(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1では、ハンダにより配線同士が短絡してしまうのを防止するために、上述したように、くし歯部の基端部と側端部をカバーレイフィルムで覆う必要があるが、配線が高密度に配列されている場合などには、くし歯部の一部分のみをカバーレイフィルムで覆う工程は煩雑なものとなる。
【0005】
本発明の目的は、配線同士の短絡を防止することができ、且つ、製造が簡単な液体吐出装置及び配線接続構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る液体吐出装置は、複数のノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに対して設けられた、前記液体吐出ヘッドに信号を伝送するための経路を有する基板と、前記基板を外部と接続するための配線部材と、を備え、前記基板は、前記配線部材との接続を行うための複数のランドを備え、前記配線部材は、基材と、前記基材に形成された複数の配線と、を備え、前記基材は、前記複数の配線毎に分離しているとともに、前記複数の配線が露出した露出部と、前記複数の配線の長さ方向において前記露出部に連なっており、前記複数の配線をまとめて被覆する被覆部と、を有し、前記複数のランドは、それぞれ、対応する配線の前記露出部において露出した部分と対向して配置されており、ハンダによって当該配線と接続された第1部分と、前記基材の面方向と平行で、且つ、前記複数の配線の長さ方向と直交する直交方向において、前記第1部分に連なる第2部分と、を備え、前記複数の配線の長さ方向において、前記第1部分と前記被覆部との距離が、前記第2部分と前記被覆部との距離よりも大きくなって
おり、前記複数のランドが、前記直交方向に沿って配列されており、前記直交方向において内側に位置する前記ランドほど、前記配線の長さ方向における前記第1部分の前記被覆部との距離が大きくなっていることを特徴とする。
第2の発明に係る液体吐出装置は、複数のノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに対して設けられた、前記液体吐出ヘッドに信号を伝送するための経路を有する基板と、前記基板を外部と接続するための配線部材と、を備え、前記基板は、前記配線部材との接続を行うための複数のランドを備え、前記配線部材は、基材と、前記基材に形成された複数の配線と、を備え、前記基材は、前記複数の配線毎に分離しているとともに、前記複数の配線が露出した露出部と、前記複数の配線の長さ方向において前記露出部に連なっており、前記複数の配線をまとめて被覆する被覆部と、を有し、前記複数のランドは、それぞれ、対応する配線の前記露出部において露出した部分と対向して配置されており、ハンダによって当該配線と接続された第1部分と、前記基材の面方向と平行で、且つ、前記複数の配線の長さ方向と直交する直交方向において、前記第1部分に連なる第2部分と、を備え、前記複数の配線の長さ方向において、前記第1部分と前記被覆部との距離が、前記第2部分と前記被覆部との距離よりも大きくなっており、前記複数のランドは、前記直交方向に沿って配列されており、前記直交方向において、内側に位置する前記ランドほど、前記第2部分の前記配線との距離が大きくなっていることを特徴とする。
【0007】
第
4の発明に係る配線接構造は、基板と、前記基板を外部と接続するための配線部材と、を備え、前記基板は、前記配線部材との接続を行うための複数のランドを備え、前記配線部材は、前記基板と対向して配置された基材と、前記基材に形成された複数の配線と、を備え、前記基材は、前記複数の配線毎に分離しているとともに、前記複数の配線が露出した露出部と、前記複数の配線の長さ方向において前記露出部に連なっており、前記複数の配線をまとめて被覆する被覆部と、を有し、前記複数のランドは、それぞれ、対応する前記配線の前記露出部において露出した部分と対向して配置されており、ハンダによって当該配線と接続された第1部分と、前記複数の配線の長さ方向と直交する直交方向において、前記第1部分に連なる第2部分と、を備え、前記複数の配線の長さ方向において、前記第1部分と前記被覆部との距離が、前記第2部分と前記被覆部との距離よりも大きくなって
おり、前記複数のランドが、前記直交方向に沿って配列されており、前記直交方向において内側に位置する前記ランドほど、前記配線の長さ方向における前記第1部分の前記被覆部との距離が大きくなっていることを特徴とする。
第5の発明に係る配線接構造は、基板と、前記基板を外部と接続するための配線部材と、を備え、前記基板は、前記配線部材との接続を行うための複数のランドを備え、前記配線部材は、前記基板と対向して配置された基材と、前記基材に形成された複数の配線と、を備え、前記基材は、前記複数の配線毎に分離しているとともに、前記複数の配線が露出した露出部と、前記複数の配線の長さ方向において前記露出部に連なっており、前記複数の配線をまとめて被覆する被覆部と、を有し、前記複数のランドは、それぞれ、対応する前記配線の前記露出部において露出した部分と対向して配置されており、ハンダによって当該配線と接続された第1部分と、前記複数の配線の長さ方向と直交する直交方向において、前記第1部分に連なる第2部分と、を備え、前記複数の配線の長さ方向において、前記第1部分と前記被覆部との距離が、前記第2部分と前記被覆部との距離よりも大きくなっており、前記複数のランドは、前記直交方向に沿って配列されており、前記直交方向において、内側に位置する前記ランドほど、前記第2部分の前記配線との距離が大きくなっていることを特徴とする。
【0008】
基材の露出部に露出した配線と、ランドとをハンダで接合する際に、ハンダの量が多いと、ハンダが配線を伝って被覆部に流れ、さらに、基材の被覆部を伝って隣接する配線まで流れてしまい、配線間がショートしてしまう虞がある。一方で、一般に、ハンダの量の制御は難しい。これに対して、これらの発明では、配線の長さ方向における、ランドの第1部分と被覆部との距離が長いので、ランドから配線にハンダが流れても被覆部に到達しにくい。これにより、配線間のショートを防止することができる。
【0009】
また、ランド全体において、配線の長さ方向における被覆部との距離が長いと、ランドの面積が小さくなってしまい、ランドと配線との接合力が弱くなってしまう。これに対して、これらの発明では、第2部分については、被覆部との距離を短くすることにより、ランドの面積を確保することができ、配線とランドとの接合力の低下を抑えることができる。
【0010】
また、ランドに、配線の長さ方向における被覆部との距離が互いに異なる第1部分と第2部分を設けるだけで、ランドから配線に流れたハンダが被覆部に到達しにくい構造とすることができ、これにより、装置の製造を簡単に行うことができる。
【0014】
基板や配線部材においては、直交方向における内側の部分ほど、接合時の熱が外部に逃げにくく、ハンダがランドから配線に流れて配線間がショートしやすい。これに対して、本発明では、直交方向における内側のランドほど第1部分の被覆部との距離が長くなっているため、ハンダによる配線間のショートを確実に防止することができる。
【0016】
基板や配線部材においては、直交方向における内側の部分ほど、接続時の熱が外部に逃げにくいため、ハンダが、第2部分と配線との間の隙間をまたいで、第2部分から配線に流れてしまいやすい。これに対して、本発明では、直交方向における内側のランドほど、直交方向における第2部分の配線との距離が大きくなっているため、ハンダが、第2部分から配線に流れてしまうのを防止することができる。
【0017】
第
3の発明に係る液体吐出装置は、第
1又は第
2の発明に係る液体吐出装置において、前記複数の配線は、前記基板に向けて前記液体吐出ヘッドを駆動するための駆動信号を伝送する複数の信号配線と、電源に接続された複数の電源配線とを備え、前記信号配線が、前記電源配線よりも、前記直交方向における内側の前記ランドに接続されていることを特徴とする。
【0018】
直交方向における内側のランドほど、第1部分の面積が小さくなるため、配線がランドから剥離しやすい。一方で、配線がランドから剥離した場合、当該配線が信号配線である場合には、ノズルからの液体の吐出検査を行ったときに液体の吐出異常が生じるため、配線がランドから剥離したことを検出することができるのに対して、電源配線である場合には、別の電源配線から電源が供給されるため、配線がランドから剥離していることを検出できない。本発明では、信号配線が電源配線よりも直交方向における内側のランドに接続されているため、吐出検査の結果が正常であるか否かによって、信号配線がランドから剥がれているか否かを判定することができるとともに、吐出検査の結果が正常である場合に、信号配線よりもランドから剥がれにくい電源配線はランドから剥がれていないと推定することができる。
第6の発明に係る液体吐出装置は、複数のノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに対して設けられた、前記液体吐出ヘッドに信号を伝送するための経路を有する基板と、前記基板を外部と接続するための配線部材と、を備え、前記基板は、前記配線部材との接続を行うための複数のランドを備え、前記配線部材は、基材と、前記基材に形成された複数の配線と、を備え、前記基材は、前記複数の配線毎に分離しているとともに、前記複数の配線が露出した露出部と、前記複数の配線の長さ方向において前記露出部に連なっており、前記複数の配線をまとめて被覆する被覆部と、を有し、前記複数のランドは、それぞれ、対応する前記配線の、前記露出部に露出した部分と対向して配置されており、ハンダによって当該配線と接続された第1部分と、前記基材の面方向と平行で、且つ、前記複数の配線の長さ方向と直交する直交方向において、前記第1部分に連なる第2部分と、を備え、前記第1部分の前記直交方向における長さは、前記配線の前記直交方向における長さよりも大きく、前記複数の配線の長さ方向において、前記第1部分と前記被覆部との距離が、前記第2部分と前記被覆部との距離よりも大きくなっていることを特徴とする。
第7の発明に係る配線接続構造は、基板と、前記基板を外部と接続するための配線部材と、を備え、前記基板は、前記配線部材との接続を行うための複数のランドを備え、前記配線部材は、前記基板と対向して配置された基材と、前記基材に形成された複数の配線と、を備え、前記基材は、前記複数の配線毎に分離しているとともに、前記複数の配線が露出した露出部と、前記複数の配線の長さ方向において前記露出部に連なっており、前記複数の配線をまとめて被覆する被覆部と、を有し、前記複数のランドは、それぞれ、対応する前記配線の前記露出部において露出した部分と対向して配置されており、ハンダによって当該配線と接続された第1部分と、前記複数の配線の長さ方向と直交する直交方向において、前記第1部分に連なる第2部分と、を備え、前記第1部分の前記直交方向における長さは、前記配線の前記直交方向における長さよりも大きく、前記複数の配線の長さ方向において、前記第1部分と前記被覆部との距離が、前記第2部分と前記被覆部との距離よりも大きくなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、配線の長さ方向における、ランドの第1部分と被覆部との距離が長いので、ランドから配線にハンダが流れても被覆部に到達しにくい。これにより、配線間のショートを防止することができる。一方で、第2部分については、被覆部との距離を短くすることにより、ランドの面積を確保することができ、配線とランドとの接合力の低下を抑えることができる。また、ランドに、配線の長さ方向における被覆部との距離が互いに異なる第1部分と第2部分を設けるだけで、ランドから配線に流れたハンダが被覆部に到達しにくい構造とすることができ、これにより、装置の製造を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0022】
本実施の形態に係るプリンタ1(液体吐出装置)は、
図1に示すように、キャリッジ2、インクジェットヘッド3(液体吐出ヘッド)、用紙搬送ローラ4などを備えている。キャリッジ2は2本のガイドレール6に沿って走査方向に往復移動する。
【0023】
インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載されており、その下面に形成された複数のノズル10からインクを吐出する。インクジェットヘッド3は、図示しないチューブを介して図示しないインクカートリッジと接続されており、インクカートリッジからインクが供給される。用紙搬送ローラ4は、記録用紙Pを走査方向と直交する搬送方向に搬送する。
【0024】
そして、プリンタ1では、用紙搬送ローラ4により記録用紙Pを搬送方向に搬送させつつ、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド3から記録用紙Pにインクを吐出させることにより、記録用紙Pに印刷を行う。また、印刷が完了した記録用紙Pは、用紙搬送ローラ4により搬送方向に排出される。
【0025】
次に、インクジェットヘッド3、及び、インクジェットヘッド3を駆動するための構成について説明する。インクジェットヘッド3は、
図2に示すように、流路ユニット11と圧電アクチュエータ12とを備えている。流路ユニット11には、複数のノズル10や、複数のノズル10に連通する図示しない複数の圧力室などのインク流路が形成されている。圧電アクチュエータ12は、流路ユニット11の上面に配置されており、図示しない圧力室内のインクに圧力を付与することによって、圧力室に連通するノズル10からインクを吐出させる。なお、流路ユニット11及び圧電アクチュエータ12の構成は、従来と同様であるので、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0026】
圧電アクチュエータ12の上面には、
図2、
図3に示すように、COF(Chip On Film)21が電気的に接続されている。COF21は、圧電アクチュエータ12との接続部分から上方に引き出されており、その上端部が、それぞれ、インクジェットヘッド3の上方に配置されたヘッド基板22の端子部31と電気的に接続されている。また、COF21の途中部分には、圧電アクチュエータ12を駆動するドライバIC13が実装されている。
【0027】
ヘッド基板22は、
図3、
図4に示すように、FFC(Flexible Flat Cable)23(配線部材)を介して、プリンタ1全体の動作を制御する制御装置24(外部)と電気的に接続されている。プリンタ1では、制御装置24から、FFC23を介して、ドライバIC13を制御するための信号が伝送され、ヘッド基板22は、制御装置24から伝送されてきた信号を中継して、COF21を介してドライバIC13に伝送する。そして、ドライバIC13は、このようにして制御装置24から伝送されてきた信号に応じて圧電アクチュエータ12を駆動する。なお、本実施形態では、ヘッド基板22とFFC23とを合わせたものが、本発明に係る配線接続構造に相当する。
【0028】
次に、ヘッド基板22及びFFC23の構成について説明する。
図2〜
図4に示すように、ヘッド基板22の上面には、走査方向左側の端部に、COF21と電気的に接続される上述の端子部31が設けられている。また、ヘッド基板22の上面には、端子部31よりも走査方向右側の部分に、FFC23との電気的接続を行うための複数のランド32が設けられている。複数のランド32は、紙送り方向に配列されている。さらに、ヘッド基板22の上面には、端子部31とランド32とを電気的に接続する複数の配線26が形成されている。
【0029】
FFC23は、合成樹脂などの可撓性を有する材料からなるフィルム状の基材41の内部に、複数の配線42が形成されたものであり、その一端部が、ヘッド基板22の複数のランド32と対向しているとともに、その他端部が、制御装置24と電気的に接続されている。複数の配線42は、ヘッド基板22と対向する部分を含む連続した部分において、それぞれが走査方向に延びているとともに、紙送り方向に配列されている。
【0030】
基材41には、ヘッド基板22側の端部に、下面において複数の配線42が露出した露出部43が設けられている。露出部43には、紙送り方向において隣接する配線42の間に位置する部分に、それぞれ、走査方向を長手方向とする略矩形の貫通孔41aが形成されており、これにより、露出部43は、配線42毎に分離している。そして、FFC23の配線42は、露出部43において露出した部分が、ハンダ50を介してランド32と接続されている。なお、
図4では、図面をわかりやすくするために、本来破線で描くべき配線42を実線で描いている。
【0031】
また、基材41の、制御装置24側において露出部43に連なる部分は、複数の配線42をまとめて被覆する被覆部44となっている。一方、基材41の、露出部43よりもさらに先端側の部分は、配線42毎に分離した露出部43を互いに連結する連結部45となっている。なお、配線42は、連結部45までは延びてない。
【0032】
ここで、ランド32及び配線42についてより詳細に説明する。ランド32は、走査方向を長手方向とする略長方形の平面形状を有しており、紙送り方向における略中央部に位置する第1部分33と、第1部分33の紙送り方向における両側に連なる第2部分34とからなる。第1部分33は、対応する配線42の露出部43において露出した部分と対向している。また、第1部分33には、被覆部44に面する走査方向右側の端部に切り欠き35が形成されている。これにより、走査方向(配線42の長さ方向)において、第1部分33と被覆部44との距離D1〜D4が、第2部分34と被覆部44との距離D0よりも大きくなっている。
【0033】
また、複数のランド32において、紙送り方向(直交方向)の内側に位置するランド32ほど、走査方向における切り欠き35の長さが長くなっている。これにより、紙送り方向の内側に位置するランド32ほど、走査方向における第1部分33と被覆部44との距離が大きくなっている(
図4で、D1<D2<D3<D4となっている)。
【0034】
また、複数のランド32において、紙送り方向の内側に位置するランド32ほど、紙送り方向における切り欠き35の長さが長くなっている。これにより、紙送り方向の内側に位置するランド32ほど、紙送り方向において、第2部分34と配線42との距離が大きくなっている(
図4で、E1<E2<E3<E4となっている)。
【0035】
紙送り方向に配列された複数の配線42のうち、紙送り方向において最も内側に配置された配線42aには、ドライバIC13を駆動するためのクロックが伝送される。また、紙送り方向における配線42aのすぐ外側の配線42bには、複数のノズル10のうちどのノズル10からインクを吐出させるのかを指示するための信号が伝送される。また、紙送り方向における配線42bのすぐ外側の配線42cには、ノズル10からのインクの吐出タイミングを示す信号が伝送される。また、配線42cの紙送り方向におけるすぐ外側に位置する、紙送り方向における最も外側の配線42dは、図示しない電源に接続されており、ドライバIC13に電源を供給するための配線となっている。なお、本実施の形態では、配線42a〜42cを合わせたものが、本発明に係る信号配線に相当し、配線42dが、本発明に係る電源配線に相当する。
【0036】
ここで、本実施の形態では、ランド32の第1部分33と、配線42の露出部43において露出した部分とが、ハンダ50によって接続されている。このとき、例えば、ランド32上にハンダ50を形成しておき、ヘッド基板22の上方にFFC23を配置した状態で、
図4に二点鎖線で示すように、ヒータHを、露出部43と被覆部44の露出部43に連なる部分にまたがるように配置し、ヒータHにより、FFC23を上方から押圧しつつ加熱することにより、ランド32と配線42とをハンダ50によって電気的に接続する。ただし、このとき、ヒータHが連結部45はまたがらないようにする。
【0037】
このとき、一般に、ランド32上に予め形成するハンダ50の量を正確に制御することは困難である。一方で、予め形成されたハンダ50の量が多いと、
図4に矢印Aで示すように、ハンダ50が配線42を伝って被覆部44側に流れる。このとき、本実施の形態とは異なり、仮に、
図5に示すように、ランド32に切り欠き35が形成されていないとすると、走査方向において、ランド32の配線42と対向する部分と、被覆部44との距離が小さく(例えば、距離D0)、矢印Bで示すように、ランド32から配線42に流れ出したハンダ50が被覆部44に到達しやすくなってしまう。そして、ハンダ50が被覆部44に到達してしまうと、ハンダ50は、矢印Cで示すように、さらに基材41の隣接する配線42の間に位置する部分を伝って隣接する配線42まで流れてしまい、その結果、配線42同士がショートしてしまう虞がある。また、FFC23に高密度に配線42が形成され、配線42同士の間隔が小さい場合ほど、このような問題は起こりやすい。
【0038】
これに対して、本実施の形態では、上述したように、ランド32の第1部分33に切り欠き35が形成されており、走査方向において第1部分33と被覆部44との距離が大きくなっているため、ハンダ50が、第1部分33から配線42に流れ出しても、被覆部44には到達しにくい。これにより、ハンダ50による配線42間のショートを防止することができる。
【0039】
また、本実施の形態では、第1部分に切り欠き35を形成して、走査方向において、第1部分33と被覆部44との距離が、第2部分34と被覆部44との距離よりも長いランド32を形成するだけで、ランド32から配線42に流れたハンダ50が被覆部44に到達しにくい構造とすることができる。これにより、装置の製造が簡単になる。
【0040】
ここで、本実施の形態とは異なり、ランド32の全体の、走査方向における長さを短くすることにより、走査方向におけるランド32と被覆部44との距離を大きくすることも考えられる。しかしながら、この場合には、ハンダ50が配置されるランド32の面積が小さくなりすぎ、ハンダ50によるランド32と配線42との接合力が弱くなってしまう虞がある。
【0041】
これに対して、本実施の形態では、ランド32は、配線42と対向する第1部分33においてのみ、走査方向における被覆部44との距離が大きくなっており、第2部分34においては、走査方向における被覆部44との距離が小さくなっているため、ランド32の面積の減少、すなわち、ハンダ50によるランド32と配線42との接合力の低下を極力抑えることができる。
【0042】
また、上述したようにFFC23にヒータHを押し当ててFFC23を加熱した場合には、ヘッド基板22やFFC23において、紙送り方向内側の部分ほどヒータHから加えられた熱が外部に逃げにくい。そのため、紙送り方向における内側のランド32ほど、ハンダ50の温度が高くなり、配線42を伝って被覆部44に流れやすい。
【0043】
これに対して、本実施の形態では、上述したように、紙送り方向における内側のランド32ほど、走査方向における被覆部44との距離が大きくなっているため、ランド32から配線42に流れたハンダ50が、被覆部44に到達してしまうのを確実に防止することができる。
【0044】
また、上述したように、ヒータHによりFFC23を加熱した場合には、紙送り方向における内側のランド32ほど、ハンダ50の温度が高くなる。一方、ハンダ50の温度が高くなった場合には、矢印Fで示すように、ハンダ50が、ランド32から露出部43の第2部分34と配線42との間の隙間をまたいで配線42に流れてしまう虞がある。そして、この場合には、紙送り方向において、第2部分34と被覆部44との距離が、第1部分33と被覆部44との距離よりも小さいため、配線42に流れたハンダ50が、配線42を伝って被覆部44に到達しやすい。
【0045】
これに対して、本実施の形態では、上述したように、紙送り方向における内側のランド32ほど、紙送り方向における第2部分34と配線42との距離が大きくなっているため、ハンダ50が、第2部分34から配線42に流れてしまうのを確実に防止することができる。
【0046】
ここで、インクジェットプリンタ1の製造後においては、通常、動作確認のために、例えば所定のテストパターンを印刷するなどのテスト印刷(吐出検査)が行われる。そして、テスト印刷の結果が異常であれば、信号を伝送するための配線のうち、いずれかがランド32から剥がれている、あるいは、電源を供給するための配線が全てランド32から剥がれていないことがわかる。この場合には、ハンダ50による配線42とランド32との接続をやり直すなどすることになる。
【0047】
一方、テスト印刷の結果が正常であれば、信号を伝送するための配線がランド32から剥がれていないこと、及び、複数の電源を供給するための配線のうち少なくとも1本の配線がランド32から剥がれていないことはわかる。しかしながら、テスト印刷の結果が正常であるとしても、電源を供給するための配線が全てランド32から剥がれていないことまではわからない。すなわち、電源を供給するための複数の配線のうち、一部の配線がランド32から剥がれていても、他の配線から電源が供給されるため、テスト印刷の結果が正常となる。しかしながら、電源を供給するための複数の配線のうち、一部の配線がランド32から剥がれている場合には、インクジェットヘッド3の動作が不安定になる虞がある。
【0048】
これに対して、本実施の形態では、信号を伝送するための配線42a、42b、42cが、電源を供給するための配線42dよりも紙送り方向における内側に配置されている。したがって、テスト印刷の結果が正常な場合には、配線42a、42b、42cが、ランド32から剥がれていないことがわかり、さらに、配線42a、42b、42cよりもランド32から剥がれにくい配線42dもランド32から剥がれてないと推定することができる。したがって、テスト印刷において正常に印刷が行われたか否かによって、いずれかの配線42がランド32から剥がれたか否かを精度よく判定することができる。
【0049】
なお、本実施の形態とは逆に、仮に、電源を供給するための配線が、信号を伝送するための配線よりも紙送り方向における内側に配置されているとすると、電源を供給するための配線が、信号を伝送するための配線よりもランド32から剥がれやすいため、テスト印刷の結果が正常であり、信号を伝送するための配線がランド32から剥がれてないことがわかっても、そのことから、電源を供給するための配線がランド32から剥がれていないことを推定することはできない。
【0050】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては、適宜その説明を省略する。
【0051】
上述の実施の形態では、紙送り方向における内側のランド32ほど、面積が小さくなっているのに対して、紙送り方向における最も外側の配線42dを、電源を供給するための配線として用いるとともに、配線42dよりも紙送り方向の内側に位置する配線42a、42b、42cを、信号を伝送するための配線として用いたが、これには限られない。配線42a〜42dのうち、いずれの配線を、信号を伝送するための配線として用いてもよく、いずれの配線を、電源を供給するための配線として用いてもよい。
【0052】
また、上述の実施の形態では、紙送り方向における内側のランド32ほど、走査方向における第1部分33と被覆部44との距離が大きくなっている(D1<D2<D3<D4となっている)とともに、紙送り方向における第2部分34と配線42との距離が大きくなっていた(E1<E2<E3<E4となっている)が、これには限られない。例えば、全てのランド32において、走査方向における第1部分33の被覆部44との距離が一定であってもよい。また、全てのランド32において、紙送り方向における、第2部分34の配線42との距離が一定であってもよい。
【0053】
また、上述の実施の形態では、ランド32の紙送り方向における略中央部分が配線42と対向していたが、これには限られない。一変形例(変形例1)では、
図6に示すように、ランド62が、紙送り方向における図中略下半分を形成する第1部分63において配線42と対向している。そして、第1部分63の被覆部44に面する一方の端部に切り欠き65が形成されていることにより、走査方向(配線42の長さ方向)における第1部分63と被覆部44との距離D5が、ランド62の
図6における略上半分を形成する第2部分64と被覆部44との距離D6よりも大きくなっている。
【0054】
この場合でも、ハンダ50(
図2参照)がランド62から配線42を伝って被覆部44側に流れたときに、ハンダ50が被覆部44に到達してしまうのを防止することができる。なお、変形例1では、全てのランド62において、走査方向における第1部分63と被覆部44との距離、及び、紙送り方向における第2部分64と配線42との距離をそれぞれ一定としているが、これには限られない。すなわち、上述の実施の形態と同様、紙送り方向における内側のランド62ほど、走査方向における第1部分63の被覆部44との距離が大きくなっていてもよい。また、上述の実施の形態と同様、紙送り方向における内側のランド62ほど、紙送り方向における第2部分64の配線42との距離が大きくなっていてもよい。
【0055】
また、上述の実施の形態では、FFC23が一方の端部においてのみ、ヘッド基板22に接続されていたがこれには限られない。別の一変形例(変形例2)では、
図7、
図8に示すように、FFC23が2つのヘッド基板22a、22bに接続されている。なお、FFC23が2つのヘッド基板22a、22bに接続される場合とは、例えば、キャリッジ2(
図1参照)に、ブラックのインクを吐出するインクジェットヘッドと、カラーのインクを吐出するインクジェットヘッドとが搭載されており、これら2つのインクジェットヘッドに対して個別にヘッド基板22a、22bが設けられる場合などである。
【0056】
FFC23の基材41には、
図7、
図8に示すように、その先端部に、上述の実施の形態と同様の露出部43aが設けられているのに加えて、途中部分にも露出部43bが設けられており、配線42の露出部43a、43bにおいて露出した部分が、それぞれ、ヘッド基板22aに設けられたランド72a、及び、ヘッド基板22bに設けられたランド72bの少なくともいずれか一方と接続されている。具体的には、例えば、配線42のうち、クロックやインクの吐出タイミングを示す信号を伝送するための配線、電源を供給するための配線など、複数のノズル10に対して共通の配線42は、ランド72a、72bの両方に接続され、どのノズル10からインクを吐出させるかを指示する信号を伝送するための配線など、複数のノズル10に対して個別の配線42は、ランド72a、72bのいずれか一方にのみ接続される。また、この場合には、基材41の露出部43aと露出部43bとの間の部分、及び、露出部43bの制御装置24側に連なる部分が、それぞれ、複数の配線42をまとめて被覆する被覆部44a及び被覆部44bとなっている。
【0057】
ランド72aは、上述の実施の形態と同様、紙送り方向における略中央部を形成する第1部分73aにおいて配線42と対向し、第1部分73aの走査方向(配線42の長さ方向)における被覆部44aに面する一端部に切り欠き75aが形成されている。これにより、走査方向における第1部分73aと被覆部44aとの距離D7が、ランド72aの紙送り方向の両端部を形成する第2部分74aと被覆部44aとの距離D8よりも長くなっている。
【0058】
ランド72bは、紙送り方向における略中央部を形成する第1部分73bにおいて配線42と対向し、第1部分72bの、被覆部44a、44bにそれぞれ面する、走査方向における両端部に切り欠き75bが形成されている。これにより、走査方向において、第1部分73bと、被覆部44aとの距離D9が、ランド72bの紙送り方向における両端部を形成する第2部分74bと、被覆部44aとの距離D10よりも長くなっている。また、走査方向において、第1部分72bと被覆部44bとの距離D11が、第2部分74bと、被覆部44bとの距離D12よりも長くなっている。
【0059】
なお、変形例2の場合には、ランド72aと配線42とをハンダ50(
図2参照)によって接続する際に、
図8に示すように、ヒータHを、露出部43aと被覆部44aとにまたがり、且つ、連結部45にはまたがらないように配置する。一方、ランド72bと配線42とをハンダ50(
図2参照)によって接続する際に、ヒータHを、露出部43bと被覆部44a、44bとにまたがるように配置する。
【0060】
この場合でも、ハンダ50(
図2参照)がランド72a、72bから配線42を伝って被覆部44a、44b側に流れたときに、ハンダ50が被覆部44a、44bに到達してしまうのを防止することができる。
【0061】
また、以上の例では、ランドに切り欠きを形成することによって、FFC23の配線42の長さ方向における、第1部分と被覆部との距離を、第2部分と被覆部との距離よりも長くしたが、ランドに切り欠きを形成する以外の構成によって、FFC23の配線42の長さ方向における、第1部分と被覆部との距離を、第2部分と被覆部との距離よりも長くしてもよい。
【0062】
また、以上では、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。インク以外の液体を吐出する液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。さらには、基板に可撓性を有する配線部材が接続された配線接続構造を有する、液体吐出装置以外の装置に本発明を適用することも可能である。