特許第5994489号(P5994489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994489
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】クレンジング料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20160908BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20160908BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20160908BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20160908BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   A61K8/31
   A61K8/39
   A61K8/86
   A61K8/34
   A61Q1/14
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-189057(P2012-189057)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-47141(P2014-47141A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】小田 義士
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】古賀 尚賢
【審査官】 松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−104892(JP,A)
【文献】 特表2011−503192(JP,A)
【文献】 特表2008−544951(JP,A)
【文献】 特開2009−235001(JP,A)
【文献】 特開2007−169220(JP,A)
【文献】 特開2008−037779(JP,A)
【文献】 特開2008−266224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/31
A61K 8/34
A61K 8/39
A61K 8/86
A61Q 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のa成分を1〜50質量%、b成分を3〜60質量%、c成分を1〜30質量%含有することを特徴とするクレンジング料。
a.炭素数が12〜16であるイソパラフィンを含み、沸点範囲が185〜215℃であり、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン含有量が10質量%未満であるパラフィン混合物
b.ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンおよび脂肪酸ポリオキシエチレングリセリンから選ばれる1種類以上の非イオン性界面活性剤
c.炭素数が3〜6である2価アルコール
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイクアップ化粧料や紫外線防止化粧料等の化粧料を除去するためのクレンジング料に関する。さらに詳しくは、メイク汚れと素早くなじみ、洗い流し易く、洗い流し後の感触がすっきりとし、洗い流し後のエモリエント感があるとともに、洗い流し後にうるおい感が持続するクレンジング料に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において、クレンジング料はメイクアップ化粧料や紫外線防止化粧料を除去するために欠かせないものとなっている。クレンジングが不充分であった場合、メイクアップ化粧料や紫外線防止化粧料は油性成分や無機顔料等を多量に含んでいるため、皮膚の毛穴を塞ぎ新陳代謝を妨げてしまう。また、化粧料自体や皮脂が酸化されることにより肌トラブルの原因となるので、化粧汚れや皮脂汚れを効果的に除去するクレンジング料が望まれている。
【0003】
そのため、クレンジング料には、上記汚れとのなじみが良い油性成分、洗浄性と再汚染防止のための界面活性剤、及び、クレンジングにより失われる可能性のあるうるおいを補う保湿成分等が含有される。油性成分としては、炭化水素やシリコーンなどの非極性油、エステル油やトリグリセライドなどの極性油が用いられている。例えば、特許文献1には軽質流動イソパラフィンを含有するクレンジング用の化粧料が開示されている。しかしながら、特許文献1のクレンジング用の化粧料は洗い流し後のエモリエント感が十分ではなかった。
【0004】
一方、界面活性剤としてはポリグリセリン脂肪酸エステルやポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非イオン性界面活性剤やアシルアミノ酸塩などのイオン性界面活性剤が用いられ、保湿成分としては糖、多価アルコール、アミノ酸、水溶性高分子などが用いられる。油性成分、界面活性剤及び保湿成分を併用したクレンジング料として、例えば、特許文献2には、トリ2−エチルヘキサン酸グリセライド等の液状油と、HLBが9を超える親水性ノニオン界面活性剤と、分岐脂肪酸と、水を含有するクレンジング用組成物が開示され、特許文献3には、イソドデカン等の油性成分と、HLB8以上の非イオン界面活性剤と、1,3−ブチレングリコール等の水溶性溶剤と、水を含有するクレンジング組成物が開示され、特許文献4には、流動パラフィン等の液状油と、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルと、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルと、多価アルコール等を含有するオイル状クレンジング料が開示されている。しかしながら、特許文献2のクレンジング用組成物は洗い流し難いことがあり、洗い流し後のすっきり感も満足のいくものではなかった。特許文献3のクレンジング組成物は洗い流し後に乾燥しやすくなることがあった。特許文献4のオイル状クレンジング料は洗い流し後の感触がすっきりするものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−114636号公報
【特許文献2】特開平4−5213号公報
【特許文献3】特開2008−184413号公報
【特許文献4】特開2009−249324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑み、メイク汚れと素早くなじみ、洗い流し易く、洗い流し後の感触がすっきりとし、洗い流し後のエモリエント感があるとともに、洗い流し後にうるおい感が持続するクレンジング料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者らが研究を重ねたところ、特定のパラフィン混合物と、特定の非イオン性界面活性剤と、特定の2価アルコールとを特定の比率で組み合わせることによって、目的のクレンジング料を得るに至った。
【0008】
すなわち本発明は、下記のa成分を1〜50質量%、b成分を3〜60質量%、c成分を1〜30質量%含有することを特徴とするクレンジング料である。
a.炭素数が12〜16であるイソパラフィンを含み、沸点範囲が185〜215℃であり、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン含有量が10質量%未満であるパラフィン混合物
b.ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンおよび脂肪酸ポリオキシエチレングリセリンから選ばれる1種類以上の非イオン性界面活性剤
c.炭素数が3〜6である2価アルコール
【発明の効果】
【0009】
本発明のクレンジング料によれば、メイク汚れと素早くなじみ、洗い流し易く、洗い流し後の感触がすっきりとし、洗い流し後のエモリエント感があるとともに、洗い流し後にうるおい感が持続するといった効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明のクレンジング料は、下記a成分、b成分およびc成分を含有する。以下、各成分について説明する。
【0011】
〔a成分〕
本発明に用いられるa成分は、炭素数が12〜16であるイソパラフィン(分岐飽和炭化水素)を含むパラフィン(飽和炭化水素)の混合物であり、さらに、炭素数が12〜16の直鎖飽和炭化水素を含むことがある。なお、本発明のパラフィン混合物には、本発明の目的に反しない程度に、炭素数が12〜16の飽和炭化水素以外の炭化水素、例えば環状飽和炭化水素や不飽和炭化水素などが含まれていてもよい。
【0012】
本発明に用いられるa成分のパラフィン混合物は、沸点範囲が185〜215℃であり、好ましくは186〜210℃である。パラフィン混合物の沸点が185℃未満では、引火点が低くなるので、安全性の面で好ましくない。沸点が215℃を超えると、揮発性が低下し、油分が残留し易くなるので、洗い流し後の感触がすっきりとしない。沸点はJIS K2254に準じた蒸留試験によって測定することができる。
【0013】
本発明に用いられるパラフィン混合物は、2, 2, 4, 6, 6−ペンタメチルヘプタン(イソドデカン)の含有量が10質量%未満であり、好ましくは8質量%未満であり、さらに好ましくは5質量%未満である。混合物中のイソドデカン含有量が10質量%以上になると、洗い流し後のエモリエント感が弱くなり、洗い流し後のうるおい感も持続しない。また、沸点が低下し引火点が低くなるため安全性の面で好ましくなく、臭気が強くなるため、化粧品原料としての使用が制限される。本発明に用いられるパラフィン混合物は、具体的には、引火点がJIS K2265に準じた密閉試験で61〜70℃、好ましくは62〜67℃の範囲であることが安全性や臭気の面で好ましい。例えば、市販品のイソドデカン(2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン含有量が95質量%以上)は、沸点が177℃、引火点が48℃程度と低く火気の取扱いに注意が必要であり、かつ臭気が強い。一方、引火点が70℃を超えると乾燥性が悪くなり、感触が重くなることがある。
【0014】
本発明に用いられるパラフィン混合物は、例えば下記の工程1〜4を含む工程を経て製造することができる。
工程1(重合反応):本発明に用いられるパラフィン混合物は、ノルマル体およびイソ体のブテン(共)重合物であり、ナフサのクラッキングにより得られる留分の中のC4留分であるイソブテン、1−ブテンおよび2−ブテン類(cis−2−ブテンおよびtrans−2−ブテン)の混合ガスを公知の方法によって重合することにより得られるものである。この混合ガスにおけるイソブテン、1−ブテンおよび2−ブテン類の組成比は、質量比で(イソブテン/1−ブテン/2−ブテン類)=(15〜80/10〜40/10〜60)の範囲が好ましく、さらに好ましくは(15〜70/15〜40/15〜60)、特に好ましくは(15〜60/15〜40/15〜40)、殊に好ましくは(20〜50/18〜25/18〜40)、より好ましくは(20〜33/18〜25/18〜25)である。なお、混合ガスは、不活性ガスとしてイソブタンやn−ブタンガスを含んでいても良い。
【0015】
イソブテンを含むC4留分の重合反応は、塩化アルミニウム、酸性イオン交換樹脂、硫酸、弗化ホウ素およびその錯体を触媒として用い、通常、40〜120℃で行う。また、前記触媒に塩基を入れることにより重合反応をコントロールすることも可能である。
【0016】
工程2(水素化反応):工程1により得られた重合物の多くは、末端に二重結合が残存しているので、水素化反応させることにより水素化物として安定化させることが望ましい。水素化反応は通常の方法によりなされ、重合物にニッケルやパラジウム等の水素化触媒を用い、固定床および流動床式の反応装置により水素を高温高圧で接触させ水素添加がなされる。本発明に用いられるパラフィン混合物を得るための水素化の程度は、ヨウ素価を10以下にすることが好ましく、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.1以下である。
【0017】
工程3(吸着処理):工程2で得られたパラフィン混合物には、着色や臭気の原因とする微量金属化合物等が混入することがあるので、着色や臭気を抑制する目的で、パラフィン混合物を吸着剤によって吸着処理することが望ましい。
【0018】
吸着剤としては、無機および有機系の吸着剤が用いられ、例えば、クレー、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、珪藻土、ゼオライト、ベントナイト、酸性白土、活性白土,バーミキュライト、シリカゲル、モレキュラーシーブ、および活性炭が用いられ、特に活性白土、クレーが有効である。これら吸着剤は1種または2種以上を用いることができる。使用する吸着剤の粒経は特に限定されないが、一種の吸着剤を使用する場合には、粒経の異なる2種以上の吸着剤を組み合わせるのが好ましい。吸着剤の組合せは、吸着剤を充填するカラム内の圧力の分散と効率的な処理に応じて適宣選択される。使用する吸着剤が2種以上の場合、粒径が相対的に最も小さいものをカラム容積に対し50〜80容量%充填することが製造の面でより効果的である。
【0019】
工程4(吸着処理):本発明では反応物から未反応ガスおよび炭素数20以上の高沸点成分を除去するとともに、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタンを10質量%未満とするために、一般的な蒸留方法により精製することが望ましい。具体的には、単蒸留法、連続蒸留法、水蒸気蒸留法および薄膜蒸留法等であり、これらを組み合わせることも可能である。なお、蒸留塔の分離能を示す理論段数は、a成分のパラフィン混合物を得るに際しては、10段以上が望ましい。また、パラフィン混合物の沸点範囲や引火点の調整は、蒸留による留去率を適宜設定することによっても行なうことができる。例えば、減圧蒸留を行なう前の仕込み量に対し15質量%以上、好ましくは25質量%以上であり、また40質量%以下が好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。
【0020】
a成分の具体的な製品として、日油株式会社製「パールリーム3」が挙げられる。「パールリーム3」は、炭素数が12であるイソパラフィンを含むパラフィン混合物であり、沸点範囲が185〜215℃、引火点が64℃、イソドデカン含有量が0.4質量%である。
【0021】
〔b成分〕
本発明に用いられるb成分は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンおよび脂肪酸ポリオキシエチレングリセリンから選ばれる1種類以上の非イオン性界面活性剤である。ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンは、例えば、グリセリンと脂肪酸をエステル化反応させた後、エチレンオキシドを付加して得られる化合物である。脂肪酸ポリオキシエチレングリセリンは、例えば、グリセリンにエチレンオキシドを付加させた後、脂肪酸とエステル化反応させて得られる化合物である。
【0022】
b成分を構成する脂肪酸は、好ましくは炭素数が6〜22の飽和又は不飽和脂肪酸であり、さらに好ましくは炭素数が8〜18の飽和又は不飽和脂肪酸である。例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸などの単一脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸等の動植物油由来の混合脂肪酸などを用いることができる。脂肪酸の炭素数が6未満の場合は、親油性が低くなるためメイク汚れとのなじみが悪くなりクレンジング力が低下することがあるばかりでなく、刺激性のある匂いが生じることがある。また脂肪酸の炭素数が22を超える場合は、洗い流し後のすっきり感が得られ難いことがある。
【0023】
ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンおよび脂肪酸ポリオキシエチレングリセリンのいずれにおいても、グリセリン1モルに対するエチレンオキシドの平均付加モル数は5〜100であることが好ましく、さらに好ましくは5〜70、特に好ましくは5〜50である。エチレンオキシドの平均付加モル数が5未満の場合は、親水性が低くなるため水との相溶性が悪くなり洗い流し後のすっきり感が得られ難いことがある。また平均付加モル数が100を超える場合は、親油性が低くなるためメイク汚れとのなじみが悪くなり、クレンジング力が低下することがある。
【0024】
また、本発明に用いられるb成分のHLBは10〜18であることが好ましく、さらに好ましくは11〜16である。本発明で用いられるHLBはGriffinの下記計算式による値である。
HLB=20(1−S/A)、ただし、S:エステルのケン化価、A:脂肪酸の酸価である。
HLBが10未満の場合は、親水性が低くなるため水との相溶性が悪くなり洗い流し後のすっきり感が得られ難いことがある。またHLBが18を超える場合は、親油性が低くなるためメイク汚れとのなじみが悪くなり、クレンジング力が低下することがある。
【0025】
ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリンとして具体的には、ポリオキシエチレン(7モル)モノヤシ油脂肪酸グリセリン(HLB=13.0)、ポリオキシエチレン(8モル)モノ(カプリル/カプリン酸)グリセリン(HLB=15.0)、ポリオキシエチレン(12モル)モノラウリン酸グリセリン(HLB=15.0)、ポリオキシエチレン(20モル)モノオレイン酸グリセリン(HLB=15.4)、ポリオキシエチレン(30モル)モノヤシ油脂肪酸グリセリン(HLB値=17.4)等が挙げられる。
脂肪酸ポリオキシエチレングリセリンとして具体的には、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレン(8モル)グリセリン(HLB=12.2)、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20モル)グリセリン(HLB=15.4)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(30モル)グリセリン(HLB=12.3)等が挙げられる。
これらの中でも、メイク汚れとのなじみ易さ、および洗い流し後のすっきり感から、好ましくは、ポリオキシエチレン(7モル)モノヤシ油脂肪酸グリセリン(HLB=13.0)、ポリオキシエチレン(8モル)モノ(カプリル/カプリン酸)グリセリン(HLB=15.0)、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレン(8モル)グリセリン(HLB=12.2)である。
【0026】
〔c成分〕
本発明に用いられるc成分は、炭素数が3〜6である2価アルコールである。具体的には、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。これら2価アルコールのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのうち、洗い流し後のうるおい感の持続効果から、好ましくは1,3−ブチレングリコールおよびジプロピレングリコールである。
【0027】
本発明において、上記のa成分の含有量は、組成物全量中1〜50質量%であり、好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは2〜20質量%である。1質量%未満ではメイク汚れとのなじみが遅くなり、洗い流し後のすっきり感が弱く、洗い流し後のエモリエント感が弱くなると共に、洗い流し後にうるおい感が持続しない。50質量%を超えると洗い流し難くなり、洗い流し後のうるおい感触が持続しない。
【0028】
上記のb成分の含有量は、組成物全量中3〜60質量%であり、好ましくは3〜40質量%、更に好ましくは3〜30質量%である。3質量%未満ではメイク汚れとのなじみが遅くなり、洗い流し難くなり、洗い流し後のすっきり感が弱くなる。60質量%を超えると洗い流し後のエモリエント感が十分でなく、洗い流し後のうるおい感が持続しない。
【0029】
上記のc成分の含有量は、組成物全量中1〜30質量%であり、好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%である。1質量%未満ではメイク汚れとのなじみが遅くなり、洗い流し難くなり、洗い流し後のうるおい感が持続しない。30質量%を超えると洗い流し後のすっきり感が十分でなくなる。
【0030】
上記a成分、b成分およびc成分の合計含有量a+b+cは、クレンジング料の剤形・使用方法や求められるクレンジング性能により適宜調整することができ、通常、他の添加剤や残部として水をさらに加えて100質量%としてクレンジング料が調製される。洗い流し後のうるおい感の持続効果から、クレンジング料中の合計含有量a+b+cは、好ましくは5〜80質量、より好ましくは5〜60質量%である。
本発明のクレンジング料には、化粧品に常用されている添加剤を、本発明のクレンジング料の性能を損なわない範囲で、さらに配合することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。a成分およびb成分として下記のものを用いた。なお、各種物性値については、下記に示す方法によって測定した。
【0032】
<ヨウ素価>
JIS K0070のヨウ素価試験方法に準じる。
<沸点範囲>
JIS K2254の蒸留試験方法に準じる。
<引火点>
JIS K2265の密閉式引火点測定法に準じる。
【0033】
<数平均分子量>
島津製GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定装置を用いて数平均分子量(ポリスチレン換算)を測定した。
【0034】
<鉄分含量分析>
所定量の試料を白金皿中で緩やかに燃焼させた後に、電気炉で完全に燃焼した灰分を濃塩酸で溶解し、測定試料とした。次にICP発光分析装置を使用し、所定操作により分析した。
【0035】
〔a成分の調製〕
調製例1;パラフィン混合物1
工程1)イソブテン30質量%、1−ブテン18質量%、2−ブテン類25質量%を含む炭素数4のブテン混合ガスとブタンガス27質量%を含む混合ガスをオートクレーブに仕込み、塩化アルミニウム触媒の存在下に共重合し、さらに未反応ガスおよび炭素数20以上の高沸点成分を除去して、炭素数16以下のポリブテン混合物を調製した。このポリブテン混合物は、数平均分子量が185であった。
【0036】
工程2)さらに、このポリブテン混合物をオートクレーブ中で水素化触媒(0.5%Pd担持アルミナ触媒)10質量%により水素圧3MPa、220℃で水素添加した。ポリブテンの水素化物、すなわちパラフィン混合物は、ヨウ素価が0.1であり、数平均分子量が180であった。
【0037】
工程3)外径4cm、長さ30cmのガラス筒に、アタパルガスクレイと活性白土を50:50の体積比で充填した吸着カラムに、毎分1mLの流速、25℃で連続的に送液して、触媒・装置由来の微量金属成分の吸着処理を行った。処理後のパラフィン混合物の鉄分は1ppmであった。
【0038】
工程4)その後、15段のオールダーショー棚段精留塔のボトム容器に仕込み、オイルバスにつけ、容器内の液温度が110℃になるまで乾燥窒素ガスによりバブリングを行い、空気との接触を避けて加熱した。ボトム内液が110℃に達したら、減圧10kPaで還流比を5とし、減圧蒸留精製した。この状態を保持しつつ低沸分の除去を行う操作を2時間続けて、仕込み量に対し5質量%の低沸点物を留去した。続いて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら、還流比を10とし減圧蒸留を8時間行い、仕込み全量の20質量%を留去した。総量として仕込み量の25質量%を留去した後、再び乾燥窒素ガスを減圧下バブリングして蒸留ボトム内容液を冷却した。
得られたパラフィン混合物1の沸点範囲は187.5〜205℃、引火点は64℃で、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタンの含有量は2質量%であった。
なお、メチル基の個数の分析に際しては、日本電子株式会社製のJMS−AX505HA質量分析計を用いてそれぞれの化合物のメチル基の数を確認した。また、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタンは株式会社島津製GC−14Bガスクロマトグラフィー分析により測定した。
【0039】
調製例2;パラフィン混合物2
調製例1記載の工程3)において、吸着剤の種類を粒子径が異なる2種のアタパルガスクレイに変更した。異なる粒子径のアタパルガスクレイのうち一方は粒子径840μmから1000μmのものであり、他方は粒子径200μmから480μmのものである。まず、粒子径840μmから1000μmのものを吸着カラムの体積割合で80%充填して仕込み、次に残り20%の割合を粒子径200μmから480μmのもので充填した吸着カラムとした。この吸着カラムに、毎分1mLの流速、25℃で連続的送液して、触媒・装置由来の微量金属成分の吸着処理を行った以外は、すべて調製例1と同様の操作をした。
また、工程4)の蒸留工程において、容器内の液温度を130℃、減圧度を20KPa、還流比を4、留出最高温度を115℃、留去率を30質量%として蒸留を行い、目的の化合物(パラフィン混合物2)を得た。得られたパラフィン混合物2は、鉄分3ppm、ヨウ素価0.1、沸点範囲188〜207℃、引火点64℃で、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタンの含有量2.3質量%であった。
【0040】
[b成分]
非イオン性界面活性剤1;
ポリオキシエチレン(7モル)モノヤシ油脂肪酸グリセリン(HLB=13.0)
非イオン性界面活性剤2;
ポリオキシエチレン(8モル)モノ(カプリル/カプリン酸)グリセリン(HLB=15.0)
非イオン性界面活性剤3;
モノイソステアリン酸ポリオキシエチレン(8モル)グリセリン(HLB=12.2)
非イオン性界面活性剤4;
モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレン(30モル)グリセリン(HLB=17.4)
非イオン性界面活性剤5;
ポリオキシエチレン(78モル)モノヤシ油脂肪酸グリセリン(HLB=18.9)
非イオン性界面活性剤6;
トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(10モル)グリセリン(HLB=7.2)
非イオン性界面活性剤7;
ポリオキシエチレン(20モル)オクチルドデシルエーテル(HLB=14.9)
非イオン性界面活性剤8;
ポリオキシエチレン(40モル)硬化ヒマシ油(HLB=13.3)
【0041】
〔実施例1〜10および比較例1〜9〕
表2〜3に示すクレンジング料を調製し、5項目について下記評価基準により評価を行った。但し、クレンジング料の調整に際し、共通添加成分として表1に示す8成分を使用した。実施例の評価結果を表2、比較例の評価結果を表3に示す。なお、下記表記中の%は質量%を意味する。
【0042】
【表1】
【0043】
(1)メイク汚れとなじむ早さ
メイクをした20名の女性(22才〜37才)をパネラーとし、クレンジング料を使用した時にメイク汚れとなじむ早さについて下記のように判定し、20名の合計点を求めた。合計点が30点以上をメイク汚れが早く落ちるクレンジング料であると判定して表中に「○」を表示し、合計点が29点以下をメイク汚れとのなじみが遅いクレンジング料であると判定して表中に「×」を表示した。
2点:メイク汚れとすぐになじんだと感じた場合。
1点:メイク汚れとなじむのに少し時間がかかったと感じた場合。
0点:メイク汚れとなじむのにかなり時間がかかったと感じた場合。
【0044】
(2)洗い流し易さ
メイクをした20名の女性(22才〜37才)をパネラーとし、クレンジング料を使用し、ぬるま湯で洗い流した時の洗い流し易さについて下記のように判定し、20名の合計点を求めた。合計点が30点以上をクレンジング力の高いクレンジング料であると判定して表中に「○」を表示し、合計点が29点以下をクレンジング力の低いクレンジング料であると判定して表中に「×」を表示した。
2点:非常に洗い流し易いと感じた場合。
1点:洗い流し易いと感じた場合。
0点:洗い流し難いと感じた場合。
【0045】
(3)洗い流し後のすっきり感
メイクをした20名の女性(22才〜37才)をパネラーとし、クレンジング料を使用し、ぬるま湯で洗い流した後のすっきり感について下記のように判定し、20名の合計点を求めた。合計点が30点以上を洗い流し後の感触がすっきりとしたクレンジング料であると判定して表中に「○」を表示し、合計点が29点以下を洗い流し後のすっきり感の弱いクレンジング料であると判定して表中に「×」を表示した。
2点:とてもすっきりしたと感じた場合。
1点:すっきりしたと感じた場合。
0点:すっきり感が感じられなかった場合。
【0046】
(4)洗い流し後のエモリエント感
メイクをした20名の女性(22才〜37才)をパネラーとし、クレンジング料を使用し、ぬるま湯で洗い流した後のエモリエント感について下記のように判定し、20名の合計点を求めた。合計点が30点以上を洗い流し後にエモリエント感のあるクレンジング料であると判定して表中に「○」を表示し、合計点が29点以下を洗い流し後のエモリエント感の弱いクレンジング料であると判定して表中に「×」を表示した。
2点:エモリエント感が十分にあると感じた場合。
1点:エモリエント感がややあると感じた場合。
0点:エモリエント感がないと感じた場合。
【0047】
(5)洗い流し後の感うるおい感の持続
メイクをした20名の女性(22才〜37才)をパネラーとし、クレンジング料を使用し、ぬるま湯で洗い流し、拭き取った後30分経過した時点でうるおい感の持続について下記のように判定し、20名の合計点を求めた。合計点が30点以上を洗い流し後にうるおい感が持続するクレンジング料であると判定して表中に「○」を表示し、合計点が29点以下を洗い流し後の感うるおい感が持続し難いクレンジング料であると判定して表中に「×」を表示した。
2点:うるおい感がとても持続していると感じた場合。
1点:うるおい感がやや持続していると感じた場合。
0点:うるおい感が持続していないと感じた場合。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
※1:「パールリーム4」日油株式会社製、[炭素数16、沸点範囲220〜252.5℃、引火点96℃、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン含有量0%]
※2:「マルカゾールR」丸善石油化学株式会社製、[炭素数12、沸点177℃、引火点48℃、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン含有量95%以上]
※3:「SH 245」東レダウコーニング株式会社製、[引火点77℃]
【0051】
実施例1〜10の評価結果より、本発明のクレンジング料は、メイク汚れと素早くなじみ、洗い流し易く、洗い流し後の感触がすっきりとし、洗い流し後のエモリエント感があるとともに、洗い流し後にうるおい感が持続するものであった。
【0052】
一方、比較例1〜9では充分な性能が得られていない。つまり、比較例1ではa成分とは異なるパラフィン混合物3を使用しているので、メイク汚れとなじみ難く、洗い流し後のすっきり感が弱く、洗い流し後のエモリエント感が弱く、洗い流し後のうるおい感が持続し難い結果となった。
比較例2ではa成分とは異なる成分(イソドデカン)を使用しているので、洗い流し後のすっきり感が弱く、洗い流し後のエモリエント感が弱く、洗い流し後のうるおい感が持続し難い結果となった。
比較例3ではa成分とは異なる成分(デカメチルシクロペンタシロキサン)を使用しているので、メイク汚れとなじみ難く、洗い流し後のすっきり感が弱く、洗い流し後のエモリエント感が弱く、洗い流し後のうるおい感が持続し難い結果となった。
比較例4ではa成分が50質量%を超えて配合されているので、洗い流し難く、洗い流し後のうるおい感が持続し難い結果となった。
【0053】
比較例5および6ではb成分とは異なる非イオン性界面活性剤7および8を使用しているので、メイク汚れとのなじみが遅く、洗い流し難く、洗い流し後のすっきり感が弱い結果となった。
比較例7ではb成分が60質量%を超えて配合されているので、洗い流し後のエモリエント感が弱く、洗い流し後のうるおい感が持続し難い結果となった。
比較例8ではc成分とは異なる成分(グリセリン)が配合されているので、メイク汚れとなじみ難く、洗い流し難く、洗い流し後のうるおい感が持続し難い結果となった。
比較例9ではc成分が30質量%を超えて配合されているので、洗い流し後のすっきり感が弱い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のクレンジング料は、メイク汚れと素早くなじみ、洗い流し易く、洗い流し後の感触がすっきりとし、洗い流し後のエモリエント感があるとともに、洗い流し後にうるおい感が持続するクレンジング料であるので、メイクアップ化粧料や紫外線防止化粧料等の化粧料を除去するのに好適に用いることができる。