特許第5994670号(P5994670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994670
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】蓄電装置及び蓄電装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/36 20060101AFI20160908BHJP
   H01M 2/04 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   H01M2/36 101D
   H01M2/04 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-27864(P2013-27864)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2014-157723(P2014-157723A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】奥田 元章
(72)【発明者】
【氏名】西原 寛恭
(72)【発明者】
【氏名】井上 拓
【審査官】 佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−076865(JP,A)
【文献】 特開2010−080105(JP,A)
【文献】 特開2009−048968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/36
H01M 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に電極組立体及び電解液が収容され、
前記ケースの壁部に前記電解液の注液孔を有するとともに、前記注液孔の封止部材を有する蓄電装置であって、
前記注液孔はねじ孔であり、
前記封止部材は、有底筒状の胴部を備えるとともに、前記胴部の軸方向一端にフランジを備え、
前記封止部材は、底部が前記ケース内に位置するとともに、前記フランジが前記壁部より外側に位置しており、
前記封止部材は、前記胴部の外周面に前記注液孔に螺合した雄ねじを有するとともに、前記胴部において、前記ケース内に位置する部分に前記胴部を内側から拡径させたかしめ部を有し、前記フランジと前記かしめ部とで前記壁部に締結されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記フランジと、前記壁部の外壁面における前記注液孔の周囲との間に挟持されるシール部材を有する請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記蓄電装置は二次電池である請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
ケース内に電極組立体及び電解液が収容され、
前記ケースに前記電解液の注液孔を有するとともに、前記注液孔の封止部材を有する蓄電装置の製造方法であって、
前記注液孔はねじ孔であり、前記封止部材は、有底筒状の胴部を備えるとともに、前記胴部の軸方向一端にフランジを備え、前記胴部の外周面に前記注液孔に螺合可能な雄ねじを有しており、
前記注液孔から前記ケース内に前記電解液を注入する工程と、
前記電解液の注入後に、前記注液孔に前記封止部材の前記雄ねじを螺合して前記注液孔を仮封止する工程と、
前記封止部材を前記注液孔から螺退させて前記ケース内からガスを放出させる工程と、
前記ガスを放出させた後、前記注液孔に前記雄ねじを螺合するとともに、前記胴部において前記ケース内に位置する部分を、前記注液孔より大径となるまで内側から拡径させてかしめ部を形成して前記注液孔を本封止する工程と、を有することを特徴とする蓄電装置の製造方法。
【請求項5】
軸方向一端側に大径部を有するとともに、他端側に棒状の操作部を有するマンドレルが前記胴部内に予め挿入され、前記ケース内に位置する前記胴部は、前記大径部を収容した収容部を有するとともに、前記収容部よりも縮径された部位を有し、前記操作部を引っ張ることで、前記大径部が前記縮径された部位を内側から拡径して前記かしめ部を形成する請求項4に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項6】
前記マンドレルには脆弱部が形成されている請求項5に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項7】
前記大径部の硬度が前記胴部の硬度より大きい請求項5又は請求項6に記載の蓄電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に電極組立体及び電解液が収容され、ケースに電解液の注液孔を有するとともに、注液孔の封止部材を有する蓄電装置及び該蓄電装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池やキャパシタのような蓄電装置は再充電が可能であり、繰り返し使用することができるため電源として広く利用されている。一般に、容量の大きな二次電池(蓄電装置)はケースを備え、そのケース内に電極組立体及び電解液が収容されている。二次電池の組立は、ケースの本体部材内に電極組立体を収容した後、ケースの蓋部材を本体部材に溶接し、本体部材を閉塞する。その後、蓋部材の注液孔から電解液をケース内に注入した後、注液孔を封止する。
【0003】
注液孔の封止構造として、例えば特許文献1が挙げられる。図9に示すように、リチウムイオン電池80は、電池缶(図示せず)と電池蓋81で構成される電池容器を備える。電池容器の内部には電極群及び非水電解液が収容されている。電池蓋81は、非水電解液の注液口82を備えるとともに、注液口82を密閉する安全弁83を備える。安全弁83は、弁体85とスリーブ86とで構成されている。
【0004】
注液口82を封止する前の弁体85は、筒状部材87と芯金88を有している。筒状部材87は鍔部87aを有する金属製の有底円筒状である。芯金88は、一側端部(先端部)に拡径された大径部88aを有し、その近傍に脆弱部88bを有する。
【0005】
そして、安全弁83によって注液口82を封止するには、まず、注液口82から非水電解液を電池容器に注入した後、注液口82にスリーブ86と弁体85を挿入する。次に、筒状部材87の鍔部87aを治具(図示せず)により電池蓋81側に押圧する。この状態で芯金88の他側端部(露出した部分)をグリッパ(図示せず)で挟んで引き抜くと、芯金88より硬度の小さい筒状部材87は、芯金88の大径部88aが上方に移動するのに合わせて内径及び外径が拡径される。
【0006】
このとき、スリーブ86の円筒部86aが圧縮されて筒状部材87と電池蓋81とが密着し、安全弁83が形成されるとともに、安全弁83によって注液口82が封止される。その後、脆弱部88bを破断して、大径部88aを筒状部材87内に残したままその他の部分を分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−15867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、非水電解液が電池容器に注入されると、非水電解液と電極群の活物質との反応によってガスが発生する場合がある。電池容器ではガスによって内圧が上昇し、電池容器が膨張してしまう虞があるため、電池容器からガスを抜く必要があるが、特許文献1においては、安全弁83を注液口82から抜き取ることができず、ガス抜きができない。
【0009】
本発明は、注液孔からのガス抜きを可能にしつつ、ガス抜き後は注液孔を封止することができる蓄電装置及び蓄電装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の蓄電装置は、ケース内に電極組立体及び電解液が収容され、前記ケースの壁部に前記電解液の注液孔を有するとともに、前記注液孔の封止部材を有する蓄電装置であって、前記注液孔はねじ孔であり、前記封止部材は、有底筒状の胴部を備えるとともに、前記胴部の軸方向一端にフランジを備え、前記封止部材は、底部が前記ケース内に位置するとともに、前記フランジが前記壁部より外側に位置しており、前記封止部材は、前記胴部の外周面に前記注液孔に螺合した雄ねじを有するとともに、前記胴部において、前記ケース内に位置する部分に前記胴部を内側から拡径させたかしめ部を有し、前記フランジと前記かしめ部とで前記壁部に締結されていることを要旨とする。
【0011】
これによれば、胴部にかしめ部を形成していない状態で、胴部の雄ねじを注液孔に螺合することで、注液孔からケース内に電解液を注入した後、封止部材によって注液孔を仮封止することができる。そして、電解液が電極組立体の備える活物質と反応し、ガスが発生した場合には、封止部材により注液孔からガスがケース外へ漏れることが防止される。さらに、注液孔から封止部材を螺退させて、注液孔から封止部材を抜き取ることで、ガスを注液孔からケース外へ放出させることができる。その後、再び、胴部の雄ねじを注液孔に螺合し、さらに、かしめ部とフランジとで封止部材を壁部に締結することで、注液孔を確実に封止することができる。よって、封止部材を壁部に溶接して注液孔を封止した場合のような、注液孔に電解液が付着したことで生じる溶接不良が無く、注液孔の封止を信頼性の高いものにできる。また、かしめ部と雄ねじを併用して注液孔を封止する。このため、雄ねじの螺合だけで注液孔を封止する場合のように、雄ねじ及び注液孔とのねじ込み距離を十分に確保して注液孔を封止する必要が無い。このため、ねじ込み距離を確保するために壁部が厚くなることも無い。
【0012】
また、蓄電装置において、前記フランジと、前記壁部の外壁面における前記注液孔の周囲との間に挟持されるシール部材を有するのが好ましい。
これによれば、シール部材によって注液孔のシール性を確実に確保できる。
【0013】
また、前記蓄電装置は二次電池である。
また、請求項4に記載の蓄電装置の製造方法は、ケース内に電極組立体及び電解液が収容され、前記ケースに前記電解液の注液孔を有するとともに、前記注液孔の封止部材を有する蓄電装置の製造方法であって、前記注液孔はねじ孔であり、前記封止部材は、有底筒状の胴部を備えるとともに、前記胴部の軸方向一端にフランジを備え、前記胴部の外周面に前記注液孔に螺合可能な雄ねじを有しており、前記注液孔から前記ケース内に前記電解液を注入する工程と、前記電解液の注入後に、前記注液孔に前記封止部材の前記雄ねじを螺合して前記注液孔を仮封止する工程と、前記封止部材を前記注液孔から螺退させて前記ケース内からガスを放出させる工程と、前記ガスを放出させた後、前記注液孔に前記雄ねじを螺合するとともに、前記胴部において前記ケース内に位置する部分を、前記注液孔より大径となるまで内側から拡径させてかしめ部を形成して前記注液孔を本封止する工程と、を有することを要旨とする。
【0014】
これによれば、電解液を注入する工程の後、胴部の雄ねじを注液孔に螺合することで、封止部材によって注液孔を仮封止することができる。そして、電解液が電極組立体の備える活物質と反応し、ガスが発生した場合には、封止部材により注液孔からガスがケース外へ漏れることが防止される。さらに、注液孔から封止部材を螺退させて、注液孔から封止部材を抜き取ることで、ガスを注液孔からケース外へ放出させることができる。その後、胴部の雄ねじを注液孔に螺合し、さらに、かしめ部とフランジとで封止部材を壁部に締結することで、封止部材によって注液孔を確実に封止することができる。
【0015】
また、蓄電装置の製造方法において、軸方向一端側に大径部を有するとともに、他端側に棒状の操作部を有するマンドレルが前記胴部内に予め挿入され、前記ケース内に位置する前記胴部は、前記大径部を収容した収容部を有するとともに、前記収容部よりも縮径された部位を有し、前記操作部を引っ張ることで、前記大径部が前記縮径された部位を内側から拡径して前記かしめ部を形成してもよい。
【0016】
これによれば、マンドレルを用いてかしめ部を確実に形成することができる。
また、蓄電装置の製造方法において、前記マンドレルには脆弱部が形成されているのが好ましい。
【0017】
これによれば、マンドレルを引っ張ってかしめ部を形成した後は、脆弱部から操作部を破断することができ、封止部材から操作部が飛び出た状態で残ることが防止できる。
また、蓄電装置の製造方法において、前記大径部の硬度が前記胴部の硬度より大きいことが好ましい。
【0018】
これによれば、マンドレルを引っ張ると、大径部によって胴部を確実に変形させてかしめ部を形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、注液孔からのガス抜きを可能にしつつ、ガス抜き後は注液孔を封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態の二次電池を示す斜視図。
図2】封止部材によって注液孔が封止された状態を示す部分断面図。
図3】(a)は封止部材及びマンドレルを示す斜視図、(b)は封止部材及びマンドレルを示す断面図。
図4】注液孔を仮封止した状態を示す断面図。
図5】封止部材を螺退した状態を示す断面図。
図6】注液孔を本封止した状態を示す断面図。
図7】封止部材の別例を示す断面図。
図8】(a)は別例の封止部材で仮封止した状態を示す断面図、(b)は別例の封止部材で本封止した状態を示す断面図。
図9】背景技術を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、蓄電装置及びその製造方法を、二次電池及びその製造方法に具体化した一実施形態を図1図6にしたがって説明する。
図1及び図2に示すように、二次電池10は、ケース11に電極組立体12及び電解液18が収容されている。ケース11は、有底四角筒状の本体部材13と、本体部材13に電極組立体12を挿入するための開口部13aを塞ぐ矩形平板状の蓋部材14とからなる。本実施形態では、蓋部材14がケース11を構成する壁部に相当する。本体部材13と蓋部材14は、いずれも金属製(例えばステンレス製やアルミニウム製)である。二次電池10は角型電池である。また、二次電池10は、リチウムイオン電池である。
【0022】
図1に示すように、電極組立体12には、正極端子15と負極端子16が電気的に接続されている。そして、正極端子15及び負極端子16には、ケース11から絶縁するためのリング状の絶縁部材17aがそれぞれ取り付けられている。また、正極端子15と負極端子16は、蓋部材14からケース11外に露出している。
【0023】
電極組立体12は、正極電極、負極電極、及び正極電極と負極電極とを絶縁するセパレータを有する。正極電極は、正極金属箔(アルミニウム箔)の両面に正極活物質を備える。負極電極は、負極金属箔(銅箔)の両面に負極活物質を備える。そして、電極組立体12は、複数の正極電極と複数の負極電極が交互に積層されるとともに、両電極の間にセパレータが介在された積層構造である。
【0024】
図2に示すように、蓋部材14において、ケース11の内側に臨む面を内壁面14aとし、ケース11の外側に臨む面を外壁面14bとする。蓋部材14は、その厚み方向に貫通する注液孔14cを備え、注液孔14cは内周面に雌ねじNが形成されたねじ孔である。注液孔14cは、封止部材20によって封止され、ケース11内からのガス及び電解液18の漏れが防止されている。
【0025】
封止部材20は、軸方向一端に開口するとともに、軸方向他端に底部22を有する中空円筒状の胴部21と、この胴部21の軸方向一端の開口縁に設けられた六角環状のフランジ23と、胴部21の内部に収容されるマンドレル40の大径部41を備える。封止部材20は、底部22がケース11内に位置するとともに、フランジ23がケース11外に位置する状態で蓋部材14に締結されている。
【0026】
胴部21(底部22)とフランジ23は一体でアルミニウム製であり、マンドレル40はステンレス製である。胴部21は、外周面に雄ねじ21aを備え、この雄ねじ21aは注液孔14cの雌ねじNに螺合されている。雄ねじ21aと、注液孔14cの雌ねじNとは互いに密接し、胴部21によって注液孔14cは封止されている。マンドレル40の大径部41は、胴部21の雄ねじ21aよりも底部22寄りに圧入されて胴部21を拡径させ、かしめ部24を形成している。よって、かしめ部24の外周面24aは、蓋部材14の内壁面14aにおける注液孔14cの周囲に密接し、注液孔14cをシールしている。
【0027】
そして、かしめ部24とフランジ23によって、封止部材20が蓋部材14に締結されるとともに、フランジ23と、蓋部材14との間には、環状のシール部材25が挟持されている。シール部材25は樹脂製であり、例えば、電解液18に対する耐性、はじき性を考慮して、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)等が挙げられる。
【0028】
シール部材25において、フランジ23に接触する面をフランジ側端面25aとし、蓋部材14の外壁面14bに接触する面を蓋側端面25bとする。また、フランジ23において、シール部材25のフランジ側端面25aに接触する面を、接触面23aとする。シール部材25のフランジ側端面25aは、フランジ23の接触面23aに密接するとともに、蓋側端面25bは蓋部材14の外壁面14bに密接している。よって、シール部材25により、ケース11の外側で注液孔14cがシールされている。
【0029】
次に、注液孔14cに挿入される前の封止部材20について説明する。
図3(a)及び(b)に示すように、胴部21の内部は、軸方向他端側(底部22側)にマンドレル40の大径部41より大径の収容部21dが形成されており、収容部21dに連接してフランジ23に向けてテーパし、かつ大径部41より小径の(縮径された)連通部21eが形成されている。胴部21は、連通部21eよりも軸方向一端側に、内径が連通部21eよりも拡径した挿通部21fを備える。
【0030】
マンドレル40は、棒状の操作部42と、この操作部42より大径の大径部41と、操作部42と大径部41の境界に設けられ、操作部42より小径の脆弱部43とを備える。そして、マンドレル40は、大径部41が収容部21dに収容されるとともに、脆弱部43が連通部21eに収容されている。また、操作部42は挿通部21fに収容されており、その先端は胴部21から突出している。なお、マンドレル40の硬度は、胴部21の硬度よりも大きい。
【0031】
次に、二次電池10の製造方法について作用とともに説明する。
まず、ケース11の注液孔14cからケース11内へ電解液18を注入する工程を行う。
【0032】
その後、図4に示すように、蓋部材14の外壁面14bにおいて、注液孔14cの周囲にシール部材25を配置する。そして、シール部材25の内側に、封止部材20の胴部21を底部22側から挿入するとともに、胴部21を注液孔14cに挿入する。フランジ23の外周面に六角レンチを係止させ、六角レンチを操作して、胴部21の雄ねじ21aを注液孔14cの雌ねじNに螺合する。封止部材20は、フランジ23の接触面23aがシール部材25のフランジ側端面25aに密接するとともに、蓋側端面25bが蓋部材14の外壁面14bに密接するまで、雄ねじ21aを螺進させる。すると、封止部材20により注液孔14cが仮封止され、注液孔14cを仮封止する工程が完了する。
【0033】
仮封止状態では、雄ねじ21aと、雌ねじNが密接し注液孔14cがシールされるとともに、シール部材25によって注液孔14cがシールされる。そして、仮封止状態で、二次電池10のエージング工程が行われる。すると、電解液18と、電極組立体12における各活物質との反応によりガスが発生する。このとき、注液孔14cは封止部材20によって封止されているため、ガスが注液孔14cからケース11外へ漏れることが防止される。なお、仮封止状態では、ケース11の内圧が過度に上昇せず、封止部材20が内圧によって注液孔14cから外れることは無く、封止部材20の締結強度は過度に必要ない。
【0034】
次に、図5に示すように、封止部材20の雄ねじ21aを、注液孔14cの雌ねじNから螺退させ、封止部材20を注液孔14cから抜き取り、注液孔14cを開放する。すると、エージング工程で発生したガスが、注液孔14cからケース11外へ放出される。
【0035】
ガスを放出させる工程の後、図6に示すように、封止部材20の雄ねじ21aを、注液孔14cの雌ねじNに再び螺合する。封止部材20は、フランジ23の接触面23aがシール部材25のフランジ側端面25aに密接するとともに、蓋側端面25bが蓋部材14の外壁面14bに密接するまで、雄ねじ21aを螺進させる。
【0036】
次に、胴部21のフランジ23を治具(図示せず)により蓋部材14側に押圧した状態で、マンドレル40の操作部42のうち、胴部21からの突出部をグリッパ(図示せず)で挟んで胴部21から引っ張る。すると、大径部41が引き上げられるとともに、胴部21の連通部21eが大径部41によって内側から拡径される。その結果、連通部21eは塑性変形しながら拡径し、かしめ部24が形成されるとともに、かしめ部24の外周面24aが、注液孔14cの周囲における内壁面14aに密接する。
【0037】
そして、胴部21における連通部21eの拡径が注液孔14cの内周面によって規制される結果、大径部41のそれ以上の移動が規制される。すると、脆弱部43から操作部42が破断され、大径部41のみが胴部21内に残るとともに、操作部42は大径部41から分離される。
【0038】
その結果、図2に示すように、フランジ23とかしめ部24によって、封止部材20が蓋部材14に締結されるとともに、かしめ部24及びシール部材25によって注液孔14cがシールされ、注液孔14cが封止される。すなわち、注液孔14cを本封止する工程が完了する。
【0039】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)封止部材20は胴部21に雄ねじ21aを有し、注液孔14cは雌ねじNを有するねじ孔である。このため、封止部材20にかしめ部24を形成する前は、封止部材20は、注液孔14cに対し螺合及び螺退可能である。よって、ケース11に電解液18を注入し、注液孔14cに封止部材20を螺合した後も、封止部材20を注液孔14cから抜き取ることができる。その結果、電解液18と電極組立体12の活物質が反応してガスが発生しても、そのガスをケース11から放出することができる。よって、ガスによってケース11の内圧が上昇し、ケース11が膨張してしまうことを無くすことができる。
【0040】
(2)ケース11からガスを抜いた後は、封止部材20の胴部21(連通部21e)を内側から拡径させてかしめ部24を形成することで、フランジ23とかしめ部24で封止部材20を蓋部材14に締結することができる。そして、かしめ部24の外周面24aが蓋部材14の内壁面14aに密接することで、注液孔14cのシール性を確保することができる。したがって、封止部材20を蓋部材14に溶接して封止する場合に生じる溶接不良は無く、注液孔14cの封止を信頼性の高いものとすることができる。
【0041】
(3)注液孔14cの本封止は、封止部材20と注液孔14cとの螺合に加え、かしめ部24とフランジ23の挟持によって行われ、所要の締結強度を得ることができる。例えば、封止部材20と注液孔14cとのねじ締結だけで所要の締結強度を得る場合には、ねじ込み距離を確保するため蓋部材14の厚みが厚くなってしまうが、本実施形態では、蓋部材14の厚みが厚くならずに済む。
【0042】
(4)封止部材20のフランジ23と、蓋部材14の外壁面14bとの間にはシール部材25が挟持されている。このため、封止部材20による注液孔14cの封止と、シール部材25とを併用することで、注液孔14cを確実に封止することができる。
【0043】
(5)注液孔14cに挿入される前の封止部材20において、胴部21にはマンドレル40が予め挿入されている。マンドレル40は大径部41を有するとともに、胴部21は、大径部41よりも小径の連通部21eを有する。このため、マンドレル40を胴部21内から引っ張ることで、大径部41により連通部21eを内側から拡径して、かしめ部24を確実に形成することができる。
【0044】
(6)マンドレル40の硬度は、胴部21の硬度より大きいため、マンドレル40を胴部21から引っ張るとき、大径部41によって連通部21eを確実に内側から拡径させて、かしめ部24を確実に形成することができる。
【0045】
(7)マンドレル40は、大径部41と操作部42の境界に脆弱部43を備える。このため、大径部41によって連通部21eを拡径してかしめ部24を形成し、大径部41の移動が規制されると、脆弱部43によって操作部42を大径部41から簡単に破断させることができる。よって、かしめ部24を形成し、注液孔14cを本封止した後に、封止部材20から操作部42から突出した状態に残ることを無くすことができる。
【0046】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 封止部材20において、胴部21の材質を変更し、図7に示すように、操作部42を引っ張るのと同時に、胴部21における底部22側をフランジ23側に引き上げつつ、連通部21eを拡径してかしめ部24を形成してもよい。
【0047】
図8(a)に示すように、封止部材20における胴部21の形状を変更してもよい。胴部21の内部は、軸方向一端側(フランジ23側)にマンドレル40の大径部41より大径の収容部21dが形成されており、収容部21dに連接して底部22に向けてテーパし、かつ大径部41より小径の連通部21eが形成されている。マンドレル40の操作部42は、大径部41側の一部が収容部21dに収容されるとともに、その他の部分は胴部21から突出している。
【0048】
図8(b)に示すように、注液孔14cを本封止する際は、胴部21のフランジ23を治具(図示せず)により蓋部材14側に押圧した状態で、マンドレル40の操作部42のうち、胴部21からの突出部をグリッパ(図示せず)で挟み、マンドレル40を大径部41が底部22に当たるまで胴部21に押し込む。すると、胴部21の連通部21eが大径部41によって内側から拡径される。その結果、連通部21eは塑性変形しながら拡径し、かしめ部24が形成される。押し込まれた大径部41は、拡径した連通部21eの内側に入り込む。
【0049】
そして、大径部41が底部22に当接すると、大径部41のそれ以上の移動が規制される。その後、脆弱部43から操作部42を破断し、大径部41のみを胴部21内に残した状態で、操作部42を大径部41から分離する。
【0050】
このように構成しても、封止部材20を用いてかしめ部24を形成することができる。
○ マンドレル40において、大径部41の硬度が胴部21の硬度より大きければ、大径部41と、それ以外(操作部42及び脆弱部43)とを別々の材料で製造してもよい。
【0051】
○ フランジ23の接触面23aと、蓋部材14の外壁面14bとが密接して注液孔14cの周囲をシールできれば、シール部材25は無くてもよい。
○ シール部材25は、樹脂製以外にゴム製であってもよいし、Oリングであってもよい。
【0052】
○ シール部材25は、注液孔14c内に挿通され、注液孔14cの内周面を覆う円筒部を一体に有していてもよく、この場合、円筒部の内周面に雌ねじNが形成されて注液孔14cとしてのシール部材25がねじ孔となる。
【0053】
○ 実施形態では、ケース11の壁部として蓋部材14に注液孔14cを設けたが、壁部を本体部材13の側壁とし、本体部材13の側壁に注液孔を設けてもよい。
○ 封止部材20において、フランジ23は六角環状でなく、円環状であってもよい。この場合、フランジ23の表面には、係止溝等を設けて、その係止溝にドライバ等の工具を係止させて封止部材20の螺合及び螺退作業を行うようにしてもよい。
【0054】
○ 二次電池10は、リチウムイオン二次電池であったが、これに限らず、他の二次電池であってもよい。要するに、正極活物質と負極活物質との間をイオンが移動するとともに電荷の授受を行うものであればよい。
【0055】
○ 蓄電装置を、電気二重層キャパシタ等に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…蓄電装置としての二次電池、11…ケース、12…電極組立体、14…壁部としての蓋部材、14b…外壁面、14c…注液孔、18…電解液、20…封止部材、21…胴部、21a…雄ねじ、21d…収容部、22…底部、23…フランジ、24…かしめ部、25…シール部材、40…マンドレル、41…大径部、42…操作部、43…脆弱部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9