特許第5994413号(P5994413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994413
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】リング状物品の欠肉の検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/30 20060101AFI20160908BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   G01B11/30 A
   G01B11/24 K
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-134207(P2012-134207)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-257246(P2013-257246A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】大和 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】布施 直紀
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一郎
【審査官】 梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−002124(JP,U)
【文献】 特開2006−162427(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/132587(WO,A1)
【文献】 特開2009−222418(JP,A)
【文献】 特開2000−131037(JP,A)
【文献】 特開平08−094329(JP,A)
【文献】 特開平06−050904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 − 11/30
G01B 5/00 − 5/30
G01B 21/00 − 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状物品(10)の欠肉の検査装置であって、
前記リング状物品(10)が載置されるステージ(12)と、
前記ステージ(12)に形成されて上下に貫通し、該ステージ(12)に載置された前記リング状物品(10)の外縁(10b)が臨む光透過部(26)と、
前記ステージ(12)に照射された照明手段(17)の照射光が前記リング状物品(10)で反射した反射光で形成される像を撮像手段(18)で撮像する第1画像取得手段と、
前記ステージ(12)に照射されて前記光透過部(26)を通過した照明手段(17)の照射光で形成される投影像を撮像手段(18)で撮像する第2画像取得手段と、
前記第1および第2画像取得手段で得られた画像から前記リング状物品(10)の欠肉の有無および大きさを認識する認識手段(32)とを備えた
ことを特徴とするリング状物品の欠肉の検査装置。
【請求項2】
前記第1画像取得手段は、前記ステージ(12)に上方から光を照射する第1の照明手段(17)および該第1の照明手段(17)の照射光の前記リング状物品(10)で反射した反射光をステージ(12)の上方から撮像する撮像手段(18)を備え、
前記第2画像取得手段は、前記ステージ(12)に下方から光を照射する第2の照明手段(14)および該第2の照明手段(14)の照射光で形成される投影像をステージ(12)の上方から撮像する前記撮像手段(18)を備える請求項1記載のリング状物品の欠肉の検査装置。
【請求項3】
前記第1画像取得手段は、前記ステージ(12)に上方から光を照射する照明手段(17)および該照明手段(17)の照射光の前記リング状物品(10)で反射した反射光をステージ(12)の上方から撮像する第1の撮像手段(18)を備え、
前記第2画像取得手段は、前記ステージ(12)に上方から光を照射する前記照明手段(17)および該照明手段(17)の照射光で形成される投影像をステージ(12)の下方から撮像する第2の撮像手段(38)を備える請求項1記載のリング状物品の欠肉の検査装置。
【請求項4】
前記ステージ(12)に、中央部から放射状に延びるように前記光透過部(26)が複数形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載のリング状物品の欠肉の検査装置。
【請求項5】
前記撮像手段(18,38)には、テレセントリックレンズ(30)が装着されている請求項1〜4の何れか一項に記載のリング状物品の欠肉の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング状物品の欠肉を検査する検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、転がり軸受の内輪や外輪等に用いられるリング状の物品として、棒状の素材から鍛造成形された鍛造品が用いられている。この鍛造品の成形に際し、鍛造型や素材に生ずる温度分布の偏りや、素材の流動性あるいは鍛造型のインプレッション表面の潤滑条件等によって、型内で塑性変形される材料が鍛造型のインプレッションに充満されずに表面欠陥としての欠肉が発生することがある。この欠肉は、鋳造品の端縁部にダレとして現われるので、欠肉の有無や大きさを、従来は作業者が目視で検査したり、あるいはRゲージを用いて端縁部を測定して検査していたため、検査に時間が掛かると共に、作業者の熟練度の違いにより検査精度にバラツキが発生する問題があった。そこで、特許文献1に開示されているように、回転用駆動ローラとフリーローラとの間に挟持した物品(鋳造品)に側方から光を照射して、反対側に配置したCCDカメラによって撮像した物品の投影画像から欠肉に伴うダレを検出するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−2232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の検査装置で欠肉を検査する場合には、物品を回転して端縁部の全体を撮像する必要があり、検査時間が長くなる難点が指摘される。しかも、欠肉検査の対象となる鍛造品は多品種であるため、物品を回転させる機構を各品種に合わせて設定する必要があり、機構が複雑になると共に、品種替えに際しての段取りに時間が掛かる難点も指摘される。
【0005】
すなわち本発明は、前記従来の技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、簡単な構成でリング状物品の欠肉を短時間で検査し得るリング状物品の欠肉の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係るリング状物品の欠肉の検査装置は、
リング状物品の欠肉の検査装置であって、
前記リング状物品が載置されるステージと、
前記ステージに形成されて上下に貫通し、該ステージに載置された前記リング状物品の外縁が臨む光透過部と、
前記ステージに照射された照明手段の照射光が前記リング状物品で反射した反射光で形成される像を撮像手段で撮像する第1画像取得手段と、
前記ステージに照射されて前記光透過部を通過した照明手段の照射光で形成される投影像を撮像手段で撮像する第2画像取得手段と、
前記第1および第2画像取得手段で得られた画像から前記リング状物品の欠肉の有無および大きさを認識する認識手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
請求項1に係る発明によれば、リング状物品を回転させることなくリング状物品の形状を認識することができ、表面欠陥である欠肉の検査を短時間で行ない得る。また、ステージにリング状物品を載置して撮像するだけであるので、構成が簡単であり、品種変更に際しての段取りに手間が掛からない。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記第1画像取得手段は、前記ステージに上方から光を照射する第1の照明手段および該第1の照明手段の照射光の前記リング状物品で反射した反射光をステージの上方から撮像する撮像手段を備え、
前記第2画像取得手段は、前記ステージに下方から光を照射する第2の照明手段および該第2の照明手段の照射光で形成される投影像をステージの上方から撮像する前記撮像手段を備えることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、1つの撮像手段で投影像と反射光による像とを撮像するよう構成したので、構成を簡略化できる。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記第1画像取得手段は、前記ステージに上方から光を照射する照明手段および該照明手段の照射光の前記リング状物品で反射した反射光をステージの上方から撮像する第1の撮像手段を備え、
前記第2画像取得手段は、前記ステージに上方から光を照射する前記照明手段および該照明手段の照射光で形成される投影像をステージの下方から撮像する第2の撮像手段を備えることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、1つの照明手段で投影像と反射光による像とを表わし得るよう構成したので、構成を簡略化できる。
【0010】
請求項4に係る発明では、前記ステージに、中央部から放射状に延びるように前記光透過部が複数形成されていることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、寸法の異なるリング状物品の検査に対応することができる。
【0011】
請求項5に係る発明では、前記撮像手段には、テレセントリックレンズが装着されていることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、撮像手段により歪みのない画像を撮像することができ、検査精度を向上し得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るリング状物品の欠肉の検査装置によれば、簡単な構成でリング状物品の欠肉を短時間で検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例に係るリング状物品の欠肉の検査装置を示す概略図である。
図2】実施例に係る検査装置のステージを示す概略平面図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4】実施例に係るステージに形成した第2光透過部とリング状物品との関係を示す要部拡大平面図である。
図5】実施例に係る検査装置の制御ブロック図である。
図6】実施例に係る第1カメラにより撮像した画像を画像処理した後の状態で示す説明図である。
図7】実施例に係る第2カメラにより撮像した画像を画像処理した後の状態で示す説明図である。
図8】実施例に係る第1カメラにより反射光で形成された像を撮像した画像を画像処理した後の状態で示す説明図である。
図9】実施例に係るリング状物品の欠肉部分および非欠肉部分の反射光により得られる画像の明暗の関係を示す説明図である。
図10】実施例に係る第2カメラにより撮像した別の画像を画像処理した後の状態で示す要部拡大説明図である。
図11】別実施例に係るリング状物品の欠肉の検査装置を示す概略図である。
図12】変更例に係るステージの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係るリング状物品の欠肉の検査装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、実施例に係るリング状物品の欠肉の検査装置を示す概略図であり、該検査装置は、鍛造成形されたリング状物品(物品)10を載置するステージ12と、該ステージ12に載置されたリング状物品10に光を照射する照明手段14,16,17と、照明手段14,16,17から光が照射されたリング状物品10を撮像するカメラ18,20と、カメラ18,20で撮像された画像を処理して物品形状を認識すると共に内径、外径、厚み、真円度、偏肉、欠肉(表面欠陥)等の各種検査項目を測定し、更に各測定値が規格の公差内に収まっているか否かを判定する画像処理装置22とを基本的に備える。前記リング状物品10として、円筒状に成形されたものを挙げている。
【0016】
前記ステージ12は、非光透過性で金属製の矩形板材で構成され、該ステージ12は均一な厚みで、リング状物品10が載置される上面(物品載置面)は平坦に形成されており、該ステージ12に対してリング状物品10は、孔10aの開口が上下に向く姿勢で載置される。またステージ12は、検査対象となるリング状物品10より充分に大きく設定されて、ステージ12上にリング状物品10を載置した際に、該リング状物品10がステージ12から外方にはみ出すことがないようになっている。このステージ12の中央に、リング状物品10における孔10aの内径より大きく、かつリング状物品10の外径より小さい内径に設定された第1光透過部24が上下方向に貫通するように形成されており(図2,図3参照)、ステージ12上に、孔10aが第1光透過部24の内側に臨む状態でリング状物品10を載置し得るよう構成される。実施例では、第1光透過部24は、円筒状に成形されたリング状物品10の円形の孔10aに合わせて円形に形成されている。なお、第1光透過部24の内径とリング状物品10における孔10aの内径との差は、ステージ12上にリング状物品10を載置する自動搬送手段(図示せず)の位置決め精度を考慮して、自動搬送手段で発生するおそれのある最大誤差より大きく設定される。すなわち、ステージ12に設定されたリング状物品10の載置位置に対して、自動搬送手段で載置されるリング状物品10に位置ずれが発生しても、リング状物品10の孔10aの全体が常に第1光透過部24に重なるよう構成される。
【0017】
前記ステージ12には、上下方向に貫通する第2光透過部(光透過部)26が形成されている。実施例では、前記第1光透過部24に中央側で連通する複数の第2光透過部26が、該第1光透過部24(ステージ12の中央部)から径方向外方に向けて放射状に形成されている。各第2光透過部26は、図2に示す如く、リング状物品10を孔10aの全体が第1光透過部24と重なる位置でステージ12に載置した状態で、該物品10の外周縁(外縁)10bより径方向外方に延在する長さに設定される。実施例では、8本の第2光透過部26が周方向に一定間隔で形成されているが、第2光透過部26の形成本数は、リング状物品10の検査項目(例えば真円度)を保証する精度に応じて設定すればよく、4本以上が好適である。なお、第2光透過部26の幅寸法は、図4に示す如く、第2光透過部26を覆うリング状物品10の外周縁10bの投影像からリング状物品10の外周縁10bの弧の曲率が測定可能な値に設定される。例えば、第2光透過部26の幅寸法は、10mm程度に設定される。
【0018】
前記ステージ12の物品載置面には、図2および図3に示す如く、上方に開口する長溝(溝)28が形成されている。実施例では、ステージ12におけるリング状物品10が載置される領域において、複数の長溝28が平行に形成されている。また各長溝28は、後述する第2照明手段16と第2カメラ20との対向方向に延在している。長溝28は、前記第1光透過部24または第2光透過部26と交差する部分では該第1光透過部24内または第2光透過部26内に開口すると共に、ステージ12の端縁では外側方に開口するよう構成されて、第2照明手段16からステージ12に向けて側方から照射された光を、長溝28、第1光透過部24および第2光透過部26を介して第2カメラ20側に通過可能に構成される。すなわち、実施例では、長溝28、第1光透過部24および第2光透過部26によって、ステージ12の一端から他端まで光が通過可能な上方に開口する光通路が形成されている。
【0019】
図1に示す如く、前記ステージ12の下方に、第1照明手段(第2の照明手段)14が配置され、該第1照明手段14から上向きに照射された光が、ステージ12を下方から照らすよう構成される。また、ステージ12における前記長溝28が開口する一端縁に対向する一側方に、第2照明手段16が配置され、該第2照明手段16から横向きに照射された光が、ステージ12を横から照らすよう構成される。第1照明手段14は、ステージ12に形成した第1光透過部24および第2光透過部26を照らすと共に、第2照明手段16は、ステージ12に形成した長溝28および該ステージ12に載置したリング状物品10の上端より上方の領域までを照らすことが可能に構成されている。各照明手段14,16は、第1光透過部24および第2光透過部26または長溝28およびリング状物品10に対して平行光を照射し得る面発光照明が用いられ、その光源としては、LED、蛍光灯、その他各種のランプを用いることができる。更に、ステージ12の上方に、ビームスプリッタ29および該ビームスプリッタ29に向けて横向きに光を照射する第3照明手段(第1の照明手段)17が配置されている。ビームスプリッタ29は、第3照明手段17から横向きに照射された光を、ステージ12やリング状物品10の上面に向けて後述する第1カメラ18と同軸方向に反射すると共に、ステージ12およびリング状物品10で反射した反射光の一部を透過可能に構成されている。実施例では、ビームスプリッタ29として、反射光の50%を透過するものが使用される。また、第3照明手段17としても平行光を照射し得る面発光照明が用いられ、その光源としては、LED、蛍光灯、その他各種のランプを用いることができる。
【0020】
前記ステージ12の上方に、該ステージ12における物品載置面の所定の領域(撮像領域)を撮像可能な第1カメラ(撮像手段)18が配置され、該第1カメラ18で撮像された画像が画像処理装置22に取り込まれるよう構成される(図5参照)。この第1カメラ18では、前記第1照明手段14からの照射光により形成される投影像および第3照明手段17から照射された光がリング状物品10やステージ12の物品載置面で反射した反射光により形成される像を撮像するようになっている。また、ステージ12を挟んで第2照明手段16とは反対側の他側方に、第2照明手段16からの照射光によって形成される投影像を撮像可能な第2カメラ(別の撮像手段)20が配置され、該第2カメラ20で撮像された画像が画像処理装置22に取り込まれるよう構成される。各カメラ18,20としては、CCDセンサ等の撮像素子を備えたものが好適に使用される。また、各カメラ18,20には、主光線がレンズ軸に対して平行になるよう構成されたテレセントリックレンズ30が夫々装着される。そして、第1カメラ18では、テレセントリックレンズ30の作用によって、第1照明手段14から照射されて第1光透過部24および第2光透過部26を通過した光の光軸と平行な成分が撮像されると共に、前記第3照明手段17から照射されてリング状物品10やステージ12で反射した反射光の光軸と平行な成分が撮像されるよう構成される。また、第2カメラ20では、テレセントリックレンズ30の作用によって、第2照明手段16から照射されて長溝28を通過した光の光軸と平行な成分が撮像されるよう構成される。実施例では、第3照明手段17および第1カメラ18で、リング状物品10の反射光で形成される像を撮像する第1画像取得手段が構成されると共に、第1照明手段14および第1カメラ18で、リング状物品10の投影像を撮像する第2画像取得手段が構成される。また、第2照明手段16および第2カメラ20で、リング状物品10の投影像を撮像する第3画像取得手段が構成される。
【0021】
前記両カメラ18,20が接続される画像処理装置22は、カメラ18,20で撮像された画像を画像処理することで、リング状物品10の輪郭形状を得る画像処理部(認識手段)32と、該画像処理部32で得られたリング状物品10の輪郭形状から外径、内径、厚み、真円度、偏肉、欠肉等の各種検査項目を測定する測定部34と、該測定部34で測定した各種検査項目の測定値が、予め設定された規格値に対して公差内に収まっているか否かを判定する判定部36とを備える(図5参照)。なお、図示しないが、画像処理装置22には、判定部36で判定された結果を表示する表示手段が接続されている。また、画像処理としては、例えば、2値化処理や多値化処理が挙げられ、該処理により得られた白黒画像や白黒の濃淡画像から形状を認識可能とする等、その他各種の処理を採用し得る。
【0022】
〔実施例の作用〕
次に、前述のように構成された本実施例のリング状物品の欠肉の検査装置の作用につき説明する。
【0023】
前記ステージ12の物品載置面に、図2および図3に示す如く、リング状物品10を、孔10aの全体が第1光透過部24に重なって、該孔10aの内周端縁が第1光透過部24の内側に臨むように載置する。これにより、鍛造品であるリング状物品10の孔10aを打抜いた際に端縁に生じたバリによって該物品10が傾くのを防ぐことができ、リング状物品10をステージ12に対して下面が平行となる姿勢で載置し得る。ステージ12にリング状物品10を載置した状態で、前記第1照明手段14からの光をステージ12に下方から照射し、該照射光により形成される投影像をステージ12の上側から前記第1カメラ18で撮像して画像処理装置22へ取り込む。画像処理装置22に取り込まれた撮像画像(第1照明手段14の照射光に基づく第1の撮像画像)は、画像処理部32で画像処理されて、リング状物品10の輪郭形状の画像が得られる。図6は、第1の撮像画像を画像処理部32で処理された処理画像を示すものであって、第1カメラ18の撮像領域S1内において、ステージ12およびリング状物品10によって光が遮られた部分は暗部(図ではドットで示す)として表われ、リング状物品10の孔10aおよび第2光透過部26を光が通過して前記ビームスプリッタ29を透過して第1カメラ18で受光した部分が明部(図では白抜き部分)として表われる。
【0024】
前記画像処理装置22の測定部34では、図6に示す処理画像におけるリング状物品10の孔10aに対応する明部と暗部との境界線L1に基づいて、該リング状物品10の内径を測定すると共に孔10aの中心座標を得る。また測定部34は、複数の第2光透過部26に対応する明部と孔10a側の暗部との境界線L2に基づいて、該リング状物品10の外径を測定すると共に外径の中心座標(図9のC1)を得る。ここで、実施例の第2光透過部26の幅は、図4に示す如く、該第2光透過部26を覆うリング状物品10の外周縁10bの曲率を判別し得る寸法に設定されているので、各境界線L2から測定される曲率を基に8つの境界線L2を結ぶ円を演算により求めることで、リング状物品10の外径および中心座標を得ることができる。更に、測定部34では、内径および外径の中心座標からリング状物品10の偏肉を測定すると共に、外径を複数箇所で測定することで真円度を測定する。そして、画像処理装置22の判定部36では、得られた各種検査項目の測定値が、予め設定された規格値に対して公差内に収まっているか否かを判定する。
【0025】
次に、前記第1照明手段14を消灯したもとで、前記第2照明手段16からの光をステージ12に側方から照射し、該照射光により形成される投影像をステージ12の他側方から前記第2カメラ20で撮像して画像処理装置22へ取り込む。画像処理装置22に取り込まれた撮像画像(第2照明手段16の照射光に基づく第2の撮像画像)は、画像処理部32で画像処理されて、リング状物品10の輪郭形状の画像が得られる。図7は、第2の撮像画像を画像処理部32で処理した処理画像を示すものであって、第2カメラ20の撮像領域S2内において、ステージ12およびリング状物品10によって光が遮られた部分は暗部(図ではドットで示す)として表われ、ステージ12およびリング状物品10で光が遮られない部分が明部(図では白抜き部分)として表われる。また、前記第2照明手段16から照射されて長溝28に一方の開口から入射された光は、該長溝28、第1光透過部24および第2光透過部26を介してステージ12の他側方に通過するので、当該長溝28の他方の開口に対応する部分が明部として表われる。すなわち、ステージ12に載置されたリング状物品10における長溝28上に位置する下面に対応する部分が明部と暗部との境界線L3として表われるので、画像処理装置22の測定部34では、該境界線L3とリング状物品10の上面に対応する明部と暗部との境界線L4とに基づいて、該リング状物品10の厚みを測定する。そして、画像処理装置22の判定部36では、得られた厚みの測定値が、予め設定された規格値に対して公差内に収まっているか否かを判定する。
【0026】
更に、前記第2照明手段16を消灯したもとで、前記第3照明手段17を点灯する。第3照明手段17から照射された光は、前記ビームスプリッタ29によってステージ12の物品載置面およびリング状物品10の上面に向けて照射される。そして、ステージ12およびリング状物品10で反射した反射光の一部は、ビームスプリッタ29を透過し、該反射光によって形成される像を前記第1カメラ18で撮像して画像処理装置22へ取り込む。画像処理装置22に取り込まれた撮像画像(第3照明手段17の照射光に基づく第3の撮像画像)は、画像処理部32で画像処理されて、リング状物品10の輪郭形状の画像が得られる。図8は、第3の撮像画像を画像処理部32で処理した処理画像を示すものであって、第1カメラ18の撮像領域S1内において、ステージ12およびリング状物品10で光が反射した部分は明部(図では白抜き部分)として表われ、孔10aや第2光透過部26に対応する部分では光が反射しないので暗部(図ではドットで示す)として表われる。この場合において、図9に示す如く、リング状物品10の端縁部に生じているダレ部分(欠肉部分)では、該ダレ部分での反射光は斜めに反射されてしまうので、第1カメラ18で撮像した際にはリング状物品10における欠肉が生じている欠肉部分G1は暗くなり、第3の撮像画像に対応する処理画像では、リング状物品10における欠肉のない非欠肉部分G2が明部となる(図9では、リング状物品10の外周端縁における上、右および下に亘って欠肉部分G1がある状態を示すと共に、孔10aに対応する暗部は省略している)。すなわち、リング状物品10における非欠肉部分G2と欠肉部分G1との境が明部と暗部との境界線L5として表われるので、画像処理装置22の測定部34では、該境界線L5に基づいて非欠肉部分G2の外径および中心座標(図9のC2)を求める。また測定部34は、第1の撮像画像に基づいて得られたリング状物品10の外径の中心座標(C1)と、第3の撮像画像に基づいて得られたリング状物品10における非欠肉部分G2の外径の中心座標(C2)とから、欠肉の大きさが測定される。そして、画像処理装置22の判定部36では、得られた欠肉の測定値が、予め設定された規格値に対して公差内に収まっているか否かを判定する。
【0027】
実施例の検査装置では、ステージ12にリング状物品10を載置した状態で、上方および側方からリング状物品10を撮像するだけで、該リング状物品10の輪郭形状を認識すると共に、認識した輪郭形状から内径、外径、厚み、真円度、偏肉および欠肉等の各種検査項目を測定することができ、検査に掛かる時間を短縮することができる。また、ステージ12に、リング状物品10の孔10aの内径より大きな第1光透過部24を形成してあるので、該リング状物品10の孔10aの端縁にバリが発生していたとしても、該バリによってリング状物品10が傾くことはなく、高い検査精度を保証することができる。更に、第1照明手段14からの光が通過する第2光透過部26を放射状に形成して各種寸法のリング状物品10に対応し得るよう構成してあるので、リング状物品10の品種変更によって外径寸法が変わってもステージ12を交換する必要はなく、リング状物品10の品種変更に際しての段取りに手間が掛からない。更にまた、第1カメラ18および第2カメラ20には、テレセントリックレンズ30を装着しているから、該カメラ18,20で撮像された画像の歪みは小さく、前記境界線L1,L2,L3,L4,L5に基づく寸法の測定精度をより高くすることができる。
【0028】
実施例の検査装置では、第1照明手段14の照射光により形成される投影像および第3照明手段17から照射された光のリング状物品10で反射した反射光により形成される像を基に、該リング状物品10の形状を認識するよう構成している。すなわち、欠肉のような表面欠陥のないリング状物品10であれば、投影像と反射光による像の輪郭形状は略一致するのに対し、該欠肉があれば投影像と反射光による像の輪郭形状は一致しないので、両像を比較することで欠肉等の表面欠陥を短時間で検査することができる。また、欠肉(表面欠陥)が部分的であっても、反射光で形成される像の撮像画像においては部分的な欠肉部分と他の部分(非欠肉部分)とが明部と暗部とで区分されるので、精度よく部分的な欠肉も検出可能である。更に、実施例の検査装置は、リング状物品10の投影像を撮像する第1画像取得手段の第1カメラ18を、リング状物品10の反射光で形成される像を撮像する第2画像取得手段のカメラとして兼用しているので、別々にカメラを備える構成に比べて構成を簡略化することができる。
【0029】
また、実施例の検査装置では、前記第2カメラ20で撮像された画像から、図10に示すようにリング状物品10の正確な輪郭形状を認識可能であるので、該リング状物品10の外周面が軸方向に傾斜しているか否かを判定することができる。従って、外周面がテーパー形状のリング状物品10のテーパー角度等を測定することも可能である。
【0030】
ここで、実施例ではステージ12を金属製の非光透過性の板材で構成し、下方からの光が通過可能な第1光透過部24および第2光透過部26を形成することで、該ステージ12に載置したリング状物品10の投影像を撮像するよう構成したが、ステージ12を光透過性の合成樹脂製とすることで、下方からの光によってリング状物品10の投影像を撮像することは可能である。しかしながら、実施例において検査対象となる鍛造成形されたリング状物品10は、表面が粗く、ステージ12にリング状物品10を載置する際にステージ表面を傷付けて白化させてしまい、透明性を経時的に低下させてリング状物品10の投影像を撮影した画像から輪郭形状を精度よく認識できなくなるおそれがある。これに対し、金属製のステージ12を採用することで、リング状物品10によってステージ12の表面が傷付けられたとしても、第1光透過部24や第2光透過部26を通過する光に影響を与えることはなく、長期に亘ってリング状物品10の輪郭形状を精度よく認識することができる利点がある。
【0031】
〔別実施例〕
図11は、別実施例に係るリング状物品の欠肉の検査装置を示す概略図であって、基本的な構成は前述した実施例と同じであるので、異なる部分についてのみ説明し、同一部材には同じ符号を付して詳細説明は省略する。すなわち、別実施例に係る検査装置は、前記ステージ12の下方に、第1照明手段14に代えて第3カメラ(第2の撮像手段)38を配置した点で、実施例に係る検査装置と異なっている。そして、別実施例の検査装置では、前記第3照明手段17から照射されてビームスプリッタ29を介してステージ12の上方から照射された光により形成される投影像を、ステージ12の下側から第3カメラ38で撮像して画像処理装置22へ取り込むよう構成される。
【0032】
前記第3カメラ38で撮像された撮像画像を画像処理部32で画像処理することで、図6に示す画像が得られるので、該投影像の画像と、実施例と同様にビームスプリッタ29を透過した反射光による像から得られる画像とを比較することで、別実施例の検査装置においても、実施例と同様にリング状物品10の形状を認識し得ると共に、各種検査項目の測定を行なうことができ、実施例と同じ作用効果を奏する。また別実施例の検査装置では、第1カメラ(第1の撮像手段)18で撮像する反射光による像を表わすための第3照明手段17を、第3カメラ38で撮像する投影像を表わすための照明手段として兼用するよう構成しているので、投影像および反射光による像を撮像する際に照明手段を切り換える必はない。すなわち、別実施例に係る物品の検査装置では、第3照明手段17および第1カメラ18で、リング状物品10の反射光で形成される像を撮像する第1画像取得手段が構成されると共に、第3照明手段17および第3カメラ38で、リング状物品10の投影像を撮像する第2画像取得手段が構成される。従って、リング状物品10の反射光による像を表わすための照明手段と、投影像を表わすための照明手段とを別々に備える構成に比べて、構成を簡略化することができる。
【0033】
〔変更例〕
本発明は、実施例や別実施例の構成に限定されず、種々の変更が可能であり、例えば以下の構成を採用し得る。
(1) 実施例や別実施例では、物品として円筒状の物品を挙げたが、該物品の形状としては角筒状であってもよく、該物品の形状に応じて第1光透過部や第2光透過部の形状を設定すればよい。
(2) 実施例や別実施例では、欠肉検査の対象となる物品としてリング状物品を挙げたが、物品の形状はリング状に限定されるものでなく、図12に示すような円盤形状や矩形状等であってもよい。
(3) 実施例や別実施例では、ステージに第1光透過部を形成したが、該第1光透過部は、リング状物品を検査対像とする場合において設けるようにすればよく、図12に示すように複数の第2光透過部26のみをステージ12に設ける構成を採用し得る。
(4) 実施例や別実施例では、第2光透過部を放射状に延在する長孔として形成したが、ステージ上に載置された物品の外縁が臨む孔であれば、開口形状は限定されるものではなく、例えば第1光透過部より外側において第2光透過部としての丸孔を所定パターンで形成した構成や複数の第2光透過部を平行に形成した構成を採用可能である。
(5) 実施例や別実施例では、ステージに長溝を形成したが、該長溝は、リング状物品の厚みを測定する必要がある場合において設けるようにすればよい。また、第2カメラおよび第2照明手段に関しても、リング状物品の厚みを測定する必要がある場合において設けるようにすればよい。
(6) 実施例や別実施例では、ステージを矩形状としたが、該ステージの形状は矩形状に限定されるものではなく、物品を載置可能であれば円形やその他の形状であってもよい。
(7) 実施例や別実施例の画像処理装置は、カメラで撮像した画像からリング状物品の輪郭寸法(各種検査項目)を測定すると共に、測定値が規格値に対して公差内に収まっているか否かを判定するよう構成したが、判定部を省略することも可能である。
(8) 実施例や別実施例では、第3照明手段からの光を、ビームスプリッタで反射してリング状物品の上面に照射するよう構成したが、第3照明手段として、第1カメラの撮像領域を囲むように光源を配置したリング状照明手段を採用し、該リング状照明手段からの光をリング状物品の上面に直接照射する構成を採用し得る。
(9) 実施例では、第1および第2画像取得手段を構成する撮像手段を兼用する場合で説明し、別実施例では、第1および第2画像取得手段を構成する照明手段を兼用する場合で説明したが、撮像手段および照明手段を、第1および第2画像取得手段で夫々個別に備える構成を採用可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 リング状物品(物品),10b 外周縁(外縁),12 ステージ
14 第1照明手段(第2の照明手段,第2画像取得手段)
17 第3照明手段(第1の照明手段,照明手段,第1画像取得手段)
18 第1カメラ(撮像手段,第1の撮像手段,第1画像取得手段)
26 第2光透過部(光透過部),30 テレセントリックレンズ
32 画像処理部(認識手段),38 第3カメラ(第2の撮像手段,第2画像取得手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12