【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各物性の測定条件は次の通りである。
【0061】
A.イオン酸基密度
下記手順を5回行い、最大値と最小値を除いた3点の平均値をイオン酸基密度(mmol/g)とする。濃度の単位は重量%、重量の単位はgである。
(1)作製した電解質膜を5cm×5cmに切り取り真空乾燥機にて80℃12時間以上減圧乾燥後、重量(Wm)を正確(小数点下4桁)に測定した。
(2)蓋付きのサンプル瓶に約0.2wt%のKCl水溶液約30ml準備し、KCl水溶液の重量(Wk)とKイオン濃度(C
1)を測定した。Kイオン濃度は大塚電子製キャピラリー電気泳動装置”CAPI-3300”で測定した。測定条件は下記の通りである。
【0062】
測定方式:落差法(25mm)
泳動液:大塚電子製 陽イオン分析用泳動液5(α-CFI105)
測定電圧:20kV
(3)重量とKイオン濃度既知のKCl水溶液に上記電解質膜を2時間浸漬した。
(4)該KCl水溶液のKイオン濃度(C
2)を再度キャピラリー電気泳動装置で測定した。測定した値から、下記式に従いスルホン酸基密度を算出した。
スルホン酸基密度(mmol/g)=〔{Wk×(C
1−C
2)×1000}/39〕/Wm
B.繊維径の測定方法
光学顕微鏡または走査形電子顕微鏡(SEM)で含フッ素高分子多孔質体(不織布)を観察し、画面上の任意繊維の直径を20箇所計測した平均値で示した。また繊維径が計測困難な場合や複合化高分子電解質膜は下記方法で観察した。
【0063】
60℃で24時間減圧乾燥した複合化高分子電解質膜をカッターで切り出し、電顕用エポキシ樹脂(日新EM社製Quetol812)で包埋し、60℃のオーブン中で48時間かけて該エポキシ樹脂を硬化させた後、ウルトラミクロトーム(ライカ社製Ultracut S)で厚さ約100nmの超薄切片を作製した。
【0064】
作製した超薄切片を応研商事社製100メッシュのCuグリッドに搭載して、日立製透過型電子顕微鏡H-7100FAを使用し加速電圧100kVでTEM観察を行い、繊維径を測定した。
【0065】
C.膜厚
ミツトヨ製グラナイトコンパレータスタンドBSG−20にセットしたミツトヨ製ID−C112型を用いて測定した。
【0066】
D.寸法変化率
電解質膜を6cm×1cmの短冊状に切り出し、長尺側の両端から約5mmのところに標線を記入した(標線間距離5cm)。前記サンプルを温度23℃、湿度45%の恒温槽に2h放置後、素早く2枚のスライドガラスに挟み込み標線間距離(L
1)をノギスで測定した。さらに、同サンプルを80℃の熱水に2h浸漬後、素早く2枚のスライドガラスに挟み込み標線間距離(L
2)をノギスで測定し下記式に従い寸法変化率を算出した。
【0067】
寸法変化率(%)=(L
2−L
1)/L
1×100
E.複合化高分子電解質膜の湿潤時の引っ張り強度
JIS K7127に基づいてサンプル片はダンベル2号形の1/2サイズ(試料幅:3.0mm、試料長:16.5mm、つかみ具間40mm)を用い、装置としては恒温恒湿槽付き島津製作所製オートグラフAG-IS 100Nを使用し、200mm/minの速度で試験を行った。測定雰囲気としては80℃相対湿度94%で測定を行った。
【0068】
F.複合化高分子電解質膜を使用した膜電極複合体(MEA)の発電評価
(1)水素透過電流の測定
市販の電極、BASF社製燃料電池用ガス拡散電極“ELAT(登録商標)LT120ENSI”5g/m
2Ptを5cm角にカットしたものを1対準備し、燃料極、酸化極として複合化高分子電解質膜を挟むように対向して重ね合わせ、150℃、5MPaで3分間加熱プレスを行い、評価用MEAを得た。
【0069】
このMEAを英和(株)製 JARI標準セル“Ex−1”(電極面積25cm
2)にセットし、セル温度:80℃、一方の電極に燃料ガスとして水素、もう一方の電極に窒素ガスを供給し、加湿条件:水素ガス90%RH、窒素ガス:90%RHで試験を行った。OCVで0.2V以下になるまで保持し、0.2〜0.7Vまで1mV/secで電圧を掃引し電流値の変化を調べた。本実施例においては下記の起動停止試験の前後で測定し0.7V時の値を調べた。膜が破損した場合、水素透過量が多くなり透過電流が大きくなる。また、この評価はSolartron製電気化学測定システム(Solartron 1480 Electrochemical InterfaceおよびSolartron 1255B Frequency ResponseAnalyzer)を使用して実施した。
【0070】
(2)耐久性試験
上記セルを使用し、セル温度:80℃、燃料ガス:水素、酸化ガス:空気、ガス利用率:水素70%/酸素40%、加湿条件:水素ガス60%RH、空気:50%RHの条件で試験を行った。条件としては、OCVで1分間保持し、1A/cm
2の電流密度で2分間発電し、最後に水素ガスおよび空気の供給を停止して2分間発電を停止し、これを1サイクルとして繰り返す耐久性試験を実施した。耐久性試験前と3000サイクル後に上記水素透過電流の測定を実施しその差を調べた。また、この試験の負荷変動は菊水電子工業社製の電子負荷装置“PLZ664WA”を使用して行った。
【0071】
(3)低加湿下での発電評価
上記燃料電池セルをセル温度80℃、燃料ガス:水素、酸化ガス:空気、ガス利用率:水素70%/酸素40%、加湿条件;アノード側30%RH/カソード30%RH、背圧0.1MPa(両極)において電流−電圧(I−V)測定し、1A/cm2での電圧を読み取った。
G.イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量
光学顕微鏡または走査形電子顕微鏡(SEM)で複合化高分子電解質膜の断面を観察しイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層(複合化層)の厚みをT
1、複合化層の外側に別の層がある場合はそれらの厚みをT
2、T
3、およびそれぞれの層を形成するポリマーの比重をD
1、D
2、含フッ素高分子多孔質体を形成するポリマーの面積あたりの重量をW
1、複合化高分子電解質膜の面積あたりの重量をW
2、複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の面積当たりの重量W
3とすると複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有率Y(重量%)は下式で求めた。
W3={W2−(T1×D1)−(T2×D2)−W1} (式1)
Y=W3/(W3+W1)×100 (式2)
〔合成例1;可溶性付与基を有するモノマー〕
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン(G1)の合成
モンモリロナイトクレイK10(150g)、ジヒドロキシベンゾフェノン99gをエチレングリコール242mL/オルトギ酸トリメチル99mL中、生成する副生成物を蒸留させながら110℃で反応させた。18h後、オルトギ酸トリメチルを66g追加し、合成48h反応させた。反応溶液に酢酸エチル300mLを追加し、濾過後、2%炭酸水素ナトリウム水溶液で4回抽出を行った。さらに、濃縮後、ジクロロエタンで再結晶する事により目的の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソランを得た。
【0072】
〔合成例2;イオン性基を有するモノマー〕
ジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(G2)の合成
4,4’−ジフルオロベンゾフェノン109.1g(アルドリッチ試薬)を発煙硫酸(50%SO3)150mL(和光純薬試薬)中、100℃で10h反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、ジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを得た。
【0073】
〔参考例1;高分子電解質溶液Aの製造例〕
撹拌機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた5Lの反応容器に、合成例1で合成した可溶性付与基を有するモノマー2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン129g、4,4’−ビフェノール93g(アルドリッチ試薬)、および合成例2で合成したイオン性基を含有するモノマーであるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン422g(1.0mol)を入れ、窒素置換後、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)3000g、トルエン450g、重合安定剤として18−クラウン−6 232g(和光純薬試薬)を加え、モノマーが全て溶解したことを確認後、炭酸カリウム304g(アルドリッチ試薬)を加え、環流しながら160℃で脱水後、昇温してトルエン除去し、200℃で1時間脱塩重縮合を行った。得られたポリマーのイオン性基密度は3.52mmol/gで、重量平均分子量は32万であった。
【0074】
次に重合原液の粘度が0.5Pa・sになるようにNMPを添加して希釈し、久保田製作所製インバーター・コンパクト高速冷却遠心機(型番6930にアングルローターRA−800をセット、25℃、30分間、遠心力20000G)で重合原液の直接遠心分離を行った。沈降固形物(ケーキ)と上澄み液(塗液)がきれいに分離できたので上澄み液を回収した。次に、撹拌しながら80℃で減圧蒸留し、ポリマー濃度が20重量%になるまでNMPを除去し、さらに5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターで加圧濾過して高分子電解質溶液Aを得た。
〔参考例2;高分子電解質溶液Bの製造例〕
撹拌機,温度計,塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけ、500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換後、25gのポリエーテルスルホン(PES)と濃硫酸125mlを入れた。窒素気流下,室温で一晩撹拌して均一溶液とした。この溶液に、窒素気流下、撹拌しながら滴下漏斗より48mlのクロロ硫酸を滴下した。滴下開始後、しばらくクロロ硫酸が濃硫酸中の水分と激しく反応して発泡するため、ゆっくりと滴下し、発泡が穏やかになった後は5分以内に滴下を終了させた。滴下終了後の反応溶液を25℃,4時間撹拌してスルホン化した。
【0075】
次いで、反応溶液を15リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下し、スルホン化ポリエーテルスルホンを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と、吸引濾過による回収操作を濾液が中性になるまで繰り返した後、80℃で一晩減圧乾燥した。得られたスルホン酸化ポリエーテルスルホンのイオン性基密度は2.0mmol/gであった。このスルホン酸化ポリエーテルスルホンをポリマー濃度が20重量%となるようにNMPに溶解し高分子電解質溶液Bを得た。
【0076】
〔参考例3;高分子電解質溶液Cの製造例〕
撹拌機,温度計,塩化カルシウム管を接続した還流冷却器をつけ、500mlの四つ口丸底フラスコの内部を窒素置換後、25gのポリフェニレンスルフィド(東レ製“トレリナ(登録商標)”)と濃硫酸100mlを入れた。窒素気流下,室温で一晩撹拌して均一溶液とした。この溶液に、窒素気流下、撹拌しながら滴下漏斗より48mlのクロロ硫酸を滴下した。滴下開始後、しばらくクロロ硫酸が濃硫酸中の水分と激しく反応して発泡するため、ゆっくりと滴下し、発泡が穏やかになった後は5分以内に滴下を終了させた。滴下終了後の反応溶液を25℃,4時間撹拌してスルホン化した。
【0077】
次いで、反応溶液を15リットルの脱イオン水にゆっくりと滴下し、スルホン化ポリフェニレンスルフィドを析出させ、濾過回収した。析出した沈澱をミキサーによる脱イオン水洗浄と、吸引濾過による回収操作を濾液が中性になるまで繰り返した後、80℃で一晩減圧乾燥した。得られたスルホン酸化ポリフェニレンスルフィドのイオン性基密度は2.0mmol/gであった。このスルホン酸化ポリフェニレンスルフィドをポリマー濃度が20重量%となるようにNMPに溶解し高分子電解質溶液Cを得た。
【0078】
〔参考例4;含フッ素高分子多孔質体A(不織布)の製造例〕
アルドリッチ試薬のNafion(登録商標)溶液(Prod.No.663492)100gにエチレングリコール10gを加えて紡糸原液とした。次ぎに、カトーテック社製エレクトロスピニングユニットを使用し、電圧35kV、シリンジポンプ吐出速度0.05cc/min、トラバース速度50mm/min、ドラム式ターゲット(直径100mm)の周速度0.8m/min、シリンジとターゲット間の距離100mmの条件で電解紡糸を実施した。
【0079】
得られた含フッ素高分子繊維の直径の平均は600nmであり、ターゲット上に繊維を捕集し厚み10μmのイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなる不織布を得た。
【0080】
〔参考例5;含フッ素高分子多孔質体B(多孔質フィルム)の製造例〕
膜厚20μm、空孔率50%のポリテトラフロロエチレン多孔質フィルムを100℃、100%無水硫酸ガス中に24時間保持してスルホン酸化した。得られたフィルムを煮沸蒸留水で3回洗浄しイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなる多孔質フィルムを得た。
【0081】
実施例1
参考例1の高分子電解質溶液Aを基材である125μmのPETフィルム(東レ製“ルミラー(登録商標)”)上に流延塗布し、その上に、住友電工製“ポアフロン(登録商標)メンブレン”型番HPW−045−30(親水膜)を縦横方向に2倍延伸し、厚み15μm、空隙率70%に加工した、イオン性基を含有しないPTFEベースの含フッ素高分子多孔質体を貼り合わせて、含フッ素高分子多孔質体の空隙に高分子電解質溶液Aを含浸させた。
【0082】
次ぎに熱風乾燥機に投入し100℃で10分間、150℃で20分間、溶媒を乾燥除去した。次ぎに、PET基材にはりついたままの状態で40℃の10重量%の硫酸水溶液に30分間浸漬し高分子電解質のプロトン交換と可溶性付与基を除去し、洗浄水が中性を示すまで水洗を繰り返し、60℃で再乾燥後、PET基材から剥離し、複合化高分子電解質膜Aを得た。イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は59重量%であった。
【0083】
この複合化高分子電解質膜Aのイオン性基密度は2.4mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Aを使用し寸法変化率を測定したところ1.1%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は50MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Aを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.58Vであり、発電耐久性評価試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.70mA/cm
2で評価後は0.85mA/cm
2であり耐久性が良好であった。
【0084】
実施例2
参考例1の高分子電解質溶液Aを基材である125μmのPETフィルム(東レ製“ルミラー(登録商標)”)上に流延塗布し、その上に、参考例4で得た含フッ素高分子多孔質体A(不織布)を貼り合わせて、含フッ素高分子多孔質体A(不織布)の空隙に高分子電解質溶液Aを含浸させた。以後実施例1と同様に行い、複合化高分子電解質膜Bを得た。 イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は55重量%であった。
【0085】
この複合化高分子電解質膜Bのイオン性基密度は3.0mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Bを使用し寸法変化率を測定したところ2.0%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は40MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Bを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.62Vであり、発電耐久性評価試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.6mA/cm
2で評価後は0.65mA/cm
2であり耐久性が良好であった。
【0086】
実施例3
実施例1の含フッ素高分子多孔質体の代わりに参考例5で得た含フッ素高分子多孔質体B(多孔質フィルム)に変更した以外は実施例1と同様に実施し、複合化高分子電解質膜Cを得た。イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は30重量%であった。
【0087】
この複合化高分子電解質膜Cのイオン性基密度は2.9mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Cを使用し寸法変化率を測定したところ2.0%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は40MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Bを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.61Vであり、発電耐久性評価試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.71mA/cm
2で評価後は0.77mA/cm
2であり耐久性が良好であった。
【0088】
比較例1
実施例2の含フッ素高分子多孔質体を使用せずに市販のポリオレフィン多孔質フィルム(“セルガード”(登録商標))を使用した以外は実施例1と同様に実施し、複合化高分子電解質膜Dを得た。イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は40重量%であった。
【0089】
この複合化高分子電解質膜Dのイオン性基密度は1.4mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Dを使用し寸法変化率を測定したところ1.2%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は65MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Dを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.35Vであり発電性能が不十分であった。また、発電耐久性評価試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.5mA/cm
2で評価後は10.2mA/cm
2であり耐久性も劣っていた。
【0090】
実施例4
参考例4の繊維の補集時間を調整し厚み10μmのイオン性基を含有するパーフルオロカーボン系高分子材料からなる不織布を得た。これを用いて実施例2と同様に行い、複合化高分子電解質膜Eを得た。イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は95重量%であった。
【0091】
この複合化高分子電解質膜Eのイオン性基密度は3.3mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Eを使用し寸法変化率を測定したところ4.0%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は48MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Eを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.63Vであり、発電耐久性評価試験試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.5mA/cm
2で評価後は0.7mA/cm
2であり耐久性が不良であった。
【0092】
比較例2
実施例1の含フッ素高分子多孔質体を使用せずに住友電工製“ポアフロン(登録商標)メンブレン”型番PW−045−30(疎水膜)をそのまま使用した以外は実施例1と同様に実施し、複合化高分子電解質膜Fを得た。親水化処理が施されていないのでNMPをはじき、イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は15重量%であった。
【0093】
この複合化高分子電解質膜Fのイオン性基密度は1.2mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Fを使用し寸法変化率を測定したところ1.2%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は45MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Fを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.21Vであり発電性能が不十分であった。
【0094】
実施例5
参考例2の高分子電解質溶液Bを基材である125μmのPETフィルム(東レ製“ルミラー(登録商標)”)上に流延塗布し、その上に、その上に、参考例4で得た含フッ素高分子多孔質体A(不織布)を貼り合わせて、含フッ素高分子多孔質体A(不織布)の空隙に高分子電解質溶液Bを含浸させた。次ぎに熱風乾燥機に投入し100℃で10分間、150℃で20分間、溶媒を乾燥除去し、PET基材から剥離して複合化高分子電解質膜Gを得た。イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は70重量%であった。
【0095】
この複合化高分子電解質膜Gのイオン性基密度は1.9mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Aを使用し寸法変化率を測定したところ1.1%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は55MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Gを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.55Vであり、発電耐久性評価試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.75mA/cm
2で評価後は0.90mA/cm
2であり耐久性が良好であった。
【0096】
実施例6
高分子電解質溶液Bを参考例3の高分子電解質溶液Cに変更した以外は実施例4と同様に実施し、複合化高分子電解質膜Hを得た。
【0097】
イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は70重量%であった。
【0098】
この複合化高分子電解質膜Hのイオン性基密度は1.8mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Hを使用し寸法変化率を測定したところ1.0%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は60MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Hを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.56Vであり、発電耐久性評価試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.70mA/cm
2で評価後は0.85mA/cm
2であり耐久性が良好であった。
【0099】
実施例7
イオン性基を含まない、PVDF(呉羽化学社製#1100)をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、固形分5wt%のPVDF溶液を得た。次ぎに、カトーテック社製エレクトロスピニングユニットを使用し、電圧35kV、シリンジポンプ吐出速度0.05cc/min、トラバース速度50mm/min、ドラム式ターゲット(直径100mm)の周速度0.8m/min、シリンジとターゲット間の距離100mmの条件で電解紡糸を実施した。
【0100】
得られたPVDF繊維の直径の平均は500nmであり、ターゲット上に繊維を捕集し厚み5μm、空隙率94%のPVDF不織布を得た。
【0101】
次にPVDF不織布を密封容器に入れ、5%F
2を含む窒素ガスを常圧で供給し、60℃で30分間放置した。その後、処理した不織布を取り出し含フッ素高分子多孔質体C(不織布)を得た。この含フッ素高分子多孔質体C(不織布)を、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンに浸漬したところ溶解しないことを確認した。
【0102】
なお、本出願での難溶性は以下の様に判断した。5cm角にカットした含フッ素高分子多孔質体C(不織布)を80℃で8時間減圧乾燥した重量をWg、該含フッ素高分子多孔質体C(不織布)を100mlの60℃のN−メチル−2−ピロリドンに2時間浸漬した後、取り出し80℃で8時間減圧乾燥した重量をYgとし、Y/W≧0.8である場合、難溶性と判断した。
【0103】
また、この含フッ素高分子多孔質体C(不織布)は全反射フーリエ変換赤外分光法(ATR−FTIR)によりPVDFの水素がFに置換されたPTFE骨格を含む不織布であることが確認できた。
【0104】
この含フッ素高分子多孔質体C(不織布)を実施例1の含フッ素高分子多孔質体の代わりに使用し、実施例1と同様に複合化製膜を行い複合化高分子電解質膜Iを得た。イオン性基を有する芳香族炭化水素系材料と含フッ素高分子多孔質体からなる複合化層中のイオン性基を有する芳香族炭化水素系材料の含有量は85重量%であった。
【0105】
この複合化高分子電解質膜Iのイオン性基密度は2.6mmol/gであった。この複合化高分子電解質膜Iを使用し寸法変化率を測定したところ1.2%であり、湿潤時の引っ張り破断強度は48MPaであった。また、複合化高分子電解質膜Iを使用した燃料電池の低加湿下での出力は0.62Vであり、発電耐久性評価試験前後の水素透過電流を測定したところ、評価前が0.68mA/cm
2で評価後は0.805mA/cm
2であり耐久性が良好であった。