特許第5994505号(P5994505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994505
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】電流測定装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20160908BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20160908BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20160908BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/02 E
   !H01M8/10
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-202676(P2012-202676)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-59961(P2014-59961A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡宮 稔
(72)【発明者】
【氏名】坂上 祐一
(72)【発明者】
【氏名】末松 啓吾
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−252706(JP,A)
【文献】 特開2000−050652(JP,A)
【文献】 特開2007−064775(JP,A)
【文献】 特開2003−324983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
G01R 19/00−19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて、電気エネルギを出力する複数のセル(10)を積層配置した燃料電池(1)に適用され、前記セルのインピーダンスを計測する際に前記セルを流れる電流を測定する電流測定装置であって、
前記セルに隣接して配置された板状部材(41)と、
前記板状部材の両面に配置された第1、第2電極(421、422)、予め定めた電気抵抗値を有すると共に前記第1、第2電極を電気的に接続する抵抗体(423)を含んで構成される電流測定部(42)と、
前記第1電極側に電気的に接続された第1信号線(424a)、および前記第2電極側に電気的に接続された第2信号線(424b)を介して、前記抵抗体に生ずる電圧を検出する電圧検出手段(431)と、
前記電圧検出手段にて検出した検出値、および前記抵抗体の電気抵抗値から前記電流測定部に流れる電流値を算出する電流値算出手段(432)と、を備え、
前記抵抗体および前記電圧検出手段は、前記第1信号線および前記第2信号線を介して接続されることで閉回路を構成しており、
前記第1信号線および前記第2信号線の少なくとも一部は、前記板状部材の内部において電流の向きが反対となるように前記板状部材の板面方向に沿って延びる前記第2電極と前記抵抗体の間の同一平面において平行に近接して配置されていることを特徴とする電流測定装置。
【請求項2】
少なくとも前記第1信号線および前記第2信号線と前記抵抗体との間には、前記第1信号線および前記第2信号線と前記抵抗体との間の相互誘導を抑制するシールド手段(425a)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電流測定装置。
【請求項3】
前記第1信号線および前記第2信号線は、前記第1、第2電極のうち一方の電極と前記抵抗体との間に配線されており、
少なくとも前記第1信号線および前記第2信号線と前記一方の電極との間には、前記第1信号線および前記第2信号線と前記一方の電極との間の相互誘導を抑制するシールド手段(425b)が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電流測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の内部を流れる電流を測定する電流測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のセルを積層した燃料電池スタックのセル間に、電流測定装置を配置して、当該電流測定装置からの出力等に基づいて、燃料電池スタックの内部インピーダンスを算出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の電流測定装置は、隣接するセルの一方に電気的に接触する第1電極、他方に電気的に接触する第2電極、および各電極間を電気的に接続する抵抗体を有する電流測定部を備えている。そして、電流測定部における抵抗体に生ずる電圧(各電極間の電位差)を電圧センサで検出し、当該電圧センサの検出値および抵抗体の電気抵抗値からセル間に流れる電流を測定する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−252706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の電流測定装置を、燃料電池の交流インピーダンスを計測するための電流測定手段として用いる場合、セルから出力される出力電流を可能な限りそのまま検出できるよう抵抗体の抵抗値を数mΩ以下(典型的にはμΩオーダ)にすることが望ましい。
【0006】
しかし、電流測定部の抵抗体の抵抗値を小さくすると、燃料電池に印加される交流信号の周波数が高くなるにつれて、電流測定部の電流経路に流れる電流とセルから出力される出力電流との乖離が大きくなり、電流測定装置にて正確に電流を測定できないといった問題がある。
【0007】
この点について、本発明者らが調査したところ、高周波数の電流が電流測定部を流れると、電圧センサにて各電極間の電位差を検出するために各電極等から引き出された信号線と電流測定部の電流経路との間に相互誘導が生じ、電圧センサにて抵抗体に生ずる電圧を精度よく検出できず、電流測定装置における電流の測定精度が低下することが分かった。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、燃料電池の内部を流れる電流を測定する電流測定装置において、電流の測定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酸化剤ガスと燃料ガスとを電気化学反応させて、電気エネルギを出力する複数のセル(10)を積層配置した燃料電池(1)に適用され、セルのインピーダンスを計測する際にセルを流れる電流を測定する電流測定装置を対象としている。
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、セルに隣接して配置された板状部材(41)と、板状部材の両面に配置された第1、第2電極(421、422)、予め定めた電気抵抗値を有すると共に第1、第2電極を電気的に接続する抵抗体(423)を含んで構成される電流測定部(42)と、第1電極側に電気的に接続された第1信号線(424a)、および第2電極側に電気的に接続された第2信号線(424b)を介して、抵抗体に生ずる電圧を検出する電圧検出手段(431)と、電圧検出手段にて検出した検出値、および抵抗体の電気抵抗値から電流測定部に流れる電流値を算出する電流値算出手段(432)と、を備える。そして、抵抗体および電圧検出手段は、第1信号線および第2信号線を介して接続されることで閉回路を構成しており、第1信号線および第2信号線の少なくとも一部は、板状部材の内部において電流の向きが反対となるように板状部材の板面方向に沿って延びる第2電極と抵抗体の間の同一平面において平行に近接して配置されていることを特徴としている。
【0011】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの全体構成図である。
図2】第1実施形態に係る燃料電池の模式的な斜視図である。
図3】信号付加部にて燃料電池の出力電流に付加する交流信号を説明するための説明図である。
図4】第1実施形態に係る電流測定板の模式的な分解斜視図である。
図5】第1実施形態に係る電流測定部の模式的な分解斜視図である。
図6】第1実施形態に係る電流測定部の模式的な断面図である。
図7】従来例の電流測定部において、各信号線に作用する相互誘導を説明するための説明図である。
図8】従来例における測定電流と真の電流との関係を示すフェーザ図である。
図9】従来例および本例における電流の測定結果を説明するための説明図である。
図10】本例の電流測定部において、各信号線に作用する相互誘導を説明するための説明図である。
図11】本例における測定電流と真の電流との関係を示すフェーザ図である。
図12】第2実施形態に係る電流測定部の模式的な分解斜視図である。
図13】第2実施形態に係る電流測定部の模式的な断面図である。
図14】第3実施形態に係る電流測定部の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0014】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明すると、本実施形態の電流測定装置4は、電気自動車の一種である燃料電池車両の燃料電池システムに適用されて、車両に搭載された燃料電池1のセル10内部を流れる電流を測定するものである。
【0015】
燃料電池1は、水素と酸素との電気化学反応を利用して電気エネルギを出力するものであり、本実施形態では、燃料電池1として固体高分子型燃料電池を採用している。
【0016】
図1の全体構成図に示すように、本実施形態の燃料電池1は、DC−DCコンバータ2を介して主に車両走行用電動モータや二次電池といった電気負荷(図示略)に電力を供給するように構成されている。
【0017】
図2に示すように、燃料電池1は、基本単位となる複数のセル10が積層配置されたスタック構造であり、各セル10を電気的に直列接続した直列接続体として構成されている。なお、図2では、燃料電池1の内部構造を示すために、燃料電池1を構成するセル10の一部を透視図で示している。
【0018】
各セル10は、燃料ガスである水素および酸化剤ガスである空気といった反応ガスが供給されると、以下に示すように、水素および酸素の電気化学反応により、電気エネルギを出力する。
(水素極:アノード電極)H→2H+2e
(酸素極:カソード電極)2H+1/2O+2e→H
燃料電池1から出力される電気エネルギは、燃料電池1全体として出力される出力電圧を検出する電圧センサ(図示略)、および燃料電池1全体として出力される出力電流を検出する電流センサ(図示略)によって計測される。これらの各センサは、測定結果を示す検出信号が後述する制御装置100に入力されるように、制御装置100の入力側に接続されている。
【0019】
本実施形態の燃料電池1は、双方向に電力供給可能なDC−DCコンバータ2を介して、各種電気負荷に電気的に接続されている。DC−DCコンバータ2は、燃料電池1から各種電気負荷、あるいは、各種電気負荷から燃料電池1への電力の流れを制御するものである。
【0020】
また、各セル10のうち、インピーダンスの測定対象となる測定対象セル10には、測定対象セル10には、セル電圧センサ5が接続されており、当該セル電圧センサ5により、測定対象セル10のセル電圧を検出可能となっている。
【0021】
さらに、測定対象セル10および当該測定対象セル10に隣接するセル10との間には、測定対象セル10の面内の電流分布を測定するための電流測定装置4が設けられている。なお、電流測定装置4の詳細については後述する。
【0022】
燃料電池1には、空気を供給する空気供給配管20、および燃料電池1からの排出空気を外部へ排出する空気排出配管21が接続されている。
【0023】
空気供給配管20の最上流部には、大気中から吸入した空気を燃料電池1に圧送するための空気ポンプ22が設けられ、空気排出配管21には、燃料電池1内の空気の圧力を調整するための空気調圧弁23が設けられている。なお、本実施形態では、空気ポンプ22および空気調圧弁23によって、所定の流量および圧力の空気を燃料電池1に供給する空気供給手段が構成される。
【0024】
また、燃料電池1には、水素を供給する水素供給配管30、および燃料電池1にて電気化学反応を終えた微量な水素等を外部へ排出する水素排出配管31が接続されている。
【0025】
水素供給配管30の最上流部には、高圧水素が充填された高圧水素タンク32が設けられ、水素供給配管30における高圧水素タンク32と燃料電池1との間には、燃料電池1に供給される水素の圧力を調整する水素調圧弁33が設けられている。なお、本実施形態では、この水素調圧弁33によって、所望の圧力の水素を燃料電池1に供給する水素供給手段が構成される。また、水素排出配管31には、生成水を微量な水素とともに外気へ排出するために所定の時間間隔で開閉する電磁弁34が設けられている。
【0026】
燃料電池システムには、燃料電池1の状態を診断すると共に、燃料電池1における発電量を制御する制御装置100が設けられている。この制御装置100は、各種入力信号に基づいて、燃料電池システムを構成する各種電気式アクチュエータの作動を制御するもので、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されている。
【0027】
本実施形態の制御装置100の入力側には、電流測定装置4、セル電圧センサ5等が接続されており、各機器からの出力信号が入力される。
【0028】
一方、制御装置100の出力側には、上述の空気ポンプ22、空気調圧弁23、水素調圧弁33、電磁弁34といった各種電気式アクチュエータや、DC−DCコンバータ2等が接続されており、これら制御機器が制御装置100からの制御信号により制御される。
【0029】
本実施形態の制御装置100は、図2に示すように、信号付加部101、インピーダンス算出部102、診断部103といった構成(ソフトウェアおよびハードウェア)を備えている。
【0030】
信号付加部101は、図3に示すように、燃料電池1の出力電流(直流成分I)に対して予め定めた高周波域内の交流信号(交流成分ΔI)を付加(重畳)する信号付加手段を構成している。なお、信号付加部101にて付加する交流信号は、燃料電池1の発電状態への影響を考慮して、燃料電池1の出力電流の10%以内としている。
【0031】
インピーダンス算出部102は、信号付加部101にて燃料電池1の出力電流に交流信号を付加した際の電流測定装置4およびセル電圧センサ5の検出値から測定対象セル10の局所部位におけるインピーダンスを算出するインピーダンス算出手段を構成している。本実施形態のインピーダンス算出部102は、例えば、高速フーリエ変換処理等によって、交流信号の周波数に対応するインピーダンスを算出可能となっている。
【0032】
診断部103は、インピーダンス算出部102にて算出したインピーダンスを用いて、測定対象セル10内部の状態を診断する診断手段を構成している。例えば、診断部103では、低周波数の交流信号を印加した際のインピーダンスが所定値よりも大きい場合に、燃料電池1内部の含水量が適正量よりも少ない状態(ドライアップ)と診断し、高周波数の交流信号を印加した際のインピーダンスが所定値よりも大きい場合に、燃料電池1内部の含水量が適正量(フラッディング)よりも多い状態と診断する。なお、このような診断方法は、あくまでも一例であり、他の診断方法により燃料電池1の診断を行うようにしてもよい。
【0033】
次に、電流測定装置4の詳細について説明する。本実施形態の電流測定装置4は、図4に示すように、測定対象セル10に隣接して配置された測定板(板状部材)41、測定板41に一体的に設けられた複数の電流測定部42、測定対象セル10を流れる電流を算出する信号処理部43を備えている。
【0034】
まず、測定板41について説明すると、測定板41は、配線パターンが形成された複数のプリント基板411〜413を積層した積層基板として構成されている。本実施形態の測定板41は、第1〜第3プリント基板411〜413といった3枚のプリント基板を積層して構成している。これら各プリント基板411〜413は、絶縁性接着剤414、415を介在させてホットプレスにより一体化されている。なお、各プリント基板411〜413としては、一般的なガラスエポキシ基板を用いることができる。
【0035】
各プリント基板411〜413には、その周縁部にそれぞれ積層基板の表裏を貫通穴が形成されている。これら貫通穴は、セル10を積層した際に、空気、水素、冷却水を通過させるためのマニホールドとして機能する。
【0036】
また、各プリント基板411〜413の中央部には、複数の電流測定部42が直交する二方向にマトリクス状(格子状)に配置されている。つまり、本実施形態では、電流測定部42が、測定板41の板面の全体に渡って配置されており、電流測定装置4にて、セル10面内の電流分布を測定可能となっている。
【0037】
続いて、電流測定部42について図5の分解斜視図、および図6の断面図を用いて説明する。電流測定部42は、図5および図6に示すように、測定板41の両面に配置された第1、第2電極421、422、および予め定めた電気的抵抗値を有すると共に各電極421、422を電気的に接続する抵抗体423を有して構成されている。
【0038】
第1電極421は、測定対象セル10のセル面に電気的に接触するように、測定板41における測定対象セル10に対向する面に設けられている。また、第2電極422は、測定対象セル10に隣接するセル10のセル面に電気的に接触するように、測定板41における測定対象セル10に対向する面の反対側の面に設けられている。
【0039】
具体的には、第1電極421は、第1プリント基板411の前面(セル10に対向する面)に配置され、第2電極422は、第3プリント基板413の背面(セル10に対向する面)に配置されている。
【0040】
抵抗体423は、第1接続部42aを介して第1電極421に電気的に接続される板状の第1抵抗部423a、および第2接続部42bを介して第1抵抗部423aに電気的に接続されると共に第3接続部42cを介して第2電極422に電気的に接続される板状の第2抵抗部423bを有して構成されている。
【0041】
具体的には、第1抵抗部423aは、第2プリント基板412の前面(第1プリント基板411に対向する面)に配置され、第2抵抗部423bは、第2プリント基板412の背面(第3プリント基板413に対向する面)に配置されている。なお、電流測定部42の各電極421、422、および抵抗体423は、例えば、銅箔やニッケル箔等の金属箔にて構成されている。
【0042】
ここで、第1接続部42aは、第1プリント基板411を貫通する複数のビアで構成されると共に、第2接続部42bは、各プリント基板411〜413を貫通する複数のスルーホールで構成され、さらに、第3接続部42cは、第3プリント基板413を貫通する複数のビアで構成されている。これらビアおよびスルーホールの内壁面には、銅等の導電体によりメッキ層が構成されている。なお、第1、第2電極421、422は、各電極421、422に形成された逃がし部421a、422aにより第2接続部42bから電気的に絶縁されている。
【0043】
本実施形態の電流測定部42には、抵抗体423に生ずる電圧を検出するための信号線424が配置されている。信号線424は、第1接続部42a(第1電極側)に接続されて抵抗体423における第1電極421側の電位を引き出す第1信号線424a、および第3接続部42c(第2電極側)に接続されて抵抗体423における第2電極422側の電位を引き出す第2信号線424bで構成されている。
【0044】
第1信号線424aは、第1接続部42aにおける電位を、第1プリント基板411の背面(第2プリント基板412に対向する面)から、電流測定部42の中央に設けられたスルーホール42d、および第3プリント基板413の前面(第2プリント基板412に対向する面)を介して、後述する信号処理部43へ引き出す配線である。なお、各電極421、422および抵抗体423それぞれは、逃がし部421b、422b、423cによりスルーホール42dから電気的に絶縁されている。
【0045】
第2信号線424bは、第3接続部42cにおける電位を、第3プリント基板413の前面(第2プリント基板412に対向する面)を介して、後述する信号処理部43へ引き出す配線である。
【0046】
そして、各信号線424a、424bは、第3プリント基板413の前面において、測定板41の板面方向に平行に近接するように配置されている。換言すれば、本実施形態の各信号線424a、424bは、僅かな隙間をあけた状態で、同一平面上において測定板41の板面方向に延びるように配置されている。なお、各信号線424a、424bは、各電極421、422と同様に金属箔(例えば、銅箔)にて構成されている。
【0047】
続いて、信号処理部43について説明する。信号処理部43は、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されている。本実施形態の信号処理部43は、信号線424を介して各電流測定部42の抵抗体423に生ずる電圧を検出する電圧検出部(電圧検出手段)431、電圧検出部431にて検出した電圧、および予め記憶部433に記憶された抵抗体423の電気抵抗値から各電流測定部42に流れる電流値を算出する電流値算出部(電流値算出手段)432を備えている。なお、信号処理部43は、制御装置100の入力側に接続されており、電流値算出部432にて算出された電流値を制御装置100へ出力するように構成されている。
【0048】
次に、本実施形態の電流測定装置による電流測定方法について説明する。なお、電流測定時には、制御装置100の信号付加部101にて燃料電池1の出力電流に所定周波数の交流信号が重畳されているものとする。
【0049】
燃料電池1に対して水素および空気が供給されると、各セル10における水素と酸素との電気化学反応により電気エネルギが生成され、燃料電池1での発電が開始される。
【0050】
燃料電池1の発電が開始されると、電流測定装置4の各電流測定部42には、測定対象セル10からの電流が、図6の点線矢印で示すように、第1電極421→第1接続部42a→第1抵抗部423a→第2接続部42b→第2抵抗部423b→第3接続部42c→第2電極422へと流れる。
【0051】
そして、信号処理部43は、電圧検出部431にて、各信号線424a、424bを介して第1接続部42aおよび第2接続部42bと電位差を抵抗体423に生ずる電圧として検出すると共に、電流値算出部432にて、各電流測定部42に流れる電流値を算出して、制御装置100へ各電流測定部42に流れる電流値を出力する。
【0052】
ここで、従来の電流測定部(従来例)では、図7に示すように、第1信号線424aを第1電極421と抵抗体423との間に配置し、第2信号線424bを第2電極422と抵抗体423との間に配置している。
【0053】
このような構成では、各電極421、422を流れる電流により、各電極421、422と各信号線424a、424bとの間に相互誘導が生ずる。この相互誘導によって、図8のフェーザ図に示すように、信号処理部43にて算出する電流値の位相が、真の電流値(真値)に対して相互インダクタンス(+M)分乖離する。
【0054】
これにより、電流測定装置4における電流の測定精度が悪化してしまう。なお、図8における一点鎖線は、相互インダクタンスがマイナス(−M)となる場合における信号処理部43にて算出する電流を示している。
【0055】
本発明者らの研究によれば、信号処理部43にて算出した電流値の位相と真値と乖離は、図9に示すように、燃料電池1の出力電流に重畳させる交流信号の周波数の上昇に伴って顕著に大きくなる結果となった。
【0056】
これに対して、本実施形態の電流測定部42(本例)では、図10に示すように、各信号線424a、424bの一部を第2電極422と抵抗体423との間の同一平面において、平行に延びるように近接して配置している。
【0057】
このような構成では、第2電極422を流れる電流により、第2電極と各信号線424a、424bとの間に相互誘導が生ずるものの、図11のフェーザ図に示すように、第2電極422と第1信号線424aとの間の相互インダクタンス(−M)と、第2電極422と第2信号線424bとの間の相互インダクタンス(+M)とが相殺される。
【0058】
このため、信号処理部43にて算出する電流値の位相と真の電流値(真値)との乖離を抑制することができ、電流測定装置4における電流の測定精度を向上させることができる。なお、本発明者らの研究によれば、信号処理部43にて算出した電流値の位相は、図9に示すように、燃料電池1の出力電流に重畳させる交流信号の周波数の上昇した際にも殆ど真値から乖離しない結果となった。
【0059】
以上説明した本実施形態では、各信号線424a、424bの一部を、測定板41の板面方向に平行に近接して配置する構成としている。これよれば、電流測定部42の電流経路と第1信号線424aとの間の相互インダクタンスが、電流測定部42の電流経路と第2信号線424bとの間の相互インダクタンスによって相殺される。このため、電流測定部42の電流経路と信号線424との間に生ずる相互誘導が、信号処理部43の電圧検出部431における電圧検出に影響することを抑制することができる。この結果、電流測定装置4における電流の測定精度の向上させることが可能となる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、電流測定部42の抵抗体423を単一の抵抗部で構成している点が第1実施形態と相違している。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0061】
図12の分解斜視図、および図13の断面図に示すように、本実施形態の電流測定部42は、第1、第2電極421、422、および単一の抵抗部で構成される抵抗体423を備えている。
【0062】
具体的には、抵抗体423は、第2プリント基板412の前面(第1プリント基板411に対向する面)に配置されている。つまり、抵抗体423は、第2プリント基板412の片面にだけ配置されている。
【0063】
抵抗体423は、一端側が第1接続部42aを介して第1電極421に電気的に接続され、他端側が第2接続部42bを介して第2電極422に電気的に接続されている。
【0064】
本実施形態の第1接続部42a、および第2接続部42bは、それぞれ各プリント基板411〜413を貫通する複数のスルーホールで構成されている。なお、第1電極421は、第1電極421に形成された逃がし部421aにより第2接続部42bから電気的に絶縁され、第2電極422は、第2電極422に形成された逃がし部422aにより第1接続部42aから電気的に絶縁されている。
【0065】
本実施形態の各信号線424a、424bは、それぞれ第3プリント基板413の前面(第2プリント基板412に対向する面)に配置され、第3プリント基板413の前面において、各接続部42a、42bから中央部に向かって延び、当該中央部にて測定板41の板面方向に平行に近接して延びるように配置されている。
【0066】
その他の構成は第1実施形態と同様であり、本実施形態の電流測定部42には、燃料電池1の発電が開始されると、測定対象セル10からの電流が、図13の点線矢印で示すように、第1電極421→第1接続部42a→抵抗体423→第2接続部42b→第2電極422へと流れる。
【0067】
そして、信号処理部43は、電圧検出部431にて、各信号線424a、424bを介して第1接続部42aおよび第2接続部42bと電位差を抵抗体423に生ずる電圧として検出すると共に、電流値算出部432にて、各電流測定部42に流れる電流値を算出して、制御装置100へ各電流測定部42に流れる電流値を出力する。
【0068】
以上説明した本実施形態では、電流測定部42の抵抗体423を単一の抵抗部とした構成において、各信号線424a、424bの一部を、測定板41の板面方向に平行に近接して配置している。これよれば、第1実施形態と同様に、電流測定部42の電流経路と信号線424との間に生ずる相互誘導が、信号処理部43の電圧検出部431における電圧検出に影響することを抑制することができ、電流測定装置4における電流の測定精度の向上させることが可能となる。
【0069】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、各電極421、422、および抵抗体423と信号線424との間の相互誘導を抑制するシールド部材を追加している点が第2実施形態と相違している。本実施形態では、第1、第2実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0070】
図14の断面図に示すように、本実施形態の電流測定部42は、第1、第2電極421、422、抵抗体423、およびシールド手段を構成する第1、第2シールド部材425a、425bを備えている。
【0071】
具体的には、本実施形態の抵抗体423は、第1プリント基板411の背面(第2プリント基板412に対向する面)に配置されている。
【0072】
また、本実施形態の各信号線424a、424bは、第2プリント基板412の背面(第3プリント基板413に対向する面)に配置されている。つまり、本実施形態の各信号線424a、424bは、第2電極422と抵抗体423との間に配置されている。なお、図示しないが、各信号線424は、第2プリント基板412の背面において、各接続部42a、42bから中央部に向かって延び、当該中央部にて測定板41の板面方向に平行に近接して延びるように配置されている。
【0073】
第1シールド部材425aは、抵抗体423と各信号線424a、424bとの間の相互誘導を抑制するシールド手段を構成し、抵抗体423と各信号線424a、424bとの間に配置されている。
【0074】
また、第2シールド部材425bは、第2電極422と各信号線424a、424bとの間の相互誘導を抑制するシールド手段を構成し、第2電極422と各信号線424a、424bとの間に配置されている。
【0075】
具体的には、第1シールド部材425aは、第2プリント基板412の前面(第1プリント基板411に対向する面)に配置され、第2シールド部材425bは、第3プリント基板413の前面(第2プリント基板412に対向する面)に配置されている。なお、各シールド部材425a、425bとしては、透磁率の高くなるように、各電極421、422よりも厚みのある銅箔で構成したり、透磁率の高い材料(強磁性体)で構成したりすればよい。
【0076】
以上説明した本実施形態の構成によれば、第1、第2実施形態と同様に、電流測定部42の電流経路と信号線424との間に生ずる相互誘導が、信号処理部43の電圧検出部431における電圧検出に影響することを抑制することができ、電流測定装置4における電流の測定精度の向上させることが可能となる。
【0077】
これに加えて、電流測定部42に、各電極421、422、および抵抗体423と信号線424との間の相互誘導を抑制するシールド部材425a、425bを追加しているので、電流測定部42の電流経路と信号線424との間に生ずる相互誘導を効果的に抑制することができる。
【0078】
なお、電流測定部42の電流経路と信号線424との間に生ずる相互誘導の抑制を図るために、第1実施形態の構成に対して、本実施形態で説明した各シールド部材425a、425bを追加するようにしてもよい。
【0079】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、当業者が通常有する知識に基づいて適宜変更することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0080】
(1)上述の各実施形態では、各信号線424a、424bの一部を第2電極422と抵抗体423との間の同一平面において、平行に延びるように近接して配置する例について説明したが、これに限定されない。例えば、各信号線424a、424bの一部を第1電極421と抵抗体423との間の同一平面において、平行に延びるように近接して配置するようにしてもよい。
【0081】
(2)上述の各実施形態では、各信号線424a、424bの一部が、測定板41の板面方向にて平行に近接するように配置する例について説明したが、これに限らず、各信号線424a、424bの全部が、測定板41の板面方向にて平行に近接するように、電流測定部42内部における配線レイアウトを変更してもよい。
【0082】
(3)上述の第3実施形態では、第2電極422と抵抗体423との間に信号線424を配置する例について説明したが、これに限らず、第1電極421と抵抗体423との間に信号線424を配置するようにしてもよい。この場合、第2シールド部材425bを第1電極421と信号線424との間に配置すればよい。
【0083】
(4)上述の第3実施形態の如く、各電極421、422のうち一方の電極と信号線424との間、および抵抗体423と信号線424との間の双方に、シールド部材425a、425bを配置することが望ましいが、いれずれか片方にだけ配置するようにしてもよい。
【0084】
(5)上述の各実施形態では、電流測定装置4として、セル10面内の全体に対応して、複数の電流測定部42を設ける例について説明したが、電流測定部42は少なくとも1つ設けられていればよい。これにより、セル10における電流測定部42に対応する局所部位を流れる局所電流を測定することができる。
【0085】
(6)上述の各実施形態では、電流測定装置4の測定板41を隣り合うセル10間に配置する例について説明した、これに限らず、燃料電池1の積層方向端部に配置してもよい。これによれば、積層方向端部に位置するセル10を流れる電流を測定することができる。
【0086】
(7)上述の各実施形態では、測定板41を複数のプリント基板411〜413を積層した積層基板で構成する例について説明したが、これに限らず、絶縁性を有する基材であれば適宜採用することができる。
【0087】
(8)上述の各実施形態では、車両に搭載された燃料電池1に本発明の電流測定装置4を適用する例について説明したが、これに限らず、例えば、車両以外の移動体(ロボット、船舶、航空機等)に用いられる燃料電池1や、建物(住宅、ビル等)の発電設備として用いられる燃料電池1に適用してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 燃料電池
10 セル
4 電流測定装置
41 測定板(板状部材)
42 電流測定部
421 第1電極
422 第2電極
423 抵抗体
424a 第1信号線
424b 第2信号線
431 電圧検出部(電圧検出手段)
432 電流値算出部(電流値算出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14