(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電極組立体と、電極端子と、前記電極組立体と前記電極端子の双方と電気的に接続された導電部材とを備え、前記電極端子がケースの壁である端子壁に固定されるとともに、前記導電部材と前記電極組立体とが前記ケース内に収容されてなる蓄電装置であって、
前記電極端子と前記端子壁との間には、シール部材が配置され、
前記シール部材は、受圧部を有し、
前記電極端子は、前記端子壁から突出した突出部を有し、
前記突出部は、その外周面にねじ部と、テーパ部を有する非ねじ部とを有し、
前記ねじ部に螺合される締結部材は、貫通孔の内周面に形成された雌ねじ部と、該雌ねじ部に連続し前記貫通孔を拡径するように形成された第1テーパ部とを有し、
前記締結部材は、前記雌ねじ部が前記ねじ部に螺合され、前記第1テーパ部が前記テーパ部に圧入されて互いに接触した状態とされることで、前記端子壁に位置決めされ、前記締結部材における前記端子壁の外面に対向する対向面が前記受圧部を押圧することを特徴とする蓄電装置。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両には、原動機となる電動機への供給電力を蓄える蓄電装置としてリチウムイオン電池などの二次電池が搭載されている。この種の二次電池は、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1の二次電池は、
図8に示すように、円筒状のケース71内に電極組立体72を捲回させた状態で収容して形成されている。電極組立体72は、正極電極73と負極電極74の間にセパレータ75を介在させて層状に形成されている。そして、正極電極73及び負極電極74からはタブ76がそれぞれ引き出され、同極のタブ76が複数集められて電極端子77に接続されている。尚、
図8では、複数のタブ76のうちで、一部のタブ76と電極端子77とが接続した状態を示しており、その他のタブ76と電極端子77とが接続した状態は図示を省略している。
【0003】
電極端子77は、基部78と基部78から突出して形成された突出部79とを有し、突出部79はその外周面の全体にねじ部を有している。また、電極端子77は、突出部79がケース71の挿通孔80を挿通した状態でケース71に取り付けられている。そして、ケース71の挿通孔80には、ポリプロピレン製の絶縁部材81が取着されている。特許文献1の二次電池では、こうした絶縁部材81が、ケース71と電極端子77との間の絶縁性を保つための部材として機能するほか、ケース71と電極端子77との間のシール性を保つためのシール部材としても機能する。さらに、電極端子77の突出部79には、ケース71の外側からワッシャ82、及び締結部材としての第1ナット83と第2ナット84が螺合されている。そして、第1ナット83を締め付けることにより、電極端子77の基部78とワッシャ82によって絶縁部材81が狭持されて絶縁部材81のシール性が高められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の二次電池では、絶縁部材81が第1ナット83から荷重が加わった状態となっている。そして、特に高温下において、こうした荷重が加わり続けることにより、絶縁部材81に経時的な劣化、いわゆるクリープ現象が生じるおそれがある。絶縁部材81にクリープ現象が生じると、第1ナット83による電極端子77の締結が緩み、ケース71と電極端子77との間のシール性が低下して、ケース71内から電解液が漏れ出るおそれがある。
【0006】
尚、上記では、シール機能と絶縁機能を有する絶縁部材81にクリープ現象が生じることによる問題について記載したが、シール機能を有するシール部材であれば同様の問題が生じるおそれがある。
【0007】
この発明は、上記従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、シール部材にクリープ現象が生じることによるケースと電極端子との間のシール性の低下を抑制できる蓄電装置、及びその蓄電装置が複数並設された蓄電モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、電極組立体と、電極端子と、前記電極組立体と前記電極端子の双方と電気的に接続された導電部材とを備え、前記電極端子がケースの壁である端子壁に固定されるとともに、前記導電部材と前記電極組立体とが前記ケース内に収容されてなる蓄電装置であって、前記電極端子と前記端子壁との間には、シール部材が配置され、前記シール部材は、受圧部を有し、前記電極端子は、前記端子壁から突出した突出部を有し、前記突出部は、その外周面にねじ部と、
テーパ部を有する非ねじ部とを有し、前記ねじ部に
螺合される締結部材
は、貫通孔の内周面に形成された雌ねじ部と、該雌ねじ部に連続し前記貫通孔を拡径するように形成された第1テーパ部とを有し、前記締結部材は、
前記雌ねじ部が前記ねじ部に螺合され、前記第1テーパ部が前記テーパ部に圧入されて互いに接触した状態とされることで、前記端子壁に位置決めされ、前記締結部材における前記端子壁の外面に対向する対向面が前記受圧部を押圧することを特徴とする蓄電装ことをその要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、電極端子が、非ねじ部での圧入によって締結部材と締結しているため、締結部材から加わる荷重によってシール部材にクリープ現象が生じたとしても、締結部材による電極端子の締結が緩みにくい。したがって、シール部材にクリープ現象が生じることによるケースと電極端子との間のシール性の低下を抑制できる。
【0010】
また、電極端子は、非ねじ部での圧入に加えて、ねじ部での螺合によっても締結部材と締結している。仮に、電極端子がねじ部を有しておらず、非ねじ部への圧入のみによって電極端子に締結部材が締結されている場合には、その締結部材の圧入作業を行う際にスプリングバックが生じるため、シール部材と締結部材との間に隙間が生じ、シール部材によって得られるケースと電極端子との間のシール性が低下するおそれがある。上記構成によれば、締結部材の圧入に伴って生じる隙間が、ねじ部での螺合によって締結部材が締結されることによって解消される。したがって、ケースと電極端子との間のシール性の低下を抑制できる。
また、電極端子の非ねじ部への締結部材の圧入が、非ねじ部としてのテーパ部及び締結部材の第1テーパ部に沿った状態で行われるため、圧入作業を容易に行うことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の蓄電装置において、前記シール部材は、絶縁体であることをその要旨とする。
シール部材を、シール機能と併せて絶縁機能を有するものとすることにより、部品点数を削減しつつ、ケースと電極端子との間のシール性の低下を抑制できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の蓄電装置において、
前記雌ねじ部が前記ねじ部に螺合されていない状態において、前記第1テーパ部の拡径度合いは、前記突出部の前記テーパ部の拡径度合いよりも小さく、前記雌ねじ部が前記ねじ部に螺合された状態では、前記締結部材の前記第1テーパ部と前記突出部の前記テーパ部とが同じ拡径度合いをなすことをその要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄電装置において、前記非ねじ部は、第2テーパ部を有し、前記電極端子は、前記突出部の両端部のうち前記ケース内側の端部に設けられる基部を有し、前記基部の面上に前記突出部を取り囲むように設けられるOリングを有し、前記Oリングは、前記基部の前記面と、前記端子壁の内面と、前記第2テーパ部とに接することをその要旨とする。
【0014】
請求項
5に記載の発明は、請求項1〜
4のいずれか1項に記載の蓄電装置において、前記電極端子は、アルミニウムよりなることをその要旨とする。
アルミニウムは、その表面において酸化被膜が形成されやすい。そして、電極端子等、導電経路として機能する部材としてアルミニウムからなる部材を用いる場合は、酸化被膜によって生じる接触抵抗が大きく、導電される電気量が減少するおそれがある。
【0015】
上記構成によれば、電極端子がアルミニウムよりなるものであるが、電極端子の非ねじ部への締結部材の圧入によって、非ねじ部の表面における酸化被膜が破られる。そして、こうして酸化被膜が破られた状態で、電極端子と締結部材とを接触させることができる。したがって、電極端子や締結部材を導電経路として機能させる場合でも、導電される電気量が減少するのを抑制することができる。
【0016】
請求項
6に記載の発明は、請求項1〜
5のいずれか1項に記載の蓄電装置において、前記蓄電装置は二次電池であることをその要旨とする。
請求項
7に記載の発明は、請求項1〜
6のいずれか1項に記載の蓄電装置が複数並設されて構成される蓄電モジュールであって、複数の前記蓄電装置の前記電極端子同士が、前記締結部材に接触する端子接続部材によって電気的に接続されていることをその要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、端子接続部材が締結部材に接触しているため、この締結部材が電極端子から端子接続部材へと導電させるための導電経路として機能する。そして、電極端子の非ねじ部における酸化被膜が破られた面が締結部材との接触面となるため、こうした接触面を介して端子接続部材へと所望の電気量を導電させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シール部材にクリープ現象が生じることによるケースと電極端子との間のシール性の低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態を
図1〜
図7にしたがって説明する。
図1及び
図2に示すように、蓄電装置としての二次電池10において、金属製のケース12には電極組立体20が収容されている。ケース12は、開口部13dを有する直方体状のケース本体13と、ケース本体13の開口部13dを閉塞する矩形平板状の蓋体14とからなる。ケース本体13は、長方形状の底板13aと、底板13aの対向する一対の短側縁から立設された短側壁13bと、底板13aの対向する一対の長側縁から立設された長側壁13cとから形成されている。ケース本体13と蓋体14は、いずれも金属製(例えば、ステンレス製やアルミニウム製)であり、例えば溶接によって接合されている。また、本実施形態の二次電池10は、その外周が角型をなす角型電池である。また、本実施形態の二次電池10は、リチウムイオン電池である。そして、ケース12の内部には、電解液が注入されている。
【0021】
図4に示すように、電極組立体20は、正極電極21と負極電極22と、を備えるとともに、これら正極電極21と負極電極22の間に、これらを絶縁するセパレータ23を介在させて層状の積層構造とされている。正極電極21は、矩形状の正極金属箔(本実施形態ではアルミニウム箔)21aと、その正極金属箔21aの表裏の面に正極活物質が塗布された正極活物質層21bとを有する。負極電極22は、矩形状の負極金属箔(本実施形態では銅箔)22aと、その負極金属箔22aの表裏の面に負極活物質が塗布された負極活物質層22bとを有する。
【0022】
正極電極21の縁部の一部には、正極金属箔21aからなる正極タブ31が突出するように設けられている。正極タブ31は、正極電極21が積層された状態で互いに重なるように、各正極電極21における同位置に同一形状で形成されている。負極電極22の縁部の一部には、負極金属箔22aからなる負極タブ32が突出するように設けられている。負極タブ32は、負極電極22が積層された状態で互いに重なるように、各負極電極22における同位置に同一形状で形成されている。
【0023】
図1に示すように、電極組立体20を構成する各正極電極21は、それぞれの正極タブ31が電極組立体20の積層方向に沿って列状に配置されるように積層される。同様に、電極組立体20を構成する各負極電極22は、それぞれの負極タブ32が積層方向に沿って列状に配置されるように積層される。そして、電極組立体20には、各正極タブ31が、電極組立体20における積層方向の一端から他端までの範囲内で集められて正極タブ群45が設けられている。正極タブ群45は、電極組立体20における積層方向の一端側に曲げられた状態で、電極組立体20と正極端子41の双方と電気的に接続された正極導電部材33と接合されている。この正極導電部材33は、正極タブ群45を構成する正極タブ31のうち、少なくともその曲げ方向の最外に位置する正極タブ31と接合されることにより、正極タブ群45と接合されている。また、電極組立体20には、各負極タブ32が、電極組立体20における積層方向の一端から他端までの範囲内で集められて負極タブ群46が設けられている。負極タブ群46は、電極組立体20における積層方向の一端側に曲げられた状態で、電極組立体20と負極端子42の双方と電気的に接続された負極導電部材37と接合されている。この負極導電部材37は、負極タブ群46を構成する負極タブ32のうち、少なくともその曲げ方向の最外に位置する負極タブ32と接合されることにより、負極タブ群46と接合されている。
【0024】
図1及び
図7に示すように、正極導電部材33及び負極導電部材37は、その表裏の面34a,34bが蓋体14の内面14aに沿って延びる四角板板状をなす接続部34を有する。さらに、正極導電部材33及び負極導電部材37は、接続部34から立ち上がるように延びる立上げ部35と、接続部34から離れる方向に立上げ部35から延びるタブ接合部36とを有する。タブ接合部36の表裏の面36a,36bのうち、面36aが電極組立体20と対向する一方、面36bが蓋体14の内面14aに面している。また、タブ接合部36の面36aが、正極タブ群45や負極タブ群46と接合する接合面として機能する。尚、タブ接合部36の面36aと正極タブ群45や負極タブ群46との接合には、例えば溶接が用いられる。
【0025】
正極導電部材33において、接続部34の面34aには、電極組立体20との間で電気を授受する電極端子としての正極端子41が接合されている。本実施形態の正極端子41は、アルミニウムよりなる。また、負極導電部材37において、接続部34の面34aには、同じく電極端子としての負極端子42が接合されている。本実施形態の負極端子42は、銅よりなる。尚、接続部34の面34aと正極端子41や負極端子42との接合には、例えば溶接が用いられる。
【0026】
図6及び
図7に示すように、正極端子41及び負極端子42は、表裏の面43a,43bと、面43aから面43bにかけて面43a,43bと直交する方向に沿って延びる4つの側面43cとを有する基部43をそれぞれ有する。この基部43の平面形状は、各接続部34の面34aの平面形状とほぼ同じになっている。また、基部43の厚さは、接続部34の面34aからの立上げ部35の高さと同じになっている。但し、基部43の厚さは、これに限定されるものではない。そして、基部43のその厚さ方向の表裏の面43a,43bのうち、面43aが蓋体14の内面14aに対向する一方、面43bが接続部34の面34aと接合されている。また、基部43の面43aは、タブ接合部36の面36bと同一面上に位置している。但し、面43aと面36bとの位置関係はこれに限定されるものではない。
【0027】
正極端子41及び負極端子42は、基部43からケース12の外側に向かって突出する円柱状をなす突出部44をそれぞれ有する。すなわち、正極端子41及び負極端子42は、突出部44が蓋体14から突出するように配置されている。突出部44は、基部43の面43aによって取り囲まれるように、基部43の中央に立設されている。また、突出部44は、その外周面において、突出部44の突出方向側の端部である先端部44fから基部43側の端部である基端部44gまでの領域にねじ部44aと非ねじ部とを有する。
【0028】
具体的には、ねじ部44aは、突出部44の外周面において、突出部44の先端部44fから先端部44fと基端部44gとの中間位置までの領域に形成されている。また、ねじ部44aは、雄ねじ部として機能する。そして、突出部44の外周面における非ねじ部は、2つのテーパ部44b,44dと、このテーパ部44bとテーパ部44dとの間に位置する延設部44cとから構成される。テーパ部44bは、突出部44の外周面において、ねじ部44aの形成端部である突出部44の先端部44fと基端部44gとの中間位置から、基端部44g側に向かって拡径して形成されている。延設部44cは、突出部44の外周面において、テーパ部44bの基端部44g側の形成端部から、基端部44g側に向かって突出部44の突出方向に沿って延びるように形成されている。テーパ部44dは、突出部44の外周面において、延設部44cの基端部44g側の形成端部から、基端部44gにかけて拡径して形成されている。
【0029】
図1に示すように、基部43には、樹脂製の絶縁部材50が装着されている。絶縁部材50は、基部43の面43aと、蓋体14の内面14aとの間に配置される絶縁板51を有する。絶縁板51には、突出部44が挿通される挿通部51aが厚さ方向に貫通して形成されており、絶縁板51の内周縁は円弧状に形成されている。挿通部51aは、絶縁板51の一端縁において、正極導電部材33や負極導電部材37に向けて開口した切れ込み状をなしている。絶縁板51は、挿通部51aが形成されることにより、平面視U字状に形成されている。
【0030】
絶縁部材50は、絶縁板51の端縁のうち、挿通部51aが開口した端縁とは反対側の端縁に、蓋体14から離れる方向に延設された矩形板状の絶縁板52を有する。この絶縁板52の延設長さは、基部43の厚さより長く設定されている。そして、絶縁部材50は、絶縁板52における絶縁板51からの延設方向の先端に、絶縁板51に沿うように延設された矩形板状の絶縁板53を有する。絶縁板51と絶縁板53との間は、基部43の厚さより若干長く設定されている。
【0031】
絶縁部材50は、正極端子41及び負極端子42に対し、ケース本体13の短側壁13b側から装着されている。こうして絶縁部材50が装着されることにより、絶縁部材50の絶縁板51には突出部44が挿通され、絶縁板51が突出部44のほぼ全周を取り囲んだ状態となる。また、絶縁板51は、基部43の面43a上に支持された状態となる。そして、絶縁板51は、基部43の面43aと蓋体14の内面14aとの間に配置されることとなり、また、絶縁板53は、基部43と電極組立体20との間に介装された状態となる。こうして絶縁部材50が配置されることにより、絶縁板51によって蓋体14と正極端子41及び負極端子42とが電気的に絶縁される。また、絶縁板52によって、ケース本体13と正極端子41及び負極端子42とが電気的に絶縁される。そして、絶縁板53によって、電極組立体20と正極端子41及び負極端子42とが電気的に絶縁される。
【0032】
図6に示すように、基部43の面43a上には、Oリング56が突出部44を取り囲むように設けられている。Oリング56は、絶縁部材50の絶縁板51の挿通部51a内に配置されており、この絶縁板51によって突出部44の外周に位置する状態に位置決めされている。
【0033】
図1及び
図3に示すように、絶縁板51の挿通部51aに挿通された突出部44は、蓋体14に所定の間隔をあけて並設された一対の挿通孔14bからケース12の外側に向かって突出している。そして、正極端子41及び負極端子42の基部43は、突出部44の両端部のうち、ケース12内側の端部に設けられている。また、正極端子41及び負極端子42の軸方向に対して直交する方向において、基部43の面43aに沿った断面積は、挿通孔14bの開口面積よりも大きく設定されている。このため、基部43は、ケース本体13の内側で、蓋体14の挿通孔14bから抜け出し不能となっている。
【0034】
図1及び
図7に示すように、蓋体14の挿通孔14bの内周面と、突出部44の外周面との間には、シール部材19が介在されている。シール部材19は、円環状のリング部19aと、このリング部19aの一端縁から蓋体14の外面14cに沿って外方に延設されたフランジ部19bとから形成されている。リング部19aは、挿通孔14bの内周面と、突出部44の外周面における延設部44cとの間に介装されている。フランジ部19bは、蓋体14の外面14cにおいて挿通孔14bの外周に係止されている。こうしてフランジ部19bが蓋体14の外面14cに配置されることにより、シール部材19は蓋体14の外面14cからケース12の外側に向かって、言い換えると突出部44の突出方向に向かって、はみ出した形状をなしている。尚、シール部材19は樹脂製の絶縁体であり、このシール部材19によって、蓋体14の挿通孔14bの内周面と突出部44の外周面における延設部44cとが絶縁されている。
【0035】
突出部44には、その外周面のねじ部44aに螺合されて締結部材55が締結されている。さらに、締結部材55が突出部44のねじ部44aに螺合された状態では、締結部材55が突出部44の外周面における非ねじ部としてのテーパ部44bに圧入された状態となっている。締結部材55は、その中央が貫通しており、その内周面に、ねじ部44aと噛み合い可能な雌ねじ部55cと、テーパ部44bに接触可能なテーパ部55dとが形成されている。具体的には、締結部材55の内周面において、突出部44の先端部44f側の端縁から基端部44g側の端縁までの領域のうち、先端部44f側の端縁から先端部44f側の端縁と基端部44g側の端縁との中間位置までの領域に、雌ねじ部55cが形成されている。また、締結部材55の内周面において、突出部44の先端部44f側の端縁から基端部44g側の端縁までの領域のうち、雌ねじ部55cの形成端部である先端部44f側の端縁と基端部44g側の端縁との中間位置から基端部44g側の端縁までの領域に、テーパ部55dが形成されている。そして、この締結部材55のテーパ部55dは、先端部44f側の端縁と基端部44g側の端縁との中間位置から基端部44g側の端縁にかけて、締結部材55の貫通孔が拡径するように形成されている。尚、締結部材55が突出部44のねじ部44aに螺合されていない状態において、締結部材55のテーパ部55dの拡径度合いは、突出部44のテーパ部44bの拡径度合いよりも小さい。また、締結部材55が突出部44のねじ部44aに螺合された状態では、突出部44のテーパ部44bに圧入されることにより、締結部材55のテーパ部55dと突出部44のテーパ部44bとがほぼ同じ拡径度合いをなしている。そして、締結部材55と突出部44とは、テーパ部55dとテーパ部44bとで互いに接触した状態となっている。こうして締結部材55が突出部44に締結されるとともに圧入されることにより、正極端子41及び負極端子42が、端子壁としての蓋体14に固定される。
【0036】
また、締結部材55が突出部44のねじ部44aに螺合された状態では、突出部44の基端部44g側における締結部材55の面55aと蓋体14の外面14cとの間に、シール部材19のフランジ部19bが介装されている。これにより、フランジ部19bによって、締結部材55と蓋体14が絶縁されている。また、締結部材55が突出部44のねじ部44aに螺合された状態では、締結部材55と基部43とによって、シール部材19のフランジ部19b、蓋体14、及び絶縁部材50の絶縁板51が狭持(狭圧)されるとともに、突出部44が蓋体14に締結されている。換言すると、シール部材19の受圧部としてのフランジ部19bが、締結部材55によって蓋体14側へ押圧されている。こうした状態では、Oリング56は、蓋体14の内面14aと、基部43の面43aとの間で圧縮され、蓋体14の内面14a、基部43の面43a、及び突出部44のテーパ部44dに密接し、挿通孔14bの周囲をシールしている。また、シール部材19のフランジ部19bは、締結部材55の面55aと、蓋体14の外面14cとの間で圧縮されている。こうしてシール部材19が圧縮されることによって、シール部材19のフランジ部19bが締結部材55の面55a及び蓋体14の外面14cに密接するとともに、リング部19aが突出部44の延設部44cに密接する。そして、シール部材19によっても、挿通孔14bの周囲がシールされる。
【0037】
次に、本実施形態の二次電池10の作用を説明する。
正極端子41や負極端子42は、突出部44のテーパ部44bに締結部材55が圧入されている。また、締結部材55が突出部44のねじ部44aに螺合された状態では、シール部材19のフランジ部19bが締結部材55の面55aに密接した状態となっている。このため、締結部材55は、突出部44のテーパ部44bと、シール部材19のフランジ部19bとで位置決めされている。
【0038】
そして、シール部材19は、締結部材55と基部43とで狭持されることによって締結部材55から荷重が加わった状態となっている。こうした締結部材55から加わる荷重によって、シール部材19にクリープ現象が生じると、締結部材55はシール部材19に沈み込み、締結部材55の位置ずれ、すなわち締結部材55の締結の緩みが生じるおそれがある。本実施形態では、シール部材19にクリープ現象が生じても、締結部材55は突出部44のテーパ部44bによって位置決めされた状態のままとなるため、締結部材55の締結が緩みにくい。
【0039】
また、
図5に示すように、二次電池10は、複数個の二次電池10が並設されることで蓄電モジュール60とされる。蓄電モジュール60とされた状態では、各二次電池10は、正極端子41が隣り合う二次電池10の負極端子42に、負極端子42が隣り合う二次電池10の正極端子41にそれぞれ端子接続部材(バスバー)57を介して接続される。
図7に示すように、端子接続部材57は、その厚さ方向に貫通する貫通孔57aに突出部44が挿通されることによって、正極端子41や負極端子42に接続されている。さらに、突出部44には締結部材58が螺合されており、突出部44の基端部44g側における締結部材58の面58aと、突出部44の先端部44f側における締結部材55の面55bとで、端子接続部材57が狭持(狭圧)されて固定されている。そして、端子接続部材57は、締結部材55の面55bに接触している。二次電池10では、正極端子41や負極端子42における突出部44のテーパ部44b、締結部材55、及び端子接続部材57が、互いの接触面を介して導電可能である。すなわち、締結部材55が、正極端子41や負極端子42から端子接続部材57へと導電させるための導電経路として機能する。このように、端子接続部材57によっては、複数の二次電池10の正極端子41や負極端子42が電気的に接続されるようになる。
【0040】
正極端子41の突出部44への締結部材55の締結に際しては、突出部44のねじ部44aへの締結部材55の螺合が進むにつれて、突出部44のテーパ部44bに締結部材55のテーパ部55dが近づくようになる。そして、突出部44のねじ部44aへの締結部材55の螺合がさらに進むと、締結部材55のテーパ部55dが、突出部44のテーパ部44bに接触した状態で、突出部44の基端部44g側に変位するようになる。ここで、正極端子41はアルミニウムよりなるものであるため、その表面において酸化被膜が形成されやすい。こうした、酸化被膜が正極端子41の突出部44のテーパ部44bに形成されていても、上記のように締結部材55のテーパ部55dが、突出部44のテーパ部44bに接触した状態で変位することにより、突出部44のテーパ部44bの表面における酸化被膜が破られる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば以下に示す効果を得ることができる。
(1)正極端子41及び負極端子42が、突出部44のテーパ部44bでの圧入によって締結部材55と締結しているため、締結部材55から加わる荷重によってシール部材19にクリープ現象が生じたとしても、締結部材55による正極端子41及び負極端子42の締結が緩みにくい。したがって、シール部材19にクリープ現象が生じることによるケース12と正極端子41や負極端子42との間のシール性の低下を抑制できる。
【0042】
また、正極端子41及び負極端子42は、突出部44のテーパ部44bでの圧入に加えて、ねじ部44aでの螺合によっても締結部材55と締結している。仮に、正極端子41及び負極端子42がねじ部44aを有しておらず、テーパ部44bへの圧入のみによって正極端子41や負極端子42に締結部材55が締結される場合には、その締結部材55の圧入作業を行う際にスプリングバックが生じるおそれがある。こうしたスプリングバックが生じると、シール部材19と締結部材55との間に隙間が生じ、シール部材19によって得られる蓋体14と締結部材55との間のシール性、すなわち、ケース12と正極端子41や負極端子42との間のシール性が低下するおそれがある。本実施形態によれば、締結部材55の圧入に伴って生じる隙間が、ねじ部44aでの螺合によって締結部材55が締結されることによって解消される。したがって、ケース12と正極端子41や負極端子42との間のシール性の低下を抑制できる。
【0043】
(2)シール部材19を、シール機能と併せて絶縁機能を有するものとすることにより、部品点数を削減しつつ、ケース12と正極端子41や負極端子42との間のシール性の低下を抑制できる。
【0044】
(3)正極端子41及び負極端子42の突出部44において、非ねじ部への締結部材55の圧入が、締結部材55のテーパ部55dが非ねじ部としてのテーパ部44bに沿った状態で行われるため、締結部材55の圧入作業を容易に行うことができる。
【0045】
(4)正極端子41の突出部44のテーパ部44bに酸化被膜が形成されると、その酸化被膜によって生じる接触抵抗が大きく、テーパ部44bを介して導電される電気量が減少するおそれがある。本実施形態によれば、正極端子41の突出部44のテーパ部44bへの締結部材55の圧入によって、テーパ部44bの表面における酸化被膜が破られる。そして、こうして酸化被膜が破られたテーパ部44bの表面を締結部材55との接触面として、正極端子41と締結部材55とを接触させることができる。したがって、本実施形態のように、二次電池10が、複数個並設されて蓄電モジュール60とされる場合であって、正極端子41や締結部材55を導電経路として機能させる場合でも、導電される電気量が減少するのを抑制することができる。
【0046】
尚、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
○ シール部材19をシール機能のみを有するものとしてもよい。この場合では、併せて絶縁機能を有する部材を、正極端子41及び負極端子42と蓋体14との間に設けることが望ましい。
【0047】
○ リング部19aに相当する1つのシール部材と、フランジ部19bに相当する1つのシール部材といった、2つのシール部材をもって蓋体14の挿通孔14bの周りをシールするようにしてもよい。
【0048】
○ シール部材19の形状は、リング部19aとフランジ部19bとからなる形状に限らず、例えばリング部19aのみからなる形状であってもよい。要するに、シール部材19の形状は、蓋体14の外面14cからケース12の外側に向かって、はみ出した形状であればよい。すなわち、シール部材19の形状は、正極端子41や負極端子42の突出部44に締結部材55が締結されることによって、締結部材55から押圧される受圧部を有する形状であればよい。
【0049】
○ 基部43の形状は平面視四角形状に限らず、例えば平面視円形状であってもよい。
○ 正極端子41及び負極端子42は、突出部44のみを有するものであってもよい。こうした正極端子41及び負極端子42でも、突出部44におけるケース12の内側と外側の両端部に締結部材55を締結することで、ケース12に固定することができる。
【0050】
○ 締結部材55が突出部44のねじ部44aに螺合されていない状態において、締結部材55のテーパ部55dの拡径度合いが、突出部44のテーパ部44bの拡径度合いよりも大きくてもよい。また、テーパ部55d及びテーパ部44bのいずれか一方を省略してもよい。例えば、テーパ部55dを省略する場合には、締結部材55の内周面に、雌ねじ部55cの形成端部から外周側に拡径するとともに基端部44g側の端縁にかけて延設する延設部を形成する構造が採用可能である。要するに、締結部材55及び突出部44の少なくとも一方にテーパ部が形成されており、締結部材55及び突出部44の少なくとも一方がこのテーパ部に沿った状態で、突出部44への締結部材55の締結が行われるような構造であればよい。
【0051】
○ 締結部材55のテーパ部55dと、突出部44のテーパ部44bのいずれともを省略することも可能である。この場合では、例えば、締結部材55の内周面において、雌ねじ部55cの形成端部から外周側に拡径するとともに基端部44g側の端縁にかけて延設する延設部を形成する構造が採用可能である。また、突出部44の外周面において、テーパ部44bに代えて、ねじ部44aの形成端部から外周側に拡径するとともに基端部44gにかけて延設する延設部を形成する構造が採用可能である。締結部材55の延設部の内周面と、突出部44の延設部の外周面とが接触可能なものであれば、突出部44の表面における酸化被膜が破られることとなる。
【0052】
○ 正極端子41を、銅等、アルミニウム以外の金属よりなるものとしてもよい。また、負極端子42をアルミニウム等、銅以外の金属よりなるものとしてもよい。尚、負極端子42をアルミニウムよりなるものとする場合は、締結部材55が突出部44の非ねじ部に圧入されることにより、表面の酸化被膜が破られた突出部44の面を締結部材55との接触面として、この接触面を介して導電させることができる点で特に望ましい。
【0053】
○ 正極端子41及び負極端子42のいずれか一方が、ねじ部44aへの螺合と非ねじ部への圧入とで締結部材55が締結されるものとし、正極端子41及び負極端子42のいずれか他方が、ねじ部44aへの螺合のみによって締結部材55が締結されるものとしてもよい。
【0054】
○ 正極端子41や負極端子42と端子接続部材57との接続態様としては、
図7に示した態様に限らず、例えば次のような態様も採用可能である。すなわち、正極端子41や負極端子42の突出部44を、その内部に雌ねじ部が形成されるとともに、その先端部44fから基端部44gまでの突出長さを短くして、先端部44fと締結部材55の面55bとが面一となるものとする。端子接続部材57を、その貫通孔57aが突出部44の雌ねじ部の断面積と同じ大きさの断面積を有するとともに、その貫通孔57aの内周面に雌ねじ部が形成されたものとする。締結部材58を、その中央で突出して形成される雄ねじ部を有するものとする。そして、突出部44の雌ねじ部と端子接続部材57の貫通孔57aとが重なるように、突出部44の先端部44fに端子接続部材57を接触させた状態とする。こうした状態において、締結部材58の雄ねじ部を、端子接続部材57の貫通孔57aの雌ねじ部及び突出部44の雌ねじ部に締結させる。これにより、締結部材58と締結部材55とで端子接続部材57が狭持されて固定されるため、正極端子41や負極端子42と端子接続部材57とが接続される。尚、この場合では、突出部44の先端部44f側にテーパ部44bを有するようにして、テーパ部44bと締結部材55とが接触するように、突出部44に締結部材55を螺合させてもよい。
【0055】
○ 突出部44は、ケース12の外側に向かって突出する構成としたが、ケース12の内側に向かって突出する構成としてもよい。この場合には、ケース12の内側において、突出部44に締結部材55が螺合されるとともに圧入されることにより、正極端子41や負極端子42に締結部材55が締結される。
【0056】
○ 二次電池10を蓄電モジュール60として複数個の二次電池10で接続されるものでなくてもよい。この場合は、二次電池10において、端子接続部材57と締結部材58を省略することが可能である。
【0057】
○ 二次電池10は、リチウムイオン二次電池であったが、これに限らず、他の二次電池であってもよい。要するに、正極活物質層と負極活物質層との間をイオンが移動するとともに電荷の授受を行うものであればよい。
【0058】
○ 本発明を、電気二重層キャパシタ等の蓄電装置に具体化してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
○ シール部材は樹脂製である請求項1に記載の蓄電装置。
【0059】
○ 前記電極端子は、前記突出部の両端部のうち前記ケースの内側の端部に設けられる基部をさらに有し、前記突出部は、前記ケースに形成された挿通孔を通って前記ケースから突出し、前記基部は、前記挿通孔の開口面積よりも大きい断面積を有する請求項1に記載の蓄電装置。