【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書中で説明される化合物は、化式(A1からA6)、化式(B1からB6)、化式(C1からC6)、化式(D1からD6)、化式(I)、又は化式(VII)、及び薬学的に許容される塩、溶媒和化合物、エステル、酸及びそのプロドラッグのいずれかの構造を有するものを含む。ある実施形態において、化式(A1からA6)、化式(B1からB6)、化式(C1からC6)、化式(D1からD6)、化式(I)、又は化式(VII)によって表される構造を有する異性体及び化合物の化学的に保護された形態ももたらされる。
【0006】
【化1】
【0007】
ある態様において、化式(I)の化合物が本明細書にもたらされる。化式(I)は以下の通りである。
前記化式中、L
aはCH
2、O、NH又はSであって、Arは置換又は非置換アリール、又は置換又は非置換へテロアリール、及び以下に続く(a)又は(b)のいずれかであって、(a)Yはアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキレンアリーレン、アルキレンへテロアリーレン、アルキレンシクロアルキレン及びアルキレンへテロシクロアルキレンから選択される任意の置換基で、ZはC(=O)、NHC(=O)、NR
aC(=O)、NR
aS(=O)
xであり、ここでxは1又は2であり、R
aはH、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、及び以下に続く(i)、(ii)又は(iii)のいずれかであって、(i)R
7及びR
8はHであって、R
6はH、置換又は非置換C
1−C
4アルキル、置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
8アルキルアミノアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換C
1−C
8アルキルC
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換C
2−C
8へテロシクロアルキル、置換又は非置換へテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
8アルキルエーテル、C
1−C
8アルキルアミド、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8ヘテロシクロアルキル)であり、(ii)R
6及びR
8はHであって、R
7はH、置換又は非置換C
1−C
4アルキル、置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
8アルキルアミノアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換C
1−C
8アルキルC
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換C
2−C
8へテロシクロアルキル、置換又は非置換へテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
8アルキルエーテル、C
1−C
8アルキルアミド、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8ヘテロシクロアルキル)であり、又は、(iii)R
7及びR
8は共に結合を形成し、R
6はH、置換又は非置換C
1−C
4アルキル、置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
8アルキルアミノアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換C
1−C
8アルキルC
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換C
2−C
8へテロシクロアルキル、置換又は非置換へテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
8アルキルエーテル、C
1−C
8アルキルアミド、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8ヘテロシクロアルキル)であり、(b)Yはシクロアルキレン又はヘテロシクロアルキレンから選択される任意の置換基で、ZはC(=O)、NHC(=O)、NR
aC(=O)、NR
aS(=O)
xであり、ここでxは1又は2であり、R
aはH、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、及び以下に続く(i)、(ii)又は(iii)のいずれかであって、(i)R
7及びR
8はHであって、R
6は置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換C
1−C
8アルキルC
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換C
2−C
8へテロシクロアルキル、置換又は非置換ヘテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
8アルキルエーテル、C
1−C
8アルキルアミド、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8ヘテロシクロアルキル)であり、(ii)R
6及びR
8はHであって、R
7は置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換C
1−C
8アルキルC
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換C
2−C
8へテロシクロアルキル、置換又は非置換ヘテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
8アルキルエーテル、C
1−C
8アルキルアミド、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8ヘテロシクロアルキル)であり、又は、(iii)R
7及びR
8は共に結合を形成し、R
6はH、置換又は非置換C
1−C
4アルキル、置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
8アルキルアミノアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換C
1−C
8アルキルC
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換C
2−C
8へテロシクロアルキル、置換又は非置換へテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
8アルキルエーテル、C
1−C
8アルキルアミド、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8ヘテロシクロアルキル)、また、薬学的に活性な代謝物、又は薬学的に許容される溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、又は薬学的に許容されるそのプロドラッグである。
【0008】
他の実施形態において、化式(I)の化合物の薬学的に許容される塩がもたらされる。例において、アミノ基の塩は例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸等の無機酸で形成されるか、或いは、例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸又はマロン酸等の有機酸で形成される。さらに塩は、対イオンがアジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホナート、安息香酸エステル、重硫酸塩、ホウ酸塩、ブチラート、樟脳、カンファースルホン酸、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオナート、ジグルコネート、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、ギ酸塩、フマル酸エステル、グルコヘプタン酸、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸、へキサン酸、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸、ラクトビオン酸塩、乳酸、ラウリン酸、ラウリル硫酸、リンゴ酸塩、マレイン酸エステル、マロン酸エステル、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸エステル、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸エステル、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸、及び吉草酸塩等の陰イオンで形成される。さらに、塩は、対イオンがナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム及び(少なくとも一つの有機部分と置換される)四級アンモニウム陽イオン等の陽イオンであるものを含む。
【0009】
ある実施形態において、化式(I)の化合物の薬学的に許容されるエステルは、エステル基がギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ブチラート、アクリレート、及びエチルコハク酸塩から選択されるものを含んでいる。
【0010】
他の実施形態において、化式(I)の化合物の薬学的に許容されるカルバミン酸塩が説明される。その他の実施形態において、化式(I)の化合物の薬学的に許容されるN−アシル誘導体が説明される。N−アシル基の例として、N−アセチル基及びN−エトキシカルボニル基が挙げられる。
【0011】
実施形態のいくつか及び全てに関して、置換基は記載の選択肢の一部から任意で選択される。例として、いくつかの実施形態において、L
aはCH
2、O、又はNHである。他の実施形態において、L
aはO、又はNHである。さらに他の実施形態において、L
aはOである。
【0012】
いくつかの実施形態において、Arは置換又は非置換アリールである。さらに他の実施形態において、Arは6員のアリールである。いくつかの実施形態において、Arはフェニルである。
【0013】
いくつかの実施形態において、xは2である。さらに他の実施形態において、ZはC(=O)、OC(=O)、NHC(=O)、S(=O)
x、OS(=O)
x、又はNHS(=O)
xである。いくつかの実施形態において、ZはC(=O)、NHC(=O)、又はNCH
3C(=O)である。
【0014】
いくつかの実施形態において、Yはアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキレンアリーレン、アルキレンへテロアリーレン、及びアルキレンへテロシクロアルキレンから選択される任意の置換基である。
【0015】
いくつかの実施形態において、ZはC(=O)、NHC(=O)、NR
aC(=O)、NR
aS(=O)
xであり、ここでxは1又は2であり、R
aはH、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキルである。
【0016】
いくつかの実施形態において、R
7及びR
8はHであって、R
6はH、置換又は非置換C
1−C
4アルキル、置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
8アルキルアミノアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換C
1−C
8アルキルC
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換C
2−C
8へテロシクロアルキル、置換又は非置換へテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
8アルキルエーテル、C
1−C
8アルキルアミド、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8ヘテロシクロアルキル)である。他の実施形態において、R
6及びR
8はHであって、R
7はH、置換又は非置換C
1−C
4アルキル、置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
8アルキルアミノアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換C
1−C
8アルキルC
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換C
2−C
8へテロシクロアルキル、置換又は非置換へテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
8アルキルエーテル、C
1−C
8アルキルアミド、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8ヘテロシクロアルキル)である。また他の実施形態において、R
7及びR
8は共に結合を形成し、R
6はH、置換又は非置換C
1−C
4アルキル、置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
8アルキルアミノアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換C
1−C
8アルキルC
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換C
2−C
8へテロシクロアルキル、置換又は非置換へテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
8アルキルエーテル、C
1−C
8アルキルアミド、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8ヘテロシクロアルキル)である。
【0017】
いくつかの実施形態において、Yはシクロアルキレン又はヘテロシクロアルキレンから選択される任意の置換基である。
【0018】
いくつかの実施形態において、ZはC(=O)、NHC(=O)、NR
aC(=O)、NR
aS(=O)
xであり、ここでxは1又は2であり、R
aはH、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキルである。
【0019】
いくつかの実施形態において、R
7及びR
8はHであって、R
6は置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換C
1−C
8アルキルC
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換C
2−C
8へテロシクロアルキル、置換又は非置換ヘテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
8アルキルエーテル、C
1−C
8アルキルアミド、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8ヘテロシクロアルキル)である。他の実施形態において、R
6及びR
8はHであって、R
7は置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換C
1−C
8アルキルC
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換C
2−C
8へテロシクロアルキル、置換又は非置換ヘテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
8アルキルエーテル、C
1−C
8アルキルアミド、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8ヘテロシクロアルキル)である。さらなる実施形態において、R
7及びR
8は共に結合を形成し、R
6は置換又は非置換C
1−C
4アルキル、置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
8アルキルアミノアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換C
1−C
8アルキルC
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換C
2−C
8へテロシクロアルキル、置換又は非置換へテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
8アルキルエーテル、C
1−C
8アルキルアミド、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8ヘテロシクロアルキル)である。
【0020】
本明細書中において、様々な変形のための上記のグループの任意の組み合わせが考慮される。
【0021】
ある態様において、以下から選択される化合物、すなわち、(E)-4-(N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアミノ)-1-(3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン(化合物3)、(E)-1-(3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d-]ピリミジン-1-イル)-3-(1H-イミダゾール-4-イル)プロパ-2-エン-1-オン(化合物4)、(E)-1-(3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-4-モルホリノブタ-2-エン-1-オン(化合物5)、(E)-1-(4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン(化合物7)、(E)-N-((1s,4s)-4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)シクロヘキシル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エナミド(化合物8)、N-((1r,4r)-4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)シクロヘキシル)アクリルアミド(化合物10)、(E)-1-((R)-2-((4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン(化合物11)、(E)-1-((S)-2-((4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン(化合物12)、1-((R)-2-((4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン(化合物13)、1-((S)-2-((4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン(化合物14)、1((R)-2-((4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-イル)ブタ-2-イン-1-オン(化合物15)、1-((S)-2-((4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-イル)ブタ-2-イン-1-オン(化合物16)、1-((R)-3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)ブタ-2-イン-1-オン(化合物17)、(E)-N-((1,r,4r)-4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)シクロヘキシル-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エナミド(化合物18)、N-(2-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-N-メチルアクリルアミド(化合物19)、(E)-1-(4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)-4-モルホリノブタ-2-エン-1-オン(化合物20)、(E)-1-((S_-2-((4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-イル)-4-モルホリノブタ-2-エン-1-オン(化合物21)、N-((1s,4s)-4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)シクロヘキシル)ブタ-2-インアミド(化合物22)、N-(2-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)アクリルアミド(化合物23)、(E)-1-((R)-3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-4-モルホリノブタ-2-エン-1-オン(化合物24)、(E)-N-((1s,4s)-4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)シクロヘキシル)-4-モルホリノブタ-2-エナミド(化合物25)が本明細書中にもたらされる。
【0022】
さらなる態様において医薬組成物がもたらされる。この組成物は、本明細書中のいずれかの化合物の少なくとも一つのいずれかの化合物の薬学的に有効な量、又は薬学的に許容される塩、薬学的に活性な代謝物、薬学的に許容されるプロドラッグ、又は薬学的に許容される溶媒和化合物を含む。特定の実施形態において、本明細書中にもたらされる組成物はさらに、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤及び/又は結合剤を含む。
【0023】
適切な経路及び方法による投与のために製剤された本明細書中にもたらされる1又はそれ以上の化合物の有効濃度を含有する医薬組成物、或いは、1又はそれ以上の疾患の症状、障害又は状態の治療、予防又は改善に有効な量を運搬するその有効な誘導体がもたらされる。この1又はそれ以上の疾患の症状、障害又は状態は、チロシンキナーゼ活性によって調節又は影響される。或いは、チロシンキナーゼは、この1又はそれ以上の疾患の症状、障害又は状態の原因となる。この有効量及び有効濃度は本明細書中に開示される疾患、障害又は状態のいずれかの症状の改善に効果的である。
【0024】
特定の実施形態において、本明細書中にもたらされる医薬組成物は、(1)生理的に許容される担体、希釈液、及び/又は賦形剤、及び(2)本明細書にもたらされる1又はそれ以上の化合物を含んでいる。
【0025】
ある態様において、本明細書中にもたらされるのは、本明細書中の化合物を投与することにより患者を治療するための方法である。いくつかの実施形態において、Btk等のチロシンキナーゼの活性を阻害する方法、或いは疾患、障害又は状態を治療する方法がもたらされる。この治療は、患者内におけるBtk等のチロシンキナーゼの阻害の恩恵を受けるものであり、本明細書中の化合物のいずれかの少なくとも一つの薬学的に有効な量、又は薬学的に許容される塩、薬学的に活性な代謝物、薬学的に許容されるプロドラッグ、又は薬学的に許容される溶媒和化合物を含む。
【0026】
他の態様において、ブルトンチロシンキナーゼ(Btk)活性を阻害するための、或いはブルトンチロシンキナーゼ(Btk)活性の阻害の恩恵を受ける疾患、障害又は状態の治療のための本明細書中に開示される化合物の使用法が本明細書中においてもたらされる。
【0027】
いくつかの実施形態において、本明細書にもたらされる化合物はヒトに投与される。いくつかの実施形態において、本明細書にもたらされる化合物は経口投与される。他の実施形態において、医薬製剤は、経口投与、非経口投与、口腔投与、経鼻投与、局所投与、又は直腸投与から選択される投与経路のために製剤される。
【0028】
他の実施形態において、本明細書にもたらされる化合物はチロシンキナーゼ活性の阻害のための薬物の製剤に用いられる。いくつかの他の実施形態において、本明細書にもたらされる化合物はブルトンチロシンキナーゼ(Btk)活性の阻害のための薬物の製剤に用いられる。
【0029】
包装材内部でBtk等のチロシンキナーゼの活性の阻害に効果的な包装材、化合物又は組成物又は薬学的に許容されるその誘導体を含む物品、及び、Btk等のチロシンキナーゼの活性を阻害するのに利用される化合物又は組成物、薬学的に許容される塩、薬学的に活性な代謝物、薬学的に許容されるプロドラッグ、或いは薬学的に許容されるその溶媒和化合物を示す標識がもたらされる。
【0030】
他の態様において、阻害されたチロシンキナーゼはブルトンチロシンキナーゼ、ブルトンチロシンキナーゼ相同体、又はBtkチロシンキナーゼシステイン相同体が以下の構造を有するインヒビターに共有結合する。
【0031】
【化2】
【0032】
【0033】
さらなる態様において、少なくとも一つの化合物の薬学的に有効な量を含有する組成物を必要とする対象に投与することによって自己免疫疾患を治療する方法が本明細書にもたらされる。この化合物は、任意の化式(A1−A6)、化式(B1−B6)、化式(C1−C6)、化式(D1−D6)、化式(I)又は化式(VII)の構造を有している。ある実施形態において、免疫疾患は関節炎である。他の実施形態において、免疫疾患はループスである。いくつかの実施形態において、免疫疾患は炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、関節リウマチ、乾癬性関節炎、変形関節炎、スチル病、若年性関節炎、ループス、糖尿病、重症筋無力症、橋本病、オード甲状腺炎(Ord’s thyroiditis)、グレイヴズ病、シェーグレン症候群、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、急性散在性能脊髄炎、アジソン病、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、グッドパスチャー症候群、突発性血小板減少性紫斑症、視神経炎、強皮症、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、温式自己免役溶血性貧血、ヴェーゲナー肉芽腫症、乾癬、全身脱毛症、ベーチェット病、慢性疲労、自立神経障害、子宮内膜症、間質性膀胱炎、神経性筋強直症、強皮症又は外陰部痛である。
【0034】
さらなる態様において、少なくとも一つの化合物の薬学的に有効な量を含有する組成物を必要とする対象に投与することによって異種免疫状態又は疾患を治療する方法が本明細書にもたらされる。この化合物は、任意の化式(A1−A6)、化式(B1−B6)、化式(C1−C6)、化式(D1−D6)、化式(I)又は化式(VII)の構造を有している。いくつかの実施形態において、異種免役状態又は疾患は、移植片対宿主病、移植、輸血、アナフィラキシー、アレルギー、I型過敏症、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、又はアトピー性皮膚炎である。
【0035】
さらなる態様において、少なくとも一つの化合物の薬学的に有効な量を含有する組成物を必要とする対象に投与することによって炎症性疾患を治療する方法が本明細書にもたらされる。この化合物は、任意の化式(A1−A6)、化式(B1−B6)、化式(C1−C6)、化式(D1−D6)、化式(I)又は化式(VII)の構造を有している。いくつかの実施形態において、炎症性疾患は、ぜんそく、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、虫垂炎、眼瞼炎、細気管支炎、気管支炎、滑液包炎、子宮頚炎、胆管炎、胆嚢炎、大腸炎、結膜炎、膀胱炎、涙腺炎、皮膚炎、皮膚筋炎、脳炎、心内膜炎、子宮内膜炎、腸炎、小腸結腸炎、上顆炎、精巣上体炎、筋膜炎、結合組織炎、胃炎、胃腸炎、肝炎、化膿性汗腺炎、咽頭炎、乳腺炎、髄膜炎、脊髄炎、心筋炎、筋肉炎、腎炎、卵巣炎、精巣炎、骨炎、耳炎、膵炎、耳下腺炎、心外膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、間質性肺炎、肺炎、直腸炎、前立腺炎、腎盂腎炎、鼻炎、卵管炎、副鼻腔炎、口内炎、滑膜炎、腱炎、扁桃炎、ぶどう膜炎、膣炎、血管炎又は外陰部炎である。
【0036】
さらに他の態様において、少なくとも一つの化合物の薬学的に有効な量を含有する組成物を必要とする対象に投与することによって癌を治療する方法が本明細書にもたらされる。この化合物は、任意の化式(A1−A6)、化式(B1−B6)、化式(C1−C6)、化式(D1−D6)、化式(I)又は化式(VII)の構造を有している。ある実施形態において、癌はB細胞増殖性疾患、例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性リンパ腫、慢性リンパ性白血病、B細胞性前リンパ性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、脾臓周辺帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、縦隔原発びまん性硬化型B細胞性大細胞型リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性体腔性リンパ腫、バーキットリンパ腫/バーキット白血病、又はリンパ腫様肉芽腫症である。いくつかの実施形態において、対象が癌を患っている場合、上記の化合物の一つに加え抗癌剤が対象に投与される。ある実施形態において、抗癌剤はマイトジェン活性化タンパク質キナーゼシグナル伝達、例えば、U0126、PD98059、PD184352、PD0325901、ARRY-142886、SB239063、SP600125、BAY43-9006、ワートマニン、又はLY294002である。
【0037】
他の態様において、少なくとも一つの化合物の薬学的に有効な量を含有する組成物を必要とする対象に投与することによって血栓塞栓性疾患を治療する方法が本明細書にもたらされる。この化合物は、任意の化式(A1−A6)、化式(B1−B6)、化式(C1−C6)、化式(D1−D6)、化式(I)又は化式(VII)の構造を有している。いくつかの実施形態において、血栓塞栓性疾患は、心筋梗塞、狭心症、血管形成術後の再閉塞、血管形成術後の再狭窄、大動脈冠動脈バイパス後の再閉塞、大動脈冠動脈バイパス後の再狭窄、発作、一過性虚血、抹消動脈閉塞疾患、肺血栓、又は深部静脈血栓症である。
【0038】
他の態様において、少なくとも一つの化合物の薬学的に有効な量を含有する組成物を必要とする対象に投与することによってマスト細胞症を治療する方法が本明細書にもたらされる。この化合物は、任意の化式(A1−A6)、化式(B1−B6)、化式(C1−C6)、化式(D1−D6)、化式(I)又は化式(VII)の構造を有している。
【0039】
また他の態様において、少なくとも一つの化合物の薬学的に有効な量を含有する組成物を必要とする対象に投与することによって骨粗鬆症を治療する方法が本明細書にもたらされる。この化合物は、任意の化式(A1−A6)、化式(B1−B6)、化式(C1−C6)、化式(D1−D6)、化式(I)又は化式(VII)の構造を有している。
【0040】
さらに他の態様において、化合物の薬学的に有効な量を含有する組成物を必要とする対象に投与することによってループスを治療する方法が本明細書にもたらされる。この化合物は、ブルトンチロシンキナーゼ又はブルトンチロシン相同体のシステイン側鎖と共有結合を形成する。ある実施形態において、化合物はブルトンチロシンキナーゼの活性型と共有結合を形成する。さらなる又は別の実施形態において、化合物は共有的に結合するブルトンチロシンキナーゼを不可逆的に阻害する。さらなる又は別の実施形態において、化合物はブルトンチロシンキナーゼ上のシステイン残基と共有結合を形成する。
【0041】
さらなる態様において、化合物の薬学的に有効な量を含有する組成物を必要とする対象に投与することによって異種免役状態又は疾患を治療する方法が本明細書にもたらされる。この化合物は、ブルトンチロシンキナーゼ又はブルトンチロシン相同体のシステイン側鎖と共有結合を形成する。ある実施形態において、化合物はブルトンチロシンキナーゼの活性型と共有結合を形成する。さらなる又は別の実施形態において、化合物は共有的に結合するブルトンチロシンキナーゼを不可逆的に阻害する。さらなる又は別の実施形態において、化合物はブルトンチロシンキナーゼ上のシステイン残基と共有結合を形成する。
【0042】
さらなる態様において、化合物の薬学的に有効な量を含有する組成物を必要とする対象に投与することによって炎症性疾患を治療する方法が本明細書にもたらされる。この化合物は、ブルトンチロシンキナーゼ又はブルトンチロシン相同体のシステイン側鎖と共有結合を形成する。ある実施形態において、化合物はブルトンチロシンキナーゼの活性型と共有結合を形成する。さらなる又は別の実施形態において、化合物は共有的に結合するブルトンチロシンキナーゼを不可逆的に阻害する。さらなる又は別の実施形態において、化合物はブルトンチロシンキナーゼ上のシステイン残基と共有結合を形成する。
【0043】
さらなる態様において、化合物の薬学的に有効な量を含有する組成物を必要とする対象に投与することによってびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、又は慢性リンパ球性白血病を治療する方法が本明細書にもたらされる。この化合物は、ブルトンチロシンキナーゼ又はブルトンチロシン相同体のシステイン側鎖と共有結合を形成する。ある実施形態において、化合物はブルトンチロシンキナーゼの活性型と共有結合を形成する。さらなる又は別の実施形態において、化合物は共有的に結合するブルトンチロシンキナーゼを不可逆的に阻害する。さらなる又は別の実施形態において、化合物はブルトンチロシンキナーゼ上のシステイン残基と共有結合を形成する。
【0044】
さらに他の態様において、化合物の薬学的に有効な量を含有する組成物を必要とする対象に投与することによってマスト細胞症を治療する方法が本明細書にもたらされる。この化合物は、ブルトンチロシンキナーゼ又はブルトンチロシン相同体のシステイン側鎖と共有結合を形成する。ある実施形態において、化合物はブルトンチロシンキナーゼの活性型と共有結合を形成する。さらなる又は別の実施形態において、化合物は共有的に結合するブルトンチロシンキナーゼを不可逆的に阻害する。さらなる又は別の実施形態において、化合物はブルトンチロシンキナーゼ上のシステイン残基と共有結合を形成する。
【0045】
さらに他の態様において、化合物の薬学的に有効な量を含有する組成物を必要とする対象に投与することによって骨粗鬆症又は骨吸収疾患を治療する方法が本明細書にもたらされる。この化合物は、ブルトンチロシンキナーゼ又はブルトンチロシン相同体のシステイン側鎖と共有結合を形成する。ある実施形態において、化合物はブルトンチロシンキナーゼの活性型と共有結合を形成する。さらなる又は別の実施形態において、化合物は共有的に結合するブルトンチロシンキナーゼを不可逆的に阻害する。さらなる又は別の実施形態において、化合物はブルトンチロシンキナーゼ上のシステイン残基と共有結合を形成する。
【0046】
さらに、タンパク質キナーゼを含む、さらにチロシンキナーゼを含むキナーゼの不可逆的なインヒビターを同定するための方法、分析及びシステムが本明細書において説明される。さらに、チロシンキナーゼを含むキナーゼの適切な不可逆的なインヒビターを決定するための方法、分析及びシステムが本明細書において説明される。インヒビターはキナーゼ上のシステイン残基と共有結合を形成し、さらにシステイン残基はキナーゼの活性部位付近に存在する。さらなる実施形態において、インヒビターはまたキナーゼの活性部位を結合する部分も有している。いくつかの実施形態において、キナーゼはBtkと相同体を共有する。この共有は、不可逆的なインヒビター(このようなチロシンキナーゼは「Btkチロシンキナーゼシステイン相同体」と呼ばれる)と共有結合を形成するシステイン残基(Cys481残基を含む)を有することによりなされる。いくつかの実施形態において、Btkキナーゼシステイン相同体は、キナーゼのTecファミリー、キナーゼのEGFRファミリー、キナーゼのJak3ファミリー、及び/又はキナーゼのBtk−Srcファミリーから選択される。
【0047】
いくつかの実施形態において、不可逆的なインヒビターは選択的な不可逆的なインヒビターであって、Btkキナーゼシステイン相同体上で特定のBtkキナーゼシステイン相同体への選択性を有する。いくつかの実施形態において、選択的且つ不可逆的なインヒビターは、Btk、Btk相同体又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択されるキナーゼの効果的なインヒビターであるが、Btk、Btk相同体又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択されるキナーゼから選択される他の異なるキナーゼの少なくとも一つに関しては効果的なインヒビターにならない。
【0048】
本明細書において、Btk、Btk相同体、及びBtkキナーゼシステイン相同体から選択されるタンパク質チロシンキナーゼに不可逆的且つ選択的に結合するキナーゼインヒビターが説明される。キナーゼインヒビターは、タンパク質チロシンキナーゼの多重性に可逆的且つ非選択的に結合する。ある実施形態において、キナーゼインヒビターの血中濃度半減期は約4時間未満である。他の実施形態において、キナーゼインヒビターの血中濃度半減期は約3時間未満である。
【0049】
さらなる実施形態において、キナーゼインヒビターはBtk、Jak3、Blk、Bmx、Tec及びItkの少なくとも一つに選択的且つ不可逆的に結合する。他の実施形態において、キナーゼインヒビターはBtkに選択的且つ不可逆的に結合する。他の実施形態において、キナーゼインヒビターはJak3に選択的且つ不可逆的に結合する。他の実施形態において、キナーゼインヒビターはTecに選択的且つ不可逆的に結合する。他の実施形態において、キナーゼインヒビターはItkに選択的且つ不可逆的に結合する。他の実施形態において、キナーゼインヒビターはBtk及びTecに選択的且つ不可逆的に結合する。他の実施形態において、キナーゼインヒビターはBlkに選択的且つ不可逆的に結合する。またさらなる実施形態において、キナーゼインヒビターは多様なsrcファミリータンパク質キナーゼインヒビターに可逆的且つ非選択的に結合する。
【0050】
また本明細書には、このような方法、分析及びシステムを用いて同定される不可逆的なインヒビターが説明される。このような不可逆的なインヒビターは、キナーゼの活性部位に結合する活性部位結合部分を有する。このキナーゼはチロシンキナーゼを備え、さらにBtkキナーゼシステイン相同体、マイケル受容体部分、及び活性部位結合部分をマイケル受容体部分につなげる部分を備える。いくつかの実施形態において、マイケル受容体部分はアルケン及び/又はアルケン部分を有する。いくつかの実施形態において、不可逆的なインヒビターは選択的な不可逆的なインヒビターであって、他のBtkキナーゼシステイン相同体よりも特定のBtkキナーゼシステイン相同体への選択性を有する。
【0051】
他の実施形態において、不可逆的なインヒビターは化式(VII)の構造を有する。
【0052】
【化3】
【0053】
【化4】
【0054】
はチロシンキナーゼ、さらにBtkキナーゼチロシン相同体を含むキナーゼの前記活性部位に結合する部分であり、Yはアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアルキレン、アルキレンアリーレン、アルキレンへテロアリーレン、アルキレンシクロアルキレン及びアルキレンへテロシクロアルキレンから選択される任意の置換基で、ZがC(=O)、OC(=O)、NHC(=O)、NCH
3C(=O)、C(=S)、S(=O)
x、OS(=O)
x、NHS(=O)
xであり、ここでxは1又は2であり、R
7及びR
8は、H、非置換C
1−C
4アルキル、置換C
1−C
4アルキル、非置換C
1−C
4へテロアルキル、置換C
1−C
4へテロアルキル、非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換C
3−C
6シクロアルキル、非置換C
2−C
6へテロシクロアルキル、及び置換C
2−C
6へテロシクロアルキルから独立して選択され、又は、R
7及びR
8は共に結合を形成し、R
6はH、置換又は非置換C
1−C
4アルキル、置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
6アルコキシアルキル、C
1−C
8アルキルアミノアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換C
2−C
8ヘテロシクロアルキル、置換又は非置換へテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
4アルキル(C
3−C
8シクロアルキル)、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8ヘテロシクロアルキル)、及び、薬学的に活性な代謝物、又は薬学的に許容される溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、又は薬学的に許容されるそのプロドラッグである。
【0055】
他の実施形態において、化式(VII)の化合物の薬学的に許容される塩がもたらされる。アミノ基の塩は例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸等の無機酸で形成されるか、或いは例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸又はマロン酸等の有機酸で形成される。さらに塩は、対イオンがアジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホナート、安息香酸エステル、重硫酸塩、ホウ酸塩、ブチラート、樟脳、カンファースルホン酸、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオナート、ジグルコネート、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、ギ酸塩、フマル酸エステル、グルコヘプタン酸、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸、へキサン酸、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸、ラクトビオン酸塩、乳酸、ラウリン酸、ラウリル硫酸、リンゴ酸塩、マレイン酸エステル、マロン酸エステル、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸エステル、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸エステル、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸、及び吉草酸塩等の無機酸で形成される。さらに、塩は、対イオンがナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム及び(少なくとも一つの有機部分と置換される)四級アンモニウム陽イオン等の陽イオンであるものを含む。
【0056】
ある実施形態において、化式(VII)の化合物の薬学的に許容されるエステルは、エステル基がギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ブチラート、アクリレート、及びエチルコハク酸塩から選択されるものを含んでいる。
【0057】
他の実施形態において、化式(VII)の化合物の薬学的に許容されるカルバミン酸塩が説明される。その他の実施形態において、化式(VII)の化合物の薬学的に許容されるN−アシル誘導体が説明される。N−アシル基の例として、N−アセチル基及びN−エトキシカルボニル基を含む。
【0058】
【0059】
【化5】
【0060】
いくつかの実施形態において、ZはC(=O)、NHC(=O)、NCH
3C(=O)、又はS(=O)
2である。他の実施形態においてxは2である。また他の実施形態において、ZはC(=O)、OC(=O)、NHC(=O)、S(=O)
x、OS(=O)
x、又はNHS(=O)
xである。いくつかの実施形態において、ZはC(=O)、NHC(=O)、又はS(=O)
2である。
【0061】
いくつかの実施形態において、R
7及びR
8はH、非置換C
1−C
4アルキル、置換C
1−C
4アルキル、非置換C
1−C
4ヘテロアルキル及び置換C
1−C
4ヘテロアルキルから独立して選択され、或いはR
7及びR
8は共に結合を形成する。また他の実施形態において、R
7及びR
8の夫々はHであって、またR
7及びR
8は共に結合を形成する。
【0062】
いくつかの実施形態において、R
6はH、置換又は非置換C
1−C
4アルキル、置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
6アルコキシアルキル、C
1−C
8アルキルアミノアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換へテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
4アルキル(C
3−C
8シクロアルキル)、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8へテロシクロアルキル)である。いくつかの他の実施形態において、R
6はH、置換又は非置換C
1−C
4アルキル、置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
6アルコキシアルキル、C
1−C
2アルキル-N(C
1-C
3アルキル)
2、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
4アルキル(C
3−C
8シクロアルキル)、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8へテロシクロアルキル)である。また他の実施形態において、R
6はH、置換又は非置換C
1−C
4アルキル、−CH
2−O−(C
1−C
3アルキル)、−CH
2−(C
1−C
6アルキルアミノ)、C
1−C
4アルキル(フェニル)、又はC
1−C
4アルキル(5又は6員ヘテロアリール)である。いくつかの実施形態において、R
6はH、置換又は非置換C
1−C
4アルキル、−CH
2−O−(C
1−C
3アルキル)、−CH
2−N(C
1−C
3アルキル)
2、C
1−C
4アルキル(フェニル)、又はC
1−C
4アルキル(1又は2の原子を含む5又は6員ヘテロアリール)、又はC
1−C
4アルキル(1又は2の原子を含む5又は6員ヘテロシクロアリール)である。
【0063】
いくつかの実施形態において、Yはアルキレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、及びヘテロシクロアルキレンから選択される任意の置換基である。ある実施形態において、YはC
1−C
6アルキレン、C
1−C
6へテロアルキレン、4、5、6又は7員のシクロアルキレン、及び4、5、6又は7員のヘテロシクロアルキレンから選択される任意の置換基である。また他の実施形態において、YはC
1−C
6アルキレン、C
1−C
6へテロアルキレン、1又は2N原子を有する5又は6員のシクロアルキレン及び5又は6員のヘテロシクロアルキレンから選択される任意の置換基である。いくつかの他の実施形態において、Yは1又は2N原子を有する5又は6員のシクロアルキレン又は5又は6員のヘテロシクロアルキレンである。いくつかの実施形態において、Yは4、5、6又は7員のシクロアルキレン環、又は、4、5、6又は7員のヘテロシクロアルキレン環である。
【0064】
本明細書中において、上記の基の任意の組み合わせが様々な変形のために考慮される。
【0065】
前述の方法、分析及びシステムのいずれかにおいて、このような方法、分析及びシステムは多様な不可逆的なテストインヒビターを備える。不可逆的なテストインヒビターの夫々は同じ
【0066】
【化6】
【0067】
の部分を有しているが、Y、Z、R
6、R
7、又はR
8の少なくとも一つにおいて異なる。さらなる実施形態において、多様な不可逆的なテストインヒビターは、不可逆的なテストインヒビターのパネルである。さらなる実施形態において、少なくとも一つのキナーゼへの不可逆的なテストインヒビターのパネルの結合は決定されている(キナーゼのパネルを含む、さらにBtk、Btk相同体及びBtkキナーゼシステイン相同体から選択されるキナーゼのパネルを含む)。さらなる実施形態において、決定した結合データは選択的な不可逆的インヒビターの選定及び/又はさらに設計を行うのに用いられる。
【0068】
本明細書中で説明される不可逆的インヒビターは、化式(A1からA6)、化式(B1からB6)、化式(C1からC6)、化式(D1からD6)、化式(I)、又は化式(VII)、及び薬学的に許容される塩、溶媒和化合物、エステル、酸及びそのプロドラッグのいずれかの構造を有するものを含む。特定の実施形態において、化式(A1からA6)、化式(B1からB6)、化式(C1からC6)、化式(D1からD6)、化式(I)、又は化式(VII)によって表される構造を有する異性体及び化合物の化学的に保護された形態ももたらされる。
【0069】
本明細書中で説明される不可逆的インヒビターは、化式(A1からA6)、化式(B1からB6)、化式(C1からC6)、化式(D1からD6)、化式(I)、又は化式(VII)、及び薬学的に許容される塩、溶媒和化合物、エステル、酸及びそのプロドラッグのいずれかの構造を有するものを含む。特定の実施形態において、化式(A1からA6)、化式(B1からB6)、化式(C1からC6)、化式(D1からD6)、化式(I)、又は化式(VII)によって表される構造を有する異性体及び化合物の化学的に保護された形態ももたらされる。
【0070】
ある態様において、本明細書にもたらされる不可逆的なインヒビターの化合物は以下より選択される。1-(3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン、(E)-1-(3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン、1-(3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)スルホニルエテン、1-(3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロパ-2-イン-1-オン、1-(4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル6)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン、N-((1s,4s)-4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)シクロヘキシル)アクリルアミド、1-((R)-3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン、1-((S)-3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン、1-((R)-3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン、1-((S)-3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジンn-1-イル)ピペリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン、及び(E)-1-(3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン、(E)-4-(N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアミノ)-1-(3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)ブタ-2-エン-1-オン(化合物3)、(E)-1-(3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d-]ピリミジン-1-イル)-3-(1H-イミダゾール-4-イル)プロパ-2-エン-1-オン(化合物4)、(E)-1-(3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-4-モルホリノブタ-2-エン-1-オン(化合物5)、(E)-1-(4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン(化合物7)、(E)-N-((1s,4s)-4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)シクロヘキシル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エナミド(化合物8)、N-((1r,4r)-4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)シクロヘキシル)アクリルアミド(化合物10)、(E)-1-((R)-2-((4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン(化合物11)、(E)-1-((S)-2-((4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-イル)-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エン-1-オン(化合物12)、1-((R)-2-((4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン(化合物13)、1-((S)-2-((4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オン(化合物14)、1((R)-2-((4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-イル)ブタ-2-イン-1-オン(化合物15)、1-((S)-2-((4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-イル)ブタ-2-イン-1-オン(化合物16)、1-((R)-3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)ブタ-2-イン-1-オン(化合物17)、(E)-N-((1,r,4r)-4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)シクロヘキシル-4-(ジメチルアミノ)ブタ-2-エナミド(化合物18)、N-(2-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)-N-メチルアクリルアミド(化合物19)、(E)-1-(4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)-4-モルホリノブタ-2-エン-1-オン(化合物20)、(E)-1-((S_-2-((4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)メチル)ピロリジン-1-イル)-4-モルホリノブタ-2-エン-1-オン(化合物21)、N-((1s,4s)-4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)シクロヘキシル)ブタ-2-インアミド(化合物22)、N-(2-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)エチル)アクリルアミド(化合物23)、(E)-1-((R)-3-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)ピペリジン-1-イル)-4-モルホリノブタ-2-エン-1-オン(化合物24)、(E)-N-((1s,4s)-4-(4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)シクロヘキシル)-4-モルホリノブタ-2-エナミド(化合物25)が本明細書中にもたらされる。
【0071】
さらに本明細書において、先に記載した任意のキナーゼインヒビターの化合物のキナーゼインヒビターからなる医薬製剤が説明される。ある実施形態において、医学製剤は薬学的に許容される賦形剤を有する。いくつかの実施形態において、本明細書にもたらされる医薬製剤はヒトに投与される。いくつかの実施形態において、本明細書にもたらされる不可逆的及び/又は選択的なキナーゼインヒビターは経口投与される。他の実施形態において、本明細書にもたらされる不可逆的及び/又は選択的なキナーゼインヒビターはチロシンキナーゼ活性の阻害のための薬物の製剤に用いられる。いくつかの他の実施形態において、本明細書にもたらされる不可逆的及び/又は選択的なキナーゼインヒビターは、チロシンキナーゼ活性、Btk活性、Btk相同体活性、Btkキナーゼシステイン相同体活性を含むキナーゼ活性の阻害のための薬物の製剤に用いられる。
【0072】
前述のいずれかの態様において、さらなる実施形態では投与が腸内、非経口、或いはその両方で行われるか、或いは(a)化合物の有効量は哺乳類に全身的に投与される、(b)化合物の有効量は哺乳類に経口投与される、(c)化合物の有効量は哺乳類に静脈内投与される、(d)化合物の有効量は吸入投与される、(e)化合物の有効量は経鼻投与される、或いは(f)化合物の有効量は哺乳類に注射で投与される、(g)化合物の有効量は哺乳類に局所的(経皮)に投与される、(h)化合物の有効量は点眼投与される、或いは(i)化合物の有効量は哺乳類に直腸投与される。さらなる実施形態において、製剤される医薬製剤は、経口投与、非経口投与、口腔投与、経鼻投与、局所投与、又は直腸投与から選択される投与経路のために製剤される。
【0073】
前述のいずれかの態様におけるさらなる実施形態は、有効量の医薬組成物を単回投与することが説明され、さらに(i)医薬製剤が一回投与される、(ii)医薬製剤が哺乳類に一日一回投与される、(iii)医薬製剤が哺乳類に複数回一日に及び投与される、(iv)継続的に投与される、或いは(v)連続的に投与される実施形態を含む。
【0074】
前述のいずれかの態様におけるさらなる実施形態は、有効量の医薬組成物を複数回投与することが説明され、さらに(i)医薬製剤が単一容量投与される、(ii)複数回投与の間の時間が6時間毎である、(iii)医薬製剤が哺乳類に8時間毎に投与される実施形態を含む。さらなる又は別の実施形態において、方法は休薬期間を有し、医薬製剤の投薬が一時的に中断される、或いは投薬されている医薬製剤の投与量が一時的に減少される。休薬期間の終わりには、医薬組成物の投薬は再開される。休薬期間の長さは2日から1年へと変化する。
【0075】
タンパク質チロシンキナーゼテストインヒビターの選択性を増加させるための方法が、さらに本明細書で説明される。タンパク質チロシンキナーゼテストインヒビターは、Btk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択される少なくとも一つのタンパク質キナーゼインヒビターに不可逆的且つ選択的に結合する。ある実施形態において、タンパク質チロシンキナーゼテストインヒビターは化学的に修飾されて血中濃度半減期を約4時間未満に減少させる。他の実施形態において、タンパク質チロシンキナーゼテストインヒビターが化学的に修飾されて血中濃度半減期を約3時間に減少させる。また他の実施形態において、タンパク質チロシンキナーゼテストインヒビターは、多様なsrcファミリータンパク質チロシンキナーゼに非選択的且つ可逆的に結合する。
【0076】
タンパク質チロシンキナーゼテストインヒビターが化式(VII)の構造を有しており、
【0077】
【化7】
【0078】
【化8】
【0079】
はチロシンキナーゼ、さらにBtkキナーゼチロシン相同体を含むキナーゼの前記活性部位に結合する部分であり、Yはアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアルキレン、アルキレンアリーレン、アルキレンへテロアリーレン、アルキレンシクロアルキレン及びアルキレンへテロシクロアルキレンから選択される任意の置換基で、ZはC(=O)、OC(=O)、NHC(=O)、NCH
3C(=O)、C(=S)、S(=O)
x、OS(=O)
x、NHS(=O)
xであり、ここでxは1又は2であり、R
7及びR
8は、H、非置換C
1−C
4アルキル、置換C
1−C
4アルキル、非置換C
1−C
4へテロアルキル、置換C
1−C
4へテロアルキル、非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換C
3−C
6シクロアルキル、非置換C
2−C
6へテロシクロアルキル、及び置換C
2−C
6へテロシクロアルキルから独立して選択され、又は、R
7及びR
8は共に結合を形成し、R
6はH、置換又は非置換C
1−C
4アルキル、置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
6アルコキシアルキル、C
1−C
8アルキルアミノアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換C
2−C
8ヘテロシクロアルキル、置換又は非置換へテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
4アルキル(C
3−C
8シクロアルキル)、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8ヘテロシクロアルキル)、及び薬学的に活性な代謝物、又は薬学的に許容される溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、又は薬学的に許容されるそのプロドラッグである。
【0080】
さらなる態様において、テストタンパク質キナーゼインヒビターの組成物を必要とする対象へ投与することによるB細胞増殖性疾患又はマスト細胞増殖性疾患の治療方法が本明細書で説明される。テストタンパク質キナーゼインヒビターの組成物は、薬学的に有効な量の化合物を含んでいる。この化合物はBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体と共有結合(不可逆的及び/又は選択的な共有結合を含む)を形成する。ある実施形態において、化合物はBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体の活性型と共有結合を形成する。さらなる又は別の実施形態において、化合物は共有的に結合するBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体を不可逆的に阻害する。さらなる又は別の実施形態において、化合物はBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体上のシステイン残基と共有結合(不可逆的及び/又は選択的な共有結合を含む)を形成する。
【0081】
さらなる態様において、テストタンパク質キナーゼインヒビターの組成物を必要とする患者へ投与することによる関節リウマチの治療方法が本明細書で説明される。この化合物はBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体と共有結合(不可逆的及び/又は選択的な共有結合を含む)を形成する。ある実施形態において、化合物はBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体の活性型と共有結合を形成する。さらなる又は別の実施形態において、化合物は共有的に結合するBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体を不可逆的に阻害する。さらなる又は別の実施形態において、化合物はBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体上のシステイン残基と共有結合を形成する。
【0082】
さらなる態様において、活動亢進的なB細胞又は活動亢進的なマスト細胞、又は活動亢進的なB細胞及び活動亢進的なマスト細胞の両方に特徴付けられる疾患の治療方法が本明細書で説明される。この治療方法は、テストタンパク質キナーゼインヒビターの組成物を必要とする対象へ投与することによりなされる。この組成物はBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体と共有結合(不可逆的及び/又は選択的な共有結合を含む)を形成する化合物を治療上効果的な量だけ含む。さらなる又は別の実施形態において、化合物は共有的に結合するBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体を不可逆的に阻害する。ある実施形態において、化合物はBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体の活性型と共有結合を形成する。さらなる又は別の実施形態において、化合物は共有的に結合するBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体を不可逆的に阻害する。さらなる又は別の実施形態において、化合物はBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体上のシステイン残基と共有結合を形成する。
【0083】
前述のいずれかの態様において、有効量の医薬製剤を単回投与することからなるさらなる実施形態が説明され、さらに(i)医薬製剤が一回投与される、(ii)医薬製剤が哺乳類に一日一回投与される、(iii)医薬製剤が哺乳類に一日に及び複数回投与される、(iv)継続的に投与される、又は(v)連続的に投与される実施形態を含む。
【0084】
また、Btk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択されるキナーゼの不可逆的なインヒビターを同定する方法が、本明細書において説明される。この方法は、(1)Btk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択される多様なキナーゼとマイケル受容体部分からなる化合物を接触させる段階と、(2)少なくとも一つの利用可能なSH基を有する少なくとも一つの非キナーゼ分子とマイケル受容体部分からなる前記化合物を接触させる段階と、(3)マイケル受容体部分からなる前記化合物と多様なキナーゼ及び前記少なくとも一つの非キナーゼ分子の前記共有結合を決定する段階を含み、(1)、(2)及び(3)の段階をマイケル受容体部分からなる化合物の少なくとも一つのために繰り返す。
【0085】
さらに、Btk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択されるキナーゼの不可逆的なインヒビターを同定する方法が、本明細書において説明される。この方法は、(1)Btk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択されるキナーゼの多重性とマイケル受容体部分からなる化合物を接触させる段階と、(2)少なくとも一つの利用可能なSH基を有する少なくとも一つの非キナーゼ分子とマイケル受容体部分からなる前記化合物を接触させる段階と、(3)マイケル受容体部分からなる前記化合物とキナーゼの多重性及び前記少なくとも一つの非キナーゼ分子の前記共有結合を決定する段階を備え、(1)、(2)及び(3)の段階をマイケル受容体部分からなる化合物の少なくとも一つのために繰り返す。さらにこの方法は、(4)多様なキナーゼ及び前記少なくとも一つの非キナーゼ分子を有するマイケル受容体部分からなる前記化合物の前記共有結合を比較する段階を備え、(1)、(2)(3)及び(4)の段階をマイケル受容体部分からなる化合物の少なくとも一つのために繰り返す。
【0086】
ある実施形態において、少なくとも一つの利用可能なSH基を有する少なくとも一つの非キナーゼ分子は、グルタチオン及び/又はヘモグロビンを含む。他の実施形態において、所望の不可逆的なインヒビターは、他のキナーゼ、グルタチオン及びヘモグロビンに関連する特定のキナーゼに選択的である。
【0087】
いくつかの実施形態において、キナーゼの不可逆的なインヒビターを同定するための方法、分析及びシステムは、各キナーゼと活性プローブを接触させることを含む。さらなる実施形態において、キナーゼの不可逆的なインヒビターを同定するための方法、分析及びシステムはキナーゼのパネルを備え、このキナーゼのパネルはBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択される少なくとも2つのキナーゼからなる。さらなる実施形態において、キナーゼのパネルは少なくとも3つのこのようなキナーゼ、少なくとも4つのこのようなキナーゼ、少なくとも5つのこのようなキナーゼ、少なくとも6つのこのようなキナーゼ、少なくとも7つのこのようなキナーゼ、少なくとも8つのこのようなキナーゼ、少なくとも9つのこのようなキナーゼ、或いは少なくとも10のこのようなキナーゼからなる。
【0088】
ある実施形態において、Btk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択されるキナーゼの不可逆的なインヒビターを同定する方法の段階(1)及び(2)は生体内で行われる。他の実施形態において、Btk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択されるキナーゼの不可逆的なインヒビターを同定する方法の段階(3)は活性プローブを用いて一部分で行われる。
【0089】
ある実施形態において、Btk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択される多様なキナーゼとマイケル受容体部分からなる化合物の接触は生体内で行われる。他の実施形態において、少なくとも一つの利用可能なSH基を有する少なくとも一つの非キナーゼ分子とマイケル受容体部分からなる化合物の接触は生体内で行われる。さらなる実施形態において、マイケル受容体部分からなる化合物と多様なキナーゼ及び少なくとも一つの非キナーゼ分子の共有結合の決定は、活性プローブを用いて一部分で行われる。さらなる実施形態において、決定段階は質量分析法を利用する。またさらなる実施形態において、決定段階は蛍光発光を用いる。
【0090】
タンパク質キナーゼを含む、チロシンキナーゼを含むキナーゼインヒビターの不可逆的なインヒビターを同定するための方法及び分析のさらなる実施形態において、キナーゼのパネルは少なくとも一つの不可逆的なインヒビターと接触する。さらなる実施形態において、キナーゼのパネルはまた活性プローブと接触する。さらなる実施形態において、不可逆的なインヒビターのキナーゼへの結合は、活性プローブのキナーゼへの結合から決定される。さらなる実施形態において、活性プローブのキナーゼへの結合は蛍光発光技術を用いて決定される。さらなる又は別の方法及び分析において、活性プローブはフローサイトメトリーと互換性がある。さらなる実施形態において、不可逆的なインヒビターの一方のキナーゼへの結合は、不可逆的なインヒビターの他方のキナーゼの少なくとも一つへの結合と比較される。前述のいずれかの実施形態において、キナーゼのパネルはBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択される。さらなる又は別の実施形態において、不可逆的なインヒビターのキナーゼへの結合は質量分析法によって決定される。
【0091】
また本明細書において、ブルトンチロシンキナーゼ(Btk)、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体の活性的なプローブ(まとめて「活性プローブ」)が説明される。さらに、Btk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体の不可逆的なインヒビター、リンカー部分及びレポーター部分を含む活性プローブが説明される。さらに、活性プローブの構造のミカエル追加受容体部分を含む活性プローブが説明される。さらに、Btk、Btk相同体、及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体上のシステイン残基と共有結合を形成する活性プローブが説明される。また本明細書で、Btk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体上のシステイン残基と非共有結合を形成する活性プローブが説明される。また本明細書で、このような活性プローブを合成する方法、このような活性プローブをBtk、Btk相同体、及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体の研究において利用する方法、このような活性プローブをBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体のインヒビター(新たなインヒビターの発生を含む)の研究において利用する方法、及びこのような活性プローブをBtk、Btk相同体、又はBtkキナーゼシステイン相同体の薬力学の研究において利用する方法について説明される。
【0092】
活性プローブのある実施形態において、リンカー部分は、結合剤、任意に置換されるアルキル部分、任意に置換されるヘテロ環、任意に置換されるアミド部分、ケトン部分、任意に置換されるカルバミン酸部分、エステル部分、又はそれらの組み合わせから選択される。他の活性プローブの実施形態において、リンカー部分は任意に置換されるヘテロ環部分を有する。活性プローブのさらなる実施形態において、任意に置換されるヘテロ環部分はピペラジニル基部分からなる。
【0093】
また本明細書において活性プローブが説明され、レポーター部分は標識、色素、光架橋剤、細胞毒性化合物、薬剤、親和性標識、光親和性標識、反応性化合物、抗体又は抗体断片、生体材料、ナノ粒子、スピン標識、蛍光色素分子、金属含有部分、放射性部分、新規の官能基、共有的又は非共有的に他の分子と相互作用する基、光ケージド部分、化学線により励起可能な部分、リガンド、光異性化可能な部分、ビオチン、ビオチンの類似体、重原子を組み込んでいる部分、化学的に切断可能な基、光切断可能な基、酸化還元活性化剤、同位体標識されている部分、生物物理学的なプローブ、リン光性の基、化学発光性の基、高電子密度基、磁性基、インターカレート基、発色団、エネルギー伝達剤、生物活性剤、検出可能な標識又はそれらの組み合わせから構成される基から選択される。活性プローブの他の実施形態において、レポーター部分は蛍光色素分子である。また活性プローブの他の実施形態において、蛍光色素分子はBodypi蛍光色素分子である。また活性プローブのさらなる実施形態において、Bodypi蛍光色素分子はBodypiFL蛍光色素分子である。
【0094】
本明細書において活性プローブが提示され、阻害部分は、Btk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体の不可逆的なインヒビターに由来する。ある実施形態において、活性プローブの不可逆的なインヒビターは以下の通りである。
【0095】
【化9】
【0096】
他の実施形態において、活性プローブは以下の構造を有する。
【0097】
【化10】
【0098】
活性プローブのさらなる実施形態において、プローブはBtk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体のリン酸化された立体構造を選択的に標識する。活性プローブの他の実施形態において、Btk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体のリン酸化された立体構造は、Btk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体の活性又は非活性型のいずれかである。活性プローブのさらなる実施形態において、Btk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体のリン酸化された立体構造は、Btk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体の活性型である。活性プローブのある実施形態において、プローブは細胞透過性である。
【0099】
ある態様において、哺乳類における潜在的なBtk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体のインヒビターの有効性を評価する方法が説明される。この方法は、哺乳類に潜在的なBtk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体のインヒビターを投与する段階、本明細書に記載される活性プローブを哺乳類又は哺乳類から単離された細胞に投与する段階、活性プローブのレポーター部分の活性を測定する段階、及びレポーター部分の活性を基準物質と比較する段階からなる。
【0100】
他の態様において、哺乳類におけるBtk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体のインヒビターの薬力学を評価する方法が説明される。この方法は、哺乳類にBtk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体のインヒビターを投与する段階、本明細書に提示される活性プローブを哺乳類又は哺乳類から単離された細胞に投与する段階、及びインヒビターの投与後異なる時点において活性プローブのレポーター部分の活性を測定することからなる。
【0101】
さらなる態様において、Btk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体の生体内標識の方法が説明される。この方法は、Btk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体を本明細書に記載される活性プローブと接触させる段階からなる。ある実施形態において、Btk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体の生体内標識の方法が説明される。ここで、接触段階は活性Btk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体を本明細書に示される活性プローブを用いて培養する段階からなる。
【0102】
他の態様において、Btk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体の生体内標識の方法が説明される。この方法は、Btk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体を発現する細胞又は組織と本明細書に記載の活性プローブを接触させることからなる。
【0103】
ある態様において、標識されたBtk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体を検出する方法が説明される。この方法は、本明細書に記載の活性プローブによって標識されたBtk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体からなるタンパク質を電気泳動法によって分離する段階、及び蛍光発光により活性プローブを検出する段階からなる。
【0104】
さらなる実施形態において、キナーゼの不可逆的なインヒビターはさらに活性部位結合部分を有する。またさらなる実施形態において、キナーゼの不可逆的なインヒビターはさらにリンカー部分を有し、このリンカー部分はミカエル受容体部分を活性結合部分につなげる。
【0105】
ある実施形態において、キナーゼの不可逆的なインヒビターは化式(VII)の構造を有する。
【0106】
【化11】
【0107】
【化12】
【0108】
は、チロシンキナーゼ、さらにBtkキナーゼシステイン相同体を含むキナーゼの前記活性部位に結合する部分であり、Yはアルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアルキレン、アルキレンアリーレン、アルキレンへテロアリーレン、アルキレンシクロアルキレン及びアルキレンへテロシクロアルキレンから選択される任意の置換基で、ZがC(=O)、OC(=O)、NHC(=O)、NCH
3C(=O)、C(=S)、S(=O)
x、OS(=O)
x、NHS(=O)
xであり、ここでxは1又は2であり、R
7及びR
8は、H、非置換C
1−C
4アルキル、置換C
1−C
4アルキル、非置換C
1−C
4へテロアルキル、置換C
1−C
4へテロアルキル、非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換C
3−C
6シクロアルキル、非置換C
2−C
6へテロシクロアルキル、及び置換C
2−C
6へテロシクロアルキルから独立して選択され、又は、R
7及びR
8は共に結合を形成し、R
6はH、置換又は非置換C
1−C
4アルキル、置換又は非置換C
1−C
4ヘテロアルキル、C
1−C
6アルコキシアルキル、C
1−C
8アルキルアミノアルキル、C
1−C
8ヒドロキシアルキルアミノアルキル、C
1−C
8アルコキシアルキルアミノアルキル、置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換C
2−C
8ヘテロシクロアルキル、置換又は非置換へテロアリール、C
1−C
4アルキル(アリール)、C
1−C
4アルキル(ヘテロアリール)、C
1−C
4アルキル(C
3−C
8シクロアルキル)、又はC
1−C
4アルキル(C
2−C
8ヘテロシクロアルキル)、及び薬学的に活性な代謝物、又は薬学的に許容される溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、又は薬学的に許容されるそのプロドラッグである。
【0109】
ある実施形態において、段階(1)、(2)、(3)及び(4)からなるBtk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択されるキナーゼの不可逆的な阻害物を同定する方法はさらに、各化合物のリンカー部分の構造及び/又はマイケル受容体部分の構造及び少なくとも一つのキナーゼへの各化合物の結合及び/又は選択性間の構造機能相関を分析する段階を備える。他の実施形態において、段階(1)、(2)、(3)及び(4)からなるBtk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択されるキナーゼの不可逆的な阻害物を同定する方法はさらに、各化合物のYからZの構造及び/又は下式の構造及び少なくとも一つのキナーゼへの核化合物の結合及び/又は選択性環の構造機能相関を分析する段階を備える。
【0110】
【化13】
【0111】
【0112】
また本明細書において、インヒビターのキナーゼ選択性を改善するための方法が説明される。この方法は先に述べた任意の方法の利用を含む。
【0113】
本明細書に記載のある態様は、先に述べた方法のいずれかを含む分析である。本明細書に記載の他の態様は、先に述べた方法のいずれかを含むシステムである。さらなる態様において、Btk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択されるキナーゼの不可逆的なインヒビターが本明細書で説明される。ここで、インヒビターは本明細書に記載の任意の方法を用いて同定される。
【0114】
本明細書に記載のいくつかの態様において、不可逆的なインヒビターは、Btk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択されるキナーゼから選択される少なくとも一つの他方のキナーゼよりも、Btk、Btk相同体及び/又はBtkキナーゼシステイン相同体から選択されるキナーゼ一方のキナーゼに選択的である。本明細書に記載の他の態様において、不可逆的なインヒビターは、利用可能なSH基を有する少なくとも一つの他方の非キナーゼ分子よりも、Btk、Btk相同体、及びBtkキナーゼシステイン相同体から選択される一方のキナーゼに選択的である。
【0115】
特定の実施形態において、本明細書中にもたらされる医薬組成物は、(1)生理的に許容される担体、希釈液、及び/又は賦形剤、及び(2)本明細書にもたらされる1又はそれ以上の化合物を含んでいる。
【0116】
さらに他の態様において、薬学的に有効な量の化合物を含有する組成物を必要とする患者に投与することによって自己免疫疾患又は自己免疫状態を治療する方法が本明細書にもたらされる。この化合物は、ブルトンチロシンキナーゼ又はブルトンチロシン相同体のシステイン側鎖と共有結合を形成する。ある実施形態において、自己免疫疾患は関節リウマチ又はループスから選択される。
【0117】
さらなる態様において、薬学的に有効な量の化合物を含有する組成物を必要とする患者へ投与することによるB細胞増殖性疾患の治療方法が本明細書で説明される。この化合物は、ブルトンチロシンキナーゼ又はブルトンチロシン相同体のシステイン側鎖と共有結合を形成する。ある実施形態において、B細胞増殖性疾患はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫又は慢性リンパ性白血病である。
【0118】
さらなる態様において、薬学的に有効な量の化合物を含有する組成物を必要とする患者へ投与することによる炎症性疾患又は炎症状態の治療方法が本明細書で説明される。この化合物は、ブルトンチロシンキナーゼ又はブルトンチロシン相同体のシステイン側鎖と共有結合を形成する。
【0119】
本明細書において、本明細書に記載の任意のキナーゼインヒビターの化合物を用いた治療の前又は治療中に、患者の選定のための又は患者の観察のためのバイオマーカを同定する方法が説明される。ある実施形態において、リンパ腫を患う患者に、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達を阻害する本明細書に記載の任意のキナーゼインヒビターの化合物の医薬組成物が投与される。他の実施形態において、本明細書に記載の任意のキナーゼインヒビターの化合物によるBCRシグナル伝達の阻害は、アポトーシスの誘導と相関する。他の実施形態において、リンパ腫を患う患者は、本明細書に記載の任意のキナーゼインヒビターの化合物の医薬組成物を用いた治療のため、バイオマーカに基づいて選定される。このバイオマーカはその患者内のリンパ腫が、高レベルのpErk又はErkの転写標的を有することを示す。他の実施形態において、本明細書に記載の任意のキナーゼインヒビターの化合物の医薬組成物を用いた治療への反応は、pErk又はErkの転写標的のレベルにおける低下により測定される。
【0120】
本明細書に記載の方法及び組成物の他の目的、特性及び利点は以下に続く詳細な説明から明らかなものとなる。しかし、詳細な説明及び特定の例は特定の実施形態を示す一方で、例示目的にのみ用いられる。本明細書に用いられる項目の表題は構成目的だけのものであって、説明される主題を制限するものとして解釈されるべきでない。
【0121】
<特定の用語>
前述の概要及び以下の詳細な説明は例示的且つ説明的なものであるのみで、請求される任意の主題を制限するものではない。本出願において、特に別に明記しない限り、単数形の使用は複数形を含む。注意すべきことは、文脈がはっきりと指示しない限り、明細書及び付随する請求項にて用いられる通り、単数形の「a」、「an」、及び「the」は複数の指示対象を含む。本出願において、特に明記しない限り「or(又は)」の使用は「and/or(及び/又は)」を意味する。さらに、他の形と同様「including(〜を含む)」(include、includes、及びincluded等)という用語の使用は制限的なものでない。
【0122】
標準化学用語の定義は、Carey及びSundbergの「ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4
th ED, Vols. A (2000) and B (2001)」(Plenum Press, New York)を含む参考文献に見られる。他が指示されない限り、質量分析法、核磁気共鳴分析法、高速液体クロマトグラフィー、タンパク質化学、生物化学、遺伝子組み換え技術、薬理学が当業者によって用いられる。特定の定義がもたらされない限り、本明細書に記載の分析化学、有機合成化学、医科学及び薬化学に関連して用いられる命名法及びその検査手段及び技術は当該技術分野において周知である。標準的技術は、化学的合成、化学分析、医薬品処方、製剤、運搬、及び患者の治療に任意に利用される。標準的技術は遺伝子組換え、オリゴヌクレオチド合成、及び組織培養及び組織変成(例:エレクトロポレーション、リポフェクション)に任意に利用される。反応及び精製技術は文書化された手順又は本明細書に記載の通り実行される。
【0123】
本明細書に記載の方法及び組成物は、本明細書に記載の特定の手順、手続き、細胞株、構成物、及び試薬に限定されず、任意で変化する。また、本明細書に利用される用語は、特定の実施形態のみを記載するためのものであり、本明細書に記載の方法の範囲を制限することを意図したものではない。本明細書に記載の方法の範囲は、付随する請求項によってのみ制限される。
【0124】
特に明記されない限り、錯体部分(例:部分の複数の鎖)に用いられる用語は、左から右或いは右から左のどちらかで同等に読まれる。例えば、アルキレンシクロアルキレンの基はアルキレン基に続いてシクロアルキレン基、又はシクロアルキレン基に続いてアルキレン基を意味する。
【0125】
基に付けられる「ene」という接尾語は、このような基がジラジカルであることを示す。例示の目的においてのみ、メチレンはメチル基のジラジカル、すなわち、−CH
2−基である。また、エチレンはエチル基のジラジカル、すなわち−CH
2CH
2−である。
【0126】
「アルキル」基は脂肪性の炭化水素基である。アルキル部分は「飽和アルキル」基を含み、これはアルキル部分が少なくとも一つのアルケン又はアルキン部分を含有しないことを意味する。アルキル部分はまた「不飽和アルキル」部分を含み、これは少なくとも一つのアルケン又はアルキン部分を含有することを意味する。「アルケン」部分は少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を有する基を意味し、また、「アルキン」部分は少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有する基を意味する。アルキル部分は、飽和又は不飽和であっても、分岐鎖、直鎖、又は周期性の部分を含む。構造に依存して、アルキル基はモノラジカル又はジラジカル(例:アルキレン基)を含み、また「低級アルキル」の場合1から6の炭素原子を有する。
【0127】
本明細書において使用される通り、C
1−C
xはC
1−C
2、C
1−C
3・・・C
1−C
xを含む。
【0128】
「アルキル」部分は1から10の炭素原子を任意で有する(本明細書にこれが登場する場合はいつも、「1から10」のような数値域は一定の範囲において各整数を意味する。例えば「1から10の炭素原子」は、アルキル基が1の炭素原子、2の炭素原子、3の炭素原子等、10の炭素原子まで及びそれを含む部分から選択される。しかし、本定義はまた、数値域が指定されない「アルキル」の用語の発生にも及ぶ)。本明細書に記載の化合物のアルキル基は、「C
1−C
4アルキル」又は同様に指定されることが可能である。例示の目的においてのみ、「C
1−C
4アルキル」はアルキル鎖の中に1から4の炭素原子が存在することを示す。すなわち、アルキル鎖はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びt−ブチルから選択される。このように、C
1−C
4アルキルはC
1−C
2アルキル及びC
1−C
3アルキルを含む。アルキル基は任意で置換又は非置換である。典型的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第3級ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を含むが、これらに限定されない。
【0129】
「アルケニル」という用語は、アルキル基の第1の2つの原子が芳香族基の一部でない二重結合を形成するアルキル基の種類を意味する。つまり、アルケニル基は原子で始まる、すなわちC(R)=C(R)−Rであって、ここでRはアルキル基の残りの部分を意味する。この部分は同一又は非同一である。アルケニル部分は任意で、分岐鎖、直鎖、又は周期性である(この場合、「シクロアルケニル」基としても知られる)。構造に依存して、アルケニル基はモノラジカル又はジラジカル(例:アルケニレン基)を含む。アルケニル基は任意で置換される。アルケニル基の非制限的な例は、−CH=CH
2、−C(CH
3)=CH
2、−CH=CHCH
3、−C(CH
3)=CHCH
3を含む。アルケニレン基は−CH=CH−、−C(CH
3)=CH−、−CH=CHCH
2−、−CH=CHCH
2CH
2−及び−C(CH
3)=CHCH
2−を含むが、これらに制限されない。アルケニル基は2から10の炭素を任意で有し、「低級アルケニル」の場合2から6の炭素原子を有する。
【0130】
「アルキニル」という用語はアルキル基の第1の2つの原子が三重結合を形成するアルキル基の種類を意味する。つまり、アルキニル基は−C≡C−Rの原子で始まり、ここでRはアルキル基の残りの部分を意味する。この部分は同一又は非同一である。アルキニル部分の「R」部分は分岐鎖、直鎖、又は周期性であることができる。構造に依存して、アルケニル基はモノラジカル又はジラジカル(例:アルキニレン基)を含む。アルケニル基は任意で置換される。アルキニル基の非制限的な例は、−C≡CH、−C≡CCH
3、−C≡CCH
2CH
3、−C≡C−及び−C≡CCH
2−である。アルキニル基は2から10の炭素を任意で有し、「低級アルキニル」の場合2から6の炭素原子を有する。
【0131】
「アルコキシ」基は(アルキル)O−基を意味し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0132】
「ヒドロキシアルキル」は本明細書に定義されるアルキルラジカルを意味し、少なくとも一つのヒドロキシ基と置換されている。ヒドロキシアルキルの非制限的な例は、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、1-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピル、2-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、2,3-ジヒドロキシプロピル、1-(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル、2,3-ジヒドロキシブチル、3,4-ジヒドロキシブチル、及び2-(ヒドロキシメチル)-3-ヒドロキシプロピルを含むがこれらに限定されない。
【0133】
「アルコキシアルキル」は本明細書に定義されるアルキルラジカルを意味し、本明細書に記載されるアルコキシ基と置換されている。
【0134】
「アルキルアミン」という用語は−N(アルキル)
xH
y基を意味し、ここでx及びyはx=1、y=1及びx=2、y=0から選択される。x=2の場合、アルキル基はそれらが接着するN原子と共に環式環系を任意で形成することができる。
【0135】
「アルキルアミノアルキル」は本明細書に定義されるアルキルラジカルを意味し、本明細書に定義されるアルキルアミンと置換されている。
【0136】
「ヒドロキシアルキルアミノアルキル」は本明細書に定義されるアルキルラジカルを意味し、本明細書に定義されるアルキルアミン及びアルキルヒドロキシで置換されている。
【0137】
「アルコキシアルキルアミノアルキル」はアルキルラジカルを意味し、本明細書に定義されるアルキルアミン及び本明細書に定義されるアルキルアルコキシと置換されている。
【0138】
「アミド」は化式−C(O)NHR又は−NHC(O)Rを有する化学部分であって、ここでRはアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合している)及びヘテロ脂環式(環炭素を介して結合している)から選択される。いくつかの実施形態において、アミド部分は、アミノ酸又はペプチドモジュール及び本明細書に記載の化合物との間で結合を形成し、これによりプロドラッグを形成する。本明細書に記載の化合物上の任意のアミン又はカルボキシル側鎖はアミド化される。このようなアミドを作る手順及び特定の基は、Greene及びWutsの「Protective Groups in Organic Synthesis, 3
rd Ed.」(John Wiley & Sons, New York, NY, 1999)の出典において見られ、その内容を参照することにより本発明に組み込むこととする。
【0139】
「エステル」は化式−COORを有する化学部分であって、ここでRはアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合している)及びヘテロ脂環式(環炭素を介して結合している)から選択される。本明細書に記載の化合物上の任意のヒドロキシ又はカルボキシル側鎖はエステル化される。このようなアミドを作る手順及び特定の基は、Greene及びWutsの「Protective Groups in Organic Synthesis, 3
rd Ed.」(John Wiley & Sons, New York, NY, 1999)の出典において見られ、その内容を参照することにより本発明に組み込むこととする。
【0140】
本明細書に用いられる通り、「環」という用語は任意の共有結合閉鎖構造を意味する。環は例えば、炭素環(アリール及びシクロアルキル)、ヘテロ環(ヘテロアリール及び非芳香族へテロ環)、芳香族(例:アリール及びヘテロアリール)、及び非芳香族(例:シクロアルキル及び非芳香族へテロ環)を含む。環は任意で置換されることができる。環は単環式又は多環式であることができる。
【0141】
本明細書に用いられる通り、「環系」という用語は1又はそれ以上の環を意味する。
【0142】
「員環」という用語は任意の環状構造を包含する。「員」という用語は、環を構成する骨格原子の数を表すことを意図している。したがって、例えばシクロヘキシル、ピリジン、ピラン及びチオピランは6員環であって、シクロペンチル、ピロール、フラン及びチオフェンは5員環である。
【0143】
「縮合」という用語は、2又はそれ以上の環が1以上の結合を共有する構造を意味する。
【0144】
「炭素環式」又は「炭素環」という用語は環を意味し、この環を形成する各原子は炭素原子である。炭素環はアリール及びシクロアルキルを含む。したがって、用語は炭素環をヘテロ環(「ヘテロ環式」)と区別する。このヘテロ環において、環骨格は少なくとも一つの炭素とは異なる原子例:ヘテロ原子)を含む。ヘテロ環はヘテロアリール及びヘテロシクロアルキルを含む。炭素環及びヘテロ環は任意で置換されることができる。
【0145】
「芳香族」という用語は平面環を意味し、4n+2πの電子(nは整数)を含む非局在化されたπ電子系を有している。芳香族環は5、6、7、8、9又は9以上の原子から形成されることができる。芳香族基は任意で置換されることができる。「芳香族」という用語は炭素環式アリール(例:フェニル)及びヘテロ環式アリール(或いは「ヘテロアリール」又は「ヘテロ芳香族」)基(例:ピリジン)を含む。この用語は単環又は縮合環の多環(例:炭素原子の隣接ペアを共有する環)基を含む。
【0146】
本明細書に用いられる通り、「アリール」という用語は芳香族環を意味し、環を形成する各原子は炭素原子である。アリール環は5、6、7、8、9又は9以上の炭素原子から形成されることができる。アリール基は任意で置換されることができる。アリール基の例は、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセニル、フルオレニル及びインデニルを含むが、これらに限定されない。構造に依存して、アリール基はモノラジカル又はジラジカルであることができる(例:アリーレン基)。
【0147】
「アリールオキシ」基は(アリール)O−基を意味し、アリールは本明細書に記載の通りである。
【0148】
「カルボニル」という用語は−C(O)−、−S(O)−、−S(O)2−、及び−C(S)−から構成される基から選択される部分を含む基を意味し、少なくとも一つのケトン基、及び/又は少なくとも一つのアルデヒド基、及び/又は少なくとも一つのエステル基、及び/又は少なくとも一つのカルボン酸基、及び/又は少なくとも一つのチオエステル基を含む基を含むがこれらに限定されない。このようなカルボニル基はケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル及びチオエステルを含む。いくつかの実施形態において、このような基は線形の、分岐又は環状分子の一部である。
【0149】
「シクロアルキル」という用語は単環又は多環式のラジカルを意味し、炭素及び水素のみを含有すると共に、任意に飽和、部分的に不飽和、又は完全に不飽和である。シクロアルキル基は、3から10環原子を有する基を含む。シクロアルキル基の説明例は以下の部分等を含む。
【0150】
【化14】
【0151】
構造に依存して、シクロアルキル基はモノラジアル又はジラジアルのどちらかであり(例:シクロアルキレン基)、「低級シクロアルキル」の場合、3から8の炭素分子を有する。
【0152】
「シクロアルキルアルキル」は本明細書に定義されるアルキルラジカルを意味し、シクロアルキル基で置換されている。非制限的なシクロアルキルアルキル基は、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル等を含む。
【0153】
「ヘテロ環」は、夫々がO、S及びNから選択される1から4のヘテロ原子を含むヘテロ芳香環及びヘテロ脂環式基を意味する。ここで、各ヘテロ環基はその環系内で4から10の原子を有しており、前記基の環は二つの隣接するO又はSの原子を含まないという条件がついている。本明細書において、ヘテロ環の炭素原子の数が示される場合は必ず(C
1−C
6へテロ環)、少なくとも一つの他の原子(ヘテロ原子)は環内に存在しなければならない。「C
1−C
6へテロ環」等の命名は環内の炭素原子の数のみを意味し、環内の原子の総数を意味しない。ヘテロ環は環内に追加的にヘテロ原子を有することができる。「4から6員のヘテロ環」等の命名は環に含まれる原子の総数を意味する(例えば4,5又は6員の環は、少なくとも一つの原子が炭素原子であって、少なくとも一つの原子はヘテロ原子であり残りの2から4の原子は炭素原子又はヘテロ原子のいずれかである)。2又はそれ以上のヘテロ原子を有するヘテロ環において、これらの2又はそれ以上のヘテロ原子は互いに同一であることもできるし、異なることもできる。ヘテロ環は任意で置換される。ヘテロ環への結合はヘテロ原子において、或いは炭素原子を介して可能である。非芳香族へテロ環基は環系に4つの原子のみを有する基を含むが、芳香族へテロ環基は環系に少なくとも5つの原子を有さなければならない。ヘテロ環基はベンゾ縮合環系を含む。4員へテロ環基の例はアゼチジニル(アゼチジン由来)である。5員へテロ環基の例はチアゾリルである。6員へテロ環基の例はピリジルであり、また、10員へテロ環基の例はキノリニルである。非芳香族へテロ環基の例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、3H-インドリル及びキノリジニルである。芳香族へテロ環基の例は、ピリジニル、イミダゾール、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾルイル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテルジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、フロピリジニルである。上に挙げた基に由来する前述の基は、可能な場合は任意でCが付着又はNが付着している。例えば、ピロールに由来する基は、ピロール-1-イル(N-付着)又はピロール-3-イル(C-付着)を含む。さらに、イミダゾールに由来する基は、イミダゾール-1-イル又はイミダゾール-3-イル(両方共N-付着)又はイミダゾール-2-イル、イミダゾール-4-イル又はイミダゾール-5-イル(全てC-付着)を含む。ヘテロ環基はベンゾ縮合環系、及びピロリジン-2-オン等の1又は2つのオキソ(=O)で置換される環系を含む。構造に依存して、ヘテロ環基はモノラジカル又はジラジカル(例:ヘテロシクレン基)であることができる。
【0154】
「ヘテロアリール」、或いは「ヘテロ芳香族」は1又はそれ以上の環ヘテロ原子を含む芳香族基を意味する。この環ヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄から選択される。N-含有「ヘテロ芳香族」又は「ヘテロアリール」部分は、少なくとも一つの環の骨格原子が窒素原子である芳香族基を意味する。ヘテロアリールの例は以下の部分等を含む。
【0155】
【化15】
【0156】
構造に依存して、ヘテロアリール基はモノラジカル又はジラジカル(例:ヘテロアリーレン基)であることができる。
【0157】
本明細書で用いられる通り、「非芳香族へテロ環」、「ヘテロシクロアルキル」又は「ヘテロ脂環」は非芳香族環を意味し、環を形成する1又はそれ以上の原子はヘテロ原子である。「非芳香族へテロ環」又は「ヘテロシクロアルキル」基はシクロアルキル基を意味し、このシクロアルキル基は窒素、酸素及び硫黄から選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含む。いくつかの実施形態において、ラジカルはアリール又はヘテロアリールで縮合される。ヘテロシクロアルキル環は3,4,5,6,7,8,9又は9以上の原子によって形成されることができる。ヘテロシクロアルキルは任意で置換されることができる。特定の実施形態において、非芳香族へテロ環は、例えばオキソ及びチオ含有基等の1以上のカルボニル又はチオカルボニル基を有する。ヘテロシクロアルキルの例は、ラクタム、ラクトン、環状イミド、環状チオイミド、環状カルバマート、テトラヒドロチオピラン、4H-ピラン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、1,3-ダイオキシン、1,3-ジオキサン、1,4-ダイオキシン、1,4-ジオキサン、ピペラジン、1,3-オキサチアン、1,4-オキサチイン、1,4-オキサチアン、テトラヒドロ-1,4-チアジン、2H-1,2-オキサジン、マレイミド、サクシニミド、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、モルホリン、トリオキサン、ヘクサヒドロ-1,3,5-トリアジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、ピロリジオン、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、イミダゾリドン、1,3-ジオキソール、1,3-ジオキソラン、1,3-ジチオール、1,3-ジチオラン、イソキサゾリン、イソオキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノン、チアゾリン、チアゾリジン及び1,3-オキサチオランを含むが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキル基の例はまた、非芳香族へテロ環を意味し、以下のもの及び同等物を含む。
【0158】
【化16】
【0159】
ヘテロ脂環という用語はまた、炭水化物の全ての環形状を含む。この炭水化物は単糖類、二糖類及び少糖類を含むがこれらに限定されない。構造に依存して、ヘテロシクロアルキル基はモノラジカル又はジラジカル(例:ヘテロシクロアルキレン基)であることができる。
【0160】
「ハロ」という用語、或いは「ハロゲン」又は「ハライド」は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを意味する。
【0161】
「ハロアルキル」という用語はアルキル構造を意味し、このアルキル構造において、少なくとも一つの水素がハロゲン原子と置換されている。このハロゲン原子は互いにまったく同一である。2又はそれ以上の窒素原子がハロゲン原子と置換されている他の実施形態において、ハロゲン原子は互いにまったく同一ではない。
【0162】
本明細書で用いられる「フルオロアルキル」という用語はアルキル基を意味し、このアルキル基において、少なくとも一つの水素がフッ素原子と置換される。フルオロアルキルの例は−CF
3、−CH
2CF
3、−CF
2CF
3、−CH
2CH
2CF
3等を含むが、これらに限定されない。
【0163】
本明細書に用いられる通り、「ヘテロアルキル」という用語は任意で置換されるアルキルラジカルを意味し、このアルキルラジカルにおいて、1又はそれ以上の骨格鎖原子はヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン又はそれらの組み合わせである。ヘテロ原子はヘテロアルキル基の任意の内側位置に配されてもよく、或いはヘテロアルキル基が分子の残部に付着する場所に配されてもよい。この例として、−CH
2−O−CH
3、−CH
2−CH
2−O−CH
3、−CH
2−NH−CH
3、−CH
2−CH
2−NH−CH
3、−CH
2−N(CH
3)−CH
3、−CH
2−CH
2−NH−CH
3、−CH
2−CH
2−N(CH
3)−CH
3、−CH
2−S−CH
2−CH
3、−CH
2−CH
2、−S(O)−CH
3、−CH
2−CH
2−S(O)
2−CH
3、−CH=CH−O−CH
3、−Si(CH
3)
3、−CH
2−CH=N−OCH
3、及び−CH=CH−N(CH
3)−CH
3が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、いくつかの実施形態において、2までのヘテロ原子は連続的なものであって、例えば−CH
2−NH−OCH
3及び−CH
2−O−Si(CH
3)
3である。
【0164】
「ヘテロ原子」という用語は炭素又は水素以外の原子を意味する。ヘテロ原子は典型的に、酸素、硫黄、窒素、ケイ素及びリンから独立して選択されるが、これらの原子に制限されない。2又はそれ以上のヘテロ原子が存在する実施形態において、2又はそれ以上のヘテロ原子は互いにまったく同一であることができ、或いは2又はそれ以上のヘテロ原子のいくつか又は全ては互いに異なることができる。
【0165】
「結合」又は「一重結合」という用語は2つの原子間の化学的結合を意味する。或いは、結合によって連結した原子がより大きい下部構造の一部であると見なされる場合は2つの部分間の化学結合を意味する。
【0166】
「部分」という用語は分子の特定の断片又は官能基を意味する。化学部分はしばしば、分子に埋め込まれた又は付加された化学物質として知られている。
【0167】
「チオアルコキシ」又は「アルキルチオ」基は−S−アルキル基を意味する。
【0168】
「SH」基はまたチオール基又はスルフヒドリル基のいずれかを意味する。
【0169】
「任意に置換された」又は「置換された」という用語は、基準となる基が1又はそれ以上の追加される基で個別に又は独立して置換されることを意味する。この追加される基は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホキシド、アリールスルホキシド、アルキルスルホン、アリールスルホン、シアノ、ハロ、アクリル、ニトロ、ハロアルキル、フルオロアルキル、アミノ(モノアミノ及び二置換アミノ基を含む)、及びそれらの保護された誘導体から選択される。例として、任意の置換基はL
sR
sであることができ、ここで各L
sは−O−、−C(=O)−、−S−、−S(=O)−、−S(=O)
2−、−NH−、−NHC(O)−、−C(O)NH−、S(=O)
2NH−、−NHS(=O)
2、−OC(O)NH−、−NHC(O)O−、−(置換又は非置換C
1−C
6アルキル)又は−(置換又は非置換C
2−C
6アルケニル)の結合から独立して選択される。各R
sはH、(置換又は非置換C
1−C
4アルキル)、(置換又は非置換C
3−C
6シクロアルキル)、ヘテロアリール又はヘテロアルキルから独立して選択される。上記の置換基の保護誘導体を形成する保護基は、上記のGreene及びWutsの文献等の出典に見られるものを含む。
【0170】
「マイケル受容体部分」という用語はミカエル反応に関与可能な官能基を意味する。ここで、新規の共有結合がマイケル受容体部分及びドナー部分の一部の間に形成される。マイケル受容体部分は求電子基であり、「ドナー部分」は求核基である。任意の化式(A1からA6)、化式(B1からB6)、化式(C1からC6)、化式(D1からD6)、化式(I)、又は化式(VII)に表される「G」基は、マイケル受容体部分の非制限的な例である。
【0171】
「求核基」又は「求核性」という用語は電子豊富化合物又はその部分を意味する。求核基の例は、例えばBtkのCys481等の分子のシステイン残基を含むが、当然これに限定されない。
【0172】
「求電子基」又は「求電子性」という用語は電子不足又は電子欠乏分子、又はその部分を意味する。求電子基の例はマイケル受容体部分を含むが、当然これに限定されない。
【0173】
製剤、組成物又は部分に関連して本明細書で用いられる「許容される」又は「薬学的に許容される」という用語は、治療中の患者の全体的な健康への持続的で有害な影響がないということ、或いは化合物の生物学的活性又は生物学的特性を阻害せず、比較的無毒であることを意味する。
【0174】
本明細書で用いられる通り、「アゴニスト」という用語は、その存在によりタンパク質の生物学的活性が結果としてもたらされる化合物を意味する。この生物学的活性は、自然発生する例えばBtk等のタンパク質のリガンドの存在によって結果としてもたらされる生物学的活性と同一の種類のものである。
【0175】
本明細書で用いられる通り、「部分的にアゴニスト」という用語はその存在によりタンパク質の生物学的活性が結果としてもたらされる化合物を意味する。この生物学的活性は、自然発生するタンパク質のリガンドの存在によって結果としてもたらされるものと同一の種類であるが、規模はより小さい。
【0176】
本明細書で用いられる通り、「アンタゴニスト」という用語は、その存在によりタンパク質の生物学的活性の規模が結果として減少する化合物を意味する。特定の実施形態において、アンタゴニストの存在により、例えばBtk等のタンパク質の生物学的活性が結果として完全に阻害される。特定の実施形態において、アンタゴニストはインヒビターである。
【0177】
本明細書で用いられる通り、特定の化合物又は医薬組成物の投与による特定の疾患、障害又は状態の症状の「回復」は、重症度の低下、発症の遅延、進行の緩徐化、又は持続時間の短縮のいずれかを意味する。これは永久的又は一時的、又は化合物又は組成物の投与に起因又は関連することが可能な永続的又は一過性のものである。
【0178】
「生物学的利用能」は、本明細書に開示される化合物の重量の比率を意味する。この投薬される化合物は、例えば任意の化式(A1からA6)、化式(B1からB6)、化式(C1からC6)、化式(D1からD6)、化式(I)、又は化式(VII)の化合物であって、研究中の動物又はヒトの全身循環内に送られる。静脈内投与された場合の薬剤の曝露全て(AUC
(0−∞))は、通常100%生物利用可能(F%)であると定義される。「経口的な生物学的利用能」は、本明細書に開示される例えば任意の化式(A1からA6)、化式(B1からB6)、化式(C1からC6)、化式(D1からD6)、化式(I)、又は化式(VII)等の化合物が、医薬組成物が経口で摂取された場合、静脈内投与と比較してどの程度全身循環内に吸収されるかを意味する。
【0179】
本明細書で用いられる「生物物理プローブ」という用語は、生物系において、又は他の生分子の存在下で(例:生体外、生体内又は体外で)、分子(生分子を含む)の構造的変化を検出或いは監視するプローブを意味する。いくつかの実施形態において、このような分子はタンパク質を含むがこれに限定されない。また「生物物理プローブ」はタンパク質と他の高分子の相互関係を検出又は監視するのに利用される。他の実施形態において、生物物理プローブはスピン標識、蛍光色素分子及び光活性可能な基を含むがこれらに限定されない。
【0180】
「血漿濃度」は、患者の血液の血漿部分中の本明細書に開示される化合物の濃度であって、この化合物は任意の化式(A1−A6)、化式(B1−B6)、化式(C1−C6)、化式(D1−D6)、化式(I)又は化式(VII)である。化式(A1−A6)、化式(B1−B6)、化式(C1−C6)、化式(D1−D6)、化式(I)又は化式(VII)の化合物の血漿濃度は対象間で有意に変化する。この変化は代謝及び/又は他の治療薬との予想される相互関係に関する変動性に起因する。本明細書に開示されるある実施形態に関連して、任意の化式(A1−A6)、化式(B1−B6)、化式(C1−C6)、化式(D1−D6)、化式(I)又は化式(VII)の化合物の血漿濃度は対象によって変化する。同様に、最大血漿濃度(C
max)、又は最大血漿濃度への到達時間(T
max)、又は血漿濃度時間曲線下の総領域(AUC
(0−∞))等の値は、対象によって変化する。この変化に起因して、化式(A1−A6)、化式(B1−B6)、化式(C1−C6)、化式(D1−D6)、化式(I)又は化式(VII)の任意の化合物の「治療上有効量」を構成するために必要な量が対象によって変化することが予期される。
【0181】
本明細書で用いられる「ブルトンチロシンキナーゼ」という用語は、人類のブルトンチロシンキナーゼを意味し、これは例えば米国特許第6,326,469号(GenBank Accession No. NP_000052)に開示されている。
【0182】
本明細書で用いられる「ブルトンチロシンキナーゼ相同体」という用語は、ブルトンチロシンキナーゼの相同分子種を意味し、例えばマウス(GenBank Accession No. AAB47246)、イヌ(GenBank Accession No. XP_549139)、ラット(GenBank Accession No. NP_001007799)、ニワトリ(GenBank Accession No. NP_989564)、又はゼブラフィッシュ(GenBank Accession No. XP_698117)の相同分子種、及びブルトンチロシンキナーゼの1以上の基質(アミノ酸配列「AVLESEEELYSSARQ」を有するペプチド基質)に対してキナーゼ活性を示す任意の前述の縮合タンパク質である。
【0183】
本明細書で用いられる「化学発光基」という用語は、熱を加えずに、化学反応の結果として発光する基を意味する。例として、ルミノール(5−アミノ−2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン)は、塩基及び金属触媒の存在下で過酸化水素(H
2O
2)のような酸化剤と反応して、励起状態の生成物(3−アミノフタレート、3−APA)を生成する。
【0184】
本明細書で用いられる「発色団」という用語は、可視波長、UV波長又はIR波長の光を吸収する分子を意味する。
【0185】
本明細書で用いられる「同時投与」等の用語は、選択された治療剤の一人の患者への投与を含むこと、及び治療計画を含むことが意図されている。この治療計画において、治療剤は同じ又は異なる経路で同時又は異なる時間に投与される。
【0186】
他の実施形態において、本明細書で用いられる「検出可能標識」という用語は分析技術によって観察可能である標識を意味する。この分析技術は、蛍光、化学発光、電子スピン共鳴、紫外/可視吸光度分光法(absorbancespectroscopy)、質量分析法、核磁気共鳴、磁気共鳴及び電気化学的方法を含むが、これらに限定されない。
【0187】
本明細書で用いられる「色素」という用語は、発色団を含む可溶な着色物質を指す。
【0188】
本明細書で用いられる「有効量」という用語は、治療する疾患又は症状の症候の1つ以上をある程度軽減する、投与薬剤又は化合物の十分な量を指す。その結果、疾患の徴候、症候若しくは原因が軽減及び/又は緩和され、又は生物系の任意の他の所望の変化が起こり得る。例として、治療に用いる「有効量」は本明細書に開示される化合物を含む組成物の量であって、これは、過度の有害な副作用がなく疾患の症状に臨床的に有意な減少をもたらすことが要求される。任意の個別のケースにおける適切な「有効量」は、例えば投与量増加研究等の技術を用いて選択的に決定される。「治療的に有効な量」という用語は例えば、予防的な有効量を含む。本明細書に開示される化合物の「有効量」は、過度の有害な副作用がなく、所望の薬理作用又は治療的改善を達成するのに有効な量である。「有効量」又は「治療的に有効な量」は対象によって変化することができ、これは、任意の化式(A1−A6)、化式(B1−B6)、化式(C1−C6)、化式(D1−D6)、化式(I)又は化式(VII)の化合物の代謝、年齢、体重、対象の全身症状、治療中の状態、治療中の状態の重症度、及び医師の判断における変化に起因する。
【0189】
本明細書で用いられる「高電子密度基」という用語は、電子ビームを照射すると電子を散乱する基を意味する。このような基としては、モリブデン酸アンモニウム、次硝酸ビスマスヨウ化カドミウム、99%、カルボヒドラジド、三塩化鉄六水和物、ヘキサメチレンテトラミン、98.5%、無水三塩化インジウム、硝酸ランタン、酢酸鉛三水和物、クエン酸鉛三水和物、硝酸鉛、過ヨウ素酸、ホスホモリブデン酸、ホスホタングステン酸、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウム、ルテニウムレッド、硝酸銀、銀タンパク化合物(Ag含有率:8.0−8.5%)「強」、銀テトラフェニルポルフィン(S−TPPS)、塩化金酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、硝酸タリウム、チオセミカルバジド(TSC)、酢酸ウラニル、硝酸ウラニル、及び硫酸バナジルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0190】
他の実施形態において、本明細書で用いられる「エネルギー伝達剤」という用語は、別の分子にエネルギーを供与することができる、又は別の分子からエネルギーを受容することができる分子を意味する。例として、蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)は双極子−双極子カップリングプロセスであって、これにより、蛍光ドナー分子の励起状態エネルギーが、基底状態の受容体分子に無放射で移動し、次いで、供与されたエネルギーがより長波長において蛍光発光される。
【0191】
「増強」又は「増強すること」という用語は、効力又は期間のいずれかにおいて所望の効果を増加又は延長することを意味する。例として、治療剤の効果を「増強すること」とは、疾患、障害又は症状の処置中に対する治療薬の効果を、効力又は期間のいずれかにおいて増加又は延長させる能力を意味する。本明細書で用いられる「増強有効量」とは、疾患、障害又は状態の治療において治療剤の効果を増強するのに十分な量を意味する。患者に使用するときに、この使用に有効な量は、疾患、障害又は状態の重症度及び経過、前治療、患者の健康状態及び薬物応答性並びに処置を行う医師の判断に依存する。
【0192】
本明細書で用いられる「フルオロフォア」という用語は、励起されると光子を放出し、それによって蛍光を発する分子を意味する。
【0193】
本明細書で用いられる「相同性システイン」という用語は、本明細書に定義されるブルトンチロシンキナーゼのシステイン481の配列位置に相同的な配列位置内に見られるシステイン残基を意味する。例えば、システイン482はブルトンチロシンキナーゼのラット相同分子種の相同的なシステインである。システイン479はチキン相同分子種の相同的なシステインである。システイン481はゼブラフィッシュ相同分子種の相同的なシステインである。他の例において、TXKの相同的なシステインでブルトンチロシンに関連するTecキナーゼファミリーメンバーはCys350である。相同的なシステインを有するキナーゼの他の例は
図7に示される。また、チロシンキナーゼ(TK)の配列アラインメントはインターネット上に公開されるkinase.com/human/kinome/phylogeny.html.から参照のこと。
【0194】
本明細書で用いられる「同一の」という用語は、同一である2又はそれ以上の配列又は部分配列を指す。また、本明細書において用いられる「実質的に同一」という用語は、比較アルゴリズムを用いて測定して、又は手操作による配列及び目視検査によって測定して、比較窓又は指定領域上で比較し最大一致で整列したときに、同一の配列単位の割合を有する2又はそれ以上の配列を意味する。例として、2又はそれ以上の配列は、指定領域上の配列単位が約60%同一、約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一又は約95%同一である場合に「実質的に同一」である。このような割合は2つ以上の配列の「同一割合」を説明する。配列の同一性は、長さが少なくとも約75−100配列単位である領域上で、長さが約50配列単位である領域上で、又は指定しない場合には、配列全体にわたって存在することができる。この定義はまた、試験配列の相補体も表す。例として、2またはそれ以上のポリペプチド配列は、アミノ酸残基が同じであるときには、同一である。一方、2又はそれ以上のポリペプチド配列は、アミノ酸残基が指定領域上で約60%同一、約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一又は約95%同一である場合には、「実質的に同一」である。同一性は、少なくとも約75−100アミノ酸長である領域上で、約50アミノ酸長である領域上で、又は指定しない場合には、ポリペプチド配列全体にわたって存在することができる。また、例として、2又はそれ以上のポリヌクレオチド配列は、核酸残基が同じであるときには、同一である。一方、2又はそれ以上のポリヌクレオチド配列は、核酸残基が指定領域上で約60%同一、約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一又は約95%同一である場合には「実質的に同一」である。同一性は、少なくとも約75−100個の核酸長である領域上で、約50個の核酸長である領域上で、又は指定しない場合には、ポリヌクレオチド配列全体にわたって存在することができる。
【0195】
本明細書で用いられるキナーゼを「阻害する」、「阻害すること」、又はキナーゼの「インヒビター」という用語は、酵素的なホスホトランスフェラーゼ活性の阻害を意味する。
【0196】
本明細書で用いられる「不可逆的なインヒビター」は、標的タンパク質(例:キナーゼ)と接触することによりタンパク質と又はタンパク質なしで新たに共有結合の形成を引き起こす化合物を意味する。これにより、1又はそれ以上の標的タンパク質の生物活性(例:ホスホトランスフェラーゼ活性)が、続いて起こる不可逆的なインヒビターの存在又は欠如にも関わらず、減少又は消滅する。
【0197】
本明細書で用いられる「不可逆的なBtkインヒビター」という用語は、Btkインヒビターのアミノ酸残基と共有結合を形成することができるBtkのインヒビターを意味する。ある実施形態において、Btkの不可逆的なインヒビターはBtkのCys残基と共有結合を形成することが可能である。特定の実施形態においては
図7で示される通り、不可逆的なインヒビターは、他のチロシンキナーゼの相同的に対応する位置において、BtkのCys481残基(又はその相同体)またはシステイン残基と共有結合を形成することが可能である。
【0198】
本明細書で用いられる「単離された」という用語は、目的の部分を目的でない部分の少なくともいくつかから分離及び除去することを意味する。単離された物質は乾燥状態又は半乾燥状態のどちらかであることができ、或いは水溶液に限定されないがこれを含む溶液中にあることもできる。単離された部分は相同的な状態であることができ、或いは単離された部分は医薬組成物の一部であることができる。この医薬組成物はさらに薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む。例として、核酸又はタンパク質は、このような核酸又はタンパク質が自然状態で関連する少なくともいくつかの細胞部分を有さない場合「単離されている」か、或いは核酸又はタンパク質は生体内の又は体外の濃度以上のレベルにまで濃縮されている。また例として、遺伝子が単離されるのは、遺伝子に隣接すると共に目的の遺伝子以外のタンパク質をエンコードする翻訳領域から分離されている場合である。
【0199】
本明細書で用いられるいくつかの実施形態において、「標識」という用語は、部分内に取り込まれると共に容易に検出される物質を意味し、これによりその物的流通は検出及び/又は監視される。
【0200】
本明細書に用いられる「結合(linkage)」という用語は、リンカーの官能基及び他の分子との化学反応から形成される結合又は化学部分を指す。いくつかの実施形態において、このような結合は共有結合及び非共有結合を含むが、これらに限定されない。一方で、このような化学部分は、エステル、カルボナート、イミン、リン酸エステル、ヒドラゾン、アセタール、オルトエステル、ペプチド結合及びオリゴヌクレオチド結合が挙げられるが、これらだけに限定されない。加水分解的に安定な結合とは、結合が水中で実質的に安定であると共に、生理条件下に限定されないがこれを含めて、有用pH値で水と長期間、おそらくは無期限でも反応しないことを意味する。加水分解的に不安定な結合又は加水分解性結合とは、結合が例えば血液を含めて、水中又は水溶液中で分解性であることを意味する。他の実施形態において、酵素的に不安定な結合又は酵素分解性結合とは、結合が1又はそれ以上の酵素によって分解されることを意味する。例として、PEG及び関連するポリマーは、ポリマー骨格中、又はポリマー骨格とポリマー分子の1又はそれ以上の末端官能基の間のリンカー基中に、分解性結合を有する。このような分解性結合としては、PEGカルボン酸又は活性PEGカルボン酸と生物活性剤上のアルコール基との反応によって形成されるエステル結合が挙げられるが、これに限定されない。このようなエステル基は、一般に生理条件下で加水分解して生物活性剤を放出する。他の加水分解性結合は、カルボナート結合、アミンとアルデヒドの反応から得られるイミン結合、アルコールとリン酸基の反応によって形成されるリン酸エステル結合、ヒドラジドとアルデヒドの反応生成物であるヒドラゾン結合、アルデヒドとアルコールの反応生成物であるアセタール結合、ホルマートとアルコールの反応生成物であるオルトエステル結合、PEGなどのポリマーの一端にあるアミン基を含めるがこれに限定されないアミン基とペプチドのカルボキシル基とによって形成されるペプチド結合、及びポリマーの端部にあるホスホアミダイト基を含めるがこれに限定されないホスホアミダイト基とオリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基とによって形成されるオリゴヌクレオチド結合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0201】
「レポーター部分の活性の測定」(又は同様の言い回し表現)という表現は、レポーター部分を研究中のシステム内で定量化する(絶対的、近似的又は相対的な用語において)方法を意味する。いくつかの実施形態において、このような方法は、色素、光架橋剤、細胞毒性化合物、薬剤、親和性標識、光親和性標識、反応性化合物、抗体又は抗体断片、生体材料、ナノ粒子、スピン標識、蛍光色素分子、金属含有部分、放射性部分、新規の官能基、共有的又は非共有的に他の分子と相互作用する基、光ケージド部分、化学線により励起可能な部分、リガンド、光異性化可能な部分、ビオチン、ビオチンの類似体、重原子を組み込んでいる部分、化学的に切断可能な基、光切断可能な基、伸長した側鎖、酸化還元活性化剤、同位体標識されている部分、生物物理学的なプローブ、リン光性の基、化学発光性の基、高電子密度基、磁性基、インターカレート基、発色団、エネルギー伝達剤、生物活性剤、検出可能な標識、又は上記の任意の組み合わせであるレポーター部分を定量化する任意の方法を含む。
【0202】
本明細書に開示される化合物の「代謝物」は、化合物が代謝される時に形成される化合物の誘導体である。「活性代謝物」という用語は、化合物が代謝される時に形成される化合物の誘導体である。本明細書で用いられる「代謝された」という用語は、特定の物質が生体によって変化を受けるプロセス(加水分解反応及び酸化反応等の酵素によって触媒される反応を含むがこれらに限定されない)の総体を指す。これにより、酵素は化合物に対し特定の構造変化をもたらす。例えば、サイトクロムP450は様々な酸化的及び還元的な反応を触媒する一方、ウリジン二リン酸グルクロニルトランスフェラーゼは活性化されたグルクロン酸分子を芳香族アルコール、脂肪族アルコール、カルボン酸、アミン及び遊離スルフヒドリル基への移動を触媒する。代謝のさらなる情報はThe Pharmacological Basis of Therapeutics 9th Edition,(McGraw-Hill (1996))から入手可能である。本明細書に開示される化合物の代謝物は、宿主への化合物の投与及び宿主からの組織サンプルの分析、或いは化合物を生体内の肝細胞を用いて培養し残りの化合物を分析することのどちらかによって、選択的に同定される。いくつかの実施形態において、化合物の代謝物は酸化過程によって形成されると共に対応するヒドロキシを含む化合物に対応する。いくつかの実施形態において、化合物は代謝され薬理学的に活性な代謝物になる。
【0203】
本明細書で用いられる「調節する」という用語は、直接的又は間接的のいずれかで標的に相互作用し、これにより標的の活性を変化させることを意味する。この活性の変化とは、例として、標的の活性を増強すること、標的の活性を阻害すること、標的の活性を制限すること、或いは標的の活性を延長することを含む。
【0204】
本明細書で用いられる「修飾物質」という用語は、分子の活性を変化させる化合物を意味する。例えば、修飾物質は、修飾物質がない場合活性の規模と比較して、分子の特定の活性の規模を増加又は低減させることができる。特定の実施形態において、修飾物質はインヒビターであって、これは1又はそれ以上の分子の活性の規模を減少させる。特定の実施形態において、インヒビターは1又はそれ以上の分子の活性を完全に妨げる。特定の実施形態において、修飾物質は活性化因子であって、この活性化因子は少なくとも1つの分子の活性の規模を増加させる。特定の実施形態において、修飾物質の存在によって、修飾物質がない場合にはおこらない活性が結果としてもたらされる。
【0205】
本明細書で用いられる「重原子を組み込んだ部分」という用語は、通常炭素よりも重い原子のイオンを組み込んだ基を意味する。いくつかの実施形態において、このようなイオン又は原子は、ケイ素、タングステン、金、鉛及びウランを含むが、これらに限定されない。
【0206】
本明細書で用いられる「ナノ粒子」という用語は約500nmから約1nmの間の粒子サイズを有する粒子を意味する。
【0207】
本明細書で用いられる通り、「pERK」という用語は、Thr202/Tyr204におけるリン酸化されたERK1及びERK2を意味し、これは市販されるリン酸化特異的抗体(例:Cell Signaling Technologies社の#4377)によって検出される。
【0208】
本明細書で用いられる「光親和性標識」という用語は、光に曝されると、標識が親和性を有する分子と結合を形成する基を有する標識を意味する。例として、このような結合は共有結合性でも非共有結合性でもよい。
【0209】
本明細書で用いられる「フォトケージド部分」という用語は、ある波長の照明によって、他のイオン又は分子と共有結合又は非共有結合する基を意味する。
【0210】
本明細書で用いられる「光異性化可能部分」という用語は、光による照明によって1つの異性体から別の異性体に変わる基を意味する。
【0211】
本明細書で用いられる「血中濃度半減期」という用語は、ラット、イヌ又はヒト内の半減期を意味し、この半減期は血漿内で薬物濃度を徐々に測定することにより決定される。この測定は単回投与の後、及びデータを標準の薬物動態学的モデルに適合させた後に行われる。このデータの適合はWinNonLin等のソフトウェアを用いて、薬物が血漿から50%除去された時間を決定する。
【0212】
本明細書で用いられる「予防的に有効な量」という用語は、患者に適用される化合物の量を意味し、これは治療中の1又はそれ以上の疾患の症状、状態又は障害をある程度にまで軽減するものである。このような予防的用途において、このような量は患者の健康状態、体重等に依存することができる。
【0213】
本明細書で用いられる「放射性物質」という用語は、神経核がアルファ、ベータまたはガンマ等の核放射線を自発的に発する基を意味する。ここで、アルファ粒子はヘリウムの核、ベータ粒子は電子、及びガンマ粒子は高エネルギー光子である。
【0214】
本明細書で用いられる「選択的な結合化合物」という用語は、1又はそれ以上の標的タンパク質の任意の部分に選択的に結合する化合物を意味する。
【0215】
本明細書で用いられる「選択的に結合する」という用語は、選択的に結合する化合物が、非標的タンパク質に結合するよりも大きな結合性を持って、例えばBtk等の標的タンパク質に結合する能力を意味する。特定の実施形態において、特定の結合とは、非標的への結合性より少なくとも10、50、100、250、500、1000又は1000倍以上の結合性を持って標的に結合することを言う。
【0216】
本明細書で用いられる「選択的な修飾物質」という用語は、非標的活性に関連する標的活性を選択的に調節する化合物を意味する。特定の実施形態において、特定の修飾物質とは、非標的活性より少なくとも10、50、100、250、500、1000又は1000倍以上標的活性を調節することを言う。
【0217】
本明細書で用いられる「スピン標識」という用語は、不対の電子スピン(すなわち安定した常磁性の基)を示す原子又は原子の基を含む分子を意味する。いくつかの実施形態において、この分子は電子スピン共鳴スペクトロスコピーによって検出され、また他の実施形態においては他の分子に付着している。このようなスピン標識分子はニトリルラジカル及び窒素酸化物を含むがこれらに限定されず、またいくつかの実施形態においては一回のスピン標識又は二回のスピン標識である。
【0218】
本明細書で用いられる「略精製された」という用語は、略又は不可欠的に他の化合物を有さない目的の化合物を意味する。この化合物は、精製に先立って、目的の化合物と通常付随する又は相互作用する。例において、目的の化合物の調製が汚染部分の30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満(乾燥重量で)を含有する場合、目的の化合物は「略精製される」ことができる。したがって、「略精製される」目的の部分は、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はそれ以上の精製レベルを有することができる。
【0219】
本明細書で用いられる「対象」という用語は、治療、観察又は実験の目的となる動物を意味する。例において、対象はこれに限定されないが哺乳類であって、また哺乳類とはヒトを含むがこれに限定されない。
【0220】
本明細書で用いられる「標的活性」という用語は、選択的な修飾物質によって調節されることができる生物活性を意味する。特定の例となる標的活性は、結合親和性、シグナル伝達、酵素活性、主要増殖、炎症又は炎症に関連したプロセス、及び疾患又は状態に関連した1又はそれ以上の症状の回復を含むが、これらに限定されない。
【0221】
本明細書で用いられる「標的タンパク質」という用語は、選択的な結合化合物によって結合されることができるタンパク質の分子又は部分を意味する。特定の実施形態において、標的タンパク質はBtkである。
【0222】
本明細書で用いられる「治療する」、「治療すること」又は「治療」という用語は、疾患又は状態の症状を緩和、軽減又は回復させること、さらなる症状を予防すること、症状により引き起こされる根底にある代謝を回復又は予防すること、例えば疾患又は状態の発達を抑止することといった疾患又は状態を阻害すること、疾患又は状態を和らげること、疾患又は状態の後退を引き起こすこと、疾患又は状態によって引き起こされる状態を和らげること、或いは疾患又は状態の症状を止めることを含む。「治療する」、「治療すること」又は「治療」という用語は予防的及び/又は治療的処置を含むがこれらに限定されない。
【0223】
本明細書で用いられる通り、IC
50は特定のテスト化合物の量、濃度又は投与量を意味し、Btkの阻害等の最大反応をこのような反応を測定する試験において50%阻害することを達成する。
【0224】
本明細書で用いられる通り、EC
50は特定のテスト化合物の投与量、濃度又は量を意味し、容量依存的な反応を最大発現の50%で誘発する。この反応は特定のテスト化合物によって誘引、誘発又は増強されるものである。