(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994076
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】ジャッキ駆動用ソケット
(51)【国際特許分類】
B66F 3/12 20060101AFI20160908BHJP
【FI】
B66F3/12 C
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-54743(P2012-54743)
(22)【出願日】2012年3月12日
(65)【公開番号】特開2013-189264(P2013-189264A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】594150235
【氏名又は名称】株式会社プロス
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(74)【代理人】
【識別番号】100093469
【弁理士】
【氏名又は名称】杉岡 幹二
(74)【代理人】
【識別番号】100134980
【弁理士】
【氏名又は名称】千原 清誠
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 明彦
(72)【発明者】
【氏名】長船 勝己
(72)【発明者】
【氏名】蓬莱 和洋
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−116392(JP,U)
【文献】
特開平09−202600(JP,A)
【文献】
特開平03−111398(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3160263(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 3/12
B66F 13/00
B66F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合金具として二枚の穴付板を用いたジャッキを、回転工具により昇降させるのに用いるソケットであって、
一端に前記回転工具に接続するための工具接続部を、他端に前記二枚の穴付板の隙間に挿入可能な係合部材を備えるソケット本体を有し、
前記係合部材が、前記二枚の穴付板との摺動面の少なくとも一方に、進退自在に設けられた複数の球体を有していることを特徴とするジャッキ駆動用ソケット。
【請求項2】
前記球体が、前記回転工具の回転軸に垂直な方向に複数並べて設けられていることを特徴とする請求項1に記載のジャッキ駆動用ソケット。
【請求項3】
前記工具接続部が、六角軸ビットを有することを特徴とする請求項1または2に記載のジャッキ駆動用ソケット。
【請求項4】
前記工具接続部が、回転軸が四角軸である回転工具の該四角軸に係合可能な四角穴を有することを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載のジャッキ駆動用ソケット。
【請求項5】
さらに、一端に前記四角穴に係合可能な四角軸を、他端に六角軸ビットを有するアタッチメントを有することを特徴とする請求項4に記載のジャッキ駆動用ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャッキ駆動用ソケットに係り、特に、インパクトレンチ、インパクトドライバなどの回転工具に接続され、回転工具の動力で自動車の車載工具であるジャッキを昇降させるソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
ジャッキには、例えば、
図1に示すような、パンタグラフ型のジャッキ9が用いられる。ジャッキ9は、土台1と、土台1に回動自在に取り付けられたアーム2a、2bと、アーム2a、2bの上部に取り付けられたヘッド3と、シャフト4と、二枚の穴付板からなる係合金具5とを有し、車載工具のジャッキロッド(図示省略)によって係合金具5を回転させることによりヘッド3の位置を昇降させるものである。
【0003】
しかし、車載工具を用いてジャッキアップ作業を手動で行うには、強い力を要するし、タイヤ交換に長時間を要する。このため、動力を用いてジャッキアップ作業を行う発明が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、電動モータの駆動力によりジャッキの昇降を行う発明が提案されている。特許文献2、3および4には、ジャッキの係合金具を両側から挟み込み、蝶ボルトなどで固定して回転工具に接続し、回転工具によって係合金具を回転させることによりジャッキの昇降を行う発明が提案されている。特許文献5および6には、棒の先端部に互いに反平行に突出した二本のピンを、係合金具を構成する二枚の穴付板のそれぞれの穴に挿入し、該棒を回転工具に接続し、回転させることによりジャッキの昇降を行う発明が提案されている。特許文献7には、ジャッキの連結桿の外郭に係合する係合部、ガイド部、連結部を有するジャッキ駆動用ソケットに関する発明が提案されている。特許文献8には、ジャッキの係合金具を、トルクアーム、ジャッキホルダおよび連結金具を介して回転工具に接続するジャッキ用動力装置に関する発明が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−177996号公報
【特許文献2】特開平9−71393号公報
【特許文献3】特開平9−71394号公報
【特許文献4】実開昭62−63290号公報
【特許文献5】実公昭61−17997号公報
【特許文献6】特開平9−136268号公報
【特許文献7】特開平3−111398号公報
【特許文献8】登録実用新案第3013358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明のように、電動モータをジャッキに取り付けた構成では、車載工具の一つであるジャッキ(通常は、パンタグラフジャッキ)とは、別のジャッキを用意することを前提とするものであり、車載のジャッキが無駄になる。
【0007】
特許文献2、3および4の発明によれば、車載のジャッキをそのまま使用することができるが、この構成では、係合金具を両側から挟み込んだのち、手動で蝶ボルトを回して固定する必要があり、作業性が悪い。
【0008】
特許文献5および6の発明のように、ピンを係合金具の穴に差し込んで回す構成では、回転工具の回転軸と、係合金具の回転軸とにずれが生じると、ピンが穴から外れ、ジャッキアップ作業を中断せざるを得ない場合がある。
【0009】
特許文献7で提案されているソケットは、内部に設ける必要がある係合部の形状が複雑であり、部品点数が多い。このため、製造コストが上昇し、また、係合部の固着は接着剤などに頼らざるを得ず、長期間の使用に耐えうるものではないことが予想されるため、実用化は困難である。
【0010】
特許文献8の発明のように、ジャッキの係合金具と回転工具との間に三つもの部材が存在すると、製造コストが上昇するとともに、それぞれの部材の取り付け、取り外しなどに多大な時間を費やし、また、三つの部材の一つでも紛失すると使えなくなってしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、従来技術の課題を解決するためになされたものであり、係合金具との脱着が容易である反面、一旦、係合金具に係合させると脱落しにくいジャッキ駆動用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前掲の特許文献7などに記載されるように、車載ジャッキの係合金具には、ほぼ中央部に穴が形成されている穴付板を2枚用いたものと、該穴付板を1枚用いたものがある。本発明者らは、穴付板を2枚用いた係合金具を前提として、インパクトレンチなどの回転工具に接続して用いることが可能であり、かつ、係合金具との脱着が容易である反面、一旦、係合金具に係合させると脱落しにくい車載ジャッキ駆動用ソケットについて鋭意研究を行った結果、本発明を完成させた。
【0013】
本発明は、下記の(1)〜
(5)のジャッキ駆動用ソケットを要旨とする。
【0014】
(1)係合金具として二枚の穴付板を用いたジャッキを、回転工具により昇降させるのに用いるソケットであって、一端に前記回転工具に接続するための工具接続部を、他端に前記二枚の穴付板の隙間に挿入可能な係合部材を備えるソケット本体を有し、前記係合部材が、前記二枚の穴付板との摺動面の少なくとも一方に、進退自在に設けられた
複数の球体を有しているジャッキ駆動用ソケット。
【0016】
(2)前記球体が、前記回転工具の回転軸に垂直な方向に複数並べて設けられている上記
(1)のジャッキ駆動用ソケット。
【0017】
(3)前記工具接続部が、六角軸ビットを有する上記
(1)または(2)に記載のジャッキ駆動用ソケット。
【0018】
(4)前記工具接続部が、回転軸が四角軸である回転工具の該四角軸に係合可能な四角穴を有する上記(1)〜
(3)いずれかに記載のジャッキ駆動用ソケット。
【0019】
(5)さらに、一端に前記四角穴に係合可能な四角軸を、他端に六角軸ビットを有するアタッチメントを有する上記
(4)のジャッキ駆動用ソケット。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、係合金具との脱着が容易である反面、一旦、係合金具に係合した後は、脱落しにくく、回転工具の回転軸と、係合金具の回転軸とのずれを防止できる。また、本発明に寄れば、工具としての寿命が長く、また、係合穴部に関する部品点数が少ないため、安いコストでジャッキ駆動用ソケットを製造することが可能である。本発明の好ましい実施形態によれば、四角軸からなるジャックを有する回転工具にも、六角穴からなるジャックを有する回転工具にも、ジャッキ駆動用ソケットを接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】本発明に係るジャッキ駆動用ソケットの例の外観を示す図 (a)上面図 (b)右側面図 (c)正面図
【
図3】本発明に係るジャッキ駆動用ソケットの使用例を示す上面図 (a)係合前の状態 (b)係合後の状態
【
図4】本発明に係るジャッキ駆動用ソケットの使用例を示す正面図 (a)係合前の状態 (b)係合後の状態
【
図5】本発明に係るアタッチメントの例を示す図 (a)正面図 (b)側面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
図2に示すように、本発明に係るジャッキ駆動用ソケット20は、係合金具5として二枚の穴付板5a、5bを用いたジャッキを、回転工具(図示省略)により昇降させるのに用いるソケットである。本発明に係るジャッキ駆動用ソケット20は、一端に回転工具(図示省略)に接続するための工具接続部10を、他端に他端に前記二枚の穴付板の隙間に挿入可能な係合部材11を備えるソケット本体13を有する。そして、二枚の穴付板との摺動面14a、14bの少なくとも一方に、進退自在に設けられた球体11aを有している。
【0023】
図3および4に示すように、本発明に係るジャッキ駆動用ソケット20を、その工具接続部10を介して回転工具(図示省略)に接続し、係合部材11を二枚の穴付板5a、5bの隙間に挿入する。球体11aは、常時内部に設置されたバネにより付勢されており、摺動面(
図4に示す例では14a)から突出した状態となっている。そして、球体11aは、穴付板5a、5bを係合部材11に摺動させるときには、内部に押し込まれた状態となるが、穴5cの位置まで挿入されると、突出した状態になり、穴付板5a、5bのぐらつきを規制するので、回転工具の回転軸と、係合金具の回転軸とのずれを防止できる。また、ジャッキアップ中に係合金具5からソケット20が外れるのを防止することが可能となる。また、本発明に係るジャッキ駆動用ソケット20を強く引っ張れば、球体11aが穴5cの側面により押し込まれるので、係合金具5から容易に取り外すことが可能である。
【0024】
球体11aの突出高さ(係合部材11の摺動面14aと、球体11aの突出部分の頂点との距離)は、二枚の穴付板5a、5bの間隔(a)と、係合部材11の厚さ(b)とのクリアランス(a−b)より大きければよい。球体11aの突出高さは、特に、2(a−b)以上であることが好ましい。
【0025】
球体11aは、係合部材11の摺動面14a、14bに複数設けられていることが好ましい。この場合、球体が設けられるのは、摺動面の一方のみでもよいし、両面でもよい。ただし、作業性の観点からは、摺動面の一方に複数に設けられていることが好ましい。球体11aは、回転工具の回転軸(すなわち、ソケット本体の回転軸)に垂直な方向に複数並べて設けられていることが好ましい。これは、係合金具の回転軸の垂直方向へのずれを防止しやすくするためである。
【0026】
特に、
図3に示すように、摺動面の一方に、回転工具の回転軸に垂直な方向に二つの球体が並べて設けられていることが好ましい。球体11a同士の間隔は、特に制約がないが、
図3に示すように、二つの球体11aの最も離れている点間の距離が、係合金具の穴5cの内径と一致するように設けることが好ましい。
【0027】
本発明に係るジャッキ駆動用ソケット20は、係合金具5に取り付けられた後、厚板形状の係合部材11によって回転が加えられる構成となっているので、係合部材11に破損が生じにくく、工具としての寿命が長い。また、係合部材11に関する部品点数が少ないため、安いコストでジャッキ駆動用ソケットを製造することが可能である。
【0028】
工具接続部10としては、例えば、
図2〜
図4に示すように、四角穴14を有するものを用いることができる。このように四角穴で構成される工具接続部14を有するジャッキ駆動用ソケットは、インパクトレンチなど、回転軸が四角軸である回転工具を用いてジャッキアップするに際して使用することができる。また、工具接続部10としては、例えば、六角軸ビットを用いることもできる。六角軸ビットで構成される工具接続部を有するジャッキ駆動用ソケットは、インパクトドライバ、電動ドライバー、電動ドリルなど、アタッチメントの回転軸を六角穴のジャックで係合する構成の回転工具を用いてジャッキアップするに際して使用することができる。
【0029】
本発明のジャッキ駆動用ソケットにおいては、
図5に示すように、一端に四角穴形状の工具接続部(
図2の符号10)に係合可能な四角軸21を、他端に六角軸ビット24を有するアタッチメント30を用いてもよい。このアタッチメント30の四角軸21を
図2〜4に示すジャッキ駆動用ソケット20の四角穴形状の工具接続部10に挿入し、係合させれば、工具接続部を六角軸ビット(
図5の符号24)に変更することができ、インパクトドライバなどの回転工具に接続可能となる。このように、このアタッチメント30を外せば、工具接続部が四角穴形状であるソケット本体13(
図2参照)と、一端に四角軸21を、他端に六角軸ビット24を有するアタッチメント30(
図5参照)とを用意すれば、様々な回転工具に接続可能となる。
【0030】
なお、四角軸21の側面には球(図示省略)がある。スリーブ23は、球22の固定(突出状態で固定)または自由(出し入れ自在)の切り替えをするものである。スリーブ23は、常時、バネによって図中左方向に付勢されている。このとき、球22は、四角軸21の側面から一部が突出した状態、すなわち、内部に収容不能な状態となっている。スリーブ23を図中右方向に移動させると、球22が内部に収容可能となる。このため、スリーブ23を図中右方向に移動させた状態、すなわち、球22を内部に収容可能な状態で、四角軸21を四角穴形状の工具接続部10内に挿入し、球22が工具接続部内部の穴(図示省略)に収容された後、スリーブ23を開放すると、球22が突出した状態となる。このようにして、アタッチメント30をジャッキ駆動用ソケット20aに係合することができる。穴は、四角穴形状の工具接続部10内の一つの側面だけでなく、複数の側面に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、係合金具との脱着が容易である反面、一旦、係合金具に係合した後は、脱落しにくく、回転工具の回転軸と、係合金具の回転軸とのずれを防止できる。また、本発明に寄れば、工具としての寿命が長く、また、係合穴部に関する部品点数が少ないため、安いコストでジャッキ駆動用ソケットを製造することが可能である。本発明の好ましい実施形態によれば、四角軸からなるジャックを有する回転工具にも、六角穴からなるジャックを有する回転工具にも、ジャッキ駆動用ソケットを接続することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 土台
2a、2b アーム
3 ヘッド
4 シャフト
5 係合金具
5a、5b 穴付板
5c、5d 穴
9 ジャッキ
10 工具接続部
11 係合部材
11a 球体
13 ソケット本体
14a、14b 摺動面
15 穴
16 ねじ回し部
20 本発明に係るジャッキ駆動用ソケット
21 四角軸
22 球
23 スリーブ
24 六角軸ビット
30 アタッチメント