(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば1万箇所を超える多数の孔を有する大型の熱交換器や蒸気発生装置の管板のように、多数の箇所を複数のツール装置で検査又は施工する場合には、位置決めと複数の作業を短時間で完了する必要があった。
【0005】
しかし従来の自動作業装置は、検査又は施工するワークと、ツール装置の種類に応じて専用の位置決め装置と専用の制御装置を準備していた。この場合、新たに別のツール装置を使用する場合や、位置決め装置を変更する場合などに、装置全体を新規に再構築する必要があった。
【0006】
また、従来の自動作業装置において、あるツール装置がワークに対してある作業(検査又は施工)をしているときに、位置決め装置が作動すると、ツール装置を破損するおそれがあった。
また、逆に位置決め装置が作動中に、あるツール装置がワークに対して検査位置に移動してもツール装置を破損するおそれがあった。
さらに、あるツール装置の電源を途中で切断したときに、ツール装置が作業位置にあるまま、位置決め装置を作動させてしまい、ツール装置を破損するおそれもあった。
【0007】
そのため、従来の自動作業装置では、ツール装置の種類ごとに、かつ位置決め装置の種類ごとに、種々の組み合わせでインターロックを設定する必要があった。
しかし、複数のツール装置と複数の位置決め装置を用いる場合には、組み合わせが多く、インターロックの設定が複雑となる問題点があった。
また、新たに別のツール装置を使用する場合や、位置決め装置を変更する場合などに、インターロック全体を新規に再構築する必要があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、複数のツール装置と複数の位置決め装置を用いる場合でも、インターロックの設定が容易であり、かつ新たに別のツール装置を使用する場合や、位置決め装置を変更する場合でもインターロック全体の再構築が不要である多点作業装置とその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、作業位置においてワークを検査又は施工する複数のツール装置と、
前記ツール装置を
前記作業位置に位置決めする複数の位置決め装置と、
前記ツール装置及び
前記位置決め装置を制御する制御装置と、
前記制御装置と
前記ツール装置及び
前記位置決め装置とを双方向に通信する通信ネットワークと、を備え、
各ツール装置は、その情報を示す共通のツール信号を出力し、
各位置決め装置は、その情報を示す共通の位置決め信号を出力し、
共通の前記ツール信号は、前記作業位置又は原点位置に位置することを示す位置情報と、作動中又は停止中を示す作動情報とを含んでおり、
共通の前記位置決め信号は、作動中又は停止中を示す作動情報を含んでおり、
前記制御装置により、
共通の前記ツール信号と共通の前記位置決め信号に基づき、前記位置決め装置の作動中は対応する
前記ツール装置が作動せず、かつ
前記ツール装置が作動中又は
前記作業位置に位置するときは対応する
前記位置決め装置が作動しないようにインターロックする、ことを特徴とする多点作業装置の制御方法が提供される。
【0010】
本発明の実施形態によれば、共通の
前記ツール信号は
、前記制御装置との接続を示す接続情報と、検査又は施工の種類を示すツール情報と
を含んでおり、
共通の
前記位置決め信号は、
前記制御装置との接続を示す接続情報と
、前記位置決め装置の種類の情報とを含んでいる。
【0011】
また、制御装置に位置決め装置とそれが対象とするツール装置の組み合わせを予め登録し、制御装置により前記組み合わせをチェックし、
位置決め装置にそれが対象としないツール装置が取り付けられている場合には、制御装置により、その位置決め装置が作動しないようにインターロックする。
【0012】
また、制御装置の作動中に、ツール装置の組み合わせが変更された場合に、そのツール装置が作動しないようにインターロックし、
制御装置の再起動後にツール装置と位置決め装置の組み合わせを設定することにより、前記インターロックを解除してそのツール装置を作動可能にする。
【0013】
また、本発明によれば、作業位置においてワークを検査又は施工する複数のツール装置と、
前記ツール装置を
前記作業位置に位置決めする複数の位置決め装置と、
前記ツール装置及び
前記位置決め装置を制御する制御装置と、
前記制御装置と
前記ツール装置及び
前記位置決め装置とを双方向に通信する通信ネットワークと、を備え、
各ツール装置は、その情報を示す共通のツール信号を出力し、
各位置決め装置は、その情報を示す共通の位置決め信号を出力し、
共通の前記ツール信号は、前記作業位置又は原点位置に位置することを示す位置情報と、作動中又は停止中を示す作動情報とを含んでおり、
共通の前記位置決め信号は、作動中又は停止中を示す作動情報を含んでおり、
前記制御装置により、
共通の前記ツール信号と共通の前記位置決め信号に基づき、前記位置決め装置の作動中は対応する
前記ツール装置が作動せず、かつ
前記ツール装置が作動中又は
前記作業位置に位置するときは対応する
前記位置決め装置が作動しないようにインターロックする、ことを特徴とする多点作業装置が提供される。
【0014】
位置決め装置は、複数のツール装置が取り付けられたヘッドの移動を数値制御する多軸NC制御装置又はロボットである、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記本発明の装置と方法によれば、共通のツール信号、共通の位置決め信号を有しているので、ツール装置の種類、及び位置決め装置の種類が異なっても、制御装置により同一のインターロックをかけることができる。
従って、複数のツール装置と複数の位置決め装置を用いる場合でも、インターロックの設定が容易であり、かつ新たに別のツール装置を使用する場合や、位置決め装置を変更する場合でもインターロック全体の再構築が不要である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明が対象とするワーク1の一例を示す図である。
この図において、ワーク1は、大型の熱交換器又は蒸気発生装置の管板である。この管板は、例えば直径約4mの円板であり、2万箇所を超えるチューブ用の貫通孔2を有する。貫通孔2の直径は、例えば10〜30mmである。
なお、本発明のワーク1は、このような管板に限定されず、10を超える多数の箇所を2以上のツール装置12(後述する)で検査又は施工するものであればよい。
【0019】
この例で管板は、表面が鉛直に位置決めされ、中心Oを原点とする直交2軸(x軸、y軸)が管板の表面に設定されている。また、z軸は管板の表面に直交する軸である。
各貫通孔2には伝熱管(チューブ)が裏面から挿入されている。各貫通孔2のx−y座標は、予め計測され既知であり、各貫通孔2における溶接位置も予め既知であるものとする。
【0020】
この場合、本発明による装置により、多数の貫通孔2に対して、(1)チューブ位置を計測し、(2)チューブを管板に溶接し、(3)溶接部のビード形状を計測し、(4)溶接部の写真を撮る必要がある。
この4工程を仮に30秒で実施できるとすると、2万箇所を実施するには、1万分(約167時間、約6.9日)が必要となる。
従って、各貫通孔2において必要なすべての工程(検査又は施工)をできるだけ短時間に自動でできることが重要となる。
【0021】
図2は、本発明による多点作業装置10の全体構成図であり、
図3は本発明による多点作業装置10のシステム構成図である。
図2、
図3に示すように、本発明の多点作業装置10は、複数のツール装置12、制御装置15、管理装置16、通信ネットワーク18、及び複数の位置決め装置20を備える。
【0022】
複数のツール装置12は、所定の作業位置においてワーク1を検査又は施工する。
複数の位置決め装置20は、ツール装置12を所定の作業位置に位置決めする。
制御装置15は、ツール装置12及び位置決め装置20を制御する。
通信ネットワーク18は、制御装置15とツール装置12及び位置決め装置20とを双方向に通信する。
【0023】
この例で「検査又は施工」とは、例えば、チューブ位置計測、溶接、ビード形状計測、及び写真撮影である。例えば、同一の貫通孔2に対して、(1)チューブ位置の計測、(2)チューブの管板への溶接、(3)溶接部のビード形状の計測、(4)溶接部の写真撮影の4工程を順に実施する。
【0024】
図3において、ツール装置12は、例えば、形状計測ツール12A、溶接ツール12B、及び撮影ツール12Cである。形状計測ツール12A、溶接ツール12B、及び撮影ツール12Cは、位置決め装置20A(後述する)により所定の作業位置に位置決めされる。
【0025】
各ツール装置12は、それぞれのツール本体が貫通孔2の基準位置(例えば中心)に位置決めされたとき、その作業位置においてそれぞれ独立して作動し、それぞれの作業(検査又は施工)を実施し、予め設定された作業データ、解析結果及び終了信号を通信ネットワーク18へ出力する。
【0026】
なお、本発明において、ツール装置12は、上述した例に限定されず、例えば、管孔内径を計測する内径計測ツール12D、溶接部をX線検査するX線検査ツール12E、その他のツール12Fであってもよい。
図3の例において、内径計測ツール12D、X線検査ツール12E、及びその他のツール12Fは、位置決め装置20B(後述する)により所定の作業位置に位置決めされる。
【0027】
図2、
図3において、管理装置16は、例えばコンピュータ(PC)であり、作業順序及び作業位置を含む作業情報Aを出力する。また、管理装置16は、記憶装置を有しており、各ツール装置12から出力された作業データ及び解析結果を通信ネットワーク18及び制御装置15を介して受信し記憶する。
なお、制御装置15を介さず、通信ネットワーク18から直接これらのデータを受信してもよい。
【0028】
制御装置15は、例えばコンピュータ(PC)であり、作業情報Aの作業順序の順に、作業位置を含む指令信号Bを出力する。
【0029】
作業情報Aは、同時に多数のデータ列を制御装置15に出力してもよい。この場合、制御装置15はこの作業情報Aを記憶装置に記憶する。
指令信号Bは、作業情報Aの作業順序の順に、単一のデータ列である指令信号Bを通信ネットワーク18に出力し、各ツール装置12から出力された終了信号を受信するまで待機する。
【0030】
通信ネットワーク18は、例えばLANであり、制御装置15から位置決め装置20及びツール装置12に指令信号Bを通信する。また、双方向の通信が可能であり、各ツール装置12から出力された作業データ、解析結果及び終了信号は、通信ネットワーク18を介して制御装置15及び管理装置16に送信される。
【0031】
位置決め装置20は、指令信号Bの作業位置に指定されたツール装置12を位置決めする。
【0032】
図2において、位置決め装置20Aは、複数のツール装置12を一体に移動するヘッド22を備え、ヘッド22を直交2軸(x軸、y軸)で2次元的にNC制御で移動するようになっている。なお、z軸方向のNC制御を行ってもよい。すなわち、この例で位置決め装置20Aは、複数のツール装置12が取り付けられたヘッド22の移動を数値制御する多軸NC制御装置である。
また、
図3において、位置決め装置20Bは、例えば多関節ロボットや6軸ロボットである。
【0033】
図3において、各ツール装置12は、その情報を示す共通のツール信号Cを出力する。「共通のツール信号」とは、ツール信号の間で共通の信号を意味する。
【0034】
図4は、ツール装置12の作業位置と原点位置を示す図である。
共通のツール信号Cは、
図4の作業位置又は原点位置に位置することを示す位置情報と、制御装置15との接続を示す接続情報と、検査又は施工の種類を示すツール情報と、作動中又は停止中を示す作動情報とを含んでいる。
【0035】
また各位置決め装置20は、その情報を示す共通の位置決め信号Dを出力する。「共通の位置決め信号」とは、位置決め装置20の間で共通の信号を意味する。
共通の位置決め信号Dは、制御装置15との接続を示す接続情報と、作動中又は停止中を示す作動情報と、位置決め装置20の種類の情報とを含んでいる。
【0036】
制御装置15は、位置決め装置20の作動中は対応するツール装置12が作動しないようにインターロックする。
また制御装置15は、ツール装置12が作動中又は作業位置に位置するときは対応する位置決め装置20が作動しないようにインターロックする。
【0037】
さらに、制御装置15に位置決め装置20とそれが対象とするツール装置12の組み合わせを予め登録し、制御装置15により前記組み合わせをチェックする。
すなわち、制御装置15は、位置決め装置20にそれが対象としないツール装置12が取り付けられている場合には、その位置決め装置20が作動しないようにインターロックする。
また、制御装置15は、その作動中に、ツール装置12の組み合わせが変更された場合に、そのツール装置12が作動しないようにインターロックし、制御装置15の再起動後にツール装置12と位置決め装置20の組み合わせを設定することにより、このインターロックを解除してそのツール装置12を作動可能にするようになっている。
【0038】
さらに、ツール装置12、制御装置15、及び複数の位置決め装置20のいずれかの電源がOFF(切断状態)の場合は、非常停止状態として、全て装置が作動しないようにしてもよい。
【0039】
図5は、上述した制御装置15の操作画面の一例を示す図であり、位置決め装置20、ツール装置12の接続状態を確認できる例を示している。
この図において、D1は位置決め装置20を示しており、例えばグループ1は位置決め装置20A、グループ2は位置決め装置20Bを意味する。例えば位置決め装置20Aを接続すると、位置決め装置20Aから位置決め装置20Aの種類の信号が制御装置15へ出力される。
また、D2は、選択されたグループ(例えば、位置決め装置20A)が対象とするツール装置12(例えば、形状計測ツール12A、溶接ツール12B、及び撮影ツール12C)とその接続状態を示している。
さらに、D3は、管理装置16とその準備状態を示している。
【0040】
D1、D2、D3をオペレータが確認し、確認ボタンD4にタッチすることで、制御装置15による制御が開始される。
またこの際、例えば組合せパターンが不一致の場合には、その旨が表示され、組合せの確認が求められる。
【0041】
図5におけるD5は、組合せパターン一覧、異常表示、調整モード、組合せパターン登録のタッチ画面である。これらのボタンにタッチすることで、組合せパターンの確認や登録、異常内容の確認、種々の調整を行うことができる。
【0042】
図2、
図3において、管理装置16は、作業順序及び作業位置を含む作業情報Aを出力し、制御装置15は、作業情報Aの作業順序の順に、作業位置を含む指令信号Bを出力する。
次いで、位置決め装置20は、指令信号Bの作業位置に指定されたツール装置12を位置決めし、ツール装置12は、所定の作業位置においてワーク1を検査又は施工する。
【0043】
上述したツール装置12の位置決めと、ツール装置12によるワーク1の検査又は施工の繰り返しにおいて、例えばあるツール装置12がワーク1に対してある作業(検査又は施工)をしているときに、位置決め装置20が作動すると、ツール装置12を破損するおそれがあった。
【0044】
しかし、上述した本発明の装置と方法によれば、共通のインターフェース、共通のツール信号C、共通の位置決め信号Dを有しているので、ツール装置12の種類、及び位置決め装置20の種類が異なっても、制御装置15により共通のインターフェースで同一のインターロックをかけることができる。
従って、複数のツール装置12と複数の位置決め装置20を用いる場合でも、個別のインターロックを設定する必要がないため、インターロックの設定が容易であり、かつ新たに別のツール装置12を使用する場合や、位置決め装置20を変更する場合でもインターロック全体の再構築が不要である。
【0045】
また、「ツール装置12の電源をOFFして接続を途中で切断したとき、ツール装置12を作業位置にした状態のまま、位置決め装置20を動作させてしまい、装置を破損する。」といった事態を防ぐことができる。
従って、本発明によれば、ハード的なセンサを追加せずに、インターロックを実現できる。
【0046】
また、共通の位置決め信号Dが対象とするツール装置12を含んでいるので、位置決め装置20(20A、20B)が対象とするツール装置12(すなわちその組み合わせ)を限定することができる。すなわち、位置決め装置20にそれが対象としないツール装置12が取り付けられている場合には、制御装置15により、その位置決め装置20が作動しないようにインターロックし、誤った組み合わせによる作動を防止することができる。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。