(54)【発明の名称】真空装置、有機膜の形成方法、有機EL素子の製造方法、有機EL表示パネル、有機EL表示装置、有機EL発光装置およびゲッター材を構成する材料の選択方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
真空チャンバーと、真空ポンプと、前記真空チャンバーと前記真空ポンプとを結ぶ排気管と、前記排気管の内部に配設されたゲッター材を備える真空装置を準備する真空装置準備工程と、
有機膜材料を前記真空チャンバーに収容し、前記真空チャンバーの内部圧力を前記真空ポンプにより減圧する減圧工程と、を含み、
前記ゲッター材は、前記有機膜材料と同一の材料を含む、
有機膜の形成方法。
真空チャンバーと、真空ポンプと、前記真空チャンバーと前記真空ポンプとを結ぶ排気管と、前記排気管の内部に配設されたゲッター材を備える真空装置を準備する真空装置準備工程と、
上面に第1電極および有機発光層材料がこの順に形成された基板を前記真空チャンバーに収容し、前記真空チャンバーの内部圧力を前記真空ポンプにより減圧する減圧工程と、
前記減圧工程を経た有機発光層材料の上方に第2電極を形成する第2電極形成工程と、を含み、
前記ゲッター材は、前記有機発光層材料と同一の材料を含む、
有機EL素子の製造方法。
有機膜材料を収容する真空チャンバーと、真空ポンプと、前記真空チャンバーと前記真空ポンプとを結ぶ排気管とを備える真空装置において、前記排気管の内部に配設するゲッター材を構成する材料の選択方法であって、
前記有機膜材料と同一の材料からなる試料用有機膜材料を前記真空チャンバーに収容し、前記真空チャンバーの内部圧力を前記真空ポンプにより減圧する減圧工程と、
前記減圧工程を経た試料用有機膜材料の表面近傍に不純物が付着しているか否かを判定し、不純物が付着していると判定した場合に、前記有機膜材料と同一の材料を、前記ゲッター材を構成する材料として選択する選択工程と、を含む、
ゲッター材を構成する材料の選択方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪本発明の一態様の概要≫
本発明の一態様に係る真空装置は、有機膜材料を収容する真空チャンバーと、真空ポンプと、前記真空チャンバーと前記真空ポンプとを結ぶ排気管と、を備え、前記排気管の内部に、前記有機膜材料と同一の材料を含むゲッター材が配設されている。
また、本発明の一態様に係る真空装置の特定の局面では、前記有機膜材料は、前記真空ポンプから飛散する不純物を吸着し、当該吸着により特性が劣化する材料を含み、前記ゲッター材は前記不純物を吸着する。
【0010】
また、本発明の一態様に係る真空装置の特定の局面では、前記排気管は、前記真空チャンバーと前記真空ポンプとを連通させる開放状態と、前記真空チャンバーと前記真空ポンプとを連通させない閉鎖状態とを切替可能であり、かつ、内部に前記ゲッター材が配設されない第1配管と、前記開放状態と前記閉鎖状態とを切替可能であり、かつ、内部に前記ゲッター材が配設される第2配管と、を含む。
【0011】
また、本発明の一態様に係る真空装置の特定の局面では、前記真空チャンバーの内部圧力が前記真空ポンプの内部圧力と平衡状態になるまでの間は、前記第1配管が開放状態であるとともに前記第2配管が閉鎖状態であり、前記真空チャンバーの内部圧力が前記真空ポンプの内部圧力と平衡状態にある間は、前記第1配管が閉鎖状態であるとともに前記第2配管が開放状態である。
【0012】
また、本発明の一態様に係る真空装置の特定の局面では、前記真空チャンバーの内部圧力が前記真空ポンプの内部圧力と平衡状態になるまでの間は、前記第1配管が開放状態であるとともに前記第2配管が閉鎖状態であり、前記真空チャンバーの内部圧力が前記真空ポンプの内部圧力と平衡状態にあり、かつ、前記真空チャンバーの内部圧力が前記真空ポンプの内部圧力と平衡状態にあるときの当該真空ポンプの内部圧力に対し、前記不純物の蒸気圧の方が低い場合には、前記第1配管が閉鎖状態であるとともに前記第2配管が開放状態である。
【0013】
また、本発明の一態様に係る真空装置の特定の局面では、前記真空チャンバーの内部圧力が前記真空ポンプの内部圧力と平衡状態になるまでの間は、前記第1配管が開放状態であるとともに前記第2配管が閉鎖状態であり、前記真空チャンバーの内部圧力が前記真空ポンプの内部圧力と平衡状態にあるときの当該真空ポンプの内部圧力に対し、前記不純物の蒸気圧の方が低い場合には、前記第1配管が閉鎖状態であるとともに前記第2配管が開放状態である。
【0014】
また、本発明の一態様に係る真空装置の特定の局面では、前記ゲッター材は、前記排気管の内面に、前記有機膜材料と同一の材料を含むインクが塗布されてなる。
また、本発明の一態様に係る真空装置の特定の局面では、前記排気管の内壁に凹凸加工が施されているとともに、当該凹凸に沿うように前記ゲッター材が配設されている。
また、本発明の一態様に係る真空装置の特定の局面では、前記排気管は、内面に前記ゲッター材が配設された細管が複数本束ねられてなる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る真空装置の特定の局面では、前記排気管は、内面に前記ゲッター材が配設された配管が螺旋状に巻回されてなる。
また、本発明の一態様に係る真空装置の特定の局面では、さらに、前記不純物を吸着させた前記ゲッター材から当該不純物を除去する不純物除去手段を備える。
また、本発明の一態様に係る真空装置の特定の局面では、前記不純物除去手段は、前記排気管を加温することにより前記ゲッター材から前記不純物を昇華除去する。
【0016】
本発明の一態様に係る有機膜の形成方法は、真空チャンバーと、真空ポンプと、前記真空チャンバーと前記真空ポンプとを結ぶ排気管と、前記排気管の内部に配設されたゲッター材を備える真空装置を準備する真空装置準備工程と、有機膜材料を前記真空チャンバーに収容し、前記真空チャンバーの内部圧力を前記真空ポンプにより減圧する減圧工程と、を含み、前記ゲッター材は、前記有機膜材料と同一の材料を含む。
【0017】
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記有機膜材料は、前記真空ポンプから飛散する不純物を吸着し、当該吸着により特性が劣化する材料を含み、前記減圧工程において、前記不純物を前記ゲッター材に吸着させる。
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記排気管は、前記真空チャンバーと前記真空ポンプとを連通させる開放状態と、前記真空チャンバーと前記真空ポンプとを連通させない閉鎖状態とを切替可能であり、かつ、内部に前記ゲッター材が配設されない第1配管と、前記開放状態と前記閉鎖状態とを切替可能であり、かつ、内部に前記ゲッター材が配設される第2配管と、を含む。
【0018】
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記減圧工程において、前記真空チャンバーの内部圧力が前記真空ポンプの内部圧力と平衡状態になるまでの間は、前記第1配管を開放状態とするとともに前記第2配管を閉鎖状態とし、前記真空チャンバーの内部圧力が前記真空ポンプの内部圧力と平衡状態にある間は、前記第1配管を閉鎖状態とするとともに前記第2配管を開放状態とする。
【0019】
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記減圧工程において、前記真空チャンバーの内部圧力が前記真空ポンプの内部圧力と平衡状態になるまでの間は、前記第1配管を開放状態とするとともに前記第2配管を閉鎖状態とし、
前記真空チャンバーの内部圧力が前記真空ポンプの内部圧力と平衡状態にあり、かつ、前記真空チャンバーの内部圧力が前記真空ポンプの内部圧力と平衡状態にあるときの当該真空ポンプの内部圧力に対し、前記不純物の蒸気圧の方が低い場合には、前記第1配管を閉鎖状態とするとともに前記第2配管を開放状態とする。
【0020】
また、本発明の一態様に係る有機膜の形成方法の特定の局面では、前記減圧工程において、前記真空チャンバーの内部圧力が前記真空ポンプの内部圧力と平衡状態になるまでの間は、前記第1配管を開放状態とするとともに前記第2配管を閉鎖状態とし、前記真空チャンバーの内部圧力が前記真空ポンプの内部圧力と平衡状態にあるときの当該真空ポンプの内部圧力に対し、前記不純物の蒸気圧の方が低い場合には、前記第1配管を閉鎖状態とするとともに前記第2配管を開放状態とする。
【0021】
本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法は、真空チャンバーと、真空ポンプと、前記真空チャンバーと前記真空ポンプとを結ぶ排気管と、前記排気管の内部に配設されたゲッター材を備える真空装置を準備する真空装置準備工程と、上面に第1電極および有機発光層材料がこの順に形成された基板を前記真空チャンバーに収容し、前記真空チャンバーの内部圧力を前記真空ポンプにより減圧する減圧工程と、前記減圧工程を経た有機発光層材料の上方に第2電極を形成する第2電極形成工程と、を含み、前記ゲッター材は、前記有機発光層材料と同一の材料を含む。
【0022】
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法により製造された有機EL素子を用いる。
本発明の一態様に係る有機EL表示装置は、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法により製造された有機EL素子を用いる。
本発明の一態様に係る有機EL発光装置は、本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法により製造された有機EL素子を用いる。
【0023】
本発明の一態様に係るゲッター材を構成する材料の選択方法は、有機膜材料を収容する真空チャンバーと、真空ポンプと、前記真空チャンバーと前記真空ポンプとを結ぶ排気管とを備える真空装置において、前記排気管の内部に配設するゲッター材を構成する材料の選択方法であって、前記有機膜材料と同一の材料からなる試料用有機膜材料を前記真空チャンバーに収容し、前記真空チャンバーの内部圧力を前記真空ポンプにより減圧する減圧工程と、前記減圧工程を経た試料用有機膜材料の表面近傍に不純物が付着しているか否かを判定し、不純物が付着していると判定した場合に、前記有機膜材料と同一の材料を、前記ゲッター材を構成する材料として選択する選択工程と、を含む。
【0024】
≪実施の態様1≫
[真空装置の構成]
本実施形態では、塗布成膜法により有機発光層の成膜する場合において、有機発光層材料を乾燥させる際に用いられる真空装置を例に挙げて説明する。
図1(a)は、実施の態様1に係る真空装置の構成を示す図である。本実施の態様に係る真空装置は、真空チャンバー1、真空ポンプ2、排気管3、ゲッター材4を備える。
【0025】
<真空チャンバー>
真空チャンバー1は被乾燥物5を収容するものであり、本実施形態における被乾燥物5は有機EL素子半製品である。真空チャンバー1は、その内部の大きさが例えば、500[mm]×500[mm]×150[mm]程度である。また、真空チャンバー1は真空ポンプ2による減圧に耐え得るような頑丈な材料で構成されており、このような材料としては、例えば、ステンレス等が挙げられる。
【0026】
図1(b)は被乾燥物5の模式的な部分拡大図であり、
図1(a)において破線で示す部分の拡大図となっている。
被乾燥物5は、基板上に有機膜材料としての有機発光層材料が塗布されてなる。すなわち、真空チャンバー1には有機膜材料としての有機発光層材料が収容されることになる。本実施形態における有機発光層材料は、有機発光層を構成する材料と溶媒とを含むインクである。バンクは、有機発光層の形成領域となる開口部を区画するためのものである。真空装置により有機発光層材料が乾燥されることで、有機発光層が形成される。なお、有機EL素子の詳細な構造および製造方法については、ここでの説明を省略し、実施の態様3で述べることとする。
【0027】
<真空ポンプ>
真空ポンプ2は、真空チャンバー1内を真空状態に維持するために用いられるものである。真空ポンプ2としては、例えば、メカニカルブースターポンプ、ロータリーポンプ、ダイアフラムポンプ等の機械式の真空ポンプを用いることができる。これらの中でも、特に、いわゆるポンプ油を使用しないドライポンプを用いることがより望ましい。ドライポンプは、例えば、有機EL素子や半導体薄膜製造等のように、真空チャンバー内をクリーンに保つ必要がある場合に使用される。なお、これら真空ポンプには、通常、潤滑剤や真空シール材が用いられている。
【0028】
ここで、「真空チャンバー内を真空状態に維持する」とは、真空チャンバー内が完全に真空となるように維持する場合だけでなく、真空チャンバー内が真空と見なせる状態に維持する場合も含まれる。「真空チャンバー内が真空と見なせる状態」とは、真空チャンバーの内部圧力が、例えば約1[Pa]以下である状態をいう。
また、上記の真空ポンプを使用し、真空チャンバー1内を大気圧から減圧した場合、5[min]程度で真空チャンバー1の内部圧力を1[Pa]以下まで排気することが可能である。なお、この排気速度は、排気管3の長さ(真空チャンバー1から真空ポンプ2までの距離)や排気管3の屈曲具合によって変化し得る。
【0029】
真空ポンプ2は、単一の真空ポンプで構成されていることとしてもよいし、直列接続または並列接続された複数の真空ポンプで構成されることとしてもよい。複数の真空ポンプを用いる場合とは、例えば、大気圧から中真空までの減圧(粗引き)をドライポンプで行い、中真空から高真空、または超高真空までの減圧(主排気)を、メカニカルブースターポンプを用いて行うような場合である。具体的には、まずドライポンプにより大気圧から1000[Pa]程度まで減圧し、その後、メカニカルブースターポンプにより約1[Pa]以下まで減圧する。
【0030】
真空ポンプ2は真空チャンバー1内の減圧を行うときにのみ動作させても良いが、真空ポンプ2の動作および停止を頻繁に行うと、真空ポンプ2に負担がかかるおそれがある。真空ポンプ2に負担がかかる場合は、真空チャンバー1と真空ポンプ2とを連通させる開放状態と、真空チャンバー1と真空ポンプ2とを連通させない閉鎖状態とを切替可能にするバルブ(電磁弁)を排気管3に設けることとしてもよい。
【0031】
バルブを開状態とすることで排気管3が開放状態となり、真空チャンバー1内の減圧が開始される。また、バルブを閉状態とすることで排気管3が閉鎖状態となり、真空チャンバー1内の減圧は停止される。なお、バルブは通常、スロー排気用バルブとラフ排気用バルブからなる。真空チャンバー1の内部圧力が高い間はスロー排気用バルブを開状態、スロー排気用バルブ閉状態とする。真空チャンバー1の内部圧力が所定圧力以下になった場合には、スロー排気用バルブを閉状態、ラフ排気用バルブを開状態とする。このように、排気管3にバルブを設けることで真空ポンプ2を動作状態のままとすることができるので、動作および停止を頻繁に行うことによる負荷が低減される。
【0032】
<排気管、ゲッター材>
排気管3は、真空チャンバー1と真空ポンプ2とを結ぶものであり、この排気管3により、真空チャンバー1の内部と真空ポンプ2とが連通される。排気管3の内径は、例えば、100[mm]程度である。
ゲッター材4は、真空ポンプ2から飛散する種々の物質のうち、有機発光層材料に吸着されることで有機発光層の特性を劣化させる物質である不純物6を吸着するものであり、排気管3の内部に配設されている。本実施形態においては、ゲッター材4を構成する材料として、有機膜材料である有機発光層材料と同一の材料を含んでいる。
【0033】
このゲッター材4を構成する材料の選択は、本発明者が鋭意検討の結果得た知見に基づき行われたものである。すなわち、有機発光層材料は真空ポンプ2から飛散する不純物6を吸着し、当該吸着により特性が劣化することが判明した。この知見より、有機発光層材料と同一の材料をゲッター材4の材料として用いることで、真空ポンプ2から飛散する種々の不純物のうち、少なくとも有機発光層の特性を劣化させる不純物6を吸着することができるという考えに至った。真空ポンプ2から飛散する種々の不純物全てを取り除くことができないにしても、少なくとも有機発光層の特性を劣化させる不純物6を吸着することができれば、有機発光層材料または有機発光層への悪影響は大幅に低減することが可能となる。なお、得た知見ならびにゲッター材を構成する材料の選択方法の詳細については、後の[各種実験と考察]で述べる。
【0034】
このように、排気管3内に有機発光層材料と同一の材料を含むゲッター材4が配設されていることにより、真空ポンプ2から不純物6が飛散したとしても、不純物6は排気管3内を移動している間にゲッター材4に捕捉されることになる。すなわち、有機発光層材料が不純物6を吸着するよりも前に、排気管3内のゲッター材4が不純物6を吸着する。したがって、不純物6が真空チャンバー1の内部へ侵入することがない。
【0035】
以上説明したように、本実施の態様に係る真空装置によれば、少なくとも真空ポンプ2から飛散した不純物6による、有機発光層材料の表面の汚染を防止することができる。よって、有機発光層材料の表面における不純物汚染を可能な限りなくすことが可能である。有機発光層材料への不純物6の吸着を防止できることで、結果として、有機発光層の特性劣化を防止することができる。
【0036】
本実施形態においては、排気管3内壁の略全面に亘ってゲッター材4が配設されている。このようにすることで、不純物6を効率良く吸着することができる。ゲッター材4を排気管3の略全面に亘って形成する方法としては、例えば、排気管3の内面に有機発光層材料と同一の材料を含むインクを塗布する方法がある。つまり、有機発光層材料をバンクにより区画された開口部だけでなく、排気管3の内壁にも塗布する。このような方法によれば、ゲッター材4を容易に排気管3内壁の略全面に形成することができる。ゲッター材4の形成は塗布方法に限られず、スプレーコート等や蒸着法等の公知の成膜方法によって形成することとしてもよい。
【0037】
また、排気管3におけるゲッター材4を配設する区間は、不純物6の種類によって調整することが望ましい。これを実現する方法としては、例えば、排気管3をいくつかの配管に分割し、各配管をクランプで接続するような構成としておき、必要に応じてゲッター材4が配設されている配管とゲッター材4が配設されていない配管とを交換するようにする等の方法がある。
【0038】
[各種実験と考察]
<真空装置を用いた乾燥工程の有無による発光特性の違い>
本発明者は、真空装置を用いた乾燥工程を行うか否かで、有機EL素子の発光特性に違いが現れるかを検証した。ここで、「真空装置を用いた乾燥工程」は、有機発光層材料を真空チャンバーに収容し、真空チャンバーの内部圧力を真空ポンプにより減圧する減圧工程の1種である。以下、「真空装置を用いた乾燥工程」を単に「減圧工程」と記載する。実験用の有機EL素子として、減圧工程を経ない有機EL素子と、減圧工程を経る有機EL素子の2種を準備した。
【0039】
図2は、実験用の有機EL素子の構造を示す模式断面図である。実験用の有機EL素子は、
図2に示すように、基板101上に第1電極としての陽極102、正孔注入層103、正孔輸送層104、有機発光層105、電子輸送層106、第2電極としての陰極107および封止層108を順に積層されてなる。減圧工程を経ない有機EL素子および減圧工程を経る有機EL素子に構造的な差異はない。
【0040】
図3は、実験用の有機EL素子の形成手順を説明するための模式断面図である。
減圧工程を経る有機EL素子について説明する。まず、
図3(a)に示すように、基板101上に陽極102、正孔注入層103、正孔輸送層104を順に積層するとともに、正孔輸送層104の上面に有機発光層材料105aを塗布する。次に、加熱を行って有機発光層材料105aを乾燥させて有機発光層105を成膜することで、有機発光層105形成後の有機EL素子半製品を準備する(
図3(b))。
【0041】
続いて、
図3(c)に示すように、有機発光層105形成後の有機EL素子半製品を、真空ポンプに接続された真空チャンバー内に載置した。そして、真空ポンプを起動させて真空チャンバー内を真空状態にし、20[min]放置した。真空ポンプとしては、メカニカルブースターポンプを用いた。また、実験に用いた真空チャンバーと真空ポンプとを結ぶ排気管には、ゲッター材は設けられていない。
【0042】
図4は、実験に用いたメカニカルブースターポンプによる排気時間と真空チャンバー内の圧力との関係を示すグラフである。本実験においては、
図4に示すような排気プロファイルを有するポンプを用いて実験を行った。横軸が真空ポンプによる排気時間を、縦軸が真空チャンバー内の圧力をそれぞれ示している。
図4に示すように、メカニカルブースターポンプに接続された真空チャンバー内は約10[Pa]まで減圧した。
【0043】
そして、真空チャンバーから有機EL素子半製品を取り出し、
図3(d)に示すように、有機発光層105の上に電子輸送層106、陰極107、封止層108を順に積層することにより、減圧工程を経る有機EL素子が完成する。
減圧工程を経ない有機EL素子について説明する。まず、
図3(a),(b)に示すように、減圧工程を経る有機EL素子と同様に、基板101上に陽極102、正孔注入層103、正孔輸送層104および有機発光層105を順に積層し、有機発光層105形成後の有機EL素子半製品を準備した。続いて、
図3(c)に示す減圧工程を行わずに、有機発光層105形成後の有機EL素子半製品を、グローブボックスに20[min]載置した。そして、
図3(d)に示すように、有機発光層105の上に電子輸送層106、陰極107、封止層108を順に積層することにより、減圧工程を経ない有機EL素子が完成する。
【0044】
減圧工程を経ない有機EL素子、減圧工程を経る有機EL素子ともに、陽極102、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、陰極107および封止層108には、公知の材料を用いた。有機発光層105としてはF8−F6を用いた。なお、各層の具体的な形成方法は本実験の本質ではないためここでの説明は省略し、実施の態様3で述べることとする。
【0045】
なお、減圧工程を経ない有機EL素子の製造においては、当然のことながら、有機発光層材料を乾燥させるための減圧工程を行うことができない。そこで、有機発光層を構成する材料を溶解させるための溶媒として、減圧工程による乾燥が不要な低沸点溶媒であるキシレンを用いた。ただし、キシレンを溶媒として用いた場合、インクジェット法による塗布を行うことができない。つまり、キシレンはあくまで実験用に用いたに過ぎないものである。そのため、実験用有機EL素子の製造においては、有機発光層材料の乾燥は加熱により行った。また、実験用有機EL素子との比較が行えるよう、減圧工程を経る有機EL素子についても同様とした。
【0046】
図5は、減圧工程を経ない有機EL素子の発光特性と、減圧工程を経た有機EL素子の発光特性を示す図である。
図5は、実験用の有機EL素子を発光させた場合の、発光時間と発光強度の関係を示すグラフであり、横軸は発光時間[hr]を、縦軸は発光強度をそれぞれ示している。発光強度は、発光開始直後を1としたときの相対値で示している。また、減圧工程を経ない有機EL素子の発光特性(
図5において「減圧工程無」)を実線で、減圧工程を経る有機EL素子の発光特性(
図5において「減圧工程有」)を二点鎖線でそれぞれ示している。
【0047】
減圧工程を経ない有機EL素子と比較して、減圧工程を経る有機EL素子は、時間経過に伴う発光強度低下量が大きいことが見てとれる。換言すると、有機発光層材料塗布後に減圧工程を経ない有機EL素子よりも、減圧工程を経る有機EL素子の方が発光強度半減寿命(発光強度が半減するまでに要する時間)が短いことがわかる。
両実験用有機EL素子の違いは、有機発光層成膜後の基板が置かれる環境のみである。つまり、グローブボックス内に保管するか、真空ポンプに接続された真空チャンバー内に保管するかの違いにより、発光強度半減寿命に大きな差が生じたことになる。以上のことより、本発明者は、機械式の真空ポンプに用いられている潤滑剤の含有成分、もしくは、真空シール材等の含有成分が不純物として、真空ポンプから真空チャンバーへ飛散するのではないかと考えた。そして、当該不純物が有機発光層の表面近傍に吸着することで、有機発光層に何らかの悪影響を与え、この結果、有機発光層の特性が劣化するのではないかと考えた。以下、「機械式の真空ポンプに用いられている潤滑剤の含有成分、もしくは、真空シール材等の含有成分」を、単に「潤滑剤等の含有成分」と記載する。
【0048】
減圧工程を経る実験用の有機EL素子における電子輸送層は、真空成膜法に基づき形成されている。この真空成膜工程を経てもなお発光特性に悪影響が生じていることからすると、不純物は真空成膜時の高真空下でも揮発しないような、比較的沸点の高いものであると推定された。このことと、不純物が機械式の真空ポンプに用いられている潤滑剤の含有成分、もしくは、真空シール材等の含有成分であることとは矛盾するものではない。
【0049】
以上のことより、有機発光層材料は不純物を吸着し易いものであるとともに、当該吸着により特性が劣化する材料を含んでいると考えられる。そこで、本発明者は、有機発光層材料と同一の材料を含むゲッター材を排気管の内部に配設することで、真空ポンプから飛散する不純物を吸着させるという発明を着想するに至った。
潤滑剤は、通常、潤滑成分(例えば、潤滑油である。)と、潤滑成分の酸化を防止するための酸化防止剤を含んでいる。また、真空シール材にも、当該真空シール材を構成する樹脂材料の酸化を防止する目的で酸化防止剤が含まれている。酸化防止剤は、潤滑成分の酸化または樹脂材料の酸化が原因の所謂スラッジやワニスの発生を抑制するものであり、例えば、連鎖停止剤、過酸化物分解剤、金属不活性化剤等の種類が知られている。
【0050】
この中でも、本発明者は、ジフェニルアミン系化合物やフェノール系化合物等で構成され、潤滑成分の酸化の進行を停止させる連鎖停止剤に注目した。一般にラジカルは不安定である。しかしながら、ジフェニルアミン系化合物やフェノール系化合物が水素ラジカルを失って形成されるラジカル状態は、そのラジカル部分に隣接する芳香環による共鳴安定化が起こるため、比較的安定であると考えられる。そのため、酸化により生じる反応性の高い過酸化物や、ラジカル種へ水素ラジカルを供与して、自身がラジカル状態になるといった反応が進行する。ジフェニルアミン系化合物やフェノール系化合物のラジカル状態は比較的安定であるものの、酸化により生じる過酸化物と反応する程度の反応性は有する。ラジカル状態のジフェニルアミン系化合物やフェノール系化合物は、上記の過酸化物と反応することでラジカル反応を停止させる性質を有するため、この性質が利用され、酸化の進行を停止させる連鎖停止剤として用いられている。
【0051】
<発光強度半減寿命低下のメカニズム>
以下、ジフェニルアミン系化合物を主に取り上げて説明する。
図6は、酸化防止剤として用いられるジフェニルアミン系化合物の一例を示す図である。
図6(a)、(b)、(c)に、ジフェニルアミン系化合物の一例である化合物A、化合物B、化合物Cの化学式をそれぞれ示している。以降の図において、化合物A、化合物B、化合物Cに代表されるジフェニルアミン系化合物を、総じて
図6(d)で示す化学式で表すこととする。また、ジフェニルアミン系化合物を単に「DPA」と記載する。
【0052】
図7は、ジフェニルアミン系化合物を原因とする、有機EL素子における発光強度半減寿命低下のメカニズムの一例を説明するための図である。説明の都合上、有機発光層105と電子輸送層106との界面領域109を誇張して示している。
まず、式(1)に示すように、有機EL素子駆動中においては、電子輸送層106を構成する電子輸送性材料Xは、ラジカルアニオン(ポーラロン)状態となることで電子の輸送を行う(
図7における「ラジカルアニオン状態の電子輸送性材料X」)。そのため、このラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xをキャリアと考えることができる。そして、界面領域109において、DPAはラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xに水素ラジカルを供与することで、自身がラジカルアニオン状態となる(
図7における「ラジカルアニオン状態のDPA」)。このような反応が進行する理由として、ラジカルアニオン状態のDPAは、負電荷が2つのベンゼン環において非局在化するため安定に存在し得るからであると考えた。つまり、ラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xよりも、ラジカルアニオン状態のDPAの方がさらに安定な化学種となり得るからであると考えた。その場合、ラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xは、DPAから放出された水素ラジカルと結合するといった反応も進行し得る(
図7における「XH」)。
【0053】
式(1)に基づいて説明したように、減圧工程を経ることで発光輝度の低下が大きくなる要因の1つとして、キャリアであるラジカルアニオン状態の電子輸送性材料XがDPAにより消失することにより、有機発光層105に注入される電子が減少することが考えられる。
次に、式(2)に示すように、界面領域109において、ラジカルアニオン状態のDPAは、有機発光層105を構成する材料Yと反応することも想定される。この反応により、有機発光層105を構成する材料Yとは異なる生成物Zを与える。これは、有機発光層105が劣化することに相当する。このように、DPAと有機発光層105を構成する材料Yが反応してしまうことも、発光輝度の低下の一因であると考えられる。
【0054】
以上説明したようなメカニズムが想定されることからも、潤滑剤等に含まれる酸化防止剤、特に連鎖停止剤が発光強度半減寿命低下に大きく影響していると考えた。
<減圧工程を経た有機発光層表面の付着物の分析>
次に、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を用い、減圧工程を経た有機発光層の表面に付着している物質を分析した。減圧工程を経た有機発光層をヘリウム雰囲気下で昇温加熱し、加熱された有機発光層から放出されるガス(アウトガス)を液体窒素で捕集し、GC−MSで分析した。GC−MS分析は、アジレント・テクノロジー社製の6890GCを用い、イオン化はEI法(電子イオン化法)により行った。カラムはアジレント・テクノロジー社製のDB5msを使用し、40度から300度まで昇温した。
【0055】
図8は、減圧工程を経た有機発光層表面の付着物の分析結果を示す図である。縦軸は検出強度(トータルイオンカレントであり、検出された分子数に相当する。)、横軸は保持時間[min]をそれぞれ示しており、
図8では、保持時間15〜20[min]におけるガスクロマトグラフを示している。保持時間16〜19[min]付近に、化合物A、化合物B、化合物Cのピークが検出された。純粋な化合物A、化合物B、化合物CについてもGC−MS分析を行い、保持時間およびマススペクトルが
図8に示す結果と一致していることを確認した。
【0056】
GC−MS分析の結果より、本発明者は、真空ポンプに用いられている潤滑剤等に酸化防止剤として含まれているジフェニルアミン系化合物が、発光強度半減寿命低下の原因であることを突き止めた。そして、ジフェニルアミン系化合物が次項で説明するメカニズムにより、真空ポンプから真空チャンバーへ飛散するのではないかと考えた。
<真空ポンプから真空チャンバーへの不純物飛散のメカニズム>
図9は、真空ポンプによる排気時間と真空チャンバー内の圧力との関係を示すグラフである。横軸が排気時間であり、縦軸が真空チャンバー内の圧力である。また、縦軸において、下方にいくほど真空度が高いことを示している。
【0057】
時刻Aは、真空ポンプの起動時点に相当する。また、時刻Bは、真空チャンバー内の減圧が進行している最中である。時刻Cにおいては、真空ポンプの性能限界まで真空チャンバー内が減圧されており、真空チャンバーの内部圧力が真空ポンプの内部圧力と平衡状態になっている。時刻A、時刻B、時刻Cの各々における真空チャンバーと真空ポンプ内の様子を、
図10を用いて説明する。
【0058】
図10は、
図9に示すグラフにおける時刻A、時刻B、時刻Cにおける真空チャンバーと真空ポンプ内の様子を模式的に示す図である。
図10に示すように、真空チャンバー26は、排気管28を介して真空ポンプ27に接続されている。真空チャンバー26内の気体は、真空ポンプ27により、排気管28、29を通って外部へ排出される。また、各図において、真空ポンプ27に用いられている潤滑剤の含有成分等を、不純物6で示している。
【0059】
図10(a)は真空ポンプ27の起動時点である。減圧を開始すると、
図10(b)において破線の矢印で示すように、真空チャンバー26内の気体は、排気管28から真空ポンプ27および配管29を介して外部へ排出される。このように、真空チャンバー26から排気管28、真空ポンプ27および配管29へと向かう気流が発生する。このため、減圧期間(時刻B)においては、不純物6が真空チャンバー26へ飛散することはないと考えられる。
【0060】
しかしながら、時刻Cにおいては、真空ポンプ27の性能限界まで真空チャンバー26内が減圧され、真空チャンバー26の内部圧力が真空ポンプ27の内部圧力と平衡状態になっている。そのため、真空チャンバー26と真空ポンプ27との間の気流も平衡状態にある。平衡状態にあることに加え、平衡状態にあるときの真空ポンプ27の内部圧力に対し不純物6の蒸気圧の方が低い場合には、
図10(c)に示すように、真空ポンプ27から真空チャンバー26への不純物6の飛散が起こると考えられる。そして、真空チャンバー26および真空ポンプ27における真空度が高くなることで、不純物6の平均自由行程が長くなり、不純物6の有機発光層材料への付着が起こると考えられる。また、不純物6の平均自由行程が長くなると、有機発光層と不純物6との衝突確率もより高くなると考えられる。さらに、真空チャンバー26および真空ポンプ27における真空度の上昇により、真空チャンバー26および真空ポンプ27内の圧力に占める不純物6の蒸気圧の割合が上昇するが、このことによっても不純物6の飛散が促進される。
【0061】
[ゲッター材を構成する材料の選択方法]
上述したように、本発明者は、真空チャンバー内に実際に有機発光層材料を収容して減圧工程を行い、その結果作成された有機発光層と、減圧工程を経ずに作成された有機発光層との特性を比較した。この比較結果より、減圧工程を経た有機発光層材料は、真空ポンプから飛散する不純物を吸着する性質を有していることを見出した。
【0062】
この一連の作業を基に、本発明者は、有機膜材料としての有機発光層材料を収容する真空チャンバーと、真空ポンプと、真空チャンバーと真空ポンプとを結ぶ排気管とを備える真空装置において、排気管の内部に配設するゲッター材を構成する材料の選択方法を考案した。以下、本選択方法の手順について説明する。
まず、有機膜材料としての有機発光層材料と同一の材料からなる、試料用有機膜材料としての試料用有機発光層材料を真空チャンバーに収容する。ここで、試料用有機発光層材料は、例えば、実験用有機EL素子を作成する際に用いた有機発光層材料に相当する。次に、真空チャンバーの内部圧力を真空ポンプにより減圧する減圧工程を行う。これにより、真空装置において、真空ポンプから真空チャンバーへ不純物が飛散する環境が形成される。
【0063】
そして、減圧工程を経た試料用有機発光層材料の表面近傍に不純物が付着しているか否かを判定する。ここで、「試料用有機発光層材料の表面近傍に不純物が付着しているか否かを判定する」には、直接的に試料用有機発光層材料の表面近傍に不純物が付着しているか否かを判定する場合と、間接的に判定する場合とが含まれる。直接的に判定する場合とは、例えば、試料用有機発光層材料の表面近傍の付着物を分析する場合等がある。また、間接的に判定する場合とは、例えば、上述した本発明者による検証のように、例えば、試料用有機発光層の特性を調べる実験を行うことにより、不純物付着の有無を判定する場合等がある。
【0064】
最後に、試料用有機発光層材料の表面近傍に不純物が付着していると判定した場合には、有機発光層材料と同一の材料を、ゲッター材を構成する材料として選択する選択工程を行う。
ここでは、有機発光層材料を例に挙げて説明したが、このゲッター材を構成する材料の選択方法は有機発光層材料のみに適用できるものではない。有機発光層以外の有機膜材料でも同様に、この選択方法を適用することが可能である。
【0065】
[その他]
<排気管およびゲッター材の変形例>
図11は、排気管およびゲッター材の構成に係る変形例を説明するための図である。
図11(a)は、変形例に係る排気管3Aにおける、ゲッター材が配設されている部分の断面図である。本変形例では、排気管3Aの内壁に凹凸加工が施されているとともに、当該凹凸に沿うようにゲッター材4Aが配設されている。このようにすることで、排気管内におけるゲッター材の表面積を広げることができるため、より効率的に不純物6を吸着することが可能となる。
【0066】
図11(b)は、変形例に係る排気管3Bにおける、ゲッター材が配設されている部分の断面図である。排気管3Bは、内面にゲッター材4B
1,4B
2,4B
3,4B
4,4B
5,4B
6,4B
7がそれぞれ配設された細管3
1,3
2,3
3,3
4,3
5,3
6,3
7が、複数本束ねられてなる。このような構成によっても、排気管内におけるゲッター材の表面積を広げることが可能である。
【0067】
図11(c)は、変形例に係る排気管3Cの外観形状を示す模式図である。排気管3Cは、内面に不図示のゲッター材が配設された配管3cが螺旋状に巻回されてなる。このようにすることで、真空ポンプ2から真空チャンバー1を結ぶ排気管の距離を延伸させることができる。その結果、真空ポンプ2から飛散した不純物6を、より確実に排気管内部のゲッター材で吸着させることが可能である。
【0068】
さらに、
図11(a),(b)に示した変形例を、
図11(c)に示す変形例に適用することも可能である。つまり、内壁に凹凸加工が施されているとともに、当該凹凸に沿うようにゲッター材が配設されている排気管を、螺旋状に巻回することとしてもよい。また、内面にゲッター材が配設された細管が複数本束ねられてなる排気管を、螺旋状に巻回することとしてもよい。これらの構成により、ゲッター材による不純物の吸着をさらに効率的に行うことができる。
【0069】
<不純物除去手段>
図1に示す真空装置は、さらに、不純物6を吸着させたゲッター材4から当該不純物6を除去する不純物除去手段を備えることとしてもよい。不純物除去手段としては、例えば、ゲッター材4を構成する材料(有機発光層材料)に耐熱性がある場合には、不純物除去手段は、排気管3を加温することによりゲッター材4から不純物6を昇華除去するもの等がある。
【0070】
不純物除去手段を備えることにより、不純物6に対する吸着性が低下した場合であっても、ゲッター材4を廃棄することなく再利用することが可能である。不純物除去手段は、所定回数の減圧工程を終える毎に使用することとしてもよいし、1回の減圧工程毎に使用することとしてもよい。
所定回数の減圧工程を終える毎に不純物除去を行う場合は、例えば、以下のような手順で行うことができる。まず、あらかじめ有機発光層の特性劣化がどの程度の基準まで許容されるかを決定しておく。次に、真空チャンバーに有機発光層材料を収容して減圧工程を行うことで、ゲッター材が減圧工程を経た回数(ゲッター材使用回数)と、各回数における有機発光層の特性との関係を調べる。そして、あらかじめ決定しておいた基準に到達したときのゲッター材使用回数、または到達する直前のゲッター材使用回数を把握する。以降は、この把握したゲッター材使用回数分の減圧工程を終える毎に、不純物除去手段による不純物の除去を行う。なお、到達したときのゲッター材使用回数または到達する直前のゲッター材使用回数を一度把握すれば、以後、ゲッター材使用回数と有機発光層の特性との関係を調べる必要はなくなる。
【0071】
≪実施の態様2≫
実施の態様1においては、真空チャンバーと真空ポンプを結ぶ排気管が単一の配管で構成されていることとした。本実施の態様においては、排気管が2本の配管を含む真空装置について説明する。
[真空装置の構成]
図12は、実施の態様2に係る真空装置の構成を示す図である。本実施の態様に係る真空装置は、真空チャンバー1、真空ポンプ2、第1配管30aおよび第2配管30bを含む排気管30、ゲッター材4、圧力計7、第1バルブ8a、第2バルブ8b、制御部9を備える。以下、実施の態様1との相違点を中心に説明する。
【0072】
真空チャンバー1、真空ポンプ2およびゲッター材4は実施の態様1におけるものと同様である。
排気管30は、第1配管30a、第2配管30bを含む。第1配管30aおよび第2配管30bはともに、真空チャンバー1と真空ポンプ2を結んでおり、真空チャンバー1と真空ポンプ2とを連通させる開放状態と、真空チャンバー1と真空ポンプ2とを連通させない閉鎖状態とを切替可能なものである。ただし、第1配管30aにはその内部にゲッター材が配設されていないが、第2配管30bにはその内部にゲッター材が配設されている。なお、実施の形態1で説明した排気管の変形例(
図11)を、第2配管30bにも適用することができる。
【0073】
第1配管30aは、真空チャンバー1内が大気圧である時から、真空チャンバー1の内部圧力が真空ポンプ2の内部圧力と平衡状態になるまで間に開放状態とされるものである。第2配管30bは、真空チャンバー1の内部圧力が真空ポンプ2の内部圧力と平衡状態にある間に開放状態とされるものである。
圧力計7は、真空チャンバー1の内部圧力、すなわち真空チャンバー1内の真空度を測定するものである。圧力計7としては、例えば、ピラニ真空計、ダイヤフラム真空計、スピニングロータ真空計等を用いることができる。
【0074】
第1バルブ8aは、第1配管30aの開放状態および閉鎖状態を切り替えるものである。第2バルブ8bも同様に、第2配管30aの開放状態および閉鎖状態を切り替えるものである。第1バルブ8aが開状態となることで第1配管30aは開放状態となり、第1バルブ8aが閉状態となることで第1配管30aは閉鎖状態となる。同様に、第2バルブ8bが開状態となることで第2配管30bは開放状態となり、第2バルブ8bが閉状態となることで第2配管30bは閉鎖状態となる。
【0075】
制御部9は、圧力計7による測定結果を基に、真空ポンプ2、第1バルブ8aおよび第2バルブ8bの動作を制御する。具体的には、制御部9は圧力計7による測定結果から真空チャンバー1の内部圧力が真空ポンプ2の内部圧力と平衡状態になっているかを判断するとともに、この判断結果に応じて真空ポンプ2、第1バルブ8aおよび第2バルブ8bの動作を制御する。制御部9は真空ポンプ2、第1バルブ8aおよび第2バルブ8bに対する制御信号を出力し、この制御信号を受けた各構成は制御信号に応じた動作を行う。
【0076】
[制御部における動作]
図13は、実施の態様2に係る真空装置の制御部9における動作を説明するためのフローチャートである。
まず、制御部9が第1バルブ8aに対し開状態とする制御信号を出力することにより、第1配管30aを開放状態とするとともに(ステップS101)、真空ポンプ2を動作状態とする(ステップS102)。このとき、第2配管30bは閉鎖状態である。これにより、真空チャンバー1内に含まれる気体の排気が開始される。
【0077】
そして、制御部9は、圧力計7による測定結果を基に、真空チャンバー1の内部圧力が真空ポンプ2の内部圧力と平衡状態になっているかを判断する(ステップS103)。
図9に示したように、真空チャンバー1内の減圧処理が進むに従って、真空チャンバー1の内部圧力の変化量は小さくなっていく。制御部9は、圧力計7の測定結果の変化量が所定の数値以下になると、真空チャンバー1の内部圧力が真空ポンプ2の内部圧力と平衡状態になったと判断する。平衡状態に達したと判断すると(ステップS103においてYES)、ステップS104へ移行する。平衡状態に達していない判断すると(ステップS103においてNO)、平衡状態に達するまで真空チャンバー1の減圧処理を継続する。
【0078】
次に、制御部9は、平衡状態時における真空ポンプ2の内部圧力に対し、不純物6の蒸気圧の方が低いか否かを判断する(ステップS104)。ここで、制御部9には、稼働時の真空ポンプ2内部の温度に対応する不純物6の蒸気圧に関する情報があらかじめ記憶されている。この情報を基に、制御部9は平衡状態時の内部圧力と不純物の蒸気圧との大小関係を判定する。平衡状態時における真空ポンプ2の内部圧力に対し、不純物6の蒸気圧の方が高いと判断した場合は(ステップS104においてNO)、第1配管30aを開放状態、第2配管30bを閉鎖状態のままに維持し、真空チャンバー1内の減圧処理を継続する。有機発光層材料の乾燥等が完了すると、真空ポンプ2を停止させ、減圧工程を終了する。平衡状態時における真空ポンプ2の内部圧力に対し、不純物6の蒸気圧の方が低いと判断した場合は(ステップS104においてYES)、ステップS105へ移行する。
【0079】
上述したように、(1)真空チャンバー1の内部圧力が真空ポンプ2の内部圧力と平衡状態になることで、真空チャンバー1と真空ポンプ2との間の気流が平衡状態にあり、かつ、(2)平衡状態にあるときの真空ポンプ2の内部圧力に対し不純物6の蒸気圧の方が低い場合には、真空ポンプ2から真空チャンバー1への不純物6の飛散が起こると考えられる。すなわち、(1)の条件および(2)の条件を満たすことで、真空ポンプ2から不純物6が飛散すると考えられる。ステップS103では(1)の条件を判断し、ステップS104では(2)の条件を判断していることになる。そして、ステップS105へ移行した場合は、(1)の条件および(2)の条件の双方を満たしており、不純物6が飛散し得る状況にあることになる。そこで、ステップS105に移行した場合、制御部9は不純物6の飛散に備える動作を行う。
【0080】
まず、制御部9が第1バルブ8aに対し閉状態とする制御信号を出力することにより、第1配管30aを閉鎖状態とする(ステップS105)。続いて、制御部9が第2バルブ8bに対し開状態とする制御信号を出力することにより、第2配管30bを開放状態とする(ステップS106)。これにより、真空チャンバー1と真空ポンプ2は、ゲッター材4が配設されている第2配管30bにより結ばれることになる。したがって、不純物6が真空チャンバー1側へ飛散した場合であっても、実施の態様1で説明したものと同様の効果を得ることができる。
【0081】
さらに、排気管30を第1配管30aおよび第2配管30bの2本で構成することにより、例えば、
図12に示すように、ゲッター材4が配設されていない第1配管30aを太くし、ゲッター材4が配設されている第2配管30bを細くするといったことが可能になる。第1配管30aを太くすることで真空チャンバー1内の気体を効率的に排気しつつ、第2配管30bを細くすることで真空ポンプ2から飛散する不純物6を効率良く吸着することができる。このように、排気管30を2本の配管で構成することにより、各配管をそれぞれの用途に応じた形状とすることができる。
【0082】
[制御部における動作の変形例1]
図14は、実施の態様2に係る真空装置の制御部9における動作の変形例1を説明するためのフローチャートである。
図13に示すフローチャートとの違いは、ステップS104が無い点である。
図13に示すフローチャートにおいては、上述した(1)の条件および(2)の条件の両方を満たした場合に初めて第2配管30bを開放状態にすることとした。一方、
図14に示す変形例1では、(1)の条件を満たした時点(ステップS103においてYES)で第2配管30bを開放状態にするようにしている。すなわち、真空チャンバー1の内部圧力が真空ポンプ2の内部圧力と平衡状態になるまでの間は、第1配管30aが開放状態であるとともに第2配管30bが閉鎖状態であり、真空チャンバー1の内部圧力が真空ポンプ2の内部圧力と平衡状態にある間は、第1配管30aが閉鎖状態であるとともに第2配管30bが開放状態である。
【0083】
このようにすることで、
図13に示す場合よりも時間的に早めに、不純物6の飛散に備えることができる。その結果、より確実に不純物6が真空チャンバー1内に侵入することを防止することができる。
[制御部における動作の変形例2]
図15は、実施の態様2に係る真空装置の制御部9における動作の変形例2を説明するためのフローチャートである。
【0084】
図13に示すフローチャートとの違いは、ステップS103が無い点である。
図15に示す変形例1では、(2)の条件を満たした時点(ステップS104においてYES)で第2配管30bを開放状態にするようにしている。すなわち、真空チャンバー1の内部圧力が真空ポンプ2の内部圧力と平衡状態になるまでの間は、第1配管30aが開放状態であるとともに第2配管30bが閉鎖状態であり、真空チャンバー1の内部圧力が真空ポンプ2の内部圧力と平衡状態にあるときの当該真空ポンプ2の内部圧力に対し、不純物6の蒸気圧の方が低い場合には、第1配管30aが閉鎖状態であるとともに第2配管30bが開放状態である。
【0085】
このような構成によっても、早めに不純物6の飛散に備えることができるので、より確実に不純物6が真空チャンバー1内に侵入することを防止することができる。また、本変形例は、真空チャンバー1の内部圧力が真空ポンプ2の内部圧力と平衡状態に至っているときの、当該真空チャンバー1の内部圧力が予め分かっている場合等に有効な例である。
[実施の態様3]
本実施の態様においては、実施の態様1または2に係る真空装置を用いて製造された有機EL素子を備える有機EL表示パネル、有機EL素子の製造方法、有機EL表示装置および有機EL発光装置について説明する。
【0086】
[有機EL表示パネルの構成]
図16は、有機EL表示パネル10の構成を示す部分断面図である。有機EL表示パネル10は、同図上側を表示面とする、いわゆるトップエミッション型の有機EL表示パネルであり、その主な構成として、陽極12、有機発光層16、電子輸送層17、陰極18を備える。有機EL表示パネル10は、赤(R),緑(G),青(B)の何れかの発光色に対応する有機発光層16を有する有機EL素子を1つのサブピクセル100とし、サブピクセル100がマトリクス状に配設されている。
【0087】
<基板11、陽極12、ITO層13>
基板11は有機EL表示パネル10の基材となる部分であり、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、またはアルミナ等の絶縁性材料で形成することができる。
【0088】
図示していないが、基板11の表面には有機EL素子を駆動するためのTFT(薄膜トランジスタ)が形成されており、その上方に陽極12が形成されている。陽極12は、例えば、ACL(アルミニウム、コバルト、ランタンの合金)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)等で形成することができる。
【0089】
ITO(酸化インジウムスズ)層13は、陽極12と正孔注入層14の間に介在し、各層間の接合性を良好にする機能を有する。
<正孔注入層14>
正孔注入層14は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)等の酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)等の導電性ポリマー材料からなる層である。上記のうち、酸化金属からなる正孔注入層14は、正孔を安定的に、または正孔の生成を補助して、有機発光層16に対し正孔を注入する機能を有する。
【0090】
<バンク15>
正孔注入層14の表面には、有機発光層16の形成領域となる開口部15aを区画するためのバンク15が設けられている。バンク15は一定の台形断面を持つように形成されており、絶縁性の有機材料(例えばアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等)からなる。
【0091】
図17は、有機EL表示パネル10におけるバンク15を示す模式平面図である。本実施の態様に係る有機EL表示パネル10では、一例としてラインバンク(ライン状のバンク)15を採用している。具体的には、バンク15は、各々がY軸方向に延伸形成され、X軸方向において隣接する各サブピクセル100間を区画している。そして、サブピクセル100は、バンク15により区画された領域ごとに、発光色が異なるように形成されており、例えば、Rのサブピクセル100(R),Gのサブピクセル100(G),Bのサブピクセル100(B)の3つのサブピクセルの組み合わせで1画素(1ピクセル)を構成する。
【0092】
なお、
図16に示す部分断面図は、
図17におけるA−A’断面図に相当する。
<有機発光層16>
図16に戻り、バンク15の開口部15aにより区画された正孔注入層14の表面には、R,G,Bのいずれかの発光色に対応する、有機膜としての有機発光層16が形成されている。有機発光層16は、キャリアの再結合による発光を行う部位であり、R,G,Bのいずれかの色に対応する有機材料を含むように構成されている。
【0093】
有機発光層16として用いることが可能な材料としては、例えば、実施の態様1における実験で用いたF8−F6のほか、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン、特許公開公報(特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質等が挙げられる。
【0094】
本実施の態様に係る有機発光層16は、後述するように実施の態様1または2に係る真空装置を用いて形成されている。そのため、有機発光層16とその上に形成されている電子輸送層17との間には、少なくとも真空ポンプから飛散する不純物は存在しないため、製造工程において混入する不純物が少ない。したがって、後述する製造方法を経ない場合と比較して、不純物を原因とする有機発光層16の劣化が少なく、設定値に近いより特性が得られるようになっている。これとともに、不純物による、有機発光層16の上に形成されている電子輸送層17へ与える影響も低減することができる。その結果、本実施の態様に係る有機発光層16は発光特性が良好である。
【0095】
<電子輸送層17>
電子輸送層17は、陰極18から注入された電子を有機発光層16へ輸送する機能を有する。電子輸送層17は電子輸送性を有する材料(電子輸送性材料)で構成されており、このような材料としては、例えば、ニトロ置換フルオレノン誘導体、チオピランジオキサイド誘導体、ジフェキノン誘導体、ペリレンテトラカルボキシル誘導体、アントラキノジメタン誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリノン誘導体、キノリン錯体誘導体(いずれも特開平5−163488号公報に記載)等が挙げられる。
【0096】
<陰極18>
トップエミッション型有機EL表示パネルを実現するため、本実施の態様において電子輸送層17の上に形成された陰極18は、例えば、ITO、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の光透過性を有する導電性酸化物材料で形成されている。
<封止層19>
陰極18の上に形成された封止層19は、有機EL表示パネル10内に浸入した水分又は酸素から有機発光層16および陰極18を保護するために設けられている。有機EL表示パネル10はトップエミッション型であるため、封止層19には、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)等の光透過性材料が採用されている。
【0097】
<その他>
特に図示していないが、封止層19の上方には、基板11と対向する封止基板が設けられる。さらに、封止層19と封止基板とでできる空間に、絶縁性材料を充填することとしてもよい。このようにすることで、有機EL表示パネル10内に水分又は酸素が浸入するのを防ぐことができる。有機EL表示パネル10はトップエミッション型であるため、絶縁性材料としては、SiN、SiON等の光透過性材料を選択する必要がある。
【0098】
また、正孔注入層14と有機発光層16との間に、正孔注入層14から有機発光層16への正孔の輸送を促進させる機能を有する正孔輸送層を、さらに形成することとしてもよい。正孔輸送層として用いることが可能な材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ブタジエン化合物、ポリスチレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンジン誘導体が挙げられる(いずれも特開平5−163488号公報に記載)。
【0099】
さらに、電子輸送層17と陰極18の間に、陰極18から電子輸送層17への電子注入を促進させる機能を有する電子注入層を形成することとしてもよい。電子注入層として用いることが可能な材料としては、例えば、バリウム、フタロシアニン、フッ化リチウム等が挙げられる。
[有機EL表示パネルの製造方法]
図18〜
図20は、実施の態様3に係る有機EL表示パネル10の製造工程例を示す図である。これらの図を参照しながら、有機EL表示パネル10の製造方法について説明する。
【0100】
<基板準備工程、真空装置準備工程>
はじめに、上面に陽極および有機発光層材料がこの順に形成された基板を準備する基板準備工程を行う。
図18(a)〜
図19(a)は基板準備工程に相当する。
まず、
図18(a)に示すように、基板11をスパッタ成膜装置の成膜容器内に載置する。そして成膜容器内に所定のスパッタガスを導入し、反応性スパッタ法、真空蒸着法等に基づき陽極12を成膜する。
【0101】
引き続き上記の成膜容器内で、
図18(b)に示すようにスパッタ法に基づき陽極12上にITO層13を形成する。次に、ITO層13の各表面を含む基板11の表面に対し、スパッタリング法等を用い金属膜を製膜する。その後、形成された金属膜を酸化することにより、正孔注入層14が形成される。
次に、
図18(c)に示すようにバンク15を形成する。バンク材料として、例えば感光性のレジスト材料、好ましくはフッ素系材料を含有するフォトレジスト材料を用意する。このバンク材料を正孔注入層14上に一様に塗布し、プリベークした後、開口部15aを形成できるようなパターンを有するマスクを重ねる。そして、マスクの上から感光させた後、未硬化の余分なバンク材料を現像液で洗い出す。最後に純水で洗浄することでバンク15が完成する。
【0102】
なお、バンク15を形成する工程の後であって有機発光層16を形成する工程の前に、必要に応じて正孔輸送層を形成する。正孔輸送層は、例えば、この後に述べる有機発光層16と同様に、塗布成膜法により形成することができる。
そして、
図19(a)に示すように、バンク15の開口部15a(
図18(c))に対し、インクジェット法に基づき有機発光層材料16aを滴下する。以上で、上面に陽極12および有機発光層材料16aがこの順に形成された基板11を準備できた。なお、有機発光層材料16aの滴下方法はインクジェット法に限定されず、例えば、グラビア印刷法、ディスペンサー法、ノズルコート法、凹版印刷、凸版印刷等であってもよい。
【0103】
ここで、「陽極および有機発光層材料がこの順に形成された基板」には、陽極の上に直接的に有機発光層材料が塗布されている基板だけでなく、陽極の上に間接的に有機発光層材料が塗布されている基板も含むこととする。すなわち、陽極と塗布された有機発光層材料の間に他の層を含んでいることとしてもよい。本実施の態様の基板準備工程において準備した基板は、陽極12と有機発光層材料16aと間に、ITO層13および正孔注入層14を含んでいる。
【0104】
次に、真空チャンバーと、真空ポンプと、真空チャンバーと真空ポンプとを結ぶ排気管と、排気管の内部に配設されたゲッター材を備える真空装置を準備する真空装置準備工程を行う。具体的には、実施の態様1または2に係る真空装置(
図1,
図12)を準備する。なお、ここでは基板準備工程を行った後に真空装置準備工程を行うこととしたが、先に真空装置準備工程を行い、この後に基板準備工程を行うこととしてもよいし、並行してこれらの工程を行うこととしてもよい。
【0105】
<乾燥工程>
減圧工程としての乾燥工程(
図19(b))では、実施の態様1または2に係る真空装置を用いて、有機発光層材料16aを乾燥させる。具体的には、上面に陽極12および有機発光層材料16aがこの順に形成された基板11を真空装置における真空チャンバーに収容し、真空チャンバーの内部圧力が真空ポンプの内部圧力を減圧する。
【0106】
この乾燥工程により、基板11上方に形成されている有機発光層材料16aを乾燥させると、有機発光層16が形成される(
図19(b))。このとき、本実施の態様においては実施の態様1または2に係る真空装置を用いているため、有機発光層16の表面には少なくとも真空ポンプ2から飛散した不純物は付着していない状態となる。したがって、少なくとも、真空ポンプ2から飛散した不純物が有機発光層16に付着したままで放置されたり、不純物が付着した有機発光層16の上面に他の層(本実施に態様においては電子輸送層である。)が積層されることはない。
【0107】
なお、有機発光層16については、その表面に不純物が付着したままで放置されたとしても、通電が行われない限りは有機発光層16に悪影響は非常に小さいと考えられる。この理由として、有機発光層16の表面近傍では、単に不純物が物理的に吸着しているだけで、有機発光層16を構成する材料と不純物との反応は起こっていないと考えられること等が挙げられる。
【0108】
<電子輸送層形成工程、陰極形成工程、その他>
乾燥工程後、
図19(c)に示すように、有機発光層16の上に真空成膜法に基づき電子輸送層17を形成する。具体的には、例えば真空蒸着法やスパッタ法等の真空成膜法に基づき、有機発光層16の上面に電子輸送層17を構成する材料を成膜することにより、電子輸送層17を形成する。
【0109】
なお、電子輸送層形成工程においては、成膜容器内の圧力に占める電子輸送性材料の蒸気圧の割合はかなり高く、不純物の蒸気圧の割合は略0[%]である。したがって、真空ポンプ2から飛散した不純物が有機発光層16の表面に付着するおそれはない。なお、電子輸送層形成工程での減圧処理においても、実施の態様1または2に係る真空装置を用いることしてもよい。
【0110】
また、電子輸送層17を形成する工程の後であって陰極18を形成する工程の前に、必要に応じて電子注入層を形成する。電子注入層は、例えば、真空蒸着法やスパッタ法等の真空成膜法に基づき、電子注入性を有する材料を成膜することにより形成可能である。
次に、陰極形成工程を行う(
図20(a))。当該工程では、減圧工程を経た有機発光層材料16aである有機発光層16の上方に、真空蒸着法、スパッタ法等の真空成膜法基づき、ITO、IZO等を成膜することにより陰極18を形成する。
【0111】
ここで、「減圧工程を経た有機発光層材料の上方に陰極を形成する」には、減圧工程を経た有機発光層材料である有機発光層の上に直接的に陰極を形成する場合だけでなく、有機発光層の上に間接的に陰極を形成する場合も含むこととする。すなわち、減圧工程後から陰極形成工程の間に別の層を形成する工程を含んでいてもよい。減圧工程後から陰極形成工程の間に別の層を形成する工程を含む場合には、陰極形成後の有機EL素子半製品において、有機発光層(減圧工程を経た有機発光層材料)と陰極との間に他の層を含むことになる。本実施の態様における有機EL素子半製品においては、有機発光層16と陰極18との間に電子輸送層17を含んでいる。そのため、電子輸送層17の上面に陰極18を形成することとしている。
【0112】
陰極形成工程を終えたら、
図20(b)に示すように、蒸着法、スパッタ法等に基づき、陰極18の上に封止層19を形成する。そして、封止層19の上方に封止基板を対向配置させ、必要に応じて封止層19と封止基板とで形成される空間に絶縁性材料を充填する。
以上の工程を経ることで、有機EL表示パネル10が完成する。
【0113】
[有機EL表示装置]
図21は、本発明の一態様に係る有機EL表示装置等を示す斜視図である。
図21に示すように、有機EL表示装置1000は有機ELディスプレイであり、上述した有機EL表示パネル10を備える。
図22は、本発明の一態様に係る有機EL表示装置1000の全体構成を示す図である。
図22に示すように、有機EL表示装置1000は、有機EL表示パネル10と、これに接続された駆動制御部20とを備える。駆動制御部20は、4つの駆動回路21〜24と制御回路25とから構成されている。なお、実際の有機EL表示装置1000では、有機EL表示パネル10に対する駆動制御部20の配置や接続関係については、これに限られない。
【0114】
有機EL表示装置1000が備える有機EL表示パネル10を構成する有機EL素子においては、上述した減圧工程を経て形成された有機発光層を備えている。したがって、有機発光層の発光特性が良好であるため、有機EL表示装置1000は画質に優れる。
[有機EL発光装置]
図23は、本発明の一態様に係る有機EL発光装置200を示す図であって、
図23(a)は縦断面図、
図23(b)は横断面図である。
図23に示すように、有機EL発光装置200は、本発明の一態様に係る製造方法により形成された複数の有機EL素子210と、有機EL素子210が上面に実装されたベース220と、ベース220にそれら有機EL素子210を挟むようにして取り付けられた一対の反射部材230と、から構成されている。各有機EL素子210は、ベース220上に形成された導電パターン(不図示)に電気的に接続されており、前記導電パターンにより供給された駆動電力によって発光する。各有機EL素子210から出射された光の一部は、反射部材230によって配光が制御される。
【0115】
有機EL発光装置200が備える有機EL素子210においては、上述した減圧工程を経て形成された有機発光層を備えている。したがって、有機EL発光装置200は発光特性が良好である。
[変形例・その他]
以上、実施の態様1〜3について説明したが、本発明は上記の実施の態様に限られない。例えば、以下のような変形例等が考えられる。
【0116】
(1)
図1および
図12に示す真空装置は単なる一例であり、本発明の真空装置はこの例に限定されるものではない。例えば、
図1および
図12に示した構成以外の構成を含むこととしてもよい。
(2)上記の実施の態様においては、排気管の内壁に直接的にゲッター材を配設することとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、収容する有機発光層材料と同一の材料を吸着させた多孔質物質を、排気管の内部に充填することにより、ゲッター材を配設することとしてもよい。
【0117】
(3)上記の実施の態様において、有機発光層については、その表面に不純物が付着したままで放置されたとしても、通電が行われない限りは有機発光層に悪影響は小さいと考えられると述べた。しかしながら、このことはあくまで有機発光層に関してのことである。有機発光層以外の他の有機膜においては、通電が行われなくても、不純物が付着しただけで有機膜が劣化するということはあり得る。このような有機膜の場合、有機膜と不純物とが反応する前に不純物の除去を行うことは困難である。しかしながら、本発明を適用した場合には、不純物が有機膜に付着することを未然に防止することができ、非常に有用である。さらに、本発明は、真空チャンバー収容物が不純物を吸着し易いものであるほど、ゲッター材にける吸着性能も向上するため、より効果を発揮するものであると言える。
【0118】
(4)実施の態様3において説明した有機EL表示パネルの製造方法は、単なる一例である。例えば、真空成膜法を用いて成膜すると説明した層を、塗布成膜法によって形成することとしてもよいし、逆に、塗布成膜法を用いて成膜すると説明した層を、真空成膜法によって形成することとしてもよい。
(5)実施の態様3において、ITO層、正孔注入層、正孔輸送層、バンクおよび封止層は必須の構成要件ではない。これらの構成を有しない有機EL素子に対しても、本発明を適用することが可能である。逆に、他の構成要素、例えば、正孔阻止層等をさらに含むこととしてもよい。これに対応して、準備工程で準備する基板においても、必ずしもITO層、正孔注入層、正孔輸送層、バンクが形成されている必要はない。さらに、封止層を有しない有機EL素子を形成する場合には勿論、封止層を形成する工程を省略できる。
【0119】
(6)実施の態様3においては、有機膜が有機発光層であるとして説明したが、本発明はこれに限定されない。有機EL素子を構成する各層のうち、塗布成膜法により形成される層は全て本発明における有機膜に相当する。塗布成膜法により形成される各層について上記の減圧工程を行うことで、有機EL素子の半減期寿命を長くし、発光特性を向上させることが可能である。
【0120】
(7)上記の実施の態様においては、有機EL素子における有機発光層を主に取り上げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、有機TFTや太陽電池等、塗布成膜法により成膜される有機膜にも適用することも可能である。すなわち、本発明は、有機材料を含んでなる有機膜を形成する場合に広く適用することが可能である。以下、有機材料を含んでなる有機膜を形成する場合について、簡単に説明する。
【0121】
まず、真空チャンバーと、真空ポンプと、真空チャンバーと真空ポンプとを結ぶ排気管と、排気管の内部に配設されたゲッター材を備える真空装置を準備する真空装置準備工程を行う。ここで、排気管の内部に配設されたゲッター材は、形成する有機膜材料と同一の材料を含んでいる。次に、有機膜材料を乾燥させるために、有機膜材料を真空チャンバーに収容し、真空チャンバーの内部圧力を真空ポンプにより減圧する減圧工程を行う。
【0122】
このようにすることで実施の態様1および2で説明したものと同様の効果を、有機膜全般においても得ることができる。
(8)実施の態様3においては、有機発光層材料を乾燥させるための乾燥工程が減圧工程であるとして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、有機発光層完成後から次の工程を行うまでの間、有機EL素子半製品を真空状態で保管する場合には、この保管工程も減圧工程に相当し、不純物汚染が起こり得る。すなわち、「有機発光層材料」には、有機発光層材料が完全に乾燥するまでの状態のものほか、乾燥が終了し有機発光層が完成した状態のものも含まれる。有機膜材料についても同様である。つまり、保管工程における減圧工程においても、本明細書に開示される真空装置を用いることが可能である。
【0123】
なお、乾燥工程における真空チャンバー内には、「有機発光層材料が完全に乾燥するまでの状態のもの」が収容される。一方、保管工程における真空チャンバー内には、「乾燥が終了し有機発光層が完成した状態のもの」が収容される。
さらに、乾燥工程および保管工程に限られず、有機発光層材料形成後から有機発光層の上面に位置する層を形成する工程の前に行われる工程であって、有機発光層材料が真空状態に置かれる工程が減圧工程となる。
【0124】
(9)有機発光層材料の乾燥は、減圧工程のみで完了させることとよいし、焼成のみで完了させることとしてもよいし、減圧工程に加えて焼成を行うことで完了させることとしてもよい。焼成のみで完了させる場合は、有機発光層形成後から次工程を行うまでの保管工程が減圧工程に相当する。
(10)実施の態様においては、ジフェニルアミン系化合物を主に取り上げて説明したが、フェノール系化合物でも
図7と同様の説明が可能である。フェノールを例に挙げ、
図24を用いて簡単に説明する。
【0125】
図24は、フェノール系化合物を原因とする、有機EL素子における発光強度半減寿命低下のメカニズムの一例を説明するための図である。式(3)に示すように、界面領域109において、フェノールはラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xに水素ラジカルを供与することで、自身がラジカルアニオン状態となる。ラジカルアニオン状態のフェノールは、DPAと同様に、負電荷がベンゼン環において非局在化し、安定に存在し得るため、本反応が進行すると考えられる。また、式(4)に示すように、界面領域109において、ラジカルアニオン状態のフェノールは、有機発光層を構成する材料Yと反応することで生成物Zを与える。このように、キャリアであるラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xの消失、および有機発光層の劣化が進行する。
【0126】
(11)
図7および
図24に示した発光強度半減寿命低下のメカニズムは、電子輸送層と陰極の間に、電子注入層が介挿されていない場合に想定されるメカニズムである。ここでは、電子注入層が介挿されている場合のメカニズムについて簡単に述べる。
電子注入層が存在しない場合には、ラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xに水素ラジカルを供与するのは、ジフェニルアミン系化合物またはフェノール系化合物であった。一方、電子注入層が存在しない場合に、ラジカルアニオン状態の電子輸送性材料Xに水素ラジカルを供与するのは、電子注入層から電子を供与された有機発光層を構成する材料Y、もしくは、製造工程中において有機EL素子に混入した微量の水分や残留溶媒等であると考えられる。水素ラジカルの供与の結果、電子注入層から電子を供与された有機発光層を構成する材料Y、水分および残留溶媒等がラジカルアニオン状態になると考えられる。
【0127】
(12)
図7および
図24に示した発光強度半減寿命低下のメカニズムは単なる一例である。これらの図に示したものとは異なるメカニズムで発光強度半減寿命低下が起こっている可能性もある。
(13)「ジフェニルアミン系化合物」とは、ジフェニルアミン骨格を有する化合物を指す。ジフェニルアミン骨格を有する化合物には、ジフェニルアミンやこの誘導体等が含まれる。また、
図6(d)においては、置換基が1つであるジフェニルアミン系化合物を図示しているが、本発明においては置換基の個数は特に限定されない。また、置換基の位置も
図6(d)に示したものに限定されない。
【0128】
同様に、「フェノール系化合物」とは、フェノール骨格を有する化合物を指し、
図24に示したものに限定されない。フェノール骨格を有する化合物には、フェノールやこの誘導体等が含まれる。
(14)上記の実施の態様においては、減圧工程を経たことが原因で付着した不純物として、真空ポンプ由来の不純物を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。また、真空ポンプ由来の不純物として潤滑剤または真空シール材を取り上げて説明した。しかしながら、本発明は潤滑剤または真空シール材由来の不純物に限定されるものではない。潤滑剤および真空シール材以外で真空ポンプに使用等されているものでも逆拡散は起こり得る。すなわち、本発明は、減圧工程を経ることにより有機膜材料に付着し得る不純物に広く適用できるものである。
【0129】
(15)本発明における「上面に第1電極および有機発光層材料がこの順に形成された基板を準備する」には、減圧工程を行う事業者自身が、基板の上面に第1電極および有機発光層材料をこの順に形成するような場合のほか、例えば、減圧工程を行う事業者が、基板の上面に第1電極および有機発光層材料をこの順に形成された基板を他の事業者から購入するような場合も含まれる。
【0130】
(16)実施の態様3においては、正孔注入層が基板の上方を覆うように全面に形成されている例を示したが、本発明はこれに限定されない。正孔注入層がITO層上のみに形成されていることとしてもよい。また、ITO層の側面および上面のみを覆うように形成されていることとしてもよい。
(17)陽極を銀(Ag)系材料で形成する場合には、上記の実施の態様のようにITO層をその上に形成することが望ましい。陽極をアルミニウム系材料で形成する場合には、ITO層を無くして陽極を単層構造にすることも可能である。
【0131】
(18)上記の実施の態様においては、複数の有機EL素子をサブピクセルとして基板上に集積する構成の有機EL表示パネルについて説明したが、この例に限定されず、有機EL素子を単一で用いることも可能である。有機EL素子を単一で用いるものとしては、例えば、照明装置等が挙げられる。
(19)上記の実施の態様においては、有機EL表示パネルをR,G,Bを発光色とするフルカラー表示のパネルであるとしたが、本発明はこれに限定されない。有機EL表示パネルを、R、G、B、白色およびその他単色の有機EL素子が複数配列されてなる表示パネルとしてもよい。さらに、いずれか1色のみの有機EL素子を有する単色表示の有機EL表示パネルとしてもよい。
【0132】
(20)上記の実施の態様では、バンク材料として、有機材料が用いられていたが、無機材料も用いることができる。この場合、バンク材料層の形成は、有機材料を用いる場合と同様、例えば塗布成膜法等により行うことができる。さらに、上記の有機EL表示パネルでは、複数のライン状のバンクを並設し、有機発光層をストライプ状に区画するラインバンク方式を採用しているが、本発明はこれに限られない。例えば、バンクを井桁状(格子状)に形成し、バンクによって各サブピクセルの周囲を囲繞する、いわゆるピクセルバンク方式であってもよい。
【0133】
(21)上記の実施の態様においては、トップエミッション型有機EL表示パネルの製造方法を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。基板11(
図16)側を表示面とするいわゆるボトムエミッション型有機EL表示パネルの製造方法においても、本発明を適用することが可能である。さらに、陽極の材料を陰極と同じく透明導電性材料とすることで、陽極側および陰極側の両方から光を取り出す両面発光方式の有機EL表示パネルの製造方法にも適用することが可能である。
【0134】
(22)上記の実施の態様においては、第1電極が陽極、第2電極が陰極である有機EL素子について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1電極が陰極、第2電極が陽極である有機EL素子であってもよい。
(23)上記の実施の態様で使用している、材料、数値等は好ましい例を例示しているだけであり、この態様に限定されることはない。また、本発明の技術的思想の範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。さらに、各図面における部材の縮尺は実際のものとは異なる。なお、数値範囲を示す際に用いる符号「〜」は、その両端の数値を含む。