特許第5994015号(P5994015)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5994015
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】ダウンザホールハンマー用ビット
(51)【国際特許分類】
   E21B 4/06 20060101AFI20160908BHJP
【FI】
   E21B4/06
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-236505(P2015-236505)
(22)【出願日】2015年12月3日
【審査請求日】2016年4月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595101665
【氏名又は名称】株式会社オーク
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100069578
【弁理士】
【氏名又は名称】藤川 忠司
(72)【発明者】
【氏名】樫本 孝彦
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−328983(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103556948(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102535445(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0151126(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00−49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンザホールハンマーのハンマーケーシングの下部側にスプライン嵌合によって軸方向移動可能に挿嵌保持させるスプライン軸部と、該スプライン軸部の下部側に一体形成されたビット部とを備え、
前記ビット部は、前記スプライン軸部と同心の丸軸部の外周に、下端側から上方へ側方突出量を増しつつ螺旋方向に巻回する複数本の螺旋凸条部が形成され、
各螺旋凸条部が全長にわたって連続する外側斜め下向きの破砕面を有し、この破砕面と前記丸軸部の下端面とに多数の小突起が設けられてなり、
各螺旋凸条部が全長にわたって前記破砕面の上縁から立ち上がる垂直側面を有すると共に、前記丸軸部の下端側が螺旋凸条部の下端よりも下方に突出してなるダウンザホールハンマー用ビット。
【請求項2】
各螺旋凸条部が前記丸軸部の外周を0.3〜2周回してなる請求項1に記載のダウンザホールハンマー用ビット。
【請求項3】
2本の螺旋凸条部が相互に径方向両側に対向する形で前記丸軸部を各々0.5周回又は1周回してなる請求項1に記載のダウンザホールハンマー用ビット。
【請求項4】
前記丸軸部の軸線方向に対する各螺旋凸条部の螺旋傾斜角度が20〜60°である請求項1〜3のいずれかに記載のダウンザホールハンマー用ビット。
【請求項5】
各螺旋凸条部の前記破砕面の仰角が30〜60°である請求項1〜4のいずれかに記載のダウンザホールハンマー用ビット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質粘土層、粘性土層、ローム層等の粘性度の高い地質の地盤や、これら粘性度の高い地質と硬い地質が併存する地盤の削孔に好適なダウンザホールハンマー用ビットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、岩盤、礫層、転石、コンクリート等が存在する硬質ないし超硬質な地盤の削孔には、ダウンザホールハンマーが多用されている。一般的に、このダウンザホールハンマーは、例えば図5(a)に示すように、略円筒状のハンマーケーシング(シリンダ)51内にピストン52が軸方向往復動可能に装填され、該ハンマーケーシング51の上端側には逆止弁53を抱持した筒状のバルブホルダー54が螺着されると共に、該ハンマーケーシング51の下端側に螺着した筒状のエンドキャップ55の内側に、ハンマービッド6の上部側のスプライン軸部61がスプライン係合によって軸方向移動可能に挿嵌保持されており、該ハンマービッド6の下部側のビッド部62がハンマーケーシング51の下端より下方へ突出している。そのビット部62は、図5(b)に示すように、周面にスプライン61aを設けたスプライン軸部61と同心で且つ径大厚肉の円盤状をなし、下面に超硬合金等からなるピンの植設による多数の半球状の小突起63を有すると共に、周側面の複数箇所に上下方向の溝64が形成されている。
【0003】
そして、このようなダウンザホールハンマーは、削孔に際し、掘削機のスクリュー軸等のオーガ軸(図示省略)に対し、上端のバルブホルダー54のテーパーねじ孔54aに螺着した継手アダプター(図示省略)を介して連結し、該オーガ軸と一体に回転させながら、外部より圧縮エアーを該オーガ軸内を通してハンマーケーシング51内に供給することにより、ピストン52を往復動させてハンマービッド6の頂端を打撃し、これに伴うビッド部62の回転打撃作用によって地盤を破砕しながら掘削してゆくと共に、ピストン52を動作させた圧縮エアーをハンマービッド6内を通してビッド部62の下面の吐出口(図示省略)から噴出させて周面の溝63より噴き上げることで、発生するスライムを掘削孔外へ排出するようになっている。なお、従来より、ダウンザホールハンマーの改良に関して多くの提案(例えば特許文献1〜3)がなされているが、そのハンマービットについては、細部の違いはあっても概ねビット部がフラット型やコーンケーブ型として図5(b)に示すような構造であり、他に掘削径の拡縮のためにビッド部を可動式に分割したものや、複数のハンマービッドを並設した多軸型のものが知られる程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−328983号公報
【特許文献2】特表2009−501856号公報
【特許文献3】特表2012−515281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の一般的なダウンザホールハンマーでは、全体が硬質ないし超硬質である地盤の削孔には支障はないが、硬質粘土層、粘性土層、ローム層等の粘性度の高い地質の地盤や、これら粘性度の高い地質と硬い地質が併存する地盤の削孔に用いると、ハンマービットのビット部下面側の小突起間を粘性度の高い付着物が埋めて圧密化することで、目詰まりした該ビット部下面側が地盤に対して滑りを生じ、これによって掘削能率が著しく低下し、遂には掘削不能に至ることが往々にしてあった。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて、ダウンザホールハンマー用ビットとして、全体が硬質ないし超硬質である地盤は無論のこと、硬質粘土層、粘性土層、ローム層等の粘性度の高い地質の地盤や、これら粘性度の高い地質と硬い地質が併存する地盤を削孔対象としてもビット部の目詰まりを生じず、高い掘削能率で非常に効率よく削孔できるものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明に係るダウンザホールハンマー用ビットB1〜B3は、ダウンザホールハンマーのハンマーケーシング51の下部側にスプライン嵌合によって軸方向移動可能に挿嵌保持させるスプライン軸部1と、該スプライン軸部1の下部側に一体形成されたビット部2とを備え、ビット部2は、スプライン軸部1と同心の丸軸部20の外周に、下端側から上方へ側方突出量を増しつつ螺旋方向に巻回する複数本の螺旋凸条部3が形成され、各螺旋凸条部3が全長にわたって連続する外側斜め下向きの破砕面3aを有し、この破砕面3aと丸軸部20の下端面20aとに多数の小突起4が設けられてなり、
各螺旋凸条部3が全長にわたって破砕面3aの上縁から立ち上がる垂直側面3bを有すると共に、丸軸部20の下端側が螺旋凸条部3の下端よりも下方に突出してなる構成としている。
【0008】
請求項2の発明は、上記請求項1のダウンザホールハンマー用ビットB1〜B3において、各螺旋凸条部3が丸軸部20の外周を0.3〜2周回してなる構成としている。
【0009】
請求項3の発明は、上記請求項1のダウンザホールハンマー用ビットB1〜B3において、2本の螺旋凸条部3が相互に径方向両側に対向する形で丸軸部20を各々0.5周回又は1周回してなる構成としている。
【0010】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかのダウンザホールハンマー用ビットB1〜B3において、丸軸部20の軸線方向Oに対する各螺旋凸条部3の螺旋傾斜角度θが20〜60°である構成としている。
【0011】
請求項5の発明は、上記請求項1〜4のいずれかのダウンザホールハンマー用ビットB1〜B3において、各螺旋凸条部3の破砕面3aの仰角αが30〜60°である構成としている。
【発明の効果】
【0013】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明に係るダウンザホールハンマー用ビットB1〜B3は、従来のハンマービット6と同様にスプライン軸部1をダウンザホールハンマーのハンマーケーシング51の下部側にスプライン係合によって軸方向移動可能に挿嵌保持させる。このビットB1〜B3を装着したダウンザホールハンマーは、地盤の削孔に際し、掘削機のスクリュー軸等のオーガ軸に連結し、該オーガ軸と一体に回転させながら、ピストン52の往復動によって該ビットB1〜B3の頂端を打撃することで、そのビッド部2の回転打撃作用によって地盤を破砕及び削りながら掘削してゆくが、該ビッド部2は丸軸部20を下端側から上方へ側方突出量を増しつつ巻回する複数本の螺旋凸条部3を備え、その各螺旋凸条部3の全長にわたって連続する外側斜め下向きの破砕面3aと丸軸部20の下端面20aとに多数の小突起4が設けられているから、該螺旋凸条部3の破砕面3aと丸軸部20の下端面20aとをビット面として削孔してゆくことになる。なお、ダウンザホールハンマーの回転は螺旋凸条部3の先端側への進行方向とする。
【0014】
しかして、削孔対象の地盤が粘性度の高い地質である場合や、粘性度の高い地質と硬い地質が併存する場合、ビット面の小突起4・・・間に粘性度の高いスライムが入り込むが、螺旋凸条部3の破砕面3aは外側斜め下向きで且つ螺旋方向に傾斜しているから、該スライムが破砕面3aに固着することなく傾斜誘導によって連続的に上方側へ移動してゆくことになり、もって該破砕面3aでは目詰まりを生じない。また、丸軸部20の下端面20aでは、平坦であれば、小突起4・・・間に粘性度の高いスライムが付着するが、ビット面に占める面積が小さいことに加え、該ビット面の中心に位置してピストン52による打撃圧が集中するから、スライムの付着物は圧密化して固着することなく打撃の反復によって周辺側へ押し出されてゆくことになり、やはり目詰まりが回避される。加えて、このビットB1〜B3では、螺旋凸条部3を有するビット部2の回転によってスクリュー掘進作用も発揮される。従って、このビットB1〜B3を装着したダウンザホールハンマーによれば、削孔対象の地盤が粘性度の高い地質であったり、粘性度の高い地質と硬い地質が併存していても、高い掘削能率で非常に効率よく削孔できる。
又、本発明によれば、ビットB1〜B3は、各螺旋凸条部3の全長にわたる垂直側面3bによる方向ガイド作用と、丸軸部20の下端側の下方突出による求心作用とが相俟って、削孔の直進性が精度よく確保される。
【0015】
請求項2の発明によれば、ビットB1〜B3の各螺旋凸条部3が丸軸部20の外周を特定周回する長さに設定されているから、地盤に対する打圧力と回転擦過力をバランスよく発揮して高い削孔効率が得られる。
【0016】
請求項3の発明によれば、ビットB1〜B3は、2本の螺旋凸条部3が相互に径方向両側に対向する形で丸軸部20を各々0.5周回又は1周回する構成であるから、地盤に対する打圧力と回転擦過力をバランスよく発揮して高い削孔効率が得られることに加え、構造的に簡素で安価に製作できるという利点がある。
【0017】
請求項4の発明によれば、ビットB1〜B3の各螺旋凸条部3の螺旋傾斜角度θを特定範囲に設定していることから、該螺旋凸条部3による打圧力及び回転擦過力とスクリュー掘進作用を充分に発揮して、且つ確実な目詰まり防止効果が得られる。
【0018】
請求項5の発明によれば、ビットB1〜B3の各螺旋凸条部3における破砕面3aの仰角αを特定範囲に設定していることから、該破砕面3aによる打圧力及び回転擦過力を充分に発揮して、且つ確実な目詰まり防止効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係るダウンザホールハンマー用ビットを示し、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
図2】同ダウンザホールハンマー用ビットの図1(b)におけるX−X線の矢視断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るダウンザホールハンマー用ビットを示し、(a)は側面図、(b)は要部の縦断面図である。
図4】本発明の第3実施形態に係るダウンザホールハンマー用ビットを示し、(a)は側面図、(b)は要部の縦断面図である。
図5】ダウンザホールハンマーの従来例を示し、(a)はハンマー全体の一部破断斜視図、(b)はハンマービットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係るダウンザホールハンマー用ビットの実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、第1〜第3実施形態のビットB1〜B3において、共通する構成部分については、重複説明を避けるために同一符号を附している。
【0022】
図1(a)〜(c)及び図2に示すように、第1実施形態のダウンザホールハンマー用ビットB1は、上部側のスプライン軸部1と、下部側のビット部2とが一体化されてなる。そのスプライン軸部1は、頂端を例えば図5(a)で示すダウンザホールハンマーのピストン52による打撃面10とし、周面にはハンマーケーシング51の下端のエンドキャップ55の内側にスプライン係合させるためのスプライン11が形成されており、このスプライン11より上位側にやや径小のネック部12を有している。
【0023】
ビット部2は、スプライン軸部1と同心の丸軸部20の外周面に、相互に径方向両側に対向する形で螺旋方向に巻回する2本の螺旋凸条部3が形成され、丸軸部20の径小になった下端側が中心突軸部21として両螺旋凸条部3,3の下端よりも下方に突出している。その各螺旋凸条部3は、下端側から上方へ側方突出量を増しつつ丸軸部20を1/2周回し、その最大側方突出量の上端が丸軸部20の上端側に設けたフランジ部22と同じ高さに達しており、各々全長にわたって連続する、外側斜め下向きの破砕面3aと、該破砕面3aの上縁から立ち上がる垂直側面3bと、該垂直側面3bの上縁から半径方向に沿って丸軸20の表面に至る上面3cとを備えている。なお、垂直側面3bは全長にわたって同幅であるが、破砕面3aは螺旋凸条部3の下端側から上方への側方突出量の増大に伴って上部ほど広幅になっている。
【0024】
そして、各螺旋凸条部3の破砕面3aと、丸軸部20の中心突軸部21の下面とに、多数の半球形の小突起4が設けてある。これら小突起4は、基材に植設したピンの頭部を突出させた所謂ボタンビットであって、基材側が一般的な鉄鋼材からなるのに対し、超硬合金等の超硬質材より構成されている。
【0025】
また、丸軸部20の下端側の中心突軸部21の上位側、ならびに上端側のフランジ部22の下位側には、中間部との径差分に対応して外側斜め下向きの環状斜面部20b,20cが構成されている。そして、中心突軸部21の下面20aと下側の環状斜面部20bには、螺旋凸条部3の破砕面3aと同様の多数の半球形の小突起4が設けてある。
【0026】
更に、このビットB1には、図2に示すように、頂端の打撃面10の中央から軸線方向Oに沿って下端近傍に至るエア通路7と、該エア通路7の奥端から分岐して中心突軸部21の下面20aの一箇所ならびに環状斜面部20bの二箇所に開口するエア吐出孔71,72とが設けてある。
【0027】
図3(a)(b)に示す第2実施形態のダウンザホールハンマー用ビットB2では、上部側のスプライン軸部1は上記第1実施形態のビットB1と同様であるが、ビット部2の2本の螺旋凸条部3が各々丸軸部20の外周面を螺旋方向に1周回する長さに設定されている。そして、各螺旋凸条部3は第1実施形態と同様に外側斜め下向きの破砕面3a、垂直側面3b、上面3cを備えており、両螺旋凸条部3,3が相互に径方向両側に対向する形で下端側から上方へ側方突出量を増しているが、その最大側方突出量の上端が丸軸部20の上端側のフランジ部22の下縁位置にある。また、丸軸部20は、下端側が縮径せずに中心突軸部21として両螺旋凸条部3,3の下端よりも下方に突出すると共に、上端側のフランジ部22と中間部との間が径差分の段部になっている。
【0028】
この第2実施形態のビットB2においても、各螺旋凸条部3の破砕面3aと、丸軸部20の中心突軸部21の下端面とに、既述同様の小突起4が多数設けられると共に、頂端の打撃面10の中央から軸線方向Oに沿って下端近傍に至るエア通路7を有している。そして、該エア通路7の奥端から分岐した3本中、1本のエア吐出孔71が中心突軸部21の下面20aに開口し、2本のエア吐出孔72が各々螺旋凸条部3の下端部で破砕面3aに開口している。
【0029】
図4(a)(b)に示す第3実施形態のダウンザホールハンマー用ビットB3では、上部側のスプライン軸部1は上記第1及び第2実施形態のビットB1,B2と同様であり、またビット部2も2本の螺旋凸条部3,3が相互に径方向両側に対向する形で各々下端側から上方へ側方突出量を増しつつ丸軸部20を1周回しているが、各螺旋凸条部3の外側斜め下向きの破砕面3aが全長にわたって同幅に設定されている点で第2実施形態のビットB2とは異なっている。すなわち、各螺旋凸条部3は、外側斜め下向きの破砕面3a、垂直側面3b、上面3cに加えて、破砕面3aが全長にわたって同幅であるため、該破砕面3aの下縁と丸軸部20の外周面との間で、下端側から上方への側方突出量の増大に対応して幅を増す下面3dを備えており、この下面3dと上面3cとが平行している。
【0030】
これら第1〜第3実施形態のダウンザホールハンマー用ビットB1〜B3は、地盤の削孔に際し、図5(a)(b)で示す従来のハンマービット6と同様に、スプライン軸部1をダウンザホールハンマーのハンマーケーシング51の下部側にスプライン係合によって軸方向移動可能に挿嵌保持させる。このビットB1〜B3を装着したダウンザホールハンマーは、地盤の削孔に際し、掘削機のスクリュー軸等のオーガ軸に連結し、該オーガ軸と一体に螺旋凸条部3の先端側への進行方向へ回転させながら、ピストン52の往復動によって該ビットB1〜B3の頂端を打撃することで、そのビッド部2の回転打撃作用によって削孔してゆくが、該螺旋凸条部3の破砕面3aと丸軸部20の下端面20a(ビットB1では環状斜面部20bを含む)とが地盤を破砕及び削りながら掘削するビット面として機能する。なお、ダウンザホールハンマーのピストン52を動作させた圧縮エアーは、ビットB1〜B3のエア通路7を通ってエア吐出孔71,72より噴出し、発生するスライムを掘削孔外へ排出するのに寄与する。
【0031】
しかして、削孔対象の地盤が粘性度の高い地質である場合や、粘性度の高い地質と硬い地質が併存する場合、粘性度の高い地質の削孔過程において、ビット面の小突起4・・・間に粘性度の高いスライムが入り込むが、螺旋凸条部3の破砕面3aは外側斜め下向きで且つ螺旋方向に傾斜しているから、該スライムが破砕面3aに固着することなく傾斜誘導によって連続的に上方側へ移動してゆくことになり、もって該破砕面3aでは目詰まりを生じない。また、丸軸部20の下端面20aでは、小突起4・・・間に粘性度の高いスライムが付着するが、ビット面に占める面積が小さいことに加え、該ビット面の中心に位置してピストン52による打撃圧が集中するから、スライムの付着物は圧密化して固着することなく打撃の反復によって周辺側へ押し出されてゆくことになり、やはり目詰まりが回避される。しかも、この削孔においては、螺旋凸条部3を有するビット部2の回転によるスクリュー掘進作用も発揮される。従って、これらビットB1〜B3を装着したダウンザホールハンマーによれば、削孔対象の地盤が粘性度の高い地質であったり、粘性度の高い地質と硬い地質が併存していても、高い掘削能率で非常に効率よく削孔できる。
【0032】
なお、第1〜第3実施形態ではいずれもビット部2が2本の螺旋凸条部3,3を備えるビットB1〜B3を例示したが、本発明のダウンザホールハンマー用ビットは3本以上の螺旋凸条部3を備えるものでもよい。また、ビット部2における各螺旋凸条部3の長さは、特に制約されないが、削孔効率を高める上で丸軸部20の外周を0.3〜2周回する長さが好適であり、短過ぎては地盤に対する回転擦過力が不充分となり、逆に長過ぎてはの地盤に対する単位面積当りの打圧力が不充分になる。とりわけ、第1〜第3実施形態のビットB1〜B3のように、2本の螺旋凸条部3,3が相互に径方向両側に対向する形で丸軸部20を各々0.5周回又は1周回する構成とすれば、地盤に対する打圧力と回転擦過力が非常にバランスよく発揮されて高い削孔効率が得られることに加え、構造的に簡素で安価に製作できるという利点がある。
【0033】
丸軸部20の軸線方向Oに対する各螺旋凸条部3の螺旋傾斜角度θ〔図1(a)で代表して示す〕は、特に制約されないが、20〜60°の範囲が推奨される。この螺旋傾斜角度θが小さ過ぎては、粘性度の高い地質の削孔過程において、破砕面3aの小突起4・・・間に入り込むスライムに対する傾斜誘導作用が不充分になるため、目詰まりを生じ易くなる。逆に該螺旋傾斜角度θが大き過ぎては、地盤に対する打圧力及びスクリュー掘進作用が弱くなり、掘削効率が低下する。また、各螺旋凸条部3の破砕面3aの仰角α(図2で代表して示す)は、特に制約されないが、30〜60°の範囲が好適であり、螺旋傾斜角度θと同様に、小さ過ぎては粘性度の高い地質の削孔時に目詰まりを生じ易くなり、逆に大き過ぎては地盤に対する打圧力不足で削孔効率が低下する。一方、各螺旋凸条部3の下端から上端までの側方突出量の増大度合は、図1(b)で代表して示す下端半径r1に対する上端半径r2の比率r2/r1が1.3〜2.0程度になる範囲が好適であり、少な過ぎても多過ぎても螺旋掘進作用が低下する。
【0034】
更に、本発明のダウンザホールハンマー用ビットとしては、第1〜第3実施形態のビットB1〜B3のような各螺旋凸条部3の垂直側面3b及び中心突軸部21の一方又は両方を有しない構成を包含する。しかるに、螺旋凸条部3の垂直側面3b及び中心突軸部21を備えることにより、該垂直側面3bによる方向ガイド作用と、丸軸部20の下端側の下方突出による求心作用とが相俟って、削孔の直進性が精度よく確保されるという利点がある。なお、ビット部2の丸軸部20の下端面20aは、第1〜第3実施形態では平坦になっているが、該下端面20aの目詰まりをより確実に防止する目的で、例えば球面状や鈍角円錐状等の凸面状にしてもよい。
【0035】
その他、本発明のダウンザホールハンマー用ビットは、スプライン軸部1のスプライン11の密度と深さ及び長さ、頂端からスプライン11の上端までの間の軸形状及び長さ、ビット部2における丸軸部20の軸方向形状等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。また、本発明のダウンザホールハンマー用ビットを適用するダウンザホールハンマーとしては、図5(a)で例示したものに限らず、スプライン軸部1をスプライン係合によって軸方向移動可能に挿嵌保持できるものであればよい。
【符号の説明】
【0036】
1 スプライン軸部
10 打撃面
11 スプライン
2 ビット部
20 丸軸部
20a 下端面
21 中心突軸部(丸軸部の下端側)
3 螺旋凸条部
3a 破砕面
3b 垂直側面
4 小突起
51 ダウンザホールハンマーのハンマーケーシング
B1〜B3 ダウンザホールハンマー用ビット
θ 螺旋傾斜角度
α 仰角
【要約】
【課題】ダウンザホールハンマー用ビットとして、粘性度の高い地質の地盤や、粘性度の高い地質と硬い地質が併存する地盤を削孔対象としても、ビット部の目詰まりを生じす、高い掘削能率で非常に効率よく削孔できるものを提供する。
【解決手段】ダウンザホールハンマーのハンマーケーシング51の下部側にスプライン嵌合によって軸方向移動可能に挿嵌保持させるスプライン軸部1と、該スプライン軸部1の下部側に一体形成されたビット部2とを備え、ビット部2は、スプライン軸部1と同心の丸軸部20の外周に、下端側から上方へ側方突出量を増しつつ螺旋方向に巻回する複数本の螺旋凸条部3が形成され、各螺旋凸条部3が全長にわたって連続する外側斜め下向きの破砕面3aを有し、破砕面3aと丸軸部20の下端面20aとに多数の小突起4が設けられてなる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5