特許第5994263号(P5994263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

<>
  • 特許5994263-トルク検出装置およびその製造方法 図000002
  • 特許5994263-トルク検出装置およびその製造方法 図000003
  • 特許5994263-トルク検出装置およびその製造方法 図000004
  • 特許5994263-トルク検出装置およびその製造方法 図000005
  • 特許5994263-トルク検出装置およびその製造方法 図000006
  • 特許5994263-トルク検出装置およびその製造方法 図000007
  • 特許5994263-トルク検出装置およびその製造方法 図000008
  • 特許5994263-トルク検出装置およびその製造方法 図000009
  • 特許5994263-トルク検出装置およびその製造方法 図000010
  • 特許5994263-トルク検出装置およびその製造方法 図000011
  • 特許5994263-トルク検出装置およびその製造方法 図000012
  • 特許5994263-トルク検出装置およびその製造方法 図000013
  • 特許5994263-トルク検出装置およびその製造方法 図000014
  • 特許5994263-トルク検出装置およびその製造方法 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994263
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】トルク検出装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20160908BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   G01L3/10 305
   B62D5/04
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-20379(P2012-20379)
(22)【出願日】2012年2月1日
(65)【公開番号】特開2013-160535(P2013-160535A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】西川 聡
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−218631(JP,A)
【文献】 特開2009−210346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/00−3/26
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の集磁ユニットと、
前記集磁ユニットの外周に前記集磁ユニットと一体成形された樹脂製のセンサーハウジングと、を備え、
前記集磁ユニットは、
トーションバーの捩れに応じて磁束密度が変化する磁気回路を形成する磁気ヨークを囲むように配置され、内周面に保持凸部が形成されて前記保持凸部に隣接した位置に内外を貫通する貫通孔が形成された環状の樹脂製のホルダーと、
前記保持凸部に引っ掛けられて前記ホルダーの内周面に取り付けられて前記磁気ヨークからの磁束を集める集磁リングと、
前記貫通孔と対向する部分において前記貫通孔とは反対側に凹んだ凹部分が形成され、前記貫通孔を覆うように前記ホルダーの外周面に取り付けられて前記磁気回路に対する外部磁界の影響を低減させる磁気シールドと、を有するトルク検出装置
【請求項2】
前記保持凸部は、前記集磁リングを幅方向において挟み込む第1保持部分および第2保持部分を有し、
前記貫通孔は、前記ホルダーにおいて前記第1保持部分が突出する部分と前記第2保持部分が突出する部分との間に形成されている
請求項1に記載のトルク検出装置
【請求項3】
環状で樹脂製のホルダーの内周面に形成された保持凸部に引っ掛けることにより前記ホルダーの内周面に集磁リングを取り付けるとともに、前記ホルダーの前記保持凸部に隣接した位置の内外を貫通する貫通孔に対して前記貫通孔とは反対側に凹んだ凹部分を対向させて前記貫通孔を覆うように前記ホルダーの外周面に磁気シールドを取り付けることにより集磁ユニットを製造する集磁ユニット製造工程と、
前記集磁ユニットの外周に樹脂を流し込むことにより前記集磁ユニットと一体になったセンサーハウジングを成形するセンサーハウジング成形工程と、を含むトルク検出装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持凸部および保持凸部に隣接した貫通孔が形成されたホルダーと、ホルダーの内周面に取り付けられた集磁リング、および、貫通孔を覆うようにホルダーの外周面に取り付けられた磁気シールドを有する集磁ユニットの外周に一体成形された樹脂製のセンサーハウジングを備えるトルク検出装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のトルク検出装置は、集磁リングおよび集磁リングを保持するリングホルダーを有するユニットを有する。ユニットは、ハウジングに形成された挿入孔からハウジング内に挿入されて、ハウジングに対して固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−249598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のトルク検出装置は、ユニットとハウジングとの間から水などが内部に侵入する可能性がある。
そこで、防水性を向上させるために、集磁ユニットの外周に樹脂が流し込まれることによりセンサーハウジングが集磁ユニットと一体に成形されたトルク検出装置が知られている。集磁ユニットは、ホルダー、集磁リング、および磁気シールドを有する。ホルダーは、内周面に形成された保持凸部および保持凸部に隣接した貫通孔が形成されている。集磁リングは、ホルダーの内周面に取り付けられている。磁気シールドは、貫通孔を覆うようにホルダーの外周面に取り付けられている。
【0005】
しかし、樹脂が流し込まれる過程で樹脂圧により磁気シールドにおいて貫通孔と対向する部分が集磁リングに向けて変形してしまうことがある。これにより、磁気シールドの変形した部分が集磁リングの外面に接触する、または近距離まで接近する。このため、集磁リングの磁束が磁気シールドに流れる場合がある。これにより、トルク検出装置が磁気センサーの出力からトーションバーの捩れ角を算出する精度が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、集磁リングから磁気シールドに磁束が流れることを抑制することが可能なトルク検出装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の手段は、請求項1に記載の発明すなわち、環状の集磁ユニットと、前記集磁ユニットの外周に前記集磁ユニットと一体成形された樹脂製のセンサーハウジングと、を備え、前記集磁ユニットは、トーションバーの捩れに応じて磁束密度が変化する磁気回路を形成する磁気ヨークを囲むように配置され、内周面に保持凸部が形成されて前記保持凸部に隣接した位置に内外を貫通する貫通孔が形成された環状の樹脂製のホルダーと、前記保持凸部に引っ掛けられて前記ホルダーの内周面に取り付けられて前記磁気ヨークからの磁束を集める集磁リングと、前記貫通孔と対向する部分において前記貫通孔とは反対側に凹んだ凹部分が形成され、前記貫通孔を覆うように前記ホルダーの外周面に取り付けられて前記磁気回路に対する外部磁界の影響を低減させる磁気シールドと、を有するトルク検出装置であることを要旨とする。
【0008】
この発明のトルク検出装置は、磁気シールドのうちの貫通孔に対向する部分と集磁リングのうちの貫通孔に対向する部分との距離が磁気シールドから凹部分が省略された構成における貫通孔に対向する磁気シールドの部分と貫通孔に対向する集磁リングとの距離よりも大きい。このため、センサーハウジングの成型時において、磁気シールドの凹部分が集磁リングに向けて変形したとしても磁気シールドが集磁リングに接触しにくい。このため、磁気シールドの変形部分が集磁リングの外面に接触する、または近距離まで接近することが抑制される。したがって、集磁リングから磁気シールドに磁束が流れることが抑制される。
【0009】
(2)第2の手段は、請求項2に記載の発明すなわち、前記保持凸部は、前記集磁リングを幅方向において挟み込む第1保持部分および第2保持部分を有し、前記貫通孔は、前記ホルダーにおいて前記第1保持部分が突出する部分と前記第2保持部分が突出する部分との間に形成されている請求項1に記載のトルク検出装置であることを要旨とする。
【0010】
(3)第3の手段は、請求項3に記載の発明すなわち、環状で樹脂製のホルダーの内周面に形成された保持凸部に引っ掛けることにより前記ホルダーの内周面に集磁リングを取り付けるとともに、前記ホルダーの前記保持凸部に隣接した位置の内外を貫通する貫通孔に対して前記貫通孔とは反対側に凹んだ凹部分を対向させて前記貫通孔を覆うように前記ホルダーの外周面に磁気シールドを取り付けることにより集磁ユニットを製造する集磁ユニット製造工程と、前記集磁ユニットの外周に樹脂を流し込むことにより前記集磁ユニットと一体になったセンサーハウジングを成形するセンサーハウジング成形工程と、を含むトルク検出装置の製造方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、集磁リングから磁気シールドに磁束が流れることを抑制することが可能なトルク検出装置およびその製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の電動パワーステアリング装置について、その全体構造を模式的に示す模式図。
図2】実施形態の電動パワーステアリング装置について、第1軸体の回転中心軸平面における断面構造を示す断面図。
図3】実施形態のトルク検出装置について、各部品の位置関係を模式的に示す模式図。
図4】実施形態のトルク検出装置について、(a)は永久磁石、各磁気ヨーク、各集磁リング、および各磁気センサーの正面構造を示す正面図、(b)は各集磁リングおよび磁気センサーの一部分の側面構造を示す側面図。
図5】実施形態のトルク検出装置について、図2の永久磁石および各磁気ヨークの断面構造を平面上に展開した展開図であり、第1磁気ヨークおよび永久磁石のN極の対向面積と第2磁気ヨークおよび永久磁石のN極の対向面積とが互いに等しい状態を示す展開図。
図6】実施形態のトルク検出装置について、図2の永久磁石および各磁気ヨークの断面構造を平面上に展開した展開図であり、第1磁気ヨークおよび永久磁石のN極の対向面積が第2磁気ヨークおよび永久磁石のN極の対向面積よりも大きい状態を示す展開図。
図7】実施形態のトルク検出装置について、図2の永久磁石および各磁気ヨークの断面構造を平面上に展開した展開図であり、第1磁気ヨークおよび永久磁石のN極の対向面積が第2磁気ヨークおよび永久磁石のN極の対向面積よりも小さい状態を示す展開図。
図8】実施形態のトルク検出装置について、(a)はホルダーの斜視構造を示す斜視図、(b)はホルダーの底面構造を示す底面図。
図9】実施形態のトルク検出装置について、(a)は磁気シールドの斜視構造を示す斜視図、(b)は(a)のA−A平面の断面構造を示す断面図。
図10】実施形態のトルク検出装置について、(a)は集磁ユニットの平面構造を示す平面図、(b)は(a)の正面構造を示す正面図。
図11】実施形態のトルク検出装置について、ホルダーを成型するときの金型の一部分の断面構造を模式的に示す断面図。
図12】実施形態のトルク検出装置について、センサーユニットの一部分の断面構造を示す断面図。
図13】比較例としてのトルク検出装置について、センサーユニットの一部分の断面構造を示す断面図。
図14】本発明のその他の実施形態のトルク検出装置について、集磁ユニットの正面構造を模式的に示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、電動パワーステアリング装置1の全体構成について説明する。
電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール2に接続されるステアリングシャフト10と、同シャフト10および転舵輪3に接続されるラックシャフト16と、ラックシャフト16を収容するラックハウジング15と、ステアリングシャフト10に付与されたトルク(以下、「操舵トルク」)を検出するためのトルク検出装置20とを有する。またこの他に、操舵トルクに応じてステアリングホイール2の操作を補助する力(以下、「アシスト力」)を付与するアシスト装置17と、アシスト力をラックシャフト16に伝達するピニオンシャフト18と、アシスト装置17の駆動を制御する電子制御装置19とを有する。
【0014】
ラックシャフト16は、ラックシャフト16の軸方向において、ステアリングシャフト10側の部分に形成された第1ギヤ部分16Aと、アシスト装置17側の部分に形成された第2ギヤ部分16Bとを有する。
【0015】
ステアリングシャフト10は、ステアリングホイール2の回転とともに回転する第1軸体11と、ラックシャフト16の第1ギヤ部分16Aと噛み合うギヤ部分12Aを有する第2軸体12と、第1軸体11および第2軸体12を連結するトーションバー13とを有する。
【0016】
アシスト装置17は、駆動源となる電動モータ17Aと、電動モータ17Aの出力軸の回転を減速してピニオンシャフト18に伝達する減速機構17Bとを有する。減速機構17Bは、電動モータ17Aの出力軸に接続されたウォームシャフト17Cと、ウォームシャフトと噛み合うウォームホイール17Dとを有する。ウォームホイール17Dは、ピニオンシャフト18に固定されている。ピニオンシャフト18は、ラックシャフト16の第2ギヤ部分16Bと噛み合うギヤ部分18Aを有する。
【0017】
トルク検出装置20は、第1軸体11と一体に回転する永久磁石71と、第2軸体12と一体に回転する第1磁気ヨーク81および第2磁気ヨーク82との相対回転位置に応じて変化する磁束密度を検出する。上記相対回転位置は、トーションバー13との捩れ角と相関を有する。すなわち上記相対回転位置が大きくなるにつれてトーションバー13の捩れ角は大きくなる。そして、トルク検出装置20は、検出した磁束密度を電子制御装置19に出力する。電子制御装置19は、検出した磁束密度に基づいて操舵トルクを検出する。そして、操舵トルクをアシスト装置17に出力する。
【0018】
図2を参照して、電動パワーステアリング装置1の方向を以下のように定義する。
(A)第1軸体11の回転中心軸に沿う方向を「軸方向ZA」とする。
(B)軸方向ZAにおいて、第2軸体12から第1軸体11に向かう方向を「上方ZA1」とし、第1軸体11から第2軸体12に向かう方向を「下方ZA2」とする。
(C)軸方向ZAに直交する方向を「径方向ZB」とする。
(D)径方向ZBにおいて、第1軸体11の回転中心軸に向かう方向を「内方ZB1」とし、第1軸体11の回転中心軸から離れる方向を「外方ZB2」とする。
(E)第1軸体11の回転中心軸回りの方向を「周方向ZC」とする。
【0019】
図2を参照して、電動パワーステアリング装置1におけるトルク検出装置20の周辺の構成について説明する。
電動パワーステアリング装置1は、トルク検出装置20を保持するハウジング14と、ハウジング14に対して第2軸体12が回転することが可能な状態で支持する玉軸受23とを有する。
【0020】
ハウジング14は、第2軸体12を収容する出力軸ハウジング24に固定される。出力軸ハウジング24は、図1のラックハウジング15と一体化されている。
トーションバー13は、第1軸体11が回転することにより捩れる。そして第1軸体11の回転を第2軸体12に伝達する。このため、第1軸体11および第2軸体12は、相対回転する。第2軸体12およびトーションバー13は、第1軸体11と同軸を有する。
【0021】
電動パワーステアリング装置1は、トルク検出装置20および第1軸体11の隙間を封止するシール部材21と、トルク検出装置20およびハウジング14の隙間を封止するシール部材22とを有する。シール部材21としては、オイルシールが用いられている。シール部材22としては、Oリングが用いられている。
【0022】
図1を参照して、電動パワーステアリング装置1の動作について説明する。
運転者は、ステアリングホイール2を回転することによりステアリングシャフト10の第1軸体11に操舵トルクを付与する。第1軸体11は、トーションバー13を介して第2軸体12に操舵トルクを伝達する。第2軸体12は、ラックシャフト16に操舵トルクを伝達する。ラックシャフト16は、同シャフト16の第1ギヤ部分16Aと第2軸体12のギヤ部分12Aとが噛み合うことにより往復直線運動する。そして転舵輪3の向きを変更する。このとき、アシスト装置17は、操舵トルクに応じたアシスト力をラックシャフト16に付与する。
【0023】
図3を参照して、トルク検出装置20の構成について説明する。
トルク検出装置20は、磁束を発生する磁石ユニット70と、磁石ユニット70の磁束を受ける磁気ヨークユニット80と、磁気ヨークユニット80の磁束を受けるセンサーユニット30とを有する。
【0024】
磁石ユニット70、磁気ヨークユニット80、およびセンサーユニット30は、同軸を有する。磁石ユニット70、磁気ヨークユニット80、およびセンサーユニット30は、軸方向ZAにおいて互いに重なる。磁気ヨークユニット80は、磁石ユニット70を外方ZB2から覆う。センサーユニット30は、磁気ヨークユニット80を外方ZB2から覆う。
【0025】
磁石ユニット70は、円筒形状の永久磁石71と、永久磁石71の内方ZB1への磁束漏洩を抑制するコア72とを有する。永久磁石71は、第1軸体11の周囲に磁界を形成する。永久磁石71は、周方向ZCにおいてN極およびS極が隣り合うように着磁されている(図4参照)。コア72は、第1軸体11に圧入されている。永久磁石71は、コア72に固定されている。
【0026】
磁気ヨークユニット80は、永久磁石71が形成する磁界内に配置された第1磁気ヨーク81および第2磁気ヨーク82と、第1磁気ヨーク81および第2磁気ヨーク82を保持する円筒形状のヨークホルダー83と、ヨークホルダー83を第2軸体12に対して保持する中間部材84とを有する。
【0027】
中間部材84の外周部分は、ヨークホルダー83の下端部分の内周面に圧入されている。中間部材84の内周部分は、第2軸体12の上端部分の外周面に圧入されている。
ヨークホルダー83は、第1磁気ヨーク81および第2磁気ヨーク82と一体化されている。ヨークホルダー83は、金型(図示略)内に第1磁気ヨーク81および第2磁気ヨーク82を予め設定された位置に配置した後、ヨークホルダー83の成型材料である樹脂により各磁気ヨーク81,82と一体に成型することにより製造される。
【0028】
センサーユニット30は、ボルト(図示略)によりハウジング14に取り付けられるセンサーハウジング31と、永久磁石71の磁束密度に応じた電圧を出力する2個の磁気センサー32と、各磁気センサー32に永久磁石71の磁束を鎖交させる集磁ユニット40とを有する。磁気センサー32の出力電圧は、図1の電子制御装置19に送信される。磁気センサー32としては、ホールICが用いられている。
【0029】
集磁ユニット40は、第1磁気ヨーク81からの磁束を集める第1集磁リング41と、第2磁気ヨーク82からの磁束を集める第2集磁リング42と、各集磁リング41,42を保持するホルダー50と、各磁気ヨーク81,82および各集磁リング41,42に対する外部磁界の影響を低減させる磁気シールド60とを有する。
【0030】
第1集磁リング41は、径方向ZBにおいて第1磁気ヨーク81の外周部分と隙間を介して対向する。第2集磁リング42は、径方向ZBにおいて第2磁気ヨーク82の外周部分と隙間を介して対向する。磁気シールド60は、軸方向ZAにおいて各集磁リング41,42と重なる。また各集磁リング41,42を外方ZB2から覆う。
【0031】
ホルダー50は、各集磁リング41,42が配置される内部空間を形成する側壁51を有する。側壁51は、軸方向ZAの両側が開口した円環形状を有する。各集磁リング41,42は、側壁51の内周面51Xに固定されている。各集磁リング41,42は、隙間が形成された円環形状を有する。また、各集磁リング41,42は、金属の長板を折り曲げることにより形成されている。各集磁リング41,42は、同じ金属が用いられている。磁気シールド60は、側壁51の外周面51Yに固定されている。
【0032】
図2に示されるように、センサーハウジング31は、ハウジング14に嵌め合わせられる嵌合部分31Aと、ホルダー50および磁気シールド60を外方ZB2から覆うカバー部分31Bと、カバー部分31Bから上方ZA1に向けて延びる取付部分31Cとを有する。シール部材21は、取付部分31Cに固定されている。
【0033】
図4を参照して、永久磁石71の磁束が流れる各部材の詳細な構成について説明する。
第1磁気ヨーク81は、本体を構成する本体リング81Aと、本体リング81Aから下方ZA2に向けて延びる複数の歯部81Bとを有する。本体リング81Aの内周面および各歯部81Bの内面は、永久磁石71の外周面と対向する。
【0034】
第2磁気ヨーク82は、本体を構成する本体リング82Aと、本体リング82Aから上方ZA1に向けて延びる複数の歯部82Bとを有する。本体リング81Aの内周面および各歯部82Bの内面は、永久磁石71の外周面と対向する。各歯部81B,82Bは、周方向ZCにおいて交互に位置する。
【0035】
第1集磁リング41は、本体を構成するリング本体41Aと、各磁気センサー32の上面と対向する2個の集磁突起41Bとを有する。各集磁突起41Bは、リング本体41Aから外方ZB2に向けて折り曲げられている。
【0036】
第2集磁リング42は、本体を構成するリング本体42Aと、各磁気センサー32の下面と対向する2個の集磁突起42Bとを有する。各集磁突起42Bは、リング本体42Aから外方ZB2に向けて折り曲げられている。
【0037】
図5図7を参照して、トルク検出装置20の動作について説明する。なお、第1磁気ヨーク81の本体リング81Aにおいて、周方向ZCに隣り合う歯部81Bを接続する部分を接続部分81Cとする。また第2磁気ヨーク82の本体リング82Aにおいて、周方向ZCに隣り合う歯部82Bを接続する部分を接続部分82Cとする。
【0038】
トルク検出装置20は、第1磁気ヨーク81のうちの永久磁石71の各磁極に対向する内面の面積および第2磁気ヨーク82のうちの永久磁石71の各磁極に対向する内面の面積の関係により規定される検出状態として、図5に示される第1検出状態、図6に示される第2検出状態、および図7に示される第3検出状態を有する。
【0039】
トルク検出装置20は、図1のステアリングシャフト10の回転に応じて検出状態が変化する。すなわち、ステアリングシャフト10の回転位置が中立位置のとき、すなわち図1のトーションバー13の捩れ角が「0°」のとき、第1検出状態を有する。また、ステアリングシャフト10の回転位置が中立位置から正転方向に同シャフト10の回転範囲のうちの上限値まで回転した位置とき、第2検出状態を有する。また、ステアリングシャフト10の回転位置が中立位置から正転方向とは逆方向に同シャフト10の回転範囲のうちの上限値まで回転したとき、第3検出状態を有する。
【0040】
ここで、各磁気ヨーク81,82の面積について以下のとおり定義する。
(a)第1本体N極対向面積RNAは、第1磁気ヨーク81の接続部分81Cにおいて永久磁石71のN極と対向する内面の面積を示す。
(b)第1歯部N極対向面積RNBは、第1磁気ヨーク81の歯部81Bにおいて永久磁石71のN極と対向する内面の面積を示す。
(c)第1本体S極対向面積RSAは、第1磁気ヨーク81の接続部分81Cにおいて永久磁石71のS極と対向する内面の面積を示す。
(d)第1歯部S極対向面積RSBは、第1磁気ヨーク81の歯部81Bにおいて永久磁石71のS極と対向する内面の面積を示す。
(e)第2本体N極対向面積SNAは、第2磁気ヨーク82の接続部分82Cにおいて永久磁石71のN極と対向する内面の面積を示す。
(f)第2歯部N極対向面積SNBは、第2磁気ヨーク82の歯部82Bにおいて永久磁石71のN極と対向する内面の面積を示す。
(g)第2本体S極対向面積SSAは、第2磁気ヨーク82の接続部分82Cにおいて永久磁石71のS極と対向する内面の面積を示す。
(h)第2歯部S極対向面積SSBは、第2磁気ヨーク82の歯部82Bにおいて永久磁石71のS極と対向する内面の面積を示す。
【0041】
磁気センサー32に鎖交する磁束の大きさは、トルク検出装置20の検出状態に応じて変化する。トルク検出装置20の第1検出状態、第2検出状態、および第3検出状態のそれぞれにおける磁束の流れを以下に示す。
【0042】
図5に示される第1検出状態のとき、永久磁石71のN極は、第1磁気ヨーク81の接続部分81Cの一部分および歯部81Bの一部分と対向する。また第2磁気ヨーク82の接続部分82Cの一部分および歯部82Bの一部分と対向する。永久磁石71のS極は、第1磁気ヨーク81の接続部分81Cの別の一部分および歯部81Bの別の一部分と対向する。また第2磁気ヨーク82の接続部分82Cの別の一部分および歯部82Bの別の一部分と対向する。永久磁石71および第1磁気ヨーク81は以下の磁気回路を形成する。すなわち接続部分81Cおよび歯部81Bのうちの永久磁石71のN極と対向する部分は、永久磁石71のN極から磁束を受ける。また第1磁気ヨーク81において、接続部分81Cおよび歯部81Bのうちの永久磁石71のS極と対向する部分は、永久磁石71のS極に磁束を流す。永久磁石71および第2磁気ヨーク82は以下の磁気回路を形成する。すなわち接続部分82Cおよび歯部82Bのうちの永久磁石71のN極と対向する部分は、永久磁石71のN極から磁束を受ける。また第2磁気ヨーク82において、接続部分82Cおよび歯部82Bのうちの永久磁石71のS極と対向する部分は、永久磁石71のS極に磁束を流す。
【0043】
第1磁気ヨーク81について、第1本体N極対向面積RNAは、第1本体S極対向面積RSAと等しい。また第1歯部N極対向面積RNBは、第1歯部S極対向面積RSBと等しい。すなわち、第1磁気ヨーク81において永久磁石71のN極に対向する内面の面積と永久磁石71のS極に対向する内面の面積とが互いに等しい。
【0044】
このため、永久磁石71の1つのN極およびこのN極に隣り合う1つのS極の間に流れる磁束において、第1磁気ヨーク81と永久磁石71のN極との間で流れる磁束の大きさ、および第1磁気ヨーク81と永久磁石71のS極との間で流れる磁束の大きさは、互いに等しい。このため、第1磁気ヨーク81において永久磁石71のN極から受ける磁束と永久磁石71のS極に流す磁束とが平衡する。
【0045】
また第2磁気ヨーク82について、第2本体N極対向面積SNAは、第2本体S極対向面積SSAと等しい。また第2歯部N極対向面積SNBは、第2歯部S極対向面積SSBと等しい。このため、第1磁気ヨーク81と同様、第2磁気ヨーク82において永久磁石71のN極から受ける磁束と永久磁石71のS極に流す磁束とが平衡する。
【0046】
第1検出状態は、上記のとおり第1磁気ヨーク81および第2磁気ヨーク82と永久磁石71との間の磁束の流れが平衡する。このため、磁束は第1磁気ヨーク81および第2磁気ヨーク82の間、すなわち第1集磁リング41および第2集磁リング42の間を流れない。このため、磁気センサー32の出力電圧は「0V」となる。
【0047】
図6に示される第2検出状態のとき、永久磁石71のN極は、第1磁気ヨーク81の歯部81Bの全部と対向する。また、第2磁気ヨーク82の接続部分82Cの全部と対向する。永久磁石71のS極は、第1磁気ヨーク81の接続部分81Cの全部と対向する。また、第2磁気ヨーク82の接続部分82Cの全部と対向する。永久磁石71および第1磁気ヨーク81は以下の磁気回路を形成する。すなわち歯部81Bは、永久磁石71のN極から磁束を受ける。また接続部分81Cは、永久磁石71のS極に磁束を流す。また永久磁石71および第2磁気ヨーク82は以下の磁気回路を形成する。すなわち接続部分82Cは、永久磁石71のN極から磁束を受ける。また歯部82Bは、永久磁石71のS極に磁束を流す。
【0048】
第1磁気ヨーク81について、第1本体N極対向面積RNAおよび第1歯部S極対向面積RSBは、「0」となる。また第1歯部N極対向面積RNBは、第1本体S極対向面積RSAよりも大きい。
【0049】
このため、第1磁気ヨーク81と永久磁石71の1つのN極との間で流れる磁束は、第1磁気ヨーク81と永久磁石71の1つのS極との間で流れる磁束よりも大きい。このため、永久磁石71のN極の磁束は、第1磁気ヨーク81を通過する。このため、第1磁気ヨーク81はS極に磁化する。
【0050】
また第2磁気ヨーク82について、第2本体S極対向面積SSAおよび第2歯部N極対向面積SNBは、「0」となる。また第2歯部S極対向面積SSBは、第2本体N極対向面積SNAよりも大きい。このため、第2磁気ヨーク82はN極に磁化する。
【0051】
第2検出状態は、上記のとおり磁束が第1磁気ヨーク81を通過し、第2磁気ヨーク82がN極に磁化する。このため、永久磁石71のN極の磁束は、第1磁気ヨーク81、第1集磁リング41、第2集磁リング42、第2磁気ヨーク82、および永久磁石71のS極の順に流れる。このため、磁気センサー32は、鎖交する磁束の大きさおよび方向に応じた電圧を出力する。そして、図1の電子制御装置19は磁気センサー32の出力電圧に基づいて、操舵トルクを算出する。
【0052】
図7に示される第3検出状態のとき、永久磁石71のN極は、第1磁気ヨーク81の接続部分81Cの全部と対向する。また、第2磁気ヨーク82の歯部82Bの全部と対向する。永久磁石71のS極は、第1磁気ヨーク81の歯部81Bの全部と対向する。また、第2磁気ヨーク82の接続部分82Cの全部と対向する。永久磁石71および第1磁気ヨーク81は以下の磁気回路を形成する。すなわち接続部分81Cは、永久磁石71のN極から磁束を受ける。また歯部81Bは、永久磁石71のS極に磁束を流す。また永久磁石71および第2磁気ヨーク82は以下の磁気回路を形成する。すなわち歯部82Bは、永久磁石71のN極から磁束を受ける。また接続部分82Cは、永久磁石71のS極に磁束を流す。
【0053】
第1磁気ヨーク81について、第1本体S極対向面積RSAおよび第1歯部N極対向面積RNBは、「0」となる。また第1歯部S極対向面積RSBは、第1本体N極対向面積RNAよりも大きい。このため、第1磁気ヨーク81はN極に磁化する。
【0054】
また第2磁気ヨーク82について、第2本体N極対向面積SNAおよび第2歯部S極対向面積SSBは、「0」となる。また第2歯部N極対向面積SNBは、第2本体S極対向面積SSAよりも大きい。
【0055】
このため、第2磁気ヨーク82と永久磁石71の1つのN極との間で流れる磁束は、第2磁気ヨーク82と永久磁石71の1つのS極との間で流れる磁束よりも大きい。このため、永久磁石71のN極の磁束は、第2磁気ヨーク82を通過する。
【0056】
第3検出状態は、上記のとおり磁束が第2磁気ヨーク82を通過し、第1磁気ヨーク81がN極に磁化する。このため、永久磁石71のN極の磁束は、第2磁気ヨーク82、第2集磁リング42、第1集磁リング41、第1磁気ヨーク81、および永久磁石71のS極の順に流れる。このため、磁気センサー32は、鎖交する磁束の大きさおよび方向に応じた電圧を出力する。そして、電子制御装置19は磁気センサー32の出力電圧に基づいて、操舵トルクを算出する。
【0057】
図8を参照して、ホルダー50の詳細な構成について説明する。
ホルダー50は、図4の第1集磁リング41および第2集磁リング42を保持する保持凸部52と、側壁51を径方向ZBに貫通する上側貫通孔55および下側貫通孔56と、第1集磁リング41の集磁突起41Bおよび第2集磁リング42の集磁突起42Bが挿入される挿入部分57と、磁気シールド60を保持するシールド保持部分58とを有する。保持凸部52は、側壁51の内周面51Xに形成されている。保持凸部52は、第1集磁リング41および第2集磁リング42を保持する複数の第1保持部分53と、軸方向ZAにおいて第1集磁リング41および第2集磁リング42を第1保持部分53とは反対側から保持する第2保持部分54とを有する。
【0058】
第1保持部分53および第2保持部分54は、側壁51の内周面51Xから内方ZB1に向けて突出している。第1保持部分53は、側壁51の内周面51Xにおいて第2保持部分54に対して上方ZA1の部分および下方ZA2の部分に形成されている。
【0059】
上側貫通孔55は、側壁51のうちの保持凸部52に隣接した位置、すなわち上側の第1保持部分53が突出する部分と第2保持部分54が突出する部分との軸方向ZAの間に形成されている。下側貫通孔56は、側壁51のうちの保持凸部52に隣接した位置、すなわち下側の第1保持部分53が突出する部分と第2保持部分54が突出する部分との軸方向ZAの間に形成されている。
【0060】
シールド保持部分58は、磁気シールド60を上方ZA1から支持する上壁58Aと、磁気シールド60を下方ZA2から支持する下壁58Bと、ホルダー50に対する磁気シールド60の周方向ZCへの移動を規制する端壁58Cとを有する。
【0061】
挿入部分57は、集磁突起41Bおよび集磁突起42Bが挿入される挿入孔57Aと、ホルダー50に対する第1集磁リング41の周方向ZCの位置を決める上側突起57Bと、ホルダー50に対する第2集磁リング42の周方向ZCの位置を決める下側突起57Cとを有する。
【0062】
図9を参照して、磁気シールド60の詳細な構成について説明する。
磁気シールド60は、長板を折り曲げることにより円弧形状に形成されている。磁気シールド60は、同シールド60の内周面60Xが外方ZB2に向けて凹む複数の凹部分61を有する。各凹部分61の周方向ZCの寸法は、図8の上側貫通孔55の周方向ZCの寸法および下側貫通孔56の周方向ZCの寸法と等しい。
【0063】
図10を参照して、集磁ユニット40の詳細な構成について説明する。なお、図10(a)においては、ホルダー50から上壁58Aおよび下壁58Bを省略した状態の集磁ユニット40の平面構造を示している。
【0064】
第1集磁リング41のリング本体41Aは、リング本体41Aの幅方向において上側の第1保持部分53および第2保持部分54により挟み込まれている。ホルダー50の上側突起57Bは、各集磁突起41Bの周方向ZCの間に挿入されている。リング本体41Aは、上側貫通孔55を覆う。
【0065】
第2集磁リング42のリング本体42Aは、リング本体42Aの幅方向において下側の第1保持部分53および第2保持部分54により挟み込まれている。ホルダー50の下側突起57C(図8参照)は、図4の各集磁突起42Bの周方向ZCの間に挿入されている。リング本体42Aは、下側貫通孔56を覆う。
【0066】
磁気シールド60は、ホルダー50の端壁58Cにより周方向ZCに位置決めされている。また、上側貫通孔55および下側貫通孔56を含めて側壁51の外周面51Yを覆う。磁気シールド60の各凹部分61は、各上側貫通孔55および各下側貫通孔56と径方向ZBに対向する部分に位置している。また、各凹部分61は、各上側貫通孔55および各下側貫通孔56とは反対側に凹む。
【0067】
トルク検出装置20の製造方法について説明する。
トルク検出装置20は、具体的には次の工程K1〜工程K3を含む。
工程K1は、各集磁リング41,42および磁気シールド60をホルダー50に取り付けることにより集磁ユニット40を組み立てる。工程K2は、図2のセンサーハウジング31を成型する金型(図示略)に集磁ユニット40を配置する。工程K3は、工程K2の後にセンサーハウジング31の成型材料である樹脂を集磁ユニット40の外周から金型内に流し込むことによりセンサーハウジング31を一体に成型する。このとき、図2に示されるように、センサーハウジング31は、側壁51の外面となる上壁58Aの上端面および外周面51Yと、下壁58Bの下端面および外周面51Y(図8参照)とに溶着した内面31Eを有する。なお、センサーハウジング31の成型材料は、ホルダー50の成型材料と同じである。
【0068】
図11を参照して、ホルダー50の製造方法について説明する。
ホルダー50の成型時においては、金型90内の空間Sに樹脂を流入する。空間Sは、ホルダー50の形状に相当する。
【0069】
金型90は、樹脂を供給するためのゲート(図示略)を有する固定型93と、固定型93に対して軸方向ZAに接近および離間する第1可動型91と、軸方向ZAと直交する平面に沿う方向において第1可動型91および固定型93に対して接近および離間する第2可動型92とを有する。
【0070】
第1可動型91は、ホルダー50の側壁51の内周面51X側を成型する内方可動型91Aと、ホルダー50の下端面側および外周面51Y側を成型する外方可動型91Bとを有する。
【0071】
固定型93は、ホルダー50の側壁51の内周面51X側を成型する内方固定型93Aと、ホルダー50の上端面側および外周面51Y側を成型する外方固定型93Bとを有する。
【0072】
第2可動型92は、ホルダー50の成型時において外方可動型91Bおよび外方固定型93Bの軸方向ZAの間に位置する。
固定型93および第2可動型92は、ホルダー50において第2保持部分54よりも上方ZA1の部分を成型する。また、上側の第1保持部分53および上側貫通孔55を成型する。
【0073】
第1可動型91および第2可動型92は、ホルダー50において第2保持部分54および第2保持部分54よりも下方ZA2の部分を成型する。また、下側の第1保持部分53および下側貫通孔56を成型する。
【0074】
空間Sに樹脂が供給されることによりホルダー50が形成された後、第1可動型91は、固定型93に対して下方ZA2に離間する。また、第2可動型92は、軸方向ZAと直交する平面に沿う方向において第1可動型91および固定型93に対して離間する。このように、第2可動型92が移動するため、上側貫通孔55および下側貫通孔56が形成される。
【0075】
図12および図13を参照して、比較例としてのトルク検出装置(以下、「比較装置100」)との比較に基づいて、トルク検出装置20の作用について説明する。ここでは、磁気シールド60のうちの各上側貫通孔55に対応する部分および第1集磁リング41の関係について説明する。磁気シールド60のうちの各下側貫通孔56に対応する部分および第2集磁リング42の関係は、磁気シールド60のうちの各上側貫通孔55に対応する部分および第1集磁リング41の関係と同様であるため、その説明を省略する。
【0076】
比較装置100は、磁気シールド60に代えて、磁気シールド60から各凹部分61を省略した構成の図13の磁気シールド110を有する点において本実施形態のトルク検出装置20と相違し、その他の点はトルク検出装置20と同様の構成を有する。このため、トルク検出装置20と共通する構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
センサーハウジング31を成型するとき、磁気シールド60においてホルダー50の上側貫通孔55に対応する部分は、内面側が金型により支持されていないため、工程K3において金型内に供給された成型材料からの圧力(以下、「樹脂圧MP」)が高いとき、ホルダー50側に変形する。
【0078】
図13に示されるように、比較装置100においては、樹脂圧MPにより磁気シールド60の変形部分は、第1集磁リング41の外周面に接触する、または近距離まで接近する。そして、この場合には、磁気シールド110と第1集磁リング41との間の径方向ZBの距離が小さくなるため、第1集磁リング41から磁気シールド110に磁束が流れる。これにともない、第1集磁リング41から図4の磁気センサー32に鎖交する磁束量が変化するため、磁気センサー32の出力電圧が変化する。このため、比較装置100の磁気センサー32の出力電圧に基づいて、図1の電子制御装置19が操舵トルクを正確に算出することが困難である。
【0079】
図12に示されるように、トルク検出装置20においては、比較装置100と比較して、凹部分61により第1集磁リング41と磁気シールド60の凹部分61の内周面との間の径方向ZBの距離が大きくなるため、樹脂圧MPにより磁気シールド60が変形しても磁気シールド60と第1集磁リング41との間の径方向ZBの距離が比較装置100の磁気シールド110の変形部分と第1集磁リング41との間の径方向ZBの距離よりも大きい。
【0080】
加えて、磁気シールド60は、凹部分61により磁気シールド60のうちの上側貫通孔55に対向する部分の剛性が向上する。このため、比較装置100と比較して、樹脂圧MPにより磁気シールド60が内方ZB1に変形しにくい。このため、比較装置100よりも磁気センサー32の出力電圧の変化が小さくなることにより、電子制御装置19が正確に操舵トルクを算出することが可能となる。
【0081】
(実施形態の効果)
本実施形態の電動パワーステアリング装置1は、以下の効果を奏する。
(1)磁気シールド60は、同シールド60のうちのホルダー50の上側貫通孔55および下側貫通孔56に対向する部分に凹部分61を有する。この構成によれば、凹部分61により磁気シールド60のうちの上側貫通孔55および下側貫通孔56に対向する部分と第1集磁リング41および第2集磁リング42のうちの上側貫通孔55および下側貫通孔56に対向する部分との距離が比較装置100よりも大きくなる。したがって、比較装置100よりも各集磁リング41,42から磁気シールド60に磁束が流れることが抑制される。
【0082】
(2)また、凹部分61により上側貫通孔55および下側貫通孔56に対向する磁気シールド60の部分の剛性が向上する。このため、比較装置100の磁気シールド110よりも磁気シールド60が樹脂圧MPより各集磁リング41,42により接近しにくい。
【0083】
(3)ラックハウジング15は、車両の走行時において水が付着する場合がある。このため、トルク検出装置20は、ラックハウジング15に隣り合う位置に配置されていることにより、車両の走行時に水が付着する場合がある。
【0084】
トルク検出装置20は、集磁ユニット40の外周に樹脂が流し込まれることにより集磁ユニット40と一体に成形されたセンサーハウジング31を有する。この構成によれば、集磁ユニット40およびセンサーハウジング31の間に水が侵入することが抑制される。
【0085】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態以外の実施形態を含む。以下、本発明のその他の実施形態としての上記実施形態の変形例を示す。なお、以下の各変形例は、互いに組み合わせることもできる。
【0086】
・上記実施形態(図10および図11)の磁気シールド60は、凹部分61が上側貫通孔55および下側貫通孔56に対向する部分に位置している。一方、変形例の磁気シールド60は、以下の(A)〜(C)の凹部分を有する。
【0087】
(A)図14(a)に示されるように、変形例の磁気シールド60は、第1集磁リング41に対向する上側凹部分62と、第2集磁リング42に対向する下側凹部分63とを有する。上側凹部分62および下側凹部分63は、磁気シールド60の全周にわたり形成される。
【0088】
(B)図14(b)に示されるように、変形例の磁気シールド60は、上記(A)の磁気シールド60において、上側凹部分62および下側凹部分63を一体化した凹部分64を有する。
【0089】
(C)図14(c)に示されるように、変形例の磁気シールド60は、周方向ZCにおいて同じ位置かつ軸方向ZAに互いに離間した2つの凹部分61を一体化した凹部分65を有する。
【0090】
・上記実施形態(図10および図11)の磁気シールド60は、各凹部分61の周方向ZCの寸法が上側貫通孔55の周方向ZCの寸法および下側貫通孔56の周方向ZCの寸法と等しい。一方、変形例の磁気シールド60は、各凹部分61の周方向ZCの寸法が上側貫通孔55の周方向ZCの寸法および下側貫通孔56の周方向ZCの寸法と異なる。
【0091】
・上記実施形態(図4)のトルク検出装置20は、2個の磁気センサー32を有する。一方、変形例のトルク検出装置20は、1個の磁気センサー32を有する。この場合、第1集磁リング41は、1個の集磁突起41Bを有する。第2集磁リング42は、1個の集磁突起42Bを有する。また、別の変形例のトルク検出装置20は、磁気センサー32としてホールICに代えてホール素子またはMR素子等の磁気検出素子を有する。
【0092】
・上記実施形態(図1)の電動パワーステアリング装置1は、アシスト装置17がラックシャフト16にアシスト力を付与する。一方、変形例の電動パワーステアリング装置1は、アシスト装置17がステアリングシャフト10のうちのコラムシャフトにアシスト力を付与する。この場合、トーションバー13は、コラムシャフトに接続される。トルク検出装置20は、コラムシャフトの一部分に位置し、コラムシャフトに入力された操舵トルクを検出する。
【符号の説明】
【0093】
1…電動パワーステアリング装置、2…ステアリングホイール、3…転舵輪、10…ステアリングシャフト、11…第1軸体、12…第2軸体、12A…ギヤ部分、13…トーションバー、14…ハウジング、15…ラックハウジング、16…ラックシャフト、16A…第1ギヤ部分、16B…第2ギヤ部分、17…アシスト装置、17A…電動モータ、17B…減速機構、17C…ウォームシャフト、17D…ウォームホイール、18…ピニオンシャフト、18A…ギヤ部分、19…電子制御装置、20…トルク検出装置、21…シール部材、22…シール部材、23…玉軸受、24…出力軸ハウジング、30…センサーユニット、31…センサーハウジング、31A…嵌合部分、31B…カバー部分、31C…取付部分、31E…内面、32…磁気センサー、40…集磁ユニット、41…第1集磁リング、41A…リング本体、41B…集磁突起、42…第2集磁リング、42A…リング本体、42B…集磁突起、50…ホルダー、51…側壁、51X…内周面、51Y…外周面、52…保持凸部、53…第1保持部分、54…第2保持部分、55…上側貫通孔、56…下側貫通孔、57…挿入部分、57A…挿入孔、57B…上側突起、57C…下側突起、58…シールド保持部分、58A…上壁、58B…下壁、58C…端壁、60…磁気シールド、60X…内周面、61…凹部分、62…上側凹部分、63…下側凹部分、64…凹部分、65…凹部分、70…磁石ユニット、71…永久磁石、72…コア、80…磁気ヨークユニット、81…第1磁気ヨーク、81A…本体リング、81B…歯部、81C…接続部分、82…第2磁気ヨーク、82A…本体リング、82B…歯部、82C…接続部分、83…ヨークホルダー、84…中間部材、90…金型、91…第1可動型、91A…内方可動型、91B…外方可動型、92…第2可動型、93…固定型、93A…内方固定型、93B…外方固定型、100…比較装置、110…磁気シールド、S…空間、MP…樹脂圧、ZA…軸方向、ZA1…上方、ZA2…下方、ZB…径方向、ZB1…内方、ZB2…外方、ZC…周方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14