(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
また、この実施の形態では、特に区別しない限り、「減光」との用語は、光を弱めるという意味だけでなく、光を遮断する(遮光)という意味も含む。
【0016】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置の構成を示す模式図である。
図1に示す共焦点計測装置101は、共焦点光学系を利用して計測対象物200の変位を計測する計測装置である。計測対象物200は、特に限定されるものではない。言い換えると、共焦点計測装置101の用途は特定の用途に限定されるものではない。
【0017】
共焦点計測装置101は、ヘッド部10と、光ファイバ11と、コントローラ部20と、モニタ部30とを備えている。ヘッド部10は、共焦点の光学系を有する。ヘッド部10とコントローラ部20とは、光ファイバ11によって光学的に接続される。モニタ部30は、コントローラ部20から出力される信号を表示する。
【0018】
ヘッド部10は、回折レンズ1と、対物レンズ2と、集光レンズ3とを備えている。対物レンズ2は、回折レンズ1よりも計測対象物200側に配置される。回折レンズ1の焦点距離は、回折レンズ1から対物レンズ2までの距離と、対物レンズ2の焦点距離との差より大きくしてある。
【0019】
回折レンズ1は、後述する複数の波長の光を出射する光源(たとえば、白色光源)から出射する光に、光軸の方向に沿って色収差を生じさせる光学素子である。光軸Xは、回折レンズ1の光軸を示す。なお、回折レンズ1の光軸Xは、光ファイバ11から出射される光の光軸および対物レンズ2の光軸に一致する。
【0020】
回折レンズ1の一方の表面には、たとえばキノフォーム形状あるいはバイナリ形状(ステップ形状、階段形状)などの微細な起伏形状が周期的に形成される、あるいは、光の透過率を周期的に変更する振幅型のゾーンプレートが形成される。この表面を回折レンズ1の回折面1aと呼ぶ。この実施の形態では、回折レンズ1の回折面1aは、対物レンズ2に向けられている。
【0021】
一方、回折面1aと反対側の回折レンズ1の表面は平面である。この平面を平面1bと呼ぶ。回折レンズ1の光軸X(中心光軸)が通る平面1bの中央部には、遮光膜4が形成される。
【0022】
遮光膜4は、光ファイバ11から出射されて平面1bの中央部に到達した光を遮断する。光ファイバ11から出射された光は、平面1bにおける遮光膜4の周囲の領域(この領域を外周部と呼ぶ)を通過し、回折レンズ1の回折面1aによって色収差を生じさせる。
【0023】
回折レンズ1は、たとえば、ガラスまたは樹脂などの単一材料の基板に、光軸方向に沿って色収差を生じさせるパターンを形成した構成を有していてもよい。代わりに、回折レンズ1は、たとえばガラス基板層および樹脂層で構成されてもよい。樹脂層は、ガラス基板に紫外線硬化樹脂を塗布し、所望のパターンの型を、紫外線硬化樹脂を塗布したガラス基板の面に押し付け、紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化することで形成することができる。この方法によれば、製造コストが安価になる。さらに、環境温度による形状の変化が小さいガラス基板が構成の大部分を占めるため、温度特性がよいという利点も有する。
【0024】
対物レンズ2は、回折レンズ1で色収差を生じさせた光を計測対象物200に集光する光学素子である。また、対物レンズ2は、計測対象物200からの反射光を平行光へとコリメートする。コリメートされた光は回折レンズ1に入射される。
【0025】
光ファイバ11から出射された光のうち、回折レンズ1の中央部に達した光は遮光膜4によって、回折レンズ1を通過できない。したがって、回折レンズ2の外周部および対物レンズ2の外周部を通る光が計測対象物200に到達する。計測対象物200からの反射光は、回折レンズ1の外周部および対物レンズ2の外周部を通り、光ファイバ11に入射する。遮光膜4は、回折レンズの中央部を通って光ファイバ11(ピンホール)に入射する光の光量を減らす(この実施の形態では、光量を実質的に0にする)減光部に相当する。
【0026】
白色光源から出射する光は、光ファイバ11を介してヘッド部10に導かれている。光ファイバ11から出射する光を、回折レンズ1で有効に利用するには、光ファイバ11の開口数(NA:numerical aperture)と回折レンズ1の開口数とを一致させる必要がある。そのため、光ファイバ11と回折レンズ1との間に集光レンズ3を設けて、光ファイバ11の開口数と回折レンズ1の開口数とが一致するように調整している。
【0027】
光ファイバ11は、ヘッド部10からコントローラ部20までの光路であるとともに、ピンホールとしても機能している。つまり、対物レンズ2で集光した光のうち、計測対象物200で合焦する光は、光ファイバ11の開口部で合焦することになる。そのため、光ファイバ11は、計測対象物200で合焦しない波長の光を遮光し、計測対象物200で合焦する光を通過させるピンホールとして機能することになる。ヘッド部10からコントローラ部20までの光路に光ファイバ11を用いることで、ピンホールが不要となる。
【0028】
共焦点計測装置101は、ヘッド部10からコントローラ部20までの光路に光ファイバ11を用いない構成を有していても良い。ただし当該光路に光ファイバ11を用いることで、ヘッド部10をコントローラ部20に対してフレキシブルに移動させることが可能になる。また、ヘッド部10からコントローラ部20までの光路に光ファイバ11を用いない構成の場合、共焦点計測装置101にピンホールを備える必要がある。しかし、光ファイバ11を用いることにより、共焦点計測装置101は、ピンホールを備える必要がない。
【0029】
コントローラ部20は、白色光源である白色LED(Light Emitting Diode)21と、分岐光ファイバ22と、分光器23と、撮像素子24と、制御回路部25とを備えている。白色光源として白色LED21を用いているが、白色光を出射することができる光源であれば他の光源であってもよい。
【0030】
分岐光ファイバ22は、光ファイバ11と接続する側に一本の光ファイバ22aを有するとともに、その反対側に二本の光ファイバ22b、22cを有している。なお、光ファイバ22bは白色LED21に光学的に接続され、光ファイバ22cは分光器23に光学的に接続される。そのため、分岐光ファイバ22は、白色LED21から出射する光を光ファイバ11に導くとともに、光ファイバ11を介してヘッド部10から戻る光を分光器23に導くことができる。
【0031】
分光器23は、ヘッド部10から戻る光を反射する凹面ミラー23aと、凹面ミラー23aで反射した光が入射する回折格子23bと、回折格子23bから出射する光を集光する集光レンズ23cとを有している。分光器23は、ヘッド部10から戻る光の撮像素子24における合焦位置を波長によって変えることができればよく、ツェルニターナ型、リトロー型などのいずれの構成であってもよい。
【0032】
撮像素子24は、分光器23から出射する光の強度を測定する。撮像素子24は、たとえばラインCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)あるいはラインCCD(Charge Coupled Device)である。共焦点計測装置101では、分光器23および撮像素子24によって、ヘッド部10から戻る光の強度を波長ごとに測定し、強度のピーク値等から合焦している光の波長を特定する測定部を構成している。合焦する光の波長と計測対象物200の変位との関係を予め得ておくことで、計測対象物200の変位を計測することができる。なお、測定部は、ヘッド部10から戻る光の強度を波長ごとに測定することができれば、CCDなどの撮像素子24の単体で構成してもよい。また、撮像素子24は、2次元のCMOSあるいは2次元のCCDであってもよい。
【0033】
制御回路部25は、白色LED21あるいは撮像素子24などの動作を制御する回路である。また、図示していないが、制御回路部25には、白色LED21および撮像素子24などの動作を調整するための信号を入力するための入力インターフェース、および撮像素子24の信号を出力するための出力インターフェースなどを有している。
【0034】
モニタ部30は、撮像素子24が出力した信号を表示する。たとえば、モニタ部30は、ヘッド部10から戻る光のスペクトル波形を描画し、計測対象物の変位がたとえば123.45μmであることを表示する。
【0035】
図2は、本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置101で計測した計測対象物の変位のスペクトル波形の一例を示す図である。
図2に示すスペクトル波形では、横軸が光の波長に対応するワーク高さ(計測対象物200からヘッド部10の先端までの高さをゼロに設定)(mm)、縦軸が光の強度(規格化した値)である。スペクトル波形は、複数のスペクトルのピークが図示されており、ワーク高さが負側(光の波長が短い側)にあるスペクトルの半値幅と、ワーク高さが正側(光の波長が長い側)にあるスペクトルの半値幅とが略等しい。したがって、共焦点計測装置101は、ワーク高さ(光の波長)が変化してもスペクトルの半値幅が変化しにくくなるので、光の波長による、計測対象物200の変位を計測する精度の変動を抑えている。
【0036】
図3は、
図1に示した遮光膜4の形状の一例を示した平面視図である。
図3を参照して、回折レンズ1の平面1bの中央部において、遮光膜4により遮光領域が形成される。遮光領域は軸対称な形状であり、より特定的には円形である。この円の中心は光軸Xに一致する。
【0037】
図3において、破線にて囲まれた領域Sの面積は、回折レンズ1の有効面積を表す。ここで領域Sは、回折パターンが形成された領域ではなく、計測に有効な光が通過する領域を示している。遮光領域の面積は、受光量、すなわち計測対象物200からヘッド部10を経てコントローラ部20に戻る光の量と良好な角度特性とが確保できるように定められる。この実施の形態では、回折レンズ1の有効面積に対する遮光領域の面積の割合は、10%〜50%の範囲、好ましくは20〜40%の範囲、より好ましくは30%となるように定められる。この明細書において「角度特性」とは、計測対象物200の角度のついた部分(傾斜部分)の変位を精度よく計測できるという特性を意味する。
【0038】
図1および
図3から理解されるように、遮光膜4により回折レンズ1の平面1bに形成される遮光領域は、光軸Xに対して軸対称な形状を有する。遮光領域を軸対称な形状とすることにより、光軸Xに対して軸対称な角度特性を得ることができる。
【0039】
回折レンズ1の表面(平面1b)に遮光膜4を形成することによって、遮光のための構成部材の追加が不要となる。遮光膜4の材質は特に限定されるものではなく、回折レンズ1の表面上に固定可能な膜であればよい。回折レンズ1の回折面と反対側の面が平面であるので、その平面に遮光膜を容易に形成することができる。遮光膜を形成するための方法は、その遮光膜の材料に応じて決定される。
【0040】
1つの実施形態では、たとえば印刷技術を用いて、回折レンズ1の平面1bの中央部に黒色の塗料が塗布される。この方法により、遮光膜4を容易に形成することができる。黒色の塗料を用いることによって、遮光領域に入射した光の反射を抑えることもできる。
【0041】
別の実施形態では、遮光膜4として金属膜が用いられる。金属膜は、Cr(クロム)膜、酸化Cr膜、Al(アルミニウム)膜などを含み得るがこれらに限定されない。金属膜を回折レンズ1の平面1bに固定するために、蒸着、スパッタリングなど公知の方法を用いることができる。金属膜を遮光膜4として採用することにより、遮光膜4の安定性を高めることができる。たとえば回折レンズ1の平面1bから遮光膜4を剥がれにくくすることができる。
【0042】
さらに、遮光膜4は、単層の膜でもよく、多層膜であってもよい。遮光膜4を多層膜によって実現する場合、その多層膜の構成、素材などは特に限定されない。
【0043】
上記のように、
図1に示された構成では、光源から出射される光に軸上色収差を生じさせるために回折レンズ1が用いられる。したがって、この実施の形態に係る構成によれば、屈折レンズを用いる場合に比較して、レンズの枚数を大幅に減らすことができる。これにより、小型、軽量および堅牢なヘッド部を実現することができる。
【0044】
しかしながら、回折レンズは、設計波長では球面収差が生じないものの、設計波長以外の波長では、球面収差が生じるという特性を有している。
【0045】
図4は、回折レンズ1の特性を説明するための図である。
図4を参照して、回折レンズ1の設計波長をλ
0とし、波長λ
0の光に対する回折レンズ1の焦点距離をf
0とする。さらに、回折レンズ1を通過する光線Lの、回折レンズ1の光軸Xからの距離をrとする。回折レンズ1を通過する光線Lの回折角をθとすると、以下の式(1)が成立する。
【0047】
回折レンズ1の回折パターンのピッチをd(r)とする。一次回折光の回折角θとパターンピッチd(r)との関係は以下の一般的な回折の式(2)に従って表される。
【0049】
したがってパターンピッチd(r)は、次の式(3)のように表される。
【0051】
以上のように、回折レンズ1の回折パターンは、ある特定の波長λ
0に従って設計される。したがって、その波長と異なる波長の光が回折レンズ1に入射した場合には、球面収差が発生する。
【0052】
図5は、回折レンズにおいて生じる球面収差を説明するためのグラフである。
図5を参照して、設計波長λ
0に従ってピッチd(r)が設計されているため、波長λ
0では、位置(r)によらず、収差が0である。ここで、波長λ
0を含むある波長範囲での最小波長および最大波長をそれぞれ、λ
minおよびλ
maxとする。たとえばこの波長範囲は、白色光源から発せられる光の波長範囲に相当する。波長λ
minの光を回折レンズ1に入射した場合、あるいは波長λ
maxの光を回折レンズ1に入射した場合には、球面収差が発生する。
【0053】
回折レンズで発生した球面収差は、対物レンズ2によって、ある程度低減することができる。しかし、球面収差を完全になくすことは困難である。したがって、設計波長と異なる波長の光が回折レンズ1を通過する場合、回折レンズ1の光軸Xに対して相対的に近い部分を通過する光と、光軸Xに対して相対的に遠い部分を通過する光とでは、焦点距離が異なることになる。
【0054】
図6は、回折レンズと対物レンズとを組合わせた構成において生じる収差の一例を示した図である。
図6を参照して、回折レンズ1および対物レンズ2の光軸Xに相対的に近い領域(位置rが0に近づく)と遠い領域とでは球面収差が大きく異なるため、結果的に、回折レンズ1と対物レンズ2の光軸付近と外周付近とでは焦点距離が大きく異ることになる。これに対して回折レンズ1の光軸Xに相対的に近い領域もしくは遠い領域だけを見ると、位置rに対する球面収差の変化量が小さくなり、結果的に、焦点距離は位置rに対して概ね一定になる。
【0055】
このように、焦点距離が異なる領域がある状態では、計測対象物からの反射光の分布の影響を受けて角度特性が低下するという課題が生じうる。よって、回折レンズ1もしくは対物レンズ2の中央部を遮光し、焦点距離が概ね一定な外周付近の領域を通過する光線のみを用いて変位計測を行なう。これにより、角度特性の低下を低減することができる。この理由を以下に詳述する。なお、以下では「回折レンズおよび対物レンズ」をまとめて「レンズ」と呼ぶ。
【0056】
図7は、レンズの中央部を遮光しない構成の変位計測での問題点を説明するための図である。
図7(a)は、計測対象物200の平坦部の変位を計測する場合の光線の軌跡を説明するための図である。
図7(b)は、計測対象物200の傾斜部の変位を計測する場合の光線の軌跡を説明するための図である。
図7(a),
図7(b)を参照して、計測対象物200の平坦部の変位を計測する場合には、レンズの全体(中央部および外周部)から計測対象物200に光が投射されて、レンズの全体で反射光を受光する。
【0057】
これに対して、計測対象物200の傾斜部の変位を計測する場合には、レンズの全体から計測対象物200に光が投射されるが、計測対象物200に投射された光線の一部(
図7(b)において、破線で示す光線L1)は、計測対象物200の傾斜部での反射により、対物レンズ2に戻ることができない。したがって、実線で示される光線L2のようにレンズの外周部を通るのみで反射光を受光することになる。
【0058】
このように、計測対象物200の平坦部の変位を計測する場合と、計測対象物200の傾斜部の変位を計測する場合とでは、レンズの受光範囲が異なる。
【0059】
図5に示されるように、位置rとして取りうる値の範囲が広くなると、収差の変化量が大きくなる。収差の変化量が大きくなるということは、焦点距離の変動量が大きいことを意味する。すなわち、光がレンズを通過する位置によって計測対象物200の表面で合焦する光の波長が異なることとなる。そのため、計測対象物200の平坦部と傾斜部のようにレンズの受光範囲が異なる条件で計測を行なうと、傾斜部の変位の計測値が本来の変位とは異なってしまい、計測対象物200の各部位における変位の計測精度を高めることができない。
【0060】
一方、
図8は、本発明の実施の形態1に係る構成での変位の計測を説明するための図である。
図8(a)は、計測対象物200の平坦部の変位を計測する場合の光線の軌跡を説明するための図である。
図8(b)は、計測対象物200の傾斜部の変位を計測する場合の光線の軌跡を説明するための図である。
図8(a),
図8(b)を参照して、この実施の形態では、遮光膜4によって、計測対象物200の平坦部の変位を計測する場合および計測対象物200の傾斜部の変位を計測する場合のいずれの場合にも、計測対象物200からの反射光は、レンズの外周部を通る。
図5に示すように、レンズの外周部では、光軸Xからの位置rによらず、収差はほぼ均一である。したがってこの実施の形態によれば、計測対象物200の平坦部の変位を計測する場合と計測対象物200の傾斜部の変位を計測する場合のいずれにおいても正確な計測を実現できる。
【0061】
図9は、回折レンズの中央部の遮蔽(中央遮蔽)による、計測精度の向上を説明するための図である。
図9(a)を参照して、中央遮蔽が無い場合(
図7の構成に対応)、計測対象物の平坦部では実際の形状と計測結果との差に大きな違いが生じない。しかし計測対象物の傾斜部では、実際の形状と計測結果との間の乖離が大きくなる。
【0062】
上述のように、計測対象物の平坦部で反射した光はレンズ全体で受光されるのに対して、計測対象物の傾斜部では、レンズの外周部のみで受光される。収差の影響により、レンズ外周部の焦点距離は短いため、より短い波長の光が計測対象物表面で焦点を結ぶ。
【0063】
光の波長が長いほど、計測結果が実際の高さよりも高くなりやすい。逆に、光の波長が短いほど、計測結果が実際の高さよりも低くなりやすい。したがって計測対象物の傾斜部では、計測された高さが本来の高さより小さくなる。
【0064】
一方、
図9(b)を参照して、中央遮蔽がある場合には、計測対象物の平坦部からの反射光および計測対象物の傾斜部からの反射光は、いずれもレンズの外周部を通る。したがって、収差の変動を小さくすることができる。この結果、計測対象物の平坦部および傾斜部の両方において、計測された高さは、実際の高さによく一致する。
【0065】
なお、上記の構成によれば、回折レンズ1の回折面1aが対物レンズ2に向けられるとともに、回折レンズ1の平面1bがピンホール(光ファイバ11)に向けられる。しかしながら回折レンズ1の向きはこのように限定されるものではない。
【0066】
図10は、本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置の別の構成を示す模式図である。
図10を参照して、共焦点計測装置101Aでは、回折レンズ1の回折面1aがピンホール(光ファイバ11)に向けられるとともに回折レンズ1の平面1bが対物レンズ2に向けられる。
図1に示した共焦点計測装置101と比較して、共焦点計測装置101Aでは、回折レンズ1の向きが逆になっている。
図10に示された共焦点計測装置101Aは、
図1に示す共焦点計測装置101と同様に角度特性を高めることができる。
【0067】
図1に示す共焦点計測装置101は、回折レンズ1の平面1bがピンホール(光ファイバ11)に向けられていることにより、次に説明する効果を得ることができる。
【0068】
図11は、回折レンズ1の平面1bが対物レンズ2に向けられた場合と、平面1bがピンホール(光ファイバ11)に向けられた場合とを対比して説明した図である。
図11(a)を参照して、回折レンズ1の平面1bが対物レンズ2に向けられた場合には、光ファイバ11から出た光のうちの一部の光線が回折レンズ1内で平行光となり、遮光膜4の裏側の面で反射して光ファイバ11に入射される。
【0069】
たとえば反射率の低い計測対象物200の変位を計測する場合、光ファイバ11に入射される反射光の強度が小さいため、撮像素子24での撮像時間(露光時間)を長くしなければならない。一方、遮光膜4の裏側の面で反射して光ファイバ11に入射される光の強度が大きいために、撮像時間を長くすると撮像素子の出力が飽和する可能性がある。撮像素子の出力の飽和を避けるために、撮像時間を短くすることが考えられるが、精度の高い変位の計測を確保することが困難となる。
【0070】
一方、
図11(b)に示すようにピンホール(光ファイバ11)側に遮光膜4を設けることで、遮光膜4で反射した光は広がりながら進む。このため、反射光が光ファイバに結合しにくくなる。これにより、上記の問題を回避することができる。したがって、精度の高い計測を確保することができる。
【0071】
図12は、本発明の実施の形態1に係る共焦点計測装置のさらに別の構成を示す模式図である。
図12を参照して、共焦点計測装置101Bは、回折レンズ1の回折面1aの形状の点で、共焦点計測装置101と異なる。
【0072】
図13は、
図12に示された回折レンズ1の回折面を模式的に示した図である。
図14は、
図12に示された回折レンズ1の模式的な断面図である。
図13および
図14を参照して、回折面1aの中央部1cは平面に形成されており、回折パターンは形成されていない。したがって、回折面1aにおいて、回折パターンは、中央部1cを除く環状領域1dに形成される。
【0073】
回折面1aの中央部1cを平面に形成することにより、中央部1cを光の回折に寄与しない領域とすることができる。したがって中央部1cは遮光膜4と同様の機能を有する。すなわち中央部1cは、ピンホールに戻る反射光を減衰させるための減光部に相当する。上記の遮光領域の面積と同一の観点で中央部1cの面積が定められる。したがって中央部1cの面積は、回折レンズ1の有効面積に対して、10%〜50%の範囲、好ましくは20〜40%の範囲、より好ましくは30%となるように定められる。
【0074】
なお、
図12〜
図14に示した回折レンズ1の平面1bの中央部(回折面1aの中央部1cの反対側に位置する領域)に遮光膜4を形成してもよい。この場合、遮光膜4で反射した光がピンホールに戻ることをできるだけ避けるために、回折レンズ1の回折面1aを対物レンズ2に向ける(すなわち遮光膜4がピンホールに向けられる)ことが望ましい。
【0075】
さらに、上記の実施の形態では、回折レンズ1の平面1bの中央部に遮光膜4が配置される。しかしながら、遮光膜4を、光の強度を弱めるための減光膜に置き換えることもできる。この構成の場合、減光膜の透過率は特に限定されるものではない。
【0076】
上記のように実施の形態1によれば、回折レンズ1は、回折レンズ1の光軸X周囲の中央部からピンホールに戻る光を減光するための遮光領域(または減光領域)を含む。これにより共焦点計測装置の角度特性を高めることができるので、変位の計測精度を高めることができる。
【0077】
[実施の形態2]
実施の形態1によれば、回折レンズ1の構造上の特徴により、変位の計測精度を高めることができる。本発明の実施の形態2では、撮像素子から出力される受光信号の処理によって、変位の計測精度を高めることができる。
【0078】
図15は、本発明の実施の形態2に係る共焦点計測装置の構成を示す模式図である。
図16は、本発明の実施の形態2に係る共焦点計測装置102によって計測される計測対象物200の一例を示した図である。
図16を参照して、計測対象物200は、下地層200aと、透明体層200bとを有する。透明体層200bは、下地層200aの表面に配置される。透明体層200bの表側の面(上部の面)の反射率は、下地層200aの表面の反射率に比べて小さい。さらに、透明体層200bの厚みt
bは受光波形の半値幅に比べて小さい。たとえば下地層200aは、シリコンウェハであり、透明体層200bは、そのシリコンウェハの表面に固定されたフォトレジストである。
【0079】
図17は、
図16に示した透明体層を計測した場合の受光波形を示した波形図である。
図17を参照して、下地層200a(シリコンウェハ)の表面からの反射光の光量が、透明体層200b(フォトレジスト)の上部の面からの反射光の光量に比べてはるかに大きい。また上述の通り、透明体層200bの厚みt
bは受光波形の半値幅に比べて小さい。このため透明体層200bからの反射光の受光波形は、下地層200aの表面からの反射光の受光波形に埋もれてしまう。
【0080】
図18は、
図17に示した透明体層200bの厚みを計測する方法を説明するための図である。
図18を参照して、対物レンズ2(図示せず)からの光LBが走査されて、透明体層200bに入射する。透明体層200bは、厚みt
bおよび屈折率nを有する。
【0081】
下地層200a(シリコンウェハ)の高さを計測した状態では光LBは空気中を通る。一方、透明体層200bを透過して下地層200aを計測すると、透明体層部分での光の屈折により透明体層部分が本来の厚みt
bの1/n倍の厚みを有するように見える。つまり、下地層200aの表面に対して下地層200aの高さは、以下の式の高さの分、高く見える。
【0082】
t
b−t
b/n=(1−1/n)t
b
光LBを走査した場合、上記の(1−1/n)t
bという高さが計測される。したがって、計測された高さをhとすると、厚みt
bは、以下の式に従って算出される。
【0083】
t
b=h×n/(n−1)
図19は、本来の高さと、計測された高さとの関係を示す図である。屈折率nが1より大きいため、本来の高さ(厚みt
b)は、計測値hよりも大きくなる。
【0084】
透明体層200bの屈折率nは予め求められる。計測された高さhから、上記の式に従って、厚みt
bが求められる。
【0085】
図20は、本発明の実施の形態2に係る共焦点計測装置が実行する計測処理を説明するためのフローチャートである。
図20を参照して、処理が開始されると、ステップS1において、光が走査される。
図15等には図示されていないが、たとえば計測対象物200が載置されたステージが移動することで、ヘッド部10から出射される光が相対的に走査される。
【0086】
ステップS2において、透明体層200bの高さhが計測される。実施の形態1と同様に、ヘッド部10から戻る光が撮像素子24で受光される。制御回路部25は、撮像素子24が出力した信号のスペクトル波形のピーク波長を解析する。制御回路部25は、そのピーク波長から高さhを決定する。
【0087】
ステップS3において、制御回路部25は、透明体層200bの厚みt
bを算出する。具体的には、制御回路部25は、t
b=h×n/(n−1)との式に従って、ステップS2において決定された高さhから厚みt
bを算出する。なお、屈折率nは、透明体層200bの種類と関連付けられて制御回路部25の内部に予め記憶される。たとえば、計測の際に、使用者が制御回路部25に対して透明体層200bの種類を指定する。これにより、制御回路部25は、屈折率nを自動的に決定する。
【0088】
ステップS4において、制御回路部25は、算出された厚みt
bを出力する。たとえば制御回路部25は、モニタ部30に厚みt
bの値を出力する。モニタ部30は厚みt
bの値を表示する。
【0089】
なお、本発明の実施の形態2に係る共焦点計測装置の構成は
図15に示されるように限定されるものではない。
図21は、本発明の実施の形態2に係る共焦点計測装置の他の構成例を示した図である。
図21を参照して、共焦点計測装置300は、センサヘッド315と、当該センサヘッド315を制御するコントローラ320とを備える。
【0090】
センサヘッド315は、レーザダイオード301と、フォトダイオード302と、ビームスプリッタ303と、ピンホール307aが形成された絞り板307と、コリメートレンズ309と、音叉状の振動子308と、振動子308のアームに取り付けられた対物レンズ310と、振動子308を振動させるための駆動部311と、振動子308のアームの位置を検出するための位置検出部312とを備える。
【0091】
レーザダイオード301はコントローラ320から電流が供給されることによって一定の強度の光を発生させる。レーザダイオード301から発せられた光はビームスプリッタ303を透過してコリメートレンズ309に入射する。レーザダイオード301からの光はコリメートレンズ309によってコリメートされて対物レンズ310に入射する。対物レンズ310は、コリメートレンズ309からの光を計測対象物200の表面に集光させる。
【0092】
対物レンズ310は、振動子308のアームに支持される。振動子308の近傍には、振動子308のアームを振動するための駆動部311が設けられる。対物レンズ310は、振動子308のアームの振動により、計測対象物200に接近する方向および遠ざかる方向に移動する。位置検出部312は、光軸Xの方向に沿った対物レンズ310の位置を検出する。
【0093】
レーザダイオード301から計測対象物200へ向けて照射された光は、当該計測対象物200によって反射される。計測対象物200からの反射光は、対物レンズ310、コリメートレンズ309、およびビームスプリッタ303を介してフォトダイオード302に導かれる。ビームスプリッタ303によってフォトダイオード302に導かれた反射光は、絞り板307のピンホール307aを通過してフォトダイオード302に入射する。
【0094】
コントローラ320は、駆動部311に信号を送り、駆動部311の動作を制御する。さらにコントローラ320は、位置検出部312からの信号およびフォトダイオード302からの受光信号に基づいて、対物レンズ310の変位量と受光信号の強度とを対応付ける。これにより、コントローラ320は、受光信号の強度がピークに達したときの対物レンズ310の変位量を検出する。この変位量に基づいて、コントローラ320は、計測対象物200の表面の変位を計測する。
【0095】
上記の構成を有する共焦点計測装置において、コントローラ320が、
図20に示す計測処理を実行することができる。したがって、下地層の上に設けられた透明体層の厚みを計測することができる。
【0096】
図15および
図21では、共焦点方式の変位計測装置を示した。しかしながら、本発明の実施の形態2に係る計測処理は、いわゆる三角測距方式の変位計測装置によっても実行可能である。
【0097】
本発明の実施の形態2を総括すると、以下のとおりである。本発明の実施の形態2に係る計測装置は、光を発する光源(21,302)と、光源(21,302)から計測対象物(200)に照射される光を集めるための対物レンズ(2,310)と、計測対象物(200)からの反射光を受光する受光素子(24,302)と、受光素子(24,302)から出力される受光信号に基づいて、計測対象物(200)の変位を算出する演算部(25,320)とを備える。計測対象物(200)は、下地層(200a)と、下地層(200a)の上に配置された透明体層(200b)とを含む。演算部(25,320)は、受光素子(24,302)から出力される受光信号に基づいて、透明体層(200b)の高さ(h)を計測する。演算部(25,320)は、計測された高さ(h)と、透明体層(200b)の屈折率(n)とに基づいて、透明体層(200b)の厚み(t
b)を算出する。言い換えると、演算部(25,320)は、透明体層(200b)の屈折率(n)を用いて計測された高さ(h)を補正して、透明体層(200b)の厚み(t
b)を決定する。上記のとおり、計測装置による変位の計測方式は、共焦点方式、三角測距方式を含むが、これらに限定されない。
【0098】
好ましくは、計測装置は、共焦点光学系を利用して計測対象物の変位を計測する共焦点計測装置である。計測装置は、対物レンズ(2,310)で集光した光のうち、計測対象物(200)において合焦する光を通過させるピンホール(11,307)を備える。
【0099】
さらに好ましくは、光源(21)が、複数の波長の光を出射する光源である。計測装置は、光源(21)から出射する光に、光軸(X)方向に沿って色収差を生じさせる回折レンズ(1)を備える。
【0100】
また、本発明の実施の形態2に係る変位計測方法は、計測対象物の変位を計測する計測装置用いた変位計測方法である。計測対象物(200)は、下地層(200a)と、下地層(200a)の上に配置された透明体層(200b)とを含む。計測装置は、光を発する光源(21,302)と、光源(21,302)から計測対象物(200)に照射される光を集めるための対物レンズ(2,310)と、計測対象物(200)からの反射光を受光する受光素子(24,302)と、受光素子(24,302)から出力される受光信号に基づいて、計測対象物(200)の変位を算出する演算部(25,320)とを備える。
【0101】
計測方法は、光源(21,302)から計測対象物(200)に照射される光を計測対象物(200)の表面に沿って走査するステップ(S1)と、受光素子(24,302)から出力される受光信号に基づいて、透明体層(200b)の高さ(h)を計測するステップ(S2)と、計測された高さ(h)と、透明体層(200b)の屈折率(n)とに基づいて、透明体層(200b)の厚み(t
b)を算出するステップ(S3)とを備える。
【0102】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。