特許第5994652号(P5994652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994652
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】車両用電源制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20160908BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   B60R16/02 650J
   H02J7/00 P
   H02J7/00 Y
   B60R16/02 645D
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-8637(P2013-8637)
(22)【出願日】2013年1月21日
(65)【公開番号】特開2014-139058(P2014-139058A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三戸 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】上條 賢治
(72)【発明者】
【氏名】吉末 知弘
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−290978(JP,A)
【文献】 特開2010−122790(JP,A)
【文献】 特開2012−224315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電源と該電源に接続される電装部品との電気的接続及び遮断を行うための制御用リレーを制御する車両用電源制御装置であって、
上記制御用リレーは、上記電源のプラス側及びマイナス側をそれぞれ上記電装部品に対して電気的に接続及び遮断するためのプラス側及びマイナス側コンタクタリレーと、上記プラス側コンタクタリレーに並列でかつ抵抗器と直列に接続されたリレーであって、上記電装部品に並列に接続された平滑コンデンサを充電するためのプリチャージリレーとを含み、
上記制御用リレーのON故障及びOFF故障の判定のための故障診断を実行する故障診断実行手段と、
上記制御用リレーのON故障及びOFF故障を、故障発生時の深刻度が大である故障、又は、故障発生時の深刻度が小である故障として、予め故障発生時の深刻度の大小で区別して記憶する深刻度記憶手段とを備え、
上記故障診断実行手段は、上記深刻度記憶手段により、故障発生時の深刻度が大である故障として記憶されている故障については、上記車両の乗員のイグニッションスイッチの操作に伴う、上記電源と電装部品との電気的接続時又は遮断時に故障診断を実行する一方、故障発生時の深刻度が小である故障として記憶されている故障については、上記乗員のイグニッションスイッチの操作時以外の所定の上記電気的接続時又は遮断時に故障診断を実行するように構成され、
更に上記故障診断実行手段は、上記深刻度記憶手段により、故障発生時の深刻度が小である故障として記憶されている故障については、上記車両外の外部電源による上記車両の電源の充電に際しての上記電気的接続時に故障診断を実行するように構成されていることを特徴とする車両用電源制御装置。
【請求項2】
車両に搭載された電源と該電源に接続される電装部品との電気的接続及び遮断を行うための制御用リレーを制御する車両用電源制御装置であって、
上記制御用リレーは、上記電源のプラス側及びマイナス側をそれぞれ上記電装部品に対して電気的に接続及び遮断するためのプラス側及びマイナス側コンタクタリレーと、上記プラス側コンタクタリレーに並列でかつ抵抗器と直列に接続されたリレーであって、上記電装部品に並列に接続された平滑コンデンサを充電するためのプリチャージリレーとを含み、
上記制御用リレーのON故障及びOFF故障の判定のための故障診断を実行する故障診断実行手段と、
上記制御用リレーのON故障及びOFF故障を、故障発生時の深刻度が大である故障、又は、故障発生時の深刻度が小である故障として、予め故障発生時の深刻度の大小で区別して記憶する深刻度記憶手段とを備え、
上記故障診断実行手段は、上記深刻度記憶手段により、故障発生時の深刻度が大である故障として記憶されている故障については、上記車両の乗員のイグニッションスイッチの操作に伴う、上記電源と電装部品との電気的接続時又は遮断時に故障診断を実行する一方、故障発生時の深刻度が小である故障として記憶されている故障については、上記乗員のイグニッションスイッチの操作時以外の所定の上記電気的接続時又は遮断時に故障診断を実行するように構成され、
上記深刻度記憶手段により、故障発生時の深刻度が大である故障として記憶されている故障は、上記プラス側コンタクタリレーのON故障及びOFF故障、上記マイナス側コンタクタリレーのOFF故障並びに上記プリチャージリレーのOFF故障であり、
上記深刻度記憶手段により、故障発生時の深刻度が小である故障として記憶されている故障は、上記マイナス側コンタクタリレーのON故障及び上記プリチャージリレーのON故障であることを特徴とする車両用電源制御装置。
【請求項3】
請求項記載の車両用電源制御装置において、
上記故障診断実行手段は、上記プラス側コンタクタリレーのOFF故障、上記マイナス側コンタクタリレーのOFF故障及び上記プリチャージリレーのOFF故障については、上記乗員のイグニッションスイッチのON操作に伴う上記電気的接続時に故障診断を実行する一方、上記プラス側コンタクタリレーのON故障については、上記乗員のイグニッションスイッチのOFF操作に伴う上記電気的遮断時に故障診断を実行するように構成されていることを特徴とする車両用電源制御装置。
【請求項4】
請求項記載の車両用電源制御装置において、
上記深刻度記憶手段により、故障発生時の深刻度が大である故障として記憶されている故障は、上記プラス側コンタクタリレーのON故障及びOFF故障、上記マイナス側コンタクタリレーのOFF故障並びに上記プリチャージリレーのOFF故障であり、
上記深刻度記憶手段により、故障発生時の深刻度が小である故障として記憶されている故障は、上記マイナス側コンタクタリレーのON故障及び上記プリチャージリレーのON故障であり、
上記故障診断実行手段は、上記マイナス側コンタクタリレーのON故障及び上記プリチャージリレーのON故障についての故障診断を、上記外部電源による上記車両の電源の充電に際しての上記電気的接続時毎に交互に実行するように構成されていることを特徴とする車両用電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された電源と該電源に接続される電装部品との電気的接続及び遮断を行うための制御用リレーを制御する車両用電源制御装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両においては、高電圧の電源が搭載されており、この電源により、インバータを介して走行モータが駆動される。上記電源とインバータとの間には、電源とインバータとの電気的接続及び遮断を行うための制御用リレーが設けられている。この制御用リレーは、例えば特許文献1に示されているように、上記電源のプラス側及びマイナス側をそれぞれインバータに接続するためのプラス側及びマイナス側コンタクタリレーと、上記プラス側コンタクタリレーに並列でかつ抵抗器と直列に接続され、上記インバータに並列に接続された平滑コンデンサを充電するためのプリチャージリレーとを含む。そして、スタータスイッチがONされたときには、電源とインバータとが電気的に接続される。この電気的接続に際しては、上記マイナス側コンタクタリレーがONにされた後、上記プラス側コンタクタリレーがONにされる前に上記プリチャージリレーがONにされ、これにより、上記抵抗器を介して上記平滑コンデンサを充電する(プリチャージする)。すなわち、プリチャージリレーをONにしないで、プラス側及びマイナス側コンタクタリレーをONにして上記平滑コンデンサを充電すると、平滑コンデンサへの突入電流により、ヒューズが溶断したりプラス側及びマイナス側コンタクタリレーの接点が損傷したりする可能性があるが、上記抵抗器を介して上記平滑コンデンサを充電すれば、該抵抗器の抵抗の分だけ電流が制限されて大電流が流れるのを防止することができる。
【0003】
また、上記特許文献1では、平滑コンデンサの電圧値を検知するとともに、プリチャージ中に電源から平滑コンデンサに流れる電流値を検知し、プリチャージにより平滑コンデンサが充電されるべき電圧値と、上記検知された平滑コンデンサの電圧値と、上記検知された電流値の積算値とに基づいて、電源系統の異常を判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−192324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記プラス側及びマイナス側コンタクタリレー並びにプリチャージリレーにおいては、ONになったままでOFFにできないON故障や、OFFになったままでONにできないOFF故障が生じる可能性があるため、制御用リレーの故障診断を実行して故障が生じているか否かを把握する必要がある。
【0006】
上記故障診断の実行タイミングとしては、制御用リレーがON又はOFFされるタイミング、つまり電源と該電源に接続される電装部品との電気的接続時又は遮断時が考えられる。上記電気的接続又は遮断は、通常、車両の乗員のイグニッションスイッチの操作に伴って行われるが、例えば、充電スタンドにおける急速充電器や、家庭における家庭用電源といった車両外の外部電源による上記電源の充電又は該充電の停止の際にも行われる。
【0007】
上記故障診断を、イグニッションスイッチの操作に伴う、電源と電装部品との電気的接続時又は遮断時に実行するようにすれば、故障診断の機会が比較的多くなる点で好ましい。しかし、制御用リレーの故障の中には故障発生時の深刻度が小さい故障もあり、全ての制御用リレーのON故障及びOFF故障について、イグニッションスイッチの操作に伴う電気的接続時又は遮断時に故障診断を実行するのは、無駄である。また、制御用リレーの故障診断は、誤判定を防止する観点から、或る程度の時間を要し、このため、特にイグニッションスイッチのON操作に伴う電気的接続時に多くの制御用リレーの故障診断を実行すると、イグニッションスイッチのON操作後に、車両が走行可能な状態になるまでの時間が長くなってしまい、直ぐに発進することができなくなる。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、制御用リレーの故障診断を、制御用リレーの故障発生時の深刻度に応じて適切なタイミングで実行しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明では、車両に搭載された電源と該電源に接続される電装部品との電気的接続及び遮断を行うための制御用リレーを制御する車両用電源制御装置を対象として、上記制御用リレーは、上記電源のプラス側及びマイナス側をそれぞれ上記電装部品に対して電気的に接続及び遮断するためのプラス側及びマイナス側コンタクタリレーと、上記プラス側コンタクタリレーに並列でかつ抵抗器と直列に接続されたリレーであって、上記電装部品に並列に接続された平滑コンデンサを充電するためのプリチャージリレーとを含み、上記制御用リレーのON故障及びOFF故障の判定のための故障診断を実行する故障診断実行手段と、上記制御用リレーのON故障及びOFF故障を、故障発生時の深刻度が大である故障、又は、故障発生時の深刻度が小である故障として、予め故障発生時の深刻度の大小で区別して記憶する深刻度記憶手段とを備え、上記故障診断実行手段は、上記深刻度記憶手段により、故障発生時の深刻度が大である故障として記憶されている故障については、上記車両の乗員のイグニッションスイッチの操作に伴う、上記電源と電装部品との電気的接続時又は遮断時に故障診断を実行する一方、故障発生時の深刻度が小である故障として記憶されている故障については、上記乗員のイグニッションスイッチの操作時以外の所定の上記電気的接続時又は遮断時に故障診断を実行するように構成され、更に上記故障診断実行手段は、上記深刻度記憶手段により、故障発生時の深刻度が小である故障として記憶されている故障については、上記車両外の外部電源による上記車両の電源の充電に際しての上記電気的接続時に故障診断を実行するように構成されている、という構成とした。
【0010】
上記の構成により、故障発生時の深刻度が大である故障については、車両の乗員のイグニッションスイッチの操作に伴う電気的接続時又は遮断時に故障診断が実行されるので、乗員が車両を使用する毎に故障診断が実行され、これにより、故障があれば直ぐに対処可能であり、故障を放置することによる更に大きな問題が生じるのを防止することができる。一方、故障発生時の深刻度が小である故障については、イグニッションスイッチの操作時以外の所定の電気的接続時又は遮断時に故障診断が実行されるので、故障発生時の深刻度が大である故障に比べて、故障診断の頻度が少なくなる。このように故障診断の頻度が少なくて、故障が放置される可能性があるが、故障がしばらくの間放置されていても、深刻度が小さいので、更に大きな問題が生じる可能性は低い。また、特にイグニッションスイッチのON操作に伴う電気的接続時に行う故障診断に要する時間を出来る限り短縮することができ、イグニッションスイッチのON操作後、直ぐに車両を発進させることができる。
【0011】
また、上記故障診断実行手段は、上記深刻度記憶手段により、故障発生時の深刻度が小である故障として記憶されている故障については、上記車両外の外部電源による上記車両の電源の充電に際しての上記電気的接続時に故障診断を実行するように構成されているこのことで、故障発生時の深刻度が小である故障についての故障診断が実行される頻度は少なくなるものの、車両の電源の充電の際には確実に故障診断を実行することができる。
【0012】
本発明の別の車両用電源制御装置車両に搭載された電源と該電源に接続される電装部品との電気的接続及び遮断を行うための制御用リレーを制御する車両用電源制御装置であって、上記制御用リレーは、上記電源のプラス側及びマイナス側をそれぞれ上記電装部品に対して電気的に接続及び遮断するためのプラス側及びマイナス側コンタクタリレーと、上記プラス側コンタクタリレーに並列でかつ抵抗器と直列に接続されたリレーであって、上記電装部品に並列に接続された平滑コンデンサを充電するためのプリチャージリレーとを含み、上記制御用リレーのON故障及びOFF故障の判定のための故障診断を実行する故障診断実行手段と、上記制御用リレーのON故障及びOFF故障を、故障発生時の深刻度が大である故障、又は、故障発生時の深刻度が小である故障として、予め故障発生時の深刻度の大小で区別して記憶する深刻度記憶手段とを備え、上記故障診断実行手段は、上記深刻度記憶手段により、故障発生時の深刻度が大である故障として記憶されている故障については、上記車両の乗員のイグニッションスイッチの操作に伴う、上記電源と電装部品との電気的接続時又は遮断時に故障診断を実行する一方、故障発生時の深刻度が小である故障として記憶されている故障については、上記乗員のイグニッションスイッチの操作時以外の所定の上記電気的接続時又は遮断時に故障診断を実行するように構成され、上記深刻度記憶手段により、故障発生時の深刻度が大である故障として記憶されている故障は、上記プラス側コンタクタリレーのON故障及びOFF故障、上記マイナス側コンタクタリレーのOFF故障並びに上記プリチャージリレーのOFF故障であり、上記深刻度記憶手段により、故障発生時の深刻度が小である故障として記憶されている故障は、上記マイナス側コンタクタリレーのON故障及び上記プリチャージリレーのON故障である。
【0013】
すなわち、プラス側コンタクタリレーのON故障及びOFF故障、マイナス側コンタクタリレーのOFF故障並びにプリチャージリレーのOFF故障は、ヒューズが溶断したりリレーの接点が損傷したりして、故障発生時に車両が走行不能になりかつ車両の電源の充電が不能になるという、深刻度が大である故障であり、このような故障についての故障診断が、乗員が車両を使用する毎に実行されるので、故障を放置することによる更に大きな問題が生じるのを防止することができる。一方、マイナス側コンタクタリレーのON故障及びプリチャージリレーのON故障は、故障が発生しても、また、その故障がしばらくの間放置されても、大きな問題は生じない。
【0014】
上記制御用リレーのON故障及びOFF故障が、上記のように区別して記憶されている場合、上記故障診断実行手段は、上記プラス側コンタクタリレーのOFF故障、上記マイナス側コンタクタリレーのOFF故障及び上記プリチャージリレーのOFF故障については、上記乗員のイグニッションスイッチのON操作に伴う上記電気的接続時に故障診断を実行する一方、上記プラス側コンタクタリレーのON故障については、上記乗員のイグニッションスイッチのOFF操作に伴う上記電気的遮断時に故障診断を実行するように構成されている、ことが好ましい。
【0015】
このことにより、イグニッションスイッチのON操作に伴う電気的接続時に行う故障診断に要する時間をより一層短縮することができる。
【0016】
上記のように、故障発生時の深刻度が小である故障についての故障診断を車両の電源の充電に際しての電気的接続時に実行する場合、上記深刻度記憶手段により、故障発生時の深刻度が大である故障として記憶されている故障は、上記プラス側コンタクタリレーのON故障及びOFF故障、上記マイナス側コンタクタリレーのOFF故障並びに上記プリチャージリレーのOFF故障であり、上記深刻度記憶手段により、故障発生時の深刻度が小である故障として記憶されている故障は、上記マイナス側コンタクタリレーのON故障及び上記プリチャージリレーのON故障であり、上記故障診断実行手段は、上記マイナス側コンタクタリレーのON故障及び上記プリチャージリレーのON故障についての故障診断を、上記外部電源による上記車両の電源の充電に際しての上記電気的接続時毎に交互に実行するように構成されている、ことが好ましい。
【0017】
このことで、マイナス側コンタクタリレーのON故障及び上記プリチャージリレーのON故障についての故障診断の頻度がかなり少なくなるが、このような少ない頻度であっても問題は生じない。また、マイナス側コンタクタリレーのON故障及び上記プリチャージリレーのON故障についての故障診断を、車両の電源の充電に際しての電気的接続時毎に交互に実行することで、該電気的接続時に該2つの故障診断を実行する場合に比べて、充電をスムーズに開始することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の車両用電源制御装置によると、故障発生時の深刻度が大である故障については、故障診断の頻度を多くして、大きな問題が生じるのを防止することができ、故障発生時の深刻度が小である故障については、故障診断の頻度は少なくなるものの、大きな問題が生じる可能性は低いので、無闇に故障診断を実行するのを防止することができ、特にイグニッションスイッチのON操作に伴う電気的接続時に実行する故障診断を出来る限り制限して、イグニッションスイッチのON操作後に短時間で車両が走行できるようになる。また、故障発生時の深刻度が小である故障については、車両外の外部電源による車両の電源の充電に際しての電気的接続時に故障診断を実行することで、故障発生時の深刻度が小である故障についての故障診断が実行される頻度は少なくなるものの、車両の電源の充電の際には確実に故障診断を実行することができる。
【0019】
また、本発明の別の車両用電源制御装置によると、故障発生時の深刻度が大である故障は、プラス側コンタクタリレーのON故障及びOFF故障、マイナス側コンタクタリレーのOFF故障並びにプリチャージリレーのOFF故障であり、故障発生時の深刻度が小である故障は、マイナス側コンタクタリレーのON故障及びプリチャージリレーのON故障であるとしたことにより、ヒューズが溶断したりリレーの接点が損傷したりして、故障発生時に車両が走行不能になりかつ車両の電源の充電が不能になるという、深刻度が大である故障についての故障診断が、乗員が車両を使用する毎に実行されるので、故障を放置することによる更に大きな問題が生じるのを防止することができる一方、マイナス側コンタクタリレーのON故障及びプリチャージリレーのON故障は、故障が発生しても、また、その故障がしばらくの間放置されても、大きな問題は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る車両用電源制御装置により制御される制御用リレーを含む、車両の走行モータへの電力供給系を示す回路図である。
図2】コントローラの、イグニッションスイッチがONになったとき、電源とインバータとの電気的接続時の動作を示すフローチャートである。
図3】コントローラの、イグニッションスイッチがOFFになったときの、電源とインバータとの電気的遮断時の動作を示すフローチャートである。
図4】コントローラの、普通充電に際しての、電源と普通充電器との電気的接続時の動作を示すフローチャートである。
図5】コントローラの、電源と普通充電器との電気的遮断時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用電源制御装置により制御される制御用リレー1を含む、車両(本実施形態では、電気自動車)の走行モータ2への電力供給系回路を示す。
【0023】
上記走行モータ2は、上記車両に搭載された高電圧の電源3(例えば300V程度のリチウムイオンバッテリ)によって、インバータ5を介して駆動される。この走行用モータ2の駆動力が、不図示のデファレンシャル装置を介して、上記車両の駆動輪としての左右の前輪に伝達され、これにより、上記車両が走行する。
【0024】
上記電源3とインバータ5との間には、電源3とインバータ5(電源3に接続される電装部品)との電気的接続及び遮断を行うための制御用リレー1が設けられている。すなわち、制御用リレー1は、電源3とインバータ5とを電気的接続状態にすることで、電源3の電力をインバータ5(走行モータ2)に対して供給する一方、電源3とインバータ5とを電気的遮断状態にすることで、電源3の電力をインバータ5(走行モータ2)に対し供給不能にする。上記制御用リレー1は、プラス側コンタクタリレー1a、マイナス側コンタクタリレー1b、及び、プリチャージリレー1cを含む。
【0025】
上記プラス側コンタクタリレー1aは、電源3のプラス端子とインバータ5とを接続するプラス側接続線11に配設されていて、電源3のプラス側をインバータ5に対して電気的に接続及び遮断するものである。
【0026】
上記マイナス側コンタクタリレー1bは、電源3のマイナス端子とインバータ5とを接続するマイナス側接続線12に配設されていて、電源3のマイナス側をインバータ5に対して電気的に接続及び遮断するものである。
【0027】
インバータ5には、平滑コンデンサ6が並列に接続されている。すなわち、平滑コンデンサ6のプラス端子がプラス側接続線11に接続され、平滑コンデンサ6のマイナス端子がマイナス側接続線12に接続されている。
【0028】
上記プリチャージリレー1cは、上記プラス側接続線11にプラス側コンタクタリレー1aをバイパスするように接続されたプリチャージ用接続線13に配設されていて、平滑コンデンサ6を充電するためのものである。プリチャージ用接続線13には、抵抗器15がプリチャージリレー1cと直列に配設されている。プリチャージリレー1cは、プラス側コンタクタリレー1aに並列でかつ抵抗器15と直列に接続されていることになる。
【0029】
上記平滑コンデンサ6は、インバータ5のスイッチング動作に伴う脈動を吸収し、電源3の出力電圧を安定化するものであって、制御用リレー1による電源3とインバータ5との電気的接続時に充電される。電源3とインバータ5との電気的接続時に、プラス側及びマイナス側コンタクタリレー1a,1bをいきなりON(閉)にすると、平滑コンデンサ6への突入電流により、不図示のヒューズが溶断したりプラス側及びマイナス側コンタクタリレー1a,1bの接点が損傷したりする可能性がある。そこで、上記プリチャージリレー1cが設けられている。すなわち、電源3とインバータ5との電気的接続に際しては、最初にマイナス側コンタクタリレー1bをONにし、その後、プラス側コンタクタリレー1aがONにされる前にプリチャージリレー1cをONにし、これにより、上記抵抗器15を介して平滑コンデンサ6を充電する(プリチャージする)。このとき、抵抗器15の抵抗の分だけ電流が制限されて大電流が流れるのを防止することができる。この充電後に、プラス側コンタクタリレー1aをONにし、その後にプリチャージリレー1cをOFF(開)にする。
【0030】
上記車両には、車両外の外部電源(本実施形態では、家庭用電源)により該車両の電源3を充電(普通充電)するための普通充電器21が設けられている。この普通充電器21には、プラス側及びマイナス側充電線22,23の一端部が接続されている。プラス側充電線22の他端部は、プラス側接続線11におけるプラス側コンタクタリレー1aのインバータ5側とプリチャージ用接続線13におけるプリチャージリレー1c及び抵抗器15のインバータ5側とに接続されている。また、マイナス側充電線23の他端部は、マイナス側接続線12におけるマイナス側コンタクタリレー1bのインバータ5側に接続されている。すなわち、普通充電器21はインバータ5に並列に接続され、平滑コンデンサ6は、普通充電器21にも並列に接続されていることになる。また、普通充電器21は、図示は省略するが、車両の外観部品(例えばフェンダパネル)に設けられた充電レセプタクルと接続されている。この充電レセプタクルは、一端部が家庭用電源に接続されるコードの他端部が接続されるものである。そして、普通充電器21は、家庭用電源(交流)からの電力を、その電圧が電源3の充電に適した電圧(直流)になるように変換した状態で、電源3に供給する。
【0031】
上記普通充電器21は、インバータ5と同様に、電源3に接続される電装部品に相当する。上記外部電源による電源3の充電に際して、制御用リレー1により、電源3と普通充電器21とが電気的に接続される。このとき、電源3とインバータ5とも電気的に接続されることになるが、インバータ5は停止状態にあり、電源3からインバータ5(走行モータ2)への電力供給はなされないようになっている。また、逆に、イグニションスイッチ32がONであるときには、電源3と普通充電器21とも電気的に接続されることになるが、電源3から普通充電器21への電力供給はなされないようになっている。
【0032】
電源3と普通充電器21との電気的接続に際しては、上記で説明した、電源3とインバータ5との電気的接続時と同様に、マイナス側コンタクタリレー1bをONにした後、プラス側コンタクタリレー1aがONにされる前にプリチャージリレー1cをONにして平滑コンデンサ6を充電し、この充電後に、プラス側コンタクタリレー1aをONにし、その後にプリチャージリレー1cをOFFにする。
【0033】
本実施形態では、車両外の外部電源としての急速充電器により電源を急速充電することも可能であるが、この急速充電を行うための急速充電回路(図示せず)は、制御用リレー1を介さずに電源3と接続されている。尚、上記急速充電回路を、普通充電器21と同様に、制御用リレー1を介して電源3と接続することも可能である。
【0034】
また、上記車両には、制御用リレー1を制御する車両用電源制御装置が設けられている。この車両用電源制御装置は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラ31を有している。このコントローラ31は、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている。
【0035】
上記コントローラ31は、イグニッションスイッチ32からのON/OFF情報、充電開始スイッチ33からのON/OFF情報、及び、不図示のアクセル開度センサや車速センサ等からの、走行モータ2の駆動制御に必要な情報を入力する。上記充電開始スイッチ33は、上記車両の車室内に設けられかつ乗員が上記普通充電を開始する際に操作するスイッチである。
【0036】
また、コントローラ31は、イグニッションスイッチ32がONであるときには、コントローラ31により起動状態とされたインバータ5から、平滑コンデンサ6の充電電圧(平滑コンデンサ6のプラス端子とマイナス端子との間の電圧)の情報を入力し、イグニッションスイッチ32がOFFでかつ充電開始スイッチ33がONであるときには、コントローラ31により起動状態とされた普通充電器21から平滑コンデンサ6の充電電圧の情報を入力する。さらに、コントローラ31は、イグニッションスイッチ32がOFFでかつ充電開始スイッチ33がONであるときに、上記充電レセプタクルに、家庭用電源に接続されたコードが接続されていれば、普通充電器21から、上記接続がなされていることを示す接続信号を入力する。
【0037】
コントローラ31は、イグニッションスイッチ32がOFFからONになったときには、インバータ5を起動状態にするとともに、制御用リレー1を制御して、電源3とインバータ5とを電気的に接続する。このコントローラ31による制御用リレー1の制御により、上記電気的接続に際して制御用リレー1が上記で説明したように動作する。コントローラ31は、上記電気的接続が完了すると、走行モータ2の駆動制御に必要な情報に基づいて、インバータ5を制御して、走行モータ2を駆動制御する。これにより、乗員がアクセルを踏み込めば、車両が走行することになる。
【0038】
また、コントローラ31は、イグニッションスイッチ32がONからOFFになったときには、制御用リレー1を制御して、電源3とインバータ5とを電気的に遮断し、この遮断後にインバータ5を停止状態にする。
【0039】
さらに、コントローラ31は、イグニッションスイッチ32がOFFでかつ充電開始スイッチ33がONであるときには、普通充電器21を起動状態にし、この普通充電器21から、上記接続信号を入力すると、制御用リレー1を制御して、電源3と普通充電器21とを電気的に接続する。このコントローラ31による制御用リレー1の制御により、上記電気的接続に際して制御用リレー1が上記で説明したように動作する。尚、上記普通充電に際して、充電開始スイッチ33をONにすることと、上記充電レセプタクルに上記コードを接続することとは、どちらが先でも後でもよい。また、上記充電レセプタクルに上記コードを接続しておき、充電開始スイッチ33をONにする代わりに、携帯電話等で充電開始時刻の予約設定をしておくと、その予約設定した時刻に充電を開始することもできる。
【0040】
また、コントローラ31は、電源3が満充電になるか、携帯電話等で充電停止指示を受けるか、又は、上記接続信号の入力がなくなると、制御用リレー1を制御して、電源3と普通充電器21とを電気的に遮断し、この遮断後に普通充電器21を停止状態にする。
【0041】
上記コントローラ31には、制御用リレー1(プラス側及びマイナス側コンタクタリレー1a,1b並びにプリチャージリレー1c)のON故障及びOFF故障の判定のための故障診断を実行する故障診断実行部31a(故障診断実行手段)と、制御用リレー1のON故障及びOFF故障を、故障発生時の深刻度が大である故障、又は、故障発生時の深刻度が小である故障として、予め故障発生時の深刻度の大小で区別して記憶する深刻度記憶部31b(深刻度記憶手段)とが設けられている。
【0042】
上記深刻度記憶部31bにより、故障発生時の深刻度が大である故障として記憶されている故障は、プラス側コンタクタリレー1aのON故障及びOFF故障、マイナス側コンタクタリレー1bのOFF故障並びにプリチャージリレー1cのOFF故障であり、深刻度記憶部により、故障発生時の深刻度が小である故障として記憶されている故障は、マイナス側コンタクタリレー1bのON故障及びプリチャージリレー1cのON故障である。
【0043】
プラス側コンタクタリレー1aのON故障の場合、電源3とインバータ5(又は普通充電器21)との電気的接続に際して最初にマイナス側コンタクタリレー1bをONにするが、このときに、既にプラス側コンタクタリレー1aがONになっているため、平滑コンデンサ6への突入電流により、不図示のヒューズが溶断したりプラス側及びマイナス側コンタクタリレー1a,1bの接点が損傷したりする可能性がある。また、車両の走行や電源3への普通充電が不能になる。よって、故障発生時の深刻度は大としている。
【0044】
プラス側コンタクタリレー1aのOFF故障の場合、プラス側接続線11が断線した状態になるため、車両の走行や電源への普通充電が不能になる。よって、故障発生時の深刻度は大としている。
【0045】
マイナス側コンタクタリレー1bのOFF故障の場合、マイナス側接続線12が断線した状態になるため、車両の走行や電源3への普通充電が不能になる。よって、故障発生時の深刻度は大としている。
【0046】
プリチャージリレー1cのOFF故障の場合、平滑コンデンサ6のプリチャージができず、このため、平滑コンデンサ6への突入電流を防止する観点から、プラス側コンタクタリレー1aをONにすることができなくなる。この結果、車両の走行や電源3への普通充電が不能になる。よって、故障発生時の深刻度は大としている。
【0047】
一方、マイナス側コンタクタリレー1bのON故障の場合、平滑コンデンサ6のプリチャージが可能であり、電源3とインバータ5(普通充電器21)との電気的接続及び遮断も可能であるので、大きな問題は生じない。よって、故障発生時の深刻度は小としている。
【0048】
プリチャージリレー1cのON故障の場合、平滑コンデンサ6のプリチャージが可能であり、電源3とインバータ5(普通充電器21)との電気的接続及び遮断も可能であるので、大きな問題は生じない。また、プラス側及びマイナス側コンタクタリレー1a,1bがONであって、電源3の電力をインバータ5(走行モータ2)に供給している際、又は、電源3に対して上記外部電源により普通充電を行っている際に、プリチャージリレー1cがONのままであっても、抵抗器15が設けられているプリチャージ用接続線13には電流が殆ど流れないため、大きな問題はない。但し、電源3とインバータ5(普通充電器21)との電気的遮断時に、抵抗器15が損傷する可能性はあるが、この可能性は低い。よって、故障発生時の深刻度は小としている。
【0049】
上記故障診断実行部31aは、深刻度記憶部31bにより、故障発生時の深刻度が大である故障として記憶されている故障(プラス側コンタクタリレー1aのON故障及びOFF故障、マイナス側コンタクタリレー1bのOFF故障並びにプリチャージリレー1cのOFF故障)については、上記車両の乗員のイグニッションスイッチ32の操作に伴う、電源3と電装部品(インバータ5)との電気的接続時又は遮断時に故障診断を実行する一方、故障発生時の深刻度が小である故障として記憶されている故障(マイナス側コンタクタリレー1bのON故障及びプリチャージリレー1cのON故障)については、上記イグニッションスイッチ32の操作時以外の所定の上記電気的接続時又は遮断時(例えば充電スタンドの急速充電器や家庭における家庭用電源等の外部電源による電源3の充電に際しての上記電気的接続時又は遮断時)に故障診断を実行する。
【0050】
本実施形態では、故障診断実行部31aは、プラス側コンタクタリレー1aのOFF故障、マイナス側コンタクタリレー1bのOFF故障及びプリチャージリレー1cのOFF故障については、上記乗員のイグニッションスイッチ32のON操作に伴う、電源3と電装部品(インバータ5)との電気的接続時に故障診断を実行する一方、プラス側コンタクタリレー1aのON故障については、上記乗員のイグニッションスイッチ32のOFF操作に伴う、電源3と電装部品(インバータ5)との電気的遮断時に故障診断を実行する。また、本実施形態では、故障診断実行部31aは、プラス側コンタクタリレー1aのOFF故障、マイナス側コンタクタリレー1bのOFF故障及びプリチャージリレー1cのOFF故障については、上記乗員のイグニッションスイッチ32のON操作に伴う上記電気的接続時に加えて、上記外部電源による電源3の充電(普通充電)に際しての、電源3と電装部品(普通充電器21)との電気的接続時にも故障診断を実行する。
【0051】
さらに、本実施形態では、故障診断実行部31aは、深刻度記憶部31bにより、故障発生時の深刻度が小である故障として記憶されている故障(マイナス側コンタクタリレーのON故障及びプリチャージリレーのON故障)については、上記外部電源による電源3の充電(普通充電)に際しての上記電気的接続時に故障診断を実行する。
【0052】
さらにまた、故障診断実行部31aは、マイナス側コンタクタリレー1bのON故障及びプリチャージリレー1cのON故障についての故障診断を、上記外部電源による電源3の充電(普通充電)に際しての上記電気的接続時毎に交互に実行する。すなわち、或る回の普通充電時に、マイナス側コンタクタリレー1bのON故障についての故障診断を実行したときには、その次の回の普通充電時には、プリチャージリレー1cのON故障についての故障診断を実行し、さらに次の回の普通充電時には、マイナス側コンタクタリレー1bのON故障についての故障診断を実行し、これを繰り返す。
【0053】
上記故障診断実行部31aは、上記故障診断の実行により、制御用リレー1のON故障又はOFF故障があるか否かを判定する。故障診断実行部31aにより、故障があると判定されたときには、コントローラ31は、異常処理を実行する。すなわち、故障発生時の深刻度の大小に関係なく、故障があったときには、車両のインストルメントパネル等に設けられた警告表示部37に警告信号を出力して警告表示させる。また、故障発生時の深刻度が大である故障がある場合には、全ての制御用リレー1をOFFさせる(故障している制御用リレー1に対しても、OFFさせる信号を出力する)。
【0054】
ここで、上記コントローラ31の、イグニッションスイッチ32がONになったときの、電源3とインバータ5との電気的接続時の動作を、図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0055】
最初のステップS1で、マイナス側コンタクタリレー1aをONさせ(ONさせる信号を出力し)、次のステップS2で、プリチャージリレー1cをONさせる。
【0056】
次のステップS3では、故障診断実行部31aが、インバータ5から入力した、平滑コンデンサ6の充電電圧の情報に基づいて、マイナス側コンタクタリレー1bのOFF故障及びプリチャージリレー1cのOFF故障についての故障診断を実行する。すなわち、マイナス側コンタクタリレー1bのOFF故障及びプリチャージリレー1cのOFF故障がなければ、平滑コンデンサ6の充電電圧が上昇するが、いずれか一方にOFF故障があれば、充電電圧が上昇しないので、この充電電圧から、マイナス側コンタクタリレー1bのOFF故障又はプリチャージリレー1cのOFF故障があることが分かる。そこで、例えば、プリチャージリレー1cをONさせた時点(ONさせる信号を出力した時点)の上記充電電圧に対して、該時点から第1所定時間経過後の上記充電電圧が、予め設定した第1設定電圧以上上昇しないときに、故障があると判定する。上記第1所定時間は、車両の走行開始が早く行えるようにする観点から、誤判定を防止可能でかつ出来る限り短い時間とすればよい。
【0057】
尚、本実施形態では、マイナス側コンタクタリレー1bのOFF故障があってもプリチャージリレー1cのOFF故障があっても、異常処理としては同じであるので、どちらのOFF故障かは区別しない。
【0058】
次のステップS4では、故障診断実行部31aが、マイナス側コンタクタリレー1bのOFF故障及びプリチャージリレー1cのOFF故障がなくて正常であるか否かを判定する。このステップS4の判定がYESであるときには、ステップS5に進む一方、ステップS4の判定がNOであるときには、ステップS9に進む。
【0059】
上記ステップS5では、上記充電電圧が所定電圧になった段階で、プラス側コンタクタリレー1aをONさせ、次のステップS6では、プリチャージリレー1cをOFFさせる。
【0060】
次のステップS7では、故障診断実行部31aが、上記充電電圧の情報に基づいて、プラス側コンタクタリレー1aのOFF故障についての故障診断を実行する。すなわち、プラス側コンタクタリレー1aのOFF故障がなければ、上記充電電圧としては上記所定電圧が維持されるが、プラス側コンタクタリレー1aのOFF故障があると、上記充電電圧は上記所定電圧よりも低くなる。そこで、例えば、プリチャージリレー1cをOFFさせた時点(OFFさせる信号を出力した時点)から第2所定時間経過後の上記充電電圧が、予め設定した第2設定電圧以上から未満に低下したときに、故障があると判定する。上記第2所定時間は、上記第1所定時間と同様に、誤判定を防止可能でかつ出来る限り短い時間とすればよい。
【0061】
次のステップS8では、故障診断実行部31aが、プラス側コンタクタリレー1aのOFF故障がなくて正常であるか否かを判定する。このステップS8の判定がYESであるときには、電源3とインバータ5との電気的接続が正常に完了し、本処理動作を終了する。一方、ステップS8の判定がNOであるときには、ステップS9に進む。
【0062】
上記ステップS4の判定がNOであるとき、及び、ステップS8の判定がNOであるときに進むステップS9では、異常処理を実行し、しかる後に、本処理動作を終了する。
【0063】
続いて、上記コントローラ31の、イグニッションスイッチ32がOFFになったときの、電源3とインバータ5との電気的遮断時の動作を、図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0064】
最初のステップS21で、プラス側コンタクタリレー1aをOFFさせ、次のステップS22で、故障診断実行部31aが、プラス側コンタクタリレー1aのON故障についての故障診断を実行する。すなわち、プラス側コンタクタリレー1aのON故障がなければ、上記充電電圧が低下するが、プラス側コンタクタリレーのON故障があると、上記充電電圧が低下しなくなる。そこで、例えば、プラス側コンタクタリレー1aをOFFさせた時点(OFFさせる信号を出力した時点)から第3所定時間経過後の上記充電電圧が、予め設定した第3設定電圧以上から未満に低下していないときに、故障があると判定する。上記第3所定時間は、誤判定を防止可能でかつ出来る限り短い時間とするのが好ましいが、イグニッションスイッチ32がONになったときの電気的接続時における上記第1及び第2所定時間よりも長い時間に設定してもよい。
【0065】
次のステップS23では、故障診断実行部31aが、プラス側コンタクタリレー1aのON故障がなくて正常であるか否かを判定する。このステップS23の判定がYESであるときには、ステップS24に進んで、マイナス側コンタクタリレー1bをOFFさせ、これにより、電源3とインバータ5との電気的遮断が正常に完了し、本処理動作を終了する。一方、ステップS23の判定がNOであるときには、ステップS25に進んで、異常処理を実行する。
【0066】
次いで、上記コントローラの、普通充電に際しての、電源3と普通充電器21との電気的接続時の動作を、図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0067】
最初のステップS31で、前回の電源3と普通充電器21との電気的接続時に、プリチャージリレー1cのON故障についての故障診断を実行したか否かを判定する。このステップS31の判定がNOであるときには、ステップS32に進む一方、ステップS31の判定がYESであるときには、ステップS36に進む。
【0068】
上記ステップS32では、マイナス側コンタクタリレー1bをONさせ、次のステップS33で、故障診断実行部31aが、普通充電器21から入力した、平滑コンデンサ6の充電電圧の情報に基づいて、プリチャージリレー1cのON故障についての故障診断を実行する。すなわち、イグニッションスイッチ32のOFF操作に伴う、電源3とインバータ5との電気的遮断時に、プラス側コンタクタリレーのON故障がないと判定されていることを前提にして、プリチャージリレー1cのON故障がなければ、上記充電電圧が上昇することはないが、プリチャージリレー1cのON故障があると、上記充電電圧が上昇する。そこで、例えば、マイナス側コンタクタリレー1bをONさせた時点(ONさせる信号を出力した時点)の上記充電電圧に対して、該時点から第4所定時間経過後の上記充電電圧が、予め設定した第4設定電圧以上上昇したときに、故障があると判定する。上記第4所定時間は、誤判定を防止可能でかつ出来る限り短い時間とするのが好ましいが、イグニッションスイッチ32がONになったときの電気的接続時における上記第1及び第2所定時間よりも長い時間に設定してもよい。
【0069】
次のステップS34では、故障診断実行部31aが、プリチャージレー1cのON故障がなくて正常であるか否かを判定する。このステップS34の判定がYESであるときには、ステップS35に進む一方、ステップS34の判定がNOであるときには、ステップS46に進む。上記ステップS35では、プリチャージリレー1cをONさせ、しかる後に、ステップS40に進む。
【0070】
上記ステップS31の判定がYESであるときに進むステップS36では、プリチャージレー1cをONさせ、次のステップS37で、故障診断実行部31aが、普通充電器21から入力した、平滑コンデンサ6の充電電圧の情報に基づいて、マイナス側コンタクタリレー1bのON故障についての故障診断を実行する。すなわち、イグニッションスイッチ32のOFF操作に伴う上記電気的遮断時に、プラス側コンタクタリレー1aのON故障がないと判定されていることを前提にして、マイナス側コンタクタリレー1bのON故障がなければ、上記充電電圧が上昇することはないが、マイナス側コンタクタリレー1bのON故障があると、上記充電電圧が上昇する。そこで、上記プリチャージリレー1cのON故障についての故障診断と同様に、プリチャージレー1cをONさせた時点(ONさせる信号を出力した時点)の上記充電電圧に対して、該時点から上記第4所定時間経過後の上記充電電圧が上記第4設定電圧以上上昇したときに、故障があると判定する。
【0071】
次のステップS38では、故障診断実行部31aが、プリチャージレー1cのON故障がなくて正常であるか否かを判定する。このステップS38の判定がYESであるときには、ステップS39に進む一方、ステップS38の判定がNOであるときには、ステップS46に進む。上記ステップS39では、マイナス側コンタクタリレーをONさせ、しかる後に、ステップS40に進む。
【0072】
上記ステップS35及びS39から続くステップS40〜S45では、図2のステップS3〜S8とそれぞれ同様の動作を実行する。尚、ステップS41の判定がNOであるときには、ステップS46に進む。ステップS45の判定がYESであるときには、電源3と普通充電器21との電気的接続が正常に完了し、本処理動作を終了する。一方、ステップS45の判定がNOであるときには、ステップS46に進む。
【0073】
上記ステップS34の判定がNOであるとき、上記ステップS38の判定がNOであるとき、上記ステップS41の判定がNOであるとき、及び、上記ステップS45の判定がNOであるときに進むステップS46では、異常処理を実行し、しかる後に、本処理動作を終了する。
【0074】
次に、上記コントローラ31の、電源3と普通充電器21との電気的遮断時の動作について、図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0075】
最初のステップS61で、プラス側コンタクタリレー1aをOFFさせ、次のステップS62で、マイナス側コンタクタリレー1bをOFFさせ、しかる後に、本処理動作を終了する。ここでは、図3のフローチャートとは異なり、プラス側コンタクタリレー1aのON故障についての故障診断を実行するようにしてはいないが、ステップS61とS62との間に、図3のフローチャートと同様に、プラス側コンタクタリレー1aのON故障についての故障診断を実行するようにしてもよい。但し、プラス側コンタクタリレー1aのON故障については、当該普通充電の開始前のイグニッションスイッチ32のOFF時に、既に故障診断が実行されており、また、イグニッションスイッチ32がOFFされる毎に故障診断が実行されるので、電源3と普通充電器21との電気的遮断時に故障診断を実行しなくても問題はない。
【0076】
したがって、本実施形態では、故障発生時の深刻度が大である故障(プラス側コンタクタリレー1aのON故障及びOFF故障、マイナス側コンタクタリレー1bのOFF故障並びにプリチャージリレー1cのOFF故障)については、上記車両の乗員のイグニッションスイッチ32の操作に伴う、電源3と電装部品(インバータ5)との電気的接続時又は遮断時に故障診断が実行されるので、乗員が車両を使用する毎に故障診断が実行され、これにより、故障があれば直ぐに対処可能であり、故障を放置することによる更に大きな問題が生じるのを防止することができる。
【0077】
一方、故障発生時の深刻度が小である故障(マイナス側コンタクタリレー1bのON故障及びプリチャージリレー1cのON故障)については、上記外部電源による電源3の充電(普通充電)に際しての、電源3と電装部品(普通充電器21)との電気的接続時に故障診断が実行され、しかも、マイナス側コンタクタリレー1bのON故障及びプリチャージリレー1cのON故障についての故障診断が、上記充電に際しての上記電気的接続時毎に交互に実行されるので、故障発生時の深刻度が大である故障に比べて、故障診断の頻度がかなり少なくなる。このように故障診断の頻度が少なくて、故障が放置される可能性があるが、故障がしばらくの間放置されていても、更に大きな問題が生じる可能性は低い。
【0078】
また、マイナス側コンタクタリレー1bのON故障及びプリチャージリレー1cのON故障についての故障診断を、イグニッションスイッチ32のON操作に伴う上記電気的接続時に実行することも可能であるが、このようにすると、イグニッションスイッチのON操作から、車両が走行可能になるまで(電源3とインバータ5との電気的接続が完了するまで)の時間が長くかかり、乗員に違和感を生じさせることになる。しかし、本実施形態では、イグニッションスイッチ32のON操作に伴う電気的接続時に実行する故障診断を出来る限り制限しているので、イグニッションスイッチ32のON操作後に短時間で車両が走行できるようになる。
【0079】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0080】
例えば、上記実施形態では、故障発生時の深刻度が小である故障(マイナス側コンタクタリレー1bのON故障及びプリチャージリレー1cのON故障)についての故障診断を、普通充電に際しての、電源3と電装部品(普通充電器21)との電気的接続時に実行するようにしたが、急速充電回路を制御用リレー1を介して電源3と接続する構成にしておき、急速充電に際しての、電源3と電装部品(急速充電回路)との電気的接続時に実行するようにしてもよい。また、故障発生時の深刻度が小である故障についての故障診断は、乗員のイグニッションスイッチ32の操作時以外の所定の、電源3と電装部品との電気的接続時又は遮断時に実行すればよい。
【0081】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、車両に搭載された電源と該電源に接続される電装部品との電気的接続及び遮断を行うための制御用リレーを制御する車両用電源制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0083】
1 制御用リレー
1a プラス側コンタクタリレー
1b マイナス側コンタクタリレー
1c プリチャージリレー
3 電源
5 インバータ(電装部品)
6 平滑コンデンサ
15 抵抗器
21 普通充電器(電装部品)
31 コントローラ(車両用電源制御装置)
31a 故障診断実行部(故障診断実行手段)
31b 深刻度記憶部(深刻度記憶手段)
図1
図2
図3
図4
図5