ、QP、QX、XQ、XZ、ZX、ZY、YZ、YA、AYに縮合され得るものであり、それによりP、AはCR又はCXであり、及びそれによりCXはA及びPにのみ存在する。
E−GはCR−CR又はCR−CXであり、及びDはCR、C=O、C=S、C=NR、NR、O、Sであるか;又はE−GはCR−N又はCX−Nであり、及びDはCR、C=O、C=S、C=NR、NRO、又はSである。
【0061】
縮合4−員環は:
【0062】
【化8】
であり、ここで、E−Gは前記8−員環の部分であり、及びPQ、QP、QX、XQ、XZ、ZX、ZY、YZ、YA、AYに縮合され得るものであり、それによりP、AはC、CR又はCXであり、及びそれによりCXはA及びPのみに存在し得る。
E及びGはCR、CX又はNであり、及びD、Mはお互いに独立してCR、C=O、C=S、C=NR、C=CR、S、SO、SO、O、NRであるが、隣接O−O又はS−S基ではない;又は、
E−DはC=CRであり、及びGはN、CR、CXであり、及びMはCR、S、SO、SO、O、NRであるか;又は、E−DはC=Nであり、及びGはN、CR、CXであり、及びMはCR、S、SO、SO、Oであり;又は、
D−MはCR=CRであり、及びE及びGはそれぞれ独立してCR、CX又はNであるか;又は、D−MはCR=Nであり、及びEはCR、CX、Nであり、及びGはCR又はCXであり;又は、
EはCであり、GはCR、CX又はNであり、及びD及びMはCR、S、SO、SO、O、NRであり、又は多くともC=O、C=S、C=NR、C=CRの1つであるが、しかし隣接するO−O又はS−S基ではなく;又はE及びGはC及びDであり、及びD及びMはお互いに独立してCR、S、SO、SO、O、NRであるが、隣接するO−O、又はS−S基ではない。
【0063】
縮合7−員環は:
【0064】
【化9】
であり、E−Gは前記8−員環の部分であり、PQ、QP、QX、XQ、XZ、ZX、ZY、YZ、YA、AYに縮合できるものであり、それによりP、AはC、CR又はCXであり、及びそれによりCXはA及びPにのみ存在し;
E、GはC、CR、CX又はNであり;K、LはCRであり;D、MはCR=CR又はCR=Nを形成し、又はD、Mはお互いに独立してCR、C=O、C=S、C=NR、C=CR、S、SO、SO、O、NRであるが、隣接するO−O、S−S、N−S基ではなく;JはCR、C=O、C=S、C=NR、C=CR、S、SO、SO、O、NR;多くとも2個のN基であり;又は、
E、GはC、CR、CXであり;KはNであり及びLはCRであり;D、MはCR=CR結合を形成し又はD、Mはお互いに独立してCR、C=O、C=S、C=NR、C=CR、NRであるが、隣接するO−O、S−S、N−S基ではなく、;JはCR、C=O、C=S、C=NR、C=CR、S、SO、SO、O、NR多くとも個のN基であり;又は、E、GはC、CR、CXであり;K及びLはNであり;D、M、Jはお互いに独立してCR、C=O、C=S、C=NR、C=CR基であり;
縮合5−員環は:
【0065】
【化10】
であり、E、Gは前記8−員環の部分であり、QX、XQ、XZ、ZX、ZY、YZに縮合され得る。
E及びGはCである。基L、K、又はMの1つはO、NR、Sであり、残りの2つの基はお互いに独立してCR又はNであり;又はEはCであり、GはNであり;L、K、Mは互いに独立してCR又Nである。
【0066】
縮合6−員環は:
【0067】
【化11】
であり、E、Gは前記8−員環の部分であり、QX、XQ、XZ、ZX、ZY、YZに縮合され得る。
E、GがCである。L、K、D、Mはお互いに独立してCR又はNである。
【0068】
縮合平面共役7−員環は:
【0069】
【化12】
である。
E、Gは前記8−員環の部分であり、QX、XQ、XZ、ZX、ZY、YZに縮合し得る。
E、GはCであり;L、K、D、MはCRであり;JはS、O、CR、NRである。
前記示されるそれぞれのRは独立して、H、アルキル、アリール、OR’、SR’、S(=O)R’’’、S(=O)R’’’、S(=O)NR’R’’、Si−R’’’、Si−O−R’’’、OC(=O)R’’’、SC(=O)R’’’、OC(=S)R’’’、SC(=S)R’’’、F、Cl、Br、I、N、SOH、SOH、SOH、POH、POH、NO、NO、CN、OCN、SCN、NCO、NCS、CF、CF−R’、NR’R’’、C(=O)R’、C(=S)R’、C(=O)O−R’、C(=S)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)S−R’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’C(=O)−R’’’、NR’C(=S)−R’’’、NR’C(=O)O−R’’’、NR’C(=S)O−R’’’、NR’C(=O)S−R’’’、NR’C(=S)S−R’’’、OC(=O)NR’−R’’’、SC(=O)NR’−R’’’、OC(=S)NR’−R’’’、SC(=S)NR’−R’’’、NR’C(=O)NR’’−R’’、NR’C(=S)NR’’−R’’、CR’NR’’であり、それぞれのR’及びそれぞれのR’’は独立して、H、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立してアリール又はアルキルであり;
前記示されるそれぞれのRは独立して、H、アルキル、アリール、O−アリール、O−アルキル、OH、C(=O)NR’R’’からなる群から選択され、ここでR’及びR’’はお互いに独立してH、アリール又はアルキル、R’CO−アルキルであり、R’はH、アルキル及びアリールであり;
前記示されるそれぞれのRは独立して、H、アルキル、アリール、O−アルキル、O−アリール、OHからなる群から選択され;
ここで2以上のRa、b、c部分は共に環を形成し得るものであり;
好ましくは、それぞれのRは独立して、H、アルキル、O−アルキル、O−アリール、OH、C(=O)NR’R’’、NR’C(=O)−R’’’からなる群から選択され、R’及びR’’はそれぞれ独立してH、アリール又はアルキルであり、及びR’’’が独立してアルキル又はアリールである。
【0070】
前記全ての実施態様で、場合によりA、P、Q、Y、X、及びZ又はその置換体、又はその部分の縮合環、又は自壊性リンカーL、又は薬物Dのひとつは、場合により1つもしくは複数のスペーサーSを介して1又は複数の標的化試薬T又はマスキング部分に結合される。
【0071】
前記TCOの合成は当業者には十分利用可能なものである。これはまた、歪みのあるシクロアルケン環において1又は複数のヘテロ元素を有するTCOについても明らか該当する。これに関する参照文献は、Cere et al.Journal of Organic Chemistry 1980、45、261及びPrevost et al.Journal of the American Chemical Society 2009、131、14182を含む。
【0072】
好ましい実施態様では、トランスシクロオクテン部分は式(1b)を満たす。
【0073】
【化13】
ここで、同じ面に固定される多くとも2つの環外結合の任意的存在に加えて、それぞれのRは独立してHを表し、又は多くとも4つの場合、アルキル、アリール、OR’、SR’、S(=O)R’’’、S(=O)R’’’、S(=O)NR’R’’、Si−R’’’、Si−O−R’’’、OC(=O)R’’’、SC(=O)R’’’、OC(=S)R’’’、SC(=S)R’’’、F、Cl、Br、I、N、SOH、SOH、SOH、POH、POH、NO、NO、CN、OCN、SCN、NCO、NCS、CF、CF−R’、NR’R’’、C(=O)R’、C(=S)R’、C(=O)O−R’、C(=S)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)S−R’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’C(=O)−R’’’、NR’C(=S)−R’’’、NR’C(=O)O−R’’’、NR’C(=S)O−R’’’、NR’C(=O)S−R’’’、NR’C(=S)S−R’’’、OC(=O)NR’−R’’’、SC(=O)NR’−R’’’、OC(=S)NR’−R’’’、SC(=S)NR’−R’’’、NR’C(=O)NR’’−R’’、NR’C(=S)NR’’−R’’、CR’NR’’からなる群から選択される置換基を表し、ここでそれぞれのR’及びR’’は独立してH、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立してアリール又はアルキルであり;
前記のそれぞれのRは独立して、H、アルキル、アリール、OR’、SR’、S(=O)R’’’、S(=O)R’’’、Si−R’’’、Si−O−R’’’、OC(=O)R’’’、SC(=O)R’’’、OC(=S)R’’’、SC(=S)R’’’、F、Cl、Br、I、N、SOH、SOH、POH、NO、NO、CN、CF、CF−R’、C(=O)R’、C(=S)R’、C(=O)O−R’、C(=S)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)S−R’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’C(=O)−R’’’、NR’C(=S)−R’’’、NR’C(=O)O−R’’’、NR’C(=S)O−R’’’、NR’C(=O)S−R’’’、NR’C(=S)S−R’’’、NR’C(=O)NR’’−R’’、NR’C(=S)NR’’−R’’、CR’NR’’からなる群から選択され、それぞれのR’及びそれぞれのR’’は独立してH、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立してアリール又はアルキルであり;
ここで2つのRa、d部分は一緒に1つの環を形成し得るものであり;
場合によりひとつのRa、dが、標的化試薬T又はマスキング部分Mへのリンカー部分に場合によりスペーサーSを介して含まれ、及びT及びFがそれぞれ独立してHを表し、又は、アルキル、F、Cl、Br、及びIからなる群から選択される置換基を表し、及びXは式(1a)に関して上で定義された通りである。
【0074】
好ましくはそれぞれのR及びRは独立して、H、アルキル、O−アルキル、O−アリール、OH、C(=O)NR’R’’、NR’C(=O)−R’’’からなる群から選択され、ここでR’及びR’’はお互いに独立してH、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立してアルキル又はアリールである。
【0075】
前記ジエノフィルにおいて、好ましくは、同じ面に固定される少なくとも2つの環外結合が、(a)縮合シクロブチル環の一重結合、(b)縮合芳香族環の混成結合、(c)酸素ヘの環外二重結合、及び(d)炭素への環外二重結合からなる群から選択される。
【0076】
1又は又は2つのX部分を含むTCOは、複数異性体からなるものであってよく、またTCOにおける置換基(例えば)についてエクアトリアル対アキシ配位を含んでいてよい。これに関連しては、次に文献が参照され、それぞれ(1RS、2RS)及び(1SR、2RS)として識別される、トランス−オクタ−2−エン−オールのエクアトリアル及びアキシル異性体の合成及び特徴が記載されている(Whitham et al.J.Chem.Soc.(C)、1971、883−896)。これらの異性体では、OH置換基は、エクアトリアル又はアキシルのいずれかの位置で置換されている。
【0077】
好ましい実施態様では、Xが、アキシ又はエクアトリアルいずれかである得る場合のプロドラッグについて、Xはアキシである。
【0078】
カスケード脱離機構で進行すると考えられる薬物放出のため、場合により選択される好ましいジエノフィルは、次構造から選択される。
【0079】
【化14】
(ここで点線は、結合されたT又はS−T又はM又はS−Mの残りを示す。波線は、結合された、L−Dの残りを示し、場合によりT又はS−T又はM又はS−Mを含む。)
【0080】
【化15】
(ここで点線は、結合されたT又はS−T又はM又はS−Mの残りを示す。波線は結合された、L−Dの残りを示、場合によりT又はS−T又はM又はS−Mを含む。)
【0081】
【化16】
(ここで点線は、結合されたT又はS−T又はM又はS−Mの残りを示す。波線は結合された、L−Dの残りを示、場合によりT又はS−T又はM又はS−Mを含む。)
キャリア(担体)としてのTCOの使用
本発明はまた、式(1a)を満たすトランスシクロオクテンの、全ての実施態様で、治療化合物のキャリアとしての使用を含む。トランスシクロオクテンは、前記の通り広い意味でTCOと記載されており、好ましくは全ての炭素環又は1又は2のヘテロ原子を含む。治療化合物は薬物又はその他の化合物であり、又は治療応用を持つことが意図されている部分である。本発明のこの側面でのキャリアとしてのTCOの使用は、治療化合物の治療活性とは関連しない。事実、治療化合物が薬物として開発されることが意図される薬物質である場合、多くの場合実際には失敗し得るものであるがなおキャリアとしてのTCOの応用は薬物の試験において有用である。この意味で、キャリアの許容性でのTCOは、医薬賦形剤と同様であると考えられ、薬物を被験者に導入する場合にキャリアとして作用する。
【0082】
キャリアとしてのTCOの使用は、ジエン、特にテトラジンとの生体直交型反応を開始する部分により担持された薬物を被験者へ投与することを可能にするという利点がある。これは、身体への担持された薬物の運命に影響を与えるためだけでなく、その運命に続いて(例えば続いてラベル化ジエンをそれに反応させることが可能になる)又はその運命を変化させる(例えば、pK変性剤をそれに結合させることが可能になる)ために強力なツールを提供することとなる。これは、前記説明したrDA反応でTCOとジエンを反応させることを可能にするということに基づく。キャリアは好ましくは以下説明するアクチベータと反応させ、以下説明するように、TCOから治療化合物の放出を引き起こす。
【0083】
アクチベータ
クチベータは、生体直交型反応基を持ち、ここでこのアクチベータの生体直交型反応基はジエンである。このジエンは、他の生体直交型反応基、トリガー、及び即ちジエノフィルと反応する(上記参照)。アクチベータのジエンは、トリガーのジエノフィルと反応可能であり、ディールスアルダーシクロ付加反応、続いてレトロディールスアルダー反応を受けることにより、レトロディールスアルダー付加物を与えることができるように選択される。この中間的付加物は次に1つ又は複数の薬物を放出し、そこでこの薬物放出は、種々の環境や条件下で引き起こされるが、これはレトロディールスアルダー付加物の特定の分子構造に関連する。理論に縛られるものではなく、本発明者は、アクチベータは、脱離又はカスケード脱離(レトロディールスアルダー付加物内で分子内脱離反応により)を介して薬物放出を引き起こすように選択されると考えている。この脱離反応は単純な一段階であり得るが、1又は複数の中間体構造を含む複数段階であり得る。これらの中間体は、ある時間安定であるか、又は即時に分解して熱力学的最終生成物となるか、又は次の中間体構造となる。いくつかのステップが関与する場合、これをカスケード反応と呼ぶ。単純又はカスケードプロセスのいずれの場合にも、脱離反応の結果は、薬がレトロディールスアルダー付加物から放出されるということである。理論に縛られることなく、両方の成分(即ち、ジエンアクチベータ及びジエノフィルトリガー)の設計はレトロディールスアルダー付加物内の電子分布が好ましくないため、これらの電子の再配列が必ず生じるようにする。この状況は分子内(カスケード)脱離反応を引き起こして、従って1つもしくは複数の薬物の放出に導くものである。プロドラッグ自体比較的安定であるので、プロドラッグ内での脱離反応の発生及びプロドラッグからの薬物放出は、効率的でないか、又はレトロディールスアルダー反応の前に行うのは不可能である。脱離は、アクチベータ及びプロドラッグが反応して、レトロディールスアルダー付加物内で構築された後にだけ行うことができる。
【0084】
【化17】
【0085】
【化18】
理論に縛られることなく、前記2つの例は、レトロディールスアルダー付加物の好ましくない電子分布が脱離反応によりどのようにして緩和され、それにより薬物を放出するのかを説明する。ひとつのシナリオでは、脱離プロセスは最終生成物Aを生成し、この生成物は、二重結合の共役を持ち、これはレトロディールスアルダー付加物には存在しなかった化学種Aは最終生成物Bと互変異性であるか、又は再配列して最終生成物Cを形成する。次に、レトロディールスアルダー付加物の非芳香族性ジヒドロピリダジン環が、最終生成物Cでの芳香族性ピリダジン環に変換される。当業者は、レトロディールスアルダー付加物の電子分布は一般には、最終生成物、A、B又はCのいずれかにおける電子分布よりも好ましくない、ということを理解する。従って、レトロディールスアルダー付加物よりも安定な化学種の形成が、(カスケード)脱離反応の駆動力である。プロセスをどのように見るかによらず、いずれの場合でも薬物種(ここではアミン「drug−NH」)は、効果的にレトロディールスアルダー付加物から放出されるが、プロドラッグ単独からは放出されることはない。
【0086】
以下のスキームは、上述の2つに加えて、カスケード脱離のための他の可能な放出機構を示す。理論に縛られることなく、以下の例は、レトロディールスアルダー付加物内の好ましくない電子分布が、脱離反応によりどのように緩和され、それにより薬物を放出するかを説明する。このプロセスは、全てが平衡となる種々の互変異性を介して進行し得る。ここで、rDA反応は、互変異性体A及びBを生成し、これらは互いに交換可能である。互変異性体Bは、脱離反応により生成物Cとなり、その後Dとなる。
【0087】
【化19】
クチベータはジエンである。当業者は、レトロディールスアルダー反応で反応性を示す多くのジエンを認識する。アクチベータに含まれるジエンは、テトラジン(本発明による好ましいアクチベータである)などの第3の二重結合を含む環構造の部分であり得る。
【0088】
一般的にアクチベータは、少なくとも2つの共役二重結合を持つヘテロ環部分を含む分子である。
好ましいジエンは以下式(2)〜(4)で与えられる。
【0089】
【化20】
式(2)において、Rは、H、アルキル、アリール、CF、CF−R’、OR’、SR’、C(=O)R’、C(=S)R’、C(=O)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)O−R’、C(=S)S−R’’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’R’’、NR’C(=O)R’’、NR’C(=S)R’’、NR’C(=O)OR’’、NR’C(=S)OR’’、NR’C(=O)SR’’、NR’C(=S)SR’’、NR’C(=O)NR’’R’’、NR’C(=S)NR’’R’’からなる群から選択され、ここでそれぞれR’及びそれぞれのR’’は独立してH、アリール又はアルキルであり、;A及びBはそれぞれ独立して、アルキル−置換炭素、アリール−置換炭素、窒素、NRからなる群から選択され、ここでRはアルキルであり、ただしA及びBは共に炭素ではない;XはO、N−アルキル、及びC=Oからなる群から選択され、及びYはCRであり、ここでRは、H、アルキル、アリール、C(=O)OR’、C(=O)SR’、C(=S)OR’、C(=S)SR’、C(=O)NR’R’’からなる群から選択され、ここでR’及びR’’はお互いに独立してH、アリール又はアルキルである。
【0090】
シクロオクテンについて反応相手として特に好適なジエンは式(3)で与えられ、
【0091】
【化21】
ここでR及びRはそれぞれ独立して、H、アルキル、アリール、CF、CF−R’、NO、OR’、SR’、C(=O)R’、C(=S)R’、OC(=O)R’’’、SC(=O)R’’’、OC(=S)R’’’、SC(=S)R’’’、S(=O)R’、S(=O)R’’’、S(=O)NR’R’’、C(=O)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)O−R’、C(=S)S−R’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’R’’、NR’C(=O)R’’、NR’C(=S)R’’、NR’C(=O)OR’’、NR’C(=S)OR’’、NR’C(=O)SR’’、NR’C(=S)SR’’、OC(=O)NR’R’’、SC(=O)NR’R’’、OC(=S)NR’R’’、SC(=S)NR’R’’、NR’C(=O)NR’’R’’、NR’C(=S)NR’’R’’からなる群から選択され、ここでそれぞれのR’及びそれぞれのR’’は独立してH、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立して、アリール又はアルキルであり;Aは、N−アルキル、N−アリール、C=O、及びCN−アルキルからなる群から選択され;BはO又はSであり;Xは、N、CH、C−アルキル、C−アリール、CC(=O)R’、CC(=S)R’、CS(=O)R’、CS(=O)R’’’、CC(=O)O−R’、CC(=O)S−R’、CC(=S)O−R’、CC(=S)S−R’、CC(=O)NR’R’’、CC(=S)NR’R’’からなる群から選択され、R’及びR’’はそれぞれ独立して、H、アリール又はアルキルであり、R’’’は独立して、アリール又はアルキルであり;Yは、CH、C−アルキル、C−アリール、N、及びNからなる群から選択される。
【0092】
シクロオクテンとの反応相手として特に好適な他のジエンは式(4)のジエンであり、
【0093】
【化22】
ここでR及びRはそれぞれ独立してH、アルキル、アリール、CF、CF−R’、NO、NO、OR’、SR’、CN、C(=O)R’、C(=S)R’、OC(=O)R’’’、SC(=O)R’’’、OC(=S)R’’’、SC(=S)R’’’、S(=O)R’、S(=O)R’’’、S(=O)OR’、POR’R’’、S(=O)NR’R’’、C(=O)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)O−R’、C(=S)S−R’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’R’’、NR’C(=O)R’’、NR’C(=S)R’’、NR’C(=O)OR’’、NR’C(=S)OR’’、NR’C(=O)SR’’、NR’C(=S)SR’’、OC(=O)NR’R’’、SC(=O)NR’R’’、OC(=S)NR’R’’、SC(=S)NR’R’’、NR’C(=O)NR’’R’’、NR’C(=S)NR’’R’’からなる群から選択され、ここでそれぞれのR’及びそれぞれのR’’は独立してH、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立してアリール又はアルキルであり;AはN、C−アルキル、C−アリール、及びNからなる群から選択され;BはNであり;Xは、N、CH、C−アルキル及び、C−アリール、CC(=O)R’、CC(=S)R’、CS(=O)R’、CS(=O)R’’’、CC(=O)O−R’、CC(=O)S−R’、CC(=S)O−R’、CC(=S)S−R’、CC(=O)NR’R’’、CC(=S)NR’R’’からなる群から選択され、ここでR’及びR’’それぞれ独立して、H、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立してアリール又はアルキルであり;Yは、CH、C−アルキル、C−アリール、N、及びNからなる群から選択される。
【0094】
本発明によれば、特に有用なジエンは、それぞれ式(5)、(6)、(7)で与えられる、12−ジアジン、14−トリアジン及び15−テトラジン誘導体である。
【0095】
【化23】
1,2−ジアジンは式(5)に与えられ、ここでR及びRはそれぞれ独立して、H、アルキル、アリール、CF、CF−R’、NO、OR’、SR’、C(=O)R’、C(=S)R’、OC(=O)R’’’、SC(=O)R’’’、OC(=S)R’’’、SC(=S)R’’’、S(=O)R’、S(=O)R’’’、S(=O)NR’R’’、C(=O)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)O−R’、C(=S)S−R’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’R’’、NR’C(=O)R’’、NR’C(=S)R’’、NR’C(=O)OR’’、NR’C(=S)OR’’、NR’C(=O)SR’’、NR’C(=S)SR’’、OC(=O)NR’R’’、SC(=O)NR’R’’、OC(=S)NR’R’’、SC(=S)NR’R’’、NR’C(=O)NR’’R’’、NR’C(=S)NR’’R’’からなる群から選択され、ここでそれぞれのR’及びそれぞれのR’’は独立して、H、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立して、アリール又はアルキルであり;X及びYはそれぞれ独立して、O、N−アルキル、N−アリール、C=O、CN−アルキル、CH、C−アルキル、C−アリール、CC(=O)R’、CC(=S)R’、CS(=O)R’、CS(=O)R’’’、CC(=O)O−R’、CC(=O)S−R’、CC(=S)O−R’、CC(=S)S−R’、CC(=O)NR’R’’、CC(=S)NR’R’’からなる群から選択され、ここでR’及びR’’はそれぞれ独立して、H、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立してアリール又はアルキルであり、ここでX−Yは一重結合又は二重結合であり、及びここでX及びYは、6−員環ジアジンから離れた第2の環に結合され得る。好ましくは、X−Yがエステル基(X=O及びY=C=O;X−Yは一重結合)又はX−Yはシクロアルカン基を表し(X=CR’及びY=CR’’であり;X−Yは一重結合であり;R’及びR’’は結合されている)、好ましくはシクロプロパン環であり、そこでR’及びR’’は、1,2−ジアジンの外で第1の炭素でお互いに結合されている。
【0096】
1,4−トリアジンは式(6)に与えられており、ここで、R及びRはお互いに独立して、H、アルキル、アリール、CF、CF−R’、NO、OR’、SR’、C(=O)R’、C(=S)R’、OC(=O)R’’’、SC(=O)R’’’、OC(=S)R’’’、SC(=S)R’’’、S(=O)R’、S(=O)R’’’、S(=O)NR’R’’、C(=O)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)O−R’、C(=S)S−R’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’R’’、NR’C(=O)R’’、NR’C(=S)R’’、NR’C(=O)OR’’、NR’C(=S)OR’’、NR’C(=O)SR’’、NR’C(=S)SR’’、OC(=O)NR’R’’、SC(=O)NR’R’’、OC(=S)NR’R’’、SC(=S)NR’R’’、NR’C(=O)NR’’R’’、NR’C(=S)NR’’R’’からなる群から選択され、ここでそれぞれのR’及びそれぞれのR’’は独立して、H、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立して、アリール又はアルキル又はであり;Xは、CH、C−アルキル、C−アリール、CC(=O)R’、CC(=S)R’、CS(=O)R’、CS(=O)R’’’、CC(=O)O−R’、CC(=O)S−R’、CC(=S)O−R’、CC(=S)S−R’、CC(=O)NR’R’’、CC(=S)NR’R’’からなる群から選択され、R’及びR’’はそれぞれ独立して、H、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立してアリール又はアルキルである。
【0097】
1,5−テトラジンは式(7)で与えられており、ここでR及びRかそれぞれ独立して、H、アルキル、アリール、CF、CF−R’、NO、NO、OR’、SR’、CN、C(=O)R’、C(=S)R’、OC(=O)R’’’、SC(=O)R’’’、OC(=S)R’’’、SC(=S)R’’’、S(=O)R’、S(=O)R’’’、S(=O)OR’、POR’R’’、S(=O)NR’R’’、C(=O)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)O−R’、C(=S)S−R’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’R’’、NR’C(=O)R’’、NR’C(=S)R’’、NR’C(=O)OR’’、NR’C(=S)OR’’、NR’C(=O)SR’’、NR’C(=S)SR’’、OC(=O)NR’R’’、SC(=O)NR’R’’、OC(=S)NR’R’’、SC(=S)NR’R’’、NR’C(=O)NR’’R’’、NR’C(=S)NR’’R’’からなる群から選択され、ここでそれぞれのR’及びそれぞれのR’’は独立して、H、アリール又はアルキルであり、及びR’’’は独立してアリール又はアルキルである。
【0098】
電子不足12−ジアジン(5)、14−トリアジン(6)又は15−テトラジン(7)は特に興味深い。かかるジエンは一般にはジエノフィルに対しより高い反応性を持つからである。
【0099】
ジ−、トリ−又はテトラ−アジンは、それらが、一般に電子供与体とはされない基又は部分で置換されるか、又は電子吸引基で置換される場合に、電子不足である。例えば、R及び/又はRは、H、アルキル、NO、F、Cl、CF、CN、COOR、CONHR、CONR、COR、SOR、SOOR、SONR、PO、NO、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、26−ピリミジル、35−ピリミジル、24−ピリミジル、24−イミダゾール、25−イミダル又はフェニルからなる群から選択される置換基を表し、場合により、1又は複数の電子吸引基、例えばNO、F、Cl、CF、CN、COOR、CONHR、CONR、COR、SOR、SOOR、SONR2、PO、NO、Arで置換され、そこでRはH又は−Cアルキルであり、及びArは芳香族性基、特にフェニル、ピリジル又はナフチルを表す
【0100】
式(7)の1,5−テトラジンは、アクチベータジエンとして最も好ましく、というのはこれら分子は、好ましいTCOジエノフィルなどのジエノフィルとのレトロディールスアルダー反応で最も反応性が高いからであり、たとえR及び/又はR基は必ずしも電子吸引ではない場合でも、またR及び/又はRが実際に電子供与性であっても、そうである。例えば電子供与基は、OH、OR’、SH、SR’、NH、NHR’、NR’R’’、NHC(=O)R’’、NR’C(=O)R’’、NHC(=S)R’’、NR’C(=S)R’’、NHSOR’’、NR’SOR’’であり、ここでR’及びR’’はそれぞれ独立してアルキル又はアリールである。他の電子供与基の例は、前記リストで記載されるような1又は複数の電子供与基に接続されているフェニル基であり、特にフニル基の2−4−及び/又は6−位置で置換される場合である。
【0101】
本発明によれば、2つの電子吸引残基を持つ15−テトラジン又は、1つの電子吸引残基を持ち、電子吸引性でも電子供与でもない残基1つを持つものは電子不足と呼ばれる。同様に、2つの電子供与残基を持つ15−テトラジン又は、1つの電子供与残基を持ち、電子吸引性でも電子供与でもない残基1つを持つものは電子十分と呼ばれる。共に電子吸引電子供与でもない2つの残基を有する5−テトラジン、又は、1つの電気吸引残基と1つの電子供与残基を持つものは、電子不足でも電子十分でもない。
【0102】
1,5−テトラジンは、非対称的でも対称的でもよく、即ち式(7)における及びR基は、それぞれ異なっていても同一であってもよい。対称的15−テトラジンは、より便利である。なぜなら、これらアクチベータは、合成手順を介してより容易にアクセス可能だからだ
【0103】
我々は、モデル医薬化合物(例えばベンジルアミン)を脱離(カスケード)プロセスによりプロドラッグから放出させるアクチベータとしての能力について、いくつかの15−テトラジンを試験した。そして、電子不足、電子十分であるテトラジン又は電子不足でも電子十分でもないテトラジンが薬物放出を導くことが可能であることを見出した。さらには、非対称的テトラジンが対称的テトラジンと同様に効果的であった。
【0104】
電子不足15−テトラジン及び、電子不足でも電子十分でもない15−テトラジンは、一般にジエノフィル(TCOなどの)とレトロディールスアルダー反応でより反応性であり、従って、これら2つの種類の1,2,4,5−テトラジンは、電子不足1,2,4,5−テトラジンよりも好ましく、それはたとえ後者がまたプロドラッグ中で薬物放出を誘導することができるものであってもそうである。
【0105】
以下の段落で、本発明の第2の側面による15−テトラジンアクチベータの具体的な実施例が、式(7)における及びR残基を定めることで強調される。
【0106】
電子吸引基を持つ対称的電子不足15−テトラジンは例えば、R=R=H、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、24−ピリミジル、26−ピリミジル、35−ピリミジル、24−トリアジル又は25−トリアジルを有するものである。他の例は、R=R=フェニルを有するものであって、当該フェニルの2位、3位もしくは4位に、COOH又はCOOMeカルボキシレートを有する、又はCNニトリルを有する、又はCONH、CONHCH又はCON(CHアミドを有する、又はSOH又はSONaスルホネートを有する、又はSONH、SONHCH又はSON(CHスルホンアミドを有する、又はPO又はPONaホスホネート置換基有するものである。テトラジンが対称的のままである限り、様々な置換基の使用を含む、他の置換体パターンも可能であ以下これらの構造の例参照
【0107】
【化24】
電子供与基を持つ対称的電子十分な5−テトラジンは、例えば、R=R=OH、OR’、SH、SR’、NH、NHR’、NR’、NH−CO−R’、NH−SO−R’、NH−SO−R’、2−ピリル(pyrryl)、3−ピリル、2−チオフェン、3−チオフェンを持つものであり、ここでR’はメチル、エチル、フェニル又はトルイル基を表す。他の例は、R=R=フェニル有するもつものであって、当該フェニルは(1又は複数の)OH、OR’、SH、SR’、NH、NHR’、NR’、NH−CO−R’、NR’’−CO−R’、NH−SO−R’又はNH−SO−R’置換基を有し、ここでR’はメチル、エチル、フェニル又はトルイル基であり、ここでR’’はメチル又はエチル基を表し、及びここで置換は、2−又は3−又は4−又は2−及び3−又は2−及び4−又は2−及び5−又は2−及び6−又は3−及び4−又は3−及び5−又は3−、4−及び5−位で行われる。これらの構造の例は以下に示される。
【0108】
【化25】
電子吸引性でも電子供与性でもない残基を有する対称的15−テトラジンは、例えば、R=R=フェニル、メチル、エチル、(イソ)プロピル、24−イミダジル、25−イミダジル、23−ピジル又は34−ピラジルを有するものである。他の例は、R=R=ヘテロ(芳香族性)環、例えばオキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール又はチアゾリン環を有するものである。他の例は、R=R=フェニルを持つものであり、このフェニルは、COOH、COOMe、CN、CONH、CONHCH、CON(CH、SOH、SONa、SONH、SONHCH、SON(CH、PO又はPONaから選択される1つの電子吸引置換基と、OH、OR’、SH、SR’、NH、NHR’、NR’、NH−CO−R’、NR’’−CO−R’、NH−SO−R’又はNH−SO−R’置換基から選択される1つの電子供与基を持ち、ここでR’は、メチル、エチル、フェニル又はトルイル基を表し、ここでR’’はメチル又はエチル基を表す。置換は、2−及び3−、2−及び4−、2、−及び5−、2−及び6−、3−及び4−、及び3−及び5−位で行われ得る。さらに他の例は、R=R=ピリジル又はピリミジル部分であるものであって、当該ピリジル又はピリミジル部分は、OH、OR’、SH、SR’、NH、NHR’、NR’、NH−CO−R’、NR’’−CO−R’、NH−SO−R’又はNH−SO−R’置換基から選択される電子供与置換基を有し、ここでR’はメチル、エチル、フェニル又はトルイル基を表し及びここでR’’はメチル又はエチル基を表す。いくつかの例が以下示される。
【0109】
【化26】
非対称的15−テトラジンが考慮される場合には、所与のR及びR残基のいずれかの組み合わせが選択され、これらは式()による対称的テトラジンについて上で強調され列記されているものである、ただし、もちろんR及びRは異なっている。好ましい非対称的15−テトラジンは、残基R又はRの少なくとも一方本質的に電子吸引性である。いくつかの例が下に示される。
【0110】
【化27】
アクチベータについてのさらなる考察
好ましいアクティベータは、2−ジアジン、14−トリアジン及び15−テトラジンであり、特に15−テトラジンが好ましいジエンアクチベータである。以下にはアクチベータのいくつかの関連ある構造が強調され、そこで、全ての特定応用のために適切なアクチベータを設計するために多くの選択肢があることが明らかとなる。
【0111】
本発明によれば、アクチベータ、例えば15−テトラジンは、有用で有益な薬理学的及び薬理動態学的特性を持ち、これは次のことを意味する、即ち、アクチベータは非毒性又は少なくとも十分低い毒性であり、また十分低い毒性代謝物を生成し、生理的溶液に十分溶解性であり、薬学的に通常使用される水性又は他の処方中で使用でき、及び適切なlogD値を持つ(ここでこの値は、生理的pHでのアクチベータの親水性/疎水性バランスを反映する)ということである。当該技術分野で知られているように、logD値は負(親水性分子)又は正(疎水性分子)であり得るが、ここでlogD値がより低い又はより高いと、それぞれの分子がより親水性又はより疎水性となる。logD値はほとんどの分子でかなり正確に予想でき、アクチベータのlogD値は、その設計において極性又は非極性基を加えたり除いたりして調節可能である。以下、計算されたlogD値(pH=7.4)に対応するいくつかのアクチベータ設計を示す。留意すべきことは、メチル、シクロアルケン、ピリジン、アミン、アルコール又はスルフォネート基を加えること、又はフェニル基を除くことは、logD値を変更し、且つ非常に広い範囲のlogD値を得ることを可能にする、ということである。
【0112】
【化28】
【0113】
【化29】
前記与えられたlogD数は、加重方法から、「VG」(Viswanadhan、V.N.;Ghose、A.K.;Revankar、G.R.;Robins、R.K.、J.Chem.Inf.Comput.Sci.、1989、29、163−172)、「KLOP」(Klopman、G.;Li、Ju−Yun.;Wang、S.;Dimayuga、M.:J.Chem.Inf.Comput.Sci.、1994、34、752)及び「PHYS](PHYSPROP(C)データベース)法を等しく重視して、0.1MのNa/KCl中で水溶液にもとづいて計算された。
【0114】
本発明によるアクチベータは、プロドラッグに対して適切な反応性を持ち、これはジエン、特に1,5−テトラジンを十分電子不足にすることにより制御可能となる。十分な反応性は、プロドラッグがアクチベータに到達するとすぐにプロドラッグとの迅速なレトロディールスアルダー反応が生じることを保証する。
【0115】
本発明によるアクチベータは、優れた生体利用性を持ち、これは、意図された目的を実行するために(ヒト)身体内で利用可能であることを意味し:プロドラッグが第1ターゲットに効果的に到達することを意味する。従って、アクチベータは、非標的物ではない血液成分又は組織に大きく接着しない。アクチベータは、血液中に存在するアルブミンタンパク質へ結合するように設計され得るが(当該技術において知られているように、血液循環時間を増加させるため)、同時にプロドラッグに到達することが可能な血液流から効果的に放出されるべきである。従って、血液結合及び血液放出は適切にバランスされるべきである。アクチベータの血液循環時間はまた、アクチベータの分子量を大きくすることで増加され得る、例えばアクチベータにポリエチレングリコール(PEG)基をつけることによる(ペグ化)。又は、アクチベータのPKPDが、アクチベータ別の部分、例えばポリマー、タンパク質、(短い)ペプチド、炭水化物など共役させることにより変更され得る。
【0116】
本発明によるアクチベータは、マルチマー性であってよく、複数のジエン部分が分子足場(scaffold)、特に例えば多官能性分子、炭水化物、ポリマー、デンドリマー、タンパク質又はペプチドに結合され、ここでこれらの足場は好ましくは水溶性である。使用され得る足場の例は(多官能性)ポリエチレングリコール、ポリ(プロピレンイミン)(PPI)デンドリマー、PAMAMデンロシマー、グリコール系デンドリマー、ヘパリン誘導体、ヒアルロン酸誘導体又はHSAなどの血清アルブミンタンパク質である。
【0117】
ロドラッグの位置に依存して(例えば細胞内又は細胞外;標的化される特定の器官など)アクチベータはこのプロドラッグに効果的に到達することができるように設計される。従って、アクチベータは例えば、そのlogD値、反応性又は電荷を変化させることで個別化され得る。アクチベータはさらに、標的化試薬(例えばタンパク質、ペプチド及び/又は糖部分)で操作されることも可能であり、第1のターゲットが受動的ではなく能動的に到達され得る。標的化試薬が使用される場合には、好ましくは、それは単純な部分である(即ち、短いペプチドや単純な糖)。
【0118】
本発明によれば、異なるアクチベータの混合物が使用され得る。これは薬物の放出プロフィールを制御するために関連し得る。
【0119】
本発明によるアクチベータは第1のターゲットで薬物放出を生じさせ制御するが、さらにアクチベータに、インビトロ及び/又はインビボ研究のため又は応用のために、追加の機能を与える部分で変性させることができる。
【0120】
例えば、アクチベータは、色素部分又は蛍光部分で変性され(例えば近赤外(NIR)蛍光体VT680でアミド化された3−(4−ベンジルアミノ)−1,2,4,5−テトラジンの場合、S.Hilderbrand et al.、Bioconjugate Chem.、2008、19、2297−2299を参照)、又はイメージングプローブで機能化され得るものであり、ここでこれらのプローブはPET又はSPECTなどの核イメージング技術イメージングなどのイメージングモダリティで有用であり得る。この方法で、アクチベータは薬物放出を引き起こすだけでなくまた、(ヒト)身体内部に局在化され、それによりプロドラッグを(ヒト)身体内部に局在化させるために使用され得る。従って、薬物放出の位置と量はモニターされ得る。例えば、アクチベータは、DOTA(又はDTPA)リガンドで変性され得るが、これらのリガンドは、核イメージングのための111In3+−イオンと錯体化するために理想的に好適なものである。他の例では、アクチベータは、123I又は18F部分と結合され得るが、これはそれぞれSPECT又はPETイメージングでの使用について確立されている。さらに、例えばLu−177、又はY−90などのベータ線放射性同位体と組み合わせて使用する際に、プロドラッグ活性化は、前標的化フォーマット内で局所的放射線治療と組み合わせることが可能である。
【0121】
好ましいアクチベータは:
【0122】
【化30】
式(8a)及び(8b)で与えられる1,2,4,5−テトラジンであり、ここでそれぞれのR及びそれぞれのRは独立して、H、アルキル、アリール、CF、CF−R’、NO、OR’、SR’、C(=O)R’、C(=S)R’、OC(=O)R’’’、SC(=O)R’’’、OC(=S)R’’’、SC(=S)R’’’、S(=O)R’、S(=O)R’’’、S(=O)NR’R’’、C(=O)O−R’、C(=O)S−R’、C(=S)O−R’、C(=S)S−R’、C(=O)NR’R’’、C(=S)NR’R’’、NR’R’’、NR’C(=O)R’’、NR’C(=S)R’’、NR’C(=O)OR’’、NR’C(=S)OR’’、NR’C(=O)SR’’、NR’C(=S)SR’’、OC(=O)NR’R’’、SC(=O)NR’R’’、OC(=S)NR’R’’、SC(=S)NR’R’’、NR’C(=O)NR’’R’’、NR’C(=S)NR’’R’’からなる群から選択され、それぞれのR’及びそれぞれR’’は独立してH、アリール又はアルキルであり、R’’’は独立してアリール又はアルキルである。
【0123】
他の好ましいアクチベータは
【0124】
【化31】
である。
クチベータは、ペプチド、タンパク質、炭水化物、PEG又はポリマーなどの望ましい部分に結合され得る。好ましくはこれらのアクチベータは次の式の一つを満たす。
【0125】
【化32】
(ここでR=結合されたペプチド、タンパク質、炭水化物、PEG、ポリマーを表す。)
プロドラッグ
プロドラッグは薬物D及びトリガーTの共役物であり、従って、トリガーから放出後治療作用が可能になる薬物を含む。かかるプロドラッグは場合により疾患標的に特異性を持つ。
【0126】
プロドラッグの一般式は式(9a)及び(9b)に示される。
【0127】
【化33】
分Yは、標的化試薬T又はマスキング部分Mのいずれかであり得る;Sはスペーサーであり、;Tはトリガーであり、Lはリンカー、及びDは薬物である。
【0128】
薬物が標的化試薬から放出される応用では:
は標的化試薬Tであり
式(a): k=1;m、r≧1;t、n≧0;
式(b): k=1;m、n、r≧1;t≧0である。
【0129】
マスク薬物がマスクされていない応用では:Yはマスキング部分Mであり
式(9a)及び(9b): r=1;m≧1;k、n、t≧0である。
【0130】
前記式では単純化のため省略されいるが、Dはさらに場合によりSを介してT及び/又はMを含むことができる。
【0131】
本発明に関連するプロドラッグで使用され得る薬物は、限定されるものではないが、:抗体、抗体誘導体、抗体断片、例えばFab2、Fab、scFV、二重特異性抗体、三重特異性抗体、抗体(断片)融合体(例えば二重特異性及び三重特異mAb断片)、タンパク質、アプタマー、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖、同様にペプチド、ペプトイド、ステロイド、有機薬物化合物、トキシン、ホルモン、ウイルス、全細胞、ファージが含まれる。本発明が好適である典型的薬物には、限定されるものではないが:二重特異的及び三重特異的mAb断片、例えばリシンA、ジフテリアトキシン、コレラトキシンを含む免疫トキシンが含まれる。他の実施態様は、アウリスタチン、メイタンシン、カリケアマイシン、デオカルマイシン、イタンシノイドDM1及びDM4、アウリスタチンMMAE、CC1065及びその類似体、カンプトテシンとその類似体、SN−38及びその類似体;抗増殖/抗腫瘍薬、抗生物質、サイトカイン、抗炎症性薬、抗ウイルス剤、降圧剤、化学増感剤及び放射線増感剤が含まれる。他の実施態様では、放出薬物Dはそれ自体さらに薬物Dを放出するように設計されたプロドラッグである。薬物は場合により、膜転移部分(アダマンチン、ポリリシン/アルギニン、TAT)及び/又は標的化試薬(腫瘍細胞レセプターに対する)を含み、これらは場合により安定な又は不安定なリンカーで結合されている。
【0132】
TCO誘導体への共役物としての使用のための薬物、及びアクチベータとのレトロディールスアルダー反応で放出されるべき薬物は、限定されるものではないが:細胞毒性薬物、特に癌治療で使用されるものが含まれる。かかる薬物は、一般に、DNA損傷剤、抗代謝剤、天然物質及びそれらの類似体が含まれる。細胞毒性剤の例示的分類は、ジヒドロ葉酸レダクターゼインヒビター、及びチミジル酸シンターゼインヒビターなどの酵素インヒビター、DNAアルキル化剤、放射線増感剤、DNAインターカレーター、DNA開裂剤、抗チューブリン剤、トポイソメラーゼインヒビター、白金系薬物、アントラサイクリンファミリー薬物、ビンカ薬物、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞毒性ヌクレオシド、タキサン、レキシトロプシン、プテリジンファミリー薬物、ジイネン、ポドフィロトキシン、ドラスタチン、メイタンシノイド、分化誘導剤及びタキソールが含まれる。これらの分類で特に有用なものは、例えば、デュオカルマイシン、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、5−フルオロウラシルDNAマイナーグルーブバインダー、6−メルカプトプリン、トシンアラビノシド、メルファラン、ロイロシン(leurosine)、ロイロシダイン(leurosideine)、アクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、マイトマイシンC、マイトマイシンA、カミノマイシン、アミノプテリン、タリソマイシン、ポドフィロトキシン及びポドフィロトキシン誘導体(エトポシド又はエトポシドフォスフェート)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソール、タキソテール(商品名taxotere)レチノイン酸、酪酸N8−アセチルスペルミジン、カンプトシン、カリアマイシン、エスペラシン、エンジイン及びそれらの類似体を含む。
【0133】
例示的薬物は、ドラスタチン及びその類似体を含みこれには:ドラスタチンA(米国特許第4、486、414号)、ドラスタチンB(米国特許第4、486、414号)、ドラスタチン10(米国特許第4、486、444号、5、410、024号、5、504、191号、5、521、284号、5、530、097号、5、599、902号、5、635、483号、5、663、149号、5、665、860号、5、780、588号、6、034、065号、6、323、315号)、ドラスタチン13(米国特許第4、986、988号)、ドラスタチン14(米国特許第5、138、036号)、ドラスタチン15(米国特許第4、879、278号)、ドラスタチン16(米国特許第6、239、104号)、ドラスタチン17(米国特許第6、239、104号)、及びドラスタチン18(米国特許第6、239、104号)が含まれ、これらの特許文献の全内容は全て参照されて本明細書に援用される。
【0134】
本発明の例示的実施態様では、薬物部分は、マイトマイシン、ビンカアルカロイド、タキソール、アントラサイクリン、カリケアマイシン、メイタンシノイド又はアウリスタチンである。
【0135】
理解されるべきことは、本発明の共役物を製造する目的で、化合物の反応をより都合よくするために化学変性がまた、望ましい化合物に対してなされ得る、ということである。TCOへカップリングさせるアミン官能基を含む薬物は、マイトマイシン−C、マイトマイシン−A、ダウノルビシン、ドキソルビシン、アミノプテリン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、9−アミノカンプトテシン、N8−アセチルスペルミジン、1−(2−クロロエチル)12−ジメタンスルフォニルヒドラジド、タリソマイシン、シタラビン、ドラスタチン(アウリスタチンを含む)及びその誘導体を含む。
【0136】
TCOにカップリングするためのヒドロキシ官能基を含む薬物は、エトシド、カンプトテシン、タキソール、エスペラミシン、18−ジヒドロキシ−ビシクロ[7.3.1]トリデカ−4−9−ジエン−26−ジイイン−13−オン(米国特許第5、198、560号)、ポドフィロトキシン、アングイジン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、モルフォリン−ドキソルビシン、n−(55−ジアセトキシ−ペンチル)ドキソルビシン及びその誘導体を含む。
【0137】
TCOへカップリングするためのスルフヒドリル官能基を含む薬物は、エスペラシン及び6−メルカプトプリン及びその誘導体である。
【0138】
理解されるべきことは、薬物は場合により、リンカーL又は自壊性リンカーL、又はこの組み合わせを介して結合され得るものであり、及び複数のユニット(自壊性又は非自壊性)ユニットからなってよい、ということである。
【0139】
さらに理解されるべきことは、1又は複数の標的化試薬T又はマスキング部分Mが、場合により、1又は複数のスペーサーSを介して薬D、トリガーT又はリンカーLに結合され得ることである
【0140】
いくつかの薬物は、薬物標的化及び放出を測定するためにイメージング可能なラベルで置換され得る。
【0141】
本発明のさらなる特定の実施態様によれば、プロドラッグは次のように選択される、即ち、癌、炎症、感染、心血管疾患(例えば血栓アテローム性動脈硬化症)、低酸素サイト(例えば心筋梗塞)、腫瘍、心血管障害、脳障害、アポトーシス、血管新生、器官及びレポーター遺伝子/酵素などの疾患に標的化又は対処するように選択される。
【0142】
ひとつの実施態様によると、プロドラッグ及び/又はアクチベータは、マルチマー性化合物であり、複数の薬物及び/又は生体直交型反応部分を持ち得る。これらのマルチマー性化合物は、ポリマー、デンドリマー、リポソーム、ポリマー粒子又は他のポリマー性構成物であり得る。
【0143】
ロドラッグでは、薬物D及びトリガーT−TCO誘導体−は直接お互いに結合される。れらはまた、お互いに、リンカー又は自壊性リンカーLを介して結合され得る。理解されるべきことは、本発明は、ジエノフィルトリガーが薬物に結合されるいずれの考え得る方法を含む、ということである。このことは、任意の標的化試薬T又はマスキング部分Mをプロドラッグへ接続するためについても同様である。例えばタンパク質の場合にリジン又はシステインなどの反応性アミノ酸を介してこれらの薬物へ共役に影響を与える方法は、当業者に知られている。
【0144】
理解されるべきことは、薬物部分は、薬物が、レトロディールスアルダー付加物の形成後、最終的に放出されるようにTCOに結合される、ということである。一般的には、このことは、薬物とTCOとの間の結合、又はリンカーLの場合にはTCOとリンカーLの間の結合、又は自壊性L場合にはリンカーとTCOとの間の結合及び薬物とリンカーの間の結合は、開裂可能であるべきであることを意味する。主に、薬及び任意のリンカーはヘテロ原子、好ましくはO、N、NH、又はSを介して結合される。開結合は、好ましくは、カーバメイト、チオカーバメイト、カーボネート、エーテル、エステル、アミン、アミド、チオエーテル、チオエステル、スルホキシド及びスルホンアミド結合である。
【0145】
従って、本発明では、リンカー概念は当業者に知られているものに適用され得る。ほとんどの報告されたプロドラッグは、3つの成分:トリガー、リンカー、及び親薬物からなり、場合により標的化分子がリンカー又はトリガーいずれかに結合されている。例えばサイト特異的酵素のための置換基、又はpH不安定基であってよいトリガーは、しばしば自己脱離リンカーを介して親薬物に結合されている。このリンカーは、トリガーの酵素的開裂を容易にするために導入され、活性サイトへの接近を改善し、且つ結合薬物からの立体障害を低減する。またリンカーは、同じトリガーと組み合わせてプロドラッグの広い範囲の簡単な使用を容易にする。さらには、リンカーはプロドラッグ安定性、薬理学的動力学、器官分布、酵素認識及び放出動力学を変更する。トリガー活性化/除去後、リンカーは自発的に脱離して親薬物を放出することが必要である。結合された薬物に依存してリンカー又はその部分は、その作用を損なうことなく薬物上に残り得る。一般的概念がスキーム2に示される。
スキーム2:
【0146】
【化34】
自己脱離リンカーの2つのタイプ、(a)電子カスケードリンカーと、(b)環化リンカーとが区別される。カスケードリンカーの最も傑出した例は、スキーム3で示される、抗癌剤9−アミノカンプトシンのβ−グルクロニドプロドラッグにおける、16−脱離スペーサーである。酵素β−グルクロニダーゼ(ある壊死腫瘍領域に存在する)による芳香族性ヒドロキシ官能基の脱マスク後、この基は電子供与基となり、電子カスケードを起こして、脱離基を放出し、COを放出した後遊離薬物を放出する。キノン−メチド再配列に基づくこのカスケードは、また、マスクされていないアミンの孤立電子対、又はヒドロキシル基の代わりのチオール基の孤立電子対により引き起こされ得る。形成されるキノン−メチド種は、水に捕捉されフェール誘導体を形成する。
スキーム3:
【0147】
【化35】
いくつかの他のトリガー−リンカー概念がスキーム4に示される。A内のトリガーは血漿エステラーゼで活性化される。tert−ブチルエステルの加水分解は遊離の芳香族性ヒドロキシル基を与え、キノン−メチドカスケードを開始させる。この構成物は、抗体(R)への共役により標的化された。Bでは、セファロスポリンの、β−ラクタマーゼ酵素により加水分解がトリガーとして使用される。ラクタム環の加水分解は、その脱離基の性質により薬置換基を放出させ得る。薬物は、エステル、アミド、スルフィド、アミン及びカーバメートリンクにより共役された。芳香族性環化系リンカーの2つの例はC及びDである。Cでは、ペニシリンG−アミダーゼによ開裂が、カルボニルへのアミンの攻撃を起こさせ薬物を放出させる。Dは、ホスファターゼ感受性プロドラッグを示す。ヒトアルカリホスファターゼによるリン酸エステル開裂は、ヒドロキシルを与え、ヒドロキシルは薬物を放出することによりラクタムへと反応する。Eでは、ニトロ基のアミン基への還元により引き起こされるプロドラッグの例を示す。この還元は、NADPHの存在下でニトロレダクターゼにより実行され得る。その上さらに、多数のヘテロ環式ニトロ構造物は、知られた(F)であり、(F)は低酸素(腫瘍)組織内で還元され、及び従って酵素の助けなしにカスケードを開始し得る。プロドラッグ治療で使用される他のトリガーは、プラスミン、チロシンヒドロキシラーゼ(神経芽細胞腫に高発現)、チロシナーゼ又はカプシンBに感受性である。
【0148】
スキーム4:X=O、N、S
【0149】
【化36】
TCOトリガーとアクチベータの組み合わせと反応
物はリンカーを介しても介していなくても、好ましくは、TCO環の二重結合に隣接する炭素原子に結合される。
【0150】
以下、TCOプロドラッグとテトラジンアクチベータのいくつかの限定的でない組み合わせが、レトロディールスアルダー付加物からのカスケード脱離反応誘導された薬物放出の可能性を示す。アミン官能性薬物の放出の場合には、これは、例えば一級又は二級アミン、アニリン、イミダゾール又はピロールタイプの薬物であり、従って薬物は脱離基の性質が様々であり得る、ということに留意する。対応する加水分解に安定なTCOプロドラッグが適用される場合他の官能基を持つ薬物放出はまた可能である(例えばチオール官能基化薬物)。示される縮合環生成物は、他のより好ましい互変異性体へと互変異性体化されていても、されていなくてもよい。
【0151】
【化37】
ウレタン(又はカーバメート)置換TCOの前記例は、付加物からアミン官能薬物放出を与え。テトラジンアクチベータは対称的であり、電子不足である。
【0152】
【化38】
ウレタン(又はカーバメート)置換TCOの前記例は、付加物からアミン官能基薬物放出を与え。テトラジンアクチベータは非対称的であり電子不足である。留意すべきことは、対称的テトラジンを使用する場合に既に形成されている立体異性体とは別に、非対称的テトラジンの使用は、レトロディールスアルダー付加物レジオマー(regiomers)を形成する、ということである。
【0153】
【化39】
ウレタン(又はカーバメート)置換TCOの前記例は、付加物からアミン官能薬物放出を与え。テトラジンアクチベータは対称的であり電子十分である。
【0154】
好ましい一実施形態において、薬物は抗体−トキシン共役物の形態で提供される。生体直交型化学的に活性化されたトキシンを放出可能なように、共役物は上で確認されるようなTCO部分を備えている。もう一つの実施形態において、薬物は、腫瘍細胞に結合し、及びT細胞をリクルートし及び活性化するのに役立つ二重もしくは三重特異性抗体誘導体である。薬物のT細胞結合機能は、上に記載されるようにTCO部分へ結合されることにより不活性化される。後者は、再び生体直交型化学的に活性化された薬物を活性化可能にするのに役立つ。
標的化(ターゲット化)
本発明のキット及び方法は、薬物の標的化送達への使用に非常に適する。
【0155】
本発明で使用される「第1の標的」は、治療のための標的化試薬の標的に関する。例えば、第1の標的は、有機体、組織又は細胞に存在するいずれの分子であり得る。標的には、細胞表面標的が含まれ、例えばレセプター、糖タンパク質;構造タンパク質、例えばアミロイドプラーク;ストローマ(stroma)、細胞外マトリックス標的(例えば成長因子及びプロテアーゼ)などの豊富な細胞外標的;細胞内標的、例えばゴルジ体表面、ミトコンドリア表面、RNA、DNA、酵素、細胞信号伝達系経路成分;及び/又は異物、例えばウイルス、細菌、真菌、酵母又はそれらの断片が含まれる。第1の標的の例は、化合物例えばタンパク質を含み、その存在又は発現量がある組織や細胞型に関連し、又はその発現量がある疾患においてアップレギュレーション又はダウンレギュレーションされている。本発明の具体的な実施態様によると、第1の標的は、(内在性又は非内在性)レセプターなどのタンパク質である。
【0156】
本発明によると、第1の標的は、ヒト又は動物身体内の、又は病原体又は寄生虫におけるいずれか好適な標的から選択され得るものであり、例えば、細胞膜及び細胞壁などの細胞、細胞膜レセプターなどのレセプター、ゴルジ体又はミトコンドリアなどの細胞内構造物、酵素、レセプター、DNA、RNA、ウイス又はウイス粒子、抗体、タンパク質、炭水化物、単糖類、多糖類、サイトカイン、ホルモン、ステロイド、ソマトスタチンレセプター、モノアミンオキシダーゼ、ムスカリニンレセプター、心筋交感神経系、例えばロイコサイトにおけるロイコトリエンレセプター、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーターレセプター(μPAR)、葉酸レセプター、アポトーシスマーカー、(抗−)血管新生マーカー、ガストリンレセプター、ドパミン作動系、セロトニン作動系GABA作動系、アドレナリン作動系、コリン作動系、オピオイドレセプター、GPIIb/IIIaレセプター及び他の血栓関連レセプター、フィブリン、カルシトニンレセプター、タフシンレセプター、インテグリンレセプター、フィブロネクチン、VEGF/EGF及びVEGF/EGFレセプター、TAG72、CEA、CD19、CD20、CD22、CD40、CD45、CD74、CD79、CD105、CD138、CD174、CD227、CD326、CD340、MUC1、MUC16、GPNMB、PSMA、Cripto、TenascinC、メラノコルチン−1レセプター、CD44v6、G250、HLA DR、ED−B、TMEFF2、EphB2、EphA2、FAP、メソテリン、GD2、CAIX、5T4、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、P/E/L−セレクチンレセプター、LDLレセプター、P−糖タンパク質、ニューロテンシンレセプター、ニューロペプチドレセプター、物質Pレセプター、NKレセプター、CCKレセプター、シグマレセプター、インターロイキンレセプター、ヘルペスシンプレクスウイルスチロシンキナーゼ、ヒトチロシンキナーゼを有するグループから選択される。前記列記された第1の標的の具体的な標的化を可能にするために、標的化試薬Tは、限定されるものではないが、次の、抗体、例えばFab2、Fab、scFVなどの抗体断片、ダイアボディ、トリアボディ、VHH、抗体(断片)融合(例えば二特異的及び三特異的mAb断片)、タンパク質、ペプチド、例えばオクトレオチド及びその誘導体、VIP、MSH、LHRH、走化性ペプチド、ボンベシン、エラスチン、ペプチド模倣物、炭水化物、単糖類、多糖類、ウイルス、全細胞、薬物、ポリマー、リポソーム、薬物治療剤、レセプターアゴニスト及びアンタゴニスト、サイトカイン、ホルモン、ステロイドを含む化合物を含み得る。本発明の範囲に含まれる有機化合物の例は、エステラジオール、アンドロゲン、プロゲストロン、コルチコステロイド、メトトレキサート、葉酸及びコレストロールなどであるか、又はこれらから誘導される。好ましい実施態様では、標的化試薬Tは抗体である。本発明の特定の実施態様によると、第1の標的は、レセプターであり、第1の標的に特異的に結合し得る標的化試薬が使用される。好適な標的化試薬は、限定されるものではないが、レセプター又はその部分などのリガンドであり、部分はなおレセプターに結合るものであり、例えば、レセプター結合タンパク質リガンドの場合にはレセプター結合ペプチドである。タンパク質性の標的化試薬の他の例は、例えばアルファ、ベータ、及びガンマインターフェロン、及びタンパク質成長因子、例えば腫瘍成長因子、例えばアルファ、ベータ腫瘍成長因子、血小板由来成長因子(PDGF)、μPAR標的化タンパク質、アポリポタンパク質、LDL、アネキシンV、エンドスタチン、及びアンジオスタチンを含む。標的化試薬の代替例は、例えば第1の標的と相補的なDNA、RNA、PNA及びLNAを含む。
【0157】
本発明のさらに具体的な実施態様によると、第1の標的及び標的化試薬は、癌、炎症、感染、例えば血栓などの心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、脳卒中などの低酸素サイト、腫瘍、心血管障害、脳障害、アポトーシス、血管形成、臓器、及びレポーター遺伝子/酵素などの組織又は疾患の特異的もしくは増加した標的化をもたらすように選択される。これは、組織、細胞又は疾患特異的発現を持つ第1の標的を選択することで達成され得る。例えば、膜葉酸レセプターは、葉酸及びその類似体、例えばメトトレキサートの細胞蓄積を媒介する。発現は正常細胞では制限されているが、種々の腫瘍細胞型では過剰発現されている。
【0158】
マスキング部分
マスキング部分Mは、タンパク質、ペプチド、ポリマー、ポリエチレングリコール、炭水化物、有機構成物であり、これらはさらに結合された薬物D又はプロドラッグを封止する。この封止は、例えば立体障害に基づくものであり得るがまた、薬物Dとの非共結合相互作用に基づくものであり得る。かかるマスキング部分はまた、D又はプロドラッグのインビボでの性質(例えば血液からの除去;免疫系による認識)に影響するために使用され得る。
【0159】
スペーサー
スペーサーSは、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)鎖であり、2から200、好ましくは3から113、及び特に好ましくは5から50の繰り返し単位を持つ。他の例は、生体ポリマー断片であり、例えばオリゴもしくはポリペプチドはポクチドである。さらには好ましい例は実施例11に示される。
【0160】
投与
本発明の文脈において、プロドラッグは通常は最初に投与され、プロドラッグが第1の標的に到達するまでにある一定の時間を要する。この時間間隔は応用により異なり、分、日又は間かもしれない。選択された時間が経過した後、アクチベータが投与され、これはプロドラッグを見つけて反応し、それにより第1の標的において薬物放出を活性化する。
【0161】
本発明の組成物は、静脈注射、腹腔内注射、経口投与、直腸投与及び吸入を包含する様々なルートを介して投与され得る。これら異なるタイプの投与形に好適な製剤は当業者に知られている。本発明によるプロドラッグ又はアクチベータは、薬学的に許容され得るキャリアと共に投与され得る。ここで使用され得る好適な薬物キャリアは、医学的又は獣医学的目的の好適なキャリアであり、毒性、あるいは非許容性ではない。かかるキャリアは当業者にはよく知られており、生理食塩水、緩衝生理食塩水、ブドウ糖、水、グリセロール、エタノール及びこれらの組み合わせを含む。配合物は、投与モードに適合されるべきである。
【0162】
理解されるべきことは、投与される化学物質、即ちプロドラッグ及びアクチベータ、化学物質、例えばその塩、水和物又は溶媒和などの化学的官能性を変化させない、変性形態であり得るということである。
【0163】
ロドラッグ投与後、かつアクチベータ投与の前に、循環中のプロドラッグ活性化が望ましくない場合及び天然プロドラッグ除去が不十分である場合には、過剰のプロドラッグを清澄化剤により除去することが好ましい。清澄化剤は、その過剰が循環系から除去されるべき、投与された試薬(この場合プロドラッグ)に結合又は錯体形成させる目的で被験者に投与される試薬、化合物又は部分である。清澄化剤は、循環系から除去するために向けられる得るものである。後者は、一般的には肝臓レセプター系機構により達成され得るが、循環系からの分泌のその他の方法が、当業者に知られているように存在する。本発明において、循環するプロドラッグを除去するための清澄化剤は、好ましくはジエン部分を有し例えば上で考察したようにプロドラッグのTCO部分と反応し得るものである
【実施例】
【0164】
以下の実施例は、本発明又は本発明の側面を説明するものであり、本発明の範囲又は特許請求の範囲を定め又は限定するものではない。
【0165】
方法
H−NMR及び13C−NMRスペクトルは、Varian Mercury(H−NMRは100MHzで、13C−NMRは400MHzで測定)スペクトル装置を用いて298Kで測定した。化学シフトは室温で、TMSから低磁場側にppmで表した。分裂については次の略号を使用した、即ち、s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、m=マルチプレット及びbr=ブロードである。Iスペクトルは、Perkin Elmer1600FT−IR(UATR)で記録した。LC−MSは、ダイオードアレイ検出器(Finnigan Surveyor PDA Plus detector、Thermo Electron Corporation)に結合したShimadzu LC−10 AD VPシリーズHPLC及びIon−Trap(LCQ Fleet、Thermo Scientific)を用いて行った。分析は、Alltech Alltima HP C183μカラムを用いて、注入容量1−4μLとし、流速は0.2mL/分及び通常は、25℃で、HO中CHCN(共に0.1%ギ酸を含む)のグラジエント(5%から100%へ10分間で、100%でさらに3分間保持)を用いて行った。分取用RP−HPLC(0.1%ギ酸を有するCHCN/HO)を、Phenomenex Gemini5μC18110Aカラムで、2つのShimadzu LC−8Aポンプに結合したShimadzu SCL−10A VPとShimadzu SPD−10AV VP紫外−可視光検出器を用いて行った。サイズ排除(SEC)HPLCは、Gabi放射線検出器を備えたAgilent 1200システムを用いて行った。サンプルは、Superdex−200 10/300 GLカラム(GE Healthcare Life Sciences)に負荷し、10mMのリン酸緩衝液により、pH7.4で0.35〜0.5mL/分で溶出させた。UV波長は260nmと280nmに設定した。抗体溶液の濃度は、NanoDrop 1000 spectrophotometer(Thermo Fisher Scientific)を用いて、322nm及び280nmでのそれぞれの吸光度から決定された。
【0166】
材料
全ての試薬、化学物、材料及び溶媒は、市販品から入手しそのまま使用した:重水溶媒は、Biosolve、Merck and Cambridge Isotope Laboratoriesから;及び化学製品、材料及び薬は、Aldrich、Acros、ABCR、Merck及びFlukaから入手した。全ての溶媒は、AR品質であった。4−(t−ブチルジメチルシリルオキシメチル)−2,、6−ジメチルフェノールは文献に従って合成した(Y.H.Choe、C.D.Conover、D.Wu、M.Royzen、Y.Gervacio、V.Borowski、M.Mehlig、R.B.Greenwald、J.Controlled Release2002、79、55−70)。ドキソルビシン塩酸塩はAvachem Scientificから入手した。
【0167】
実施例1:
テトラジンアクチベータの合成
一般的手順
以下詳細に説明するテトラジンとは別に一連のテトラジンを合成した。ピナー型反応が使用され、適当なニトリルをヒドラジンと反応させ、ジヒドロ15−テトラジン中間体を合成した。当該技術で知られているようにニトリルの代わりにアミジンを反応物として使用した。この反応で硫黄の使用は、ある場合にはこれによりジヒドロ15−テトラジンの形成を促進することが知られている。この中間体の酸化によりテトラジンジエンアクチベータが得られる。以下の反応は、合成されたテトラジンのいくつか及び、テトラジンを合成及び単離する可能性のいくつか(例えば、溶媒の使用、濃度、温度、反応物の当量、酸化反応の選択など)を説明する。当技術分野で知られる他の方法も、他のアクチベータを合成するために使用され得る。
【0168】
6−ビス(2−ピリジル)−15−テトラジン(2)の合成
【0169】
【化40】
2−シアノピリジン(10.00g、96.0mmol)及びヒドラジン水和物(15.1g;300mmol)を一晩不活性雰囲気下で90℃で撹拌した。濁った混合物を室温に冷却し、ろ過して残渣を続いて水(20mL)及びエタノール(20mL)で洗浄し、さらに真空で乾燥し、粗ジヒドロテトラジン1をオレンジ色固体として得た(7.35g;65%)。
【0170】
ヒドロテトラジン(1、100mg;0.419mmol)を酢酸(3mL)に分散させ、次に亜硝酸ナトリウム(87mg;1.26mmol)を添加した。すぐにオレンジ色から暗赤色への変化が観測され、酸化生成物をろ過して単離。残渣を水(10mL)で洗浄し、次に真空乾燥して、紫色固体として表題の化合物を得た(2、92mg;93%)。
HNMR(CDCl):δ=9.00(d、2H)、8.76(d、2H)、8.02(t、2H)、7.60(dd、2H)ppm.13CNMR(CDCl):δ=163.9、151.1、150.1、137.5、126.6、124.5ppm.HPLC−MS/PDA:クロマトグラムで1ピーク、m/z=237.00(M+H)、λmax=296及び528nm。
【0171】
3−(5−アセタミド−2−ピリジル)−6−(2−ピリジル)−15−テトラジン(5)の合成
【0172】
【化41】
2−シアノピリジン(5.00g、48.0mmol)、5−アミノ−2−シアノピリジン(5.72g;48.0mmol)及びヒドラジン水和物(15.1g;300mmol)を、不活性雰囲気下で90℃で一晩撹拌した。濁った混合物を室温に冷却し、ろ過し、及び残渣を水(20mL)及びエタノール(20mL)で引き続き洗浄し真空で乾燥した。オレンジ色の固体をアセトン(200mL)に分散させ、これをシリカゲル(20グラム)に吸収させ、次にアセトンとヘプタンのグラジエント(0%から70%)を用いてカラムクロマトグラフィーを行い、ジヒドロテトラジン3を、オレンジ色固体として得た(1.46g;収率12%)。
【0173】
ヒドロテトラジン(3、90mg;0.355mmol)をTHF(1mL)に溶解し、次に無水酢酸(54.4mg;0.533mmol)を加えた。溶液を加熱して、18時間不活性雰囲気下で還流させた。オレンジ色沈殿をろ過して分離し、THF(3mL)で洗浄してジヒドロテトラジンのアセタミドを得た(4、90mg;収率86%)。
【0174】
アセタミド4(50mg、0.169mmol)を酢酸(1mL)に分散させ、亜硝酸ナトリウム(35mg;0.508mmol)を添加した。すぐにオレンジ色から暗赤色への変化が観測され、酸化生成物をろ過して分離した。残渣を水(5mL)で洗浄し、真空で乾燥して、表記の化合を紫色固体として得た(5、42mg;84%)。
HNMR(DMSO−d):δ=9.03(d、1H)、8.93(d、1H)、8.61(dd、2H)、8.42(dd、1H)、8.16(dt、1H)、7.73(dd、1H)、2.17(s、3H)ppm.13CNMR(DMSO−d):δ=169.5、163.0、162.8、150.6、150.2、143.8、141.2、138.5、137.8、126.6、126.1、124.9、124.2、24.1ppm.HPLC−MS/PDA:クロマトグラムで1ピーク、m/z=293.9(M+H)、lmax=323及び529nm.
3−(2−ピリジ)−6−メチル−15−テトラジン(7)の合成
【0175】
【化42】
2−シアノピリジン(500mg、4.8mmol)、アセタミジン塩酸塩(2.00g、21.2mmol)及び硫黄(155mg、4.8mmol)をエタノール(5mL)で、アルゴン不活性雰囲気下撹拌した。ヒドラジン水和物(2.76g;55.2mmol)を添加し、次に混合物を20℃で一晩撹拌した。濁った混合物をろ過し、ろ液を蒸発乾燥させてオレンジ色固体粗生成物6を収量2.9g得た。
【0176】
続いて、6(800mg)をTHF(3mL)と酢酸(4mL)の混合物中に懸濁させた。水(3mL)中のNaNO(2.0g;29.0mmol)溶液を0℃で添加した。すぐに赤/紫色懸濁物への着色を観測した。0℃で撹拌5分後、クロロホルムと水とを添加した。紫色クロロホルム層を2回水で洗浄し次に濃縮した。固体残渣を、1:1のクロロホルムとヘキサンの混合物中で撹拌し、次にろ過した。ろ液を濃縮し、溶出液としてクロロホルム/アセトン混合物を用いシリカゲルクロマトグラフィーにより粗生成物を精製して、純粋生成物を得た(7、48mg、2−シアノピリジンから計算した合計収率21%)。
HNMR(CDCl):δ=8.96(d、1H)、8.65(d、1H)、7.99(t、1H)、7.56(dd、1H)、3.17(s、3H)ppm.13CNMR(CDCl):δ=168.1、163.6、150.9、150.3、137.4、126.3、123.9、21.4ppm.HPLC−MS/PDA:クロマトグラムにおいて1ピーク、m/z=174.3(M+H)、λmax=274及び524nm.
6−ビス(2−アミノフェル)−15−テトラジン(9)の合成
【0177】
【化43】
2−アミノベンゾニトリル(1.00g;8.46mmol)をエタノール(3mL)中に溶解し、及びヒドラジン水和物(2.06g;41.2mmol)を添加した。混合物を0℃に冷却し、硫黄(0.17g;5.30mmol)を添加した。撹拌を15分間続け、次に混合物を90℃に加熱した。3時間後、黄色沈殿を濾過により単離し、エタノール(10mL)で洗浄し、次にクロロホルムで2回粉砕し(2回、10mL)て黄色中間8(343mg、30%)を得た。
【0178】
中間8(105mg;0.394mmol)をエタノール(15mL)に溶解し、次に50℃でこの溶液中に酸素を吹き込んだ。数分でが黄色から暗オレンジ/赤色に変化し沈殿が生成した。2時間後、沈殿をろ過し、エタノールで洗浄し、乾燥して生成物9を暗赤色結晶として得た(89mg、86%)。
HNMR(DMSO−d):δ=8.39(d、2H)、7.32(t、2H)、7.04(s、4H)、6.93(d、2H)、6.75(t、2H)ppm.13CNMR(DMSO−d):δ=162.7、149.6、133.0、129.0、117.1、115.8、111.6ppm. HPLC−MS/PDA:クロマトグラで1ピーク、m/z=265.4(M+H)、λmax=237、293、403及び535nm。
【0179】
6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−15−テトラジン(11)の合成
【0180】
【化44】
4−ヒドロキシベンゾニトリル(1.06g;8.90mmol)をヒドラジン水和物(3.09g;61.7mmol)に溶解し、混合物を90℃で16時間加熱した。黄色沈殿をろ過して水(25mL)及びエタノール(10mL)で洗浄して粗生成物中間10を黄色粉末として得た(870mg;62%)。
【0181】
(10、173mg;0.645mmol)をエタノール(10mL)中に懸濁させ、この混合物中に50℃で酸素を吹き込んだ。色は、数分で黄色から暗オレンジ/赤色に変化した。6時間後、沈殿をろ過し、エタノールで洗浄し、乾燥して生成物11を暗赤色結晶として得た(136mg、80%)。
HNMR(DMSO−d):δ=10.35(br.s、2H)、8.36(d、4H)、7.02(d、4H)ppm.13CNMR(DMSO−d):δ=162.6、161.5、129.2、122.6、116.3ppm.HPLC−MS/PDA:クロマトグラムで1ピーク、m/z=267.1(M+H)、λmax=235、330及び535nm。
【0182】
6−ビス(4−アミノフェニル)−15−テトラジン(13)の合成
【0183】
【化45】
4−アミノベンゾニトリル(1.00g;8.46mmol)をエタノール(3mL)に溶解し、次にヒドラジン水和物(2.12g;42.2mmol)と硫黄(0.176g;5.5mmol)を添加した。混合物を90℃で90分間加熱し、黄色沈殿をろ過して離し、エタノール(10mL)で洗浄し、次にアセトン(12mL)で取り出して黄色中間12を得た(190mg、17%)。
【0184】
中間12(50mg;0.188mmol)をDMSO(1mL)に溶解し、次にこの溶液中に酸素を20℃で吹き込んだ。5分後、反応混合物を食塩水(13mL)に入れて、沈殿をろ過して分離し、さらにアセトン(15mL)で粉砕し精製して生成物13を赤色固体として得た(13.7mg、27%)。
HNMR(DMSO−d):δ=8.17(d、2H)、7.75(d、2H)、6.02(s、4H)ppm.13CNMR(DMSO−d):δ=162.3、152.8、128.5、118.3、113.8ppm.HPLC−MS/PDA:クロマトグラで1ピーク、m/z=265.2(M+H)、λmax=241、370及び530nm。
【0185】
6−ビス(3−アミノフェニル)−15−テトラジン(15)の合成
【0186】
【化46】
3−アミベンゾニトリル(1.00g;8.460mmol)をヒドラジン水和物(2.50mL;51.4mmol)に溶解し、次に混合物を90℃で3日間加熱した。
水(5mL)を添加し、次に黄色沈殿をろ過して分離し、水(15mL)及びエタノール(10mL)で洗浄して粗中間14を黄色粉末として得た(910mg;81%)。
【0187】
中間14(50mg;0.188mmol)をエタノール(4mL)中に懸濁させ、次にこの混合物中に50℃で酸素を吹き込んだ。数分で黄色から赤色に色変化した。16時間後、沈殿をろ過して分離し、エタノールで洗浄して生成物15を赤色粉末として得た(31mg、62%)。
HNMR(DMSO−d):δ=7.77(s、2H)、7.66(d、2H)、7.30(t、2H)、6.85(d、2H)、5.53(s、4H)ppm.HPLC−MS/PDA:クロマトグラで1ピーク、m/z=265.2(M+H)、λmax=240、296及び527nm。
【0188】
6−ビス(アミノメチル)−15−テトラジン(20)の合成
【0189】
【化47】
Boc−アミノアセトニトリル(1.00g;6.40mmol)をメタノール(10mL)に溶解し、ナトリウムメトキシド(MeOH中25%、0.145mL;0.64mmol)を添加した。混合物を20℃で18時間撹拌し、次に塩化アンモニウム(0.34g;6.40mmol)を添加し、混合物を20℃で3日間撹拌した。溶液をジエチルエーテル(40mL)で沈殿させ、次に沈殿をろ過して集め、洗浄し乾燥させてアミジン塩酸塩17を得た。
【0190】
ミジン塩酸塩(17、241mg;1.15mmol)をヒドラジン水和物(3mL;61.9mmol)に溶解し、次に溶液を20℃で16時間撹拌した。次にこれを水(10mL)で希釈し、沈殿を遠心分離で集めて乾燥した。無色固体を酢酸(1.5mL)に溶解して、次に亜硝酸ナトリウム(28mg;0.41mmol)を添加した。ピンク色混合物を15分間撹拌し、次にクロロホルム(15mL)及び飽和炭酸ナトリウム(30mL)を添加した。オレンジ色層を離し、水(15mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、次に蒸発させて乾燥してBoc−保護化テトラジンをピンク色固体として得た(19、70mg;35%)。この化合(12mg;0.035mmol)をクロロホルム(1mL)に溶解して、次ぎにTFA(1mL)を添加した。混合物を15分間撹拌して、ジエチルエーテル(15mL)で沈殿させた。ピンク色沈殿をろ過して分離し、洗浄、乾燥して表題の化合をTFA塩として得た(20、10mg、78%)。
HNMR(DO):δ=5.06(s、4H)ppm.13CNMR(DO):δ=164.5、41.1ppm.HPLC−MS/PDA:クロマトグラムで1ピーク、m/z=141(M+H)、λmax=267及び517nm。
【0191】
2’2’’−(10−(2−オキソ−2−(6−オキソ−6−(6−(6−(ピリジン−2−イル)−15−テトラジン−3−イル)ピリジン−3−イルアミノ)ヘキシルアミノ)エチル)−110−テトラアザシクロドデカン−17−トリイル)三酢酸(27)及び22’2’’−(10−(2−オキソ−2−(11−オキソ−11−(6−(6−(ピリジン−2−イル)−15−テトラジン−3−イル)ピリジン−3−イルアミノ)ウンデシルアミノ)エチル)−110−テトラアザシクロドデカン−17−トリイル)三酢酸(28)の合成
【0192】
【化48】
5−アミノ−2−シアノピリジン21(1.02g;8.60mmol)、N−Boc−6−アミノ−ヘキサン酸22(0.99g;4.30mmol)、DCC(1.77g;8.60mmol)、DMAP(1.05g;8.60mmol)、及びPPTS(0.37g;1.47mmol)をクロロホルム(15mL)中に懸濁させた。混合物を室温で18時間撹拌し、蒸発乾燥させ、次にアセトニトリル(20mL)中で撹拌した。沈殿をろ過して除き、次にろ液を蒸発させて乾燥し、クロロホルム(20mL)に溶解して、次に水クエン酸(15mL 0.5M)、水性炭酸水素カリウム(15mL、1M)及び水(15mL)のそれぞれで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発乾燥させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/酢酸エチル=1:1)で精製して生成物23を白色固体として得た(0.95g;61%)。
MS(ESI、m/z):計算値C1725([M+H]):333.19、実測値:333.17。
【0193】
Tert−ブチル6−(6−シアノピリジン−3−イルアミノ)−6−オキソヘキシルカーバメート23(0.70g;2.1mmol)、2−シアノピリジン(0.87g;8.4mmol)、ヒドラジン水和物(1.25g;20mmol)をエタノール(2mL)中に溶解し、次に硫黄(0.22g;7mmol)を添加した。混合物を70℃で、アルゴン不活性雰囲気下で2時間撹拌し、次に50℃で16時間撹拌した。オレンジの懸濁物をクロロホルム(10mL)で希釈し、次に得られた溶液を水(2回、15mL)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発乾燥させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、クロロホルム/アセトン=4:1)で精製して生成物24をオレンジ色固体として得た(0.65g;66%)。MS(ESI、m/z):計算値C2331([M+H]):467.25、実測値:467.33。
【0194】
Tert−ブチル6−オキソ−6−(6−(6−(ピリジン−2−イル)−12−ジヒドロ−15−テトラジン−3−イル)ピリジン−3−イルアミノ)ヘキシルカーバメート24(0.30g;0.64mmol)をTHF(1.5mL)に溶解し、酢酸(2mL)を添加した。亜硝酸ナトリウム(0.25g;3.62mmol)を水(1mL)に溶解、滴下した。赤色溶液を水性炭酸水素カリウム(50mL;1M)に注ぎ入れて、次に生成物をクロロホルム(50mL)で抽出した。有機相を水(50mL)で洗浄し、次に硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発乾燥させて、生成物25を紫固体として得た(0.25g;83%)。
MS(ESI、m/z):計算値C2329([M+H]):465.23、実測値:465.42。
【0195】
tert−ブチル6−オキソ−6−(6−(6−(ピリジン−2−イル)−15−テトラジン−3−イル)ピリジン−3−イルアミノ)ヘキシルカーバメート25(66mg;0.14mmol)をクロロホルム(6mL)に溶解し、次にTFA(6mL)を添加した。溶液を室温で2時間撹拌し、次に蒸発乾燥させて生成物26をTFA塩として得た(52mg;100%)。MS(ESI、m/z):計算値C1821([M+H]):365.19、実測値:365.33。
【0196】
6−アミノ−N−(6−(6−(ピリジン−2−イル)−15−テトラジン−3−イル)ピリジン−3−イル)ヘキサンアミド26(52mg;0.14mmol)をDMF(2.5mL)中に溶解し、次にDIPEAを添加した(320mg;2.0mmol)。N−ヒドロキシスクシンイミド活性化DOTA(161mg;0.2mmol)を添加し、次に混合物を室温で5時間撹拌した。溶液を蒸発乾燥させ、粗生成物をアセトニトリルと水の混合物に溶解し、分取用RP−HPLCで精製した。凍結乾燥後、精製された純粋生成物27を、ピンクの綿状固体として得た(80mg、収率76%)。
H−NMR(DO中30%アセトニトリル−d):δ=8.90(m、2H、ArH)、8.68(d、1H、ArH)、8.60(dd、1H、ArH)、8.31(m、1H、ArH)、8.24(t、1H、ArH)、7.82(t、1H、ArH)、3.80(brs、6H、NCHCOOH)、3.72(brs、2H、NCHCONH)、3.34−3.23(brm、18H、NCHCHN、CHNHCO)、2.49(t、2H、NHCOCH)、1.70(m、2H、NHCOCHCH)、1.59(m、2H、CHCHNHCO)、1.41(m、2H、CHCHCHNHCO)ppm.13C−NMR(DO中30%アセトニトリル−d):δ=175.5、171.5(br)、162.6、162.5、150.1、148.1、142.9、141.6、139.6、138.4、128.0、127.9、125.4、124.8、55.4、54.3(br)、49.4(br)、39.4、36.5、28.2、25.9、24.6ppm。ESI−MS:m/z、C344712([M+H]):751.37;実測値[M+H]751.58、[M+Na]773.50、[M+2H]2+376.42、[M+3H]3+251.33。FT−IR(ATR):ν=3263、3094、2941、2862、1667、1637、1582、1540、1460、1431、1395、1324、1296、1272、1251、1226、1198、1128、1087、1060、1020、992、977、920、860、831、798、782、742、718、679、663cm−1
【0197】
28については、22’2’’−(10−(2−オキソ−2−(6−オキソ−6−(6−(6−(ピリジン−2−イル)−15−テトラジン−3−イル)ピリジン−3−イルアミノ)ヘキシルアミノ)エチル)−110−テトラアザシクロドデカン−17−トリイル)三酢酸(27)の合成と同じ合成手順を用いた。凍結乾燥後、純粋生成物28をピンク色綿状固体として得た(90mg、収率78%)。
H−NMR(DMSO−d):δ=10.65(s、1H、NH)、9.06(d、1H、ArH)、8.93(d、1H、ArH)、8.61(t、2H、ArH)、8.44(dd、1H、ArH)、8.16(t、2H、ArH、NH)、7.73(dd、1H、ArH)、3.51(brs、6H、NCHCOOH)、3.28(brs、2H、NCHCONH)、3.06(q、2H、CHNHCO)、3.34−3.23(brm、16H、NCHCHN)、2.43(t、2H、NHCOCH)、1.64(m、2H、NHCOCHCH)、1.42(m、2H、CHCHNHCO)、1.38−1.22(m、12H、CH)ppm.。13C−NMR(DMSO−d):δ=173.0、171.0(br)、169.1(br)、163.5、163.2、151.0、150.6、144.2、141.7、139.1、138.2、127.0、126.5、125.3、124.6、57.3(br)、55.2(br)、50.7、39.0、36.8、29.5、29.4、29.3、29.19、29.17、29.1、26.9、25.3ppm。ESI−MS:m/z計算値C395712([M+H]):821.44;実測値[M+Na]843.58、[M+H]821.58、[M+2H]2+411.42、[M+3H]3+274.67。FT−IR(ATR):ν=3261、3067、2925、2851、1633、1583、1541、1458、1433、1394、1324、1298、1270、1249、1228、1200、1165、1128、1088、1059、1016、991、920、885、860、832、798、782、764、742、719、687、661cm−1
【0198】
DOTA−テトラジンアクチベータ29
【0199】
【化49】
トラジン29はRobillardらにより詳細に記載されている(Angew.Chem.、2010、122、3447−3450)。これはまた、本発明のアクチベータとして使用され得る構造の一例である。15−テトラジン部分の2−ピリジル基の1つのアミド官能基は電気供与基であり、又両方のピリジン基は電子吸引性であると考えられている。テトラジンは従ってやや電子不足とみられる。
【0200】
アクチベータ29は好適な好ましい薬物的性質を示す:29は、PBS溶液中でかなり安定であり、2時間以内ではほとんど分解されず、一晩インキュベーション後でもなおほとんど変化しない;マウスでは血液除去(クリアランス)半減期が10分である;マウスでの部分分布容量(Vd)は、細胞内に有意に入らないことから全細胞外水コンパートメントに対応する。アクチベータ29は、DOTAリガンドを含み、かかるリガンドは、種々のイメージングモダリティ(例えばMRI、SPECT)で有用である。従って、アクチベータ29は、薬物放出に好適のみならず、同時にイメージング目的でも使用され得る。事実、アクチベータ29は、111In3+と錯体化後、SPECT/CTイメージングプローブとして使用されてきた。さらに詳細については、Robillardらの文献を参照のこと(Angew.Chem.、2010、122、3447−3450)。
【0201】
留意すべきことは、アクチベータ27から29に含まれるアミノ−15−テトラジン部分は、糖、PEG、ポリマー、ペプチド(RGD又はc−RGDなど)、タンパク質、蛍光分子又は色素分子などの一連の追加官能基と共役するために使用され得る、ということである。
【0202】
実施例2
(E)−シクロオクテンモデルプロドラッグ類の合成及びプロドラッグ
(E)−シクロオクテン−2−オール(31)、(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルベンジルカーバメート(32)、及び(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イル(35−ジメチルフェニル)カーバマート(33)の合成
【0203】
【化50】
(E)−シクロオクタ−2−エノール(31)の合成
(Z)−シクロオクタ−2−エノール30(2.36g、14.0mmol)及びメチルベンゾエート(1.8mL、1.94g、14.3mmol、1.0当量)のジエチルエーテル/ヘプタン1:2(500mL)溶液を32時間照射し、一方でそれをシリカ/硝酸銀10:1(41g)、シリカ(0.5cm)及びサンド(0.5cm)を充填したカラムを通じて連続的に導入した。カラムは、照射の間暗所に置かれた。カラムはジクロロメタン(50mL)で未反応出発物を溶出した。シリカを、ジクロロメタン/12.5%水性アンモニア1:1(3x100mL)と共に撹拌した。有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して真空乾燥して粗生成物31を灰色油状物として得た。油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、溶離液ペンタン/ジエチルエーテル10%から50%)で精製して(E)−シクロオクタ−2−エノール31(メジャー(major)異性体、第2画分、440mg、3.49mmol、24.9%)を無色油状物として、及び(E)−シクロオクタ−2−エノール31(マイナー(minor)異性体、第1画分、325mg、2.58mmol、18.4%)を無色油状物として得た。メジャージアステレオマーは、G.H.Whitham、M.WrightによるJ.Chem.Soc.(C)1971、883に記載された、異なる経路で製造された(1RS、2RS)−トランス−シクロオクタ−2−エン−1−オールと同一である。マイナージアステレオマーは、G.H.Whitham、M.Wrightが異なる経路で合成された(J.Chem.Soc.(C)1971、886)(1SR2RS)−トランス−シクロオクタ−2−エン−1−オールと同一である。マイナー(minor)ジアステレオマーは、G.H.Whitham、M.Wright、J.Chem.Soc.(C)1971、886により、異なる経路で製造された(1SR,2RS)−トランス−シクロオクタ−2−エン−1−オールと同一である。H−NMR(CDCl、300MHz)δ=0.71−0.82(m、1H)、1.05−1.17(m、1H)、1.43−1.72(m、4H)、1.80−2.09(m、4H)、2.45−2.52(m、1H)、4.61(s、1H)、5.54−5.61(m、1H)、5.90−6.00(m、1H)ppm.13C−NMR(CDCl、75MHz)δ=23.35、29.42、36.08、36.27、43.40、71.40、130.78、135.39ppm。メジャー異性体:H−NMR(CDCl、300MHz)δ=0.64−0.90(m、2H)、1.31−1.51(m、2H)、1.66−1.95(m、4H)、2.06−2.14(m、1H)、2.22−2.37(m、1H)、2.78(br、1H)、4.15−4.23(m、1H)、5.45−5.65(m、2H)ppm.13C−NMR(CDCl、75MHz)δ=27.83、29.28、30.52、35.58、36.05、44.48、131.86、136.00ppm。
【0204】
留意:参考文献は、WhithamらのJ.Chem.Soc.(C)、1971、883−896であり、当該文献は、トランス−シクロ−オクタ−2−エン−オール、(1RS,2RS)及び(1SR,2RS)それぞれ同定される、エクアトリアル及びアキシル異性体の合成及び性質記載る。これらの異性体において、OH置換基は、エクアトリアル又はアキシルのいずれかである。メジャー(major)及びマイナー(minor)異性体は、それぞれエクアトリアル及びアキシル異性体を意味する。以下の実施例を通じて、メジャー/エクアトリアル及びマイナー/アキシルはトランス−シクロ−オクタ−2−エン−オール誘導体について相互に交換可能に使用され、及びこの特徴は、親化合物トランス−シクロオクタ−2−エノールの前記特徴に基づくものである。
【0205】
(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルベンジルカーバメート(メジャー異性体)(32)の合成
(E)−シクロオクタ−2−エノール31(メジャー異性体100mg、0.792mmol)のジクロロメタン(6mL)溶液に、ベンジルイソシアネート(101μL、110mg、0.826mmol、1.04当量)及び1滴のトリチルアミンを添加した。フラスコをアルミニウムホイルでカバーし、溶液を室温で窒素雰囲気下一晩撹拌した。反応混合物を蒸発させて主に出発材料を得た。ベンジルイソシアネート(200μL、220mg、1.65mmol、2.08当量)及び一滴のトリエチルアミンをジクロロメタン(6mL)に添加し、溶液を室温で一晩撹拌し、50℃で1時間、及び25から35℃で週末の間撹拌した。揮発物をバルブ−バルブ蒸留(50℃、2時間)で除去した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、カーバメート32(101mg、0.389mmol、49.2%)を白色固体として得た。
H−NMR(CDCl、300MHz)δ=0.81−0.86(m、2H)、1.35−1.55(m、2H)、1.82−1.99(m、4H)、2.21−2.30(m、1H)、2.38−2.47(m、1H)、4.36(d、5.8Hz、2H)、4.96(br、1H)、5.08−5.20(m、1H)、5.48−5.57(m、1H)、5.71−5.82(m、1H)、7.26−7.36(M、5H)ppm.13C−NMR(CDCl、75MHz)δ=27.69、29.25、35.68、35.76、35.83、41.32、44.53、78.33、100.02、127.65、127.78、128.86、132.03、133.31、138.88ppm。
【0206】
(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルベンジルカーバメート(マイナー異性体)(32)の合成
(E)−シクロオクタ−2−エノール31(マイナー異性体100mg、0.792mmol)のジクロロメタン(6mL)中溶液にベンジルイソシアネート(101μL、110mg、0.826mmol、1.04当量)及びトリエチルアミン一滴を添加した。フラスコをアルミニウムホイルでカバーし、溶液を窒素雰囲気下で室温で一晩撹拌した。反応混合物を蒸発させて主に出発材料を得た。ベンジルイソシアネート(200μL、220mg、1.65mmol、2.08当量)及びジクロロメタン(6mL)中のトリエチルアミン一滴を添加し、溶液を室温で一晩撹拌し、50℃で1時間、及び25から35℃で週末の間撹拌した。揮発物をバルブ−バルブ蒸留(50℃、2時間)で除去した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、カーバメート32(43mg、0.166mmol、20.9%)を白色固体として得た。
H−NMR(CDCl、300MHz)δ=0.74−0.93(m、2H)、1.01−1.14(m、1H)、1.41−1.57(m、1H)、1.62−1.76、2H)、1.84−2.12(m、3H)、2.46−2.49(m、1H)、4.40(d、J=6.0Hz、2H)、5.05(br、1H)、5.40(s、1H)、5.52−5.59(m、1H)、5.79−5.89(m、1H)、7.31−7.36(m、5H)ppm.13C−NMR(CDCl、75MHz)δ=24.34、29.33、36.13、36.20、40.97、45.30、74.33、127.67、127.85、128.87、131.72、131.99、138.87、156.11ppm。
【0207】
(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イル(3,5−ジメチルフェニル)カーバメート(メジャー異性体)(33)の合成
(E)−シクロオクタ−2−エノール31(メジャー異性体260mg、2.06mmol)のジクロロメタン(12mL)中溶液にジクロロメタン(3mL)中の35−ジメチルフェニルイソシアネート(305μL、318mg、2.16mmol、1.05当量)及びトリエチルアミン数滴を添加した。フラスコをアルミニウムホイルでカバーし、溶液を窒素雰囲気下で29℃でにわたり撹拌した。反応混合物を蒸発させ、0.57gのオフホワイトの固体を得た。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、30mL、溶出酢酸エチル/ヘプタン5から10%)により精製して部分的に精製されたカーバメート33を得た(94mg)。生成物をさらにカラムクロマトグラフィー(シリカ、30mL、溶出液酢酸エチル/ヘプタン5%)で精製し、カーバメート33を白色固体として得た(72mg、0.263mmol、収率12.8%、約10%のZ−異性体を含む)。
H−NMR(CDCl、300MHz)δ=0.79−0.98(m、2H)、1.28−2.02(m、4H)、1.80−2.07(m、3H)、2.30(s、6H)、2.42−2.50(m、1H)、5.13−5.22(m、1H)、5.55−5.87(m、2H)、6.49(br、1H)、6.71(s、1H)、7.04(s、2H)ppm.13C−NMR(CDCl、75MHz)δ=21.61、27.67、29.24、35.70、35.84、41.21、79.34、116.59、125.22、131.83、133.51、138.11、138.50、153.43ppm。
【0208】
(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イル(3,5−ジメチルフェニル)カーバメート(マイナー異性体)(33)
(E)−シクロオクタ−2−エノール31(マイナー異性体、Z異性体も含む、260mg、2.06mmol)のジクロロメタン(12mL)溶液中に、ジクロロメタン(3mL)中の3,5−ジメチルフェニルイソシアネート(305μL、318mg、2.16mmol、1.05当量)と数滴のトリエチルアミンを添加した。フラスコをアルミニウムホイルでカバーし、溶液を窒素雰囲気下、30℃で2晩撹拌し、50℃で一晩撹拌した。反応混合物を蒸発させて0.54gの黄色固体を得た。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、40mL溶出液酢酸エチル/ヘプタン5%)で精製し、部分的に精製されたカーバメート33を得た(20mg)。生成物をさらに真空中(0.08ミリバール)で40℃で3時間及び室温で一晩精製して、カーバメート33(11mg、0.040mmol、2.0%)を淡黄色半固体として得た。
H−NMR(CDCl、300MHz)δ=0.78−0.90(m、1H)、1.07−2.18(m、8H)、2.30(s、6H)、2.45−2.53(m、1H)、5.42(s、1H)、5.56−5.62(m、1H)、5.83−5.94(m、1H)、6.60(s、1H)、6.71(s、1H)、7.03(s、2H)ppm.13C−NMR(CDCl、75MHz)δ=21.64、24.42、29.43、36.77、40.19、74.46、116.47、118.77、125.35、131.34、132.31、138.00、138.91ppm。
【0209】
(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イル(4−ニトロフェニル)カーボナート(34)の合成
【0210】
【化51】
マイナー(E)−シクロオクタ−2−エノール31(304mg、2.41mmol)の15mLジクロロメタン溶液を、氷冷した。4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(1.16g、9.50mmol)を添加し、次に4−ニトロフェニルクロロホメート(0.90g、4.46mmol)を添加した。溶液を一晩撹拌し、次にこれを20gシリカカラム上に注いだ。ジクロロメタンで溶出し、次に5%TBMEを含有するジクロロメタンで溶出した。生成物画分を合わせてロータリーエバポレーターで蒸発させて、マイナー34を固化油状物として得た(338mg、1.16mmol、48%)。
同様に、10mLジクロロメタン中のメジャー(E)−シクロオクタ−2−エノール31(259mg、2.06mmol)から、4−(NN−ジメチルアミノ)ピリジン(1.11g、9.09mmol)及び4−ニトロフェニルクロロホーメート(0.85g、4.22mmol)を用いて、メジャー−34を固化油状物として得た(234mg、0.80mmol、39%)。
H−NMR、マイナー34(CDCl):δ=0.9(m、1H)、1.25(m、1H)、1.5−2.2(m、6H)、2.25(dd、1H)、2.6(m、1H)、5.45(s、1H)、5.6(dd、1H)、6.0(m、1H)、7.4(d、2H)、8.3(d、2H)ppm.13C−NMR(CDCl:δ=24.0、29.0、36.0、36.0、40.6(全てのCH)、79.0、122.0、125.8、129.8、133.2(全てのCH)、145.4、151.8、156.0(C及びC=O)ppm。
H−NMR、メジャー34(CDCl):δ=0.8−1.0(m、2H)、1.4−2.1(m、6H)、2.35(m、1H)、2.45(m、1H)、5.2(m、1H)、5.65(m、1H)、5.85(m、1H)、7.4(d、2H)、8.3(d、2H)ppm.13C−NMR(CDCl):δ=27.8、29.0、35.8、36.0、40.4(全てのCH)、83.0、121.8、125.0、130.4、134.4(全てのCH)、145.8、152.0、156.0(C及びC=O)ppm。
【0211】
(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イル(4−(ヒドロキシメチル)フェニル)カーバメート(35)の合成
【0212】
【化52】
マイナーアルコー31(136mg、0.467mmol)から誘導されるPNP−誘導体34は7.5gTHF中に溶解された。ジイプロピルエチルアミン(182mg、1.41mmol)を添加し、次に1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(24mg、0.178mmol)及び4−アミノベンジルアルコール(94mg、0.76mmol)を添加した。混合物を暗所で約30℃で6日間撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残渣を20gのシリカ上でクロマトグラフィーした(溶出液として、TBMEを徐々に増ながらジクロロメタンを使用する)。生成物を約5%TBMEで溶出した。生成物画分をロータリーエバポレーターで蒸発させて、生成物マイナー35を粘性油状物として残した(112mg、0.407mmol、87%)。
【0213】
同様に、6.0gTHF中のメジャーアルコール31(145mg、0.498mmol)から誘導されたPNP−誘導体34を、ジイソプロピルエチルアミン(210mg、1.63mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(34mg、0.251mmol)及び4−アミノベンジルアルコール(128mg、1.04mmol)と3日間約30℃で反応させた。ロータリーエバポレーターで蒸発させ、クロマトグラフィーにより、生成物メジャー35を粘性油状物として得た(110mg、0.40mmol、80%)。
H−NMR、マイナー35(CDCl):δ=0.8(m、1H)、1.1(m、1H)、1.45(m、1H)、1.6−2.2(m、6H)、2.4(m、1H)、4.6(s、2H)、5.4(s、1H)、5.55(dd、1H)、5.85(m、1H)、7.15(bs、1H)、7.2−7.4(AB、4H)ppm.13C−NMR(CDCl):δ=24.2、29.0、36.0、36.0、41.0、65.0(全てCH)、75.0、119.0、128.0、131.0、132.6(全てのCH)、136.0、138.0、153.6(C及びC=O)ppm。
H−NMR、メジャー−35(CDCl):δ=0.8−1.0(m、2H)、1.4−2.1(m、6H)、2.3(m、1H)、2.45(m、1H)、4.65(s、2H)、5.2(m、1H)、5.6(m、1H)、5.8(m、1H)、6.6(bs、1H)、7.45−7.65(AB、4H)ppm.13C−NMR(CDCl):δ=27.4、29.2、35.8、36.0、41.2、65.0(全てのCH)、79.8、119.0、128.2、132.0、134.0(全てのCH)、136.0、137.8、153.6(C及びC=O)ppm。
【0214】
マイナー(E)−エチル 2−(4−(((シクロクオクタ−2−エン−1−イルオキシ)カルボニル)アミノ)フェニル)−2−((((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ)カルボニル)オキシ)アセテート(37)の合成
【0215】
【化53】
メジャーアルコール31(300mg、1.03mmol)から誘導されるPNP−3誘導体34を10.3gのTHFに溶解した。ジイソプロピルエチルアミン(362mg、2.80mmol)を添加し、次に1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(75mg、0.556mmol)とエチル2−(4−アミノフェニル)−2−ヒドロキシアセテート(325mg、1.67mmol、国際公開第2009109998号に記載の方法で製造した)を添加した。混合物を暗所で30℃で6日間撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残渣を21gのシリカで、溶出液としてTBMEを徐々に増量しならジクロロメタンを使用してクロマトグラフィーした。生成物は5%TBMEで溶出された。生成物画分をロータリーエバポレーターで蒸発させて、マイナー(E)−エチル2−(4−(((シクロオクタ−2−エン−1−イルオキシ)カルボノニル)アミノ)フェニル)−2−ヒドロキシアセテート(36)を粘性油状物として得た(350mg、1.01mmol、99%)。
H−NMR(CDCl):δ=0.8(m、1H)、1.1(m、1H)、1.2(t、3H)、1.4−2.2(m、7H)、2.5(m、1H)、4.1−4.3(2q、2H)、5.1(s、1H)、5.45(s、1H)、5.55(dd、1H)、5.85(m、1H)、6.7(bs、1H)、7.3−7.45(AB、4H)ppm。
【0216】
上で得られた生成物36(80mg、0.23mmol)を4.1gのアセトニトリルに溶解させた。ジイソプロピルエチルアミン(215mg、1.67mmol)を添加し、次にN、N’−ジスクシニミジルカーボネート(217mg、0.85mmol)を添加した。溶液を2日間30℃で撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させ、残渣を16gのシリカで、溶出液として、TBMEを徐々に増量しながらジクロロメタンを使用してクロマトグラフィーを行った。生成物は約20%TMBEで溶出した。生成物画分をロータリーエバポレーターで蒸発させて、生成物マイナー(E)−エチル2−(4−(((シクロオクタ−2−エン−1−イルオキシ)カルボニル)アミノ)フェニル)−2−((((2、5−ジオキシピロロジン−1−イル)オキシ)カルボニル)オキシ)アセテート(37)を粘性油状物として得た(60mg、0.123mmol、53%)。
H−NMR(CDCl):δ=0.8(m、1H)、1.1(m、1H)、1.2(t、3H)、1.4−2.2(m、7H)、2.5(m、1H)、2.6(s、4H)、4.15−4.3(2q、2H)、5.4(s、1H)、5.55(dd、1H)、5.8(s)及び5.85(m)(2H)、6.7(bs、1H)、7.35−7.5(AB、4H)ppm。
【0217】
(E)−シクロオクテンドキソルビシンプロドラッグ(38)の合成
【0218】
【化54】
マイナーアルコール31(20mg、0.0687mmol)からのPNP−誘導体34を3.0gのDMFに溶解した。ジイソプロピルエチルアミン(80mg、0.62mmol)を添加し、次にドキソビシン塩酸塩(45mg、0.0776mmol)を添加した。混合物を暗所で30℃で3日間撹拌した。溶媒を高真空下蒸発させ、残渣を17gのシリカ上で、溶出液として、メタノールを徐々に増量しながらジクロロメタンを使用してクロマトグラフィーを行った。生成物画分をロータリーエバポレーターで蒸発させ、残渣を5mL TMBEとともに撹拌した。15mLヘプタン添加及び濾過後、マイナー38を得た(27mg、0.039mmol、50%)。ろ液には追加量の生成物が含まれていた。
【0219】
同様に、7.2gのDMF中のメジャーアルコール31(22mg、0.0756mmol)から誘導されるPNP−誘導体34から、ジイソプロピルエチルアミン(80mg、0.62mmol)及びドキソルビシン塩酸塩(47.7mg、0.0822mmol)との反応後、高真空下で溶媒の除去、クロマトグラフィー、及びTBME/ヘプタン処理が続き、メジャー−38が得られた(21mg、0.030mmol、30%)。ろ液には追加量の生成物が含まれていた。
H−NMR、マイナー38(CDCl):δ=0.7−2.0(m)及び1.35(d)(18H)、2.2(m、2H)、2.4(m、2H)、3.0−3.4(dd、2H)、3.65(s、1H)、3.9(m、1H)、4.1(s+m、4H)、4.8(s、1H)、5.05(m、1H)、5.2−5.85(m、2H)、7.4(d、1H)、7.8(t、1H)、8.05(d、1H)ppm。
H−NMR、メジャー−38(CDCl):δ=0.7−2.0(m)and1.35(d)(18H)、2.2(m、2H)、2.4(m、2H)、3.0−3.4(dd、2H)、3.65(s、1H)、3.9(m、1H)、4.1(s+m、4H)、4.8(s、1H)、5.0(m、1H)、5.3−5.8(m、2H)、7.4(d、1H)、7.8(t、1H)、8.05(d、1H)ppm。MS:694.3(M−1)。
【0220】
(E)−シクロオクテン−ドキソルビシンプロドラッグ46の合成
【0221】
【化55】
n−ブチルリチウム(97mL、ヘキサン中2.5N、0.242mol)を100mL中のジイソプロピルアミン(23.66g、0.234mol)に−20℃より低い温度で加えた。溶液を冷却し、60mL THF中に溶解したシクロオクタ−2−エノン(39、23.07g、0.185mol)を、20分かけて、−65℃から−80℃で添加した。溶液を1時間−67℃から−72℃で撹拌した。40mLのTHFに溶解したエチルブロモアセテート(45.4g、0.272mol)を、25分かけて−63℃から−75℃で添加た。得られた混合物を3時間−55℃から−70℃で撹拌した。ヘプタン(50mL)を−60℃で添加し、次に100mLの(冷却)水中の40gの塩化アンモニウムを添加し、次に温度を−70℃から−30℃へ上げた。冷却浴を外し、混合物をさらに30分間撹拌し、それにより温度を−15℃に上げた。混合物を200mLのTBME及び50mLの水中に注ぎ入れ、層分離させ、有機層を50mLの水で洗浄した。連続した層を250mL TBMEで抽出した。有機層を乾燥しロータリーエバポレーターで蒸発させた。過剰のエチルブロモアセテートを高真空下、クーゲルロール装置内で温めることにより除去した。Z)−エチル2−(2−オキソシクロオクタ−3−エン−1−イル)アセテート(40)を含む残渣は次のステップなどに使用された。
H−NMR(CDCl):δ=1.25(t、3H)、1.4−2.6(m、9H)、2.9(2d、1H)、3.55(m、1H)、4.15(q、2H)、6.05−6.5(m、2H)ppm。
【0222】
180mLのTHFと20mLのメタノールとの混合物中の粗製エステル40の溶液を氷冷した。
【0223】
リンタングステン酸(250mg)を添加し、次に温度7℃未満でナトリウムボロヒドリド(4.0g、0.105mol)を一部分ごと30分間にわたり添加した。混合物を氷冷下で90分間撹拌し、次に250mL水及び250mLトルエンを添加した。層分離し有機層を50mL水で洗浄した。連続した層を250mLトルエンで抽出した。有機層を乾燥しロータリーエバポレーターで蒸発させた。粗製41は十分区別できる画分を生成せず、従って全ての物質を一緒にして、200mLエタノール中の25mLの50%水酸化ナトリウムで(さらに25mL水を処理中に添加した)、2時間還流することで加水分解した。エタノールの大部分をロータリーエバポレーターで蒸発させた。水を適量残渣に加えた。混合物を2x200mLのトルエンで抽出した。有機層を50mLの水で洗浄した。トルエン(200mL)を、濃塩酸で酸性化した合わせた水層に加えた。層を分離し、有機層を20mLの水で洗浄した。200mLのトルエンで連続した層を抽出した。2つの有機層を乾燥してロータリーエバポレーターで蒸発させた。クーゲルロール蒸留でラクトン42を2つの異性体の約2:1比の混合物として得た(7.33g、44.1mmol、シクロオクタ−2−エノンに基づき24%)。
H−NMR(CDCl):δ=1.2−2.6(m、10H)、2.6−2.8(m、1H)、4.95(m、0.35H)、5.35(m、0.65H)、5.6(m、1H)、5.85(m、1H)ppm.13C−NMR(CDCl):δ=24.1、25.2、27.0、28.0、29.2、29.6、34.4、36.8(全てのCH)、43.5、47.2、80.8、81.9(allCH)、126.4、129.6、130.2、134.2(全てのCH)、176.4(C=O)、177.0(C=O)ppm。
【0224】
前記得られたラクトン42(7.33g、44.1mmol)を10.0gのメチルベンゾエートと約500mLのヘプタン/エーテル(約4:1)と混合した。混合物を36時間照射し、その間溶液は連続的に、シリカカラム(約6.9g硝酸銀を含む)に含浸された69gの硝酸銀を通じてフラッシュされた(flushed)。カラム材料は次に比率3:1、2:1、1:1、1:2のそれぞれ(portions)250mLのヘプタン/TBMEで、次に400mL TBMEでフラッシュされた。最初の2つの画分はメチルベンゾエートのみを含んでいた。最後の3画分は200mLの10%アンモニウムで洗浄され、乾燥してロータリーエバポレーターで蒸発させた。高真空下でほとんどのメチルベンゾエートを蒸発させた後、合わせた残渣は800mg(Z及びE異性体混合物とメチルベンゾエート)であった。残りカラム材料をTBMEとアンモニウムと共に撹拌し、次にろ過して相分離させた。固体を2回以上水層及びTBMEで処理し、次にろ過して、層分離させた。有機層を乾燥しロータリーエバポレーターで蒸発させて43を3.70g(約4:1の異性体混合物、それぞれの異性体はおそらく2つのE−異性体からなる)得た(22.29mmol、51%)。
H−NMR(CDCl):δ=0.8−2.75(m、10.6H)、3.0(m、0.4H)、4.45(t、0.2H)、5.0(m、0.8H)、5.6(dd、0.5H)、5.65(m、0.5H)、5.8(m、0.5H)、6.05(m、0.5H)ppm。
【0225】
回収されたメジャー異性体(以下の実験を参照)は次のデータを持つ:
H−NMR(CDCl):δ=0.8−2.75(m、10.6H)、3.0(m、0.4H)、t、0.2H)、4.95(m、1H)、5.6(dd、0.8H)、5.65(m、0.3H)、5.8(m、0.3H)、6.05(m、0.6H)ppm。
13C−NMR(CDCl):δ=21.6、25.8、30.0、30.4、33.0、34.8、35.4、36.0、38.0(全てのCH)、46.0、47.0、80.8、84.0(全てのCH)、128.2、131.4、133.0、134.0(全てのCH)、177.2(C=O)、177.4(C=O)ppm。シグナル比率は約2:1異性体比であった。
【0226】
ジイソプロピルエチルアミン(5.91g、45.8mmol)をラクトン43(865mg、5.21mmol)の15mLジクロロメタン溶液添加し、次にベータアラニンエチルエステル塩酸塩(1.38g、8.98mmol)を添加する。混合物を16日間室温で撹拌し、次に55℃でロータリーエバポレーターにかけた。残渣を50gのシリカ上で、ジクロロメタンを溶出液として用いてクロマトグラフィーを行った。これにより出発物ラクトン43を得た(メジャーE−異性体、C−NMRで明らかに2つの異性体の混合物であった)。メタノールを増量しながら含有するジクロロメタンを用いるさらなる溶出でアミド44を得た。生成物は75mL TBME内に取り出され、25mL水中の5gのクエン酸で、及び2x10mL水を用いて洗浄した。50mLのTBMEを用いて連続した層を抽出した。合わせた有機層を乾燥し、ロータリーエバポレーターで蒸発させて、異性体混合物からなるアミド44を得た(360mg、1.27mmol、24%)。
H−NMR(CDCl):δ=0.8−2.7(m)、1.25(t)、2.45(t)(16H)、3.5(q、2H)、3.9(t、0.5H)、4.15(q、2H)、4.35(m、0.5H)、5.5−5.9(m、2H)、6.2−6.5(2bt、1H)ppm。
13C−NMR(CDCl)(1組の異性体が濃縮された画分のシグナル):δ=14.3(CH)、22.4、27.8、29.9、33.0、34.0、34.1、34.2、34.5、35.3、35.3、35.5、35.7、36.1、36.2、41.7(全てのCH)、46.2(CH)、51.6(CH)、60.9(CH)、77.1、80.2、131.2、131.7、134.2、135.6全てのCH)、172.7、173.9、175.1(全てのC=O)ppm。
【0227】
アミド44(115mg、0.406mmol、主に1組の異性体)を4.4gのアセトニトリルに溶解した。ジイソプロピルエチルアミン(370mg、2.87mmol)を添加し、次にN、N’−ジスクシニミジルカーボネート(355mg、1.38mmol)を添加した。この溶液を2日間約30℃で撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させ、残渣を16gのシリカ上で溶出液として徐々にTBMEを増量しながらジクロロメタンを用いてクロマトグラフィーにかけた。生成物は約20%のTBMEで溶出された。生成物画分のロータリーエバポレーター蒸発により、粘性油状物としてNHSカーボネート45を得た(150mg、0.353mmol、87%)。
H−NMR(CDCl):δ=0.8−2.6(m)、1.25(t)、2.55(t)(16H)、2.85(q、4H)、3.5(q、2H)、4.15(q、2H)、4.95(t、0.8H)、5.2(dd、0.2H)、5.55−6.0(m、2H)、6.4(bt、1H)ppm。
【0228】
前記得られたNHS−カーボネート45(150mg、0.353mmol)を7.56gのDMFに溶解した。ジイソプロピルエチルアミン(132mg、1.02mmol)を添加し、次にオキソルビシン塩酸塩(66mg、0.114mmol)を添加した。混合物を室温で暗所で3時間撹拌した。溶媒を高真空下除去し、残渣を13gのシリカ上で溶出液として徐々にメタノールを増量子ながらジクロロメタンを用いてクロマトグラフィーにかけた。生成物画分のロータリーエバポレーター蒸発により、112mgのプロドラッグ46が得られた。
H−NMR(CDCl、関連するシグナルのみ与えられている):δ=1.25(t)、3.2(m)、3.5(m)、4.05(s)、4.15(q)、4.8(s)、5.2−5.8(m)、6.15(m)、6.25(m)、7.4(d)、7.8(t)、8.0(d)ppm。
場合によりプロドラッグ46は、エステル官能基をカルボン酸に変換させることで抗体へ共役させることが可能となり、これを次のリジン共役のためにNHSエステルに変換させ得る。
【0229】
マイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イル(25−ジオキソピロリジン−1−イル)カーボネート(47)の合成
【0230】
【化56】
N、N’−ジスクシニミジルカーボネート(372mg、1.45mmol)を、マイナーアルコール31(77mg、0.61mmol)、3.33gアセトニトリル及びジイソプロピルエチルアミン(410mg、3.18mmol)撹拌された混合物へ添加した。混合物を25℃で3日間撹拌し、2日後追加の120mgのNN’−ジスクシニミジルカーボネートを添加した。溶液を15gのシリカ上で、溶出液としてジクロロメタン、及び次いで少量のTBMEを含むジクロロメタンを用いてクロマトグラフィーにかけ生成物画分をロータリーエバポレーターで蒸発させ、生成物47を固体として得た(62mg、0.23mmol、38%)。
H−NMR(CDCl):δ=0.8(m、1H)、1.15(m、1H)、1.45−2.15(m、6H)、2.2(dd、1H)、2.55(m、1H)、2.8(s、4H)、5.4(s、1H)、5.5(d、1H)、6.0(m、1H)ppm。
【0231】
実施例3
テトラジンアクチベータの安定性と反応性
テトラジンの加水分解安定性試験
定のテトラジンのDMSO(25mM)溶液の10μLをPBS緩衝液(3mL)(又は、水可溶性が小さい場合にはPBSとアセトニトリルの混合物)希釈た。この溶液をろ過し、525nmにおける吸収バンドの減少をUVスペクトルを用いてモニターした。加水分解速度及び半減期をこれらのデータから決定した。
【0232】
トランス−シクロオクタ−4−エン−1−オール(アキシル異性体)へのテトラジンの反応性
競争実験を実施して、特定のテトラジンと、3−(5−アセタミド−2−ピリジル)−6−(2−ピリジル)−15−テトラジン(5)(これは標準テトラジンとして選択された)との反応性比率を、トランス−シクロオクタ−4−エン−1−オール(アキシル位OHを持つ「マイナー」異性体:WhithamらのJ.Chem.Soc.(C)、1971、883−896を参照)との逆電子要求ディールスアルダー反応において決定した。
【0233】
アセトニトリル(0.100mL)に、DMSO(25mL)の特定のテトラジンの溶液の5μL及びDMSO(25mL)の標準テトラジンの溶液の5μLを添加した。この混合物を水(0.9mL)で希釈、両方のテトラジンの絶対量をHPLC−MS/PDA分析で決定した。続いて、DMSO中のトランス−シクロオクタ−4−エン−オール(アキシル異性体)の溶液(25μL、2.5mM)をゆっくりと添加し、次に混合物を5分間撹拌させた。さらに両方のテトラジンの絶対量をHPLC−MS/PDA分析により決定し、両方のテトラジンについて変換を計算した。これらの変換から、両方のテトラジンの反応性比(R=k2、TCO/k2、Ref)が、Ingold及びShawからの数学手順を用いて計算された(J.Chem.Soc.、1927、2918−2926)。
【0234】
以下の表は、テトラジンの反応性と安定性プロフィールは、置換基を変更することで、特定の仕様に調節することができることを示す。
【0235】
【表1】
実施例4
トランス−シクロオクテンモデルプロドラッグ及びプロドラッグの安定性と反応性
安定性
定のトランス−シクロオクテン誘導体のジオキサン(25mM)溶液10μLPBS緩衝液(3mL)で希釈し、及びこの溶液を暗所、20℃で保存した。TCO化合物の運命をHPLC−MS分析でモニターし、半減期を推定した。
【0236】
トランス−シクロオクテン誘導体のビス(2−ピリジル)−15−テトラジンへの反応性:二次反応速度定数決定
20℃のアセトニトリル内で行ったトランス−シクロオクテン誘導体と3−(5−アセタミド−2−ピリジル)−6−(2−ピリジル)−15−テトラジン(5)との、逆電子要求ディールスアルダー反応の速度論をUV−可視スペクトスコピーを用いて決定した。キュベットをアセトニトリル(3mL)で満たし20℃で平衡した。3−(5−アセタミド−2−ピリジル)−6−(2−ピリジル)−15−テトラジン(5、2.50´10−7mol)を添加し、次にトランス−シクロオクテン誘導体を添加した。λ=540nmでの吸収減衰をモニターし、この曲線から二次反応速度定数kを、二次反応速度論と仮定して決定した。
【0237】
トランス−シクロオクテン誘導体のビス(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジンの反応性:
競争実験
競争実験を、特定のトランス−シクロオクテン誘導体と、トランス−シクロオクタ−4−エン−1−オール(アキシル異性体)(これはトランス−シクロオクテンの標準として選択された)と、3,6−ビス(2−ピリジル)−15−テトラジン(2)との逆電子要求ディールスアルダーの反応比を決定するために実行された。
【0238】
アセトニトリル(0.05mL)に、ジオキサン中の特定のトランス−シクロオクテン誘導体溶液(5μL、25mM;1.25x10−7mol)、及びジオキサン中の標準トランス−シクロオクテン溶液(5μL、25mM;1.25x10−7mol)を添加した。この混合物を水(0.45mL)で希釈した。次に、3,6−ビス(2−ピリジル)−15−テトラジン(2、6.25x10−8mol)のアセトニトリル(0.05mL)と水(0.45mL)との混合物中の溶液を激しく撹拌しながらゆっくりと添加した。添加後、混合物をさらに5分間撹拌した。両方のトランス−シクロオクテン誘導体の変換を、HPLC−MS/PDA分析で決定し、これらの変換から、特定のトランス−シクロオクテン誘導体の反応性比率(R=k2、TCO/k2、Ref)を、Ingold及びShawの文献により数学的手順を用いて計算した(J.Chem.Soc.、1927、2918−2926)。
【0239】
【表2】
実施例5
モデルプロドラッグの活性化(アクティベーション)
この実施例は、15−テトラジンとモデルトランス−シクロオクテンプロドラッグの逆電子要求ディールスアルダー反応、及び続くモデル薬物(例えばベンジルアミン)の脱離反応を示す。
【0240】
一般的手順:
6−ビス(2−ピリジニル)−15−テトラジン(2)及びマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルベンジルカーバメート(32)
【0241】
【化57】
6−ビス(2−ピリジル)−15−テトラジン(2、5.91x10−5g;2.5x10−7mol)を0.2mLのアセトニトリルに溶解し、マイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルベンジルカーバメート(32、アキシ位にカーバメートを持つ異性体;6.48x10−5g;2.50x10−7mol)を添加した。5分後、反応混合物を水(0.8mL)で希釈し、20℃で2時間撹拌した。混合物のHPLC−MS分析は脱離生成物(アミノベンジルカーバメートのないrDA付加物)の形成をm/z=+317Da(M+Hにより示し、ベンジルアミンの放出を示した(m/z=+108Da:M+H)。
【0242】
6−メチル−3−(4−ブタンアミド−2−ピリジル)−15−テトラジン、及びマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルベンジルカーバメート(32)
【0243】
【化58】
前記一般的手順に従い、両方の表題化合物を反応させ、HPLC−MSによる分析は脱離生成の形成をるm/z=+339Da(M+Hにより示し及びベンジルアミン放出(m/z=+108Da:M+H)を示した。
【0244】
6−フェニル−3−(4−アミノフェニル)−15−テトラジン及びマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルベンジルカーバメート(32)
【0245】
【化59】
前記一般的手順に従い、両方の表題化合物を反応させ、HPLC−MSによる分析は脱離生成の形成をm/z=+330Da(M+Hにより示し及びベンジルアミン放出(m/z=+108Da:M+H)を示した。
【0246】
6−フェニル−3−(3−アミノフェニル)−15−テトラジン及びマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルベンジルカーバメート(32)
【0247】
【化60】
前記一般的手順に従い、両方の表題化合物を反応させ、HPLC−MSによる分析は脱離生成物の形成をm/z=+330Da(M+Hにより示し及びベンジルアミン放出(m/z=+108Da:M+H)を示した。
【0248】
6−H−3−(4−アミノメチルフェニル)−15−テトラジン及びマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルベンジルカーバメート(32)
【0249】
【化61】
前記一般的手順に従い、両方の表題化合物を反応させ、HPLC−MSによる分析は脱離生成物m/z=+268Da(M+Hにより示し及びベンジルアミン放出(m/z=+108Da:M+H)を示した。
【0250】
6−ジフェニル−15−テトラジン及びマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルベンジルカーバメート(32)
【0251】
【化62】
前記一般的手順に従い、両方の表題化合物を反応させ、HPLC−MSによる分析は脱離生成物の形成をm/z=+315Da(M+Hにより示し、ベンジルアミン放出(m/z=+108Da:M+H)を示した。
【0252】
6−ビス(2−アミノフェニル)−15−テトラジン(9)及びマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルベンジルカーバメート(32)
【0253】
【化63】
6−ビス(2−アミノフェニル)−15−テトラジン(3.34mg;1.26x10−5mol)を0.5mLのDMSO−dに溶解し、次にマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルベンジルカーバメート(32;3.28mg;1.26x10−5mol)を添加した。5分後、反応混合物をDO(0.2mL)で希釈し、次に20℃で24時間撹拌した。反応混合物のH−NMRはベンジルアミン生成を示した:δ=3.86ppm(s、2H、PhCNH)。この混合物のHPLC−MS分析は、脱離生成物の形成(t=5.45min(分):m/z=+345Da(M+H))、及びベンジルアミン放出(t=0.88min:(m/z=+108Da:(M+H))を示した。
【0254】
6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−15−テトラジン(11)及びマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルベンジルカーバメート(32)
【0255】
【化64】
3,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−15−テトラジン(11、6.65x10−5g;2.50x10−7mol)を0.5mLのアセトニトリルに溶解し、次にマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルベンジルカーバメート(32;6.48x10−5g;2.50x10−7mol)を添加した。2分後、反応混合物を水(0.5mL)で希釈し、20℃で5時間撹拌した。この混合物のHPLC−MS分析は、脱離生成物の形成を、m/z=+347Da(M+Hにより示し、及びベンジルアミン放出(m/z=+108Da:(M+H))を示した。
【0256】
6−ビス(2−アミノフェニル)−15−テトラジン(9)及びマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イル(35−ジメチルフェニル)カーバメート(33)
【0257】
【化65】
6−ビス(2−アミノフェニル)−15−テトラジン(9、6.60x10−5g;2.50x10−7mol)をアセトニトリル(0.3mL)に溶解し、混合物をPBS緩衝液で希釈した(0.7mL)。次に、マイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イル(3,5−ジメチルフェニル)カーバメート(33、アキシル位置にカーバメートを持つ異性体;6.84x10−5g;2.50x10−7mol)を添加した。溶液を20℃で20時間撹拌した。この混合物のHPLC−MS分析は、脱離生成物の形成(m/z=+345Da(M+H))、及び35−ジメチルアニリン放出(m/z=+122Da:(M+H))を示した。
【0258】
6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−15−テトラジン(11)及びマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イル(35−ジメチルフェニル)カーバメート(33)
【0259】
【化66】
6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−15−テトラジン(11、6.65x10−5g;2.50x10−7mol)をアセトニトリル(0.2mL)に溶解し、この混合物をPBS緩衝液で希釈した(0.8mL)。次に、マイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イル(35−ジメチルフェニル)カーバメート(33;6.84x10−5g;2.50x10−7mol)を添加した。溶液を20℃で20時間撹拌した。この混合物のHPLC−MS分析は、脱離生成物の形成(m/z=+347Da(M+H))、及び35−ジメチルアニリン放出(m/z=+122Da:(M+H))を示した。
【0260】
6−ジフェニル−15−テトラジン及びマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イル(35−ジメチルフェニル)カーバメート(33)
【0261】
【化67】
6−ジフェニル−15−テトラジン(5.85x10−5g;2.50x10−7mol)をアセトニトリル(0.3mL)に溶解し、混合物をPBS緩衝液(0.7mL)で希釈した。次に、マイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イル(35−ジメチルフェニル)カーバメート(33;6.84x10−5g;2.50x10−7mol)を添加した。溶液を20℃で20時間撹拌した。この混合物のHPLC−MS分析は、脱離生成物の形成を、m/z=+315Da(M+Hにより示し、及び35−ジメチルアニリン放出(m/z=+122Da:(M+H))を示した。
【0262】
3−(2−ピリジル)−6−メチル−15−テトラジン(7)及びマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イル(35−ジメチルフェニル)カーバメート(33)
【0263】
【化68】
3−(2−ピリジル)−6−メチル−15−テトラジン(7、4.33x10−5g;2.50x10−7mol)をPBS緩衝液(1mL)に溶解した。次に、マイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イル(35−ジメチルフェニル)カーバメート(33;6.84x10−5g;2.50x10−7mol)を添加した。溶液を20℃で20時間撹拌した。この混合物のHPLC−MS分析は、脱離生成物の形成(m/z=+254Da(M+H))、及び35−ジメチルアニリン放出(m/z=+122Da:(M+H))を示した。
【0264】
実施例6
ドキソルブシンプロドラッグの活性化
3−(2−ピリジル)−6−メチル−15−テトラジン(7)及びマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルドキソルビシンカーバメート(38)
【0265】
【化69】
3−(2−ピリジル)−6−メチル−15−テトラジン(7、4.33x10−6g;2.50x10−8mol)をPBS緩衝液(1mL)(c=25μM)に溶解した。次に、マイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルドキソルビシンカーバメート(38、アキシ位にカーバメートを持つ異性体;1.74x10−5g;2.50x10−8mol)を添加した。溶液を20℃で4時間撹拌した。この混合物のHPLC−MS分析は、脱離生成物の形成を、m/z=+254Da(M+Hにより示し、及びドキソルビシン放出(69%)(m/z=+544Da(M+H))及びλmax=478nmを示した。比較可能な結果を、濃度2.5及び1.0μMで得た。
【0266】
3−(2−ピリジル)−6−メチル−15−テトラジン(7)及びメジャー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルドキソルビシンカーバメート(38)
3−(2−ピリジル)−6−メチル−15−テトラジン(7、4.33x10−6g;2.50x10−8mol)をPBS緩衝液(1mL)に溶解した(c=25μM)。次に、メジャー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルドキソルビシンカーバメート(38、エクアトリアル位にカーバメートを持つ異性体;1.74x10−5g;2.50x10−8mol)を添加した。溶液を20℃で16時間撹拌した。この混合物のHPLC−MS分析は、DA反応の変換率40%を示し、及び脱離生成物の形成を、m/z=+254Da(M+Hにより示し、及びドキソルビシン放出(収率20%)(m/z=+544Da(M+H))及びλmax=478nmを示した。
【0267】
6−ビス(2−アミノフェニル)−15−テトラジン(9)及びマイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルドキソルビシンカーバメート(38)
【0268】
【化70】
6−ビス(2−アミノフェニル)−15−テトラジン(9、2.64x10−6g;1.00x10−8mol)をアセトニトリル(0.1mL)に溶解した。この混合物をPBS緩衝液(0.9mL)で希釈した。次に、マイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルドキソルビシンカーバメート(38;6.96x10−6g;1.00x10−8mol)を添加した。溶液を20℃で18時間撹拌した。この混合物のHPLC−MS分析は、脱離生成物の生成を、m/z=+345Da(M+Hにより示し、及びドキソルビシン放出(収率90%)(m/z=+544Da(M+H))及びλmax=478nmを示した。
【0269】
実施例7
ドキソルビシンプロドラッグマイナー38及びテトラジン7との細胞増殖アッセイ
A431扁平上皮癌細胞を、10%熱不活性化ウシ胎児血清及びペニシリン及びストレプトマイシン存在0.05%グルタマックス(Invitrogen)を補充したDMEM(Invitrogen)中で、37℃で、加湿CO(5%)インキュベーター内に維持された。実験を開始する24時間前に、細胞を96ウェルプレート(Nunc)に、2500細胞/ウェル密度で植えた。ドキソルビシン(Dox)とプロドラッグマイナー38(DMSO中1mM)及びテトラジン7(PBS中10mM)を、実験開始直前に、加温培地内で連続希釈し、及びウェルに添加した(ウェルあたりの最終容積は200μl)。プロドラッグを、単独で、又は10μM又は1.5mol当量(プロドラッグに対して)のテトラジン7との組み合わせのいずれかで添加された。37℃で72時間インキュベーション後、細胞増殖をMTTアッセイで評価した。即ち、メチルチアゾリルフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)をPBSに5mg/mlで溶解し、0.22μmを通してろ過し、それぞれのウェルに25μlを添加した。37℃で120分間インキュベーション後、培地を静かに吸引した。形成されたホルマザン結晶を100μlのDMSOに溶解し、吸収を560nmでプレートリーダー(BMGLabtech)で測定した。IC50値(±標準偏差、表参照)を正規化細胞成長曲線(図参照)から誘導した(GraphPad Prism(version5.01)により生成した。細胞増殖アッセイは、テトラジン7は毒性ではなく(IC50>100±μM)かつプロドラッグ38はやや毒性である(IC50=3.017±0.486μM)であるのに対し、これらの2成分の組み合わせはA431細胞に対してはより高い毒性(テトラジン7の連続希釈を用いるか又は一定量を用いるか、それぞれについて、0.137±0.012±μM及び0.278μ±0.022±μMIC50)の結果となることを示す。このことは、ドキソルビシンが、プロドラッグのトランス−シクロオクテンとテトラジンとのレトロディールスアルダー反応に続いて放出されることを確認するものである。
【0270】
A431細胞系で決定された、ドキソルビシン(Dox)、テトラジン7による活性化有りのプロドラッグ38及びしのプロドラッグ38、及びテトラジン単独のIC50
【0271】
【表3】
【0272】
【表4】
ドキソルビシン(Dox)、テトラジン7で活性化されたプロドラッグ38、活性化されないプロドラッグ38、及びテトラジン単独の存在下、A431腫瘍細胞で実施された細胞増殖アッセイ
実施例8
(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルNHSカーボネート47で変性させてマスキングした抗体、及び続くテトラジンアクチベータとの反応による抗体活性化
マイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルNHSカーボネート47と抗体の共役
PBS中のCC49(8mg/mL、62.5μL)の溶液を6.2μLのDMFに加え、pHを9に1Mの炭酸ナトリウム緩衝液を用いて調節した。次に、マイナー(E)−シクロオクタ−2−エン−1−イルNHSカーボネート47を新たに乾燥DMFに溶解して添加し(5μg/μL、CC49について40mol当量)、得られた溶液を3時間室温で、暗所で静かに振盪してインキュベーションした。インキュベーション後、反応混合物をPBSで500μLに希釈し、未反応47を、PBSで前平衡化させたZeba脱塩スピンカラム(40kDaMWカットオフ、Pierce)で除去した。得られたmAb溶液の濃度は、UV−Vis(Nanodrop)で測定され、生成物の純度及び完全性をSDS−PAGEで評価した。共役物収率はテトラジン滴定で決定された。DOTA−テトラジン誘導体29は、前記の通り、キャリア付加177Luを用いて放射性ラベル化された(Rossin et al.、Angew Chem Int Ed、2010、49、3375−3378)。TCO−変性mAb(5μg)をPBS中の既知の過剰77Lu−DOTA−テトラジン(50μL)と反応させた。37℃で10分間のインキュベーション後、反応混合物に非還元性サンプル緩衝液を添加してSDS−PAGEで分析された。ゲル電気泳動後、それぞれのレーンの放射性分布を蛍光イメージャーで評価された。177Lu−DOTA−テトラジンとCC49−TCO構成物間の反応収率は、レーンの全放射能に関して放射性mAbバンドの強度から推測された。この手順で、CC49分子あたり平均20TCO部分が見出された(50%共役収率)。
【0273】
CC49及びCC49−TCO(47)放射性ラベル化
未変性CC49を、製造者指示書によりBolton−Hunter手順を用いて125Iで放射性ラベル化した。簡単にいうと、約40MBqの[125I]ヨウ化ナトリウムを50μLのPBSで希釈し、DMSO中の1μLのBolton−Hunter試薬(SHPP、Pierce)溶液(0.1μg/μL)及びPBS中の25μLクロラミン−T(Sigma−Aldrich)溶液(4mg/mL)を添加した。この溶液を10から20秒間混合し、次に5μLのDMF及び100μLのトルエンを添加した。ボルテック後、125I−SHPPを含む有機相をガラスバイアルに移し、穏やかなN流下で室温で乾燥した。PBS(50μL)中の30μgCC4925I−SHPPコーティングガラスバイアルに添加し、1M炭酸ナトリウム緩衝液pH9.6で、pHを9に調節した。バイアルを、静かに撹拌しながら約60分間室温でインキュベーションし、次25I−mAbラベル化収率を放射性−ITLCで評価した(47%)。粗125I−mAbを、生理食塩水で前平衡化させたZeba脱塩スピンカラム(40kDaMWカットオフ、Pierce)を通して精製し、得られた125I−ラベル化CC49の放射化学純度を放射性ITLC及び放射性HPLCで98%を超えていることが決定された。
【0274】
分子あたり20TCO(47)部分を担持するCC49は、既に記載されたようにキャリア非添加177Luで先に放射性ラベル化されたDOTA−テトラジン29(mAbに対して1当量)と反応させた(Rossin et al.、Angew Chem Int Ed、2010、49、3375−3378)。10分間のインキュベーション後、放射性HPLCによる177Lu−ラベル化CC49−TCO(47)については91%放射化学純度であり、反応混合物をさらに精製することなく使用した。
【0275】
抗体活性化実
この実施例では、TCO47でCC49を過剰変性ることで、mAbの標的への結合能力が大きく減少することを示し、及び過剰に変性されたCC49−TCO構成物をテトラジン7と反応させることで標的結合可能性が回復されることを示す。テトラジンとの反応によりmAbの再活性化は、TCO放出と、次の電子カスケード介在脱離機構を示す。
【0276】
標的へのCC49構成物の結合可能性は、既に記載された方法を修正した免疫反応活性アッセイを用いて評価された(Lewis et al.、Bioconjug Chem、2006、17、485−492)。簡単にいうと、放射性ラベル化mAb構成物(1μg)を、1%BSA溶液中(100μL)の20倍モル過剰のウシ顎下ムチンタイプI−S(BSM;Sigma−Aldrich)と反応させた。37℃での10分間のインキュベーション後、混合物を、0.35mL/分でPBSで溶出されたSuperdex−200カラム(GE Healthcare Biosciences)を用いて、放射性HPLCにより分析した。この条件で、非TCO−変性125I−CC49は39分保持時間を持つ広いピークのカラムから溶出された(図1A)。予想されるように、BSMでインキュベーション後、125I活性がカラムから、より高分子量の(MW)化学種(25分保持時間)に対応する1つのピークで溶出され、これは125I−CC49がBSMに結合したことを確認する(100%免疫反応活性、図1B)。
【0277】
分子あたり20TCO47部分を担持す77Lu−ラベル化CC49が放射性HPLCで分析され、保持時間31分と36分の2つのブロードな分離されていないピークが溶出され、これらはそれぞれ全mAb関連放射性の43%及び57%に対応した(図2A)。この挙動は、TCO基でのCC49過剰変性を示唆する。事実、共役後MW変化は比較的小さく、CC49とCC49−TCO間で保持時間(39分から36分)で3分の変化を起こすことはありそうもない。従って、カラムのより短い保持は、mAbへ結合した20TCO部分により引き起こされた立体構造の変化によると考えられる。また、カラムから31分に溶出されるブロードなピークはmAbの凝集を示すものである。その結果、177Lu−ラベル化CC49−TCOとBSMのインキュベーション後、僅かな量(全20%)の177Lu活性は、放射性クロマトグラで高分子量化学種に関連するものであった(図2B。約20%の残留免疫反応性は、過剰変性CC49−TCO(47)がその標的結合可能性を失っていることを確認する。
【0278】
続い77Lu−ラベル化CC49−TCO(47)を、37℃でPBS中で大過剰のテトラジン7(TCOに対して500−倍モル過剰)と反応させた。種々の時点(1時間、4時間及び24時間)で、反応混合物のアリコート(1μg mAbを含む)を取り出し、BSMとインキュベーションされ、放射性HPLCで分析された。テトラジン7の添加1時間の短かさで、放射性クロマトグラは、CC49−TCO凝集体による放射活性ピークの消失、36分ではピークの大きな減少及び177Lu−CC49−TCO−BSM付加物の形成による強いピークの形成を示した(R=24分;全mAb関連活性の72%;図2C)。
【0279】
さらに僅かなピーク面積の増加が、時間と共に観察された(テトラジン7とCC49−TCOの24時間インキュベーション後76%)。TCO−47とテトラジン7の間のレトロディールスアルダーシクロ付加に続いてCC49免疫反応性の急激な増加は、電子カスケード媒介脱離機構の結果としてTCO放出を示す。
【0280】
【表5】
【0281】
【表6】
図2
(A)177Lu−CC49−TCO、及び
(B)テトラジン7との1時間反応前の、ウシ顎下ムチンタイプI−S(BSM)の存在下での177Lu−CC49−TCO、及び
(C)テトラジンとの反応1時間後の、ウシ顎下ムチンタイプI−S(BSM)の存在下での177Lu−CC49−TCO
のサイズ排除放射性クロマトグラム。
実施例9
TCO系トリガーの製造のための例示的一般的合成経路及び重要中間体
及びSのカッコはこれらが任意であること意味する。この例で構成されるTは場合によりMで置き換えられ得る。
【0282】
【化71】
実施例10
例示的L部分の構造
【0283】
【化72】
ンカーLはまた自壊性リンカーと呼ばれておりこれはアクチベータとトリガーとの反応でリンカーが分子内反応により分解され薬物Dを放出することを意味する。前記のいくつかはまたSを含む。
【0284】
実施例11
例示的S部分の構造
【0285】
【化73】
(波線は結合されたプロドラッグの残り部分を示す。)
留意すべきは、マレイミド、活性エステル及びブロモアセタミド基は、目標部分T及びマスキング部分Mが、場合によりさらにスペーサーSを介してカップリングし得る活性基である、ということである。マレイミド及びブロモアセタミド基は通常チオールと反応し、一方活性エステルが通常一級及び二級アミンにカップリングするために好適である。
【0286】
実施例12
スケード脱離機構により能す、図示された例示部分を持つTCOトリガーの構造
この例で特徴づけられるTは場合によりMで置換され得る。
【0287】
【化74】
(波線は結合されたT又はS−Tの残り部分を示す。)
実施例13
カスケード脱離機構で機能す示された例示及び/又はS部分を持つTCOトリガーの構造
リガーは、TにTのアミン又はチオールを介して共役されている。この例で特徴づけられるTは場合によりMで置換され得る。
【0288】
【化75】
実施例14
スケード脱離機構で機能す示された例示及び/又はS部分を持つTCOトリガーの構造
リガーは、TにTのアミン又はチオールを介して共役されている。この例で特徴づけられるTは場合によりMで置換され得る。
【0289】
【化76】
実施例15
スケード脱離機構により機能る抗体−薬物共役物の構造
アウリスタチンE(MMAE)トキシンを、自壊性リンカーLを介してTCOトリガーに結合し、及びSを介する場合には標的抗体又は断片(システイン又はリジン残基を介して共役)に結合される。Ab=抗体又は抗体断片;q=Ab変性#であり、通常は#は1と10の間である。
【0290】
【化77】
実施例16
スケード脱離機構により機能する抗体−薬物共役物の構造
アウリスタチンE(MMAE)トキシンは、TCOトリガーに結合され、及びSを介して標的抗体又は断片(システイン又はリジン残基を介して共役)に結合される。Ab=抗体又は抗体断片;q=Ab変性#であり、通常は#は1と10の間である。
【0291】
【化78】
実施例17
スケード脱離機構により機能る抗体−薬物共役物の構造
メイタンシントキシンを、自壊性リンカーLを介してTCOトリガーに結合し、及びSを介する場合には標的抗体又は断片(システイン又はリジン残基を介して共役)に結合される。Ab=抗体又は抗体断片;q=Ab変性であり、通常は1と10の間である。
【0292】
【化79】
実施例18
スケード脱離機構により機能する、例えばアミン又はチオール部分を介して標的試薬Tに共役され得るトリガー−薬物構成物の構造
アウリスタチンE(MMAE)トキシン、自壊性リンカーLを介してTCOトリガーに結合され、及びSを介す場合、共役物のための反応部分に結合される。
【0293】
【化80】

実施例19
スケード脱離機構により機能する、例えばアミン又はチオール部分を介して標的試薬Tに共役され得るトリガー−薬物構成物の構造
アウリスタチンE(MMAE)トキシンをTCOトリガーに結合し、及びSを介してT役のための反応部分に結合される。
【0294】
【化81】
実施例20
スケード脱離機構により機能する、例えばアミン又はチオール部分を介して標的試薬Tに共役され得るトリガー−薬物構成物の構造
メイタンシントキシンを、自壊性リンカーLを介してTCOトリガーに結合し、及びSを介する場合にはT役のための反応部分に結合る。
【0295】
【化82】
実施例21
腫瘍結合CC49−アウリスタチンE共役物の活性化
mAb又はmAb断片としてのCC49は、非内在化汎固形腫瘍マーカーTAG72へ結合する。プロドラッグ投与、腫瘍結合及び血液から除去後、アクチベータが注入される。アクチベータとTCOトリガーとの、プロドラッグ中での反応の結果、アウリスタチンEをCC49(抗体又は抗体断片)から放出し、これはがん細胞を浸透して、がん細胞内で抗癌作用を発揮する。
【0296】
【化83】
実施例
腫瘍結合T−細胞係合三量体抗体(triabody)の活性化
三量体抗体は、腫瘍−結合部分、CD3T−細胞係合部分、及びCD28T−細胞共刺激部分を含む。1つの分子に結合されたCD3及びCD28がオフターゲットの許容されない毒性効果を生じる結果となるので、抗−CD28ドメインはマスキング部分Mでブロックされ、これはCD28結合ドメインに類似するペプチドであり、抗−CD28部分への親和性を持つ。このペプチドはさらなるペプチドもしくはPEG鎖Sを介してTCOトリガーリンクされ、これ自体が、サイト異的に設計されたシステインへ共役されている。プロドラッグ投与、腫瘍結合及び血液からの除去後、アクチベータが注入される。アクチベータとプロドラッグのTCOトリガーとの反応は、抗−CD28ドメインからマスキング部分を放出させ、T−細胞のCD28共刺激、T−細胞介在抗癌作用のブーストを可能とし、またオフターゲット毒性を防止する。
【0297】
【化84】