(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993942
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/20 20060101AFI20160908BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
B60C9/20 L
B60C9/18 G
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-514368(P2014-514368)
(86)(22)【出願日】2013年4月18日
(86)【国際出願番号】JP2013002634
(87)【国際公開番号】WO2013168370
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2016年3月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-109864(P2012-109864)
(32)【優先日】2012年5月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】須田 泰崇
(72)【発明者】
【氏名】吉川 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山本 信也
【審査官】
岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−66628(JP,A)
【文献】
特開2002−36815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/18−9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスと、該カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に、ベルトコーティングゴムで被覆したコードよりなる複数のベルト層からなるベルトを有し、
前記ベルトは、タイヤ周方向に延びるコードからなる少なくとも1層の周方向ベルト層からなる周方向ベルトと、該周方向ベルトのタイヤ径方向外側に配置された、タイヤ周方向に対して傾斜して延びるコードからなる少なくとも1層の傾斜ベルト層からなる傾斜ベルトを有し、
前記複数のベルト層のうちタイヤ幅方向の幅が最広幅のベルト層と前記カーカスとの間、かつ、前記最広幅のベルト層よりタイヤ径方向内側に位置するベルト層のトレッド幅方向外側の領域に、クッションゴムを配置した、重荷重用タイヤであって、
前記クッションゴムは、前記最広幅のベルト層よりタイヤ径方向内側に位置するベルト層のタイヤ幅方向外側端部に隣接するベルト隣接部分と、該ベルト隣接部分に隣接して配置され、前記カーカスに沿ってタイヤ径方向内側に延在する本体部分と、からなり、
前記クッションゴムの前記ベルト隣接部分、前記クッションゴムの前記本体部分、及び前記ベルトコーティングゴムの貯蔵弾性率をそれぞれE1'、E2'、E3'とするとき、E1'、E2'、E3'は、
E2'<E1'≦E3'
という関係を満たすことを特徴とする重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記クッションゴムの前記本体部分の損失正接tanδ2が
0.01<tanδ2<0.2
を満たす範囲内にあり、かつ
前記クッションゴムの前記本体部分の貯蔵弾性率E2'(MPa)が
1<E2'<15
を満たす範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記ベルト隣接部分は、前記傾斜ベルトのタイヤ幅方向外側端と前記クッションゴム本体部分との最短距離が1mm以上、かつ、前記周方向ベルトのタイヤ幅方向外側端とクッションゴム本体部分との最短距離が2.5mm以上となるように配置した、請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記傾斜ベルト層のタイヤ幅方向の幅は、前記周方向ベルト層のタイヤ幅方向の幅の30〜120%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
タイヤの偏平率が70%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用タイヤに関し、特には、タイヤの転がり抵抗と耐久性を両立させた、重荷重用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にタイヤにおいては、タイヤ内面を適正形状に補整するクッションゴムが使用されている。通常、周方向ベルトと傾斜ベルトとからなるベルト構造を有するタイヤにおいては、クッションゴムは、タイヤの転がり抵抗を小さくするため、低カーボン、低硫黄、低コバルト配合によるゴムを用いており、このため、クッションゴムは、貯蔵弾性率及び接着性が低いものであった。
【0003】
しかしながら、重荷重用タイヤが偏平化していくにつれ、特にタイヤの偏平率が70%以下のタイヤの場合、周方向ベルトと傾斜ベルトとからなるベルト構造において上記クッションゴムを使用すると、接着性の低いゴムが角度付きベルトと直接接触することによってベルトコーティングゴムの硫黄・コバルトがクッションゴムに移行し、スチールコードとコーティングゴムとの間の接着性の低下を招くという問題があった。また、低貯蔵弾性率のクッションゴムが周方向ベルトの横に配置されることで周方向ベルトのコード方向の歪みの増大を招くという問題もあった。
【0004】
これに対し、特許文献1に示されているように、ベルト端部にベルトコーティングゴムと類似配合のカバーゴムを配置して、スチールコードとクッションゴムとのクリアランスを確保し、耐久性の問題を回避する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−137813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、別の部材を傾斜ベルトとクッションゴムとの間や、クッションゴムと周方向ベルトとの間に配置すると、生産性が著しく阻害されるという問題があった。
【0007】
それゆえ、本発明は上記の問題を解決することを課題とするものであり、その目的は、ベルト層間にクッションゴムを有する構造において、生産性を低下させずに、タイヤの転がり抵抗と耐久性を両立させた、重荷重用タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねたところ、クッションゴムのベルトに隣接する部分に、適切に選定した貯蔵弾性率及び損失正接を有するゴムを使用することにより、転がり抵抗の抑制と十分な耐久性確保との両立が達成できることの知見を得た。
【0009】
前記の課題を解決するための本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明の重荷重用タイヤは、一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスと、該カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に、ベルトコーティングゴムで被覆したコードよりなる複数のベルト層からなるベルトを有し、
前記ベルトは、タイヤ周方向に延びるコードからなる少なくとも1層の周方向ベルト層からなる周方向ベルトと、該周方向ベルトのタイヤ径方向外側に配置され、タイヤ周方向に対して傾斜して延びるコードからなる少なくとも1層の傾斜ベルト層からなる傾斜ベルトを有し、
前記複数のベルト層のうちタイヤ幅方向の幅が最広幅のベルト層と前記カーカスとの間、かつ、前記最広幅のベルト層よりタイヤ径方向内側に位置するベルト層のトレッド幅方向外側の領域に、クッションゴムを配置し、
前記クッションゴムは、前記最広幅のベルト層よりタイヤ径方向内側に位置するベルト層のタイヤ幅方向外側端部に隣接するベルト隣接部分と、該ベルト隣接部分に隣接して配置され、前記カーカスに沿ってタイヤ径方向内側に延在する本体部分と、からなり、
前記クッションゴムの前記ベルト隣接部分、前記クッションゴムの前記本体部分、及び前記コーティングゴムの貯蔵弾性率をそれぞれE1'、E2'、E3'とするとき、E1'、E2'、E3'は、
E2'<E1'≦E3'
という関係を満たすことを特徴とする。
ここで、貯蔵弾性率及び後述する損失正接は、JIS K 6394(加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの動的性質試験方法)の規定に準じて、動的ひずみ2%、室温の条件で測定した値である。以降の貯蔵弾性率、損失正接についても同様である。
また、本明細書において、幅や距離などの諸寸法は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷状態とした際のタイヤ幅方向断面における幅や距離などの諸寸法を表すものとする。ただし、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会) YEAR BOOK、欧州ではETRTO(European Tyre and Rim Technical Organisation) STANDARD MANUAL、米国ではTRA(THE TIRE and RIM ASSOCIATION INC.)YEAR BOOK等に規定されたリムを指す。また、「規定内圧」とは、適用サイズのタイヤにおけるJATMA等の規格のタイヤ最大負荷能力に対応する内圧をいうものとする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、クッションゴムのベルトに隣接する部分に、適切に選定した貯蔵弾性率及び損失正接を有するゴムを使用することによって、タイヤの転がり抵抗と耐久性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる重荷重用タイヤの概略的な部分断面図である。
【
図4】本発明にかかる重荷重用タイヤの周方向ベルト層、傾斜ベルト層、及びクッションゴムの位置関係を示す図である。
【
図5】本発明の他の実施形態にかかる重荷重用タイヤの概略的な部分断面図である。
【
図6】発明例及び従来例のタイヤの概略的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる重荷重用タイヤ(以下「タイヤ」という)の部分断面図である。
すなわち、該タイヤは、
図1に示すように、コーティングゴムで被覆したコードよりなる少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカス1と、該カーカス1のクラウン部のタイヤ径方向外側に、ベルトコーティングゴムで被覆したコードよりなる複数の(図示例で4層の)ベルト層2a1、2a2、2b1、2b2からなるベルト2とを備えている。また、図示例では、カーカス1よりもタイヤ内面側に配設されて空気入りタイヤの内圧を保持する少なくとも1枚のインナーライナー4を備えており、ベルト2のタイヤ径方向外側には、トレッド5が配置されている。
ここで、ベルト2は、波型に型付けしたタイヤ周方向に延びるコードからなる少なくとも1層(図示例では2層)の周方向ベルト層2a1、2a2からなる周方向ベルト2a及びタイヤ周方向に傾斜して直線状に延びるコードからなる少なくとも1層(図示例では2層)の傾斜ベルト層2b1、2b2からなる傾斜ベルト2bを有する。
このタイヤは、複数のベルト層2a1、2a2、2b1、2b2のうちタイヤ幅方向の幅が最広幅のベルト層2b1とカーカス1との間、かつ、上記最広幅のベルト層2b1よりタイヤ径方向内側に位置するベルト層2a1、2a2のトレッド幅方向外側の領域にクッションゴム3をさらに備えている。
このクッションゴム3は、図示例で、傾斜ベルト層2b1並びに周方向ベルト層2a1、2a2のタイヤ幅方向外側端部にする部分(以下、「ベルト隣接部分」と称する)3aと、該ベルト隣接部分3aに隣接し、該ベルト隣接部分3aのタイヤ幅方向外側端面部分からカーカス1に沿ってタイヤ径方向内側に延在する部分(以下、「本体部分」と称する)3bとの2層構造である。すなわち、ベルト2に面する部分はクッションゴム3のベルト隣接部分3aとなるように配置されている。
さらに、
図1に示す本実施形態においては、このベルト隣接部分3aは、タイヤ幅方向の幅が最幅広の傾斜ベルト層2b1の端部近傍からトレッド幅方向内側かつタイヤ径方向内側に向かうラインを境界として本体部分3bと隣接しており、また、ベルト隣接部分3aは、カーカス1とタイヤ径方向最内側にある周方向ベルト層2a1との間でトレッド幅方向内側に延びている形状をしている。
ここで、クッションゴム3のベルト隣接部分3a、クッションゴムの本体部分3b、及びベルトコーティングゴムの貯蔵弾性率をそれぞれE1'、E2'、E3'とするとき、本発明において、E1'、E2'、E3'は、
E2'<E1'≦E3'
という関係を満たすことが肝要である。
【0013】
すなわち、
図2に示すような、従来の1層構造のクッションゴム3からなる構造の場合には、貯蔵弾性率、損失正接が小さい、すなわち、硫黄、コバルトの含有率の低いクッションゴム3と傾斜ベルト2bが直接接することで(
図2における従来のクッションゴム3は、あくまで1層構造であるが、便宜上傾斜ベルト2b隣接する部分を符号3aで示している)、傾斜ベルト2bをコーティングしているベルトコーティングゴムの硫黄、コバルトがクッションゴム3に移行し、結果としてコードとベルトコーティングゴムとの接着性を低下させ、早期のセパレーションの発生を招き、また、クッションゴム3の貯蔵弾性率が低いため、周方向ベルト2aのコード方向の歪みが大きくなり周方向ベルト2a端部のコード切れが生じるおそれがある。本発明にかかる
図1に示す構造においては、ベルト2と接触する部分が貯蔵弾性率、損失正接が大きく、すなわち、硫黄、コバルトの含有率が高い、ベルト隣接部分3aであるため、ベルトコーティングゴムからの硫黄・コバルトの移動を抑えることができ、また、高貯蔵弾性率ゆえ、周方向ベルト2aのコード方向の歪みを抑えることができるため、上記の問題を回避することができる。
また、クッションゴムの本体部分3bにより、タイヤ内面を適正形状に補整する効果も併せ持つことができる。
なお、ここでは周方向ベルト層は波型の型付けをしたものとしたが、直状のコードであっても良い。
ここで、本発明の上記の効果を得るためには、
図1に示すように、カーカス1のクラウン部のタイヤ径方向外側に、周方向ベルト2a及び傾斜ベルト2bを順に有し、傾斜ベルト層2bの1つがタイヤ幅方向の幅が最広幅である、ベルト構造であることが好ましい。
図1に示す例では、最広幅のベルト層は、傾斜ベルト層2b1であり、傾斜ベルト層2b2は、周方向ベルト2aのタイヤ幅方向の幅より短くなっているが、本発明では、傾斜ベルト層2b2を傾斜ベルト層2b1と同程度の幅として、周方向ベルト2aのタイヤ幅方向の幅より長くすることもでき、あるいは、最広幅のベルト層とすることもできる。
【0014】
さらに、
図3のように傾斜ベルト層2b1の端部のカバーゴム3cと周方向ベルト2aに隣接する横ゴム3dとを配置する場合では、部材点数の増加及び貼り付け工程の増加により生産性の低下を招いていたが、本発明では、クッションゴムのベルト隣接部分2aに、適切に選定した貯蔵弾性率及び損失正接を有するゴムを使用しているだけであるので、かような問題も解決される。
【0015】
また、クッションゴム3の本体部分3bは、タイヤ内面を適正形状に補整するために、損失正接tanδ2が
0.01<tanδ2<0.2
を満たす範囲内にあり、かつ
貯蔵弾性率E2'(MPa)が
1<E2'<15
を満たす範囲内にあることが好ましい。
なぜなら、tanδ2を0.01超とすることにより、クッションゴムとその周辺ゴムとの境界の接着不良によって剥離が生じるのを抑制することができ、一方で、0.2未満とすることにより、損失エネルギーを抑えて転がり抵抗を有効に低減することができるからである。
また、E2’を1(MPa)超とすることにより、クッションゴム自体の歪みを抑えて自己破壊を抑制することができ、一方で、15(MPa)未満とすることにより、大入力時の耐破壊性を確保してクッションゴム自体の自己破壊を抑えることができ、また、成型時に所期したベルト形状としやすいからである。
【0016】
さらに、ベルト隣接部分3aは、最広幅の傾斜ベルト層2b1のタイヤ幅方向外側端とクッションゴムの本体部分3bとの最短距離L2が1mm以上、かつ、周方向ベルト2aのタイヤ幅方向外側端とクッションゴムの本体部分3bとの最短距離L1が2.5mm以上となるように配置することが好ましい。
なぜなら、硫黄・コバルトの移動をより確実に抑制するためには、最広幅の傾斜ベルト層2b1のタイヤ幅方向外側端とクッションゴムの本体部分3bとの最短距離L2が1mm以上であることが有効であり、また、周方向ベルト端の歪みを抑制し、ベルト切れ性を改善するためには、周方向ベルト2aのタイヤ幅方向外側端とクッションゴムの本体部分3bとの最短距離L1が2.5mm以上であることが有効だからである。
なお、
図1等に示す場合のように、周方向ベルト2aが複数層ある場合は、上記最短距離L1が最も小さくなるベルト層について当該最短距離L1が2.5mm以上となるようにすることが好ましい。
【0017】
加えて、傾斜ベルト層2b1、2b2のタイヤ幅方向の幅は、周方向ベルト層2a1、2a2のタイヤ幅方向の幅の30〜120%とすることが好ましく、105〜110%とすることがより好ましい。
なぜなら、30%以上とすることにより、石などの突起物を踏んだ際に、内圧を保持するベルト2a1、2a2を効果的に保護することができ、一方で、120%以下とすることにより、最広幅ベルト層端から生じる故障を抑制することができるからである。
また、特に105%以上110%以下とすることにより、ベルト耐久性と径成長とのバランスをとることができるからである。
さらに、本発明にあっては、タイヤの偏平率が70%以下であることが好ましい。
【0018】
図5は、本発明の他の実施形態にかかるタイヤの部分断面図である。
図5に示すタイヤは、クッションゴム3の形状のみが、
図1に示すタイヤと異なっている。
図5に示すタイヤでは、ベルト隣接部分3aは、クッションゴム3の本体部分3bのタイヤ径方向外側部分を覆うように配置されている点で、
図1に示すタイヤと異なっており、図示例では、クッションゴム3の本体部分3bがカーカス1及びベルト隣接部分3aに囲まれるように配置されている。
図5に示すタイヤによれば、タイヤ製造過程におけるクッションゴム3の反りを抑制することができる。すなわち、本発明では、クッションゴム3は、互いに弾性率の異なるベルト隣接部分3aと本体部分3bとが隣接して配置された2層構造であるため、タイヤ製造工程において、その収縮率の違いからクッションゴム3に反りが生じるおそれがあるが、
図5に示すように、ベルト隣接部分3aが本体部分3bのタイヤ径方向外側部分を覆うような構成することにより、ベルト隣接部分3aが本体部分3bの変形を抑えつけるため、クッションゴム3の不所望な反りを抑制することができる。
【実施例】
【0019】
従来のタイヤと本発明にかかるタイヤとで、タイヤの性能に違いがあることを確認するため、サイズTBR445/50R22.5のタイヤを、リム幅14インチのリムに組み、規定の内圧とした供試タイヤを用いて、タイヤの転がり抵抗、QC耐久性、ベルト接着性、周方向ベルト切れ性について試験を行った。各試験方法は以下の通りである。
<タイヤの転がり抵抗>
ドラム上に供試タイヤを接触させた状態でドラムを回転させ、所定の回転速度まで上昇させた後、ドラムへの回転駆動力の伝達を遮断し、タイヤの転軸によるドラム回転速度の減少の割合から転がり抵抗を算出した。
<QC耐久性>
規定の内圧、荷重、速度の条件でドラム試験を行い、故障が発生するまでの時間で発熱性を評価する、いわゆるQCドラム試験を行った。
<ベルト接着性>
内圧900kPa、荷重6000kg、サイドフォース3045kgf、速度60km/h、走行時間12時間の条件でドラム試験を行い、ベルト接着性を評価した。
<周方向ベルト切れ性>
内圧900kPa、荷重6380kg、速度60km/h、走行距離50000kmの条件でドラム試験を行い、周方向ベルト切れ性を評価した。
【0020】
作製した従来例1〜4、及び発明例1〜9のタイヤの緒元、及び試験結果は、表1に示している。ここで用いているベルトコードはスチールコード(波付したコード)である。
なお、表1において、タイヤの性能は、従来例の結果を100としたときのINDEXで表している(数値が大きいほど性能が良い)。
【0021】
【表1】
【0022】
表1からわかるように、発明例1〜9では、転がり抵抗を小さくするために、クッションゴム本体部分に損失正接及び貯蔵弾性率が低いゴムを使用しているため、転がり抵抗性が従来例1より優れている。また発明例1〜9ではクッションゴムを2層化し、ベルト隣接部分に損失正接及び貯蔵弾性率が高いゴムを使用しているため、QC耐久性、ベルト接着性、周方向ベルト切れ性が従来例1及び従来例2と同等以上である。
また、発明例では、ベルト端カバーゴムを使用していないため、従来例3及び従来例4で生じるような生産性の低下を回避できている。
【産業上の利用可能性】
【0023】
タイヤの転がり抵抗と耐久性を両立させた重荷重用タイヤを市場に提供できる。
【符号の説明】
【0024】
1 カーカスプライ
2 ベルト
2a 周方向ベルト
2b 傾斜ベルト
3 クッションゴム
3a ベルト隣接部分
3b 本体部分
3c カバーゴム
3d 横ゴム
4 インナーライナー
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