特許第5994578号(P5994578)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱瓦斯化学株式会社の特許一覧

特許5994578アダマンタン構造を有する酸無水物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994578
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】アダマンタン構造を有する酸無水物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/60 20060101AFI20160908BHJP
【FI】
   C07D307/60 ZCSP
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-241521(P2012-241521)
(22)【出願日】2012年11月1日
(65)【公開番号】特開2014-91680(P2014-91680A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小黒 大
【審査官】 谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−111735(JP,A)
【文献】 特開2008−120697(JP,A)
【文献】 特開平01−026626(JP,A)
【文献】 FUKUNISHI,K. et al,Regioselective radical addition of adamantanes to dimethyl maleate,Synthesis,1988年10月,No.10,p.826-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 307/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるアルキルアダマンタンと無水マレイン酸とを原料としラジカル発生剤を用いて下記式(2)で示される酸無水物を製造する方法であって、つぎの条件(a)〜(c)を満たすことを特徴とする酸無水物の製造方法。
(a)該アルキルアダマンタンと無水マレイン酸との反応を無溶媒にて行う、
(b)該反応における反応温度が130℃〜220℃の範囲である、
(c)該反応におけるアルキルアダマンタンと無水マレイン酸との原料仕込み比がモル比で1:1〜20:1の範囲である
【化1】
(式(1)中、Rは、メチル基又はエチル基を示し、nは1〜3の整数である。)
【化2】
(式(2)中、Rは、メチル基又はエチル基を示し、nは1〜3の整数である。)
【請求項2】
前記アルキルアダマンの融点が110℃以下である請求項1記載の酸無水物の製造方法。
【請求項3】
前記式(1)で示されるアルキルアダマンタンが、1−エチルアダマンタン又は1,3−ジメチルアダマンタンである請求項1又は2記載の酸無水物の製造方法。
【請求項4】
前記反応の過程で前記ラジカル発生剤を逐次添加する請求項1〜3のいずれかに記載の酸無水物の製造方法。
【請求項5】
前記反応の過程で前記ラジカル発生剤を前記アルキルアダマンタンで希釈して逐次添加する請求項1〜4のいずれかに記載の酸無水物の製造方法。
【請求項6】
前記反応終了後、薄膜蒸留を行う請求項1〜5のいずれかに記載の酸無水物の製造方法。
【請求項7】
下記式(3)で示される酸無水物。
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダマンタン構造を有する酸無水物の製造方法及び新規な酸無水物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アダマンタン誘導体の樹脂原料化合物としての利用検討が活発に行われている。アダマンタン構造を有する酸無水物の製造方法は、Tabushi らがアダマンタン類と無水マレイン酸によりクロロベンゼン溶媒を用いて、ターシャリーブチルパーオキシドを開始剤として用いることにより、目的生成物を得ているものの、毒性の高いクロロベンゼンを使用しているだけでなく、容積効率が1%程度と非常に悪く工業的な製造方法とはいえない(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
アダマンタン構造を有する酸無水物を製造するために、安全で、かつ経済的な方法への要望があることから、毒性の高い溶媒を使用しないで容積効率の高い工業的な製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Iwao Tabushi et al. Synthesis 1988 10 826.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような状況に鑑み、本発明は、アダマンタン構造を有する酸無水物を効率良く工業的に優位に製造する方法を提供するものである。また、樹脂原料として利用可能な新規アダマンタン誘導体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、特定のアルキルアダマンタンを使用し、かつ特定の条件下で反応を完了させることにより、アダマンタン構造を有する酸無水物を安全に効率良く工業的に優位に製造できることを見出し、本発明を完成するに到った。すなわち、本発明はつぎのとおりである。
1. 下記式(1)で示されるアルキルアダマンタンと無水マレイン酸とを原料としラジカル発生剤を用いて下記式(2)で示される酸無水物を製造する方法であって、つぎの条件(a)〜(c)を満たすことを特徴とする酸無水物の製造方法。
(a)該アルキルアダマンタンと無水マレイン酸との反応を無溶媒にて行う、
(b)該反応における反応温度が130℃〜220℃の範囲である、
(c)該反応におけるアルキルアダマンタンと無水マレイン酸との原料仕込み比がモル比で1:1〜20:1の範囲である
【化1】
(式(1)中、Rは、メチル基又はエチル基を示し、nは1〜3の整数である。)
【化2】
(式(2)中、Rは、メチル基又はエチル基を示し、nは1〜3の整数である。)
2. 前記アルキルアダマンの融点が110℃以下である第1項記載の酸無水物の製造方法。
3. 前記式(1)で示されるアルキルアダマンタンが、1−エチルアダマンタン又は1,3−ジメチルアダマンタンである第1項又は第2項記載の酸無水物の製造方法。
4. 前記反応の過程で前記ラジカル発生剤を逐次添加する第1項〜第3項のいずれかに記載の酸無水物の製造方法。
5. 前記反応の過程で前記ラジカル発生剤を前記アルキルアダマンタンで希釈して逐次添加する第1項〜第4項のいずれかに記載の酸無水物の製造方法。
6. 前記反応終了後、薄膜蒸留を行う第1項〜第5項のいずれかに記載の酸無水物の製造方法。
7. 下記式(3)で示される酸無水物。
【化3】
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法は、安全性かつ経済性に優れ、精製も容易である。本発明の酸無水物は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂原料として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[アダマンタン構造を有する酸無水物の製造方法]
本発明は、上記式(1)で示される特定のアルキルアダマンタンと無水マレイン酸とを原料として、アダマンチル基1個に対して1個のサクシニル基を有する上記式(2)で示されるアルキルアダマンタン誘導体を製造する方法に関する。以下、詳細に説明する。
本発明に用いる原料のアルキルアダマンタンは、下記式(1)で表わされる。
【化4】
(式(1)中、Rは、メチル基又はエチル基を示し、nは1〜3の整数である。)
【0009】
本発明に用いる原料のアルキルアダマンタンは、例えば、1−メチルアダマンタン(融点:100℃)、1−エチルアダマンタン(融点:−60℃)、2−エチルアダマンタン(融点:−24℃)、1,3−ジメチルアダマンタン(融点:−30℃)、1−エチル−2−メチルアダマンタン、1,3,5−トリメチルアダマンタン(融点:−20℃)などが挙げられるが、これらのアルキルアダマンタンには限定されない。無溶媒反応による容積効率の向上の観点からは、融点110℃以下の化合物が好ましく、融点−10℃以下の化合物の使用がより好ましい。特に、1−エチルアダマンタン及び1,3−ジメチルアダマンタンが原料調達性の点で好ましい。1−エチルアダマンタン及び1,3−ジメチルアダマンタンは、ジメチルトリシクロデカン又はアセナフテンを水添後、塩化アルミニウムやゼオライト、又はトリフッ化ホウ素等の超強酸を使用した異性化反応により容易に製造することができる。
【0010】
本発明において、アルキルアダマンタン誘導体を製造するに際し、つぎの条件(a)〜(c)を満たすことが必要である。
(a)該アルキルアダマンタンと無水マレイン酸との反応を無溶媒にて行う、
(b)該反応における反応温度が130℃〜220℃の範囲である、
(c)該反応におけるアルキルアダマンタンと無水マレイン酸との原料仕込み比がモル比で1:1〜20:1の範囲である
以下、順次説明を加える。
【0011】
本発明において、アルキルアダマンタンと無水マレイン酸との反応は無溶媒にて行われる。これにより容積効率の向上と高反応収率及び安定生産の確保が可能となる。
【0012】
本発明における反応温度は130℃〜220℃の範囲である。好ましくは155℃〜200℃の範囲、更に好ましくは155℃〜165℃である。上記範囲内であると、生産効率が高く、かつ高品質の酸無水物が製造できる。
なお、反応圧力については特に制限されないが、通常は絶対圧力で0.01〜2MPaの範囲である。この範囲であれば特別な耐圧の反応装置は必要なく経済的である。好ましくは0.01〜1MPaの範囲、より好ましくは0.09〜0.3MPaの範囲であるが、装置の簡便さから常圧で行うことが望ましい。
【0013】
本発明におけるアルキルアダマンタンと無水マレイン酸との原料仕込み比は、モル比(アルキルアダマンタン:無水マレイン酸)で1:1〜20:1である。好ましくは3:1〜15:1の範囲、より好ましくは5:1〜10:1の範囲である。上記範囲で原料を仕込むことにより、溶媒を用いることなく、かつ高収率で目的生成物を得ることができる。
【0014】
本発明ではラジカル発生剤の存在下で前記反応を行うが、ラジカル発生剤は反応の過程で逐次添加(通常は滴下)することが好ましい。これにより、無溶媒反応においても高い収率で目的物を安定して得ることができる。ラジカル発生剤はそのまま添加(滴下)してもよいが、原料として用いる少量のアルキルアダマンタンで希釈して添加(滴下)することが好ましい。希釈濃度としては好ましくは10〜80質量%の範囲、より好ましくは15〜50質量%の範囲、さらに好ましくは20〜50質量%の範囲である。また、滴下時間は好ましくは10分〜4時間、より好ましくは20分〜4時間、さらに好ましくは30分〜3時間である。滴下時間が4時間を超えると、生産性が悪くなり、かつ目的化合物が着色することがある。
【0015】
本発明に用いるラジカル発生剤としては、特に制限はなく、過酸化物系ラジカル開始剤やアゾ系ラジカル開始剤等一般に使用されているものはいずれも使用することができる。
過酸化物系ラジカル開始剤としては、例えば、tert−ブトキシパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、メチルエチルケトンパーオキシド等が挙げられる。
アゾ系ラジカル開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4’−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4’−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等が挙げられる。
【0016】
製造効率の観点から、ラジカル発生剤は、上記無水マレイン酸に対して、0.05〜20質量%を添加するのが好ましい。より好ましくは、0.1〜10質量%、さらに好ましくは、0.3〜3質量%である。また、必要に応じて、高圧水銀灯やUV(紫外線)ランプで照射してもよい。これにより一層反応が促進される。
【0017】
本発明においては、反応停止剤として金属塩を添加することができる。この場合、ラジカル発生剤に対して0〜1質量%の範囲で使用することが好ましい。より好ましくは0〜0.5質量%の範囲、さらに好ましくは0〜0.1質量%の範囲である。反応停止剤を1%以上添加する際には、着色の原因になることがある。該金属塩として、酢酸鉄(II)、酢酸コバルト、酢酸マンガン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マンガン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
上記のようにして得られるアルキルアダマンタンと無水マレイン酸との反応生成物は精製することが好ましい。本発明においては、反応液を後処理することなく、反応終了後、直ちに蒸留精製することができる。生成物の加熱による変色を抑制するために、薄膜(分子)蒸留工程を取り入れることが好ましい。また、薄膜蒸留工程後に精密蒸留工程を取り入れることが好ましい。
過剰のアルキルアダマンタンは、生成物との沸点差を利用して蒸留回収し、再利用することができる。
【0019】
[アダマンタン構造を有する酸無水物]
本発明の酸無水物は、エチルアダマンチル基にサクシニル基が1個結合した構造を有する下記式(3)で表わされる化合物である。該化合物は低粘度であり、ハンドリング性に優れ、かつ物性と反応性のバランスに優れるため、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂原料として有用である。
【化5】
【実施例】
【0020】
つぎに、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
なお、実施例において得られた生成物は核磁気共鳴スペクトル(H−NMR、JEOL社製、100MHz)により同定した。
【0021】
実施例1
(モノエチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物〔ETAMA〕の製造1)
1−エチルアダマンタン1.6molに対して無水マレイン酸1molの比で仕込み、160℃に保持し、ラジカル発生剤として、ジ−tert−ブチルパーオキシド3質量%(無水マレイン酸基準)を少量の1−エチルアダマンタンに溶解したもの(希釈濃度:20質量%)を1時間かけて滴下した。滴下終了から1時間で反応を終了した。薄膜蒸留後、5段の精密蒸留により対応する目的物を得た。反応終了後のエチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物のGC収率は63mol%(無水マレイン酸基準)であった。
H−NMR(CCl/TMS)δ 0.90(t、3H,CH);1.1−1.7(m,16H);2.0−2.7(m,3H,CH,CH)
【化6】
【0022】
実施例2
(ジメチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物〔DMAMA〕の製造1)
1,3−ジメチルアダマンタン6molに対して無水マレイン酸1molの比で仕込み、160℃に保持し、ラジカル発生剤として、ジ−tert−ブチルパーオキシド1.8質量%(無水マレイン酸基準)を少量の1,3−ジメチルアダマンタンに溶解したもの(希釈濃度:20質量%)を1時間かけて滴下した。滴下終了から1時間で反応を終了した。薄膜蒸留後、5段の精密蒸留により対応する目的物を得た。反応終了後のジメチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物のGC収率は80mol%(無水マレイン酸基準)であった。
H−NMR(CCl/TMS)δ 0.85(s、6H,CH);1.1−1.7(m,13H);2.0−2.7(m,3H,CH,CH)
【化7】
【0023】
実施例3
(モノエチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物〔ETAMA〕の製造2)
1−エチルアダマンタン6molに対して無水マレイン酸1molの比で仕込み、160℃に保持し、ラジカル発生剤として、ジ−tert−ブチルパーオキシド3質量%(無水マレイン酸基準)を少量の1−エチルアダマンタンに溶解したもの(希釈濃度:20質量%)を1時間かけて滴下した。滴下終了から1時間で反応を終了した。薄膜蒸留後、5段の精密蒸留により対応する目的物を得た。反応終了後のエチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物のGC収率は75mol%(無水マレイン酸基準)であった。
【0024】
実施例4
(モノエチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物〔ETAMA〕の製造3)
1−エチルアダマンタン6molに対して無水マレイン酸1molの比で仕込み、130℃に保持し、ラジカル発生剤として、ジ−tert−ブチルパーオキシド3質量%(無水マレイン酸基準)を少量の1−エチルアダマンタンに溶解したもの(希釈濃度:20質量%)を1時間かけて滴下した。滴下終了から1時間で反応を終了した。薄膜蒸留後、5段の精密蒸留により対応する目的物を得た。反応終了後のエチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物のGC収率は50mol%(無水マレイン酸基準)であった。
【0025】
実施例5
(モノエチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物〔ETAMA〕の製造4)
1−エチルアダマンタン10molに対して無水マレイン酸1molの比で仕込み、160℃に保持し、ラジカル発生剤として、ジ−tert−ブチルパーオキシド5.5mmol(0.8質量%(無水マレイン酸基準))を少量の1−エチルアダマンタンに溶解したもの(希釈濃度:20質量%)を3時間かけて滴下した。滴下終了から3時間で反応を終了した。薄膜蒸留後、5段の精密蒸留により対応する目的物を得た。反応終了後のエチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物のGC収率は85mol%(無水マレイン酸基準)であった。
【0026】
実施例6
(モノエチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物〔ETAMA〕の製造5)
1−エチルアダマンタン6molに対して無水マレイン酸1molの比で仕込み、ラジカル発生剤として、ジ−tert−ブチルパーオキシド3質量%(無水マレイン酸基準)を加え、160℃に保持し、2時間で反応を終了した。薄膜蒸留後、5段の精密蒸留により対応する目的物を得た。反応終了後のエチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物のGC収率は50mol%(無水マレイン酸基準)であった。
【0027】
比較例1
(アダマンタン無水マレイン酸1付加物〔ADMA〕の合成1)
アダマンタン1.6molに対して無水マレイン酸1molの比で仕込み、160℃に保持し、ラジカル発生剤として、ジ−tert−ブチルパーオキサイド3質量%(無水マレイン酸基準)を少量のクロロベンゼンに溶解したもの(希釈濃度:20質量%)を1時間かけて滴下した。滴下終了から3時間で反応を終了した。反応終了後のアダマンタン無水マレイン酸1付加物のGC収率は0mol%(無水マレイン酸基準)であった。
【化8】
【0028】
比較例2
(アダマンタン無水マレイン酸1付加物〔ADMA〕の合成2)
アダマンタン6molに対して無水マレイン酸1molの比で仕込み、160℃に保持し、ラジカル発生剤として、ジ−tert−ブチルパーオキサイド10質量%(無水マレイン酸基準)を少量のクロロベンゼンに溶解したもの(希釈濃度:20質量%)を1時間かけて滴下した。滴下終了から3時間で反応を終了した。減圧蒸留により対応する目的物を得た。反応終了後のジメチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物のGC収率は1mol%(無水マレイン酸基準)であった。
【0029】
比較例3
(ジメチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物〔ADMA〕の合成)
1,3−ジメチルアダマンタン0.5molに対して無水マレイン酸0.1molの比で仕込み、クロロベンゼンを10Lで希釈し、160℃に保持し、ラジカル発生剤として、ジ−tert−ブチルパーオキサイド10質量%(無水マレイン酸基準)を少量のクロロベンゼンに溶解したもの(希釈濃度:20質量%)を1時間かけて滴下した。滴下終了から3時間で反応を終了した。減圧蒸留により対応する目的物を得た。反応終了後のジメチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物のGC収率は60mol%(無水マレイン酸基準)であった。しかしながら、容積効率は1%以下であり、工業生産が困難なプロセスであった。
【0030】
比較例4
(モノエチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物〔ETAMA〕の合成)
1−エチルアダマンタン6molに対して無水マレイン酸1molの比で仕込み、120℃に保持し、ラジカル発生剤として、ジ−tert−ブチルパーオキシド3質量%(無水マレイン酸基準)を少量の1−エチルアダマンタンに溶解したもの(希釈濃度:20質量%)を1時間かけて滴下した。滴下終了から1時間で反応を終了した。薄膜蒸留後、5段の精密蒸留により対応する目的物を得た。反応終了後のエチルアダマンタン無水マレイン酸1付加物のGC収率は35mol%(無水マレイン酸基準)であった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の方法はアダマンタン構造を有する酸無水物を安定的に効率良く、工業的に優位に生産する方法を提供することができる。また、本発明のアダマンタン構造を有する酸無水物は樹脂原料として好適に用いることができる。