特許第5994037号(P5994037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5994037
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】キャスト塗工紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/36 20060101AFI20160908BHJP
   G03G 7/00 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   D21H19/36 A
   G03G7/00 101B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-111351(P2016-111351)
(22)【出願日】2016年6月2日
【審査請求日】2016年6月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397028979
【氏名又は名称】五條製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】川口 五十一
(72)【発明者】
【氏名】川口 幸一郎
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−148700(JP,A)
【文献】 特開2006−126631(JP,A)
【文献】 特開2015−098666(JP,A)
【文献】 特開2013−163322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00−1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00−9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00−7/00
G03G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体に顔料及び接着剤を主成分とする塗工液を塗工してキャスト塗工紙を製造する方法において、
塗工液を塗布して得られた湿潤状態の塗工層を、水系ポリオレフィン樹脂を含む凝固液によりゲル化させ、次いで加熱ドラムに圧接乾燥させて仕上げる工程を有するか、
または、支持体に塗工液を塗工し一旦乾燥させ、水系ポリオレフィン樹脂を含む再湿潤液により可塑化させ加熱ドラムに圧接乾燥させて仕上げる工程を有する、
湿式電子写真用キャスト塗工紙の製造方法。
【請求項2】
前記キャスト塗工紙の表層中に、水系ポリオレフィン樹脂が固形分で0.1〜1.0g/mとなるように凝固液又は再湿潤液により処理される請求項1に記載の湿式電子写真用キャスト塗工紙の製造方法。
【請求項3】
前記キャスト塗工紙を製造する工程において、凝固液及び再湿潤液中にポリエチレン離型剤を固形分で、0.1〜1.0重量%含む請求項1又は2に記載の湿式電子写真用キャスト塗工紙の製造方法。
【請求項4】
前記支持体の坪量が70〜400g/mである請求項1〜3のいずれかに記載の湿式電子写真用キャスト塗工紙の製造方法。
【請求項5】
支持体に顔料及び接着剤を主成分とする塗工液を塗布して得られた湿潤状態の塗工層を、水系ポリオレフィン樹脂を含む凝固液によりゲル化させ、次いで加熱ドラムに圧接乾燥させて仕上げる工程を有して得られたか、
または、支持体に該塗工液を塗工し一旦乾燥させ、水系ポリオレフィン樹脂を含む再湿潤液により可塑化させ加熱ドラムに圧接乾燥させて仕上げる工程を有して得られた、
支持体とその表面にキャスト塗工層を有し、
キャスト塗工層は水系ポリオレフィン樹脂を含有する湿式電子写真用キャスト塗工紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスト塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式は、複写機やPCの印刷等に採用されていたが、近年は高精細化やカラー化によってオフセット印刷の校正や少部数のためのオンデマンド印刷に利用されるようになった。その中でも湿式電子写真方式は、オフセット印刷方式に近い画質が得られ印刷市場で注目を集めている。
湿式電子写真方式は、スコロトロン等でのコロナ帯電やチャージローラー等で帯電させた感光体ロールを、レーザー光でディスチャージさせ形成した静電画像にトナーが吸着し、次いで該トナーがブランケット胴と称する転写ロールに電位的に転写されそのロール上で加熱乾燥されたトナーインキ皮膜が用紙に加圧転写されて印刷を行う方式である。
電子写真である点においては、乾式電子写真もよく知られている。乾式電子写真方式によれば、通常のキャスト紙を使用しても、紙の表面に十分な密着強度でトナーを密着させることができる。
しかしながら、湿式電子写真による印刷方式はインキ皮膜をブランケット胴から用紙に転移させる意味では、オフセット印刷に近く、トナー粒子も細かいために印刷画質は良く優れた印刷方式である。このとき、従来の印刷用塗工紙を用いるとトナーと紙との密着が弱いためにトナーの紙への転移が十分でなく、転移しても弱い摩擦力や引っ掻き等により画像が簡単に剥離してしまう問題があった。
【0003】
液体トナーの密着性を向上させる方法として、塗工用紙にサファイアコートと称するポリエチレンイミンが主たる薬品を塗工する一般的な処理方法、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂やアイオノマー樹脂を塗工する方法(特許文献1、2)、エチレン・メタクリル酸樹脂を塗工する方法(特許文献3)、さらに水分散性ポリエステル樹脂を塗工する方法(特許文献4)が提案されている。
しかしながらこれらの方法は、塗工用紙の製造とは別ラインで塗工するため、製造コストが高い。キャストコート紙に関しては、特許文献5に、キャスト塗工層に亜鉛化合物を加え、キャスト表面の接触角を規定して用紙塗工生産ライン上でトナーの密着を向上させる用紙が提案されているが、印刷後24時間経過後のトナー密着性であって、印刷直後の密着性は劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3554433号公報
【特許文献2】特許第5580938号公報
【特許文献3】特開2007−133166号公報
【特許文献4】特開2003−270836号公報
【特許文献5】特開2013−148700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明によれば、液体トナーの紙への密着が優れた湿式電子写真方式で使用するキャスト塗工紙を得ることができ、印刷直後に速やかに印刷されたキャスト塗工紙を重ねることができ、あるいは箔押しやフィルムラミネート等の後加工を行うことができる。加えて、特に平滑で高光沢なキャスト塗工紙を安価に生産することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
キャスト塗工紙の製造方法として、顔料と接着剤を主成分とする塗工液を支持体に塗工した後、直ちに鏡面仕上げした加熱ドラムに圧接乾燥させて光沢仕上げをするウェット法(ダイレクト法ともいう)、塗工液を塗工後、湿潤状態の塗工層を凝固液によりゲル化させ加熱ドラム面に圧接乾燥させて仕上げる凝固法(ゲル化法ともいう)、湿潤状態の塗工層を一旦乾燥させ再湿潤液によって可塑化させた後、加熱ドラムに圧接乾燥させ仕上げる再湿法(リウェット法ともいう)が知られている。それら製法の中でも生産性や光沢面感に優れた凝固法や再湿法が一般的である。
本発明者らは、当初キャスト塗工液の配合材料に液体トナーの密着性を向上させる顔料や薬品を検討したが、ある程度の密着性は上がるものの印刷直後の密着性に十分満足のいく結果が得られなかった。印刷直後のトナーの密着性が十分なレベルにまでキャスト塗工液中に水系ポリオレフィン樹脂を配合した場合には、キャスト紙のキャスト面感が悪化してしまった。
そこで、キャスト塗工方式の特徴である凝固液や再湿潤液に注目した結果、凝固液又は再湿潤液に水系ポリオレフィン樹脂を含有させることにより、キャスト面感に優れ、かつ印刷直後でも液体トナーと十分な密着性が発揮でき、印刷直後に速やかに印刷されたキャスト塗工紙を重ねることができ、あるいは箔押しやフィルムラミネート等の後加工を行うことができた。同時に新たな工程を増やすことなく、経済的に優れた湿式電子写真用キャスト塗工紙を得る方法を見出した。
本発明においては、両面をキャスト処理した光沢面とした両面キャスト塗工紙又は一方の面をキャスト処理した光沢面とし、他方の面にはキャスト処理せず、顔料とバインダーからなる層を設けたキャスト塗工紙とすることができる。
【0007】
このため、上記の課題を解決するための本発明は以下の通りである。
1.支持体に顔料及び接着剤を主成分とする塗工液を塗工してキャスト塗工紙を製造する方法において、
塗工液を塗布して得られた湿潤状態の塗工層を、水系ポリオレフィン樹脂を含む凝固液によりゲル化させ、次いで加熱ドラムに圧接乾燥させて仕上げる工程を有するか、
または、支持体に塗工液を塗工し一旦乾燥させ、水系ポリオレフィン樹脂を含む再湿潤液により可塑化させ加熱ドラムに圧接乾燥させて仕上げる工程を有する、
湿式電子写真用キャスト塗工紙の製造方法。
2.前記キャスト塗工表層中に、水系ポリオレフィン樹脂が固形分で0.1〜1.0g/mとなるように凝固液又は再湿潤液により処理される1に記載の湿式電子写真用キャスト塗工紙の製造方法。
3.前記キャスト塗工紙を製造する工程において、凝固液及び再湿潤液中にポリエチレン離型剤を固形分で、0.1〜1.0重量%含む1又は2に記載の湿式電子写真用キャスト塗工紙の製造方法。
4.前記支持体の坪量が70〜400g/mである1〜3のいずれかに記載の湿式電子写真用キャスト塗工紙の製造方法。
5.支持体とその表面にキャスト塗工層を有し、キャスト塗工層は水系ポリオレフィン樹脂を含有する湿式電子写真用キャスト塗工紙。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、湿式電子写真用キャスト塗工紙をよりトナーの転移・定着を確実に行うことができ、かつ、キャスト塗工紙を製造する工程の下流において連続して凝固法(ゲル化法)及び再湿法による工程を設けておき、それらの工程において、同時に水系ポリオレフィン樹脂による処理も行うものである。その結果、印刷直後に速やかに印刷されたキャスト塗工紙を重ねることができ、あるいは箔押しやフィルムラミネート等の後加工を行うことができる。
さらに、一旦キャスト層を形成させた後に、キャスト塗工紙を得るための生産ラインとは別の生産ラインにおいて、塗工紙にポリエチレンイミン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂やアイオノマー樹脂、エチレン・メタクリル酸樹脂、及び水分散性ポリエステル樹脂を塗工等を行う必要がないので、トナーに対して十分な密着性を備えた湿式電子写真用のキャスト塗工紙を安価に製造できるという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明におけるキャスト塗工紙は、
a.顔料及び接着剤を主成分とする塗工液を支持体の表面に塗工してキャスト塗工層を設け、該キャスト塗工層が湿潤状態のうちに凝固液によりゲル化させ、次いで加熱ドラムに圧接乾燥させて仕上げる方法により得られるもの。
b.顔料及び接着剤を主成分とする塗工液を支持体の表面に塗布し、これを一旦乾燥させた後、再湿潤液により可塑化させ、次いで加熱ドラムに圧接乾燥させて仕上げる方法により得られるもの。
そして上記aにおける凝固液に水系ポリオレフィン樹脂を含有させ、又はbにおける再湿潤液に水系ポリオレフィン樹脂を含有させるものである。
【0010】
(支持体)
本発明における支持体としては、キャスト塗工紙として使用される紙のための支持体であれば良く、キャスト塗工紙用の紙を採用できる。
紙としては、離解機又は叩解機によりスラリー化された原料パルプを公知の湿式抄紙機で単層又は多層に抄紙した紙又は板紙を使用することができる。原紙の原料パルプとしては、透気性を有する公知のパルプを選択することができる。例えば、広葉樹材又は針葉樹材を蒸解して得られる未さらしパルプ、広葉樹さらしクラフトパルプ(LBKP)、針葉樹さらしクラフトパルプ(NBKP)などの化学パルプ、グランドパルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナー砕木パルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、ケミグランドパルプ(CGP)などの機械パルプ、脱墨古紙パルプなどの古紙パルプが挙げられる。これらの原料パルプから適宜選択したパルプを単独又は2種以上を混合して使用することができる。本発明においては、例えば、全パルプ中、広葉樹さらしクラフトパルプ(LBKP)を70質量%以上、例えば、75〜98質量%含むことができる。
そして紙には必要に応じて公知の填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤などの各種添加剤を1種以上用いて混合することができる。填料は、例えば、白土、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、非晶質シリカ、二酸化チタンである。サイズ剤は、例えば、ロジンサイズ、カチオン化澱粉、カチオン化ポリアクリルアマイド、アルキルケテンダイマーである。歩留まり向上剤は、例えば、硫酸バンドである。紙力増強剤は、例えば、カチオン化澱粉、両性澱粉、ポリアクリルアマイドである。
【0011】
紙の抄紙方法は特に限定されるものではなく、トップワイヤー等を含む長網マシン、円網マシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ性抄紙方式で抄紙した原紙のいずれであってもよい。本発明においては、メカニカルパルプを含む中質原紙も使用することができることは当然である。さらに表面強度やサイズ性の向上を目的として、原紙に水溶性高分子を主成分とする表面処理剤を塗布してもよい。水溶性高分子としては、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酵素変性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の、表面処理剤として通常使用されるものを、単独であるいは混合して使用することができる。また、表面処理剤の中には、水溶性高分子のほかに、耐水化や表面強度向上を目的とした紙力増強剤、サイズ性付与を目的とした外添サイズ剤等を添加することができる。
【0012】
(塗工液)
キャスト塗工層は、単層又は複数の層から構成され得る。
キャスト塗工層を形成するための塗工液としては、例えば、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料と、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、および、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体などの合成系接着剤、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;酸化澱粉、可溶性澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉類;カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体など、通常の塗工紙に使用される接着剤うちの1種類以上を含有させて使用する。
これらの接着剤は無機顔料100重量部あたり5〜50重量部、より好ましくは5〜30重量部程度の範囲で使用される。
【0013】
またこのような塗工液に、プラスチックピグメント、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、第一リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、リン酸カルシウム、ポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、モノクロル酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、アジピン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の無機酸や有機酸のアンモニウム塩、及びその金属塩類、メチルアミン、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン、ジイソプロピルアミン等の各種添加剤を適宜使用することができる。さらに、助剤として、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、着色剤、離型剤、流動変性剤、耐水化剤、防腐剤、印刷適性向上剤等の、通常の塗工紙用塗料組成物に配合される各種助剤が、必要に応じて適宜使用される。
【0014】
キャスト塗工紙表面の電気特性を適切に調整するために、本発明においては、導電剤を、顔料100重量部に対して0.1〜1.0重量部配合することができる。本発明で用いることができる導電剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、アルミン酸ソーダ、リン酸ナトリウム等の無機塩、ギ酸カリウム、臭酸ナトリウム等の有機酸塩、石鹸、リン酸塩、カルボン酸塩等の界面活性剤、4級アンモニウム塩、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸等の高分子電解質、及び、シリカ、アルミナ等の無機導電性物質等を挙げることができる。本発明においては、特に塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩を用いることが好ましい。また、上記無機塩は、支持体を作成する際にサイズプレス等を用いても良い。
【0015】
(キャスト塗工層の製造)
紙へのキャストの塗工を公知の塗工機、例えばディップコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーターなどから選ばれた塗工機を用いることができる。また、塗工は、1回又は複数回に分けて行うことができる。キャスト塗工液の固形分濃度は、30〜70質量%とすることが好ましいが、塗工機の種類、塗工速度などの各塗工条件に応じて適宜調節する。
キャスト塗工液の塗工量は、5.0〜50g/mであることが好ましく、より好ましくは10〜30g/mである。5.0g/m未満では所望する光沢度が得られない場合があり、50g/mを超えると、キャスト塗工液を過剰に使用することとなり不経済である。また乾燥時間が長くなるため生産性が低下するおそれがある。さらに、品質面でもインク乾燥性が遅くなるなどの弊害が発生する場合がある。
【0016】
(キャスト塗工層の処理)
上記の工程により得たキャスト塗工層に対して、凝固液を接触させてゲル化する凝固法、又は、一旦キャスト層を乾燥させた後に、再度湿潤させる再湿法によって、キャスト塗工層を処理する。
このとき、凝固法及び再湿法共に、キャスト塗工紙を製造する工程の下流において連続してそれらの工程を設けることができ、一旦キャスト層を形成させた後に、キャスト塗工紙を得るための生産ラインとは別の生産ラインにおいて、塗工用紙にポリエチレンイミン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂やアイオノマー樹脂、エチレン・メタクリル酸樹脂、及び水分散性ポリエステル樹脂を塗工する等を行う必要がない。
【0017】
(凝固液によるゲル化処理)
本発明におけるゲル化法にて使用される凝固液としては、凝固剤と共に水系ポリオレフィン樹脂を含有することが必要であり、この水系ポリオレフィン樹脂を含有させることによって、液体トナーをより確実に紙に密着させることができる。
このような水系ポリオレフィン樹脂は、水性媒体に分散や懸濁される性質を有することが必要である。このような性質を有しない場合には、ゲル化処理と共に塗工層中に水系ポリオレフィン樹脂を含有させることが困難となる。
水系ポリオレフィン樹脂としては、極性基を有するエチレン・プロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン系アイオノマー、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等を採用でき、水溶液、水性分散液、水性エマルジョンの形態で存在できるものである。中でも、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体、それにナトリウムや亜鉛などの金属のイオンで分子間結合したエチレン系アイオノマー樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体が液体トナーの密着効果に優れ、かつその後の後加工等に速やかに移行できるため好ましい。
但し、水系ポリオレフィン樹脂としてはいわゆるポリエチレンワックスのように、極性基を有しないエチレンやプロピレン等のアルキレンのホモポリマーやコポリマーを包含しない。
また、上記水系ポリオレフィン樹脂を選定する上で、凝固剤とイオン性が同じもの、かつキャスト面感を良くする上で、キャスト圧接乾燥温度以上の最低造膜温度(MFT)を有するものが望ましい。
使用される凝固液に含有される凝固剤としては、塗工液のバインダーによっても異なるが、エポキシ系凝固剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系凝固剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系凝固剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、ギ酸、ホウ酸およびその塩、ホウ砂、アルミみょうばん等が挙げられる。なお、水系ポリオレフィン樹脂とギ酸カルシウムを含有する凝固液を使用することもできる。
例えば、塗工層のバインダーがポリビニルアルコールであれば、ホウ酸又はエポキシ系凝固剤を使用することが好ましい。
このとき、凝固液中の上記水系ポリオレフィン樹脂として、離型剤として作用させる、例えばポリエチレンワックスエマルジョンはトナーの密着性向上の点における効果は無い。ただし、このようなポリエチレン離型剤を0.1〜1.0重量%含有できる。このポリエチレンワックスエマルジョンのような離型剤とは異なる、凝固液中の水系ポリオレフィン樹脂の固形分の含有量としては、0.1〜5.0重量%、好ましくは0.3〜3.0重量%、さらに好ましくは0.5〜2.0重量%であって、決して離型剤として使用するものではない。そして得られたキャスト塗工紙の表層中には水系ポリオレフィン樹脂を固形分で0.1〜1.0g/m含有する。
【0018】
また、例えば塗工層のバインダーがゼラチンである場合には、ゼラチンの凝固剤として知られている下記化合物を用いることができる。例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物、ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−s−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物、ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン等の活性ビニル化合物、ジメチロール尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物、米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物、米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物、グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物、ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物、2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物、ギ酸、クロムみょうばん、カリみょうばん、硫酸ジルコニウム、酢酸クロム等である。なお、上記凝固剤は、一種単独でも、2種以上を組み合わせてもよい。
なお、水系ポリオレフィン樹脂とギ酸カルシウムを含有する凝固液を使用することもできる。
【0019】
凝固液を構成する溶媒としては、一般に水が使用され、該水と混和性を有する有機溶媒を含む水系混合溶媒であってもよい。該有機溶剤としては、凝固液の固形分が溶解するものであれば任意に使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;トルエン等の芳香族溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル、およびジクロロメタン等のハロゲン化炭素系溶剤;等を挙げることができる。
【0020】
凝固液をキャスト塗工層上に塗布する方法としては、公知の塗工機、例えばディップコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーターなどから選ばれた塗工機を用いることができる。
キャストシリンダーによる圧接乾燥後、引き続きマシンキャレンダー、スーパーキャレンダーなどによって平滑化処理が行うことができるが、嵩高さ、剛度などのキャストコート紙の特長を著しく損なうような過度の処理は避ける必要がある。
【0021】
(再湿潤液による処理)
本発明において使用する再湿潤液は、上記凝固液にて使用できる水系ポリオレフィン樹脂と同様の水系ポリオレフィン樹脂を含有し、それにより、液体トナーをより確実に紙に密着させることができ、かつその後の後加工等に速やかに移行することができる。
但し、水系ポリオレフィン樹脂としてはいわゆるポリエチレンワックスを包含しない。さらに、必要に応じて、潤滑剤、ギ酸、ヘキサメタリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸などを有し、さらに脂肪酸石鹸、ステアリン酸カルシウム、マイクロクリスタリンワックス、界面活性剤、ロート油等の離型剤を0.01〜3重量%程度含有した水溶液やエマルジョン等が用いられる。また、アルカリやヘキサメタリン酸ソーダ等のリン酸塩、尿素、有機酸などを、乾燥塗工層の可塑化を促進させるために併用することも可能である。
なお、水系ポリオレフィン樹脂とヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する再湿潤液とすることもできる。
このとき、再湿潤液中の上記水系ポリオレフィン樹脂としては、上記凝固液によるゲル化処理において使用できる水系ポリオレフィン樹脂を使用できるが、これらの水系ポリオレフィン樹脂として、離型剤として作用させる例えばポリエチレンワックスエマルジョンはトナーの密着性向上の点における効果は無い。ただし、このようなポリエチレン離型剤を0.1〜1.0重量%含有できる。このポリエチレンワックスエマルジョンのような離型剤とは異なる、再湿潤液中の水系ポリオレフィン樹脂の固形分の含有量としては、0.1〜5.0重量%、好ましくは0.3〜3.0重量%、さらに好ましくは0.5〜2.0重量%であって、決して離型剤として使用するものではない。そして得られたキャスト塗工紙の表層中には水系ポリオレフィン樹脂を固形分で0.1〜1.0g/m含有する。
【0022】
再湿潤液をキャスト塗工層上に塗布する方法としては、公知の塗工機、例えばディップコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーターなどから選ばれた塗工機を用いることができる。
キャストシリンダーによる圧接乾燥後、引き続きマシンキャレンダー、スーパーキャレンダーなどによって平滑化処理が行うことができるが、嵩高さ、剛度などのキャストコート紙の特長を著しく損なうような過度の処理は避ける必要がある。
【0023】
このようにして得られるキャスト塗工層の塗布量には特に制限はないが、一般に5.0〜50g/mである。また、キャスト塗工層の光沢感を増し、画像品位を向上させるために、キャスト塗工層表面のベック平滑度を600秒以上にする。ベック平滑度が600秒以上であると、平滑度が上がり、発色むらが少なくなる。さらに、画像に光沢感が出ることにより、非常に高品位な画像を得ることが出来る。ベック平滑度が600秒未満であると、光沢感が劣るだけでなく、原紙の微小凹凸による印画ヌケ等が発生し、画像品位の低下を招く。
【実施例】
【0024】
(使用したキャスト塗工液)
実施例及び比較例にて使用したキャスト塗工液(固形分含量43重量%)の組成は以下の通り。このキャスト塗工液には、顔料(カオリン、2種の炭酸カルシウム及び酸化チタン)を合計で100重量部含有し、この顔料100重量部あたり、下記分散剤から消泡剤までの各成分を配合している。
(重量部)
カオリン(アストラコート、(株)イメリスミネラルズ・ジャパン) 55部
炭酸カルシウム(カービタル90、(株)イメリスミネラルズ・ジャパン) 20部
炭酸カルシウム(ブリリアントS-15、白石工業(株)) 20部
酸化チタン(TA-100、富士チタン(株)) 5部
分散剤(アロンT-50、東亜合成(株)) 0.1部
カゼイン(ニュージーランド、Fonterra社) 8部
ラテックス(L-1387,旭化成(株)) 15部
離型剤(PEM17、ポリエチレンワックス、サンノプコ(株)) 2部
潤滑剤(SN-287、サンノプコ(株)) 1部
消泡剤(SNデフォーマー、サンノプコ(株)) 微量
【0025】
(実施例1)
サイズプレスにて酸化澱粉を表面処理した上質原紙(坪量231g/m)の片面に、上記組成のキャスト塗工用塗工液を固形分で25g/mとなるようにロールコーターで塗布乾燥し、その塗工層表面に対して下記の組成の再湿潤液を見かけ塗布量20g/mとなるよう再湿処理を行い、直ちにキャストドラムに圧着して電子写真用キャストを得た。本用紙を液体トナー印刷機であるHPインディゴ10000にてCMYKの4色ベタを印刷し、各ベタ印刷部に直ちにセロハンテープ(ニチバン製)を貼り付け、180度剥離で5mm/秒の速さで剥離したところ、テープへのトナーの付着が無く、トナーの密着は良好だった。
再湿潤液の組成 (重量部)
ヘキサメタリン酸Na 1部
離型剤(PEM17、ポリエチレンワックス、サンノプコ(株)) 0.5部
水系ポリオレフィン樹脂(ケミパールS80N、エチレン・アクリル酸共重合体、
三井化学(株)) 1部
水 残部
合計 100部
【0026】
(実施例2)
実施例1における再湿潤液を下記組成に変更した以外は実施例1と同様に電子写真用キャスト塗工紙を得た。実施例1と同様にHPインディゴ10000にてCMYKの4色ベタを印刷し、各ベタ印刷部に直ちにセロハンテープ(ニチバン製)を貼り付け、180度剥離で5mm/秒の速さで剥離したところ、テープへのトナーの付着が無く、トナーの密着は良好だった。
再湿潤液の組成 (重量部)
ヘキサメタリン酸Na 1部
離型剤(PEM17、ポリエチレンワックス、サンノプコ(株)) 0.5部水系ポリオレフィン樹脂(ザイクセンAC、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、
住友精化(株)) 2部
水 残部
合計 100部
【0027】
(実施例3)
実施例1における再湿潤液を下記組成に変更した以外は実施例1と同様に電子写真用キャスト塗工紙を得た。実施例1と同様にHPインディゴ10000にてCMYKの4色ベタを印刷し、各ベタ印刷部に直ちにセロハンテープ(ニチバン製)を貼り付け、180度剥離で5mm/秒の速さで剥離したところ、テープへのトナーの付着が無く、トナーの密着は良好だった。
再湿潤液の組成 (重量部)
ヘキサメタリン酸Na 1部
離型剤(PEM17、ポリエチレンワックス、サンノプコ(株)) 0.5部
水系ポリオレフィン樹脂(ザイクセンL、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、
住友精化(株)) 0.5部
水 残部
合計 100部
【0028】
(実施例4)
サイズプレスにて酸化澱粉を表面処理した上質原紙(坪量231g/m)の片面に、上記組成のキャスト塗工用塗工液を固形分で25g/mとなるようにロールコーターで塗布し、その塗工層表面に対して下記の組成の凝固液を見かけ塗布量20g/mとなるよう凝固処理を行い、直ちにキャストドラムに圧着して電子写真用キャストを得た。本用紙を液体トナー印刷機であるHPインディゴ10000にてCMYKの4色ベタを印刷し、各ベタ印刷部に直ちにセロハンテープ(ニチバン製)を貼り付け、180度剥離で5mm/秒の速さで剥離したところ、テープへのトナーの付着が無く、トナーの密着は良好だった。
凝固液の組成 (重量部)
ギ酸Ca((株)朝日化学工業) 5部
離型剤(PEM17、ポリエチレンワックス、サンノプコ(株)) 0.5部
水系ポリオレフィン樹脂(アクアテックスMC3800、
エチレン・酢酸ビニル共重合体、ジャパンコーティングレジン(株)) 1部
水 残部
合計 100部
【0029】
(実施例5)
実施例4において、凝固液を下記組成に変更した以外は実施例4と同様に電子写真用キャスト塗工紙を得た。本用紙を液体トナー印刷機であるHPインディゴ10000にてCMYKの4色ベタを印刷し、各ベタ印刷部に直ちにセロハンテープ(ニチバン製)を貼り付け、180度剥離で5mm/秒の速さで剥離したところ、テープへのトナーの付着が無く、トナーの密着は良好だった。
凝固液の組成 (重量部)
ギ酸Ca((株)朝日化学工業) 5部
離型剤(PEM17、ポリエチレンワックス、サンノプコ(株)) 0.5部
水系ポリオレフィン樹脂(モビニール081F、エチレン・酢酸ビニル共重合体、
日本合成化学(株)) 2部
水 残部
合計 100部
【0030】
(比較例1)
実施例1において、再湿潤液を下記組成に変更した以外は実施例1と同様に電子写真用キャスト塗工紙を得た。実施例1と同様に液体トナー印刷機であるHPインディゴ10000にてCMYKの4色ベタを印刷し、各ベタ印刷部に直ちにセロハンテープ(ニチバン製)を貼り付け、180度剥離で5mm/秒の速さで剥離したところ、液体トナーがテープに多く付着し、トナーの密着は不良であった。
再湿潤液の組成 (重量部)
ヘキサメタリン酸Na 1部
離型剤(PEM17、ポリエチレンワックス、サンノプコ(株)) 0.5部
水 残部
合計 100部
【0031】
(比較例2)
実施例4において、凝固液を下記組成に変更した以外は実施例4と同様に電子写真用キャスト塗工紙を得た。実施例1と同様に液体トナー印刷機であるHPインディゴ10000にてCMYKの4色ベタを印刷し、各ベタ印刷部に直ちにセロハンテープ(ニチバン製)を貼り付け、180度剥離で5mm/秒の速さで剥離したところ、液体トナーがテープに多く付着し、トナーの密着は不良であった。
凝固液の組成 (重量部)
ギ酸Ca((株)朝日化学工業) 5部
離型剤(PEM17、ポリエチレンワックス、サンノプコ(株)) 0.5部
水 残部
合計 100部
【0032】
(比較例3)
実施例で使用したキャスト塗工液中に、さらに水系ポリオレフィン樹脂として、(ザイクセンAC、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、住友精化(株))固形分で重量部10部を直接配合し、下記のキャスト塗工液(固形分含量43重量%)を作成した。
(使用したキャスト塗工液)
(重量部)
カオリン(アストラコート、(株)イメリスミネラルズ・ジャパン) 55部
炭酸カルシウム(カービタル90、(株)イメリスミネラルズ・ジャパン) 20部
炭酸カルシウム(ブリリアントS-15、白石工業(株)) 20部
酸化チタン(TA-100、富士チタン(株)) 5部
分散剤(アロンT-50、東亜合成(株)) 0.1部
カゼイン(ニュージーランド、Fonterra社) 8部
ラテックス(L-1387,旭化成(株)) 15部
水系ポリオレフィン樹脂(ザイクセンAC、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、
住友精化(株)) 固形分で10部
離型剤(PEM17、ポリエチレンワックス、サンノプコ(株)) 2部
潤滑剤(SN-287、サンノプコ(株)) 1部
消泡剤(SNデフォーマー、サンノプコ(株)) 微量
【0033】
サイズプレスにて酸化澱粉を表面処理した上質原紙(坪量231g/m)の片面に、上記のキャスト塗工液を固形分で25g/mとなるようにロールコーターで塗布乾燥し、その塗工層表面に対して下記の組成の再湿潤液を見かけ塗布量20g/mとなるよう再湿処理を行い、直ちにキャストドラムに圧着して電子写真用キャストを得た。本用紙を液体トナー印刷機であるHPインディゴ10000にてCMYKの4色ベタを印刷し、各ベタ印刷部に直ちにセロハンテープ(ニチバン製)を貼り付け、180度剥離で5mm/秒の速さで剥離したところ、テープへのトナーの付着が部分的に有り、トナーの密着は不良で、かつキャスト表面光沢が劣り、面感は良くなかった。
再湿潤液の組成 (重量部)
ヘキサメタリン酸Na 1部
離型剤(PEM17、ポリエチレンワックス、サンノプコ(株)) 0.5部
水 残部
合計 100部
【0034】
(比較例4)
実施例で使用したキャスト塗工液中に、さらに水系ポリオレフィン樹脂として、(MYE-30ER、エチレン系アイオノマー、丸芳化学(株))固形分で重量部10部を直接配合し、下記のキャスト塗工液(固形分含量43重量%)を作成した。
(使用したキャスト塗工液)
(重量部)
カオリン(アストラコート、(株)イメリスミネラルズ・ジャパン) 55部
炭酸カルシウム(カービタル90、(株)イメリスミネラルズ・ジャパン) 20部
炭酸カルシウム(ブリリアントS-15、白石工業(株)) 20部
酸化チタン(TA-100、富士チタン(株)) 5部
分散剤(アロンT-50、東亜合成(株)) 0.1部
カゼイン(ニュージーランド、Fonterra社) 8部
ラテックス(L-1387,旭化成(株)) 15部
水系ポリオレフィン樹脂(MYE-30ER、エチレン系アイオノマー、丸芳化学(株))
固形分で10部離型剤(PEM17、ポリエチレンワックス、サンノプコ(株)) 2部
潤滑剤(SN-287、サンノプコ(株)) 1部
消泡剤(SNデフォーマー、サンノプコ(株)) 微量
【0035】
サイズプレスにて酸化澱粉を表面処理した上質原紙(坪量231g/m)の片面に、上記のキャスト塗工液を固形分で25g/mとなるようにロールコーターで塗布し、その塗工層表面に対して下記の組成の凝固液を見かけ塗布量20g/mとなるよう凝固処理を行い、直ちにキャストドラムに圧着して電子写真用キャストを得た。本用紙を液体トナー印刷機であるHPインディゴ10000にてCMYKの4色ベタを印刷し、各ベタ印刷部に直ちにセロハンテープ(ニチバン製)を貼り付け、180度剥離で5mm/秒の速さで剥離したところ、テープへのトナーの付着が部分的に有り、トナーの密着は十分ではなく、かつキャスト表面にピンホールが多く見られ、面感は良くなかった。
凝固液の組成 (重量部)
ギ酸Ca((株)朝日化学工業) 5部
離型剤(PEM17、ポリエチレンワックス、サンノプコ(株)) 0.5部
水 残部
合計 100部
【0036】
以上の実施例の結果からみて明らかなように、本発明の方法、つまりキャスト塗工紙の製造工程に連続する凝固法又は再湿法の工程によって、同時にキャスト塗工紙の表面処理を行い、水系ポリオレフィン樹脂をその表面層に含有させることによって得た湿式電子写真用キャスト塗工紙は、液体トナーを用いてトナーを付着させた後に、該トナーがキャスト塗工紙に対して十分な密着性を備えていた。
比較例1及び2のように、水系ポリオレフィン樹脂を使用しない凝固法及び再湿法によれば、液体トナーによる像が十分に密着性を供えてキャスト塗工紙上に形成されず、比較例3及び4のように、キャスト塗工液中に水系ポリオレフィン樹脂を含有させると、テープへのトナーの付着が部分的に有り、トナーの密着は不良で、かつキャスト表面光沢が劣り、面感は良くない結果となった。
特に比較例3及び4の結果を考慮すると、湿式電子写真用キャスト塗工紙としては、単にキャスト層中に水系ポリオレフィン樹脂を含有すれば良いというものではなく、凝固液又は再湿潤液中に水系ポリオレフィン樹脂を含有させること、及びキャスト層を凝固や再湿潤することによって、所定の効果を発揮できるものである。
【要約】
【課題】液体トナーの紙への密着が優れた湿式電子写真方式で使用するキャスト塗工紙を得ることができ、印刷直後に速やかに印刷されたキャスト塗工紙を重ねることができ、あるいは箔押しやフィルムラミネート等の後加工を行うことができる。加えて、特に平滑で高光沢なキャスト塗工紙を安価に生産すること。
【解決手段】支持体に顔料及び接着剤を主成分とする塗工液を塗工してキャスト塗工紙を製造する方法において、
塗工液を塗布して得られた湿潤状態の塗工層を、水系ポリオレフィン樹脂を含む凝固液によりゲル化させ、次いで加熱ドラムに圧接乾燥させて仕上げる工程を有するか、
または、支持体に塗工液を塗工し一旦乾燥させ、水系ポリオレフィン樹脂を含む再湿潤液により可塑化させ加熱ドラムに圧接乾燥させて仕上げる工程を有する、
湿式電子写真用キャスト塗工紙の製造方法。
【選択図】なし